(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記放射電極から放射される電波の波長をλとすると、前記浮遊電極は、各辺または各対角線がλ/4未満の長さを有する多角形形状に形成される、請求項7に記載のアンテナモジュール。
前記放射電極から放射される電波の波長をλとすると、前記浮遊電極は、直径がλ/4未満の長さを有する円形形状に形成される、請求項7に記載のアンテナモジュール。
前記浮遊電極は、前記複数の第1電極の各々に対応して設けられ、対応する前記第1電極と前記法線方向に重なるように配置された第2電極をさらに含む、請求項10に記載のアンテナモジュール。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0017】
[実施の形態1]
(通信装置の基本構成)
図1は、本実施の形態1に係るアンテナモジュール100が適用される通信装置10の一例のブロック図である。通信装置10は、たとえば、携帯電話、スマートフォンあるいはタブレットなどの携帯端末や、通信機能を備えたパーソナルコンピュータなどである。
【0018】
図1を参照して、通信装置10は、アンテナモジュール100と、ベースバンド信号処理回路を構成するBBIC200とを備える。アンテナモジュール100は、給電回路の一例であるRFIC110と、アンテナアレイ120とを備える。通信装置10は、BBIC200からアンテナモジュール100へ伝達された信号を高周波信号にアップコンバートしてアンテナアレイ120から放射するとともに、アンテナアレイ120で受信した高周波信号をダウンコンバートしてBBIC200にて信号を処理する。
【0019】
なお、
図1では、説明を容易にするために、アンテナアレイ120を構成する複数の給電素子121のうち、4つの給電素子121に対応する構成のみ示され、同様の構成を有する他の給電素子121に対応する構成については省略されている。また、本実施の形態においては、給電素子121が、矩形の平板形状を有するパッチアンテナである場合を例として説明する。
【0020】
RFIC110は、スイッチ111A〜111D,113A〜113D,117と、パワーアンプ112AT〜112DTと、ローノイズアンプ112AR〜112DRと、減衰器114A〜114Dと、移相器115A〜115Dと、信号合成/分波器116と、ミキサ118と、増幅回路119とを備える。
【0021】
高周波信号を送信する場合には、スイッチ111A〜111D,113A〜113Dがパワーアンプ112AT〜112DT側へ切換えられるとともに、スイッチ117が増幅回路119の送信側アンプに接続される。高周波信号を受信する場合には、スイッチ111A〜111D,113A〜113Dがローノイズアンプ112AR〜112DR側へ切換えられるとともに、スイッチ117が増幅回路119の受信側アンプに接続される。
【0022】
BBIC200から伝達された信号は、増幅回路119で増幅され、ミキサ118でアップコンバートされる。アップコンバートされた高周波信号である送信信号は、信号合成/分波器116で4分波され、4つの信号経路を通過して、それぞれ異なる給電素子121に給電される。このとき、各信号経路に配置された移相器115A〜115Dの移相度が個別に調整されることにより、アンテナアレイ120の指向性を調整することができる。
【0023】
各給電素子121で受信された高周波信号である受信信号は、それぞれ、異なる4つの信号経路を経由し、信号合成/分波器116で合波される。合波された受信信号は、ミキサ118でダウンコンバートされ、増幅回路119で増幅されてBBIC200へ伝達される。
【0024】
RFIC110は、例えば、上記回路構成を含む1チップの集積回路部品として形成される。あるいは、RFIC110における各給電素子121に対応する機器(スイッチ、パワーアンプ、ローノイズアンプ、減衰器、移相器)については、対応する給電素子121毎に1チップの集積回路部品として形成されてもよい。
【0025】
(アンテナモジュールの構造)
図2は、実施の形態1に従うアンテナモジュール100の断面図である。
図2を参照して、アンテナモジュール100は、給電素子121およびRFIC110に加えて、誘電体基板130と、接地電極GNDと、無給電素子150と、給電配線140を備える。なお、
図2においては、説明を容易にするために、給電素子121が1つだけ配置される場合について説明するが、複数の給電素子121が配置される構成であってもよい。また、以降の説明においては、給電素子121および無給電素子150を包括して「放射電極」とも称する。
【0026】
誘電体基板130は、たとえば、エポキシ、ポリイミドなどの樹脂が多層構造に形成された基板である。また、誘電体基板130は、より低い誘電率を有する液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer:LCP)あるいはフッ素系樹脂を用いて形成されてもよい。
【0027】
給電素子121は、誘電体基板130の第1面132あるいは誘電体基板130の内部の層に配置される。
図2の例においては、給電素子121は、誘電体基板130の第1面132と給電素子121の表面とが同じレベルとなるように、誘電体基板130に埋め込まれた態様となっている。
【0028】
RFIC110は、誘電体基板130における、上記の第1面132とは反対側の第2面(実装面)134に、はんだバンプなど(図示せず)の接続用電極を介して実装される。接地電極GNDは、誘電体基板130において、給電素子121が配置される層と第2面134との間に配置される。
【0029】
無給電素子150は、誘電体基板130の給電素子121と接地電極GNDとの間の層に、給電素子121と対向するように配置される。無給電素子150のサイズ(放射面の面積)は、給電素子121のサイズよりも大きく、誘電体基板130の第1面132の法線方向からアンテナモジュール100を平面視した場合に、給電素子121の全体が無給電素子150と重なるように配置されている。無給電素子150の厚みd2は、給電素子121の厚みd1よりも厚い(d2>d1)。
【0030】
給電配線140は、RFIC110から、接地電極GNDおよび無給電素子150を貫通して、給電素子121に接続される。給電配線140は、RFIC110からの高周波電力を給電素子121へと供給する。なお、図には示されていないが、接地電極GNDには、給電配線140が貫通する貫通孔が形成されている。
【0031】
図3は、比較例のアンテナモジュール100#の断面図である。アンテナモジュール100#は、無給電素子150#の厚みを除いて、基本的には
図2のアンテナモジュール100の構成と同じである。アンテナモジュール100#の無給電素子150#は、給電素子121と同じ厚み(d1)となっている。給電素子121と無給電素子150#との間の距離は、アンテナモジュール100と同様にH1とする。また、無給電素子150#と接地電極GNDとの間の距離も、アンテナモジュール100と同様にH2とする。この場合、アンテナモジュール100における接地電極GNDと給電素子121との間の距離H3は、アンテナモジュール100#における接地電極GNDと給電素子121との間の距離H3#よりも、無給電素子の厚みの差(d2−d1)だけ長くなる。
【0032】
一般的に、放射電極から放射することができる電波の周波数帯域幅は、放射電極と接地電極との間の電磁界結合の強さによって定まることが知られている。電磁界結合の強さが強くなるにつれて周波数帯域幅は狭くなり、電磁界結合の強さが弱くなるにつれて周波数帯域幅は広くなる。また、電磁界結合の強度は、放射電極と接地電極との間の距離が近くなるほど強くなり、遠ざかるほど弱くなる。
【0033】
また、電磁界結合は、放射電極の接地電極側の主面に限らず側面についても生じ得る。このため、放射電極と接地電極との間の距離が一定の場合には、電磁界結合の強度は、放射電極の厚みが薄くなるほど強くなり、厚くなるほど弱くなる。すなわち、当該場合には、放射電極の厚みが厚くなることで放射電極の上面(すなわち、接地電極とは反対の面)と接地電極との間の距離が拡大されるほど電磁界結合の強度が小さくなる。
【0034】
ここで、放射電極(第1放射電極)と接地電極との間に他の放射電極(第2放射電極)が配置された構成では、第1放射電極から放射することができる電波の周波数帯域幅は、第1放射電極と第2放射電極との間の電磁界結合の強度に依存する。一方で、第2放射電極から放射することができる電波の周波数帯域幅は、第2放射電極と接地電極との間の電磁界結合の強度に依存する。
【0035】
また、アンテナモジュール100における接地電極GNDから無給電素子150の上面までの距離H4は、アンテナモジュール100#における接地電極GNDから無給電素子150#の上面までの距離H4#よりも、無給電素子の厚みの差(d2−d1)だけ長くなる。したがって、無給電素子150,150#から放射される電波の周波数帯域幅は、アンテナモジュール100の方が、比較例のアンテナモジュール100#よりも広くなる。
【0036】
ここで、放射電極から放射される電波の周波数帯域を拡大するためには、基本的には誘電体基板の厚みを厚くすることが必要となる。しかしながら、誘電体基板の層数を増加させると、製造過程における積層工程が増えてしまうので製造コストが増加し得る。
【0037】
本実施の形態1のように、給電素子と接地電極との間に配置される無給電素子の厚みを厚くすることで、誘電体基板の層数を増加することなく無給電素子(放射電極)から放射される電波の周波数帯域幅を拡大することができる。
【0038】
次に、
図2および
図3のように、無給電素子の厚みを変化させた場合の周波数帯域幅の違いについてシミュレーションを行なった結果について説明する。
図4は、シミュレーションに用いたアンテナモジュールの断面図である。
図4(a)のアンテナモジュール100Aが本実施の形態1に従うアンテナモジュールであり、
図4(b)のアンテナモジュール100#Aが比較例のアンテナモジュールである。
【0039】
なお、
図4(a)および
図4(b)のアンテナモジュール100A,100#Aにおいては、
図5の平面図に示すように、誘電体基板130の第1面132の給電素子121の各辺に沿って短冊状の無給電素子122が配置されており、さらに給電配線140が無給電素子150,150#の層でオフセットしている点が
図2,
図3のアンテナモジュールと異なっているが、その他の部分については
図2および
図3の構成と同じである。すなわち、アンテナモジュール100Aの無給電素子150の厚みは、アンテナモジュール100#Aの無給電素子150#の厚みよりも厚くなっている。
【0040】
無給電素子122を加えることで複共振を発生させ、周波数帯域幅を拡大する効果がある。
【0041】
図6は、
図4(a),(b)のアンテナモジュールについての特性をシミュレーションした結果を示す図である。
図6においては、横軸に周波数が示されており、縦軸には反射損失(リターンロス)が示されている。実線L1が
図4(a)のアンテナモジュール100Aの特性を示しており、破線L2が
図4(b)のアンテナモジュール100#Aの特性を示している。なお、
図6において、28GHz帯(25〜30GHz付近)の共振周波数は無給電素子が支配的であり、38.5GHz帯(35〜45GHz付近)の共振周波数は給電素子121が支配的である。
【0042】
図4のように、接地電極GNDと無給電素子の150,150#との間の距離H2と無給電素子150,150#と給電素子121との間の距離H1は変化していないが、無給電素子150の厚みを無給電素子150#の厚みよりも増やすことで、接地電極GNDから無給電素子150の上面までの距離H4が増加している。38.5GHz帯の帯域幅は、距離H1に支配されるために変化が小さい。一方で、距離H2は変わらないが28GHz帯に支配的なアンテナ厚みに相当する距離H4が大きくなるため、28GHz帯の周波数帯域幅が拡大する。実際、28GHz帯については、反射損失が10dB以上となる周波数帯域幅は、
図4(a)のアンテナモジュール100Aでは26.5〜30.0GHzであり、比較例の
図4(b)のアンテナモジュール100#Aでは26.5〜29.5GHzとなっている。すなわち、無給電素子の厚みを厚くした実施の形態1のアンテナモジュール100Aの周波数帯域幅の方が広くなっている。
【0043】
なお、無給電素子150の厚みを厚くして距離H3を拡大するとともに、無給電素子150を接地電極GNDに近づけることによって、距離H2を短くするとともに距離H1を広げて、38.5GHz帯の周波数帯域幅を拡大するようにしてもよい。また、28GHz帯と38.5GHz帯の周波数帯域幅の拡大幅のバランスを取ることも可能である。
【0044】
このように、給電素子と接地電極との間に配置された無給電素子の厚みを厚くすることによって、誘電体基板の層数を増やすことなく、特定のバンドの周波数帯域幅を拡大することができる。
【0045】
なお、実際の機器の設計においては、当該機器の他の部品のサイズによってアンテナモジュールのサイズ(厚み)が制限される。すなわち、周波数帯域幅を拡大するために無制限にアンテナモジュールの厚みを厚くすることはできない。
【0046】
上記のようなアンテナモジュールは、製造時において、各層を積層後に加熱しながら厚み方向に加圧することによって誘電体の各層と放射電極とが密着される。このとき、誘電体材料は加圧によって若干厚みが減少するため、製造工程においてアンテナモジュールの厚みが設計値よりも薄くなり、所望の周波数帯域幅よりもやや狭まってしまうという状態が生じ得る。
【0047】
一方で、銅などの金属材料で形成される放射電極については、アンテナモジュールの製造工程における加圧によって厚みはほとんど変化しない。したがって、本実施の形態1のように金属の無給電素子150の厚みを厚くすることによって、製造工程におけるアンテナモジュールの厚みの減少を抑制することができる。すなわち、周波数帯域幅を設計値よりもさらに拡大するというよりは、むしろ、製造工程において周波数帯域幅が設計値から低下することを抑制することができるという効果を奏する。
【0048】
(変形例1)
実施の形態1においては、給電素子と接地電極との間に配置された平板状の無給電素子の厚み全体を厚くする構成について説明したが、無給電素子の厚みを厚くする構成はこれに限られない。
【0049】
図7は、変形例1に従うアンテナモジュール100Bの断面図である。
図7を参照して、変形例1においては、無給電素子150Bは、誘電体基板130の異なる層に配置された2つの平板状の電極151,152と、これら2つの電極151,152を電気的に接続する複数のビア153とによって形成されている。
【0050】
2つの電極151,152は、互いに同一形状かつ同一サイズ(寸法)を有する金属板(たとえば、銅)である。なお、2つの電極151,152の厚み、ならびに、ビア153の寸法および数については、無給電素子150Bの共振周波数が所望の周波数となるように適宜設計される。
【0051】
無給電素子150Bをこのような構成とすることによって、無給電素子150Bの全体の厚みd3を、
図3の比較例の場合よりも厚くすることができる(d3>d1)。そして、給電素子121と無給電素子150Bとの間の距離、および、無給電素子150Bと接地電極GNDとの間の距離を比較例の場合と同様にそれぞれH1,H2とすると、接地電極GNDから給電素子121までの距離H3Bを、上記の
図3の比較例の場合の距離H3#よりも長くすることができる。また、接地電極GNDから無給電素子150Bの上面までの距離H4Bを、上記の
図3の比較例の場合の距離H4#よりも長くすることができる。これにより、比較例のアンテナモジュール100#と比較して、28GHz帯の周波数帯域幅を拡大することができる。
【0052】
(変形例2)
図8は、変形例2に従うアンテナモジュール100Cの断面図である。アンテナモジュール100Cは、上記の変形例1における無給電素子150Bの2つの電極の厚みをさらに厚くした構成の例である。より具体的には、アンテナモジュール100Cの無給電素子150Cに含まれる2つの電極151C,152Cの厚みは、
図7の2つの電極151,152の厚みよりも厚く、かつ、給電素子121の厚みよりも厚い。
【0053】
このような構成とすることによって、無給電素子150C全体の厚みd4を、無給電素子150Bの厚みd3よりもさらに厚くすることができるので、接地電極GNDと給電素子121との間の距離H3Cが変形例1の場合よりもさらに長くなる。また、接地電極GNDから無給電素子150Cの上面までの距離H4Cが変形例1の場合よりもさらに長くなる。これによって、28GHz帯の周波数帯域幅を、変形例1の場合よりもさらに拡大することができる。
【0054】
(変形例3)
実施の形態1および変形例1,2においては、誘電体基板130の第1面132に給電素子121が配置され、給電素子121と接地電極GNDとの間に無給電素子が配置される構成について説明したが、給電素子121と無給電素子との配置は逆であってもよい。また、実施の形態1および変形例1,2においては、給電素子121が38.5GHz
帯に対応し、無給電素子が28GHz帯に対応して
いるが、これらの対応は逆であってもよい。
【0055】
図9は、変形例3に従うアンテナモジュール100Dの断面図である。
図9を参照して、変形例3のアンテナモジュール100Dにおいては、誘電体基板130の第1面132に無給電素子150Dが配置され、無給電素子150Dと接地電極GNDとの間に給電素子121Dが配置されている。そして、給電配線140Dを介して高周波電力がRFIC110から給電素子121Dへと供給される。また、アンテナモジュール100Dにおいては、無給電素子150Dが38.5GHz帯に対応し、給電素子121が28GHz帯に対応する。
【0056】
変形例3の場合には、給電素子121Dの厚みd5が、無給電素子150Dの厚みd4よりも厚くなるように設計される。これにより、給電素子121Dの厚みが無給電素子150Dの厚みと同じd4の場合に比べて、無給電素子150Dと接地電極GNDとの間の距離H3Dを長くすることができる。また、上記の場合に比べて、接地電極GNDから給電素子121Dの上面までの距離H4Dを長くすることができる。したがって、給電素子121Dの厚みがd4の場合に比べて、28GHz帯の周波数帯域幅を拡大することができる。
【0057】
なお、変形例3のような、給電素子が無給電素子と接地電極との間に配置される場合においても、給電素子を変形例1,2のような構成とすることも可能である。
【0058】
[実施の形態2]
実施の形態1においては、誘電体基板の厚み方向に2つの放射電極(給電素子,無給電素子)を備えるアンテナモジュールにおいて、誘電体基板の内層側に配置された放射電極の厚みを厚くすることによって、周波数帯域幅を拡大する構成について説明した。
【0059】
実施の形態2においては、厚み方向に1つの放射電極(給電素子)を有するアンテナモジュールにおいて、放射電極として機能しない浮遊電極を誘電基板内に配置することによって、実施の形態1と同様に周波数帯域幅を拡大する構成について説明する。
【0060】
すなわち、実施の形態1では、複数のバンドに対応するアンテナモジュールにおいて、特定のバンドの周波数帯域幅を拡大するために、内層側に配置された放射電極の厚みを厚くする構成について説明した。このような内層側に配置された電極の厚みを厚くすることで周波数帯域幅を拡大する技術的思想は、単一のバンドに対応するアンテナモジュールにも適用することができる。そこで、実施の形態2では、単一のバンドに対応するアンテナモジュールについて説明する。
【0061】
なお、実施の形態2で説明する構成は、単一のバンドに対応するアンテナモジュールに限らず、無給電素子等をさらに有することにより複数のバンドに対応してもよい。
【0062】
図10は、実施の形態2に係るアンテナモジュール100Eの断面図である。
図10を参照して、アンテナモジュール100Eにおいては、
図2のアンテナモジュール100と比較すると、無給電素子150が浮遊電極160に置き換わった構成となっている。
【0063】
浮遊電極160は、給電素子121および無給電素子150と同様に、銅などの金属材料で形成されている。浮遊電極160は、誘電体基板130において、給電素子121と接地電極GNDとの間の層に配置される。また、浮遊電極160は、アンテナモジュール100Eを平面視した場合に、給電素子121と少なくとも一部が重なる位置に配置される。
【0064】
浮遊電極160は、円形形状あるいは多角形形状に形成されている。給電素子121から放射される高周波信号の波長をλとすると、浮遊電極160は、円形形状の場合にはその直径がλ/4未満の長さとされ、多角形形状の場合には各辺または各対角線がλ/4未満の長さとされる。このような寸法で浮遊電極160を形成することによって、その共振周波数を当該アンテナモジュールから放射される高周波信号の周波数帯域幅の範囲外とすることができる。したがって、浮遊電極160はアンテナモジュール100Eにおいては放射電極として機能しない。
【0065】
このように、放射電極として機能しない浮遊電極160を、放射電極(給電素子121)と接地電極GNDとの間に配置することによって、誘電体基板130の厚み方向における銅含有率が増加し、浮遊電極160が配置された層については、製造工程において厚みの減少を低減することができる。これにより、アンテナモジュール100Eにおいては、浮遊電極160が配置されない場合に比べて、給電素子121と接地電極GNDとの間の距離を長くすることができる。したがって、誘電体基板130の層数を増加することなく特定のバンドの周波数帯域幅を拡大することができる。
【0066】
(変形例4)
実施の形態2においては、給電素子に対して1つの浮遊電極を設ける構成について説明したが、浮遊電極の数はこれに限られず、複数の浮遊電極を設けてもよい。
【0067】
図11は、変形例4に係るアンテナモジュール100Fの断面図である。
図11を参照して、アンテナモジュール100Fにおいては、給電素子121と接地電極GNDとの間の層に、複数の浮遊電極160Fが配置されている。
図12は、アンテナモジュールを平面視したときの、放射電極と浮遊電極との位置関係を説明するための図である。アンテナモジュール100Fの例においては、矩形形状を有する4つの浮遊電極160Fが、給電素子121の四隅の部分に少なくとも一部が重なるように、給電素子121に対して対称にそれぞれ配置されている。
【0068】
給電素子121と重なるように配置されることによって、製造工程において誘電体材料の厚さが減少することに伴う給電素子121の沈み込みを抑制することができる。これにより、給電素子121と接地電極GNDとの間の距離を確保することができるので、浮遊電極を設けない場合に比べて周波数帯域幅を広くすることができる。また、浮遊電極160Fを給電素子121に対して対称に配置することによって、給電素子121の沈み込みを均一にできるので、製造工程における給電素子121の歪みを抑制することができる。
【0069】
(変形例5)
変形例5においては、
図11で説明したアンテナモジュール100Fにおける浮遊電極
160Fの厚みがさらに厚くされた構成について説明する。
【0070】
図13は、変形例5に従うアンテナモジュール100Gの断面図である。アンテナモジュール100Gにおける浮遊電極160Gは、
図11におけるアンテナモジュール100Fの浮遊電極
160Fと比べて、電極の厚みが厚くされている。これにより、誘電体基板130の法線方向の銅含有率を増加させることができ、
図11のときに比べて給電素子121と接地電極GNDとの間の距離をさらに長くすることができる。
【0071】
したがって、アンテナモジュール100Gにおける給電素子121の周波数帯域幅をさらに拡大することができる。
【0072】
(変形例6)
図14は、変形例6に係るアンテナモジュール100Hの断面図である。アンテナモジュール100Hにおいては、変形例4で説明した浮遊電極が複数の層に設けられる構成を有している。
【0073】
図14を参照して、アンテナモジュール100Hは、浮遊電極160Hとして、誘電体基板130の異なる層に配置された2つの電極161,162を含む。電極161,162は、互いに同一形状かつ同一サイズ(寸法)に形成されている。電極161および電極162は、アンテナモジュール100Hを法線方向から平面視した場合に、互いに重なるように配置されている。なお、図示していないが、2つの電極161,162を含む複数の浮遊電極160Hは、変形例4の
図12で説明したように、給電素子121の四隅の部分と少なくとも一部が重なるように対称的に配置される。
【0074】
このように、誘電体基板の厚み方向の異なる層に複数の浮遊電極を配置することによって、誘電体基板の厚み方向の銅含有率をさらに増加させることができる。したがって、製造工程における給電素子121と接地電極GNDとの間の距離の減少を抑制することができ、特定のバンドの周波数帯域幅を拡大することができる。
【0075】
なお、
図14においては、浮遊電極160Hの2つの電極161,162が同一形状かつ同一サイズである場合の例について説明したが、電極161と電極162の形状および/またはサイズを異なるものとしてもよい。ただし、この場合であっても、電極161の組については給電素子121に対して対称に配置されることが好ましく、また、電極162の組についても給電素子121に対して対称に配置されることが好ましい。
【0076】
(変形例7)
図15は、変形例7に係るアンテナモジュール100Iの断面図である。アンテナモジュール100Iにおいては、
図14のアンテナモジュール100Hにおける浮遊電極の2つの電極をビアで電気的に接続した構成を有している。
【0077】
図15を参照して、アンテナモジュール100Iは、浮遊電極160Iとして、誘電体基板130の異なる層に配置された2つの電極165,166と、これらを電気的に接続する金属製(たとえば、銅)の複数のビア167とを含む。電極165,166は、互いに同一形状かつ同一サイズに形成されており、アンテナモジュール100Iを法線方向から平面視した場合に、互いに重なるように配置されている。なお、図示していないが、2つの電極165,166を含む複数の浮遊電極160Iは、変形例4の
図12で説明したように、給電素子121の四隅の部分と少なくとも一部が重なるように対称的に配置される。
【0078】
このように、浮遊電極160Iの2つの電極165,166間を金属製のビアで接続することによって、製造工程において2つの電極165,166の間隔が狭められることが抑制できる。したがって、製造工程における給電素子121と接地電極GNDとの間の距離の減少を抑制することができ、特定のバンドの周波数帯域幅を拡大することができる。
【0079】
(変形例8)
変形例7のアンテナモジュール100Iの浮遊電極
160Iにおいては、ビア167で接続された2つの電極165,166が同一形状かつ同一サイズである場合について説明した。
【0080】
変形例8に係るアンテナモジュール100Jにおいては、異なる形状および/またはサイズの2つの電極をビアで接続することによって浮遊電極が形成される構成について説明する。
【0081】
図16を参照して、アンテナモジュール100Jにおいては、浮遊電極160Jとして、誘電体基板130の異なる層に配置された2つの電極165J,166Jと、これらを電気的に接続する金属製の複数のビア167Jとを含む。電極165Jおよび電極166Jとは、互いに異なる形状および/またはサイズで形成されている。なお、
図16においては、電極165Jのサイズが電極166Jのサイズよりも小さい例が示されているが、これとは反対に、電極165Jのサイズを電極166Jのサイズよりも大きくしてもよい。
【0082】
変形例8のアンテナモジュール100Jにおいても、変形例7と同様に、製造工程において2つの電極が形成される層の間隔が狭められることが抑制されるので、製造工程における給電素子121と接地電極GNDとの間の距離の減少を抑制することができる。したがって、特定のバンドの周波数帯域幅を拡大することができる。
【0083】
なお、変形例7,8においても、浮遊電極に含まれる各電極の厚みを放射電極の厚みよりも厚くするようにしてもよい。また、2つの電極間の距離をさらに遠ざけ、より長いビアで2つの電極を接続するようにしてもよい。誘電体基板の厚み方向における銅含有率を増やすことで、製造工程における誘電体材料の厚みの低下を抑制することができ、それによって特定のバンドの周波数帯域幅を拡大することが可能となる。
【0084】
実施の形態2においては、放射電極が1つの場合について説明したが、実施の形態1と実施の形態2を組合わせて、2つの放射電極(給電素子,無給電素子)と浮遊電極とを有する構成としてもよい。さらに、3つ以上の放射電極を有する構成としてもよい。
【0085】
また、RFICの実装位置は、誘電体基板の第2面には限られず、放射電極と異なる位置において誘電体基板の第1面に
実装されてもよい。この場合には、接地電極には、給電配線が貫通する貫通孔が形成されなくてもよい。
【0086】
なお、上記の説明においては、誘電体基板130の第1面132側に配置される放射電極(第1放射電極)が、1枚の平板状の電極である場合を例として説明したが、当該放射電極を
図7の無給電素子150Bのように、複数の平板状電極をビアで接続した。しかし、第1放射電極は、当該第1放射電極と、第1放射電極よりも誘電体基板130の内層側に形成された他の放射電極(第2放射電極)との間に配置された他の電極とビアで接続される構成であってもよい。当該他の電極については、放射素子として機能してもよいし、実施の形態2のように放射素子として機能しないものであってもよい。この構成において、第1放射電極に接続される他の電極の厚み、または、第1放射電極と当該他の電極とを接続するビアの厚みは、第1放射電極の厚みには含まれない。
【0087】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。