特許第6932911号(P6932911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6932911
(24)【登録日】2021年8月23日
(45)【発行日】2021年9月8日
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20210826BHJP
   B41J 2/17 20060101ALI20210826BHJP
   B65H 29/52 20060101ALI20210826BHJP
   B65H 29/70 20060101ALI20210826BHJP
   B41J 13/02 20060101ALI20210826BHJP
   B41J 13/10 20060101ALI20210826BHJP
   B41J 11/02 20060101ALI20210826BHJP
【FI】
   B41J2/01 305
   B41J2/01 105
   B41J2/17 201
   B65H29/52
   B65H29/70
   B41J13/02
   B41J13/10
   B41J11/02
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-212610(P2016-212610)
(22)【出願日】2016年10月31日
(65)【公開番号】特開2018-69588(P2018-69588A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金澤 学郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 毅
(72)【発明者】
【氏名】佐野 巌根
【審査官】 中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−083490(JP,A)
【文献】 特開2012−091408(JP,A)
【文献】 特開2013−230620(JP,A)
【文献】 特開2012−180143(JP,A)
【文献】 特開2013−136226(JP,A)
【文献】 特開2016−036936(JP,A)
【文献】 米国特許第08469486(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
B41J 11/02
B41J 13/02
B41J 13/10
B65H 29/52
B65H 29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
普通サイズおよび、シートの搬送方向と前記搬送方向と直交する幅方向において普通サイズのシートよりも小さい小サイズを含む複数種類のサイズのシートに対して画像記録を行うインクジェット記録装置であって、
ノズルからインク滴を吐出して、前記搬送方向に搬送されるシートに画像記録を行う記録部と、
前記幅方向に間隔を空けて複数設けられ、且つ、前記記録部よりも前記搬送方向の上流側から前記搬送方向の下流側に向かって前記記録部の下方まで伸び、シートを支持する支持リブを有する支持部材と、
前記支持リブよりも前記搬送方向の下流側で、且つ、前記支持リブの上端よりも下方に位置し、シートの前記搬送方向の下流端あるいは前記搬送方向の上流端に縁なし印刷を行う際に前記記録部のノズルから吐出されたインク滴が着弾可能なインク受け部と、
前記支持部材よりも前記搬送方向の下流側に配置され、シートを前記搬送方向に搬送する第1ローラ対と、
前記第1ローラ対よりも前記搬送方向の下流側に配置される第2ローラ対と、
前記インク受け部よりも前記搬送方向の下流側で、且つ、前記インク受け部よりも下方から前記搬送方向の下流側に向かって前記第1ローラ対によるシートの挟持位置に近づくように延出し、シートを前記第1ローラ対の挟持位置に向かうようにガイドするガイド面を有するガイド部材と、
前記インク受け部と前記第1ローラ対との間に設けられ、上端が、前記第1ローラ対の挟持位置と前記インク受け部の前記搬送方向の下流端とを結ぶ仮想直線よりも上方であって、且つ、前記支持リブの上端よりも下方に位置する凸部材と、を備え、
前記凸部材は、前記幅方向において、搬送される前記小サイズのシートが通過する領域内に配置され
前記第1ローラ対と前記第2ローラ対に挟持されたシートは、前記搬送方向の上流側に向かって上方に傾斜する姿勢となるインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記凸部材は、前記幅方向において、搬送される前記小サイズのシートが通過しない領域内に配置されない請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記凸部材の上端は、前記第1ローラ対の挟持位置と前記インク受け部の前記搬送方向の上流端とを結ぶ仮想直線よりも上方であって、且つ、前記支持リブの上端よりも下方に位置する請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記ガイド部材の前記ガイド面は、前記搬送方向の下流側に向かって上方に傾斜する傾斜面である請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記ノズルより前記搬送方向の上流側であって、且つ、前記幅方向において前記複数の支持リブの間に設けられ、前記複数の支持リブの上端よりも下方でシートの上面と当接することで前記複数の支持リブと協同してシートに波形状を付与する複数の当接部材を有する当接部材を備える請求項1からのいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記凸部材は、前記幅方向において、互いに間隔を空けて複数配置される請求項1からのいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記複数の凸部材は、前記幅方向において、前記複数の支持リブが配置される位置に対応して配置される請求項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記第2ローラ対の挟持位置は、前記第1ローラ対の挟持位置よりも下方に位置する請求項1からのいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
シートに対して画像記録を行うインクジェット記録装置であって、
ノズルからインク滴を吐出してシートに画像記録を行う記録部と、
前記記録部よりもシートの搬送方向の上流側から前記搬送方向の下流側に向かって前記記録部の下方まで伸び、シートを支持する支持部と、
前記支持部よりも前記搬送方向の下流側で、且つ、前記支持部の上端よりも下方に位置し、シートの前記搬送方向の下流端あるいは前記搬送方向の上流端に縁なし印刷を行う際に前記記録部のノズルから吐出されたインク滴が着弾可能なインク受け部と、
前記インク受け部よりも前記搬送方向の下流側に配置され、シートを前記搬送方向に搬送する第1ローラ対と、
前記第1ローラ対よりも前記搬送方向の下流側に配置される第2ローラ対と、
前記インク受け部よりも前記搬送方向の下流側で、且つ、前記支持部よりも下方から前記搬送方向の下流側に向かって前記第1ローラ対によるシートの挟持位置に近づくように延出し、シートを前記第1ローラ対の挟持位置に向かうようにガイドするガイド面を有するガイド部材と、を備え、
前記第1ローラ対と前記第2ローラ対に挟持されたシートは、前記搬送方向の上流側に向かって上方に傾斜する姿勢となるインクジェット記録装置。
【請求項10】
シートに対して画像記録を行うインクジェット記録装置であって、
ノズルからインク滴を吐出してシートに画像記録を行う記録部と、
前記記録部よりもシートの搬送方向の上流側から前記搬送方向の下流側に向かって前記記録部の下方まで伸び、シートを支持する支持部と、
前記支持部よりも前記搬送方向の下流側で、且つ、前記支持部の上端よりも下方に位置し、シートの前記搬送方向の下流端あるいは前記搬送方向の上流端に縁なし印刷を行う際に前記記録部のノズルから吐出されたインク滴が着弾可能なインク受け部と、
前記インク受け部よりも前記搬送方向の下流側に配置され、シートを前記搬送方向に搬送する第1ローラ対と、
前記第1ローラ対よりも前記搬送方向の下流側に配置される第2ローラ対と、
前記インク受け部よりも前記搬送方向の下流側で、且つ、前記支持部よりも下方から前記搬送方向の下流側に向かって前記第1ローラ対によるシートの挟持位置に近づくように延出し、シートを前記第1ローラ対の挟持位置に向かうようにガイドするガイド面を有するガイド部材と、を備え、
前記第2ローラ対の挟持位置は、前記第1ローラ対の挟持位置よりも下方に位置するインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルからインク滴を吐出することによってシートに画像記録を行うインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インク滴を吐出してシートに画像を記録するインクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置における画像記録は、記録ヘッドのノズル面に形成されたノズルからインク滴をシートに向けて吐出することにより行われる。
【0003】
上述したインクジェット記録装置において、ノズルから吐出されたインク滴がシートに着弾すると、インクを吸収したシートがインクの水分により膨潤し、シートの記録面が上方に膨らむように変形する。このようにシートが変形すると、シートの記録面がノズル面と接触して汚れてしまう虞がある。
【0004】
このような、膨潤したシートの先端部がノズル面と接触して汚れるという問題を解決するために、例えば、特許文献1に記載されているインクジェット記録装置においては、記録ヘッドに対向してシートを支持する支持部材よりもシートの搬送方向の下流側において、支持部材よりも下方からシートの搬送方向の下流側に向かって上方に傾斜しており、記録面に画像記録がなされたシートを排紙ローラ対へと案内するガイド部材を設けている。この構成により、インクを吸収して上方へ膨潤したシートの先端部が、ガイド部材のガイド面に向かって自重により垂れ下がることによって、上方へ膨潤したシートが記録ヘッドのノズル面と接触することを防いでいる。
【0005】
また、従来より、特許文献2に記載されているように、シートを支持する支持部材よりも搬送方向の下流側に第1排紙ローラ対を配置し、更に、第1排紙ローラ対よりも搬送方向の下流側に第2排紙ローラ対を配置し、2つの排紙ローラ対によってシートを排紙するインクジェット記録装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−156072
【特許文献2】特開2013−230620
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
画像記録が行われたシートが排出ローラ対に挟持されて搬送されるとき、シートの自重によってシートの後端が下方に垂れ下がってしまう。記録ヘッドに対向してシートを支持する支持部材には、シートに余白を設けずに画像を記録する所謂縁なし印刷を行う際にシートの外側の領域に打ち捨てられたインク滴が着弾可能なインク打ち捨て領域が設けられており、上述したようにシートの後端が垂れ下がると、インク打ち捨て領域に溜まったインクと接触し、シートの後端が汚れてしまう。
【0008】
特に、特許文献2に記載されているような2つの排紙ローラ対を持つ構成において、第1排紙ローラ対のみによって挟持された状態で後端がインク打ち捨て領域に到達するハガキのような小サイズのシートに画像記録を行う場合、2つの排紙ローラ対によって挟持される状態に比べて、シートの先端側の姿勢が安定しないため、シート全体の姿勢が変化しやすくなる。そのため、小サイズのシートは後端が一層垂れ下がりやすく、インク打ち捨て領域に溜まったインクと接触して汚れやすい。
【0009】
そこで、シートの後端の垂れ下がりを抑制するために、シートを下方から支持するリブなどの凸部材を、支持部材と排出ローラ対との間に幅方向に沿って複数設けて、シートの後端部を支持することが考えられるが、特許文献1に開示された記録装置のように、膨潤したシートの先端部が垂れ下がれるように、傾斜したガイド部材を配置した構成において当該凸部材を設けると、シートの先端部を凸部材が支持してしまうため、シートの先端部が十分にガイド部材に向かって垂れ下がることができず、膨潤したシートが記録ヘッドのノズル面と接触することを防止できない虞がある。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、支持部材よりも搬送方向の下流側において、インクを吸収して膨潤したシートの先端部が垂れ下がるための空間を備えた場合において、小サイズのシートの後端部が支持部材のインク受け部と接触して汚れることを抑制できるインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1) 普通サイズおよび、シートの搬送方向と前記搬送方向と直交する幅方向において普通サイズのシートよりも小さい小サイズを含む複数種類のサイズのシートに対して画像記録を行うインクジェット記録装置であって、ノズルからインク滴を吐出して、前記搬送方向に搬送されるシートに画像記録を行う記録部と、前記幅方向に間隔を空けて複数設けられ、且つ、前記記録部よりも前記搬送方向の上流側から前記搬送方向の下流側に向かって前記記録部の下方まで伸び、シートを支持する支持リブを有する支持部材と、前記支持リブよりも前記搬送方向の下流側で、且つ、前記支持リブの上端よりも下方に位置し、シートの前記搬送方向の下流端あるいは前記搬送方向の上流端に縁なし印刷を行う際に前記記録部のノズルから吐出されたインク滴が着弾可能なインク受け部と、前記支持部材よりも前記搬送方向の下流側に配置され、シートを前記搬送方向に搬送する第1ローラ対と、前記第1ローラ対よりも前記搬送方向の下流側に配置される第2ローラ対と、前記インク受け部よりも前記搬送方向の下流側で、且つ、前記インク受け部よりも下方から前記搬送方向の下流側に向かって前記第1ローラ対によるシートの挟持位置に近づくように延出し、シートを前記第1ローラ対の挟持位置に向かうようにガイドするガイド面を有するガイド部材と、前記インク受け部と前記第1ローラ対との間に設けられ、上端が、前記第1ローラ対の挟持位置と前記インク受け部の前記搬送方向の下流端とを結ぶ仮想直線よりも上方であって、且つ、前記支持リブの上端よりも下方に位置する凸部材と、を備える。前記第2ローラ対の挟持位置と前記インク受け部の前記搬送方向の上流端との間の距離は、普通サイズのシートの前記搬送方向の長さよりも短く、小サイズのシートの前記搬送方向の長さよりも長くなるように構成され、前記凸部材は、前記幅方向において、搬送される前記小サイズのシートが通過する領域内に配置される。
【0012】
本構成によれば、支持部材と第1ローラ対との間において、凸部材が小サイズのシート後端部を支持可能であるため、小サイズのシート後端部が支持部材に設けられたインク受け部と接触して汚れることを抑制できる。また、凸部材は幅方向において小サイズのシートが搬送される領域内に設けられているため、小サイズよりも大きい普通サイズのシートの幅方向の両端側は支持しない。これにより、インクを吸収して膨潤した普通サイズのシート先端部の両端側が入り込む空間を確保することができ、記録部と接触して汚れることを抑制できる。
【0013】
(2) 前記凸部材の上端は、前記第1ローラ対の挟持位置と前記インク受け部の前記搬送方向の上流端とを結ぶ仮想直線よりも上方であって、且つ、前記支持リブの上端よりも下方に位置する。
【0014】
本構成によれば、小サイズのシートの後端部がインク受け部と対向する位置に到達した際に、より高い位置においてシート後端部が凸部材と当接して支持されるため、小サイズのシート後端部がインク受け部と接触する可能性を低減することができる。
【0015】
(3) 前記ガイド部材の前記ガイド面は、前記搬送方向の下流側に向かって上方に傾斜する傾斜面である。
【0016】
本構成によれば、シートを、傾斜したガイド面に沿って第1ローラ対の挟持位置に容易に案内することができる。
【0017】
(4) 前記ノズルより前記搬送方向の上流側であって、且つ、前記幅方向において前記複数の支持リブの間に設けられ、前記複数の支持リブの上端よりも下方でシートの上面と当接することで前記複数の支持リブと協同してシートに波形状を付与する複数の当接部材を有する当接部材を備える。
【0018】
本構成によれば、複数の支持リブと当接部材によってシートに幅方向に沿って凹凸が交互に繰り返されるような波形状が付与されるため、シートの姿勢が安定する。
【0019】
(5) 前記凸部材は、前記幅方向において、互いに間隔を空けて複数配置される。
【0020】
本構成によれば、幅方向において複数の凸部材が配置されるため、シートを安定して支持することができる。
【0021】
(6) 前記複数の凸部材は、前記幅方向において、前記複数の支持リブが配置される位置に対応して配置される。
【0022】
本構成によれば、凸部材は、幅方向において複数の支持リブのそれぞれに対応した位置、つまり、シートの波形状における凸形状の箇所を支持する位置に配置される。これにより、複数の凸部材も当接部材と協同してシートに波形状を付与することができる。また、シートが当接部材を抜けた後に凸形状の箇所が下方に下がってシートの波形状が崩れてしまうことを抑制することができる。
【0023】
(7) 前記第2ローラ対の挟持位置は、前記第1ローラ対の挟持位置よりも下方に位置する。
【0024】
本構成によれば、第1ローラ対と第2ローラ対によって挟持された状態の普通サイズのシートは、搬送方向の上流側に向かって上方に傾く姿勢となる。これにより、シート後端部の位置が前端部に比べて高くなるので、インク受け部に接触する可能性を低減することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、支持部材よりも搬送方向の下流側において、インクを吸収して膨潤したシートの先端部が垂れ下がるための空間を備えた場合にあっても、小サイズのシートの後端部が支持部材のインク受け部と接触して汚れることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、複合機10の斜視図である。
図2図2は、プリンタ部11の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
図3図3は、プリンタ部11の内部に配置されたプラテン42の平面構造を示す平面図である。
図4】凸部材100とその周辺の構造を模式的に示す側面図である。
図5】凸部材100とその周辺の構造を模式的に表す平面図である。
図6】当接部材70の当接部71とプラテン42の上流リブ82によって用紙Pに左右方向9に沿った波形状が形成されている状態を示す模式図である。
図7】用紙Pに形成された波形状の凸形状の箇所が、凸部材100によって支持されている状態を示す模式図である。
図8】小サイズ用紙P1が搬送されるときの凸部材100とその周辺の構造を模式的に示す側面図である。
図9】普通サイズ用紙P2が搬送されるときの凸部材100とその周辺の構造を模式的に示す側面図である。
図10】当接部材70の当接部71の左右方向9における両端の位置を示す模式図である。
図11】変形例2における凸部材100とその周辺の構造を模式的に示す側面図である。
図12】変形例3における凸部材100とその周辺の構造を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明では、複合機10が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、開口が設けられている側を手前側(正面)として前後方向8が定義され、複合機10を手前側(正面)から見て左右方向9が定義される。
【0028】
[複合機10]
図1に示されるように、複合機10(本発明のインクジェット記録装置の一例)は、概ね薄型の直方体に形成されている。複合機10の下部にプリンタ部11が設けられている。複合機10は、ファクシミリ機能、スキャンによる読取機能、及びプリント機能などの各種の機能を有している。複合機10は、複合機10は、プリント機能として、インクジェット記録方式で用紙P(本発明のシートの一例、図2参照)の片面に画像を記録する機能を有している。なお、複合機10は、用紙Pの両面に画像を記録するものであってもよい。
【0029】
複合機10は、JIS規格によって定められている複数のサイズの用紙Pに対して印刷可能に設定されている。複数のサイズのうち、本実施例において小サイズとは複合機10で印刷可能に設定されているサイズの中で最も小さいサイズを指し、ここではその一例としてハガキを小サイズとし、小サイズ用紙P1と呼ぶ。また、本実施例で普通サイズとは小サイズよりも大きなサイズを指し、ここではその一例としてA4サイズを普通サイズとし、普通サイズ用紙P2と呼ぶ。なお、単に用紙Pと呼ぶときは、全てのサイズの用紙を指す。そして、複合機10は、普通サイズ用紙P2をその長辺が後述する搬送向き15の先頭となるように搬送し、小サイズ用紙P1をその短辺が後述する搬送向き15の先頭となるように搬送する。普通サイズ用紙P2(A4サイズの用紙)は、繊維方向がその長辺に沿っているため、所謂、横目搬送で搬送される。
【0030】
プリンタ部11は、図2に示されるように、用紙Pを搬送路65へ給紙する給紙部16と、搬送路65へ給紙された用紙Pを搬送させる搬送ローラ対58と、用紙Pを排紙する第1排出ローラ対59(本発明の第1ローラ対の一例)及び第2排出ローラ対150(本発明の第2ローラ対の一例)と、搬送路65を搬送される用紙Pを支持するプラテン42(本発明の支持部材の一例)と、プラテン42に支持される用紙Pに画像を記録する記録部24などを備えている。以上のうち、給紙部16(後述する給紙モータ)、搬送ローラ対58及び第1排出ローラ対59及び第2排出ローラ対150(後述する搬送モータ)、記録部24(後述する記録ヘッド及びキャリッジ駆動モータ)は、図示しない制御部によって制御される。
【0031】
[給紙トレイ20]
図1に示されるように、プリンタ部11は、正面に開口12が形成された筐体13を有している。給紙トレイ20が、前後方向8へ移動することによって、開口12を介してプリンタ部11に対して挿入及び脱抜可能である。給紙トレイ20は、上方が開放された箱形状の部材である。図2に示されるように、給紙トレイ20の底板22に、用紙Pが重ねられた状態で支持される。給紙トレイ20は、普通サイズ用紙P2と小サイズ用紙P1を含む複数のサイズの用紙を選択的に収容可能であり、普通サイズ用紙P2はその長辺が左右方向9と平行となるように収容され、小サイズ用紙P1はその短辺が左右方向9と平行となるように収容される。つまり、普通サイズ用紙P2は、その短辺が搬送向き15に沿った方向となる所謂横置きで底板22に支持される。給紙トレイ20の前部の上方には、排紙トレイ21が支持されている。排紙トレイ21は、給紙トレイ20と一体に前後方向8へ移動する。排紙トレイ21の上面には、後述する記録部24によって画像を記録された用紙Pが排出される。なお、排紙トレイ21は、プリンタ部11に支持されていてもよい。
【0032】
[操作部17]
図1に示されるように、複合機10の正面上部には、タッチパネルなどの操作部17が設けられている。操作部17にユーザーから印刷に必要な情報が入力されることで、制御部は、入力情報に基づいて画像記録を実行する。なお、複合機10による画像記録は、通信回線(有線、無線を問わない)を通じて複合機10に接続された外部機器からの入力情報に基づいて実行されてもよい。
【0033】
[給紙部16]
図2に示されるように、給紙部16は、給紙トレイ20の上方に設けられている。給紙部16は、給紙ローラ25、給紙アーム26、駆動伝達機構27、軸28を備えている。給紙ローラ25は、給紙アーム26の先端部で回転可能に支持されている。給紙アーム26は、基端部に設けられた軸28を中心として、矢印29の方向に回動する。これにより、給紙ローラ25は、給紙トレイ20又は給紙トレイ20に支持された用紙Pに対して、当接及び離間が可能である。給紙ローラ25は、複数のギヤが噛合されてなる駆動伝達機構27によって、給紙モータ(不図示)の駆動力が伝達されて回転する。これにより、給紙ローラ25は、給紙トレイ20の底板22に支持された用紙Pのうち、最上の用紙Pを搬送路65へ給送する。
【0034】
[搬送路65]
図2に示されるように、給紙トレイ20の後端部から搬送路65が延出している。搬送路65は、湾曲部65Aと直線部65Bとを備える。湾曲部65Aは、後側を湾曲外側且つ前側を湾曲内側として湾曲しつつ延びている。直線部65Bは、前後方向8に沿って延びている。搬送路65は、所定間隔を隔てて互いに対向する外側ガイド部材18と内側ガイド部材19とによって形成されている。給紙トレイ20から給紙部16によって搬送路65へ給送された用紙Pは、湾曲部65Aを下方から上方へUターンするように搬送された後、直線部65Bを搬送されて記録部24に搬送される。記録部24によって画像記録が行われた用紙Pは、直線部65Bを搬送されて排紙トレイ21に排出される。以上により、用紙Pは、図2に一点鎖線の矢印で示される搬送向き15(本発明の搬送方向の一例)に搬送される。
【0035】
[記録部24]
図2に示されるように、記録部24は、搬送路65の直線部65Bの上側に設けられている。記録部24は、キャリッジ40と記録ヘッド38とを備えている。キャリッジ40は、プリンタ部11の内部において、前後方向8に所定間隔を隔てて配置され、左右方向9に延びる一対のガイドレール(不図示)によって支持されている。キャリッジ40は、2つのガイドレールを跨ぐようにして、2つのガイドレール上を左右方向9(本発明の幅方向の一例)に移動可能である。キャリッジ40は、キャリッジ駆動モータ(不図示)から駆動力を付与されることにより移動する。
【0036】
記録ヘッド38は、キャリッジ40に搭載されている。記録ヘッド38には、インクを貯留するインクカートリッジ(不図示)からインクが供給される。記録ヘッド38の下面には、複数のノズル39が形成されている。記録の際には、キャリッジ40の左右方向9への往復移動中に、記録ヘッド38は、ノズル39から後述するプラテン42に向けてインク滴を吐出する。搬送向き15に搬送される用紙Pは、プラテン42によって支持される。
【0037】
以上より、キャリッジ40が左右方向9へ往復移動されながら、記録ヘッド38に形成されたノズル39から、プラテン42上を直線部65Bに沿って搬送される用紙Pに向けてインク滴が吐出される。これにより、用紙Pに画像が記録される。
【0038】
[搬送ローラ対58、第1排出ローラ対59、第2排出ローラ対150]
図2に示されるように、搬送路65におけるプラテン42よりも搬送向き15の上流側には、搬送ローラ対58が設けられている。搬送ローラ対58は、搬送路65の上側に配置された搬送ローラ60と、搬送路65の下側に搬送ローラ60に対向して配置されたピンチローラ61とを備えている。ピンチローラ61は、ばねなどの弾性部材(不図示)によって搬送ローラ60のローラ面に圧接されている。
【0039】
図2に示されるように、搬送路65におけるプラテン42よりも搬送向き15の下流側には、第1排出ローラ対59が設けられている。第1排出ローラ対59は、搬送路65の下側に配置された第1排出ローラ62と、搬送路65の上側に第1排出ローラ62に対向して配置された第1拍車63とを備えている。第1拍車63は、ばねなどの弾性部材(不図示)によって第1排出ローラ62のローラ面に圧接されている。
【0040】
図2に示されるように、搬送路65における第1排出ローラ対59よりも搬送向き15の下流側には、第2排出ローラ対150が設けられている。第2排出ローラ対150は、搬送路65の下側に配置された第2排出ローラ152と、搬送路65の上側に第2排出ローラ152に対向して配置された第3拍車151とを備えている。第3拍車151は、ばねなどの弾性部材(不図示)によって第2排出ローラ152のローラ面に圧接されている。
【0041】
搬送ローラ60、第1排出ローラ62及び第2排出ローラ152は、搬送モータ(不図示)から駆動伝達機構(不図示)を介して回転駆動力が伝達されて回転する。搬送ローラ対58に用紙Pが挟持されている状態で搬送ローラ60が回転すると、当該用紙Pは、搬送ローラ対58によってプラテン42上に、つまり搬送向き15に搬送される。第1排出ローラ対59に用紙Pが挟持されている状態で第1排出ローラ62が回転すると、当該用紙Pは、第1排出ローラ対59によって搬送向き15に搬送される。第2排出ローラ対150に用紙Pが挟持されている状態で第2排出ローラ152が回転すると、当該用紙Pは、第2排出ローラ対150によって搬送向き15に搬送される。図2に示されるように、搬送ローラ対58による用紙Pの挟持位置と、第1排出ローラ対59による用紙Pの挟持位置と、第2排出ローラ対150による用紙Pの挟持位置は、プラテン42よりも上方である。以上より、搬送ローラ対58と、第1排出ローラ対59と、第2排出ローラ対150は、用紙Pを挟持することによって搬送向き15に搬送する。
【0042】
[レジストセンサ110]
図2に示されるように、プリンタ部11は、給紙ローラ25及び搬送ローラ対58の間の湾曲部65Aの所定位置に、レジストセンサ110を備える。レジストセンサ110は、所定位置における用紙Pの有無を検知し、検知結果に応じた信号(検知信号)を出力する。例えば、レジストセンサ110は、用紙Pの一部がレジストセンサ110を通過しているときにHighレベル信号を出力し、用紙Pがレジストセンサ110を通過していないときにLowレベル信号を出力する。
【0043】
レジストセンサ110は、検出子112A、112Bを有する回転部材112と、発光素子(例えば発光ダイオード)及び当該発光素子から発光された光を受光する受光素子(例えばフォトトランジスタ)を有するフォトインタラプタ等の光センサ111とにより構成されている。回転部材112は、軸113を中心に回転可能に設けられている。検出子112Aは、軸113から搬送路65に突出している。
【0044】
搬送路65を搬送される用紙Pの先端(搬送向き15の下流端)が回転部材112の検出子112Aに当接して検出子112Aを押すと、回転部材112の検出子112Bは、発光素子と受光素子との間の光路から外れる。そのため、当該光路に光が通る。このとき、受光素子はHighレベル信号を出力する。一方、搬送路65を搬送される用紙Pの後端(搬送向き15の上流端)が回転部材112の検出子112Aを通過すると、回転部材112は図2に示される状態に戻る。このとき、回転部材112の検出子112Bは、発光素子と受光素子との間の光路に進入して、当該光路を通る光を遮断する。このとき、受光素子はLowレベル信号を出力する。光センサ111は、受光素子が受光した光の強度に応じたアナログの電気信号を、検知信号として出力する。複合機10の全体動作を制御する制御部140は、光センサ111から出力された電気信号の違いに基づいて、所定位置における用紙Pの有無を検出する。
【0045】
以上のように、本実施例におけるレジストセンサ110の一例として、用紙Pが回転部材112と接触することにより用紙Pの有無を検知する、接触式のレジストセンサ110について説明したが、レジストセンサ110は接触式に限定されない。例えば、搬送路65に向けて光を照射し、用紙Pの表面によって反射される際の光の強度の変化に基づいて用紙Pの有無を検知する、光学式のレジストセンサを用いてもよい。
【0046】
[プラテン42]
図2に示されるように、プラテン42は、搬送路65の直線部65Bの下方に記録部24と所定間隔を空けて対向して配置されている。図3に示されるように、プラテン42は、第1支持部80と、第1支持部80よりも前方に位置する第2支持部81(本発明のインク受け部の一例)と、第2支持部81よりも前方に位置する収容部85とによって構成されている。
【0047】
図3に示されるように、第1支持部80には、左右方向9において、所定間隔を空けて配置された複数の上流リブ82(本発明の支持リブの一例)が形成されている。上流リブ82は、第1支持部80の基板部の上面から上方に向けて立設している。また、上流リブ82は、前後方向8に対して延出されており、搬送路65を搬送される用紙Pを下方から支持する。
【0048】
第2支持部81は、インク着弾部84及び下流リブ83を有している。インク着弾部84は、第2支持部81において、左右方向9に対して所定間隔を空けて複数配置されている。図4に示されるように、インク着弾部84の上面は、記録ヘッド38の複数のノズル39のうち、搬送向き15の下流側に位置する一部のノズル39の領域と対向可能な位置に形成されている。インク着弾部84は、記録部24が用紙Pの端までインク滴を吐出する所謂縁なし印刷が実行されるときに、用紙Pの搬送向き15の先端、後端、右端及び左端周辺の真下に位置する領域である。記録ヘッド38は、ノズル39のうち、インク着弾部84と対向する領域のノズル39を用いて、用紙Pの搬送向き15の先端、後端、右端及び左端に対して縁なし印刷を実行する。なお、インク着弾部84は、プラテン42と一体で構成されている必要はなく、別部材として設けられてもよい。例えば、発泡ポリウレタンなどの多孔材料からなるスポンジ部材をインク着弾部84としてプラテン42と別体で設け、縁なし印刷時にノズル39から吐出されたインクをスポンジ部材が吸収するような構成としてもよい。
【0049】
図3に示されるように、インク着弾部84には、前後方向8に延びる溝が複数形成されている。記録部24から用紙Pに縁なし印刷が実行される場合、ノズル39から吐出されたインク滴のうち、用紙Pの縁よりも外方に吐出されたインク滴がインク着弾部84に着弾する。そして、インク着弾部84に着弾したインクが複数の溝により前方に流され、収容部85に収容されるインク吸収材86により吸収される。
【0050】
第2支持部81には、複数の下流リブ83が左右方向9において所定間隔を空けて複数設けられている。各下流リブ83は、第2支持部81の基板部の上面から上方に向けて立設しており、第2支持部81の後方の端部から第2支持部81の前方の端部まで延出している。図4にも示されるように、下流リブ83の上端は、上流リブ82の上端よりも下方に位置し、インク着弾部84の上面よりも上方に位置している。これにより、下流リブ83は、搬送路65を搬送される用紙Pが、縁なし印刷によってインク着弾部84に着弾してそこに溜まったインクによって汚れないよう、用紙Pを下方から支持する。
【0051】
図3図4に示されるように、第2支持部81よりも前方には収容部85が延出されている。収容部85は、第2支持部81のインク着弾部84の上面よりも下方に配置されている。図4に示されるように、収容部85には、インク吸収材86が収容される。インク吸収材86は、発泡ポリウレタンなどの多孔材料からなる。前述したように、インク着弾部84に着弾したインクは、インク着弾部84に形成された複数の溝に沿って収容部85に流されてインク吸収材86に導かれ、インク吸収材86に吸収される。
【0052】
[第1ガイド部材90、第2ガイド部材92]
図4に示されるように、第1ガイド部材90(本発明のガイド部材の一例)が、プラテン42よりも前方に設けられている。第1ガイド部材90の上面は、後方の端部が前方の端部よりも下方に位置する傾斜面91(本発明のガイド面の一例)である。つまり、第1ガイド部材90は、傾斜面91を有している。傾斜面91の後方の端部は、第2支持部81のインク着弾部84の上面よりも下方で、且つ、インク吸収材86よりも上方に位置している。傾斜面91は、後方の端部から前方の端部に向かうにつれて、第1排出ローラ対59による用紙Pの挟持位置に近づくように高くなる面である。
【0053】
図4に示されるように、第1ガイド部材90の前方の端部からは、第2ガイド部材92が延設されている。第2ガイド部材92は、傾斜面91の前方の端部から前方に向かって水平に延出する直線状の部材である。第1ガイド部材90、第2ガイド部材92は共に左右方向9の長さが用紙Pの左右方向9の長さよりも長く形成されている。第2ガイド部材92の上面は、上下方向7において、プラテン42の第1支持部80の上端、つまり上流リブ82の上端と同じ高さに位置する。プラテン42を通過した用紙Pの先端は、第1ガイド部材90、第2ガイド部材92によって第1排出ローラ対59による用紙Pの挟持位置D1に案内される。その後、第1排出ローラ対59によって第2排出ローラ対150に向けて搬送される用紙Pは、第2ガイド部材92に沿って第2排出ローラ対150による用紙Pの挟持位置D2に案内され、第2排出ローラ対150によって排紙トレイ21(図2参照)に排紙される。
【0054】
[凸部材100]
図2及び図4に示すように、前後方向8におけるプラテン42の第2支持部81と第2ガイド部材92の間には、凸部材100(本発明の凸部材の一例)が配置される。凸部材100は、記録部24により画像記録された用紙Pを下方から支持する部材であり、第1ガイド部材90の後方の端部から上方に向かって立設している。図4に示すように、凸部材100の上端の上下方向7における高さ位置は、第2支持部81の下流リブ83の上端における前方の端部と挟持位置D1とを結んだ仮想直線122よりも高く、第1支持部80の上流リブ82の上端から前後方向8に対して水平に延びる仮想直線121よりも低い。また、凸部材100の前後方向8における後方側の側面には、上方に行くほど前後方向8における前方側に向かい、凸部材100の上端に到達する傾斜面100aが形成されている。
【0055】
図5に示すように、凸部材100は、左右方向9において間隔を空けて複数配置されている。また、左右方向9において凸部材100が配置される範囲は、小サイズ用紙P1の左右方向9の長さMの範囲内であり、搬送路65を搬送される小サイズ用紙P1が通過する領域内に配置される。なお、凸部材100は、左右方向9において複数配置される構成ではなく、小サイズ用紙P1が通過する範囲内であれば、1つのみ配置される構成としてもよい。
【0056】
[当接部材70]
図2に示すように、搬送ローラ対58と記録ヘッド38との間には、当接部材70(本発明の当接部材の一例)が配置される。当接部材70は、前述したキャリッジ40を支持するガイドレールに取り付けられており、ばねなどの弾性部材(不図示)によって下方に付勢されている。図5に示すように、当接部材70は複数の当接部71(本発明の当接部の一例)を有しており、複数の当接部材70は、左右方向9において、プラテン42の上流リブ82の間に位置している。当接部材70が弾性部材によって下方に付勢されることにより、複数の当接部71はプラテン42の第1支持部80の基板部の上面に当接している。用紙Pが搬送路65を搬送され、当接部材70の当接部71とプラテン42の間に進入すると、当接部71は弾性部材の付勢力に反して用紙Pの厚さ分だけ上方に持ち上げられ、用紙Pを上方から下方に向かって押圧する。なお、図4及び図8図12では当接部材70を省略している。
【0057】
プラテン42の上流リブ82の高さは、用紙Pの厚さ分だけ上方に持ち上げられたときの当接部71よりも高く構成されている。したがって、プラテン42の上流リブ82に支持された用紙Pを当接部材70の当接部71が上方から押圧することで、用紙Pには、図6に示すように左右方向9に沿って凹凸が交互に繰り返されるような波形状が形成される。当接部材70の当接部71よりもプラテン42の上流リブ82の方が高く構成されていることにより、波形状のうち、プラテン42の上流リブ82によって支持される箇所が凸形状となり、当接部材70の当接部71が押圧する箇所が凹形状となる。
【0058】
図5に示すように、凸部材100は、左右方向9においてプラテン42の上流リブ82に対応した位置に配置されている。したがって、図7に示すように、凸部材100は、波形状が形成された用紙Pにおける凸形状の箇所を下方から支持可能な位置に配置される。これにより、複数の凸部材100も、複数の当接部71と協同して用紙Pに波形状を付与する。また、プラテン42の上流リブ82を通過した用紙Pの波形状の凸形状の箇所が下方に落ち込み、波形状が崩れてしまうことを抑制している。
【0059】
[小サイズ用紙P1の搬送動作]
図8は、小サイズ用紙P1の後端がプラテン42の第1支持部80を通過し、第1排出ローラ対59によって搬送される状態を示している。搬送ローラ対58によって搬送向き15に搬送される小サイズ用紙P1は、記録ヘッド38と対向するプラテン42上の領域内の所定位置である記録開始位置まで搬送されると、キャリッジ40が左右方向9への往復移動を始め、小サイズ用紙P1に対して画像記録を開始する。画像記録が開始されると、小サイズ用紙P1は搬送ローラ対58によって搬送向き15に送られながら記録ヘッド38によって所望の画像が形成されていき、先端がプラテン42と凸部材100の上空を通過すると第1ガイド部材90の傾斜面91に沿って更に搬送向き15に向かって搬送され、第1排出ローラ対59に挟持される。
【0060】
先端が第1排出ローラ対59に挟持された小サイズ用紙P1は、搬送ローラ対58と第1排出ローラ対59によって搬送され、後端が搬送ローラ対58の挟持位置を抜けると、第1排出ローラ対59のみによって搬送される。その後、第1排出ローラ対59によって搬送される小サイズ用紙P1の後端がプラテン42の第1支持部80を通過し、第2支持部81と対向する位置に到達すると、小サイズ用紙P1は、凸部材100によって下方から支持される。前述したように、第2支持部81の下流リブ83の上端及びインク着弾部84の上面は、第1支持部80の上流リブ82の上端よりも下方に位置する。そのため、小サイズ用紙P1は、後端が第1支持部80を通過すると、自重によって後端部が下方に垂れ下がる。ここで、第2排出ローラ対150による用紙Pの挟持位置D2と、第2支持部81の後端部との間の前後方向8の距離L(図8参照)は、小サイズ用紙P1の前後方向8における長さよりも大きく構成されている。そして、図8からも分かるように、第2支持部81から第2排出ローラ対150への搬送向き15はほぼ前後方向8であるため、第2排出ローラ対150による用紙Pの挟持位置D2と、第2支持部81の後端部との間の搬送向き15における距離も、小サイズ用紙P1の搬送向き15における長さよりも大きく構成されている。したがって、小サイズ用紙P1は、後端が第1支持部80を通過するときに第1排出ローラ対59のみに挟持された状態となる。第1排出ローラ対59と第2排出ローラ対150の2つに挟持された状態で後端が第1支持部80を通過するような小サイズ用紙P1よりも大きなサイズ(例えば普通サイズ用紙P2)の場合、2つの点で挟持されることによって先端側の姿勢は安定し、それにより用紙P全体の姿勢は変化しにくい。しかし、小サイズ用紙P1のように1点のみで挟持される場合、2点で挟持される場合に比べて先端の姿勢が不安定となるため、小サイズ用紙P1全体の姿勢が変化しやすくなる。このように、小サイズ用紙P1の後端は、自重に加えて、1点のみで挟持されることによる姿勢の不安定さによって下方に垂れ下がりやすくなる。
【0061】
下方に垂れ下がった小サイズ用紙P1の後端は、インク着弾部84や下流リブ83と接触する虞がある。上述したように、下流リブ83は、用紙Pがインク着弾部84に溜まったインクと接触しないように用紙Pを支持する。しかし、縁なし印刷が行われる際にノズル39から吐出されるインクは、インク着弾部84だけでなく、複数の下流リブ83にも付着する。よって、用紙Pは、複数の下流リブ83と接触することでインクによって汚れる虞がある。また。インク着弾部84には、記録ヘッド38により縁なし印刷が行われた際にノズル39から吐出されたインクが停留して、ある程度の量が溜まっている場合がある。したがって、垂れ下がった用紙Pの後端がインク着弾部84と接触すると、下流リブ83に接触する場合よりも、より一層インクによって汚れる虞がある。
【0062】
上述したように、前後方向8におけるプラテン42の第2支持部81と第2ガイド部材92の間には、凸部材100が配置される。また、左右方向9において凸部材100が配置される領域は、小サイズ用紙P1が通過する領域であるため、凸部材100は下方に垂れ下がった小サイズ用紙P1の後端を下方から支持する。このように凸部材100が小サイズ用紙P1の後端を下方から支持することにより、小サイズ用紙P1の後端が第2支持部81のインク着弾部84及び下流リブ83と接触することを抑制し、小サイズ用紙P1の後端がインクにより汚れることを抑制することができる。
【0063】
上述したように、凸部材100の上端の高さは、第1支持部80の上流リブ82の上端の高さよりも下方となるように構成しているため、第1支持部80の上流リブ82を通過した用紙Pの先端が凸部材100の前後方向8における後方側の側面と衝突することを回避するようにしている。また、凸部材100に傾斜面100aを形成したことにより、用紙Pの先端が凸部材100の前後方向8における後方側の側面と衝突したとしても、傾斜面100aが用紙Pの先端を凸部材100の上端に向けてガイドして、搬送の妨げとなることを抑制している。
【0064】
[普通サイズ用紙P2の搬送動作]
図9は、普通サイズ用紙P2の先端がプラテン42の第2支持部81を通過し、搬送ローラ対58によって搬送されている状態を示す。なお、図9は、小サイズ用紙P1よりも大きい普通サイズ用紙P2の左右方向9における両端側の状態を説明するもので、図5における一点鎖線Xにおける断面を示すため、凸部材100は図示されていない。また、普通サイズ用紙P2の左右方向9における長さは当接部材70の左右方向9における長さよりも長く(図5参照)、前後方向8における長さは第2排出ローラ対150による用紙Pの挟持位置D2と、第2支持部81の上面の後端部との間の前後方向8の距離L(図8参照)よりも長い。すなわち、第2排出ローラ対150による用紙Pの挟持位置D2と、第2支持部81の後端部との間の前後方向8の距離L(図8参照)は、普通サイズ用紙P2の前後方向8における長さよりも小さく構成されている。そして、図8からもわかるように、第2支持部81から第2排出ローラ対150への搬送向き15はほぼ前後方向8であるため。第2排出ローラ対150による用紙Pの挟持位置D2と、第2支持部81の後端部との間の搬送向き15における距離も、普通サイズ用紙P2の搬送向き15における長さよりも小さく構成されている。搬送ローラ対58によって搬送向き15に搬送される普通サイズ用紙P2は、記録ヘッド38と対向するプラテン42上の領域内の所定位置である記録開始位置まで搬送されると、キャリッジ40が左右方向9への往復移動を始め、普通サイズ用紙P2に対して画像記録を開始する。画像記録が開始されると、普通サイズ用紙P2は搬送ローラ対58によって搬送向き15に搬送されながら記録ヘッド38によって所望の画像が形成されていく。
【0065】
普通サイズ用紙P2は、記録ヘッド38のノズル39から吐出されるインクを吸収すると、インクの水分を吸収した上面側の紙繊維が伸びることによって上方に膨潤するように変形する。上述したように、普通サイズ用紙P2は、横目搬送されるため、その長辺に沿った繊維方向は左右方向9と平行である。したがって、膨潤した普通サイズ用紙P2は、搬送向き15の先端から後端側に向かうほど、(前後方向8における前方から後方に向かうほど)上方に膨れ上がるように変形するため、記録ヘッド38のノズル39と接触してインクにより汚れてしまう虞がある。このような、膨潤による用紙Pの変形を抑制するために、上述したように当接部材70の当接部71とプラテン42の上流リブ82によって用紙Pに波形状を付与し、用紙Pの姿勢が変形しにくいように用紙Pの剛性を高めている。
【0066】
ここで、図10に示すように、当接部材70の当接部71のうちの左右方向9の両端に位置する2つの当接部71は、中央側のその他の当接部71に比べて高い位置に配置されている。これは、例えば多量のインクを吸収した箇所が大きく変形することで局所的に波が大きくなった場合に、その変形量を左右方向9の両外側に逃がして波の大きさを均一にするためである。部分的に大きくなった波の変形量を左右方向9に逃がすためには、その変形分だけ用紙Pが左右方向9に伸び、全体の波形状を均一に均す必要があるが、左右方向9の両端の当接部71がその他の当接部71と同じ高さに位置すると、用紙Pの左右方向9の両外側への伸びを妨げるため、用紙Pが十分に左右方向9の両外側に伸びることができない。そこで、左右方向9における両端の当接部71をその他の当接部71よりも高く配置し、用紙Pから退避させることで用紙Pが左右方向9の両外側に向かって伸びることができ、波の大きさが均一となるようにしている。しかし、この構成により、普通サイズ用紙P2の左右方向9における両端側は、当接部材70の当接部71による下方への押え付けが中央側に比べて弱いため、インクを吸収した際に中央側に比べて上方に膨潤しやすくなる。
【0067】
図9に示すように、記録ヘッド38によりインクを吐出されながら搬送ローラ対58によって搬送される普通サイズ用紙P2は、先端がプラテン42の第2支持部81を通過すると、自重によって先端部が第1ガイド部材90の傾斜面91よりも上方の空間5に向かって垂れ下がる。図5に示すように、凸部材100は、左右方向9において小サイズ用紙P1が通過する範囲内に配置されるため、普通サイズ用紙P2の左右方向9における両端側は凸部材100に支持されることがなく、空間5に向かって垂れ下がることが許容される。上述したように、普通サイズ用紙P2の左右方向9の両端側は中央側に比べて上方に膨潤しやすく、ノズル39と接触して汚れる可能性が高いが、凸部材100を小サイズ用紙P1が通過する範囲内に制限して配置し、普通サイズ用紙P2の左右方向9の両端側に対応する位置に空間5を形成することで、普通サイズ用紙P2の左右方向9の両端側(普通サイズ用紙P2における、当接部71のうちの左右方向9の両端に位置する2つの当接部71に対応する領域)は、インクにより膨潤しても、空間5に向かって垂れ下がることで記録ヘッド38との距離を離すことができ、ノズル39と接触することを抑制することができる。
【0068】
上述したように、普通サイズ用紙P2の搬送向き15における長さは第2排出ローラ対150による用紙Pの挟持位置D2と、第2支持部81の上面の後端部との間の搬送向き15における距離よりも長いため、普通サイズ用紙P2の後端が第1支持部80を通過して第2支持部81と対向する位置に到達するとき、第1排出ローラ対59と第2排出ローラ対150の2つによって挟持される。第1排出ローラ対59のみによって挟持される小サイズ用紙P1に比べて、2点で挟持される普通サイズ用紙P2は、先端の姿勢が安定し、姿勢変化しにくいため、後端側が垂れ下がりにくい。
【0069】
ただし、自重による後端の垂れ下がりは生じるため、小サイズ用紙P1と同様、後端がインク着弾部84や下流リブ83と接触して、縁なし印刷時に打ち捨てられたインクにより汚れる虞はあるが、凸部材100が普通サイズ用紙P2の左右方向9における中央側を下方から支持するため、普通サイズ用紙P2の後端の垂れ下がりを抑制することができる。
【0070】
[実施形態の効果]
本実施形態によれば、プラテン42と第1排紙ローラ対59との間において、凸部材100が用紙Pの後端を支持可能である。また、左右方向9において、凸部材100は、小サイズ用紙P1が通過する領域内に配置される。これにより、垂れ下がった小サイズ用紙P1の後端がプラテン42のインク着弾部84及び下流リブ83と接触することを抑制し、小サイズ用紙P1の後端がインク着弾部84及び下流リブ83に付着したインクにより汚れることを抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態によれば、凸部材100は小サイズ用紙P1が通過する領域内にのみ配置されているため、小サイズ用紙P1よりも大きい普通サイズ用紙P2の左右方向9における両端は支持しない。これにより、インクを吸収して上方に膨潤した普通サイズ用紙P2の左右方向9における両端は、第1ガイド部材90の傾斜面91に向かって垂れ下がることができ、記録ヘッド38のノズル39と接触して汚れることを抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態によれば、第1ガイド部材90は、前方に向かって上方に傾斜する傾斜面91を有している。これにより、用紙Pを傾斜面91に沿って第1排出ローラ対59の挟持位置D1まで容易に案内することができる。
【0073】
また、本実施形態によれば、当接部材70の当接部71とプラテン42の上流リブ82とによって、用紙Pに左右方向7に沿った波形状が付与される。これにより、用紙Pの姿勢が安定し、用紙Pのインクを吸収することによる膨潤などの変形を抑制することができる。
【0074】
また、本実施形態によれば、凸部材100は、左右方向9において、プラテン42の上流リブ82に対応した位置、つまり、波形状における凸形状の箇所を支持する位置に配置される。これにより、複数の凸部材100も、複数の当接部71と協同して用紙Pに波形状を付与する。更に、用紙Pが当接部材70を抜けた後に凸形状の箇所が下方に下がって用紙Pの波形状が崩れてしまうことを抑制することができる。また、凸部材100は、左右方向9において複数配置されるため、小サイズ用紙P1を安定して支持することができる。
【0075】
[実施形態の変形例1]
上述した実施形態では、第1ガイド部材90の上面は、傾斜面91であった。しかし、用紙Pを挟持位置D1に案内するものであれば、第1ガイド部材90の上面は、傾斜面91である必要はなく、例えば、前方に向かって上方に湾曲する湾曲面であってよい。この場合、湾曲面が本発明のガイド面の一例である。
【0076】
[実施形態の変形例2]
上述した実施形態では、凸部材100の上端の上下方向7における高さ位置は、第2支持部81の下流リブ83の上面における前方の端部と第1排出ローラ対59による挟持位置D1とを結んだ仮想直線122より上方であり、第1支持部80の上流リブ82の上端から前後方向8に対して水平に延びる仮想直線121よりも下方であった。しかし、図11に示されるように、凸部材100の上端の上下方向7における高さ位置は、第2支持部81の下流リブ83の上端における後方の端部と挟持位置D1とを結んだ仮想直線123より上方であり、第1支持部80の上流リブ82の上端から前後方向8に対して水平に延びる仮想直線121よりも下方であってもよい。
【0077】
変形例2によれば、用紙Pは、後端が第1支持部80を通過し、第2支持部81と対向する位置に到達したときに、用紙Pの後端は、より高い位置において凸部材100と当接して支持されるため、用紙Pの後端が第2支持部81の下流リブ83及びインク着弾部84に付着したインクによって汚れることをより抑制することができる。
【0078】
[実施形態の変形例3]
上述した実施形態において、第1排出ローラ対59の挟持位置D1と、第2排出ローラ対150の挟持位置D2は、図12に示すように、D2の方が上下方向7における高さが低くなるような構成としてもよい。これにより、第1排出ローラ対59と第2排出ローラ対150の2つによって挟持された状態で後端がプラテン42の第2支持部81に到達する普通サイズ用紙P2は、2つの挟持位置に挟持された状態では後方に向かって上方に傾斜する姿勢となる。したがって、普通サイズ用紙P2は後端が上方に持ち上がるため、後端がプラテン42のインク着弾部84及び下流リブ83に接触して汚れる可能性を低減することができる。
【0079】
[符号の説明]
10・・・複合機(インクジェット記録装置)
P・・・用紙(シート)
P1・・・小サイズ用紙
P2・・・普通サイズ用紙
15・・・搬送向き(搬送方向)
24・・・記録部
42・・・プラテン42(支持部材)
59・・・第1排出ローラ対(第1ローラ対)
70・・・当接部材
82・・・上流リブ(支持リブ)
81・・・第2支持部(インク受け部)
90・・・第1ガイド部材(ガイド部材)
91・・・傾斜面(ガイド面)
100・・・凸部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12