(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6933731
(24)【登録日】2021年8月23日
(45)【発行日】2021年9月8日
(54)【発明の名称】永久磁石オフセットシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
H02K 1/14 20060101AFI20210826BHJP
H02K 21/38 20060101ALI20210826BHJP
H02K 19/02 20060101ALI20210826BHJP
【FI】
H02K1/14 A
H02K21/38 M
H02K19/02
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-567503(P2019-567503)
(86)(22)【出願日】2018年2月23日
(65)【公表番号】特表2020-508635(P2020-508635A)
(43)【公表日】2020年3月19日
(86)【国際出願番号】US2018019371
(87)【国際公開番号】WO2018156865
(87)【国際公開日】20180830
【審査請求日】2019年10月16日
(31)【優先権主張番号】15/441,618
(32)【優先日】2017年2月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519307425
【氏名又は名称】ヴァンデンバーグ,チャド アシュリー
【氏名又は名称原語表記】VANDENBERG,Chad Ashley
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンデンバーグ,チャド アシュリー
【審査官】
服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/050767(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0121571(US,A1)
【文献】
特表2016−540478(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/074571(WO,A1)
【文献】
特開2010−226911(JP,A)
【文献】
特表2002−504798(JP,A)
【文献】
米国特許第05965962(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0061419(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/14
H02K 19/02
H02K 21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁束オフセットシステムであって、
第1の有効極及び第2の有効極を有する磁束要素と、
第1、第2、及び第3の磁束提供体であって、
前記第1及び第2の磁束提供体がそれぞれ前記第1及び第2の有効極に近接する前記磁束要素に磁気的に結合され、
前記第3の磁束提供体が前記第1磁束提供体と前記第2の磁束提供体の間に於いて前記磁束要素に磁気的に結合され、
前記第1及び第2の磁束提供体が前記磁束要素に対して第1の極性を示し、
前記第3の磁束提供体が前記磁束要素に対して前記第1の極性とは逆の第2の極性を示す、第1、第2、及び第3の磁束提供体と、
前記磁束要素の周りに巻き付けられた制御コイルであって、
前記制御コイルが第1のアクティブ磁性状態を有し、前記第1のアクティブ磁性状態が、前記第3の磁束提供体からの磁束と統合し、その磁束を、前記第2の有効極に於ける前記第2の磁束提供体からの磁束を実質的に無効化するように方向付け、
前記制御コイルが第2のアクティブ磁性状態を有し、前記第2のアクティブ磁性状態が、前記第3の磁束提供体からの磁束と統合し、その磁束を、前記第1の有効極に於ける前記第1の磁束提供体からの磁束を実質的に無効化するように方向付ける、制御コイルと、を備え、
前記制御コイルが前記第1のアクティブ磁性状態にある場合、前記第1の有効極が前記第1の極性を示し、
前記制御コイルが前記第2のアクティブ磁性状態にある場合、前記第2の有効極が前記第1の極性を示す、磁束オフセットシステム。
【請求項2】
前記第1、第2、及び第3の磁束提供体の間の磁気回路を補完する磁束ヨークを更に備える、請求項1に記載の磁束オフセットシステム。
【請求項3】
前記第1及び第2の有効極にそれぞれ近接する、前記磁束要素に磁気的に結合された第4及び第5の磁束提供体を更に備え、前記第4及び第5の磁束提供体が前記第1の極性を示す、請求項2に記載の磁束オフセットシステム。
【請求項4】
請求項3に記載の磁束オフセットシステムであって、
前記第1のアクティブ磁性状態が更に、前記第3の磁束提供体からの磁束と統合し、その磁束を、前記第2の有効極に於ける前記第5の磁束提供体からの磁束を実質的に無効化するように方向付け、
前記第2のアクティブ磁性状態が更に、前記第3の磁束提供体からの磁束と統合し、その磁束を、前記第1の有効極に於ける前記第4の磁束提供体からの磁束を実質的に無効化するように方向付ける、磁束オフセットシステム。
【請求項5】
前記第1、第2、及び第3の磁束提供体が永久磁石である、請求項1に記載の磁束オフセットシステム。
【請求項6】
前記磁束要素が更に間隙を備え、前記間隙が、前記第1の有効極に向かって前記制御コイル内に少なくとも部分的に延び、且つ前記第2の有効極に向かって前記制御コイル内に少なくとも部分的に延びる、請求項1に記載の磁束オフセットシステム。
【請求項7】
請求項6に記載の磁束オフセットシステムであって、
前記間隙に配設され、前記第1の極性を示す、第4の磁束提供体と、
前記間隙に配設され、前記第2の極性を示す、第5の磁束提供体と、を更に備え、
前記第5の磁束提供体が、前記間隙の第1の側にある前記磁束要素の第1の部分に磁気的に結合され、その部分に前記第2の極性の磁束を提供し、
前記第4の磁束提供体が、前記間隙の前記第1の側と対向する前記間隙の第2の側にある前記磁束要素の第2の部分に磁気的に結合され、その部分に前記第1の極性の磁束を提供する、磁束オフセットシステム。
【請求項8】
前記第3及び第5の磁束提供体が、前記磁束要素の前記第1の部分の両側に磁気的に結合される、請求項7に記載の磁束オフセットシステム。
【請求項9】
前記第1及び第2の有効極にそれぞれ近接する前記磁束要素に磁気的に結合された、第6及び第7の磁束提供体を更に備え、前記第6及び第7の磁束提供体が前記第1の極性を示す、請求項7に記載の磁束オフセットシステム。
【請求項10】
前記制御コイルが、前記第1の磁束要素と第3の磁束要素の間と、前記第2の磁束要素と第3の磁束要素の間で、前記磁束要素の周りに巻き付けられる、請求項1に記載の磁束オフセットシステム。
【請求項11】
モータであって、
請求項1に記載の第1の磁束オフセットシステムを有する第1のステータと、
第1の鉄要素及び第2の鉄要素を有するロータと、を備え、前記鉄要素が共に、前記制御コイルが前記第1のアクティブ磁性状態にある場合、前記第1の有効極の有効磁界を回転式に通過し、前記制御コイルが前記第2のアクティブ磁性状態にある場合、前記第2の有効極の有効磁界を回転式に通過する、モータ。
【請求項12】
前記第1の鉄要素が永久磁石を有する、請求項11に記載のモータ。
【請求項13】
前記第1の鉄要素が、ロータ外周の第1の鉄部分に位置し、前記第2の鉄要素が、前記ロータ外周の第2の鉄部分に位置する、請求項11に記載のモータ。
【請求項14】
前記ロータが奇数個の鉄部分を備える、請求項13に記載のモータ。
【請求項15】
前記第1のステータ及び第2のステータの前記第1の磁束提供体、前記第2の磁束提供体、及び前記制御コイルに磁気的に結合される磁束ヨークを更に備える、請求項11に記載のモータ。
【請求項16】
請求項1に記載の第1の磁束オフセットシステムを有する第1のステータと、
請求項1に記載の第2の磁束オフセットシステムを有する第2のステータと、
第1の鉄要素及び第2の鉄要素を有するロータと、を備えるモータであって、
前記制御コイルが前記第1のアクティブ磁性状態にある場合、前記第1の鉄要素及び前記第2の鉄要素が共に、前記第1の磁束オフセットシステムの前記第1の有効極及び前記第2の磁束オフセットシステムの前記第1の有効極の有効磁界を回転式に通過し、
前記制御コイルが前記第2のアクティブ磁性状態にある場合、前記第1の鉄要素及び前記第2の鉄要素が共に、前記第1の磁束オフセットシステムの前記第2の有効極及び前記第2の磁束オフセットシステムの前記第2の有効極の有効磁界を回転式に通過する、モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、永久磁石オフセットシステム及び方法である。
【背景技術】
【0002】
背景の説明は、本発明の理解に役立ち得る情報を含んでいる。この説明は、ここに提供する何らかの情報が、現在特許請求している本発明に対する先行技術であること、又は関連性を有していることを認めるものではなく、或いは、具体的又は暗黙的に参照される刊行物が先行技術であることを認めるものでもない。
【0003】
永久的に磁化された極を有するロータと、電気的に励磁された界磁極を有するステータとを備えるモータには、多数の不利な点がある。斯かるモータの電流は通常、交流電流源又はロータと共に回転するコミュニケータから供給される。しかしながら、斯かるモータの最大速度は、交流電流の周波数によって、又は界磁コイルの電流の流れを急速に反転させる能力によって制限される。
【0004】
これらの問題に対処する為に、ベルマン(Baermann)の特許文献1に、永久磁石手段を備えたステータ極を含むモータが開示され、上記永久磁石手段は、各ステータ極を磁化する為のものになっている。ベルマンのステータ極は更に、上記永久磁石手段よりも高い磁気強度を有する遠隔作動磁気手段も有し、この遠隔作動磁気手段は、それに対応するステータ極の磁極性を反転させる為に使用され得、反転交流の提供を必要としない。しかしながら、ベルマンのステータは、各永久磁石の一方の極からの磁束しか利用せず、ベルマンのステータの磁極性を反転させるには多量のエネルギーが必要になる。
【0005】
特許文献2では、リーポー(Lipo)他が、既存の磁界を弱めたり強めたりする為に使用され得る界磁巻線を使用する永久磁石機械を開示している。リーポーのモータは、ステータヨークに埋め込まれた1対のアーチ形永久磁石と、界磁巻線と、電機子巻線を備える。リーポーのステータ極の半分は専用のN磁極であり、もう半分は、その専用のN磁極と直径方向に対向する専用のS磁極である。ジマーマン(Zimmerman)の特許文献3も、リド(Lido)が開示したものと同様の原理を使用している。但し、リーポーとジマーマンはどちらも、可変磁界を弱めたり強めたりする為に界磁巻線のみを使用する。
【0006】
本明細書で特定される刊行物は全て、個々の刊行物又は特許出願がそれぞれ参照により援用されることを具体的且つ個別に示された場合と同等に、参照により援用される。援用される参考文献の用語の定義又は使用が、本明細書で提供されているその用語の定義と整合がとれないか、それに反している場合、本明細書で提供されているその用語の定義が適用され、参考文献でのその用語の定義は適用されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第2,968,755号
【特許文献2】米国特許第5,825,113号
【特許文献3】米国特許第2,816,240号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、磁界の強度及び特性をよりエネルギー効率の良い形で変化させる永久磁石オフセットシステムが依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の主題は、磁束要素の有効極に於ける有効磁束を無効化磁束提供体が実質的に無効化する、システム及びモータを提供する。上記磁束要素は少なくとも2つの有効極を有し、有効極はそれぞれ、永久磁石や電磁石等少なくとも1つの有効磁束提供体を有し、有効磁束提供体はそれぞれの有効極に磁気的に結合される。1つ又は複数の無効化磁束提供体が、有効極間、又は少なくとも有効磁束提供体間に於いて、上記磁束要素全体に磁気的に結合される。
【0010】
有効磁束提供体は、無効化磁束提供体の極性と逆の極性を示す。
【0011】
制御コイルが、無効化磁束提供体からの磁束を、磁束要素の有効極の何れかに向かって方向付ける為に使用される。上記制御コイルはまた、第2の有効極に於ける第2の磁束提供体からの磁束を実質的に無効化する為に、無効化磁束提供体からの磁束と統合する磁束を提供する。上記制御コイルは、無効化磁束提供体からの磁束を方向付け、統合するのを助ける為に、極毎に複数の箇所で磁束要素の周りに巻き付けられ得る。例えば、上記制御コイルは、無効化磁束提供体と第1の有効磁束提供体の間と、その同じ無効化磁束提供体と第2の有効磁束提供体の間とに、配置され得る。
【0012】
電流が一方の方向に制御コイルを流れる場合、その制御コイルは第1のアクティブ磁性状態を有する。制御コイルからの磁束は、無効化磁束提供体からの磁束と統合し、その磁束を、第1の有効極に於ける第1の有効磁束提供体からの磁束を実質的に無効化するように方向付ける。この第1のアクティブ磁性状態では、第2の有効極は、第2の有効磁束提供体の極性を示す。
【0013】
電流の方向が反転させられると、上記制御コイルは第2のアクティブ磁性状態を有する。第2のアクティブ磁性状態では、制御コイルからの磁束は、無効化磁束提供体からの磁束と統合し、その磁束を、第2の有効極に於ける第2の有効磁束提供体からの磁束を実質的に無効化するように方向付ける。この第2のアクティブ磁性状態では、第1の有効極は、第1の有効磁束提供体の極性を示す。
【0014】
有利には、スイッチが、無効化磁束提供体からの磁束を方向付けることによって、どの有効磁束提供体をエネルギー効率の良い形で無効化するか選択する為に使用され得る。
【0015】
本発明の主題の他の態様では、磁束ヨークが、無効化磁束提供体と有効磁束提供体の間の磁気回路を補完し得る。上記ヨークは、磁束提供体の対向する極からの磁束が相互に流れ、増強する為の磁気経路を提供する。上記ヨークの磁気経路はまた、各磁束提供体の反対側の磁束からの干渉を最小限に抑える。
【0016】
幾つかの実施形態では、追加の磁束提供体が、第1の極性を示すそれぞれの磁極を介して、有効極に近接する磁束要素に磁気的に結合される。制御コイルが第1のアクティブ磁性状態にある場合、制御コイルからの磁束は更に、無効化磁束提供体からの磁束と統合し、その磁束を、第2の有効極に於ける全ての有効磁束提供体からの磁束を実質的に無効化するように方向付ける。制御コイルが第1のアクティブ磁性状態にある場合、制御コイルからの磁束は更に、無効化磁束提供体からの磁束と統合し、その磁束を、第2の有効極に於ける全ての有効磁束提供体からの磁束を実質的に無効化するように方向付ける。
【0017】
他の実施形態では、磁束要素は、それぞれの有効極に向かって制御コイル内に少なくとも部分的に延びる間隙を含む。この間隙内に、別の磁束提供体が、上記間隙の一方の側の有効磁束要素に第2の極性の磁束を提供し、上記間隙のもう一方の側の有効磁束要素に第1の極性の磁束を提供するように配置され得る。
【0018】
本発明者は更に、本発明の磁性オフセットシステムが、鉄要素(例えば永久磁石)を有するロータを有するモータ内でステータとして使用され得ることを企図し、上記鉄要素は、制御コイルが第1のアクティブ磁性状態にある場合1つの有効極の有効磁界を通過し、制御コイルが第2のアクティブ磁性状態にある場合別の有効極を通過する。第1の鉄要素は、ロータの外周に分散配置される。幾つかの実施形態では、上記ロータは、奇数対の鉄要素を含む。
【0019】
本発明の主題の他の実施形態では、特許請求の範囲に記載のモータは、第2の磁束オフセットシステムを第2のステータとして使用し得る。
【0020】
本発明の主題の様々な目的、特徴、態様及び利点は、添付の図面と共に、好ましい実施形態の以下の詳細な説明からいっそう明らかになるであろう。図面では同じ番号は同じ構成要素を表す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1Aは、磁束オフセットシステム100及びロータ160を備えるモータを示している。磁束オフセットシステム100は、永久磁石130、131、及び132に磁気的に結合された磁束要素101を含む。永久磁石130、131、及び132が示されているが、一時的な磁石(例えば電磁石)の使用も企図される。制御コイル180の極性は反転可能である。本明細書で使用する限りでは、用語「制御コイル」は、単一のワイヤ、又は入力源が同一の複数の別個のワイヤ、又は入力源が別々で、電流を同一の方向に提供するように互いに同期された複数の別個のワイヤを意味する。つまり、制御コイルは、反転し得る磁束の提供及びその方向付けに適した、任意の電気的構成を使用し得る。
【0023】
用語「アクティブ磁性状態」は、上記磁束要素に磁束を提供し、その磁束要素の内部に存在する磁束の流れを方向付ける為に、上記制御コイルに沿って電流が一方向に流れている状態であると、本明細書では定義される。電流の方向が反転すると、第1のアクティブ磁性状態にある制御コイルの極性が変化し、制御コイルが第2のアクティブ磁性状態に変化する。この状態と対照を成すのが、制御コイルに電流が印加されていない場合のパッシブ磁性状態である。
【0024】
図1Aに示されているアクティブ磁性状態では、制御コイル180の、有効極111に最も近い部分が、磁束要素101の上部に向かって方向付けられるN極磁束を生成し、このN極磁束は、永久磁石130からのS極磁束を含んだ磁束回路を補完する。制御コイル180のこの部分はまた、磁束要素101の下部に向かって方向付けられるS極磁束も生成し、このS極磁束は、永久磁石130からのS極磁束と統合し、永久磁石131からのN極磁束を含んだ磁気回路を補完する。好ましくは、制御コイル180と永久磁石130からの統合したS極磁束は、永久磁石131によって提供されるN極磁束に略等しく、これは、N極磁束又はS極磁束を最小限にしてロータ160に影響を及ぼさないようにする為である。従って、この第1のアクティブ磁性状態では、有効極111に於いてロータ160に向かって方向付けられる磁束は、実質的に無効化される。
【0025】
上記の第1のアクティブ磁性状態では、制御コイル180の、有効極112に最も近い部分が、永久磁石132からのN極磁束に、N極磁束を追加し、これによって、N極磁束有効磁界が有効極112からロータ160に向かって延びるようになる。本明細書で使用する限りでは、用語「有効磁界」は、第1又は第2のアクティブ磁性状態で磁束を発生させ、ロータの鉄要素を押したり引いたりする推進力を提供する、有効極に於ける磁界を示す。制御コイル180の上記部分からのS極磁束は、磁束要素101の上部に向かって方向付けられて、永久磁石130からのS極磁束と統合し、有効極111に近い制御コイルからのN極磁束を含んだ磁気回路を補完する。
【0026】
第2のアクティブ磁性状態では、制御コイル180の、有効極111に最も近い部分が、磁束要素101の上部に向かって方向付けられるS極磁束を生成し、このS極磁束は、永久磁石130からのS極磁束と統合し、永久磁石132からのN極磁束を含んだ磁気回路を補完する。制御コイル180のこの部分はまた、磁束要素101の下部に向かって方向付けられるN極磁束も生成し、このN極磁束は、永久磁石131からのN極磁束と統合する。好ましくは、制御コイル180と永久磁石130からの統合したS極磁束は、永久磁石132によって提供されるN極磁束に略等しい。従って、第2のアクティブ磁性状態では、有効極112に於いてロータ160に向かって方向付けられる磁束は、実質的に無効化される。
【0027】
第2のアクティブ磁性状態では、制御コイル180の、有効極112に最も近い部分が、その有効極112に向かってS極磁束を方向付けて、永久磁石132からのN極磁束を含んだ磁気回路を補完する。制御コイル180のこの部分からのN極磁束は、磁束要素101の上部に向かって方向付けられて、永久磁石130からのS極磁束と有効極111に近い制御コイルからのS極磁束を含んだ磁気回路を補完し、これによって、N極磁束の有効磁界が有効極111からロータ160に向かって延びるようになる。
【0028】
従って、当然ながら、磁束提供体からの無効化磁束を方向付けることによってエネルギー効率の良い形で無効化する磁束提供体(対向するステータ極に位置する)の選択に、スイッチ及び制御コイルが使用され得る。
【0029】
ロータ160は、シャフト150と鉄要素161及び162を有する。
図1Aでは、有効極112からのN極磁束は、鉄要素162のS極に向かって引力を印加し、その引力が推進力を提供する。好ましくは、鉄要素162が有効極112を通過する時に、スイッチが制御コイル180を切り替えて、有効極112からの引力を無効化し、その結果、ロータ160に停止力が印加されることなく、鉄要素162は通過する。ロータ160は回転しながら、鉄要素161及び162は有効極の有効磁界を「回転式に通過」する。好ましくは、鉄要素161及び162は両方共、有効極に面するS極を有する永久磁石であるが、これらの鉄要素161及び162は、非永久磁石又は電磁石等のアクティブな有効極に引き付けられる任意の鉄要素にし得る。
【0030】
図1〜4に示されているモータは、1対の有効極と1対のロータ極を示しているが、複数対の有効極を有するステータが企図される。ロータは、奇数対又は偶数対の鉄要素を有し得る。本発明のモータの好ましい実施形態は、例えば4対又は6対の有効極等、任意の偶数個の有効極を備えるステータを有する。それに対応するロータは好ましくは、ロータの中心に対して直径方向に対向しない奇数個の鉄要素を有し、これによって、
図1Bに示されているように、1つの鉄要素だけがアクティブな有効極の作用を受けるようになる。ロータ160が時計回りに回転すると、鉄要素162は回転して磁束要素100の有効極112から遠ざかる。有効極111が実質的無効化状態から磁性状態へ切り替わると、有効極111は鉄要素161を引き付け、鉄要素161は回転して有効極111に向かう。鉄要素161、162、及び5個のラベル付けされていない鉄要素は、磁性を有しても有していなくてもよい。
【0031】
磁石が鉄要素として使用される場合、磁性を有する有効極は、その鉄要素を引き付けるか、反発するかの何れかであり得る。磁性を有さない鉄要素が使用される場合、磁性を有する有効極は、その有効極の磁界に各鉄要素が入るとその鉄要素を引き付け得る。別の例示的な実施形態では、3「対」の鉄要素を有するロータが、4つの有効極を有するステータと共に使用され得る。幾つかの実施形態では、ステータは偶数個の有効極を有し、ロータは奇数個の鉄要素を有する。他の実施形態では、ステータは奇数個の有効極を有し、ロータは偶数個の鉄要素を有する。つまり、任意の数の有効極及び鉄要素が、適宜利用され得る。
【0032】
図2は、磁束オフセットシステム200及びロータ260を備える、モータの別の実施形態を示している。磁束要素201は、S極磁束提供体230と、N極磁束提供体231及び232と、永久磁石241及び242に磁気的に結合される。磁束ヨーク235が、S極磁束提供体230とN極磁束提供体231及び232との間の磁気回路を補完し、磁束要素200と磁束提供体230、231、及び232との間の各接触点に於ける磁束を有利に増強する。磁束ヨーク235はまた、磁束提供体230、231、及び232からの磁束に対して磁気抵抗の低い経路を提供し磁気回路を補完することによって、S極磁束提供体230とN極磁束提供体231及び232からの磁束が、磁束要素201に於ける磁束磁界と空間的に干渉することを防ぐ。
【0033】
磁束提供体241及び242によってそれぞれ有効極211、212に於ける磁束要素201に、追加のN極磁束が提供される。磁性オフセットシステム100と同様に、制御コイル280を流れる電流の方向によって、有効極211及び212のどちらがN極の磁極性を示すか制御される。
【0034】
図2に示されているアクティブ磁性状態では、有効極211に於けるN極磁束は実質的に無効化され、有効極212はN極の磁極性を示す。有効極212からのN極磁束は、ロータ260の鉄要素262からのS極磁束と相互作用する。この鉄要素262は、図のように永久磁石、又は他の任意の適当な鉄要素にし得る。ロータ260は更に、鉄要素261及びシャフト250を備える。
【0035】
図3では、磁束オフセットシステム300が、ロータ160に対するステータとして作用する。ロータ360は、シャフト350と鉄要素361及び362を有する。磁性オフセットシステム300は、磁束要素301、有効極311及び有効極312を含み、上記磁束要素301は、制御コイル380の2箇所でコイル内に少なくとも部分的に延びる間隙310を有する。永久磁石320が、間隙310内に配設され、磁束要素301の上側部分にN極磁束を提供し、磁束要素301の下側部分にS極磁束を提供する。永久磁石330がやはり、磁束要素301の下側部分にS極磁束を提供する。N極磁束提供体331及び341から有効極311に、N極磁束が提供される。N極磁束提供体332及び342から有効極312に、S極磁束が提供される。
【0036】
第1のアクティブ磁性状態では、制御コイル380から磁束要素301に沿って有効極312に向かって、N極磁束が延びる。従って、制御コイル380は、永久磁石320からのN極磁束にN極磁束を追加する。この統合された磁束が、有効極312に近い制御コイルの部分からのS極磁束を含んだ回路を補完し、永久磁石332及び342からのN極磁束に追加され、有効極312からのN極磁束を増強する。
【0037】
第1のアクティブ磁性状態では、制御コイル380から磁束要素301に沿って有効極311に向かって、S極磁束が延びる。制御コイル380の、有効極312により近い部分からと、S極磁束提供体320及び330からのS極磁束が、制御コイル380の、有効極311により近い部分からN極磁束と、S極磁束提供体331及び341からのN極磁束を含んだ磁気回路を補完する。従って、有効極311に於けるN極磁束は、実質的に無効化される。
図1及び2の実施形態と同様に、上記とは逆の、制御コイル380の第2のアクティブ磁性状態では、逆のことが生じる。
【0038】
図4は、2つの磁束オフセットシステム400及び400’を有する別のエンジンを示している。磁束オフセットシステム400の磁束要素401は間隙410を有し、間隙410は、制御コイル480内に少なくとも部分的に延びている。永久磁石420が、磁束要素301の外側部分にS極磁束を提供し、磁束要素401の内側部分にN極磁束を提供する。ステータ400は、S極磁束提供体441S及び442Sと、ヨーク441及び442と、N極磁束提供体441N及び442Nとを介して、ステータ400’に磁気的に結合される。
【0039】
同様に、ステータ400’の磁束要素401’は間隙410’を有し、間隙410’は、制御コイル480’内に少なくとも部分的に延びている。永久磁石420’が、磁束要素401’の内側部分にS極磁束を提供し、磁束要素401’の外側部分にN極磁束を提供する。
【0040】
制御コイル480が第1のアクティブ磁性状態にある場合、極411及び411’に於ける磁束は実質的に無効化される。有効極412はS極の磁極性を示し、有効極412’はN極の磁極性を示す。従って、有効極412は、ステータ460の鉄要素462からのN極磁束と相互作用する。有効極412’は、鉄要素462からのS極磁束と相互作用する。これらの合算された相互作用によって、シャフト450を中心としたシャフト460の回転と、モータの推進力が引き起こされる。この企図された実施形態では、有効極412及び412’は鉄要素462を引き付け、引っ張るが、有効極412及び412’が鉄要素462を押し動かすのを可能にする為に、鉄要素462にある永久磁石は反転させられ得る。
【0041】
他の実施形態では、モータが1つ又は複数のステータを備え得、各ステータは、4個、6個、8個、10個、又はそれ以上の有効極を有する1つ(又は複数)の磁束要素を備える。斯かるモータの動作中、無効化磁束提供体が、時計回り又は反時計回りの方向に連続する有効極に於いて、磁束提供体からの有効磁束を実質的に無効化する。無効化磁束提供体からの磁束を、実質的に磁気的に無効化される各有効極に向かって方向付ける為に、制御コイルが使用される。制御コイルはまた、磁気的に無効化される有効極と対向する各有効極に於ける磁束提供体からの磁束と統合する磁束を提供し、これらの極の磁束を増強する。当然ながら、1つ又は複数の対の磁気的に無効化/増強される有効極は、ロータ極の数に応じてアクティブになり得る。
【0042】
本明細書の特定の実施形態に関して提供されるあらゆる例又は例を示す言葉(例えば「等」)の使用は、単に本発明をより効果的に説明する為のものであり、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中の言葉を、特許請求の範囲に記載されていないが本発明の実施に不可欠な要素を示すものと解釈すべきではない。本明細書で使用する限りでは、文脈に於いて特段示されない限り、用語「〜に結合される」は、直接的な結合(互いに結合される2つの要素が互いに接触する)と間接的な結合(2つの要素の間に少なくとも1つの追加の要素が位置する)の両方を含む為のものである。従って、用語「〜に結合される」及び「〜と結合される」は、同義語として使用される。
【0043】
本明細書の説明及び以下の特許請求の範囲全体で使用する限りでは、「ある(a)」、「ある(an)」、及び「上記(the)」の意味は、文脈に於いて特段明確に示されない限り、複数形の参照を含む。また、本明細書の説明で使用する限りでは、「〜の中に(in)」の意味は、文脈に於いて特段明確に示されない限り、「〜の中に(in)」及び「〜の上に(on)」を含む。
【0044】
文脈に於いてそうでないことが示されていない限り、本明細書に記載される範囲は全て、それらの両端の値を含むものと解釈すべきであり、制限のない範囲は、商業的に実用的な値のみを含むものと解釈すべきである。同様に、値の列挙は全て、その間の値も含むとみなすべきである。個々の値はそれぞれ、本明細書で特段示されない限り、本明細書に個別に記載された場合と同様に本明細書に援用される。
【0045】
本明細書で開示する本発明の代替要素又は実施形態のグループ分けは、限定として解釈すべきではない。各グループの構成要素は、個別に、或いはそのグループの他の構成要素又は本明細書に記載の他の要素と任意に組み合わせて言及され、特許請求され得る。あるグループの1つ又は複数の構成要素が、利便性及び/又は特許性の理由で、あるグループに含まれたり、あるグループから削除されたりし得る。そのように含まれたり削除されたりする場合、本明細書は、修正されたそのグループを含み、従って添付の特許請求の範囲全体の記載要件を満たすものとみなされる。
【0046】
本明細書の説明は、本発明の主題の多くの例示的な実施形態を提供する。各実施形態は本発明の要素の単一の組み合わせを表すが、本発明の主題は、ここで開示する要素の全ての可能な組み合わせを含むとみなされる。従って、一実施形態が要素A、B、及びCを備え、第2の実施形態が要素B及びDを備える場合、本発明の主題は、明示的に開示していなくても、A、B、C、又はDの他の残りの組み合わせも含むとみなされる。
【0047】
明細書の発明概念から逸脱することなく、既に説明したものに加えて更に多くの変更形態が可能であることは、当業者には明らかであろう。従って、本発明の主題は、添付の特許請求の範囲の趣旨に於いて以外に制限を受けるべきではない。更に、本明細書と特許請求の範囲の両方を解釈する際は、全ての用語は文脈と整合のとれた可能な限り最も広い形で解釈すべきである。具体的には、用語「備える(comprises)」及び「備えた(comprising)」は、要素、構成要素、又はステップに非排他的な形で言及するものと解釈すべきであり、言及された要素、構成要素、又はステップが明示的に言及されていない他の要素、構成要素、又はステップと共に存在し得ること、利用され得ること、又は組み合わされ得ることを示す。本明細書及び特許請求の範囲が、A、B、C....及びNからなるグループから選択されたものの内の少なくとも1つに言及している場合、その文は、上記グループから要素を1つだけ要求し、AとNやBとN等を要求していないものと解釈すべきである。
【符号の説明】
【0048】
100 磁束オフセットシステム
101 磁束要素
111 有効極
112 有効極
130 永久磁石
131 永久磁石
132 永久磁石
150 シャフト
160 ロータ
161 鉄要素
162 鉄要素
180 制御コイル
200 磁束オフセットシステム
201 磁束要素
211 有効極
212 有効極
230 S極磁束提供体
231 N極磁束提供体
232 N極磁束提供体
235 磁束ヨーク
241 磁束提供体
242 磁束提供体
250 シャフト
260 ロータ
261 鉄要素
262 鉄要素
280 制御コイル
300 磁束オフセットシステム
301 磁束要素
310 間隙
311 有効極
312 有効極
320 S極磁束提供体
330 S極磁束提供体
331 N極磁束提供体
332 N極磁束提供体
341 N極磁束提供体
342 N極磁束提供体
350 シャフト
360 ロータ
361 鉄要素
362 鉄要素
380 制御コイル
400 磁束オフセットシステム
400’ 磁束オフセットシステム
401 磁束要素
401’ 磁束要素
410 間隙
410’ 間隙
411 有効極
411’ 有効極
412 有効極
412’ 有効極
420 永久磁石
420’ 永久磁石
441 ヨーク
441N N極磁束提供体
441S S極磁束提供体
442 ヨーク
442N N極磁束提供体
442S S極磁束提供体
450 シャフト
460 ロータ
462 鉄要素
480 制御コイル
480’ 制御コイル