(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記入力時系列データが前記基準時系列データに類似するか否かを判定し、前記入力時系列データが前記基準時系列データに類似しない場合、前記入力時系列データを前記時間ずれ量計算部による計算処理の対象としないデータ前処理部を更に備える、
請求項1〜5の何れか1項に記載の処理時間監視装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基準時系列データに対する対象装置の時系列データの時間ずれ量をユーザが把握することは、対象装置の異常の検知、及びその原因の推定に有用である。
【0005】
本発明は、基準時系列データに対する対象装置の時系列データの時間ずれ量をユーザに提供可能な処理時間監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係る処理時間監視装置(例えば、後述の処理時間監視装置1)は、対象装置の処理時間を監視する装置であって、前記対象装置の時系列データを入力時系列データとして取得するデータ取得部(例えば、後述のデータ取得部12)と、前記入力時系列データと基準時系列データとの時間軸方向の時間ずれ量を計算する時間ずれ量計算部(例えば、後述の時間ずれ量計算部18)と、前記時間ずれ量計算部によって計算された時間ずれ量を表示する表示部(例えば、後述の表示部26)とを備える。
【0007】
(2) (1)に記載の処理時間監視装置において、前記入力時系列データは、前記対象装置の処理を制御するための制御データであってもよく、処理時間監視装置は、前記入力時系列データに対応する前記対象装置の処理に関する処理情報を取得する処理情報取得部(例えば、後述の処理情報取得部20)を更に備えてもよく、前記表示部は、前記時間ずれ量の時間変化と前記処理情報とを時間軸を揃えて表示してもよい。
【0008】
(3) (2)に記載の処理時間監視装置は、前記入力時系列データごとの前記時間ずれ量の統計量を計算する統計量計算部(例えば、後述の統計量計算部22)を更に備えてもよく、前記統計量は、平均値、中央値、最大値、最小値、標準偏差、及び分散のうちの少なくとも1つであってもよく、前記表示部は、前記統計量の時間変化を表示してもよい。
【0009】
(4) (3)に記載の処理時間監視装置は、前記時間ずれ量を監視し、前記対象装置が異常であるか否かを判定する監視部(例えば、後述の監視部24)を更に備えてもよく、前記監視部は、前記対象装置が異常であると判定した場合に、異常と判定された入力時系列データ及び前記処理情報における異常個所を通知してもよい。
【0010】
(5) (1)から(4)のいずれかに記載の処理時間監視装置において、前記時間ずれ量計算部は、DPマッチング法を用いて前記時間ずれ量を計算してもよい。
【0011】
(6) (1)から(5)のいずれかに記載の処理時間監視装置は、前記データ取得部で取得された複数の時系列データを記憶する記憶部(例えば、後述の記憶部14)と、前記記憶部に記憶された過去の前記複数の時系列データのうちの何れか1つを、又は、前記記憶部に記憶された過去の前記複数の時系列データのうちの2以上の時系列データを平均化した平均時系列データを、前記基準時系列データとして作成する基準データ作成部(例えば、後述の基準データ作成部16)とを更に備えてもよい。
【0012】
(7) (1)から(6)のいずれかに記載の処理時間監視装置は、前記入力時系列データが前記基準時系列データに類似するか否かを判定し、前記入力時系列データが前記基準時系列データに類似しない場合、前記入力時系列データを前記時間ずれ量計算部による計算処理の対象としないデータ前処理部(例えば、後述のデータ前処理部13)を更に備えてもよい。
【0013】
(8) (1)に記載の処理時間監視装置において、前記入力時系列データは、前記対象装置の処理を制御するための制御データであってもよく、処理時間監視装置は、前記入力時系列データに対応する前記対象装置の処理に関する処理情報を取得する処理情報取得部(例えば、後述の処理情報取得部20)を更に備えてもよく、前記表示部は、前記時間ずれ量を前記処理情報単位で表示してもよい。
【0014】
(9) (1)から(8)のいずれかに記載の処理時間監視装置において、前記入力時系列データ及び前記基準時系列データは、波形データであってもよい。
【0015】
(10) (4)に記載の処理時間監視装置において、前記監視部は、前記対象装置が異常であると判定した場合に、前記対象装置の制御を行ってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基準時系列データに対する対象装置の時系列データの時間ずれ量をユーザに提供可能な処理時間監視装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係る処理時間監視装置の構成を示す図である。
【
図2】時間ずれ量の計算の一例を説明するための図である。
【
図3】時系列データに対応する工作機械の処理に関する処理情報の一例を説明するための図である。
【
図4】時間ずれ量の統計量の計算の一例を説明するための図である。
【
図5】時間ずれ量の監視の一例を説明するための図である。
【
図7】本実施形態の変形例に係る処理時間監視装置の構成を示す図である。
【
図8A】基準時系列データと入力時系列データとの一例を示す図である。
【
図8B】基準時系列データと入力時系列データとの一例を示すグラフである。
【
図9A】DPマッチング法の工程の一部を説明するための図である。
【
図9B】DPマッチング法の工程の一部を説明するための図である。
【
図10A】DPマッチング法の工程の一部を説明するための図である。
【
図10B】DPマッチング法の工程の一部を説明するための図である。
【
図10C】DPマッチング法の工程の一部を説明するための図である。
【
図10D】DPマッチング法の工程の一部を説明するための図である。
【
図11A】DPマッチング法の工程の一部を説明するための図である。
【
図11B】DPマッチング法の工程の一部を説明するための図である。
【
図12A】基準時系列データとDPマッチング後の入力時系列データとの一例を示す図である。
【
図12B】基準時系列データとDPマッチング後の入力時系列データとの一例を示すグラフである。
【
図13A】DPマッチングにおける時間軸方向の補正量、すなわち基準時系列データに対する入力時系列データの時間ずれ量の一例を示す図である。
【
図13B】DPマッチングにおける時間軸方向の補正量、すなわち基準時系列データに対する入力時系列データの時間ずれ量の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0019】
図1は、本実施形態に係る処理時間監視装置の構成を示す図である。
図1に示す処理時間監視装置1は、対象装置の処理時間を監視する装置である。本実施形態では、対象装置として、ワークの切削加工を行う工作機械を想定する。工作機械は、主軸及び送り軸を有し、数値制御装置からの制御データにより制御される。処理時間監視装置1は、数値制御装置からの制御データ、例えば各軸の位置情報(例えば位置指令値)又は主軸のトルク情報(例えばトルク指令値)等を監視する。
【0020】
なお、処理時間監視装置1は、工作機械からの各軸の位置情報(例えば位置フィードバック値)、主軸のトルク情報(例えば実電流値)、又はその他の信号等を監視してもよい。
【0021】
処理時間監視装置1は、データ取得部12と、記憶部14と、基準データ作成部16と、時間ずれ量計算部18と、処理情報取得部20と、統計量計算部22と、監視部24と、表示部26とを備える。
処理時間監視装置1(記憶部14及び表示部26を除く)は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field‐Programmable Gate Array)等の演算プロセッサで構成される。処理時間監視装置1(記憶部14及び表示部26を除く)の各種機能は、例えば記憶部に格納された所定のソフトウェア(プログラム、アプリケーション)を実行することで実現される。処理時間監視装置1(記憶部14及び表示部26を除く)の各種機能は、ハードウェアとソフトウェアとの協働で実現されてもよいし、ハードウェア(電子回路)のみで実現されてもよい。
記憶部14は、例えばEEPROM等の書き換え可能なメモリである。
表示部26は、例えば液晶ディスプレイ等の表示デバイスである。
【0022】
データ取得部12は、数値制御装置から、工作機械の各軸の位置情報(例えば、位置指令値又はフィードバック値)及び主軸のトルク情報(例えば、トルク指令値又は実電流値)等のうちの少なくとも1つの時系列データ(波形データ)を、入力時系列データ(入力波形データ)として取得する。
なお、データ取得部12は、外部からのデータに限らず、システム内部のデータを取得してもよい。
【0023】
記憶部14は、データ取得部12によって取得された複数の時系列データを記憶する。
【0024】
基準データ作成部16は、記憶部14に記憶された過去の正常時の時系列データに基づいて、基準時系列データを作成する。例えば、基準データ作成部16は、記憶部14に記憶された過去の複数の時系列データのうちの何れか1つを、基準時系列データ(基準波形データ)として作成してもよい。或いは、基準データ作成部16は、記憶部14に記憶された過去の複数の時系列データのうちの2以上の時系列データを平均化した平均時系列データを、基準時系列データ(基準波形データ)として作成してもよい。
【0025】
時間ずれ量計算部18は、データ取得部12によって取得された入力時系列データと、基準データ作成部16によって作成された基準時系列データとの時間軸方向の時間ずれ量を計算する。
図2は、時間ずれ量の計算の一例を説明するための図である。
図2に示すように、時間ずれ量計算部18は、例えば、主軸のトルク指令を表す入力波形(入力時系列データ:実線)と基準波形(基準時系列データ:破線)とについて(上図)、基準時系列データに対する入力時系列データの時間ずれ量を計算する(下図)。
【0026】
時間ずれ量計算部18は、例えば、パターンマッチング法(伸縮マッチング法)、特にDP(Dynamic Programming)マッチング法を用いて、基準時系列データに対する入力時系列データの時間ずれ量を計算する。DPマッチング法を用いた時間ずれ量の計算の詳細は後述する。
【0027】
処理情報取得部20は、入力時系列データが工作機械の処理を制御するための制御データ(例えば、各軸の位置指令値又は主軸のトルク指令値)である場合、この入力時系列データに対応する工作機械の処理に関する処理情報(例えば、処理内容、加工状態、その他信号等)を取得する。
図3は、時系列データに対応する工作機械の処理に関する処理情報の一例を説明するための図である。
図3に示すように、処理情報取得部20は、時系列データに対応する工作機械の処理に関する処理情報として、加工プログラムにおける処理内容(加工状態):加工、停止、工具交換等を取得する。
【0028】
統計量計算部22は、時間ずれ量計算部18によって計算された入力時系列データごとの時間ずれ量の統計量(例えば、平均値、中央値、最大値、最小値、標準偏差及び分散等)を計算し、記録する。
図4は、時間ずれ量の統計量の計算の一例を説明するための図である。
図4に示すように、統計量計算部22は、入力時系列データごとの時間ずれ量の統計量、例えば平均値、中央値、最大値、最小値、及び分散等を計算する。
【0029】
監視部24は、時間ずれ量計算部18で計算された時間ずれ量を監視し、工作機械が異常であるか否かを判定(診断)する。
図5は、時間ずれ量の監視の一例を説明するための図である。
図5に示すように、監視部24は、例えば時間ずれ量が閾値2σ(標準偏差、又は固定値)以上である場合に警告状態であると判定し、例えば時間ずれ量が閾値3σ(標準偏差、又は固定値)以上である場合に異常状態であると判定する。
【0030】
工作機械が異常であると判定された場合、監視部24は、異常と判定された入力時系列データ(すなわち、どの入力時系列データで異常を検知したか:例えば、加工回数、ワークID、データの開始時間と終了時間)及び処理情報における異常個所(原因箇所)を組み合わせてユーザへ通知する。例えば、
図5に示すように、表示部26を用いて、異常と判定された入力時系列データに対応する時間ずれ量の時間変化における異常個所の表示属性(線種、線の太さ、線の色等)を他の箇所の表示属性と異ならせる。また、表示部を用いて、処理情報をユーザが認識可能な情報(例えば文字情報、加工、停止、工具交換)とし、処理情報における異常個所の表示属性(文字の太さ、文字の色、囲み線等)を他の箇所の表示属性と異ならせる。これにより、どの入力時系列データで異常を検知したか、及び異常個所(原因箇所)と推測される加工内容をユーザへ通知することができる。
【0031】
また、工作機械が異常であると判定された場合、監視部24は、工作機械又は数値制御装置に指令を送信し、工作機械の制御を行う。例えば、監視部24は、工作機械を停止させてもよいし、工作機械の挙動へのフィードバックを行ってもよい。
【0032】
表示部26は、時間ずれ量計算部18によって計算された時間ずれ量を表示する。例えば
図2(下図)に示すように、表示部26は、時間ずれ量の時間変化を表示する。
【0033】
また、表示部26は、入力時系列データが工作機械の処理を制御するための制御データ(例えば、各軸の位置指令値又は主軸のトルク指令値)である場合、時間ずれ量計算部18によって計算された時間ずれ量と、処理情報取得部20によって取得された入力時系列データに対応する工作機械の処理に関する処理情報(例えば、処理内容、加工状態、その他信号等)とを、時間軸を揃えて表示する。例えば
図3(下図)に示すように、表示部26は、時間ずれ量の時間変化と、工作機械の処理に関する加工情報(加工、停止、工具交換等)とを、時間軸を揃えて表示する。
なお、表示部26が表示する工作機械の処理に関する加工情報は、加工プログラムによけるコードナンバーそのものであってもよいし、ユーザが認識しやすい文字情報であってもよい。
このように、時間ずれ量の時間変化と加工情報(処理情報)とを組み合わせて表示することで、加工のどの部分が、どれだけの時間ずれているかわかる。
【0034】
また、表示部26は、統計量計算部22によって計算された時間ずれ量の統計量の時間変化を表示する。例えば
図4に示すように、表示部26は、入力時系列データごとの時間ずれ量の統計量、例えば平均値、中央値、最大値、最小値、及び分散等を表示する。
図4では、横軸は加工回数である。すなわち、
図4では、統計量の時間変化量が示されている。これにより、加工を繰り返すことによる時間ずれ量の変化傾向が得られる。
【0035】
また、表示部26は、監視部24によって工作機械が異常であると判定された場合に、異常と判定された入力時系列データ(すなわち、どの入力時系列データで異常を検知したか:例えば、加工回数、ワークID、データの開始時間と終了時間)及び処理情報における異常個所(原因箇所)を組み合わせて表示する。例えば
図5(下図)に示すように、表示部26は、異常と判定された入力時系列データに対応する時間ずれ量の時間変化における異常個所(原因箇所)の表示属性(線種、線の太さ、線の色等)を他の箇所の表示属性と異ならせて表示してもよい。また、表示部26、処理情報をユーザが認識可能な情報(例えば文字情報:加工、停止、工具交換)とし、処理情報における異常個所(原因箇所)の表示属性(文字の太さ、文字の色、囲み線等)を他の箇所の表示属性と異ならせて表示してもよい。
【0036】
また、表示部26は、時間ずれ量計算部18によって計算された時間ずれ量を、処理情報取得部20によって取得された処理情報単位で表示してもよい。
図6は、表示の一例を示す図である。
図6(左上)に示すように、表示部26は、監視部24によって異常が検知された場合に、機械(工作機械)単位で異常を表示する(全体監視画面)。ここで、ユーザは異常である機械1を選択する。
【0037】
すると、
図6(右上)に示されるように、表示部26は、機械1の加工結果(処理結果)をワーク単位で表示する。
図6では、ワークA−001〜A−006の加工結果(正常or異常)が表示され、異常と判定されたワークA−005では異常の詳細(処理情報:工具交換)が表示される(機械別加工結果表示画面)。ここで、ユーザは異常であるワークA−005を選択する。
【0038】
すると、
図6(左下)に示されるように、表示部26は、ワークA−005について、処理情報取得部20によって取得された処理情報単位で、時間ずれ量計算部18によって計算された時間ずれ量を表示する。
図6では、昇順にソートされて表示される。また、
図6では、異常判定時の閾値が表示される。
【0039】
図6では棒グラフであるがこれに限定されない。例えば折れ線グラフであってもよい。
図6では昇順にソートされたがこれに限定されない。例えば降順であっても良いし、時系列順であってもよい。
時間ずれ量としては、処理情報ごとの平均値であってもよいし、中央値であってもよいし、最大値であってもよいし、最小値であってもよいし、標準偏差値又は分散値等であってもよい。
【0040】
このように、時間ずれ量を、処理情報を元に特定の範囲だけ抜き出して表示してもよい。これにより、ユーザは、各ワークの加工シーケンスのうち、異常である加工シーケンスを一目で認識することができる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の処理時間監視装置1によれば、工作機械を制御する数値制御装置から取得した入力時系列データ(入力波形)(例えば、各軸の位置情報又はトルク情報)と基準時系列データ(基準波形)(例えば、正常時の時系列データ又は平均時系列データ)との時間ずれ量を計算し、この時間ずれ量の時間変化と工作機械の処理情報とを時間軸を揃えて表示することにより、工作機械の異常とその原因の推定に有用な情報を提供することができる。これにより、ユーザは例えば以下のような情報に気付くことができる。
・直接測定していない部分の異常の検知
(工具交換機能等の数値制御装置の補助機能の経年変化等)
・加工プログラム中の異常のあった箇所の特定
・プログラム変更によるサイクルタイムへの影響
【0042】
本実施形態の処理時間監視装置1によれば、基準時系列データ(基準波形)に対する入力時系列データ(入力波形)の時間のずれに着目した異常検知のアプローチであるため、直接測定している部分に加え、直接測定していない部分の異常を間接的に検知することができる。例えば、工具交換機能の劣化、クーラント装置、エアー供給装置、ワーク供給時のドア開閉等の異常を検知することができる。
また、本実施形態の処理時間監視装置1によれば、加工プロセス内の時間ずれ量の変化を、加工情報(処理情報)と組み合わせて表示するアプローチであるため、各加工プロセスの内どの部分にどれだけ時間ずれがあったかを把握することができる。(単純に各加工プロセス毎の所要時間を表示する方法では、加工プロセス内のどの部分にどれだけ時間ずれがあったかはわからない。)
【0043】
(変形例)
図7は、本実施形態の変形例に係る処理時間監視装置の構成を示す図である。
図7に示す変形例の処理時間監視装置1は、
図1に示す処理時間監視装置1においてデータ前処理部13を更に備える点で上述した実施形態と異なる。
【0044】
データ前処理部13は、データ取得部12によって取得された入力時系列データが基準時系列データに類似するか否かを判定する。例えば、データ前処理部13は、入力時系列データと基準時系列データとの類似度を計算し(下記参照)、計算した類似度が閾値以上である場合に類似と判定し、計算した類似度が閾値未満である場合に非類似と判定する。
【0045】
(類似度の計算)
まず、データ前処理部13は、基準時系列データ、又は取得された過去全てを平均化した平均時系列データの統計量(例えば、平均、標準偏差、最大、最小)を、上述した統計量計算部22と同様に、基準量として計算する。また、データ前処理部13は、取得した時系列データの統計量(例えば、平均、標準偏差、最大、最小)を、上述した統計量計算部22と同様に計算する。
なお、データ取得部12で取得された時系列データを平均化することにより、入力時系列データにノイズが多い場合にノイズの影響を低減することができ、これにより時間ずれ量の計算処理の精度を向上することができる。
【0046】
次に、データ前処理部13は、下記式に従って、各統計量の個別類似度を計算する。
個別類似度(平均)=1/(1+|(時系列データの統計量(平均)−基準量(平均))/基準量(平均)|×4)
個別類似度(標準偏差)==1/(1+|(時系列データの統計量(標準偏差)−基準量(標準偏差))/基準量(標準偏差)|×4)
個別類似度(最大)=1/(1+|(時系列データの統計量(最大)−基準量(最大))/基準量(最大)|×4)
個別類似度(最小)=1/(1+|(時系列データの統計量(最小)−基準量(最小))/基準量(最小)|×4)
【0047】
次に、データ前処理部13は、下記式に従って、各統計量の個別類似度の平均化を行い、類似度とする。
類似度=(個別類似度(平均)+個別類似度(標準偏差)+個別類似度(最大)+個別類似度(最小))/4×100
【0048】
なお、類似度はパーセンテージ表示ではなく、(0,100]の数字で表されてもよい。また、個別類似度の計算時に、分母が0の場合、その個別類似度の計算は不要である。その場合、類似度の計算式の分母「4」は、最終的に計算できた個別類似度の数(分子の数)に変更すればよい。個別類似度のうち、1つでも計算できない場合、類似度は“なし”とする。
【0049】
計算した類似度が閾値以上である場合、すなわち取得された時系列データが基準時系列データに類似する場合、データ前処理部13は、データ取得部12によって取得された時系列データを時間ずれ量計算部18に供給する。これにより、データ前処理部13は、取得された時系列データを時間ずれ量計算部18による計算処理の対象とする。
【0050】
一方、計算した類似度が閾値未満である場合又は類似度が”なし”の場合、すなわち取得された時系列データが基準時系列データに類似しない場合、データ前処理部13は、データ取得部12によって取得された時系列データを時間ずれ量計算部18に供給しない。これにより、データ前処理部13は、取得された時系列データを時間ずれ量計算部18による計算処理の対象としない。
例えば、基準時系列データの作成時に対して、加工内容又はワーク形状等が異なると、入力時系列データが基準時系列データに類似しない。
【0051】
(DPマッチング法による位置ずれ量の計算)
以下、時間ずれ量計算部18によるDPマッチング法を用いた基準時系列データに対する時系列データの時間ずれ量の計算について、具体的な一例を用いて詳細に説明する。この一例では、基準時系列データai(iは時間)と入力時系列データbj(jは時間)を、
図8A及び
図8Bとする。この例では、点数が多い時系列データaiを基準とした。
【0052】
まず、
図9Aに示すように、両データの各ポイント(時間)の距離d(i,j)を、下記式より、総当たりで計算する。その結果を
図9Bに示す。
d(i,j)=|ai−bj|
【0053】
次に、
図10Aに示すように、両データの各ポイント(時間)の累積距離g(i,j)を、下記式より計算する。
g(i,j)=min{g(i−1,j),g(i−1,j−1),g(i,j−1)
+d(i,j)
=左上、上、左の累積距離の最小値+距離
まず、
図10Bに示すように、1行目と1列目を埋める。次に、
図10Cに示すように、上記式により累積距離g(i,j)を順に計算する。すべての累積距離を計算した結果を
図10Dに示す。
図12Dでは、一番右下のセルは最短ルートの終点(7,6)となり、
その累積距離g(7,6)=10である。
【0054】
次に、最短ルートを導出する。
図11Aに示すように、最短ルートの終点から逆算し、前の点を導出する。導出方法は、該当セルの左上、上、左の値の最小値のセルを探す。
図11Aでは、(7,5)が最短ルートの1つ前の点になる。全ての最短ルートの点を導出した結果を
図11Bに示す。
【0055】
次に、両データをマッチングする。
図11Bに示す最短ルートの各セルのaiとbjがマッチングする。DPマッチング後の入力時系列データb’jを
図12A及び
図12Bに示す。なお、マッチングする点が2点ある場合、この2点の平均値を算出する。
【0056】
次に、DPマッチング後の入力時系列データb’jの時間軸方向の補正量i−jを計算する。マッチングする点が2点ある場合、この2点の平均値を算出する。その結果を
図13A及び
図13Bに示す。このDPマッチングにおける時間軸方向の補正量を、基準時系列データに対する入力時系列データの時間ずれ量とする。
【0057】
このように、DPマッチング法を用いて、基準時系列データと入力時系列データとの間の距離コストが最小となる対応付けを求めることにより、入力時系列データの各点の時間ずれ量を求めることができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更及び変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、加工処理を行う工作機械における各軸の位置指令情報又は位置フィードバック情報、主軸のトルク指令情報又は実電流フィードバック情報(入力時系列データ)の時間ずれ量を監視する装置を例示した。しかし、本発明はこれに限定されず、例えばPC、USBメモリ、外部ストレージ等の各種処理装置に適用可能である。
【0059】
また、上述した実施形態では、切削加工を行う工作機械及び数値制御装置を例示した。しかし、本発明はこれに限定されず、種々の機械に適用可能である。また、処理時間監視装置は、数値制御装置からの制御データ(指令値、フィードバック値)に代えて、機械又はワークの状態データ、例えば機械の動作状態に関する情報又はワークの加工状態に関する情報等を監視してもよい。
例えば、ワイヤカット放電加工機の場合、機械の動作状態に関する情報としては、電流、電圧、室温、水温、その他の信号等が挙げられる。この場合、例えば、電極ピンの消耗、ノズルのつまり等の異常を検知することができる。
また、例えば、射出成型機の場合、機械の動作状態に関する情報としては、電流、電圧、室温、水温、油温、その他の信号等が挙げられる。この場合、例えば、ヒータの不良、コンタクタの接点不良等の異常を検知することができる。