(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。同一の部品および相当部品には同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0015】
(実施の形態1)
[構成]
図1は、実施の形態1に係る液体塗布装置1の構成の概略を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す液体塗布装置1の正面図である。液体塗布装置1は、
図1,2に示すように、ハウジング10と、連結部材20と、フィルタ40と、パイプ移動部材50と、パイプ60と、ノズル部80とを主に備えている。
【0016】
ハウジング10は、樹脂成型品である。ハウジング10は、本体部11を有している。本体部11には、連結部材20が連結されている。連結部材20は、シリンジ連結部21,22を有している。シリンジ31,33は、その内部に液体を貯留している容器である。シリンジ31,33は、先端部に細径のノズルを有している。シリンジ連結部21には、シリンジ31のノズルが連結されている。シリンジ連結部22には、シリンジ33のノズルが連結されている。シリンジ31,33は、シリンジホルダ35によって一体的に保持されている。
【0017】
連結部材20は、止め具23を有している。シリンジホルダ35は、貫通片36を有している。貫通片36は、止め具23に形成された貫通孔を貫通して、止め具23に連結されている。止め具23および貫通片36によって、連結部材20とシリンジホルダ35とが連結されており、これによりシリンジホルダ35に保持されたシリンジ31,33の連結部材20に対する位置決めがされている。
【0018】
シリンジ31の内部空間に、プランジャ32の先端部が挿通されている。プランジャ32は、シリンジ31に対して相対移動可能である。シリンジ33の内部空間に、プランジャ34の先端部が挿通されている。プランジャ34は、シリンジ33に対して相対移動可能である。プランジャ32,34の先端部には、図示しないガスケットが取り付けられている。ガスケットは、シリンジ31,33の内周面と密着して、シリンジ31,33の内部空間を液密に封止している。ガスケットは、シリンジ31,33内に貯留された液体が外部に漏出することを防ぐシール材として機能している。ガスケットは、シリンジ31,33の内周面に摺動可能に接触している。
【0019】
プランジャ32,34の、シリンジ31,33の外部に設けられた他端には、プランジャホルダ37が取り付けられている。プランジャホルダ37は、プランジャ32,34の両方に固定されている。プランジャ32,34は、プランジャホルダ37を介して、一体の構造物として形成されている。
【0020】
図2に示すように、ハウジング10の本体部11には、給気部16が固定されている。給気部16には、フィルタ40が連結されている。フィルタ40は、後述するフィルタ本体を収容するフィルタハウジング41と、フィルタハウジング41に固定された上流連結部43および下流連結部44とを有している。フィルタ40を通過する気体の流れ方向において、上流連結部43は、フィルタハウジング41よりも上流に配置されており、下流連結部44は、フィルタハウジング41よりも下流に配置されている。
【0021】
フィルタハウジング41は、たとえば円板状の形状を有している。上流連結部43と下流連結部44とは、円板状のフィルタハウジング41の成す円の中心に配置されており、フィルタハウジング41と同軸に形成されている。上流連結部43および下流連結部44は、板状のフィルタハウジング41の外表面に対して直立している。下流連結部44は、給気部16に連結している。
【0022】
上流連結部43には、コネクタ46が連結されている。コネクタ46にはまた、送気管48が連結されている。送気管48には、図示しない給気源が接続されている。給気源より供給される気体は、送気管48、フィルタ40、給気部16を順に経由して、ハウジング10の本体部11へ供給される。気体は、たとえば窒素ガスなどの不活性加圧ガスであってもよい。
【0023】
ハウジング10には、パイプ移動部材50が取り付けられている。パイプ移動部材50には、パイプ60が取り付けられている。パイプ60は、大径部61と、小径部66とを有している。パイプ60の小径部66よりもハウジング10の本体部11から離れる位置に、ノズル部80が配置されている。ノズル部80は、液体塗布装置1の最先端部に設けられている。
【0024】
実施の形態の液体塗布装置1は、シリンジ31,33内の液体を、所望の箇所に塗布可能である。液体はたとえば、生体接着剤である。液体塗布装置1は、生体の傷口または切開部などに液体を塗布するものであってもよい。生体接着剤は、二液混合型であってもよい。生体接着剤は、蛋白質の溶液と凝固因子の溶液とを含んでいてもよい。シリンジ31,33の一方に蛋白質の溶液が充填され、他方に凝固因子の溶液が充填されていてもよい。または生体接着剤は、一液型であってもよい。
【0025】
図3は、
図1に示す液体塗布装置1の縦断面図である。
図4は、パイプ移動部材50付近を拡大して示す、液体塗布装置1の縦断面図である。
図5は、ノズル部80付近を拡大して示す、液体塗布装置1の縦断面図である。
【0026】
図3に示すように、フィルタハウジング41内には、フィルタ本体42が収容されている。給気源から送気管48へ送られる気体は、フィルタ本体42を通過して、ハウジング10へ送られる。フィルタ40を通過する気体に不純物が含まれている場合に、フィルタ本体42は、当該不純物を気体から除去して、清浄な気体をハウジング10へ送る。
【0027】
図4に示すように、パイプ移動部材50は、中空円筒状の概略形状を有している。パイプ移動部材50は、樹脂成型品である。パイプ移動部材50は、外周面51と、内周面52とを有している。内周面52には、雌ねじが形成されている。
【0028】
パイプ移動部材50は、一方の端部である基端53と、基端53とは反対側の他方の端部である先端54とを有している。パイプ移動部材50の内部空間内に、ハウジング10の一部分が収容されている。ハウジング10は、本体部11から延出する延出部12を有している。延出部12は、パイプ移動部材50の基端53から先端54に亘って、パイプ移動部材50を貫通して延びている。延出部12は、パイプ移動部材50の内周面52の雌ねじ形状から離れて配置されている。
【0029】
延出部12は、略中空円筒状の形状を有している。延出部12の外周面から外方へ突出するように、環状突起13が形成されている。環状突起13は、本体部11から延出する延出部12の根元部に、設けられている。環状突起13は、本体部11と延出部12との境界部分に設けられている。環状突起13は、パイプ移動部材50の基端53と向き合っている。環状突起13は、パイプ移動部材50の基端53に当接可能である。環状突起13は、パイプ移動部材50が環状突起13を超えて本体部11へ向かって移動することを防止している。環状突起13は、略円筒状のパイプ移動部材50の軸方向における移動可能な範囲を規制している。
【0030】
延出部12の外周面から外方へ突出するように、環状小突起14が形成されている。環状小突起14は、略円筒状の延出部12の軸方向において、環状突起13から離れる位置に形成されている。環状小突起14は、環状突起13よりも、本体部11から離れる位置に形成されている。延出部12の外周面から突出する突出高さは、環状小突起14の方が環状突起13よりも小さい。
【0031】
環状突起13と環状小突起14との間の延出部12の外周面に沿って、パイプ移動部材50の環状突出部55が設けられている。環状突出部55は、略円筒状のパイプ移動部材50の軸方向において、基端53と先端54との間の、基端53により近い位置に設けられている。環状突出部55は、略円筒状のパイプ移動部材50の径方向において、内周面52に形成された雌ねじ形状よりも内径側に、配置されている。
【0032】
環状小突起14は、パイプ移動部材50の環状突出部55と向き合っている。環状小突起14は、パイプ移動部材50の環状突出部55に当接可能である。環状小突起14は、パイプ移動部材50が環状小突起14を超えて本体部11から離れて移動することを防止している。環状小突起14は、略円筒状のパイプ移動部材50の軸方向における移動可能な範囲を規制している。
【0033】
パイプ60は、中空筒状の形状を有しており、パイプ移動部材50と同軸に配置されている。パイプ60は、大径部61と、小径部66とを有している。大径部61と小径部66とは、一体に形成されている。大径部61は、樹脂成型品である。小径部66は、金属製である。パイプ60は、たとえばインサート成形によって、大径部61と小径部66とを一体化して成形されている。
【0034】
大径部61は、一方の端部である基端62と、基端62とは反対側の他方の端部である先端63とを有している。基端62は、パイプ移動部材50の内部に配置されている。先端63は、パイプ移動部材50の外部に配置されている。大径部61の、基端62の近傍の一部分は、パイプ移動部材50の内部空間内に収容されている。
【0035】
大径部61は、係合部65を有している。係合部65は、大径部61の外周面から外方に突出するように形成されている。係合部65は、大径部61の基端62に設けられている。係合部65は、パイプ移動部材50の内周面52に形成された雌ねじ形状と係合している。係合部65は、パイプ移動部材50に対して相対移動可能に、パイプ移動部材50の内周面52に係合している。パイプ60は、パイプ移動部材50に対して相対移動可能である。略円筒状のパイプ60は、パイプ移動部材50に対して、周方向に相対回転可能、かつ、軸方向に相対往復移動可能である。
【0036】
小径部66は、一方の端部である基端67と、基端67とは反対側の他方の端部である先端68とを有している。基端67は、大径部61の内部に配置されている。先端68は、大径部61の外部に配置されている。小径部66の、基端67の近傍の一部分が、大径部61に固定されている。これにより大径部61と小径部66とは、一体に形成されている。
【0037】
小径部66の先端68は、
図5に示すように、ノズル部80と向き合っている。小径部66の先端68は、ノズル部80に当接可能である。
【0038】
液体塗布装置1は、チューブ70を備えている。チューブ70は、可撓性を有する材料により形成されている。チューブ70は、樹脂成型品である。チューブ70は、透明な材料により形成されている。
【0039】
チューブ70の少なくとも一部分は、パイプ60内に収容されている。チューブ70は、パイプ60の内部に挿通されている。チューブ70は、パイプ60の小径部66の基端67から先端68までの全体に亘って、小径部66を貫通して配置されている。チューブ70は、一方の端部である先端71と、先端71とは反対側の他方の端部である基端72とを有している。先端71は、ノズル部80の内部に配置されている。ノズル部80は、チューブ70の先端71に連結されている。基端72は、ハウジング10の延出部12の先端部分に連結されている。基端72は、パイプ60の大径部61の内部空間内に配置されている。
【0040】
図5に示すように、ノズル部80は、一方の端部である先端部81と、先端部81とは反対側の他方の端部である基端部82とを有している。
図5に示す配置において、基端部82は、パイプ60の小径部66の先端68と向き合っており、先端68に当接している。基端部82において、ノズル部80の内部空間は、外部と連通している。チューブ70は、基端部82に形成された開口を経由して、ノズル部80内に挿通されている。チューブ70の先端71は、ノズル部80の内部に配置されている。
【0041】
ノズル部80は、樹脂成型品である。ノズル部80は、ノズル本体83と、ノズル本体83を収容するノズルケース84とを有している。先端部81には、貫通孔が形成されている。ノズル本体83は、先端部81に形成された貫通孔を貫通して、一部がノズルケース84の内部に配置されており、一部が先端部81から外部に突出して配置されている。ノズルケース84から突出するノズル本体83の最先端部分に、開口85が形成されている。
【0042】
ノズルケース84の内周面には、複数のリブ86が形成されている。リブ86は、ノズルケース84の円筒状の内周面に対して、垂直に突き出している。ノズル本体83は、複数のリブ86によって挟まれて、ノズルケース84内に支持されている。
【0043】
ノズル本体83には、液体供給管39が連結されている。液体供給管39は、その先端がノズル本体83に固定されており、チューブ70内を通り、ハウジング10内にまで延びている。液体供給管39は、チューブ70を貫通して延びている。ノズル部80にはさらに、芯材90が固定されている。芯材90は、たとえば金属製である。芯材90は、たとえば弾性を有するワイヤである。
【0044】
芯材90は、ノズル部80に固定された一方の端部である一端91と、一端とは反対側の他方の端部である他端とを有している。芯材90は、ノズル部80から突出して、チューブ70内に挿通されている。芯材90は、チューブ70を貫通し、さらにハウジング10の延出部12を貫通して、ハウジング10の本体部11内にまで延びている。芯材90の他端は、本体部11内に配置されている。
【0045】
図6は、液体塗布装置1のハウジング10の本体部11付近を平面的に見た部分断面図である。明確化のため、
図6では、ハウジング10、連結部材20、液体供給管38,39および芯材90のみが図示されており、液体塗布装置1の他の構成は図示を省略されている。
【0046】
液体塗布装置は、2本の液体供給管38,39を有している。連結部材20は、管連結部25,26を有している。管連結部25,26は、互いに平行に延びている。管連結部25は、中空に形成されており、シリンジ連結部21と同軸に設けられている。管連結部25の内部空間は、シリンジ連結部21の内部空間と連通している。管連結部26は、中空に形成されており、シリンジ連結部22と同軸に設けられている。管連結部26の内部空間は、シリンジ連結部22の内部空間と連通している。
【0047】
液体供給管38の基端は、連結部材20の管連結部25に連結されている。液体供給管39の基端は、連結部材20の管連結部26に連結されている。液体供給管38,39の先端は、ノズル本体83に連結されている。
【0048】
連結部材20は、芯材固定部24を有している。芯材固定部24は、2つの管連結部25,26の間に配置されている。芯材固定部24は、管連結部25,26と平行に延びている。芯材固定部24には、有底の収容空間が内部に形成されている。この収容空間に、芯材90が挿通されている。芯材90は、芯材固定部24によって保持されている。芯材90は、芯材固定部24に固定されている。
図6に示す芯材90の他端92は、芯材固定部24に固定されている。芯材90の他端92は、ハウジング10の本体部11内に配置されている。液体塗布装置1を平面視した場合、芯材90は2つの液体供給管38,39の間に配置されている。
【0049】
液体供給管38は、上述した液体供給管39と同様に、その先端がノズル本体83に固定されており、チューブ70内を通り、ハウジング10内にまで延びている。液体供給管38は、チューブ70を貫通して延びている。液体供給管38,39は、その回りをチューブ70で覆われている。
【0050】
[パイプ60の移動と芯材90の湾曲]
図7は、
図2に示す液体塗布装置1の、パイプ60を移動させた状態を示す正面図である。
図8は、
図7に示す液体塗布装置1の、パイプ移動部材50付近を拡大して示す縦断面図である。
図9は、
図7に示す液体塗布装置1の、ノズル部80付近を拡大して示す縦断面図である。
【0051】
図1〜5に示す配置と比較して、
図7〜9では、パイプ60の位置が変更されている。
図8に示すように、パイプ60の大径部61は、パイプ移動部材50の先端54から基端53へ向かって、パイプ移動部材50に対して相対移動している。
図4に示す配置では、大径部61の基端62に設けられた係合部65は、パイプ移動部材50の内周面52に形成された雌ねじの、先端54に近い端部に存在している。これに対して、
図8に示す配置では、係合部65は、基端53に近いねじ溝内に存在している。
【0052】
このパイプ60の相対移動は、パイプ移動部材50を回転させることにより、行なわれる。パイプ移動部材50は軸回りに回転可能であり、他方、パイプ60は軸回りに回転不能である。パイプ移動部材50を回転させることにより、パイプ移動部材50の内周面52に形成された雌ねじの螺旋状のねじ溝に沿って、係合部65がパイプ移動部材50の軸方向に、パイプ移動部材50に対して相対移動する。パイプ移動部材50を一方の方向に回転すると、パイプ60はハウジング10の本体部11に近づく方向に移動し、パイプ移動部材50を他方の方向に回転すると、パイプ60はハウジング10の本体部11から離れる方向に移動する。パイプ移動部材50は、パイプ60を、チューブ70の延在方向に、チューブ70に対して相対往復移動させる力を、パイプ60に対して作用する。
【0053】
図1〜5に示す配置では、チューブ70は、パイプ60の内部に存在している。パイプ60の大径部61と小径部66とが一体として、大径部61がパイプ移動部材50の内部に収容される方向に移動することにより、パイプ60はチューブ70に対して相対移動する。このとき、
図7,9に示すように、チューブ70の一部がパイプ60に覆われなくなり、チューブ70の一部が外部に露出する。
【0054】
芯材90は、ノズル部80に固定された一端91の近傍に、湾曲部93を有している。湾曲部93は、予め湾曲形状に形成されている。湾曲部93は、重力以外の外力が負荷されていない状態で、湾曲した形状を有している。湾曲部93は、弾性変形可能に形成されている。パイプ60の剛性は、湾曲部93の剛性よりも大きい。そのため湾曲部93は、パイプ60の内部に収容されている間は、直線状に変形しており、直管状のパイプ60に沿って延びている。湾曲部93がパイプ60の外部に突き出ると、湾曲部93は、予め形成された湾曲形状に変形する。
【0055】
湾曲部93は、弾性変形が容易に可能な金属材料製であり、たとえば超弾性合金製である。芯材90の全部が超弾性合金製であってもよい。または、超弾性合金で形成された湾曲部93を、他の金属材料で形成された他の部分と接合することにより、芯材90を形成してもよい。金属材料に替えて、芯材90を樹脂材料などの他の材料で形成してもよい。芯材90は、チューブ70の内部空間を芯材90が塞ぐことのないように、液体供給管38,39よりも細径に形成されている。
【0056】
チューブ70の剛性は、湾曲部93の剛性以下である。チューブ70は、湾曲部93よりも容易に変形する。そのため、湾曲部93が予め形成された湾曲形状に変形することにより、
図9に示すように、チューブ70も湾曲部93に追随して湾曲する。チューブ70は、湾曲部73を有している。液体供給管38,39も、チューブ70と同様に、湾曲部93に追随して湾曲する。
【0057】
図4,8を比較して、パイプ60の大径部61に設けられた係合部65は、パイプ移動部材50の先端54に最も近く基端53から最も離れる位置から、基端53に最も近く先端54から最も離れる位置へ、移動している。
図7〜9に示すパイプ60は、その最大の移動可能距離分だけ、移動している。
図9に示すチューブ70、芯材90および液体供給管38は、これらがパイプ60から最も長く突き出ている位置に、配置されている。
【0058】
図9に示す配置において、芯材90は、その一端91がノズル部80に固定されており、ノズル部80から突出してチューブ70内を延びる部分を有している。芯材90はさらに、パイプ60の内部を延びる部分を有している。チューブ70内を延びる芯材90の長さは、チューブ70の延在方向におけるパイプ60の移動可能距離の最大値よりも大きい。芯材90は、チューブ70を貫通して延びている。
【0059】
図9に示す配置において、予め湾曲形状に形成された湾曲部93は、その全体がチューブ70の外部に配置されている。湾曲部93の延在長さは、チューブ70の延在方向におけるパイプ60の移動可能距離の最大値に、略等しい。湾曲部93の延在長さは、パイプ60の移動可能距離の最大値と厳密に等しくてもよく、または、パイプ60の移動可能距離の最大値と同一ではないがパイプ60の移動可能距離に対して一定の範囲内に収まっていてもよい。湾曲部93の延在長さは、パイプ60の移動可能距離の最大値に対してプラスマイナス5%以内であってもよい。湾曲部93の延在長さは、パイプ60の移動可能距離の最大値の95%以上105%以下の長さであってもよい。
【0060】
湾曲部93は、四分円の形状に、予め形成されている。芯材90の一端91の近傍の、ノズル部80内に収容された直線状部分が延びる方向は、パイプ60の小径部66に収容されている部分が延びる方向と、略直交している。当該直線状部分が延びる方向は、パイプ60の小径部66の延びる方向と、略直交している。当該直線状部分が延びる方向は、パイプ60の小径部66の軸方向と、略直交している。ノズル本体83に形成された開口85は、パイプ60の軸方向に略直交する方向に向いている。
【0061】
ノズル部80において芯材90は、液体供給管38,39が連結されているノズル本体83よりも、湾曲部93の湾曲の内側に配置されている。芯材90は、液体供給管38,39よりも、湾曲部93の湾曲の内側に配置されている。
【0062】
[液体塗布装置1の動作]
以上の構成を備えている液体塗布装置1を用いて二液混合型の生体接着剤を生体の所望の箇所に塗布する場合には、液体塗布装置1を使用する使用者は、ハウジング10および/またはパイプ移動部材50を手に持って、ノズル部80およびパイプ60を生体内に挿し込む。
【0063】
ノズル部80が生体の所望の箇所に到達すると、液体塗布装置1を使用する使用者は、パイプ移動部材50を回転させる。パイプ60がチューブ70に対して相対移動し、パイプ60の大径部61の一部がパイプ移動部材50内に格納されるとともに、芯材90の湾曲部93の少なくとも一部がパイプ60の外部に突出する。湾曲部93は、最大で90°折れ曲がる形状に予め形成されているが、パイプ60を移動させる距離を適宜調整することにより、湾曲部93の折れ曲がり角度が調整される。液体塗布装置1の最先端部に設けられたノズル部80の開口85が、生体の所望の箇所に向くように、パイプ60の移動距離が調整される。
【0064】
開口85が所望の箇所を向くようにノズル部80を配置した後に、液体塗布装置1の使用者は、プランジャホルダ37に手指を押し当てて、プランジャ32,34を同時にシリンジ31,33内に押し込む。
【0065】
連結部材20のシリンジ連結部21に連結されたシリンジ31内の液体は、プランジャ32をシリンジ31内に押し込むことにより、シリンジ31から流出する。その後液体は、連結部材20のシリンジ連結部21および管連結部25、ならびに液体供給管38を順に経由して流れる。
【0066】
連結部材20のシリンジ連結部22に連結されたシリンジ33内の液体は、プランジャ34をシリンジ33内に押し込むことにより、シリンジ33から流出する。その後液体は、連結部材20のシリンジ連結部22および管連結部26、ならびに液体供給管39を順に経由して流れる。
【0067】
液体は、チューブ70の先端71へ向けてチューブ70の内部の液体供給管38,39を通過して、ノズル本体83に到達する。さらに、給気源からハウジング10内へ供給される気体が、ハウジング10からチューブ70の内部空間を経由して、ノズル部80へ供給される。ノズル本体83に到達した液体は、開口85から流出し、気体によって微粒化されて、生体の所望の箇所へ噴霧される。このようにして、液体塗布装置1を用いて、対象の箇所に液体が塗布される。
【0068】
液体の塗布が完了すると、液体塗布装置1の使用者は、パイプ移動部材50を逆方向に回転させる。これにより、パイプ60をチューブ70に対して逆向きに相対移動させ、パイプ60の外部に突出していた湾曲部93を、パイプ60内に収容する。この状態で、パイプ60およびノズル部80が、生体から抜き取られる。
【0069】
[作用・効果]
上述した説明と一部重複する記載もあるが、本実施の形態の特徴的な構成および作用効果についてまとめて説明すると、以下の通りである。
【0070】
本実施の形態の液体塗布装置1は、
図4,5に示すように、パイプ60を備えている。パイプ60の内部に、チューブ70が挿通されている。
図2,7に示すように、パイプ60は、チューブ70の延在方向に、チューブ70に対して相対移動可能である。液体塗布装置1はまた、芯材90を備えている。芯材90は、チューブ70内に挿通されている。芯材90は、
図5,9に示すように、一端91を有し、一端91はノズル部80に固定されている。芯材90は、
図9に示すように、一端91の近傍に、湾曲部93を有している。湾曲部93は、予め湾曲形状に形成されており、弾性変形可能である。
【0071】
液体塗布装置1を所望の箇所へ移動する間は、芯材90をパイプ60の内部に収容する。予め湾曲形状に形成された芯材90は、パイプ60の内部で弾性変形しており、パイプ60に沿って延在している。そのため、芯材90が液体塗布装置1の移動の妨げとなることがなく、液体塗布装置1の所望の箇所への移動が容易になる。液体塗布装置1が所望の箇所に到達した後に、パイプ60をチューブ70に対して相対移動させ、チューブ70の一部を露出させる。このとき芯材90が元の湾曲形状に弾性変形することにより、ノズル部80を所望の箇所に向けて配置することができる。したがって、ノズル部80から液体を噴霧させて、液体を所望の箇所に塗布することができる。
【0072】
予め湾曲形状に形成された芯材90をチューブ70内に挿通する簡単な構成で、ノズル部80を所望の箇所に向けて配置することが可能である。従来の装置のように、ワイヤを引っ張る操作をする必要がなく、ワイヤの断線の可能性を排除できる。したがって、簡単かつ信頼性の高い構造の液体塗布装置1を実現することができる。
【0073】
ノズル部80の開口85の向きを変えるために作用する力は、芯材90が湾曲形状に復元しようとする力のみである。液体塗布装置1を生体内で使用する場合に、生体に過剰な力が作用することがないため、液体塗布装置1によって生体が傷つけられることが防止されている。
【0074】
また
図9に示すように、芯材90の、ノズル部80から突出してチューブ70内を延びる長さは、チューブ70の延在方向におけるパイプ60の移動可能距離よりも大きい。パイプ60をチューブ70に対して最大限相対移動したときにも、芯材90の他端92がパイプ60の外部へ移動することがない。これにより、パイプ60を移動してチューブ70をパイプ60内に収容しようとするとき、チューブ70は芯材90に沿ってパイプ60の内部に移動する。したがって、チューブ70をパイプ60に対してより円滑に相対往復移動させることができる。
【0075】
また
図3〜5に示すように、芯材90は、チューブ70を貫通して延びている。このようにすれば、芯材90の長さをパイプ60の移動可能距離よりも大きくする構成を、確実に実現することができる。
【0076】
また
図1に示すように、液体塗布装置1は、連結部材20をさらに備えている。連結部材20には、液体を内部に貯留するシリンジ31,33が連結されている。
図6に示すように、芯材90は、一端91と反対側の他端92を有している。他端92は、連結部材20に固定されている。このようにすれば、芯材90の一端91と他端92との両方が固定されるので、チューブ70の内部における芯材90の捩れおよび絡まりを防止できる。したがって、チューブ70をパイプ60に対して、芯材90に沿わせてより円滑に相対移動させることができる。
【0077】
また
図9に示すように、湾曲部93の延在長さは、チューブ70の延在方向におけるパイプ60の移動可能距離に略等しい。このようにすれば、パイプ60をチューブ70に対して最大限に相対移動することで、湾曲部93の略全体をパイプ60から突出させることができる。したがって、ノズル部80を所望の箇所に向けて配置することが、より容易になる。なお、湾曲部93の延在長さよりもパイプ60の移動可能距離が長ければ、先端68が基端部82に負荷を加え、先端71とノズル部80との接着が外れるおそれがある。
【0078】
また
図2,7に示すように、液体塗布装置1は、パイプ移動部材50をさらに備えている。パイプ移動部材50は、パイプ60に対して、パイプ60をチューブ70に対して相対移動させる力を作用する。このような構成によれば、液体塗布装置1の使用者は、パイプ移動部材50を操作することにより、パイプ60をチューブ70に対して相対移動させることができる。パイプ移動部材50が使用者の手元に設けられていることにより、使用者は、パイプ移動部材50をより容易に操作することができる。
【0079】
また
図4,8に示すように、パイプ移動部材50は、パイプ60と同軸の筒状の形状を有している。パイプ移動部材50は、内周面52を有しており、内周面52には雌ねじが形成されている。パイプ移動部材50は、軸回りに回転可能である。パイプ60は、パイプ移動部材50の雌ねじと係合する係合部65を有している。このようにすれば、パイプ移動部材50を回転させる簡便な操作により、ねじ作用によって係合部65を雌ねじのねじ溝に沿って移動させて、パイプ60をチューブ70に対して相対移動させることができる。したがって、パイプ移動部材50を、簡単な構成で実現することができる。パイプ移動部材50の回転数を調整することにより、芯材90がパイプ60から突出する長さを精度よく調節できるので、ノズル部80の角度を細かく調整することができる。
【0080】
(実施の形態2)
図10は、実施の形態2に係る液体塗布装置1の構成の概略を示す斜視図である。
図11は、
図10に示す液体塗布装置1の正面図である。実施の形態1で説明した液体塗布装置1は、気体を用いて液体を噴霧して所望の箇所に液体を塗布するガス式の液体塗布装置である。実施の形態2の液体塗布装置1は、気体を用いずに液体を塗布するノンガス式の液体塗布装置である。
【0081】
実施の形態2の液体塗布装置1では、
図10,11に示すように、ハウジング10は給気部を有していない。ハウジング10に送気管は接続されておらず、給気源からハウジング10内に気体が供給されることはない。実施の形態2の液体塗布装置1では、プランジャ32,34をシリンジ31,33内に押し込む力を動力として、ノズル部80の先端から液体が吐出される。
【0082】
ノンガス式である実施の形態2の液体塗布装置1においても、実施の形態1と同様のパイプ60および芯材90を備えることにより、簡単かつ信頼性の高い構造で、液体を所望の箇所に塗布することが可能な、液体塗布装置1を実現することができる。
【0083】
以上のように各実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。