(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6933714
(24)【登録日】2021年8月23日
(45)【発行日】2021年9月8日
(54)【発明の名称】容器を形成するためのブランク
(51)【国際特許分類】
B05D 7/00 20060101AFI20210826BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20210826BHJP
B05D 3/06 20060101ALI20210826BHJP
B65D 5/56 20060101ALI20210826BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20210826BHJP
【FI】
B05D7/00 F
B05D7/00 N
B05D1/26 Z
B05D3/06 Z
B65D5/56 Z
B65D65/40 D
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-537877(P2019-537877)
(86)(22)【出願日】2017年9月26日
(65)【公表番号】特表2019-530578(P2019-530578A)
(43)【公表日】2019年10月24日
(86)【国際出願番号】EP2017074310
(87)【国際公開番号】WO2018060168
(87)【国際公開日】20180405
【審査請求日】2020年8月13日
(31)【優先権主張番号】16191136.7
(32)【優先日】2016年9月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516004949
【氏名又は名称】ジェイティー インターナショナル エス.エイ.
【氏名又は名称原語表記】JT INTERNATIONAL S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100188857
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 智文
(74)【代理人】
【識別番号】100169100
【弁理士】
【氏名又は名称】辰川 肇
(72)【発明者】
【氏名】田中 健太
(72)【発明者】
【氏名】ラタスゼク,ドミニク ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】クローゼン,マイク
【審査官】
市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2002/0142904(US,A1)
【文献】
特開平05−305937(JP,A)
【文献】
実開平02−025421(JP,U)
【文献】
特開平4−126895(JP,A)
【文献】
特開平4−267732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00−7/26
B65D5/00−5/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器を形成するためのブランクを印刷する方法であって、
第1および第2の向かい合うブランク表面を有するブランクを提供するステップであって、前記第1のブランク表面が、容器の組み立て時に、対応する取り付け領域で前記第2のブランク表面に取り付けるための少なくとも1つの取り付け領域を有し、前記第1のブランク表面が、接着剤の適用に適した所定範囲の表面張力を有する、ステップと、
インク、ワニス、ラッカー、またはこれらの組み合わせから成る群から選択される主要物質を、少なくとも1つの印刷面を得るために少なくとも前記第1のブランク表面に適用するステップと、
前記第1のブランク表面の前記取り付け領域を、前記取り付け領域への補助物質の適用によって、前記所定範囲の表面張力を維持するように処理するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記所定範囲が、34ダイン/cm〜60ダイン/cm、最も好ましくは36ダイン/cm〜50ダイン/cmである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記補助物質は、インク、ワニス、ラッカー、またはこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記補助物質が、前記主要物質と同時に適用される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記補助物質が、前記取り付け領域の不連続エリア上に適用される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記補助物質が、前記取り付け領域上において規則的分布で適用される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記補助物質が、前記取り付け領域の表面の10%〜97%、好ましくは15%〜85%、最も好ましくは22%〜72%に適用される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記補助物質が、流体の全体に分散した固体粒子を含み、最も大きな固体粒子のサイズが1マイクロメートル〜40マイクロメートルの範囲、好ましくは4マイクロメートル〜35マイクロメートルの範囲に含まれる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの印刷面の前記取り付け領域に複数の分割線または穿孔を形成するステップをさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
容器を形成するためのブランクであって、
第1および第2の向かい合うブランク表面であって、前記第1のブランク表面が、容器の組み立て時に、対応する取り付け領域で前記第2のブランク表面に取り付けるための少なくとも1つの取り付け領域を有する、第1および第2の向かい合うブランク表面と、
インク、ワニス、ラッカー、またはこれらの組み合わせから成る群から選択され、印刷面を得るために前記第1のブランク表面に適用される主要物質と、
前記第1のブランク表面の前記取り付け領域へ適用される補助物質と、
を含み、
前記主要物質の適用前に、前記第1のブランク表面の前記取り付け領域が、接着剤の適用に適した所定範囲の表面張力を有し、前記第1のブランク表面の前記取り付け領域が、前記取り付け領域への前記補助物質の適用によって、前記主要物質の適用後に、前記所定範囲の表面張力を維持する、
容器を形成するためのブランク。
【請求項11】
前記ブランクが、基板と、前記第1のブランク表面であるラミネート層とを備えたラミネートブランクである、請求項10に記載の容器を形成するためのブランク。
【請求項12】
第1および第2の向かい合うブランク表面であって、前記第1のブランク表面が、対応する取り付け領域で前記第2のブランク表面に取り付けるための少なくとも1つの取り付け領域を有する、第1および第2の向かい合うブランク表面と、
インク、ワニス、ラッカー、またはこれらの組み合わせから成る群から選択され、印刷面を得るために前記第1のブランク表面に適用される主要物質と、
前記第1のブランク表面の前記取り付け領域へ適用される補助物質と、
前記補助物質を適用された前記取り付け領域上に供給された接着剤であって、前記第1および第2のブランク表面が、前記接着剤が間に挟まれた前記対応する取り付け領域で重なる、接着剤と、
を含み、
前記主要物質の適用前に、前記第1のブランク表面の前記取り付け領域が、接着剤の適用に適した所定範囲の表面張力を有し、前記第1のブランク表面の前記取り付け領域が、前記取り付け領域への前記補助物質の適用によって、前記主要物質の適用後に、前記所定範囲の表面張力を維持する、
容器。
【請求項13】
請求項11に記載のブランクを提供するステップと、
前記補助物質を適用された前記取り付け領域に接着剤を供給するステップと、
前記第1および第2のブランク表面が、前記接着剤が間に挟まれた前記対応する取り付け領域で重なるように、容器を形成するために前記ブランクを折るステップと、
前記対応する取り付け領域を前記接着剤で一体的に接合するステップと、
を含む、容器を形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブランク、容器、ならびにブランクおよび容器を形成するための各方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、喫煙品用の容器は、紙またはボール紙で作られたブランクで形成される。容器を形成するために、一束の喫煙品の周りでブランクが曲げられ、および/または折られる。その後、専用の重なり領域でブランクが一体的に接着されて、容器が形成される。ブランクは通常、紙またはボール紙で作られた基板とアルミニウム箔またはPET箔で作られたラミネート層とを有することにより、ラミネート可能である。
【0003】
図1は、蓋4、前面パネル6、および側面パネル8,10を有する容器2の斜視図である。ブランクの一方側(容器の外方を向くことになる表面を含む)は通常、容器形成プロセスが行われる前に印刷される。この印刷プロセスにおいては、インク、ワニス、ラッカー、またはこれらの組み合わせがブランクに適用されて、デザインが作成されるとともに、健康に関する警告等の法的に必要な情報または製造の詳細が含められる。ブランクの裏側(内方を向くことになる表面を含む)には通常(必ずしもそうではないが)、印刷がなされない。ブランクは、側面パネル8,10上にあるような重なりフラップを含むため、ブランクの1面上のフラップがブランクの反対面上のフラップに接着されて、容器2が形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
容器は通常、最大1,000個/分という高速で組み立てられる。このような速度においては、重なりフラップ間の接合の完全性に問題が生じ得ることが分かっている。極端な状況では、接合されたフラップが外れる可能性があり、これは、容器がばらばらになり得ることを意味する。ラミネートされたブランクは、この問題の影響を最も受けやすいことが分かっている。
【0005】
図2は、接合されたフラップが外れた、容器102の斜視図である。組み立て時には、ブランクの、印刷されている側の側面パネル112が、最初に、ブランクの、印刷されていない側の側面パネル114に接着される。
図2に示す斜視図においては、各側面パネル112,114が外れている。側面パネル112,114が分離され、その完全性を維持していたのが接着剤である場合は、紙またはボール紙等の繊維材料で構成されたブランク中に繊維引裂が生じる可能性がある。このような状況においては、ブランクの材料が裂けるとともに、外れた側面パネル112,114上に繊維の断片が見られることになる。とりわけ、
図2の構成において、側面パネル112,114の表面からは、繊維引裂も材料移動も明らかではなく、これは、接着剤の不良を示している可能性がある。
【0006】
この問題を回避する1つの選択肢として、より複雑な接着剤の使用が挙げられるが、これでは、製造コストが望ましくなく高くなる。別の選択肢として、接合の接着時間をより多く与えるために組み立て速度を低下させることが挙げられるが、この場合も製造コストが高くなる。
【0007】
本発明の目的は、組み立てプロセスをその他の点で妨げることなく、より効果的に接合可能な表面を有するブランクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、容器を形成するためのブランクを印刷する方法であって、第1および第2の向かい合う表面を有するブランクを提供するステップであって、第1の表面が、容器の組み立て時に対応する取り付け領域で第2の表面に取り付けるための少なくとも1つの取り付け領域を有し、第1のブランク表面が、接着剤の適用に適した所定範囲の表面張力を有する、ステップと、少なくとも1つの印刷面を得るために主要物質を少なくとも第1のブランク表面に適用するステップと、所定範囲の表面張力を維持するように第1のブランク表面の取り付け領域を処理するステップと、を含む、方法が提供される。
【0009】
接合の完全性を決定するには表面張力が重要な因子であることが分かっている。また、対策が施されなければ、第1のブランク表面への主要物質の適用によって、取り付け領域の表面張力が低下し、所定範囲外となって接着剤の適用に不適となり得ることも分かっている。取り付け領域を処理することによって、これらの望ましくない影響を軽減するとともに、表面張力を所定範囲に維持することができる。したがって、取り付け領域を処理することにより、高速製造プロセスにおいても、より好ましい条件を接着剤に与えるとともに、外れるリスクを抑えることができる。主要物質の適用前および処理後の取り付け領域の表面張力は、同じである必要がない。前後の表面張力はいずれも、接着剤の適用に適した所定範囲内に含まれる必要があるものの、その値は異なっていてもよい。
【0010】
ブランクは、切断形態で提供されてもよいし、非切断形態で提供されてもよい。非切断形態において、ブランクは、紙またはボール紙等、容器の形成に適した材料のシートとして提供され、印刷プロセス中または印刷プロセス後は、容器の形成に用いられる形状へと切断(たとえば、ダイカット)される。切断形態において、ブランクは、材料のシートから、容器の形成に用いられる形状へと切断されて提供される。あるいは、ブランクは、材料のシートから、ブランクの形成に用いられる外部形状へと切断されて提供されてもよく、印刷プロセス中または印刷プロセス後は、他の切断および折り目または分割線が実行されることになる。
【0011】
ブランクは、それぞれが異なる表面張力値を示す、多くの異なる領域を有してもよい。これは、ブランク上の異なる設計特性および/または異なるインクもしくは印刷材料の使用の結果であってもよい。取り付け領域は、接着剤を用いた接合において作用するため、取り付け領域の表面張力値が、最終的な接合の完全性に最も関連すると考えられる。
【0012】
主要物質は、インク、ワニス、ラッカー、またはこれらの組み合わせから成る群から選択されてもよく、所定範囲の表面張力の取り付け領域を有する第1のブランク表面上に適用される。主要物質は、取り付け領域には適用されないのが好ましい。そうでなければ、対策を施さない場合、取り付け領域の表面張力に適用プロセスが影響を及ぼす可能性がある。取り付け領域の処理によって、高速での効果的な接合が可能となるように表面張力を制御できることが分かっている。
【0013】
所定範囲は、34ダイン/cm〜60ダイン/cm、たとえば、36ダイン/cm〜50ダイン/cmであってもよい。約34ダイン/cm未満の表面張力では、高速の製造において接合が不十分となることが分かっている。
【0014】
取り付け領域を処理するステップは、取り付け領域への媒体の適用または取り付け領域の物理的な操作によって、所定範囲の表面張力を維持することを含んでもよい。
【0015】
取り付け領域の処理は、さまざまな印刷ステップにおけるブランクの位置ずれまたは色ずれ等の印刷許容範囲を評価する印刷基準マークを含む非処理エリアを含んでもよい。
【0016】
少なくとも1つの印刷面の取り付け領域を処理するステップは、取り付け領域上にガス、プラズマ、高電圧、またはこれらの組み合わせを放出することを含んでもよい。この代替または追加として、少なくとも1つの印刷面の取り付け領域を処理するステップは、取り付け領域の焼き付け、グレーチング、研磨、またはこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0017】
第1のブランク表面の取り付け領域を処理するステップは、補助物質を適用することを含んでもよい。補助物質は、インク、ワニス、ラッカー、またはこれらの組み合わせから成る群から選択されてもよい。通常、接合の完全性を向上させるために、第1のブランク表面の取り付け領域には印刷がなされない。意外にも、主要物質の適用後、補助物質の適用によって、接合の完全性を向上させられるとともに、表面張力を所定範囲に維持できることが分かっている。
【0018】
また、補助物質は、主要物質の一部として、第1のブランク表面の他の領域にも適用されてもよい。したがって、特定の実施形態においては、主要物質が補助物質を含んでもよい。
【0019】
主要物質が第1のブランク表面に適用されるのと同時に、補助物質が第1のブランク表面の取り付け領域に適用されてもよい。あるいは、主要物質の適用前または適用後に補助物質が適用されてもよい。第1のブランク表面への主要物質の適用と第1のブランク表面の取り付け領域への補助物質の適用との組み合わせ効果として、取り付け領域の所定範囲内の表面張力がもたらされ得る。一構成においては、主要物質を少なくとも第1のブランク表面に適用するステップによって、第1のブランク表面の取り付け領域の表面張力が低下し、所定範囲外となり得るとともに、第1のブランク表面の取り付け領域を処理するステップによって、表面張力が増大し、所定範囲内となり得る。
【0020】
補助物質は、取り付け領域の不連続エリア上に適用されてもよい。一例において、不連続エリアは、任意適当なパターン、形状、もしくは配置のスポットまたはドットであってもよい。また、補助物質は、規則的分布で適用されてもよい。
【0021】
補助物質は、取り付け領域の表面の10%〜97%、好ましくは15%〜85%、最も好ましくは22%〜72%に適用されてもよい。意外にも、良好な接合結果は、補助物質による、取り付け領域の表面積の100%未満の被覆にて実現されることが分かっている。一実施形態において、特に良好な接合結果は、40%の被覆で実現される。補助物質のパターンおよび種類が異なれば、異なる最適値が実現されるものと予想される。
【0022】
補助物質は、流体の全体に分散した固体粒子を含んでいてもよく、最も大きな固体粒子のサイズが1マイクロメートル〜40マイクロメートルの範囲、たとえば、4マイクロメートル〜35マイクロメートルの範囲に含まれる。
【0023】
この方法は、少なくとも1つの印刷面の取り付け領域に複数の分割線または穿孔を形成するステップを含んでもよい。これまでに、分割線は、接合時に取り付け領域で接着剤の吸収を高めることにより、接着を改善することが分かっている。
【0024】
本発明の別の態様によれば、容器を形成するためのブランクであって、第1および第2の向かい合う表面であって、第1の表面が、容器の組み立て時に対応する取り付け領域で第2の表面に取り付けるための少なくとも1つの取り付け領域を有する、第1および第2の向かい合う表面と、少なくとも1つの印刷面を得るために第1のブランク表面に適用される主要物質であって、該主要物質の適用前に、第1のブランク表面が接着剤の適用に適した所定範囲の表面張力を有し、該主要物質の適用後に、所定範囲の表面張力を維持するように第1のブランク表面の取り付け領域が処理される、主要物質と、を含む、容器を形成するためのブランクが提供される。このブランクにおいて、所定範囲は、34ダイン/cm〜60ダイン/cm、たとえば、36ダイン/cm〜50ダイン/cmであってもよい。
【0025】
本発明のさらに別の態様によれば、第1および第2の向かい合う表面であって、第1の表面が、対応する取り付け領域で第2の表面に取り付けるための少なくとも1つの取り付け領域を有する、第1および第2の向かい合う表面と、印刷面を得るために第1の表面に適用される主要物質であって、該主要物質の適用前に、第1のブランク表面が接着剤の適用に適した所定範囲の表面張力を有し、該主要物質の適用後に、所定範囲の表面張力を維持するように第1のブランク表面の取り付け領域が処理される、主要物質と、処理された取り付け領域上に供給された接着剤であって、第1および第2のブランク表面が、該接着剤が間に挟まれた対応する取り付け領域で重なる、接着剤と、を含む、容器が提供される。
【0026】
本発明のさらに別の態様によれば、上記規定のブランクを提供するステップと、処理された取り付け領域に接着剤を供給するステップと、第1および第2のブランク表面が、接着剤が間に挟まれた対応する取り付け領域で重なるように、容器を形成するためにブランクを折るステップと、対応する取り付け領域を接着剤で一体的に接合するステップと、を含む、容器を形成する方法が提供される。
【0027】
本発明のさらに別の態様によれば、容器を形成するためのブランクを印刷する方法であって、第1および第2の向かい合う表面を有するブランクを提供するステップであって、第1の表面が、容器の組み立て時に対応する取り付け領域で第2の表面に取り付けるための少なくとも1つの取り付け領域を有する、ステップと、少なくとも1つの印刷面を得るために主要物質を少なくとも第1のブランク表面に適用するステップと、34ダイン/cm〜60ダイン/cmの表面張力を取り付け領域にもたらすために第1のブランク表面の取り付け領域を処理するステップと、を含む、方法が提供される。
【0028】
ブランクは、紙またはボール紙で構成された基板と、ラミネート層、好ましくはアルミニウム箔またはたとえばPET、PE、もしくはPP等のプラスチック箔、とを備えたラミネートブランクであってもよい。ラミネートブランクは、第1のラミネート層と同じかまたは異なる第2のラミネート層をさらに備え、基板が第1および第2のラミネート層間に位置決めされていてもよい。
装置の特徴が方法の特徴として与えられていてもよく、その逆も同様である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
以下、添付の図面を参照して、本発明を例として説明する。
【
図2】
図2は、接合面が外れた、喫煙品用の容器の斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態における、喫煙品用の容器を生成するためのブランクの平面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示すブランク上の内側側面パネルの取り付け領域の詳細平面図である。
【
図5】
図5は、補助物質にて被覆された取り付け領域の面積に対する容器の表面の相対的な接合強度を示したグラフである。
【
図6】
図6は、実験において接合面が外れた、喫煙品用の容器の別の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図3は、ブランク200の上面202の平面図である。ブランクの上面202は、インク、ワニス、ラッカー、またはこれらの組み合わせを用いて従来通り印刷されることにより、デザインが作成されるとともに、健康に関する警告等の法的に必要な情報または製造の詳細を含む。本実施形態において、ブランク200の裏面には印刷がなされない。ただし、容器の内面がデザインまたは情報を含むように、裏面の少なくとも一部に印刷することも可能である。
【0031】
ブランク200は、(
図3の点線で示される)切断線および(
図3の実線で示される)折り線を含む。蓋222とパックのその他の部分との間には、ヒンジ線220が設けられている。ブランク200の上面202は、前面パネル210、後面パネル212、および底面パネル214を含む。ブランク200が一束の喫煙品の周りで折られて形成されると、前面パネル210、後面パネル212、および底面パネル214が外方を向く。また、ブランクの上面202は、外側面パネル204a,bおよび内側面パネル206a,bも含む。
【0032】
(
図3において透視的に示す)ブランク200の裏面上の対応する取り付け領域308a,b、324a,b、326a,b、328a,bでブランク200の裏面に取り付けるために、ブランク200の上面202には、複数の取り付け領域208a,b、224a,b、226a,b、228a,bが設けられている。取り付け領域208a,b、224a,b、226a,b、228a,bには一般的に、さまざまな印刷ステップにおけるブランクの位置ずれまたは色ずれ等の印刷許容範囲を評価する印刷基準マークを除いて、印刷がなされない。ブランク200の裏面全体には一般的に、印刷がなされない。組み立て時、ブランク200の上面202上の取り付け領域208a,b、224a,b、226a,b、228a,bは、裏面上のそれぞれの対応する取り付け領域308a,b、324a,b、326a,b、328a,bでブランクの裏面に対向するように配置される。ブランク200の上面202の取り付け領域208a,b、224a,b、226a,b、228a,bには、対応する取り付け領域間の接合を形成するために接着剤が供給される。
【0033】
図1に表されるような容器を形成するために、ブランク200は従来通りに折られる。たとえば、折る際に、取り付け領域208a,bがそれぞれの対応する取り付け領域308a,bで外側面パネル204a,bの裏面に向かい合うように、外側面パネル204a,bが内側面パネル206a,b上に折られる。これにより、形成された容器において、外側面パネル204a,bの印刷上面202が外面として示される。
【0034】
接着接合の完全性を決定するには、上面202上の取り付け領域208a,b、224a,b、226a,b、228a,bの特性が重要な因子であることが分かっている。重要な特性の1つとして、上面202の印刷後の取り付け領域208a,b、224a,b、226a,b、228a,bの表面張力が考えられる。印刷されていないブランク200の表面張力は、34ダイン/cm〜60ダイン/cm、最も好ましくは36ダイン/cm〜50ダイン/cmの範囲である。ただし、実験結果によれば、印刷プロセスの後、取り付け領域208a,b、224a,b、226a,b、228a,bの表面張力が34ダイン/cmを下回って、所要標準を下回る接合の完全性につながり得ることが示唆される。取り付け領域208a,b、224a,b、226a,b、228a,bには印刷がなされないとしても、現在では、上面202を印刷するプロセスが取り付け領域208a,b、224a,b、226a,b、228a,bの表面張力値に悪影響を及ぼして、対策を施さなければ、形成された容器の接合が不十分になり得るものと考えられている。
【0035】
本方法において、上面202の取り付け領域208a,b、224a,b、226a,b、228a,bは、印刷プロセス後、任意の接着剤の適用前に、それぞれの表面張力が確実に34ダイン/cm〜60ダイン/cmの範囲となるように処理される。これは、補助印刷媒体が取り付け領域208a,b、224a,b、226a,b、228a,bに適用される別の印刷ステップ(同時であってもよい)により実現される。別の技術においては、ガス、プラズマ、もしくは電流の適用によって、または焼き付け、グレーチング、もしくは研磨によって取り付け領域208a,b、224a,b、226a,b、228a,bが処理されてもよい。これらの技術(または、その任意の組み合わせ)は、約34ダイン/cmを上回り、約60ダイン/cmを下回る所望の範囲の表面張力を生じるように展開されるようになっていてもよい。取り付け領域のいずれかに印刷基準マークが設けられる場合、これらに対して確保されるエリアは、未処理のままとされる。
【0036】
補助印刷媒体は、インク、ワニス、ラッカー、またはこれらの組み合わせであり、流体の全体に分散した固体粒子を含む。最も大きな固体粒子のサイズは、1マイクロメートル〜40マイクロメートルの範囲、通常は、4マイクロメートル〜35マイクロメートルの範囲に含まれる。最も大きな固体粒子のサイズは、グラインドメータで測定可能である。補助印刷媒体は、上面202の他の領域の印刷に用いられるインク、ワニス、またはラッカーのうちの1つを含んでもよい。
【0037】
補助印刷媒体は、取り付け領域208a,b、224a,b、226a,b、228a,b上に、パターンで適用される。
図4は、取り付け領域208aのうちの1つの平面図であるが、当然のことながら、その他の取り付け領域が同様に処理されてもよい。本実施形態において、取り付け領域208aは、補助印刷材料により、規則的に間隔を空けたスポット230のパターンで印刷される。スポット230により生成されるサイズ、間隔、およびパターンは、さまざまな結果が得られるように異なっていてもよい。いくつかの実施形態において、個々のスポット230は、その微小なサイズのため、肉眼では見えない場合がある。別の構成において、補助媒体は、所望のパターンを実現するために、線、渦、ドット、またはこれらの任意の組み合わせにより印刷されてもよい。
【0038】
スポット230のサイズおよび密度は、取り付け領域208a,b、224a,b、226a,b、228a,bにおいて、補助材料の予め選択された表面積被覆率を与えるために制御される。実験結果によれば、10%〜97%、好ましくは15%〜85%、最も好ましくは22%〜72%の範囲の補助材料表面積被覆率で最良の接合完全性が実現され得ることが示唆される。
【0039】
補助材料のさまざまな表面積被覆率について相対的な接合強度を決定するために、多くの試験ブランクを解析した。その結果を下表に示す。
【0041】
この表は、補助材料にて被覆された取り付け領域208a,b、224a,b、226a,b、228a,bの割合に関する4つの異なる値でのF
maxおよびF
breakを記録したものである。F
maxは、接着剤が機能しなくなる測定力であり、したがって、各取り付け領域208a,b、308a,b間の接合の強度の尺度と考えられる。F
breakは、各取り付け領域208a,b、308a,b間で引裂が生じる測定力である。ΔFは、補助材料による表面積の0%被覆率に対する接合強度の変化であり、割合として表現される。ΔFは、以下の式に従って計算される。
【0043】
ここで、F
max,0%は、補助材料による0%表面積被覆率での接合強度であり、F
max,X%は、補助材料によるX%被覆率での接合強度である。
【0044】
図5は、補助物質にて被覆された取り付け領域208a,b、224a,b、226a,b、228a,bの表面積に対するΔFを示したグラフである。このグラフは、三次多項傾向線を含む。当然のことながら、最良の結果は、100%未満の被覆率の場合に実現される。これは、関連する取り付け領域208a,b、224a,b、226a,b、228a,bにわたるスポット210の一様な分布でも実現される。
【0045】
下表は、取り付け領域208a,b、224a,b、226a,b、228a,bにおいて、補助材料による0%被覆率に対する接合強度の20%超、30%超、および40%超の改善に必要な表面積被覆率を示している。
【0047】
取り付け領域は、補助材料での印刷による取り付け領域208a,b、224a,b、226a,b、228a,bの処理前または処理後に、穿孔または分割されてもよい。これにより、取り付け領域208a,b、224a,b、226a,b、228a,bにおける吸水性が改善される可能性があり、これは、接着剤の作用を改善する可能性がある。
【0048】
組み立て時には、上面202上の取り付け領域208a,b、224a,b、226a,b、228a,bに接着剤が適用される。その後、取り付け領域208a,b、224a,b、226a,b、228a,bは、それぞれの対応する取り付け領域308a,b、324a,b、326a,b、328a,bで蓋222のパネルおよび外側面パネル204a,bの裏面と向かい合わせにされ、パネルが接合可能となるように一体的に押圧される。接着剤は一般的に、関連する取り付け領域の全エリアにわたって適用される。
【0049】
補助材料で処理された取り付け領域208a,b、224a,b、226a,b、228a,bの表面張力は、標準的な技術に従って測定可能である。1つの技術は、試験インクの使用を含む。この技術によれば、DIN Draft 53364またはISO 8296に従って製造された特性表面張力値を有する試験インクが選択される。この技術においては、試験インクで満たされたブラシまたはペンによって、関連する取り付け領域208a,b、224a,b、226a,b、228a,bの表面に試験インクが適用される。あるいは、関連する取り付け領域208a,b、224a,b、226a,b、228a,bに、試験インクの液滴が滴下されてもよい。試験インクの液体は、表面に連続膜を形成するか、あるいは、微小な液滴に戻ることになる。試験インクが2秒間にわたり膜として維持される場合、基板は、少なくとも試験インクの特性表面張力である表面張力を有するものと判定される。試験インクが2秒未満で網状になるか、または、液滴に戻る場合は、基板の表面張力が試験インクの特性表面張力を下回るものと判定される。試験インクの挙動を適正に視覚化するために、試験インクを適用して、印刷基準マークを横切らない最小長さ5mm、好ましくは10mmの線を引くことが推奨される。厳密な表面張力は、基板の表面張力が正確に決定可能となるまで、特性表面張力値が増加または減少する多くの試験インクを適用することにより決定される。この技術は、処理後に±2ダイン/cmの精度で、取り付け領域208a,b、224a,b、226a,b、228a,bの表面張力の値を提供することができる。
【0050】
線、渦、ドット、またはこれらの組み合わせのパターンを印刷することによって取り付け領域が処理される場合は、どの個々の要素の面積よりも大きな面積で表面張力が測定されてもよい。これは特に、個々の要素が小さすぎて肉眼で識別できない場合に当てはまる。印刷パターンが平行線から成る場合は、印刷された線を確実に横切るように、印刷された平行線と実質的に垂直な線を描くことによって表面張力が測定されるものとする。
【0051】
処理後に取り付け領域208a,b、224a,b、226a,b、228a,bの表面張力を決定するには、別の技術を肉眼により実行可能である。この技術によれば、一体的に接合された接合パネルを、接合されてから24時間後に手動で引き離すことができる。その後、上面202上の露出した取り付け領域208a,b、224a,b、226a,b、228a,bを視覚的に検査することにより、下面上の取り付け領域308a,b、324a,b、326a,b、328a,bからの材料移動の有無があったかどうかを判定することができる。紙が破れ、下面上の取り付け領域308a,b、324a,b、326a,b、328a,bからの繊維の断片が上面202上の取り付け領域208a,b、224a,b、226a,b、228a,b上に見られる場合は、材料移動が目に見えるようになることになる。
図6は、実験において接合面が外れた、喫煙品用の容器402の斜視図である。容器402においては、印刷された内側面パネル406上の取り付け領域408が最初に、印刷されていない外側面パネル504の取り付け領域508に接着されている。内側面パネル406が外側面パネル504から手動で分離され、印刷された内側面パネル406の取り付け領域408上で繊維の断片550が明らかとなり、これは、材料移動が起こったことを示している。処理後の取り付け領域408の表面張力が34ダイン/cm〜60ダイン/cmの場合は、材料移動が見られることが確定している。したがって、簡単な目視検査によって、取り付け領域208a,bの表面張力が約34ダイン/cmを上回るかどうかを明らかにすることができる。
【0052】
高品質の接合によって、ブランクの材料の破壊抵抗よりも高い接合強度がもたらされることが確定している。したがって、高品質の接合が実現されている場合は、接着表面の分離によって、取り付け領域の表面上に見られる材料引裂が生じる。材料引裂は、容器を形成するブランクがコートボール紙または非コートボール紙等の繊維ベース材料で作られている場合に、特に明らかである。後者の場合、接合品質が高ければ、繊維残留物が取り付け領域の表面上に見られることになる。分離後の、繊維残留物による取り付け領域408の実質的な被覆は、取り付け領域408の表面張力が34ダイン/cmを上回っていることを、肉眼でわかる形で明確に示すものである。これに対して、取り付け領域の表面張力が34ダイン/cm未満または約60ダイン/cm超であるために接合品質が不十分な場合は、分離後の材料移動が明らかとならない。