(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記指令値補正部は、前記不感帯に前記一つの交流電圧指令値が突入した第一時刻と前記一つの交流電圧指令値が前記不感帯を離脱した第二時刻との間の期間を前記不感帯通過期間として検出する不感帯通過検出部を含む請求項1または2に記載の電力変換装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、実施の形態にかかる電力変換装置1の構成を示す図である。電力変換装置1は、直流電源2からの直流電力を三相交流電力に変換する。電力変換装置1は、入力コンデンサC1,C2と三レベルインバータ回路10とインバータ制御回路20と変流器(CT)11と計器用変成器(VT)12とを備えている。
【0014】
三レベルインバータ回路10は、複数の半導体スイッチング素子3を含んでいる。三レベルインバータ回路10は、中性点スイッチ方式のインバータ回路である。半導体スイッチング素子3は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などの電力用半導体素子である。
【0015】
三レベルインバータ回路10は、アーム回路を備えている。アーム回路は、複数の半導体スイッチング素子3が直列接続された回路である。
【0016】
図1に示すように、直流電源2の正極出力と三レベルインバータ回路10のハイサイド母線とが接続されており、このハイサイド母線にはハイサイド電位V+が印加される。直流電源2の負極出力と三レベルインバータ回路10のローサイド母線とが接続されており、このローサイド母線にはローサイド電位V−が印加される。
【0017】
入力コンデンサC1,C2からなる直列回路の一端は、上記のハイサイド母線に接続される。入力コンデンサC1,C2からなる直列回路の他端は、上記のローサイド母線に接続される。入力コンデンサC1と入力コンデンサC2との接続点から中性点電位V0が与えられる。
【0018】
半導体スイッチング素子3の制御電極には、ゲート信号であるゲートパルスが印加される。ゲートパルスは、インバータ制御回路20で生成される。ゲートパルスは、パルス幅変調(PWM)パルスである。ゲートパルスによって、複数の半導体スイッチング素子3がオンオフ駆動する。
【0019】
変流器11と計器用変成器12は、三レベルインバータ回路10の三相出力電流Iu、Iv、Iwと三相出力電圧Vu、Vv、Vwとを変換してインバータ制御回路20に伝達する。
【0020】
インバータ制御回路20は、電力計算部21とフィードバック制御部22a、22bと電圧指令値V
*を生成するインバータ電圧指令演算部23と指令値補正部24とゲート信号生成部25とを備えている。
【0021】
実施の形態では、一例として、下記の計算ロジックに従って三相出力電圧指令値が算出される。電力計算部21は、複数の計器用変成器12の計測値および複数の変流器11の計測値に基づいて有効電力計測値と無効電力計測値とを計算する。インバータ制御回路20は、インバータ制御回路20の外部に設けられたインバータ電圧指令演算部(図示せず)から指令値を受け取る。指令値は、有効電力指令値P
*と無効電力指令値Q
*とを含んでいる。
【0022】
有効電力差分ΔPが、第一の減算ブロックで演算される。有効電力差分ΔPは、電力計算部21からの有効電力計測値Pと有効電力指令値P
*との差分である。無効電力差分ΔQが、第二の減算ブロックで演算される。無効電力差分ΔQは、電力計算部21からの無効電力計測値Qと無効電力指令値Q
*との差分である。
【0023】
フィードバック制御部22aは、有効電力差分ΔPに対して公知のフィードバック制御を実施する。フィードバック制御部22bは、無効電力差分ΔQに対して公知のフィードバック制御を実施する。それぞれのフィードバック制御は、PI制御とP制御とPID制御とのうち任意の一つを用いることができる。
【0024】
インバータ電圧指令演算部23は、フィードバック制御部22aからの有効電力指令値とフィードバック制御部22bからの無効電力指令値とに基づいて三相電圧指令値を生成する。すなわち、インバータ電圧指令演算部23は、三レベルインバータ回路10の三相出力電流Iu、Iv、Iwと三相出力電圧Vu、Vv、Vwとに基づく電力計算部21と減算ブロックとフィードバック制御部22a、22bとによる一連の制御処理結果を受け取る。
【0025】
この一連の制御処理結果に基づいて、インバータ電圧指令演算部23は三相出力電圧指令値V
*u1、V
*v1、V
*w1を生成する。
【0026】
なお、上記のような有効電力および無効電力に基づく計算ロジックの代わりに、実施の形態の変形例としてMPPT((Maximum Power Point Tracking)制御に従って三相出力電圧指令値が設定されるようにインバータ制御回路20が構築されてもよい。このような変形例にかかるMPPT制御による三相出力電圧指令値の設定は、例えば直流電源2が太陽電池アレイである場合に用いることができる。
【0027】
三相出力電圧指令値V
*u1、V
*v1、V
*w1は、第一相交流電圧指令値V
*u1と第二相交流電圧指令値V
*v1と第三相交流電圧指令値V
*w1とを含んでいる。
【0028】
指令値補正部24は、三相出力電圧指令値V
*u1、V
*v1、V
*w1に補正を施した補正後指令値V
*u2、V
*v2、V
*w2を出力する。補正の内容を説明すると、まず、指令値補正部24は、不感帯通過期間T
DBに、「不感帯DBを通過中の一つの交流電圧指令値」の代わりに不感帯DBの端に対応する所定電圧指令値V
DBを出力する。
【0029】
不感帯通過期間T
DBは、不感帯DBを三相出力電圧指令値V
*u1、V
*v1、V
*w1のうち一つの交流電圧指令値が通過する期間である。不感帯DBは、電圧指令値V
*のゼロ値(V
*=0)の周辺に予め定められた指令値範囲である。不感帯DBの幅は、不感帯上限値V
DBHと不感帯下限値V
DBLとで決まる。不感帯上限値V
DBHおよび不感帯下限値V
DBLは不感帯DBのプラス端とマイナス端とを決める値であり、これらを所定電圧指令値V
DBとも称す。
【0030】
指令値補正部24は、不感帯通過期間T
DBに、所定電圧指令値V
DBを出力するとともに、差分ΔV
*を「他の二つの交流電圧指令値」に分配する。「他の二つの交流電圧指令値」とは、三相出力電圧指令値V
*u1、V
*v1、V
*w1のうち、不感帯DBの外側に存在する二つの交流電圧指令値のことである。差分ΔV
*は、不感帯通過期間T
DBにおける、不感帯DBを通過中の一つの交流電圧指令値と所定電圧指令値V
DBとの差分である。
【0031】
これらの補正の結果、補正後指令値V
*u2、V
*v2、V
*w2が出力される。補正後指令値V
*u2、V
*v2、V
*w2は、補正後第一相交流電圧指令値V
*u2と補正後第二相交流電圧指令値V
*v2と補正後第三相交流電圧指令値V
*w2とを含んでいる。
【0032】
図2は、実施の形態にかかる電力変換装置1が備える指令値補正部24の構成を示す図である。
図3〜
図6は、実施の形態にかかる指令値補正部24の動作を説明するためのタイムチャートである。
図3の上段に、三相出力電圧指令値V
*u1、V
*v1、V
*w1が図示されている。
図3の下段に、補正後指令値V
*u2、V
*v2、V
*w2が図示されている。
図3の中段には、補正に用いられる補正量ΔV
*が図示されている。
【0033】
図3から把握されるように、第一ゼロクロスzx1と第二ゼロクロスzx2と第三ゼロクロスzx3と第四ゼロクロスzx4と第五ゼロクロスzx5と第六ゼロクロスzx6とがこの順番で繰り返し到来する。
【0034】
図4は、
図3における時刻tx1の付近を指し示す破線部分X1を拡大したものである。
図5は、
図3における時刻tx2の付近を指し示す破線部分X2を拡大したものである。
【0035】
以下、指令値補正部24の構成及び動作を説明する。以下の説明において、便宜上、「一つの交流電圧指令値」および「他の二つの交流電圧指令値」という用語を用いる。「一つの交流電圧指令値」とは、三相出力電圧指令値V
*u1、V
*v1、V
*w1のうちの任意の一つの交流電圧指令値を指している。
【0036】
この「一つの交流電圧指令値」という用語は、主に、不感帯DBを通過する交流電圧指令値を、他の交流電圧指令値と区別するために用いられる。下記の説明では「一つの交流電圧指令値」に特定の相の交流電圧指令値を対応付けて説明することがあるが、「一つの交流電圧指令値」には三相出力電圧指令値V
*u1、V
*v1、V
*w1のいずれが代入されてもよい。
【0037】
一方、「他の二つの交流電圧指令値」とは、三相出力電圧指令値V
*u1、V
*v1、V
*w1のうち上記一つの交流電圧指令値を除く残りの二つの一つの交流電圧指令値を指している。「他の二つの交流電圧指令値」という用語は、主に、不感帯DBの外側にある交流電圧指令値を参照するために用いられる。
【0038】
図2に示すように、指令値補正部24は、補正量算出部24aと不感帯設定部24bと不感帯通過検出部24cと補正演算部24dとを含んでいる。
【0039】
不感帯設定部24bは、不感帯DBの幅を設定するためのブロックである。不感帯DBは、
図3〜
図6に記載されているように、電圧指令値V
*のゼロ値(V
*=0)の周辺に予め定められた範囲である。
【0040】
不感帯設定部24bは、不感帯上限値V
DBHと不感帯下限値V
DBLとをそれぞれ設定変更可能に構築されている。実施の形態では、一例として、不感帯上限値V
DBHと不感帯下限値V
DBLとが、正負符号が逆であり且つ同じ大きさを持つように設定されている。その結果、指令値ゼロ(V
*=0)を軸として不感帯DBはプラス側とマイナス側に同じ幅を持っている。
【0041】
不感帯通過検出部24cは、不感帯通過期間T
DBを検出する。不感帯通過期間T
DBは、不感帯DBを一つの交流電圧指令値が通過する期間である。不感帯通過検出部24cは、不感帯DBに一つの交流電圧指令値が突入した時刻とこの一つの交流電圧指令値が不感帯DBを離脱した時刻との間の期間を不感帯通過期間T
DBとして検出する。
【0042】
図4には、補正動作の一例として、第二相交流電圧指令値V
*u1が不感帯DBをローサイド(マイナス側)からハイサイド(プラス側)へと通過する期間に実施される補正動作が図示されている。
【0043】
図5には、一例として、第一相交流電圧指令値V
*u1が不感帯DBをハイサイド(プラス側)からローサイド(マイナス側)へと通過する期間に実施される補正動作が図示されている。
【0044】
補正量算出部24aは、不感帯通過期間T
DBにおいて、不感帯DBを通過中の一つの交流電圧指令値と所定電圧指令値V
DBとの差分ΔV
*を算出する。この差分ΔV
*が、補正量ΔV
*である。差分ΔV
*の演算周期は、不感帯通過期間T
DBに比べて十分に短いものとする。
【0045】
所定電圧指令値V
DBは、不感帯DBの端に対応する値である。実施の形態では、一例として、三相出力電圧指令値V
*u1、V
*v1、V
*w1それぞれが不感帯DBに突入する時に不感帯DBと交差する値を、三相出力電圧指令値V
*u1、V
*v1、V
*w1それぞれの所定電圧指令値V
DBとして取り扱う。
【0046】
すなわち、三相出力電圧指令値V
*u1、V
*v1、V
*w1それぞれがプラス側から不感帯DBに突入するときには、不感帯上限値V
DBHが、補正量算出部24aで差分を算出するための所定電圧指令値V
DBである。逆に、三相出力電圧指令値V
*u1、V
*v1、V
*w1それぞれがマイナス側から不感帯DBに突入するときには、不感帯下限値V
DBLが、補正量算出部24aで差分を算出するための所定電圧指令値V
DBである。
【0047】
実施の形態では、
図2に示すように、補正量算出部24aが、第一補正量算出ブロック24a1と第二補正量算出ブロック24a2と第三補正量算出ブロック24a3とを備える。
【0048】
第一補正量算出ブロック24a1は、不感帯通過検出部24cで検出されたゼロクロス方向に応じて、第一相交流電圧指令値V
*u1と不感帯設定部24bの所定電圧指令値V
DBとに基づいて、補正量ΔV
*を算出する。補正量算出のための所定電圧指令値VDBには、具体的にはV
DBHおよびV
DBLのいずれか一つが選択的に使用される。
【0049】
第二補正量算出ブロック24a2は、不感帯通過検出部24cで検出されたゼロクロス方向に応じて、第二相交流電圧指令値V
*v1と不感帯設定部24bの所定電圧指令値V
DBとに基づいて、補正量ΔV
*を算出する。第三補正量算出ブロック24a3は、不感帯通過検出部24cで検出されたゼロクロス方向に応じて、第三相交流電圧指令値V
*w1と不感帯設定部24bの所定電圧指令値V
DBとに基づいて、補正量ΔV
*を算出する。
【0050】
補正演算部24dは、補正量ΔV
*を三相出力電圧指令値V
*u1、V
*v1、V
*w1それぞれに加算する。補正演算部24dの加算によって、補正後指令値V
*u2、V
*v2、V
*w2それぞれが生成される。
【0051】
上記の制御処理によれば、まず、指令値補正部24は、不感帯通過期間T
DBには、補正量ΔV
*の基礎となった一つの交流電圧指令値に対して補正量ΔV
*を加算する。
図4の例であれば、一つの交流電圧指令値V
*u1に対してΔV
*が加算されている。この加算処理により、一つの交流電圧指令値が不感帯下限値V
DBLに固定される。
【0052】
従って、一つの交流電圧指令値の代わりに不感帯DBの端に対応する所定電圧指令値V
DBが出力され、この所定電圧指令値V
DBが補正後指令値V
*u2として取り扱われる。その結果、一つの交流電圧指令値の値が小さくなりすぎないようにゼロクロス付近で電圧指令値を不連続的に変化させることができる。
【0053】
これに加えて、指令値補正部24は、不感帯通過期間T
DBに、補正量ΔV
*を他の二つの交流電圧指令値に加算する。
図4の例では、補正量ΔV
*が、他の二つの交流電圧指令値V
*v1、V
*w1に加算されている。この加算処理によって、差分ΔV
*が他の二つの交流電圧指令値に分配され、分配後の指令値が補正後指令値として取り扱われる。他の二つの交流電圧指令値に対する指令値の分配によって、三相の相間電圧を保持することができる。
【0054】
ゲート信号生成部25は、指令値補正部24からの補正後指令値V
*u2、V
*v2、V
*w2に基づいてゲート信号を生成する。ゲート信号は、三レベルインバータ回路10が持つ半導体スイッチング素子3のゲート駆動用PWM信号である。
【0055】
ゲート信号生成部25は、デッドタイム生成部とキャリア信号生成部とPWM信号生成部とを含んでいる。
【0056】
デッドタイム生成部について説明する。三レベルインバータ回路10が持つアーム回路にアーム短絡が発生することを防ぐために、デッドタイムが設けられている。デッドタイムは、アーム回路を構成するハイサイドの半導体スイッチング素子3とローサイドの半導体スイッチング素子3とのオンタイミングをずらすための遅延時間である。デッドタイムの長さによって、PWMパルスのターンオンエッジをどの程度遅延させるかが決定される。インバータ回路におけるデッドタイム設定技術は既に公知の技術であり、新規の事項ではないので、詳細な説明は省略する。
【0057】
キャリア信号生成部について説明する。ゲート信号生成部25は、ダブルキャリア変調方式で三レベルインバータ回路10を駆動するためのゲート信号を出力する。ダブルキャリア変調方式では、レベルの異なる二つの三角波キャリア信号CW1、CW2が用いられる(
図6参照)。ゲート信号生成部25は、これらの三角波キャリア信号CW1、CW2を出力するキャリア信号生成部(図示せず)を含んでいる。
【0058】
図6に示すように、二つの三角波キャリア信号CW1、CW2は、ハイレベル三角波キャリア信号CW1とローレベル三角波キャリア信号CW2である。ハイレベル三角波キャリア信号CW1は、電圧指令値V
*のゼロ値(V
*=0)を基準として、プラスの値を取る搬送波である。ローレベル三角波キャリア信号CW2は、電圧指令値V
*のゼロ値(V
*=0)を基準として、マイナスの値を取る搬送波である。
【0059】
PWM信号生成部について説明する。
図6に示すように、補正後指令値V
*u2、V
*v2、V
*w2は、ハイレベル三角波キャリア信号CW1およびローレベル三角波キャリア信号CW2それぞれと交差する。補正後指令値V
*u2、V
*v2、V
*w2と各三角波キャリア信号CW1、CW2の交差点に基づいて、ゲートパルスの立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジが決定される。
【0060】
一例として、補正後指令値V
*u2、V
*v2、V
*w2が三角波キャリア信号CW1、CW2を超えている期間にスイッチング素子を導通させるように、PWMゲートパルスが生成される。なお、電圧指令値と三角波キャリアとを比較してPWMパルスを作成する技術は、既に公知の技術であり新規の事項ではないので、PWM信号生成部についてのこれ以上の説明は省略する。
【0061】
以上説明した実施の形態にかかる電力変換装置1は、下記の効果を奏する。三角波キャリア信号CW1、CW2の先端幅は狭いので、
図9の関連技術で述べたように、交流電圧指令値V
*u、V
*v、V
*wのゼロクロス付近においてはPWMパルスの幅が狭く生成されるおそれがある。
【0062】
この点、実施の形態にかかる電力変換装置1によれば、狭すぎる幅のPWMパルスが生成されることを抑制するために、電圧指令値のゼロクロス付近に不感帯DB(
図3〜
図6参照)が設定されている。この不感帯DBに基づき不感帯通過期間T
DBが検出される。不感帯通過期間T
DBにおいては、ゼロクロス直近の小さな値が交流電圧指令値として設定されないように、補正量ΔV
*の加算によって一つの交流電圧指令値に一定の制限が加えられる。一定の制限が加えられることで一つの交流電圧指令値が所定電圧指令値に保持されることとなる。この所定電圧指令値が補正後指令値V
*u2としてゲート信号生成部25で使用される。
【0063】
これらの一連の制御処理によれば、ゼロクロス付近で交流電圧指令値の値に制限が加えられることで、インバータ回路のデッドタイムにより消滅するような狭小なパルスが生成されることを防止できる。その結果、電圧指令値のゼロクロス付近においてインバータ制御の制御性が低下することを抑制することができる。
【0064】
また、実施の形態によれば、補正量ΔV
*の加算によって一つの交流電圧指令値V
*u1が停滞した停滞分は、他の二つの交流電圧指令値V
*v1、V
*w1に分配される。分配後の値が補正後指令値V
*v2、V
*w2としてゲート信号生成部25で使用される。これにより、三相の相間電圧を適正に保つことができる。
【0065】
このようにして、不感帯通過期間T
DBにおいて三相出力電圧指令値V
*u1、V
*v1、V
*w1それぞれに補正が施されるものの、全体としてみれば適切な補正後指令値V
*u2、V
*v2、V
*w2をインバータ回路10に与えることができる。これにより、電圧指令値のゼロクロス付近での制御性が低下することを抑制することができる。これにより、例えば電圧指令値のゼロクロス付近における電流ひずみなどの問題を抑制することができる。
【0066】
実施の形態では、指令値補正部24が不感帯DBを設定するための不感帯設定部24bを含むので、不感帯DBの幅を可変設定できるという利点がある。その結果、電圧指令値のゼロクロス付近での制御性低下を抑制するための必要十分な幅に、不感帯DBを設定できる利点がある。
【0067】
実施の形態では、指令値補正部24が不感帯通過検出部24cを含むので、不感帯通過期間T
DBを正確に検出できるという利点がある。
【0068】
実施の形態では、指令値補正部24が補正量算出部24aと補正演算部24dとを含んでいる。これにより、一つの補正量ΔV
*を演算してこれを三相出力電圧指令値V
*u1、V
*v1、V
*w1に加算することで、補正後指令値V
*u2、V
*v2、V
*w2を生成することができる。従って、複雑な演算処理を行わなくともよく、ハードウェア構成あるいはソフトウェア処理がシンプルになるという利点がある。
【0069】
図7は、実施の形態にかかる電力変換装置1が備える指令値補正部24の具体的構成の一例を示す図である。
図8は、実施の形態にかかる電力変換装置1が備える指令値補正部24の具体的構成の動作を説明するための図である。
図7の指令値補正部24は、
図2に記載した補正量算出部24aと不感帯設定部24bと不感帯通過検出部24cと補正演算部24dそれぞれの構成を具体化したものである。
【0070】
不感帯通過検出部24cは、6つの検出ブロックで構築されている。第一検出ブロックは、第一相交流電圧指令値V
*u1が不感帯DBを上から下に通過中であるときに1を出力し、そうでないときに0を出力する。なお、ここで言及する「上」および「下」とは、
図3〜
図6のタイミングチャートにおける紙面の上下に対応している。たとえば、電圧指令値が上から下に通過することは、電圧指令値がハイサイドからローサイドに不感帯DBを通過することを意味している。
【0071】
第二検出ブロックは、第一相交流電圧指令値V
*u1が不感帯DBを下から上に通過中であるときに1を出力し、そうでないときに0を出力する。第三検出ブロックは、第二相交流電圧指令値V
*v1が不感帯DBを上から下に通過中であるときに1を出力し、そうでないときに0を出力する。
【0072】
第四検出ブロックは、第二相交流電圧指令値V
*v1が不感帯DBを下から上に通過中であるときに1を出力し、そうでないときに0を出力する。第五検出ブロックは、第三相交流電圧指令値V
*w1が不感帯DBを上から下に通過中であるときに1を出力し、そうでないときに0を出力する。第六検出ブロックは、第三相交流電圧指令値V
*w1が不感帯DBを下から上に通過中であるときに1を出力し、そうでないときに0を出力する。
【0073】
補正量算出部24aは、6つのスイッチSW1〜SW6を備えている。第一スイッチSW1には、不感帯上限値V
DBHと第一相交流電圧指令値V
*u1との第一差分値が入力されている。第一スイッチSW1は、第一検出ブロックの出力に応じて、第一差分値とゼロとの間で出力を切り替える。第一検出ブロックの出力が1であれば、第一スイッチSW1から第一差分値が出力される。第一検出ブロックの出力が0であれば、第一スイッチSW1からゼロが出力される。
【0074】
第二スイッチSW2には、不感帯下限値V
DBLと第一相交流電圧指令値V
*u1との第二差分値が入力されている。第二スイッチSW2は、第二検出ブロックの出力に応じて、第二差分値とゼロとの間で出力を切り替える。第二検出ブロックの出力が1であれば、第二スイッチSW2から第二差分値が出力される。第二検出ブロックの出力が0であれば、第二スイッチSW2からゼロが出力される。
【0075】
第三スイッチSW3には、不感帯上限値V
DBHと第二相交流電圧指令値V
*v1との第三差分値が入力されている。第三スイッチSW3は、第三検出ブロックの出力に応じて、第三差分値とゼロとの間で出力を切り替える。第三検出ブロックの出力が1であれば、第三スイッチSW3から第三差分値が出力される。第三検出ブロックの出力が0であれば、第三スイッチSW3からゼロが出力される。
【0076】
第四スイッチSW4には、不感帯下限値V
DBLと第二相交流電圧指令値V
*v1との第四差分値が入力されている。第四スイッチSW4は、第四検出ブロックの出力に応じて、第四差分値とゼロとの間で出力を切り替える。第四検出ブロックの出力が1であれば、第四スイッチSW4から第四差分値が出力される。第四検出ブロックの出力が0であれば、第四スイッチSW4からゼロが出力される。
【0077】
第五スイッチSW5には、不感帯上限値V
DBHと第三相交流電圧指令値V
*w1との第五差分値が入力されている。第五スイッチSW5は、第五検出ブロックの出力に応じて、第五差分値とゼロとの間で出力を切り替える。第五検出ブロックの出力が1であれば、第五スイッチSW5から第五差分値が出力される。第五検出ブロックの出力が0であれば、第五スイッチSW5からゼロが出力される。
【0078】
第六スイッチSW6には、不感帯下限値V
DBLと第三相交流電圧指令値V
*w1との第六差分値が入力されている。第六スイッチSW6は、第六検出ブロックの出力に応じて、第六差分値とゼロとの間で出力を切り替える。第六検出ブロックの出力が1であれば、第六スイッチSW6から第六差分値が出力される。第六検出ブロックの出力が0であれば、第六スイッチSW6からゼロが出力される。
【0079】
補正量算出部24aは、第一スイッチSW1〜第六スイッチSW6の合計値を出力する。ただし、
図3から把握されるように、三相出力電圧指令値V
*u1、V
*v1、V
*w1それぞれのゼロクロスタイミングは互いに異なっている。
【0080】
具体的には、
図3から把握されるように、第一ゼロクロスzx1と第二ゼロクロスzx2と第三ゼロクロスzx3と第四ゼロクロスzx4と第五ゼロクロスzx5と第六ゼロクロスzx6とがこの順番で繰り返し到来する。
【0081】
第一ゼロクロスzx1は、w相指令値が指令値ゼロを上から下に通過するゼロクロスである。第二ゼロクロスzx2は、v相指令値が指令値ゼロを下から上に通過するゼロクロスである。第三ゼロクロスzx3は、u相指令値が指令値ゼロを上から下に通過するゼロクロスである。
【0082】
第四ゼロクロスzx4は、w相指令値が指令値ゼロを下から上に通過するゼロクロスである。第五ゼロクロスzx5は、v相指令値が指令値ゼロを上から下に通過するゼロクロスである。第六ゼロクロスzx6は、u相指令値が指令値ゼロを下から上に通過するゼロクロスである。
【0083】
なお、「上から下」とは、プラス値からマイナス値へと向かう変化を意味している。「下から上」とは、マイナス値からプラス値へと向かう変化を意味している。
【0084】
従って、ゼロ以外の差分値を出力するスイッチは、第五スイッチSW5、第四スイッチSW4、第一スイッチSW1、第六スイッチSW6、第三スイッチSW3、第二スイッチSW2、第五スイッチSW5、・・・という順番で交代していく。このように第一スイッチSW1〜第六スイッチSW6のなかで一つのスイッチのみがゼロ以外の差分値を出力し、残りのスイッチがゼロを出力する。その結果、補正量算出部24aからは、上記の第一差分値から第六差分値のなかのいずれか一つの値が、選択的に差分値ΔV
*として出力される。
【0085】
補正量算出部24aが出力した差分値ΔV
*は、補正演算部24dにおいて、三相出力電圧指令値V
*u1、V
*v1、V
*w1に加算される。
【0086】
図8を用いて、
図4に示すゼロクロスの場合における
図7の回路動作を説明する。
図4は、u相指令値が下から上に不感帯DBを通過するので、第六ゼロクロスzx6に対応している。まず、
図8の信号S1として、第一相交流電圧指令値V
*u1が補正演算部24dに伝達される。これと同時に、
図8の信号S2として、第一相交流電圧指令値V
*u1が不感帯通過検出部24cの第二ブロックに入力される。
【0087】
さらに、
図8の信号S3として、第一相交流電圧指令値V
*u1が補正量算出部24aへと入力される。また、不感帯設定部24bから、
図8の信号S4である不感帯下限値V
DBLが、補正量算出部24aへと入力される。
【0088】
不感帯下限値V
DBLと第一相交流電圧指令値V
*u1との差分が、補正量ΔV
*として算出される。補正量ΔV
*は、
図8の信号S5である。
【0089】
不感帯通過検出部24cの第二ブロックは、
図8の信号S6として、1を出力する。信号S6は、補正量算出部24aの第二スイッチSW2をオンに切り替える。オンされた第二スイッチSW2は、補正量ΔV
*を信号S7として出力する。
【0090】
その後、信号S7は第一スイッチSW1の出力と加算されることで信号S8となり、この信号S8はさらに第三スイッチSW3〜第六スイッチSW6の出力と合計されることで信号S9となる。信号S9は、補正量算出部24aの出力である。
【0091】
前述したように、第二スイッチSW2が補正量ΔV
*を算出しているときには、他のスイッチの出力は全てゼロである。従って、信号S9は、信号S5の値と一致する。補正演算部24dは、信号S9である補正量ΔV
*を、三相出力電圧指令値V
*u1、V
*v1、V
*w1に加算する。
【0092】
図10および
図11は、実施の形態の変形例にかかる指令値補正部24の動作を説明するためのタイムチャートである。
図10は、
図4に示した時刻tx1付近の補正動作を変形させたものである。
図11は、
図5に示した時刻tx2付近の補正動作を変形させたものである。
【0093】
図4、
図5、
図10および
図11を関連付けて説明すると、指令値補正部24の補正動作バリエーションには、下記の表に示すように四つの種類が存在する。第一補正動作は、
図4で説明したものである。第二補正動作は、
図5で説明したものである。表1の「所定電圧指令値」は、不感帯DBを通過する交流電圧指令値が、不感帯通過期間T
DBに貼り付く値である。
【0095】
図10の第三補正動作におけるゼロクロス方向は、ローサイドからハイサイドへ向かう方向(つまり図中の下から上)なので、
図4の第一補正動作と同じである。しかし、第三補正動作は、不感帯DBへの突入時に、不感帯DBへの突入端に当たる不感帯下限値V
DBLではなく、不感帯DBの離脱点となる不感帯上限値V
DBHを用いて、差分ΔV
*を算出する。
【0096】
図11の第四補正動作におけるゼロクロス方向は、ハイサイドからローサイドへ向かう方向(つまり図中の上から下)なので、
図5の第二補正動作と同じである。しかし、第四補正動作は、不感帯DBへの突入時に、不感帯DBへの突入端に当たる不感帯上限値V
DBHではなく、不感帯DBの離脱点となる不感帯下限値V
DBLを用いて、差分ΔV
*を算出する。
【0097】
なお、上記第三補正動作および第四補正動作を実現するためには、
図2および
図7に示した指令値補正部24の回路ブロックにおいて、差分ΔV
*を算出するロジックを変更すればよい。従って、詳細な回路説明は省略する。
【0098】
指令値補正部24は、ローサイドからハイサイドへのゼロクロス方向について、第一補正動作と第三補正動作とのうち一方の補正動作を用いることができる。指令値補正部24は、ハイサイドからローサイドへのゼロクロス方向について、第二補正動作と第四補正動作とのうち一方の補正動作を用いることができる。
【0099】
実施の形態では、指令値補正部24が、上記の第一補正動作と第二補正動作とを実行している。これに対し、変形例として、指令値補正部24が、上記第一補正動作と第四補正動作とを実行してもよい。あるいは、他の変形例として、指令値補正部24が、上記第二補正動作と第三補正動作とを実行してもよい。あるいは、他の変形例として、指令値補正部24が、上記第三補正動作と第四補正動作とを実行してもよい。また、さらなる変形例として、指令値補正部24が、上記第一〜第四補正動作それぞれを実行可能に構築され、条件に応じてこれらを選択的に切り替えるように構築されてもよい。
【0100】
なお、三レベルインバータ回路10の変形例として、中性点電位クランプ方式のインバータ回路が用いられてもよい。中性点電位クランプ方式のインバータ回路の一例は日本特開2001−136750号公報の
図10に記載されており、中性点電位クランプ方式のインバータ回路構成は新規な事項ではない。従って、図示及び説明を省略する。