(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記酸化物ガラスおよび前記酸化物ガラスセラミックスは、酸化ゲルマニウム、酸化ケイ素、酸化ホウ素および酸化リンのうちの少なくとも1種と、酸化リチウムとを含む請求項8に記載の全固体電池。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本技術の実施形態、実施例および応用例について以下の順序で説明する。
1 第1の実施形態(全固体電池の例)
2 第2の実施形態(全固体電池の例)
3 実施例
4 応用例
【0017】
<1 第1の実施形態>
[電池の構成]
本技術の第1の実施形態に係る電池は、いわゆるバルク型全固体電池であり、
図1A、1B、2に示すように、第1端面11SAと、第1端面11SAとは反対側の第2端面11SBとを有する薄板状の外装電池素子11と、第1端面11SAに設けられた正極端子12と、第2端面11SBに設けられた負極端子13とを備える。第1の実施形態では、外装電池素子11の主面が四角形を有する場合について説明するが、外装電池素子11の主面の形状はこれに限定されるものではない。
【0018】
この電池は、電極反応物質であるLiの授受により電池容量が繰り返して得られる二次電池であり、リチウムイオンの吸蔵放出により負極の容量が得られるリチウムイオン二次電池であってもよいし、リチウム金属の析出溶解により負極の容量が得られるリチウム金属二次電池であってもよい。
【0019】
(正極、負極端子)
正極、負極端子12、13は、導電材料を含んでいる。導電材料は、例えば、導電性粒子の粉末を含んでいる。導電性粒子は焼結されていてもよい。正極、負極端子12、13は、必要に応じて、ガラスまたはガラスセラミックスをさらに含んでいてもよい。ガラスまたはガラスセラミックスは焼結されていてもよい。
【0020】
正極、負極端子12、13に含まれるガラスのガラス転移温度は、外装材14の焼結温度以下であることが好ましい。上記ガラス転移温度が外装材14の焼結温度以下であると、外装材14を焼結する際に、正極、負極端子12、13も同時に焼結することができる。
【0021】
導電性粒子の形状としては、例えば、球状、楕円体状、針状、板状、鱗片状、チューブ状、ワイヤー状、棒状(ロッド状)または不定形状などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。なお、上記形状の粒子を2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0022】
導電材料は、例えば、金属材料、金属酸化物材料および炭素材料のうちの少なくとも1種である。具体的には、導電材料は、例えば、金属粒子、金属酸化物粒子および炭素粒子のうちの少なくとも1種の導電性粒子を含んでいる。ここで、金属には、半金属が含まれるものと定義する。金属材料としては、例えば、Ag(銀)、Pt(白金)、Au(金)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Pd(パラジウム)、Al(アルミニウム)およびFe(鉄)のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0023】
金属酸化物材料としては、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化亜鉛、酸化インジウム、アンチモン添加酸化錫、フッ素添加酸化錫、アルミニウム添加酸化亜鉛、ガリウム添加酸化亜鉛、シリコン添加酸化亜鉛、酸化亜鉛−酸化錫系、酸化インジウム−酸化錫系または酸化亜鉛−酸化インジウム−酸化マグネシウム系などを含むものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0024】
炭素材料としては、例えば、カーボンブラック、ポーラスカーボン、炭素繊維、フラーレン、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンマイクロコイルまたはナノホーンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。ガラスは、例えば酸化物ガラスである。ガラスセラミックスは、例えば酸化物ガラスセラミックスである。
【0025】
(外装電池素子)
外装電池素子11は、
図1A、1B、2に示すように、積層型の電池素子20と、電池素子20の表面を覆う外装材14とを備える。
【0026】
(電池素子)
電池素子20は、2層構造の正極層21と、単層構造の負極層22と、正極層21と負極層22との間に設けられた固体電解質層23とを備える積層体である。正極層21は、正極集電層21Aと、正極集電層21Aの両主面のうち、負極層22と対向する側の主面に設けられた正極活物質層21Bとを備える。
【0027】
(外装材)
外装材14は、
図1B、2に示すように、正極集電層21Aの一端が第1端面11SAから露出し、負極層22の一端が第2端面11SBから露出し、固体電解質層23の周縁部が外装電池素子11の全端面から露出するように、電池素子20の表面を覆っている。なお、外装材14が、固体電解質層23の周縁部が外装電池素子11の全端面から露出しないように、電池素子20の表面を覆っていてもよい。
【0028】
外装材14は、酸化物ガラスまたは酸化物ガラスセラミックスを含んでいる。このような材料を含む外装材14で電池素子20の表面を覆うことで、電池素子20への水分透過を抑制することができる。したがって、全固体電池の大気安定性を向上することができる。
【0029】
外装材14が結晶粒子をさらに含んでいてもよい。外装材14が結晶粒子をさらに含む場合には、外装材14の焼成工程(焼成後冷却時など)において外装材14の収縮を抑制し、電池素子20と外装材14との収縮率の違いを低減することができる。したがって、外装材14の焼成工程において外装材14が歪み割れてしまうことを抑制できる。
【0030】
酸化物ガラスおよび酸化物ガラスセラミックスは、例えば、B(ホウ素)、Bi(ビスマス)、Te(テルル)、P(リン)、V(バナジウム)、Sn(スズ)、Pb(鉛)およびSi(ケイ素)のうちの少なくとも1種を含んでいる。より具体的には、B、Bi、Te、P、V、Sn、PbおよびSiのうちの少なくとも1種を含む酸化物である。
【0031】
外装材14が、固体電解質を含んでいてもよい。固体電解質としては、固体電解質層23に含まれる固体電解質と同様のものを例示することができる。なお、固体電解質層23に含まれる固体電解質については後述する。固体電解質層23と外装材14とに含まれる固体電解質の組成(材料の種類)または組成比は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0032】
結晶粒子は、金属酸化物、金属窒化物、および金属炭化物の少なくとも1種を含んでいる。ここで、金属には、半金属が含まれるものと定義する。より具体的には、結晶粒子は、Al
2O
3(酸化アルミニウム:アルミナ)、SiO
2(酸化ケイ素:石英)、SiN(窒化ケイ素)、AlN(窒化アルミニウム)およびSiC(炭化ケイ素)のうちの少なくとも1種を含んでいる。
【0033】
外装材14の水分透過率は、全固体電池の大気安定性を向上する観点から、好ましくは1g/m
2/day以下、より好ましくは0.75g/m
2/day以下、さらにより好ましくは0.5g/m
2/day以下である。上記の外装材14の水分透過率は以下のようにして求められる。まず、イオンミリングや研磨などにより、全固体電池素子から外装材14の一部を矩形の板状の小片として取り出す。次に、外装材14の水蒸気透過率(23℃、90%RH)をJIS K7129-C(ISO 15106-4)に準拠して測定する。
【0034】
外装材14のLiイオン伝導率は、全固体電池の自己放電を抑制する観点から、1×10
-8S/cm以下であることが好ましい。外装材14のLiイオン伝導率は、交流インピーダンス法により、以下のようにして求められる。まず、イオンミリングや研磨などにより、全固体電池から外装材14の一部を矩形の板状の小片として取り出す。次に、取り出した小片の両端部に金(Au)からなる電極を形成してサンプルを作製する。次に、インピーダンス測定装置(東洋テクニカ製)を用いて、室温(25℃)にてサンプルに交流インピーダンス測定(周波数:10
+6Hz〜10
-1Hz、電圧:100mV、1000mV)を行い、コール−コールプロットを作成する。続いて、このコール−コールプロットからイオン伝導率を求める。
【0035】
外装材14の電気伝導率(電子伝導率)は、全固体電池の自己放電を抑制する観点から、1×10
-8S/cm以下であることが好ましい。上記の外装材14の電気伝導率は以下のようにして求められる。まず、上記のLiイオン伝導率の測定方法と同様にして、サンプルを作製する。次に、作製したサンプルを用いて、2端子法により室温(25℃)で電気伝導率を求める。
【0036】
外装材14の平均厚さは、全固体電池のエネルギー密度を向上する観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。上記の外装材14の平均厚さは以下のようにして求められる。まず、イオンミリングなどにより外装材14の断面を作製し、断面SEM(Scanning Electron Microscope)像を撮影する。次に、この断面SEM像から、10点のポイントを無作為に選び出して、それぞれのポイントで外装材14の厚みを測定し、これらの測定値を単純に平均(算術平均)して外装材14の平均厚みを求める。
【0037】
(固体電解質層)
固体電解質層23は、固体電解質を含んでいる。固体電解質は、リチウムイオン伝導体である酸化物ガラスおよび酸化物ガラスセラミックスのうちの少なくとも1種であり、Liイオン伝導率の向上の観点からすると、酸化物ガラスセラミックスであることが好ましい。固体電解質が酸化物ガラスおよび酸化物ガラスセラミックスのうちの少なくとも1種であると、大気(水分)に対する固体電解質層23の安定性を向上できる。固体電解質層23は、例えば、固体電解質層前駆体としてのグリーンシートの焼結体である。
【0038】
ここで、ガラスとは、X線回折や電子線回折等においてハローが観測されるなど、結晶学的に非晶質であるものをいう。ガラスセラミックス(結晶化ガラス)とは、X線回折や電子線回折等においてピークおよびハローが観測されるなど、結晶学的に非晶質と結晶質とが混在しているものをいう。
【0039】
固体電解質のLiイオン伝導率は、電池性能の向上の観点から、10
-7S/cm以上であることが好ましい。固体電解質のLiイオン伝導率は、イオンミリングや研磨などにより、全固体電池素子から固体電解質層23を取り出し、これを用いて測定サンプルを作製すること以外は、上述の外装材14のLiイオン伝導率の測定方法と同様にして求められる。
【0040】
固体電解質層23に含まれる固体電解質は、焼結している。固体電解質である酸化物ガラスおよび酸化物ガラスセラミックスの焼結温度は、好ましくは550℃以下、より好ましくは300℃以上550℃以下、更により好ましくは300℃以上500℃以下である。
【0041】
焼結温度が550℃以下であると、焼結工程において炭素材料の焼失が抑制されるので、負極活物質として炭素材料を用いることが可能となる。したがって、電池のエネルギー密度を更に向上できる。また、正極活物質層21Bが導電剤を含む場合、その導電剤として炭素材料を用いることができる。よって、正極活物質層21Bに良好な電子伝導パスを形成し、正極活物質層21Bの伝導性を向上できる。負極層22が導電剤を含む場合にも、その導電剤として炭素材料を用いることができるので、負極層22の伝導性を向上できる。
【0042】
また、焼結温度が550℃以下であると、焼結工程において固体電解質と電極活物質とが反応して、不働態などの副生成物が形成されることを抑制できる。したがって、電池特性の低下を抑制できる。また、焼結温度が550℃以下という低温であると、電極活物質の種類の選択幅が広がるので、電池設計の自由度を向上できる。
【0043】
一方、焼結温度が300℃以上であると、焼結工程において、電極前駆体および/または固体電解質層前駆体に含まれる、アクリル樹脂などの一般的な有機結着剤を焼失させることができる。
【0044】
酸化物ガラスおよび酸化物ガラスセラミックスはそれぞれ、Li含有の酸化物ガラスおよびLi含有の酸化物ガラスセラミックスである。Li含有の酸化物ガラスおよびLi含有の酸化物ガラスセラミックスは、焼結温度が550℃以下であり、高い熱収縮率を有し、流動性にも富むものが好ましい。これは以下のような効果が得られるからである。すなわち、固体電解質層23と正極活物質層21Bとの反応および固体電解質層23と負極層22との反応を抑制することができる。また、正極活物質層21Bと固体電解質層23の間、および負極層22と固体電解質層23の間に良好な界面を形成し、正極活物質層21Bと固体電解質層23の間、および負極層22と固体電解質層23の間の界面抵抗を低減できる。
【0045】
酸化物ガラスおよび酸化物ガラスセラミックスとしては、Ge(ゲルマニウム)、Si(ケイ素)、B(ホウ素)およびP(リン)のうちの少なくとも1種と、Li(リチウム)と、O(酸素)とを含むものが好ましく、Si、B、LiおよびOを含むものがより好ましい。具体的には、酸化ゲルマニウム(GeO
2)、酸化ケイ素(SiO
2)、酸化ホウ素(B
2O
3)および酸化リン(P
2O
5)のうちの少なくとも1種と、酸化リチウム(Li
2O)とを含むものが好ましく、SiO
2、B
2O
3およびLi
2Oを含むものがより好ましい。上記のようにGe、Si、BおよびPのうちの少なくとも1種と、Liと、Oとを含む酸化物ガラスおよび酸化物ガラスセラミックスは、300℃以上550℃以下の焼結温度を有し、高い熱収縮率を有し、流動性にも富んでいるため、界面抵抗の低減や電池のエネルギー密度の向上などの観点から、有利である。
【0046】
Li
2Oの含有量は、固体電解質の焼結温度を低下させる観点から、好ましくは20mol%以上75mol%以下、より好ましくは30mol%以上75mol%以下、更により好ましくは40mol%以上75mol%以下、特に好ましくは50mol%以上75mol%以下である。
【0047】
固体電解質がGeO
2を含む場合、このGeO
2の含有量は、0mol%より大きく80mol%以下であることが好ましい。固体電解質がSiO
2を含む場合、このSiO
2の含有量は、0mol%より大きく70mol%以下であることが好ましい。固体電解質がB
2O
3を含む場合、このB
2O
3の含有量は、0mol%より大きく60mol%以下であることが好ましい。固体電解質がP
2O
5を含む場合、このP
2O
5の含有量は、0mol%より大きく50mol%以下であることが好ましい。
【0048】
なお、上記各酸化物の含有量は、固体電解質中における各酸化物の含有量であり、具体的には、GeO
2、SiO
2、B
2O
3およびP
2O
5のうち1種以上と、Li
2Oとの合計量(mol)に対する各酸化物の含有量(mol)の割合を百分率(mol%)で示している。各酸化物の含有量は、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−AES)などを用いて測定することが可能である。
【0049】
固体電解質は、必要に応じて添加元素を更に含んでいてもよい。添加元素としては、例えば、Na(ナトリウム)、Mg(マグネシウム)、Al(アルミニウム)、K(カリウム)、Ca(カルシウム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Ga(ガリウム)、Se(セレン)、Rb(ルビジウム)、S(硫黄)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、Ag(銀)、In(インジウム)、Sn(スズ)、Sb(アンチモン)、Cs(セシウム)、Ba(バナジウム)、Hf(ハフニウム)、Ta(タンタル)、W(タングステン)、Pb(鉛)、Bi(ビスマス)、Au(金)、La(ランタン)、Nd(ネオジム)およびEu(ユーロピウム)からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。固体電解質が、これらの添加元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を酸化物として含んでいてもよい。
【0050】
(正極集電層)
正極集電層21Aは、導電材料と固体電解質とを含んでいる。固体電解質が、結着剤としての機能を有していてもよい。導電材料は、導電性粒子の粉末を含んでいる。導電材料は、例えば炭素材料および金属材料などのうちの少なくとも1種、好ましくは炭素材料を含むことが好ましい。炭素材料は金属材料に比べて柔軟であるため、正極集電層21Aと正極活物質層21Bとの間で良好な界面を形成することができる。したがって、正極集電層21Aと正極活物質層21Bとの間の界面抵抗を低減できる。また、炭素材料は、金属材料に比べて低廉であるため、電池の製造コストを低減できる。
【0051】
炭素材料としては、例えば、グラファイト(黒鉛)、炭素繊維、カーボンブラックおよびカーボンナノチューブなどのうちの少なくとも1種を用いることができる。炭素繊維としては、例えば、気相成長炭素繊維(Vapor Growth Carbon Fiber:VGCF)などを用いることができる。カーボンブラックとしては、例えば、アセチレンブラックおよびケッチェンブラックなどのうちの少なくとも1種を用いることができる。カーボンナノチューブとしては、例えば、シングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT)、ダブルウォールカーボンナノチューブ(DWCNT)などのマルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)などを用いることができる。金属材料としては、例えば、Ni粒子粉などの金属粒子粉を用いることができる。但し、導電材料は、上述のものに特に限定されるわけではない。
【0052】
固体電解質としては、固体電解質層23に含まれる固体電解質と同様のものを例示することができる。但し、固体電解質層23と正極集電層21Aとに含まれる固体電解質の組成(材料の種類)または組成比は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0053】
正極集電層21Aが導電材料として炭素材料を含む場合、正極集電層21A中における炭素材料の体積占有率は、好ましくは50vol%以上95vol%以下である。体積占有率が50vol%未満であると、正極集電層21Aの電気伝導性が低下する虞がある。一方、体積占有率が95vol%を超えると、正極集電層21A中における固体電解質の体積占有率が少なすぎて、正極集電層21Aの強度が低下する虞がある。
【0054】
上記の炭素材料の体積占有率は以下のようにして求められる。まず、電池を完全に放電させたのち、以下の処理を電池から無作為に選び出された10ポイントにて実施する。すなわち、イオンミリングなどにより電池の断面を作製し、正極集電層21Aの断面SEM像を撮影する手順を繰り返して、三次元のSEM像を取得する。そして、取得した三次元のSEM像から炭素材料の体積占有率を求める。次に、上述のようにして10ポイントにおいて求めた炭素材料の体積占有率を単純に平均(算術平均)して、正極集電層21A中における炭素材料の体積占有率(vol%)とする。
【0055】
正極集電層21Aは、例えば、Al、Niまたはステンレス鋼などを含む金属層であってもよい。上記金属層の形状は、例えば、箔状、板状またはメッシュ状などである。
【0056】
(正極活物質層)
正極活物質層21Bは、正極活物質と、固体電解質とを含んでいる。固体電解質が、結着剤としての機能を有していてもよい。正極活物質層21Bは、必要に応じて導電剤を更に含んでいてもよい。
【0057】
正極活物質は、例えば、電極反応物質であるリチウムイオンを吸蔵放出可能な正極材料を含んでいる。この正極材料は、高いエネルギー密度が得られる観点から、リチウム含有化合物などであることが好ましいが、これに限定されるものではない。このリチウム含有化合物は、例えば、リチウムと遷移金属元素とを構成元素として含む複合酸化物(リチウム遷移金属複合酸化物)や、リチウムと遷移金属元素とを構成元素として含むリン酸化合物(リチウム遷移金属リン酸化合物)などである。中でも、遷移金属元素は、Co、Ni、MnおよびFeのいずれか1種または2類以上であることが好ましい。これにより、より高い電圧が得られ、電池の電圧を高くすることができると、同じ容量(mAh)の電池の持つエネルギー(Wh)を大きくすることができる。
【0058】
リチウム遷移金属複合酸化物は、例えば、Li
xM1O
2またはLi
yM2O
4などで表されるものである。より具体的には例えば、リチウム遷移金属複合酸化物は、LiCoO
2、LiNiO
2、LiVO
2、LiCrO
2またはLiMn
2O
4などである。また、リチウム遷移金属リン酸化合物は、例えば、Li
zM3PO
4などで表されるものである。より具体的には例えば、リチウム遷移金属リン酸化合物は、LiFePO
4またはLiCoPO
4などである。但し、M1〜M3は1種または2類以上の遷移金属元素であり、x〜zの値は任意である。
【0059】
この他、正極活物質は、例えば、酸化物、二硫化物、カルコゲン化物または導電性高分子などでもよい。酸化物は、例えば、酸化チタン、酸化バナジウムまたは二酸化マンガンなどである。二硫化物は、例えば、二硫化チタンまたは硫化モリブデンなどである。カルコゲン化物は、例えば、セレン化ニオブなどである。導電性高分子は、例えば、ジスルフィド、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリパラスチレン、ポリアセチレン、ポリアセンなどである。
【0060】
固体電解質としては、固体電解質層23に含まれる固体電解質と同様のものを例示することができる。但し、固体電解質層23と正極活物質層21Bとに含まれる固体電解質の組成(材料の種類)または組成比は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0061】
導電剤は、例えば、炭素材料および金属材料などのうちの少なくとも1種を含んでいる。炭素材料および金属材料としては、正極集電層21Aに含まれる炭素材料および金属材料と同様のものを例示することができる。
【0062】
(負極層)
負極層22は、負極活物質層と負極集電体層との両方の機能を有している。負極層22は、負極材料と、固体電解質とを含んでいる。固体電解質が、結着剤としての機能を有していてもよい。負極層22は、必要に応じて導電剤を更に含んでいてもよい。
【0063】
負極材料は、負極活物質と導電剤との両方の機能を有している。具体的には、負極材料は、電極反応物質であるリチウムイオンを吸蔵放出可能であり、かつ、電気伝導性を有している。このような機能を有する負極材料は、炭素材料を含んでいる。負極材料が、炭素材料に加えて金属系材料をさらに含んでいてもよい。炭素材料は、高いエネルギー密度および高い電気伝導性が得られる観点から、グラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラックおよび炭素繊維のうちの少なくとも1種を含んでいることが好ましく、これらの炭素材料のうちでもグラファイトが特に好ましい。
【0064】
負極層22中における炭素材料の体積占有率は、50vol%以上95vol%以下である。体積占有率が50vol%未満であると、負極層22のエネルギー密度および電気伝導性が低下する虞がある。一方、体積占有率が95vol%を超えると、負極層22中における固体電解質の体積占有率が少なすぎて、負極層22の強度が低下する虞がある。
【0065】
上記の炭素材料の体積占有率は以下のようにして求められる。まず、電池を完全に放電させたのち、以下の処理を電池から無作為に選び出された10ポイントにて実施する。すなわち、イオンミリングなどにより電池の断面を作製し、負極層22の断面SEM像を撮影する手順を繰り返して、三次元のSEM像を取得する。そして、取得した三次元のSEM像から炭素材料の体積占有率を求める。次に、上述のようにして10ポイントにおいて求めた炭素材料の体積占有率を単純に平均(算術平均)して、負極層22中における炭素材料の体積占有率(vol%)とする。
【0066】
金属系材料は、例えば、リチウムと合金を形成可能な金属元素または半金属元素を構成元素として含む材料である。より具体的には例えば、金属系材料は、Si(ケイ素)、Sn(スズ)、Al(アルミニウム)、In(インジウム)、Mg(マグネシウム)、B(ホウ素)、Ga(ガリウム)、Ge(ゲルマニウム)、Pb(鉛)、Bi(ビスマス)、Cd(カドミウム)、Ag(銀)、Zn(亜鉛)、Hf(ハフニウム)、Zr(ジルコニウム)、Y(イットリウム)、Pd(パラジウム)またはPt(白金)などの単体、合金または化合物のいずれか1種または2類以上である。但し、単体は、純度100%に限らず、微量の不純物を含んでいてもよい。合金または化合物としては、例えば、SiB
4、TiSi
2、SiC、Si
3N
4、SiO
v(0<v≦2)、LiSiO、SnO
w(0<w≦2)、SnSiO
3、LiSnO、Mg
2Snなどが挙げられる。
【0067】
金属系材料は、リチウム含有化合物またはリチウム金属(リチウムの単体)でもよい。リチウム含有化合物は、リチウムと遷移金属元素とを構成元素として含む複合酸化物(リチウム遷移金属複合酸化物)である。この複合酸化物としては、例えば、Li
4Ti
5O
12などが挙げられる。
【0068】
固体電解質は、Li含有の酸化物ガラスおよびLi含有の酸化物ガラスセラミックスのうちの少なくとも1種であることが好ましく、Liイオン伝導率の向上の観点からすると、Li含有の酸化物ガラスセラミックスが特に好ましい。固体電解質がLi含有の酸化物ガラスおよびLi含有の酸化物ガラスセラミックスのうちの少なくとも1種であると、酸化物ガラスおよび酸化物ガラスセラミックスが還元され、不可逆容量が発生することを抑制できる。
【0069】
Li含有の酸化物ガラスおよびLi含有の酸化物ガラスセラミックスとしては、不可逆容量の発生を抑制する観点から、上述の固体電解質層23にて例示したLi含有の酸化物ガラスおよびLi含有の酸化物ガラスセラミックスが好ましい。なお、固体電解質層23と負極層22とに含まれる固体電解質の組成(材料の種類)または組成比は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0070】
導電剤は、例えば、炭素材料および金属材料などのうちの少なくとも1種を含んでいる。炭素材料および金属材料としては、正極集電層21Aに含まれる炭素材料および金属材料と同様のものを例示することができる。導電剤が金属材料を含む場合、不可逆容量の発生を抑制する観点からすると、金属材料と炭素材料との体積比(金属材料/炭素材料)は、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下、更により好ましくは0.1以下、特に好ましくは0.05以下である。
【0071】
[電池の動作]
この電池では、例えば、充電時において、正極活物質層21Bから放出されたリチウムイオンが固体電解質層23を介して負極層22に取り込まれると共に、放電時において、負極層22から放出されたリチウムイオンが固体電解質層23を介して正極活物質層21Bに取り込まれる。
【0072】
[電池の製造方法]
以下、本技術の第1の実施形態に係る電池の製造方法の一例について説明する。
【0073】
(固体電解質層形成用ペーストの作製工程)
固体電解質と、有機系結着剤とを混合して、合剤粉末を調製したのち、この合剤粉末を溶媒に分散させて、固体電解質層形成用ペーストを得る。
【0074】
有機系結着剤としては、例えば、アクリル樹脂などを用いることができる。溶媒としては、合剤粉末を分散できるものであれば特に限定されないが、固体電解質層形成用ペーストの焼結温度よりも低い温度領域で焼失するものが好ましい。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノールなどの炭素数が4以下の低級アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,3−プロパンジオール)、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオールなどの脂肪族グリコール、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジメチルエチルアミンなどのアミン類、テルピネオールなどの脂環族アルコールなどを単独または2種以上混合して用いることができるが、特にこれに限定されるものではない。分散方法としては、例えば、攪拌処理、超音波分散処理、ビーズ分散処理、混錬処理、ホモジナイザー処理などが挙げられる。以下に説明する正極集電層形成用ペースト、正極活物質層形成用ペースト、負極層形成用ペースト、外装材形成用ペーストおよび導電性ペーストの作製工程においても、有機系結着剤および溶媒としては、固体電解質層形成用ペーストと同様の材料を例示することができる。
【0075】
(正極集電層形成用ペーストの作製工程)
導電性粒子の粉末と、固体電解質と、有機系結着剤とを混合して、合剤粉末を調製したのち、この合剤粉末を溶媒に分散させて、正極集電層形成用ペーストを得る。
【0076】
(正極活物質層形成用ペーストの作製工程)
正極活物質と、固体電解質と、有機系結着剤と、必要に応じて導電剤とを混合して、合剤粉末を調製したのち、この合剤粉末を溶媒に分散させて、正極活物質層形成用ペーストを得る。
【0077】
(負極層形成用ペーストの作製工程)
負極材料と、固体電解質と、有機系結着剤と、必要に応じて導電剤とを混合して、合剤粉末を調製したのち、この合剤粉末を溶媒に分散させて、負極層形成用ペーストを得る。
【0078】
(外装材形成用ペーストの作製工程)
固体電解質と、有機系結着剤と、必要に応じて結晶粒子の粉末とを混合して、合剤粉末を調製したのち、この合剤粉末を溶媒に分散させて、外装材形成用ペーストを得る。
【0079】
(導電性ペーストの作製工程)
導電性粒子の粉末と、ガラスまたはガラスセラミックスと、有機系結着剤とを混合して、合剤粉末を調製したのち、この合剤粉末を溶媒に分散させて、正極端子および負極端子形成用の導電性ペーストを得る。
【0080】
(固体電解質層の作製工程)
まず、支持基材の表面に固体電解質形成用ペーストを均一に塗布または印刷することにより、ペースト層を形成する。支持基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどの高分子樹脂フィルムを用いることができる。塗布および印刷の方法としては、簡便で量産性に適した方法を用いることが好ましい。塗布方法としては、例えば、ダイコート法、マイクログラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ダイレクトグラビアコート法、リバースロールコート法、コンマコート法、ナイフコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、ディップ法、スピンコート法などを用いることができるが、特にこれに限定されるものではない。印刷方法としては、例えば、凸版印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、凹版印刷法、ゴム版印刷法、スクリーン印刷法などを用いることができるが、特にこれに限定されるものではない。
【0081】
後工程にてグリーンシートを支持基材の表面から剥がしやすくするために、支持基材の表面に剥離処理を予め施しておくことが好ましい。剥離処理としては、例えば、剥離性を付与する組成物を支持基材の表面に予め塗布または印刷する方法が挙げられる。剥離性を付与する組成物としては、例えば、バインダを主成分とし、ワックスまたはフッ素などが添加された塗料、またはシリコーン樹脂などが挙げられる。
【0082】
次に、ペースト層を乾燥することにより、支持基材の表面にグリーンシートを形成する。乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、熱風などによる送風乾燥、赤外線または遠赤外線などによる加熱乾燥、真空乾燥などが挙げられる。これらの乾燥方法を単独で用いてもよいし、2以上組み合わせて用いてもよい。次に、グリーンシートを支持基材から剥離し、所定の大きさおよび形状に切断する。これにより、グリーンシートとしての未焼結の固体電解質層23が得られる。
【0083】
(外装材の作製工程)
外装材形成用ペーストを用いる以外のことは上述の“固体電解質層の作製工程”と同様にして、グリーンシートとしての未焼結の外装材14が得られる。
【0084】
(電池の作製工程)
図1A、1B、2に示す構成を有する電池を次のようにして作製する。まず、正極活物質層形成用ペーストを固体電解質層23の一方の表面に、当該表面の4辺に沿って未塗布部が形成されるように塗布し、乾燥することにより、正極活物質層21Bを形成する。次に、外装材形成用ペーストを上記未塗布部に塗布し、乾燥することにより、正極活物質層21Bとほぼ同一厚さの外装材14を形成する。続いて、正極集電層形成用ペーストを正極活物質層21Bおよび外装材14により形成される表面に、当該表面の3辺に沿って未塗布部が形成されるように塗布し、乾燥することにより、正極集電層21Aを形成する。
【0085】
次に、負極層形成用ペーストを固体電解質層23の他方の表面に、当該表面の3辺に沿って未塗布部が形成されるように塗布し、乾燥することにより、負極層22を形成する。続いて、外装材形成用ペーストを上記未塗布部に塗布し、乾燥することにより、負極層22とほぼ同一厚さの外装材14を形成する。これにより、端面が未焼結の外装材14で覆われた未焼結の電池素子20が得られる。
【0086】
次に、グリーンシートとしての外装材を電池素子20の両主面に配置して、電池素子20の両主面を覆うことにより、未焼結の外装電池素子11が得られる。続いて、未焼結の外装電池素子11の各層に含まれる樹脂バインダの酸化燃焼温度以上の温度で外装電池素子11を加熱することにより、樹脂バインダを燃焼(脱脂)させる。その後、電池の各層に含まれる固体電解質の軟化点以上の温度で外装電池素子11を加熱することにより、固体電解質を焼結する。
【0087】
次に、外装電池素子11の第1、第2端面11SA、11SBに導電性ペーストをディップする。その後、導電性ペーストの硬化温度にて外装電池素子11を焼成する。以上により、目的とする電池が得られる。
【0088】
[効果]
金属材料を含む負極集電層と炭素材料を含む負極活物質層とにより構成される2層構造の負極層を備える電池では、負極層の焼結時に負極集電層の表面および金属材料の表面が酸化されて、金属酸化膜が形成される。充電時には、リチウムイオンが負極活物質層に含まれる炭素材料に挿入される。リチウムイオンが挿入された炭素材料の電位は低いため、負極集電層の表面および金属材料の表面に形成された金属酸化膜が還元され、不可逆容量が発生する。この不可逆容量の発生は、金属酸化物の酸素をLiイオンが奪い、金属が還元され、Li(またはその化合物)が酸化されることによって、Liイオンが不働態化するためと考えられる。これに対して、第1の実施形態に係る電池では、上記の2層構造の負極層に代えて、負極集電層および負極活物質層の両方の機能を有する、炭素材料を含む単層構造の負極層22を備えている。したがって、負極層22が、焼結時に酸化される虞がある金属材料を含まない、または負極層22に含まれる金属材料の含有量が少ないため、金属酸化膜の還元反応に起因する不可逆容量の増加を抑制できる。
【0089】
また、負極層22中における炭素材料の体積占有率は、50vol%以上95vol%以下であるため、負極層22のエネルギー密度および電気伝導性の低下を抑制し、かつ、負極層22の強度の低下を抑制できる。
【0090】
第1の実施形態に係る電池では、上記の2層構造の負極層に代えて、負極集電層および負極活物質層の両方の機能を有する負極層22を備えているため、電池作製時の成膜回数を低減することができる。したがって、電池の生産性を向上できる。
【0091】
[変形例]
(変形例1)
第1の実施形態では、正極層21が外装材14上に形成されている場合について説明したが、
図3に示すように、正極層21と外装材14との間に固体電解質層23が設けられていてもよい。
【0092】
(変形例2)
第1の実施形態では、電池素子20が、1層の正極層21と、1層の負極層22と、1層の固体電解質層23とを備える構成について説明したが、電池素子20の構成は正極層21と負極層22とが固体電解質層23を介して積層された構成であればよく、正極層21、負極層22および固体電解質層23の層数は特に限定されるものではない。
【0093】
図4は、電池素子20が、2層の正極層21と、3層の負極層22と、6層の固体電解質層23とを備える構成の一例を示している。正極層21と負極層22とは、固体電解質層23を間に挟むようにして交互に積層されている。電池素子20の両主面には固体電解質層23が設けられている。2層の正極層21は、正極集電層21Aと、正極集電層21Aの両主面にそれぞれ設けられた正極活物質層21Bとを備える。
【0094】
第1端面11SAから2層の正極集電層21Aの一端が露出している。この露出した2層の正極集電層21Aの一端に正極端子12が電気的に接続されている。一方、第2端面11SBから3層の負極層22の一端が露出している。この露出した3層の負極層22の一端に負極端子13が電気的に接続されている。
【0095】
(変形例3)
第1の実施形態では、外装電池素子11の主面の形状が四角形である場合について説明したが、外装電池素子11の主面の形状は特に限定されるものではない。例示するならば、円形、楕円形、四角形状以外の多角形または不定形などが挙げられる。また、外装電池素子11の形状は板状に限定されるものではなく、シート状またはブロック状などであってもよい。また、外装電池素子11が湾曲または屈曲していてもよい。
【0096】
(変形例4)
上述の第1の実施形態では、電極反応物質としてリチウムを用いる電池に対して本技術を適用した例について説明したが、本技術はこの例に限定されるものではない。電極反応物質として、例えば、NaもしくはKなどの他のアルカリ金属、MgもしくはCaなどのアルカリ土類金属、またはAlもしくはAgなどのその他の金属を用いる電池に本技術を適用してもよい。
【0097】
(変形例5)
上述の第1の実施形態では、正極集電層21A、正極活物質層21Bおよび負極層22の全ての層が固体電解質を含む場合について説明したが、正極集電層21A、正極活物質層21Bおよび負極層22のうちの少なくとも一層が固体電解質を含まなくてもよい。この場合、固体電解質を含まない層は、例えば蒸着法またはスパッタ法などの気相成長法で作製される薄膜であってもよい。
【0098】
(変形例6)
正極集電層21A、正極活物質層21B、負極層22および固体電解質層23に含まれる固体電解質は、特に限定されるものではない。第1の実施形態の固体電解質以外の固体電解質としては、例えば、La−Li−Ti−Oなどから構成されるペロブスカイト型酸化物結晶、Li−La−Zr−Oなどから構成されるガーネット型酸化物結晶、リチウム、アルミニウムおよびチタンを構成元素に含むリン酸化合物(LATP)、リチウム、アルミニウムおよびゲルマニウムを構成元素に含むリン酸化合物(LAGP)などを用いることができる。
【0099】
また、Li
2S−P
2S
5、Li
2S−SiS
2−Li
3PO
4、Li
7P
3S
11、Li
3.25Ge
0.25P
0.75S、またはLi
10GeP
2S
12などの硫化物や、Li
7La
3Zr
2O
12、Li
6.75La
3Zr
1.75Nb
0.25O
12、Li
6BaLa
2Ta
2O
12、Li
1+xAl
xTi
2-x(PO
4)
3またはLa
2/3-xLi
3xTiO
3などの酸化物を用いることもできる。
【0100】
(その他の変形例)
電池素子20の構造は、特に限定されるものではなく、バイポーラ型の積層構造を有していてもよい。また、正極集電層21A、正極活物質層21Bおよび負極層22のうちの少なくとも1層がグリーンシートの焼結体であってもよい。また、正極集電層21A、正極活物質層21B、負極層22および固体電解質層23のうちの少なくとも1層が圧粉体であってもよい。負極層22が、炭素材料と、Ni粒子粉などの金属粒子粉と、固体電解質とを含んでいてもよい。
【0101】
<2 第2の実施形態>
本技術の第2の実施形態に係る電池は、
図5、6に示すように、単層構造の負極層22に代えて、2層構造の負極層24を備えて点において、第1の実施形態に係る電池と異なっている。第2の実施形態において第1の実施形態と同様の箇所には同一の符号を付して説明を省略する。
【0102】
負極層24は、負極集電層24Aと、負極集電層24Aの両主面のうち、正極層21と対向する側の主面に設けられた負極活物質層24Bとを備える。
【0103】
(負極集電層)
負極集電層24Aは、炭素材料と固体電解質とを含んでいる。炭素材料としては、第1の実施形態の正極集電層21Aに含まれる炭素材料と同様のものを例示することができる。炭素材料は、高い電気伝導性が得られる観点から、グラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラックおよび炭素繊維のうちの少なくとも1種を含んでいることが好ましい。
【0104】
負極集電層24A中における炭素材料の体積占有率は、好ましくは50vol%以上95vol%以下である。体積占有率が50vol%未満であると、負極集電層24Aの電気伝導性が低下する虞がある。一方、体積占有率が95vol%を超えると、負極集電層24A中における固体電解質の体積占有率が少なすぎて、負極集電層24Aの強度が低下する虞がある。なお、負極集電層24A中における炭素材料の体積占有率は、第1の実施形態の“負極層22中における炭素材料の体積占有率の算出方法”と同様にして、三次元のSEM像から求めることができる。
【0105】
固体電解質としては、第1の実施形態の固体電解質層23に含まれる固体電解質と同様のものを例示することができる。但し、固体電解質層23と負極集電層24Aとに含まれる固体電解質の組成(材料の種類)または組成比は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0106】
(負極活物質層)
負極活物質層24Bは、負極活物質と固体電解質とを含んでいる。固体電解質が、結着剤としての機能を有していてもよい。負極活物質層24Bは、必要に応じて導電剤を更に含んでいてもよい。
【0107】
負極活物質は、電極反応物質であるリチウムイオンを吸蔵放出可能な炭素材料を含んでいる。リチウムイオンが挿入された炭素材料の電位は低いため、金属材料を含む負極集電層を用いるのではなく、炭素材料を含む負極集電層24Aを用いないと、還元反応に起因する不可逆容量が特に大きくなる虞がある。炭素材料としては、第1の実施形態の負極層22に含まれる炭素材料と同様のものを例示することができる。但し、負極活物質は、炭素材料に加えて金属系材料などを含んでいてもよい。負極活物質である金属系材料としては、第1の実施形態の負極層22に含まれる金属系材料と同様のものを例示することができる。
【0108】
負極活物質層24B中における炭素材料の体積占有率は、50vol%以上95vol%以下である。体積占有率が50vol%未満であると、負極活物質層24Bのエネルギー密度および電気伝導性が低下する虞がある。一方、体積占有率が95vol%を超えると、負極活物質層24B中における固体電解質の体積占有率が少なすぎて、負極活物質層24Bの強度が低下する虞がある。なお、負極活物質層24B中における炭素材料の体積占有率は、第1の実施形態の“負極層22中における炭素材料の体積占有率の算出方法”と同様にして、三次元のSEM像から求めることができる。負極集電層24Aと負極活物質層24Bとに含まれる炭素材料の種類は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0109】
固体電解質としては、第1の実施形態の固体電解質層23に含まれる固体電解質と同様のものを例示することができる。但し、固体電解質層23と負極層22とに含まれる固体電解質の組成(材料の種類)または組成比は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0110】
導電剤は、例えば、炭素材料および金属材料などのうちの少なくとも1種を含んでいる。炭素材料および金属材料としては、上述の正極活物質層21Bに含まれる炭素材料および金属材料と同様のものを例示することができる。
【0111】
[効果]
第2の実施形態に係る電池では、金属材料を含む負極集電層ではなく、炭素材料を含む負極集電層24Aを備えている。このため、還元反応に起因する不可逆容量の増加を抑制できる。
【0112】
また、炭素材料は金属材料に比べて柔軟であるため、負極集電層24Aと負極活物質層24Bとの間で良好な界面を形成することができる。したがって、負極集電層24Aと負極活物質層24Bとの間の界面抵抗を低減できる。また、炭素材料は、金属材料に比べて低廉であるため、電池の製造コストを低減できる。
【0113】
正極集電層21Aが炭素材料を含む場合には、正極集電層21Aと正極活物質層21Bとの間の界面抵抗を低減できる。
【0114】
[変形例]
負極集電層24Aが、炭素材料に加えて金属材料をさらに含んでいてもよい。金属材料としては、例えば、Ni粒子粉などの金属粒子粉を用いることができる。電池が、金属粒子を含む負極集電層ではなく、炭素材料および金属材料を含む負極集電層24Aを備えることで、負極集電層24Aに含まれる金属材料の含有量を低減することができる。したがって、還元反応に起因する不可逆容量の増加を抑制できる。負極集電層24Aが金属材料をさらに含む場合、不可逆容量の発生を抑制する観点からすると、金属材料と炭素材料との体積比(金属材料/炭素材料)は、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下、更により好ましくは0.1以下、特に好ましくは0.05以下である。
【0115】
<3 実施例>
以下、実施例により本技術を具体的に説明するが、本技術はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0116】
実施例について以下の順序で説明する。
i 集電層中における炭素材料またはNiの体積占有率を変更したサンプル、および負極層中における炭素材料の体積占有率を変更したサンプル
ii 負極活物質層とNi箔との間にNi粒子含有の負極集電層を設けたサンプル、および負極活物質層とNi箔との間にNi粒子含有の負極集電層を設けなかったサンプル
iii 正極集電層としてNi粒子含有の正極集電層を設けたサンプル
iv 正極集電層として炭素材料含有の正極集電層を設けたサンプル、正極集電層としてNi粒子含有の負極集電層を設けたサンプル
【0117】
<i 集電層中における炭素材料またはNiの体積占有率を変更したサンプル、および負極層中における炭素材料の体積占有率を変更したサンプル>
[サンプル1−1〜1−4]
(集電層形成用ペーストの作製工程)
まず、Li
2OとSiO
2とB
2O
3とをLi
2O:SiO
2:B
2O
3=60:10:30のmol比で含む酸化物ガラス(以下「酸化物ガラスA」という。)を準備した。次に、導電材料として気相法炭素繊維(昭和電工株式会社製、VGCF−H)と低温焼結ガラスとして酸化物ガラスAとを、表1に示すように50:50、80:20(=(気相法炭素繊維:酸化物ガラスA))の体積比で配合したのち、この配合物と樹脂バインダとを高沸点溶媒に分散させることにより集電層形成用ペーストを作製した。
【0118】
(集電層の作製工程)
まず、作製した集電層形成用ペーストを離型フィルム上に塗布し、乾燥することにより、表1に示すように厚み5、10μmを有する集電層を形成した。次に、離型フィルムとともに集電層を矩形状に打ち抜いた後、集電層を離型フィルムから剥離した。これにより、グリーンシートとしての矩形状の集電層が得られた。続いて、得られた集電層に含まれる樹脂バインダの酸化燃焼温度以上の温度で集電層を加熱することにより、樹脂バインダを燃焼(脱脂)させた。その後、集電層に含まれる酸化物ガラスAの軟化点以上の温度で集電層を加熱することにより、酸化物ガラスAを焼結した。以上により、目的とする集電層が得られた。
【0119】
(サンプル1−5〜1−8)
まず、Li
2OとSiO
2とB
2O
3とをLi
2O:SiO
2:B
2O
3=54:11:35のmol比で含む酸化物ガラス(以下「酸化物ガラスB」という。)を準備した。次に、導電材料として人造黒鉛(TIMCAL社製、KS6)と低温焼結ガラスとして酸化物ガラスBとを、表1に示すように35:65、50:50、80:20(=(人造黒鉛:酸化物ガラスB))の体積比で配合したのち、この配合物と樹脂バインダとを高沸点溶媒に分散させることにより集電層形成用ペーストを作製した。これ以降の工程は、サンプル1−1、1−2と同様にして集電層を得た。
【0120】
(サンプル1−9、1−10)
導電材料として人造黒鉛(TIMCAL社製、KS6)を用いたこと以外はサンプル1−3、1−4と同様にして集電層を得た。
【0121】
(サンプル1−11)
導電材料として人造黒鉛(TIMCAL社製、KS6)と低温焼結ガラスとしてBi−B系ガラスとを、表1に示すように70:30(=(人造黒鉛:Bi−B系ガラス))の体積比で配合した。また、グリーンシートとしての未焼結の集電層の厚みを表1に示すように30μmとした。これ以外のことは、サンプル1−1と同様にして集電層を得た。
【0122】
(サンプル1−12、1−13)
導電材料として人造黒鉛(TIMCAL社製、KS15)を用いたこと以外はサンプル1−7、1−8と同様にして集電層を得た。
【0123】
(サンプル1−14、1−15)
導電材料としてケッチェンブラック(KB)を用いたこと以外はサンプル1−7、1−8と同様にして集電層を得た。
【0124】
(サンプル1−16、1−17)
導電材料としてNi粒子粉(平均粒径1μm)と低温焼結ガラスとして酸化物ガラスBとを、表1に示すように95:5(=(Ni粒子粉:酸化物ガラスB))の体積比で配合したこと以外はサンプル1−1、1−2と同様にして集電層を得た。
【0125】
(サンプル2−1〜2−4)
まず、天然黒鉛(BTR NEW ENERGY MATERIALS Inc製、AGP8)と人造黒鉛(TIMCAL社製、KS6)とを混合して負極材料を調製した。次に、調製した負極材料と低温焼結ガラスとして酸化物ガラスBとを、表2に示すように50:50、80:20(=(負極材料:酸化物ガラスB))の体積比で配合したのち、この配合物と樹脂バインダとを高沸点溶媒に分散させることにより負極層形成用ペーストを作製した。これ以降の工程は、サンプル1−1、1−2と同様にして負極層を得た。
【0126】
(体積抵抗率)
集電層および負極層の体積抵抗率をJIS K 7194-1994に準拠して4端子法により測定した。なお、測定装置としては、三菱化学製のロレスターを用いた。その結果を表1、2および
図7A、7Bに示す。
図7Aは、サンプル1−2、1−4、1−6、1−8、1−10、1−13、1−15、1−17、2−2、2−4の体積抵抗率の測定結果を示す。
図7Bは、サンプル1−5、1−7、1−9、1−11の体積抵抗率の測定結果を示す。
【0127】
表1は、サンプル1−1〜17の集電層の構成および体積抵抗率の測定結果を示す。
【表1】
【0128】
表2は、サンプル2−1〜2−4の負極層の構成および体積抵抗率の測定結果を示す。
【表2】
【0129】
なお、表1、表2中の“ガラス材料”の記載欄における酸化物ガラスA、Bは、以下の組成を有する酸化物ガラスを意味している。
酸化物ガラスA:Li
2OとSiO
2とB
2O
3とをLi
2O:SiO
2:B
2O
3=60:10:30のmol比で含む酸化物ガラス
酸化物ガラスB:Li
2OとSiO
2とB
2O
3とをLi
2O:SiO
2:B
2O
3=54:11:35のmol比で含む酸化物ガラス
また、表1、表2中の“体積抵抗率”の記載欄において、“AE+B”、“AE−B”の表記はそれぞれ、A×10
+B、A×10
-Bを意味する。
【0130】
表1、表2から以下のことがわかる。
集電層中における炭素材料の体積占有率を50vol%以上とすることで、良好な体積抵抗率を得ることができる。したがって、良好な集電層を得ることができる。
負極層中における炭素材料の体積占有率を50vol%以上とすることで、良好な体積抵抗率を得ることができる。したがって、負極集電層と負極活物質層と2層の機能を兼ね備える単層の負極層を得ることができる。
【0131】
<ii 負極活物質層とNi箔との間にNi粒子含有の負極集電層を設けたサンプル、および負極活物質層とNi箔との間にNi粒子含有の負極集電層を設けなかったサンプル>
[サンプル3−1]
(固体電解質層形成用ペーストの作製工程)
まず、固体電解質として、酸化物ガラス(LiLaTaBaO)を準備した。次に、この酸化物ガラスと樹脂バインダとを高沸点溶媒に分散させることにより固体電解質層形成用ペーストを作製した。
【0132】
(固体電解質層の作製工程)
固体電解質層を次のようにして作製した。まず、固体電解質層形成用ペーストを離型フィルム上に塗布し、乾燥することにより、離型フィルム上に固体電解質層を形成した。次に、離型フィルムとともに固体電解質層を矩形状に打ち抜いた後、固体電解質層を離型フィルムから剥離した。これにより、グリーンシートとしての矩形状の固体電解質層が得られた。
【0133】
(負極集電層形成用ペーストの作製工程)
導電材料としてNi粒子粉(平均粒径1μm)と低温焼結ガラスとして酸化物ガラスBとを68:32(=(Ni粒子粉:酸化物ガラスB))の体積比で配合し、この配合物と樹脂バインダとを高沸点溶媒に分散させることにより、Ni粒子含有の負極集電層形成用ペーストを作製した。
【0134】
(負極活物質層形成用ペーストの作製工程)
負極活物質としてグラファイト(人造黒鉛(TIMCAL社製、KS6)+天然黒鉛(BTR NEW ENERGY MATERIALS Inc製、AGP8))と低温焼結ガラスとして酸化物ガラスBとを1:1(=グラファイト:酸化物ガラスB)の体積比で配合し、この配合物と樹脂バインダとを高沸点溶媒に分散させることにより負極活物質層形成用ペーストを作製した。
【0135】
(負極層の形成工程)
まず、Ni箔の一方の面に負極集電層形成用ペーストを塗布し、乾燥することによりNi粒子含有の負極集電層を形成した。次に、負極集電層上に負極活物質層形成用ペーストを塗布し、乾燥することにより、負極活物質層を形成した。これにより、負極が得られた。
【0136】
(電池の作製工程)
図8Aに示す構成を有する電池を次のようにして作製した。まず、対極としてLi金属箔を準備し、このLi金属箔の一方の面に銅層を形成した。次に、Li金属箔上に固体電解質層を載置したのち、負極活物質層と固体電解質とが対向するように固体電解質層上に負極層を載置することにより、未焼結の電池を得た。続いて、未焼結の電池の固体電解質層、負極集電層および負極活物質層に含まれる樹脂バインダの酸化燃焼温度以上の温度で電池を加熱することにより、樹脂バインダを燃焼(脱脂)させた。その後、電池の固体電解質層、負極集電層および負極活物質層に含まれる低温焼結ガラスの軟化点以上の温度で電池を加熱することにより、低温焼結ガラスを焼結した。以上により、目的とする電池(ハーフセル)が得られた。
【0137】
[サンプル3−2]
図8Bに示すように、負極活物質層とNi箔との間にNi粒子含有の負極集電層を形成しなかったこと以外はサンプル3−1と同様にして電池を得た。
【0138】
(充放電曲線)
以下の条件により電池の充放電試験を行い、充放電曲線を取得した。その結果を
図9に示す。
測定環境条件:ドライエアー雰囲気、23℃
充放電条件:1μA CC(Constant Current)のみ(CVモードなし)、0.03Vcut
放電電条件:1μA CC(Constant Current)、2.0Vcut
【0139】
(インピーダンス曲線)
サンプル3−1、3−2の電池をそれぞれ3個準備し、インピーダンス測定装置(東洋テクニカ製)を用いて、室温(23℃)にて電池に交流インピーダンス測定を行い、インピーダンス曲線を取得した。その結果を
図10A、10Bに示す。
【0140】
図10A、10Bから、負極活物質層とNi箔との間にNi粒子含有の負極集電層を設けることで、インピーダンス曲線の円弧を小さくできる、すなわち、負極活物質層とNi箔との間の密着性を改善し、界面抵抗を低減できることがわかる。
【0141】
しかしながら、
図9から、負極活物質層とNi箔との間にNi粒子含有の負極集電層があると、大きな不可逆容量が発生することがわかる。これは、焼結工程において金属粒子の表面に金属酸化物膜が形成され、この金属酸化物膜が充電時に還元されたためと考えられる。サンプル3−1の電池(ハーフセル)では、Li源としてLiメタルを用いているため、対局側のLiが枯渇せずに充放電できているが、Li源のかわりにLCO(LiCoO
2)をもちいた場合には、不可逆容量が大きくなり、放電が困難となる。
【0142】
負極活物質層とNi箔との間にNi粒子含有の負極集電層を設けていないサンプル3−2の電池(ハーフセル)でも、Ni箔の表面に形成された金属酸化物膜が還元される。しかしながら、Ni粒子粉がNi箔に比べて比表面積が大きいため、負極活物質層とNi箔との間にNi粒子含有の負極集電層を設けたサンプル3−1の電池(ハーフセル)の方が、金属酸化物膜の還元の発生が顕著となり、その結果、サンプル3−1の電池が、サンプル3−2の電池よりも不可逆容量が大きくなっている。
【0143】
<iii 正極集電層としてNi粒子含有の正極集電層を設けたサンプル>
[サンプル4−1]
以下のようにして同一構成の電池を複数作製した。
【0144】
(正極集電層形成用ペーストの作製工程)
導電性粒子としてNi粒子粉(平均粒径1μm)と低温焼結ガラスとして酸化物ガラスBとを68:32(=Ni粒子粉:酸化物ガラスB)の体積比で配合し、この配合物と樹脂バインダとを高沸点溶媒に分散させることにより正極集電層形成用ペーストを作製した。
【0145】
(正極活物質層形成用ペーストの作製工程)
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO
2)と低温焼結ガラスとして酸化物ガラスBとを1:2(=LiCoO
2:酸化物ガラスB)の体積比で配合し、この配合物と樹脂バインダとを高沸点溶媒に分散させることにより正極活物質層形成用ペーストを作製した。
【0146】
(負極層形成用ペーストの作製工程)
負極活物質としてグラファイト(人造黒鉛(TIMCAL社製、KS6)+天然黒鉛(BTR NEW ENERGY MATERIALS Inc製、AGP8))と低温焼結ガラスとして酸化物ガラスBとを1:1(=グラファイト:酸化物ガラスB)の体積比で配合し、この配合物と樹脂バインダとを高沸点溶媒に分散させることにより負極層形成用ペーストを作製した。
【0147】
(固体電解質層形成用ペーストの作製工程)
低温焼結ガラスとして酸化物ガラスAと樹脂バインダとを高沸点溶媒に分散させることにより固体電解質層形成用ペーストを作製した。
【0148】
(外装材形成用ペーストの作製工程)
結晶粒子としてアルミナ粒子(日本軽金属製、AHP300)と低温焼結ガラスとして酸化物ガラスAとを配合し、この配合物と樹脂バインダとを高沸点溶媒に分散させることにより外装材形成用ペーストを作製した。
【0149】
(固体電解質層の作製工程)
2つの固体電解質層を次のようにして作製した。まず、固体電解質層形成用ペーストを離型フィルム上に塗布し、乾燥することにより、離型フィルム上に固体電解質層を形成した。次に、離型フィルムとともに固体電解質層を矩形状に打ち抜いた後、固体電解質層を離型フィルムから剥離した。これにより、グリーンシートとしての矩形状の固体電解質層が得られた。
【0150】
(外装材の作製工程)
2つの外装材を次のようにして作製した。まず、外装材形成用ペーストを離型フィルム上に塗布し、乾燥することにより、離型フィルム上に外装材を形成した。次に、離型フィルムとともに固体電解質層を矩形状に打ち抜いた後、外装材を離型フィルムから剥離した。これにより、グリーンシートとしての矩形状の外装材が得られた。
【0151】
(電池の作製工程)
図3に示す構成を有する電池を次のようにして作製した。
【0152】
第1の積層体を次のようにして作製した。まず、正極集電層形成用ペーストを固体電解質層の一方の表面に、当該表面の3辺に沿って未塗布部が形成されるように塗布し、乾燥することにより、正極集電層を形成した。次に、外装材形成用ペーストを上記未塗布部に塗布し、乾燥することにより、正極集電層とほぼ同一厚さの外装材を形成した。続いて、正極活物質層形成用ペーストを正極集電層および外装材により形成される表面に、当該表面の4辺に沿って未塗布部が形成されるように塗布し、乾燥することにより、正極活物質層を形成した。これにより、正極集電層の一端が外装材から露出した第1の積層体が作製された。
【0153】
第2の積層体を次のようにして作製した。まず、第1の積層体とは別に固体電解質層を準備し、この固体電解質層の一方の表面に、当該表面の3辺に沿って未塗布部が形成されるように塗布し、乾燥することにより、負極層を形成した。次に、外装材形成用ペーストを上記未塗布部に塗布し、乾燥することにより、負極層とほぼ同一厚さの外装材を形成した。これにより、負極層の一端が外装材から露出した第2の積層体が作製された。
【0154】
上述のようにして得られた第1の積層体、第2の積層体および2つのグリーンシートとしての外装材を用いて、次のようにして外装電池を作製した。まず、固体電解質層を介して正極活物質層と負極層とが対向し、かつ、外装材から露出した正極集電層の一端と外装材から露出した負極層の一端とが反対に位置するように、第1積層体上に第2積層体を積層することにより、未焼結の電池素子を得た。次に、グリーンシートとしての外装材を電池素子の両主面に配置して、電池素子の両主面を覆った。これにより、未焼結の外装電池が得られた。続いて、未焼結の外装電池の各層に含まれる樹脂バインダの酸化燃焼温度以上の温度で電池を加熱することにより、樹脂バインダを燃焼(脱脂)させた。その後、電池の各層に含まれる低温焼結ガラスの軟化点以上の温度で電池を加熱することにより、低温焼結ガラスを焼結した。
【0155】
次に、正極集電層の一端が外装材から露出した外装電池の第1端面にAgペーストをディップしたのち、負極層の一端が外装材から露出した外装電池の第2端面にAgペーストをディップした。その後、Agペーストの硬化温度にて外装電池を焼成した。
これにより、目的とする電池が得られた。
【0156】
(インピーダンス曲線)
上述のサンプル3−1、3−2の電池のインピーダンス曲線を取得した場合と同様にして、サンプル4−1の複数の電池のインピーダンス曲線を取得した。取得した複数の電池のインピーダンス曲線のうち、特性に大きな違いが生じた2つの電池のインピーダンス曲線を
図11に示す。
【0157】
図11から、同一の作製工程にて電池を作製しても、電池特性にバラツキがあり、インピーダンス特性に大きな違いが生じる場合があることがわかる。これは、正極集電層中においてNi粒子が焼結せず、点接触することで導電パスが形成されており、正極集電層の導電性が不安定となっているためと考えられる。
【0158】
<iv 正極集電層として炭素材料含有の正極集電層を設けたサンプル、正極集電層としてNi粒子含有の負極集電層を設けたサンプル>
[サンプル5−1]
炭素材料として人造黒鉛(TIMCAL社製、KS6)と低温焼結ガラスとして酸化物ガラスAとを80:20(=人造黒鉛:酸化物ガラスA)の体積比で配合し、この配合物と樹脂バインダとを高沸点溶媒に分散させることにより正極集電層形成用ペーストを作製した。この正極集電層形成用ペーストを用いて炭素材料含有の正極集電層を形成したこと以外はサンプル4−1と同様にして電池を得た。
【0159】
[サンプル5−2]
サンプル4−1と同様にして電池を得た。
【0160】
(充放電曲線)
以下の条件により電池の充放電試験を行い、充放電曲線を取得した。その結果を
図12Aに示す。
測定環境条件:ドライエアー雰囲気、23℃
充放電条件:2.5μA CC(Constant Current) → 0.3μA CV(Constant Voltage)、4.2Vcut
放電電条件:2.5μA CC(Constant Current)、2Vcut
【0161】
(インピーダンス曲線)
インピーダンス測定装置(東洋テクニカ製)を用いて、室温(23℃)にて電池に交流インピーダンス測定を行い、インピーダンス曲線を取得した。その結果を
図12Bに示す。
【0162】
図12Aから、Ni粒子粉含有の正極集電層に代えて、炭素材料含有の正極集電層を用いることで、放電容量を向上できることがわかる。
図12Bから、Ni粒子粉含有の正極集電層に代えて、炭素材料含有の正極集電層を用いることで、インピーダンス曲線の円弧を小さくできる、すなわち、正極活物質層と正極集電層との間の密着性を改善し、界面抵抗を低減できることがわかる。
上記の効果の発現は、Ni粒子粉に比べて柔軟な炭素材料を正極集電層に用いることにより、正極集電層と正極活物質層との間に良好な界面が形成されたためと考えられる。
【0163】
<4 応用例>
「応用例としてのプリント回路基板」
以下、本開示をプリント回路基板に対して適用した応用例について説明する。
上述した電池は、プリント回路基板上に充電回路等と共に実装することができる。例えばプリント回路基板上に全固体電池及び充電回路等の電子回路をリフロー工程でもって実装することができる。プリント回路基板は、電池モジュールの一例であり、携帯可能なカード型モバイル電池であってもよい。
【0164】
図13は、プリント回路基板1201の構成の一例を示す。プリント回路基板1201は、基板1202と、この基板1202の片面に設けられた全固体電池1203、充放電制御IC(Integrated Circuit)1204、電池保護IC1205、電池残量監視IC1206およびUSB(Universal Serial Bus)インターフェース1207とを備える。ここでは、プリント回路基板1201が片面基板である例について説明するが、両面基板であってもよい。また、多層基板であってもよいし、ビルドアップ基板であってもよい。
【0165】
基板1202は、例えばリジッド基板である。全固体電池1203は、第1、第2の実施形態およびその変形例のいずれかに係る電池である。充放電制御IC1204は、全固体電池1203に対する充放電動作を制御する制御部である。電池保護IC1205は、充放電時に充電電圧が過大となったり、負荷短絡によって過電流が流れたり、過放電が生じることがないように充放電動作を制御する制御部である。電池残量監視IC1206は、全固体電池1203の電池残量を監視し、電池残量を負荷(例えばホスト機器)1209等に通知する監視部である。
【0166】
外部電源等からUSBインターフェース1207を介して供給される電力によって全固体電池1203が充電される。全固体電池1203から負荷接続端子1208a、1208bを介して負荷1209に対して所定の電力(例えば電圧が4.2V)が供給される。なお、負荷との接続にUSBインターフェース1207が使用されてもよい。
【0167】
負荷1209の具体例としては、ウェアラブル機器(スポーツウオッチ、時計、補聴器等)、IoT端末(センサネットワーク端末等)、アミューズメント機器(ポータブルゲーム端末、ゲームコントローラ)、IC基板埋め込み電池(リアルタイムクロックIC)、環境発電機器(太陽光発電、熱電発電、振動発電等の発電素子用の蓄電素子)等が挙げられる。
【0168】
「応用例としてのユニバーサルクレジットカード」
以下、本開示をユニバーサルクレジットカードに対して適用した応用例について説明する。
ユニバーサルクレジットカードは、複数枚のクレジットカードやポイントカード等の機能を、1枚のカードに集約したカードである。このカードの中には、例えば、様々なクレジットカードやポイントカードの番号や有効期限等の情報を取り込むことができるので、そのカード1枚を財布等の中の入れておけば、好きな時に好きなカードを選択して利用することができる。
【0169】
図14は、ユニバーサルクレジットカード1301の構成の一例を示す。ユニバーサルクレジットカード1301は、カード型形状を有し、その内部に図示しないICチップと全固体電池とを備える。また、ユニバーサルクレジットカード1301は、一方の面に小電力消費のディスプレイ1302と、操作部としての方向キー1303a、1303bと、充電用端子1304とを備える。全固体電池は、第1、第2の実施形態およびその変形例のいずれかに係る電池である。
【0170】
例えば、ユーザはディスプレイ1302を見ながら方向キー1303a及び1303bを操作して、予めユニバーサルクレジットカード1301にロードされている複数のクレジットカードから所望のものを指定することができる。指定後は、従来のクレジットカードと同様に使用することができる。なお、上記は一例であって、第1、第2の実施形態およびその変形例のいずれかに係る電池は、ユニバーサルクレジットカード1301以外のあらゆる電子カードに適用可能であることは言うまでもない。
【0171】
「応用例としてのセンサネットワーク端末」
以下、本開示をセンサネットワーク端末に対して適用した応用例について説明する。
無線センサネットワークにおける無線端末は、センサノードと呼ばれ、1個以上の無線チップ、マイクロプロセッサ、電源(電池)等により構成される。センサネットワークの具体例としては、省エネルギー管理、健康管理、工業計測、交通状況、農業等をモニタするのに使用される。センサの種類としては、電圧、温度、ガス、照度等が使用される。
【0172】
省エネルギー管理の場合、センサノードとして、電力モニタノード、温度・湿度ノード、照度ノード、CO
2ノード、人感ノード、リモートコントロールノード、ルータ(中継機)等が使用される。これらのセンサノードが家庭、オフィスビル、工場、店舗、アミューズメント施設等において無線ネットワークを構成するように設けられる。
【0173】
そして、温度、湿度、照度、CO
2濃度、電力量等のデータが表示され、環境の省エネの状況が見えるようになっている。さらに、制御局からのコマンドによって、照明、空調施設、換気施設等のオン/オフ制御がなされる。
【0174】
センサネットワークの無線インターフェースの一つとしてZigBee(登録商標)を使用することができる。この無線インターフェースは、近距離無線通信規格の一つであり、転送可能距離が短く転送速度も低速である代わりに、安価で消費電力が少ない特徴を有する。したがって、電池駆動可能な機器への実装に向いている。この通信規格の基礎部分は、IEEE802.15.4として規格化されている。論理層以上の機器間の通信プロトコルはZigBee(登録商標)アライアンスが仕様の策定を行っている。
【0175】
図15は、無線センサノード1401の構成の一例を示す。センサ1402の検出信号がマイクロプロセッサ(MPU)1403のAD変換回路1404に供給される。センサ1402として上述した種々のセンサが使用できる。マイクロプロセッサ1403と関連してメモリ1406が設けられている。さらに、電池1407の出力が電源制御部1408に供給され、センサノード1401の電源が管理される。電池1407は、第1、第2の実施形態およびその変形例のいずれかに係る電池である。
【0176】
マイクロプロセッサ1403に対してプログラムがインストールされる。マイクロプロセッサ1403がプログラムにしたがってAD変換回路1404から出力されるセンサ1402の検出結果のデータを処理する。マイクロプロセッサ1403の通信制御部1405に対して無線通信部1409が接続され、無線通信部1409から検出結果のデータがネットワーク端末(図示せず)に対して例えばZigBee(登録商標)を使用して送信され、ネットワーク端末を介してネットワークに接続される。一つのネットワーク端末に対して所定数の無線センサノードが接続可能である。なお、ネットワークの形態としては、スター型以外に、ツリー型、メッシュ型及びリニア型等の形態を使用することができる。
【0177】
「応用例としてのリストバンド型電子機器」
以下、本開示をリストバンド型電子機器に対して適用した応用例について説明する。
リストバンド型電子機器は、スマートバンドとも呼ばれ、腕に巻き付けておくのみで、歩数、移動距離、消費カロリー、睡眠量、心拍数等の人の活動に関するデータを取得することができるものである。さらに、取得されたデータをスマートフォンで管理することもできる。さらに、メールの送受信機能を備えることもでき、例えば、メールの着信をLED(Light Emitting Diode)ランプ及び/又はバイブレーションでユーザに知らせることができる。
【0178】
図16は、リストバンド型電子機器1601の外観の一例を示す。電子機器1601は、人体に着脱自在とされる時計型のいわゆるウェアラブル機器である。電子機器1601は、腕に装着されるバンド部1611と、数字、文字及び図柄等を表示する表示装置1612と、操作ボタン1613とを備えている。バンド部1611には、複数の孔部1611aと、内周面(電子機器1601の装着時に腕に接触する側の面)側に設けられた突起1611bとが形成されている。
【0179】
電子機器1601は、使用状態においては、
図16に示すようにバンド部1611が略円形となるように湾曲され、孔部1611aに突起1611bが挿入されて腕に装着される。突起1611bを挿入する孔部1611aの位置を調整することにより、腕の太さに対応して径の大きさを調整することができる。電子機器1601は、使用されない状態では、孔部1611aから突起1611bが取り外され、バンド部1611が略平坦な状態で保管される。バンド部1611内部には、バンド部1611のほぼ全体にわたってセンサ(図示せず)が設けられている。
【0180】
図17は、電子機器1601の構成の一例を示す。電子機器1601は、上述した表示装置1612の他に、駆動制御部としてのコントローラIC1615と、センサ1620と、ホスト機器1616と、電源としての電池1617と、充放電制御部1618とを備える。センサ1620がコントローラIC1615を含んでいてもよい。
【0181】
センサ1620は、押圧と曲げとの両方を検出可能なものである。センサ1620は、押圧に応じた静電容量の変化を検出し、それに応じた出力信号をコントローラIC1615に出力する。また、センサ1620は、曲げに応じた抵抗値の変化(抵抗変化)を検出し、それに応じた出力信号をコントローラIC1615に出力する。コントローラIC1615は、センサ1620からの出力信号に基づき、センサ1620の押圧および曲げを検出し、それの検出結果に応じた情報をホスト機器1616に出力する。
【0182】
ホスト機器1616は、コントローラIC1615から供給される情報に基づき、各種の処理を実行する。例えば、表示装置1612に対する文字情報や画像情報等の表示、表示装置1612に表示されたカーソルの移動、画面のスクロール等の処理を実行する。
【0183】
表示装置1612は、例えばフレキシブルな表示装置であり、ホスト機器1616から供給される映像信号や制御信号等に基づき、映像(画面)を表示する。表示装置1612としては、例えば、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence:EL)ディスプレイ、電子ペーパー等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0184】
電池1617は、第1、第2の実施形態およびその変形例のいずれかに係る電池である。充放電制御部1618は、電池1617の充放電動作を制御する。具体的には、外部電源等から電池1617への充電を制御する。また、電池1617からホスト機器1616への電力の供給を制御する。
【0185】
「応用例としてのスマートウオッチ」
以下、本開示をスマートウオッチに対して適用した応用例について説明する。
このスマートウオッチは、既存の腕時計のデザインと同様または類似の外観を有し、腕時計と同様にユーザの腕に装着して使用するものであり、ディスプレイに表示される情報で、電話や電子メールの着信等の各種メッセージをユーザに通知する機能を有する。また、電子マネー機能、活動量計等の機能を有していてもよいし、通信端末(スマートフォン等)とBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信を行う機能を有していてもよい。
【0186】
(スマートウオッチの全体構成)
図18は、スマートウオッチ2000の全体構成の一例を示す。スマートウオッチ2000は、時計本体3000とバンド型電子機器2100とを備える。時計本体3000は、時刻を表示する文字盤3100を備える。時計本体3000は、文字盤3100の代わりに、液晶ディスプレイ等で電子的に時刻を表示してもよい。
【0187】
バンド型電子機器2100は、時計本体3000に取り付けられる金属製のバンドであり、ユーザの腕に装着される。バンド型電子機器2100は、複数のセグメント2110〜2230を連結した構成を有する。時計本体3000の一方のバンド取付孔にセグメント2110が取り付けられ、時計本体3000の他方のバンド取付孔にセグメント2230が取り付けられる。セグメント2110〜2230はそれぞれ、金属で構成される。
【0188】
なお、
図18では、バンド型電子機器2100の構成の一例を説明するために、時計本体3000とセグメント2230とが離れた状態を示すが、実際の使用時には、時計本体3000にセグメント2230が取り付けられる。時計本体3000にセグメント2230が取り付けられることで、スマートウオッチ2000は、通常の腕時計と同様に、ユーザの腕に装着することができる。それぞれのセグメント2110〜2230の接続箇所は、可動させることが可能である。セグメントの接続箇所が可動できることで、バンド型電子機器2100をユーザの腕にフィットさせることができる。
【0189】
セグメント2170とセグメント2160との間には、バックル部2300が配置される。バックル部2300は、ロックを外した状態のとき長く伸び、ロックした状態のとき短くなる。各セグメント2110〜2230は、複数種類のサイズで構成される。
【0190】
(スマートウオッチの回路構成)
図19は、バンド型電子機器2100の回路構成の一例を示す。バンド型電子機器2100の内部の回路は、時計本体3000とは独立した構成である。時計本体3000は、文字盤3100に配置された針を回転させるムーブメント部3200を備える。ムーブメント部3200には、電池3300が接続されている。これらのムーブメント部3200や電池3300は、時計本体3000の筐体内に内蔵されている。電池3300は、第1、第2の実施形態およびその変形例のいずれかに係る電池である。
【0191】
セグメント2110〜2230のうち3つのセグメント2170、2190、2210には、電子部品等が配置される。セグメント2170には、データ処理部4101と無線通信部4102とNFC通信部4104とGPS部4106とが配置される。無線通信部4102、NFC通信部4104、GPS部4106には、それぞれアンテナ4103、4105、4107が接続されている。それぞれのアンテナ4103、4105、4107は、セグメント2170が有するスリット(図示せず)の近傍に配置される。
【0192】
無線通信部4102は、例えばBluetooth(登録商標)の規格で他の端末と近距離無線通信を行う。NFC通信部4104は、NFCの規格で、近接したリーダー/ライタと無線通信を行う。GPS部4106は、GPS(Global Positioning System)と称されるシステムの衛星からの電波を受信して、現在位置の測位を行う測位部である。これらの無線通信部4102、NFC通信部4104、GPS部4106で得たデータは、データ処理部4101に供給される。
【0193】
セグメント2170には、ディスプレイ4108とバイブレータ4109とモーションセンサ4110と音声処理部4111とが配置されている。ディスプレイ4108とバイブレータ4109は、バンド型電子機器2100の装着者に通知する通知部として機能するものである。ディスプレイ4108は、複数個の発光ダイオードで構成され、発光ダイオードの点灯や点滅でユーザに通知を行う。複数個の発光ダイオードは、例えばセグメント2170が有するスリット(図示せず)の内部に配置され、電話の着信や電子メールの受信等が点灯又は点滅で通知される。ディスプレイ4108としては、文字や数字等を表示するタイプのものが使用されてもよい。バイブレータ4109は、セグメント2170を振動させる部材である。バンド型電子機器2100は、バイブレータ4109によるセグメント2170の振動で、電話の着信や電子メールの受信等を通知する。
【0194】
モーションセンサ4110は、スマートウオッチ2000を装着したユーザの動きを検出する。モーションセンサ4110としては、加速度センサ、ジャイロセンサ、電子コンパス、気圧センサ等が使用される。また、セグメント2170は、モーションセンサ4110以外のセンサを内蔵してもよい。例えば、スマートウオッチ2000を装着したユーザの脈拍等を検出するバイオセンサが内蔵されてもよい。音声処理部4111には、マイクロホン4112とスピーカ4113とが接続され、音声処理部4111が、無線通信部4102での無線通信で接続された相手と通話の処理を行う。また、音声処理部4111は、音声入力操作のための処理を行うこともできる。
【0195】
セグメント2190には電池2411が内蔵され、セグメント2210には電池2421が内蔵される。電池2411、2421は、セグメント2170内の回路に駆動用の電源を供給する。セグメント2170内の回路と電池2411、2421は、フレキシブル回路基板(図示せず)により接続されている。なお、
図19には示さないが、セグメント2170は、電池2411、2421を充電するための端子を備える。また、セグメント2190、2210には、電池2411、2421以外の電子部品が配置されてもよい。例えば、セグメント2190、2210は、電池2411、2421の充放電を制御する回路を備えるようにしてもよい。電池2411、2421は、第1、第2の実施形態およびその変形例のいずれかに係る電池である。
【0196】
「応用例としてのメガネ型端末」
以下、本開示を頭部装着型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ(HMD))の一種に代表されるメガネ型端末に適用した応用例について説明する。
以下に説明するメガネ型端末は、目の前の風景にテキスト、シンボル、画像等の情報を重畳して表示することができるものである。すなわち、透過式メガネ型端末専用の軽量且つ薄型の画像表示装置ディスプレイモジュールを搭載している。
【0197】
この画像表示装置は、光学エンジンとホログラム導光板からなる。光学エンジンは、マイクロディスプレイレンズを使用して画像、テキスト等の映像光を出射する。この映像光がホログラム導光板に入射される。ホログラム導光板は、透明板の両端部にホログラム光学素子が組み込まれたもので、光学エンジンからの映像光を厚さ1mmのような非常に薄い透明板の中を伝搬させて観察者の目に届ける。このような構成によって、透過率が例えば85%という厚さ3mm(導光板前後の保護プレートを含む)レンズを実現している。かかるメガネ型端末によって、スポーツ観戦中にプレーヤ、チームの成績等をリアルタイムで見ることができたり、旅先での観光ガイドを表示したりできる。
【0198】
メガネ型端末の具体例は、
図20に示すように、画像表示部が眼鏡型の構成とされている。すなわち、通常の眼鏡と同様に、眼前に右画像表示部5001及び左画像表示部5002を保持するためのフレーム5003を有する。フレーム5003は、観察者の正面に配置されるフロント部5004と、フロント部5004の両端に蝶番を介して回動自在に取り付けられた2つのテンプル部5005、5006から成る。フレーム5003は、金属や合金、プラスチック、これらの組合せといった、通常の眼鏡を構成する材料と同じ材料から作製されている。なお、ヘッドホン部を設けるようにしてもよい。
【0199】
右画像表示部5001および左画像表示部5002は、利用者の右の眼前と、左の眼前とにそれぞれ位置するように配置されている。テンプル部5005、5006が利用者の頭部に右画像表示部5001および左画像表示部5002を保持する。フロント部5004とテンプル部5005の接続箇所において、テンプル部5005の内側に右表示駆動部5007が配置されている。フロント部5004とテンプル部5006の接続箇所において、テンプル部5006の内側に左表示駆動部5008が配置されている。
【0200】
フレーム5003には、電池5009、5010が設けられている。電池5009、5010は、第1、第2の実施形態およびその変形例のいずれかに係る電池である。
図20では省略されているが、フレーム5003には、加速度センサ、ジャイロ、電子コンパス、マイクロホン/スピーカ等が設けられている。さらに、フレーム5003には、撮像装置が設けられ、静止画/動画の撮影が可能とされている。さらに、フレーム5003には、メガネ部と例えば無線又は有線のインターフェースでもって接続されたコントローラが設けられている。コントローラには、タッチセンサ、各種ボタン、スピーカ、マイクロホン等が設けられている。さらに、フレーム5003は、スマートフォンとの連携機能を有している。例えばスマートフォンのGPS機能を活用してユーザの状況に応じた情報を提供することが可能とされている。以下、画像表示装置(右画像表示部5001又は左画像表示部5002)について主に説明する。
【0201】
図21は、メガネ型端末の画像表示装置(右画像表示部5001又は左画像表示部5002)の構成の一例を示す。画像表示装置5100は、画像生成装置5110、及び画像生成装置5110から出射された光が入射され、導光され、観察者の瞳5041に向かって出射される光学装置(導光手段)5120から構成されている。なお、光学装置5120は、画像生成装置5110に取り付けられている。
【0202】
光学装置5120は、第1の構成の光学装置から構成され、画像生成装置5110から入射された光が内部を全反射により伝播した後、観察者の瞳5041に向かって出射される導光板5121、導光板5121に入射された光が導光板5121の内部で全反射されるように、導光板5121に入射された光を偏向させる第1偏向手段5130、及び導光板5121の内部を全反射により伝播した光を導光板5121から出射させるために、導光板5121の内部を全反射により伝播した光を複数回に亙り偏向させる第2偏向手段5140を備えている。
【0203】
第1偏向手段5130及び第2偏向手段5140は導光板5121の内部に配設されている。そして、第1偏向手段5130は、導光板5121に入射された光を反射し、第2偏向手段5140は、導光板5121の内部を全反射により伝播した光を、複数回に亙り、透過、反射する。即ち、第1偏向手段5130は反射鏡として機能し、第2偏向手段5140は半透過鏡として機能する。より具体的には、導光板5121の内部に設けられた第1偏向手段5130は、アルミニウムから成り、導光板5121に入射された光を反射させる光反射膜(一種のミラー)から構成されている。一方、導光板5121の内部に設けられた第2偏向手段5140は、誘電体積層膜が多数積層された多層積層構造体から構成されている。誘電体積層膜は、例えば、高誘電率材料としてのTiO
2膜、及び、低誘電率材料としてのSiO
2膜から構成されている。
【0204】
誘電体積層膜と誘電体積層膜との間には、導光板5121を構成する材料と同じ材料から成る薄片が挟まれている。なお、第1偏向手段5130においては、導光板5121に入射された平行光が導光板5121の内部で全反射されるように、導光板5121に入射された平行光が反射(又は回折)される。一方、第2偏向手段5140においては、導光板5121の内部を全反射により伝播した平行光が複数回に亙り反射(又は回折)され、導光板5121から平行光の状態で出射される。
【0205】
第1偏向手段5130は、導光板5121の第1偏向手段5130を設ける部分5124を切り出すことで、導光板5121に第1偏向手段5130を形成すべき斜面を設け、係る斜面に光反射膜を真空蒸着した後、導光板5121の切り出した部分5124を第1偏向手段5130に接着すればよい。また、第2偏向手段5140は、導光板5121を構成する材料と同じ材料(例えば、ガラス)と誘電体積層膜(例えば、真空蒸着法にて成膜することができる)とが多数積層された多層積層構造体を作製し、導光板5121の第2偏向手段5140を設ける部分5125を切り出して斜面を形成し、係る斜面に多層積層構造体を接着し、研磨等を行って、外形を整えればよい。こうして、導光板5121の内部に第1偏向手段5130及び第2偏向手段5140が設けられた光学装置5120を得ることができる。
【0206】
光学ガラスやプラスチック材料から成る導光板5121は、導光板5121の軸線と平行に延びる2つの平行面(第1面5122及び第2面5123)を有している。第1面5122と第2面5123とは対向している。そして、光入射面に相当する第1面5122から平行光が入射され、内部を全反射により伝播した後、光出射面に相当する第1面5122から出射される。
【0207】
また、画像生成装置5110は、第1の構成の画像生成装置から構成され、2次元マトリクス状に配列された複数の画素を有する画像形成装置5111、及び画像形成装置5111の各画素から出射された光を平行光として、出射するコリメート光学系5112を備えている。
【0208】
ここで、画像形成装置5111は、反射型空間光変調装置5150、及び、白色光を出射する発光ダイオードから成る光源5153から構成されている。より具体的には、反射型空間光変調装置5150は、ライト・バルブとしてのLCOS(Liquid Crystal On Silicon)から成る液晶表示装置(LCD)5151、及び、光源5153からの光の一部を反射して液晶表示装置5151へと導き、且つ、液晶表示装置5151によって反射された光の一部を通過させてコリメート光学系5112へと導く偏光ビームスプリッター5152から構成されている。なお、LCDはLCOSタイプに限定されない。
【0209】
液晶表示装置5151は、2次元マトリクス状に配列された複数(例えば、320×240個)の画素を備えている。偏光ビームスプリッター5152は、周知の構成、構造を有する。光源5153から出射された無偏光の光は、偏光ビームスプリッター5152に衝突する。偏光ビームスプリッター5152において、P偏光成分は通過し、系外に出射される。一方、S偏光成分は、偏光ビームスプリッター5152において反射され、液晶表示装置5151に入射し、液晶表示装置5151の内部で反射され、液晶表示装置5151から出射される。ここで、液晶表示装置5151から出射した光の内、「白」を表示する画素から出射した光にはP偏光成分が多く含まれ、「黒」を表示する画素から出射した光にはS偏光成分が多く含まれる。従って、液晶表示装置5151から出射され、偏光ビームスプリッター5152に衝突する光の内、P偏光成分は、偏光ビームスプリッター5152を通過し、コリメート光学系5112へと導かれる。
【0210】
一方、S偏光成分は、偏光ビームスプリッター5152において反射され、光源5153に戻される。液晶表示装置5151は、例えば、2次元マトリクス状に配列された複数(例えば、320×240個)の画素(液晶セルの数は画素数の3倍)を備えている。コリメート光学系5112は、例えば、凸レンズから構成され、平行光を生成させるために、コリメート光学系5112における焦点距離の所(位置)に画像形成装置5111(より具体的には、液晶表示装置5151)が配置されている。また、1画素は、赤色を出射する赤色発光副画素、緑色を出射する緑色発光副画素、及び、青色を出射する青色発光副画素から構成されている。
【0211】
「応用例としての車両における蓄電システム」
本開示を車両用の蓄電システムに適用した例について、
図22を参照して説明する。
図22に、本開示が適用されるシリーズハイブリッドシステムを採用するハイブリッド車両の構成の一例を概略的に示す。シリーズハイブリッドシステムはエンジンで動かす発電機で発電された電力、あるいはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、電力駆動力変換装置で走行する車である。
【0212】
このハイブリッド車両7200には、エンジン7201、発電機7202、電力駆動力変換装置7203、駆動輪7204a、駆動輪7204b、車輪7205a、車輪7205b、バッテリー7208、車両制御装置7209、各種センサ7210、充電口7211が搭載されている。バッテリー7208に対して、上述した本開示の蓄電装置が適用される。
【0213】
ハイブリッド車両7200は、電力駆動力変換装置7203を動力源として走行する。電力駆動力変換装置7203の一例は、モータである。バッテリー7208の電力によって電力駆動力変換装置7203が作動し、この電力駆動力変換装置7203の回転力が駆動輪7204a、7204bに伝達される。なお、必要な個所に直流−交流(DC−AC)あるいは逆変換(AC−DC変換)を用いることによって、電力駆動力変換装置7203が交流モータでも直流モータでも適用可能である。各種センサ7210は、車両制御装置7209を介してエンジン回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御したりする。各種センサ7210には、速度センサ、加速度センサ、エンジン回転数センサなどが含まれる。
【0214】
エンジン7201の回転力は発電機7202に伝えられ、その回転力によって発電機7202により生成された電力をバッテリー7208に蓄積することが可能である。
【0215】
図示しない制動機構によりハイブリッド車両が減速すると、その減速時の抵抗力が電力駆動力変換装置7203に回転力として加わり、この回転力によって電力駆動力変換装置7203により生成された回生電力がバッテリー7208に蓄積される。
【0216】
バッテリー7208は、ハイブリッド車両の外部の電源に接続されることで、その外部電源から充電口211を入力口として電力供給を受け、受けた電力を蓄積することも可能である。
【0217】
図示しないが、二次電池に関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう情報処理装置を備えていても良い。このような情報処理装置としては、例えば、電池の残量に関する情報に基づき、電池残量表示を行う情報処理装置などがある。
【0218】
なお、以上は、エンジンで動かす発電機で発電された電力、或いはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、モーターで走行するシリーズハイブリッド車を例として説明した。しかしながら、エンジンとモーターの出力がいずれも駆動源とし、エンジンのみで走行、モーターのみで走行、エンジンとモーター走行という3つの方式を適宜切り替えて使用するパラレルハイブリッド車に対しても本開示は有効に適用可能である。さらに、エンジンを用いず駆動モータのみによる駆動で走行する所謂、電動車両に対しても本開示は有効に適用可能である。
【0219】
以上、本開示に係る技術が適用され得るハイブリッド車両7200の一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、バッテリー7208に好適に適用され得る。
【0220】
「応用例としての住宅における蓄電システム」
本開示を住宅用の蓄電システムに適用した例について、
図23を参照して説明する。例えば住宅9001用の蓄電システム9100においては、火力発電9002a、原子力発電9002b、水力発電9002c等の集中型電力系統9002から電力網9009、情報網9012、スマートメータ9007、パワーハブ9008等を介し、電力が蓄電装置9003に供給される。これと共に、家庭内発電装置9004等の独立電源から電力が蓄電装置9003に供給される。蓄電装置9003に供給された電力が蓄電される。蓄電装置9003を使用して、住宅9001で使用する電力が給電される。住宅9001に限らずビルに関しても同様の蓄電システムを使用できる。
【0221】
住宅9001には、発電装置9004、電力消費装置9005、蓄電装置9003、各装置を制御する制御装置9010、スマートメータ9007、各種情報を取得するセンサー9011が設けられている。各装置は、電力網9009および情報網9012によって接続されている。発電装置9004として、太陽電池、燃料電池等が利用され、発電した電力が電力消費装置9005および/または蓄電装置9003に供給される。電力消費装置9005は、冷蔵庫9005a、空調装置9005b、テレビジョン受信機9005c、風呂9005d等である。さらに、電力消費装置9005には、電動車両9006が含まれる。電動車両9006は、電気自動車9006a、ハイブリッドカー9006b、電気バイク9006cである。
【0222】
蓄電装置9003に対して、上述した本開示のバッテリユニットが適用される。蓄電装置9003は、二次電池又はキャパシタから構成されている。例えば、リチウムイオン電池によって構成されている。リチウムイオン電池は、定置型であっても、電動車両9006で使用されるものでも良い。スマートメータ9007は、商用電力の使用量を測定し、測定された使用量を、電力会社に送信する機能を備えている。電力網9009は、直流給電、交流給電、非接触給電の何れか一つまたは複数を組み合わせても良い。
【0223】
各種のセンサー9011は、例えば人感センサー、照度センサー、物体検知センサー、消費電力センサー、振動センサー、接触センサー、温度センサー、赤外線センサー等である。各種センサー9011により取得された情報は、制御装置9010に送信される。センサー9011からの情報によって、気象の状態、人の状態等が把握されて電力消費装置9005を自動的に制御してエネルギー消費を最小とすることができる。さらに、制御装置9010は、住宅9001に関する情報をインターネットを介して外部の電力会社等に送信することができる。
【0224】
パワーハブ9008によって、電力線の分岐、直流交流変換等の処理がなされる。制御装置9010と接続される情報網9012の通信方式としては、UART(Universal Asynchronous Receiver-Transmitter:非同期シリアル通信用送受信回路)等の通信インターフェースを使う方法、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、Wi−Fi等の無線通信規格によるセンサーネットワークを利用する方法がある。Bluetooth(登録商標)方式は、マルチメディア通信に適用され、一対多接続の通信を行うことができる。ZigBeeは、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.15.4の物理層を使用するものである。IEEE802.15.4は、PAN(Personal Area Network)またはW(Wireless)PANと呼ばれる短距離無線ネットワーク規格の名称である。
【0225】
制御装置9010は、外部のサーバ9013と接続されている。このサーバ9013は、住宅9001、電力会社、サービスプロバイダーの何れかによって管理されていても良い。サーバ9013が送受信する情報は、たとえば、消費電力情報、生活パターン情報、電力料金、天気情報、天災情報、電力取引に関する情報である。これらの情報は、家庭内の電力消費装置(たとえばテレビジョン受信機)から送受信しても良いが、家庭外の装置(たとえば、携帯電話機等)から送受信しても良い。これらの情報は、表示機能を持つ機器、たとえば、テレビジョン受信機、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistants)等に、表示されても良い。
【0226】
各部を制御する制御装置9010は、CPU(Central Processing Unit )、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等で構成され、この例では、蓄電装置9003に格納されている。制御装置9010は、蓄電装置9003、家庭内発電装置9004、電力消費装置9005、各種センサー9011、サーバ9013と情報網9012により接続され、例えば、商用電力の使用量と、発電量とを調整する機能を有している。なお、その他にも、電力市場で電力取引を行う機能等を備えていても良い。
【0227】
以上のように、電力が火力9002a、原子力9002b、水力9002c等の集中型電力系統9002のみならず、家庭内発電装置9004(太陽光発電、風力発電)の発電電力を蓄電装置9003に蓄えることができる。したがって、家庭内発電装置9004の発電電力が変動しても、外部に送出する電力量を一定にしたり、または、必要なだけ放電するといった制御を行うことができる。例えば、太陽光発電で得られた電力を蓄電装置9003に蓄えると共に、夜間は料金が安い深夜電力を蓄電装置9003に蓄え、昼間の料金が高い時間帯に蓄電装置9003によって蓄電した電力を放電して利用するといった使い方もできる。
【0228】
なお、この例では、制御装置9010が蓄電装置9003内に格納される例を説明したが、スマートメータ9007内に格納されても良いし、単独で構成されていても良い。さらに、蓄電システム9100は、集合住宅における複数の家庭を対象として用いられてもよいし、複数の戸建て住宅を対象として用いられてもよい。
【0229】
以上、本開示に係る技術が適用され得る蓄電システム9100の一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、蓄電装置9003が有する二次電池に好適に適用され得る。
【0230】
以上、本技術の実施形態およびその変形例、ならびに実施例について具体的に説明したが、本技術は、上述の実施形態およびその変形例、ならびに実施例に限定されるものではなく、本技術の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0231】
例えば、上述の実施形態およびその変形例、ならびに実施例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いてもよい。また、化合物等の化学式は代表的なものであって、同じ化合物の一般名称であれば、記載された価数等に限定されない。
【0232】
また、上述の実施形態およびその変形例、ならびに実施例の構成、方法、工程、形状、材料および数値などは、本技術の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0233】
また、本技術は電池を備える種々の電子機器に適用可能であり、上述の応用例で説明した電子機器に限定されるものではない。上述の応用例以外の電子機器としては、例えば、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型コンピュータ、携帯電話(例えばスマートフォン等)、携帯情報端末(Personal Digital Assistants:PDA)、表示装置(LCD、ELディスプレイ、電子ペーパ等)、撮像装置(例えばデジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ等)、オーディオ機器(例えばポータブルオーディオプレイヤー)、ゲーム機器、コードレスフォン子機、電子書籍、電子辞書、ラジオ、ヘッドホン、ナビゲーションシステム、メモリーカード、ペースメーカー、補聴器、電動工具、電気シェーバー、冷蔵庫、エアコン、テレビ、ステレオ、温水器、電子レンジ、食器洗い器、洗濯機、乾燥器、照明機器、玩具、医療機器、ロボット、ロードコンディショナー、信号機等が挙げられるが、これに限定されるものでなない。
【0234】
また、本技術は以下の構成を採用することもできる。
(1)
正極層と負極層と固体電解質層とを備え、
前記負極層は、炭素材料を含み、
前記負極層中における炭素材料の体積占有率は、50vol%以上95vol%以下である全固体電池。
(2)
前記炭素材料は、グラファイトであり、
前記負極層は、負極活物質層と負極集電体層との両方の機能を有している(1)に記載の全固体電池。
(3)
前記炭素材料は、グラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラックおよび炭素繊維のうちの少なくとも1種を含む(1)に記載の全固体電池。
(4)
前記負極層は、金属材料をさらに含む(1)から(3)のいずれかに記載の全固体電池。
(5)
前記負極層は、
炭素材料を含む負極活物質層と、
炭素材料を含む負極集電層と
を備え、
前記負極活物質層および前記負極集電層に含まれる炭素材料の種類が異なる(1)または(3)に記載の全固体電池。
(6)
前記負極活物質層および前記負極集電層における炭素材料の体積占有率は、50vol%以上95vol%以下である(5)に記載の全固体電池。
(7)
前記負極層は、
炭素材料を含む負極活物質層と、
炭素材料と金属材料とを含む負極集電層と
を備え、
前記負極活物質層および前記負極集電層に含まれる炭素材料の種類が異なる(1)または(3)に記載の全固体電池。
(8)
前記負極層は、Li含有の酸化物ガラスまたはLi含有の酸化物ガラスセラミックスを含む(1)から(7)のいずれかに記載の全固体電池。
(9)
前記酸化物ガラスおよび前記酸化物ガラスセラミックスは、酸化ゲルマニウム、酸化ケイ素、酸化ホウ素および酸化リンのうちの少なくとも1種と、酸化リチウムとを含む(8)に記載の全固体電池。
(10)
前記正極層は、正極活物質層と正極集電層とを備え、
前記正極集電層は、炭素材料を含み、
前記正極集電層中における炭素材料の体積占有率は、50vol%以上95vol%以下である(1)から(9)のいずれかに記載の全固体電池。
(11)
(1)から(10)のいずれかに記載の全固体電池から電力の供給を受ける電子機器。
(12)
(1)から(10)のいずれかに記載の全固体電池から電力の供給を受ける電子カード。
(13)
(1)から(10)のいずれかに記載の全固体電池から電力の供給を受けるウェアラブル機器。
(14)
(1)から(10)のいずれかに記載の全固体電池と、
前記全固体電池から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、
前記全固体電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行う制御装置と
を有する電動車両。