(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記貯蔵装置は前記固体酸化物形燃料電池の排燃料ガスから回収した二酸化炭素を貯蔵するように構成され、流量調整弁が設けられた貯蔵ガス供給ラインを介して前記メタネーション装置に接続されると共に二酸化炭素を食品用原料又は工業用ガスとして外部への供給するように構成される、請求項1又は2に記載のバイオガス利用メタネーションシステム。
前記再生可能エネルギ発電装置の電力が不足した場合に、前記固体酸化物形燃料電池で発電された電力及び余剰電力を前記水素生成装置に供給するように構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載のバイオガス利用メタネーションシステム。
前記固体酸化物形燃料電池は排燃料と排酸化性ガスを独立して排出するように構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載のバイオガス利用メタネーションシステム。
前記被処理ガスの供給量、又は、前記再生可能エネルギ発電装置の電力の少なくとも一方に基づいて、前記固体酸化物形燃料電池、前記水素生成装置、前記メタネーション装置、若しくは、前記貯蔵装置の少なくとも一部を制御するためのシステム制御部を更に備える、請求項1から7のいずれか一項に記載のバイオガス利用メタネーションシステム。
前記システム制御部は、前記被処理ガスの供給量が増加し、且つ、前記再生可能エネルギ発電装置の電力が増加した場合、前記電力の変動量に対応して前記固体酸化物形燃料電池を制御するとともに、前記メタネーション装置の運転負荷を増加するように制御する、請求項8に記載のバイオガス利用メタネーションシステム。
前記システム制御部は、前記被処理ガスの供給量が増加し、且つ、前記再生可能エネルギ発電装置の電力が減少した場合、前記固体酸化物形燃料電池の発電量を電力需要に対応して制御するとともに、前記水素生成装置の前記水素の生成量に対して過剰な二酸化炭素が貯蔵されるように前記貯蔵装置を制御するとともに二酸化炭素の貯蔵量が過剰とならないよう余剰電力を利用する、請求項8又は9に記載のバイオガス利用メタネーションシステム。
前記システム制御部は、前記被処理ガスの供給量が減少し、且つ、前記再生可能エネルギ発電装置の電力が増加した場合、前記固体酸化物形燃料電池及び前記メタネーション装置を運転負荷が減少するように制御する、請求項8から10のいずれか一項に記載のバイオガス利用メタネーションシステム。
前記システム制御部は、前記被処理ガスの供給量が減少し、且つ、前記再生可能エネルギ発電装置の電力が減少した場合、メタンガス供給源から前記被処理ガスにメタンを供給し、前記固体酸化物形燃料電池の発電量を電力需要に応じて制御するとともに、前記水素生成装置の前記水素の生成量に対して過剰な二酸化炭素が貯蔵されるように前記貯蔵装置を制御する、請求項8から11のいずれか一項に記載のバイオガス利用メタネーションシステム。
前記被処理ガスは液化天然ガスが貯蔵されるタンク内に生じるボイルオフガスである、請求項1から12のいずれか一項に記載のバイオガス利用メタネーションシステム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0012】
図1は一実施形態に係るバイオガス利用メタネーションシステム100の全体構成図である。バイオガス利用メタネーションシステム100は、可燃成分を含む被処理ガスGを燃料として用いて発電可能な発電システムである。被処理ガスGは、例えば、ビール工場から排出され、可燃成分としてメタンを含有する食品残渣ガスのようなバイオガスである。以下の実施形態では、被処理ガスGとして、ビール工場から排出されるバイオガスを取り扱う場合を例示するが、被処理ガスGは、例えば、下水処理設備から排出される消化ガスであってもよいし、液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)が貯蔵されるタンク内に生じるボイルオフガスであってもよい。
【0013】
バイオガス利用メタネーションシステム100には、被処理ガス供給ライン102を介して被処理ガスGが供給される。被処理ガス供給ライン102の上流側には、被処理ガスGの主成分であるビール工場のバイオガスG1を供給するバイオガス供給源104と、バイオガス供給源104から供給されたバイオガスG1に対して前処理を実施するための前処理装置106とが設けられる。
【0014】
バイオガス供給源104と前処理装置106とを接続するバイオガス供給ライン108からは、都市ガス供給ライン110が分岐しており、バイオガス供給源104に対して並列に都市ガス供給源112が接続されている。都市ガス供給源112は高純度のメタンを含有する都市ガスG2を供給可能である。都市ガス供給源112から供給される都市ガスG2は、都市ガス供給ライン110上に設けられた都市ガス流量調整弁113の開度を制御することにより、バイオガス供給ライン108を流れるバイオガスG1に混合可能である。このように、バイオガスG1に対する都市ガスG2の供給量を調整することで、バイオガスG1に含まれるメタン供給量を都市ガスG2によって調整することができる。
【0015】
バイオガスG1と都市ガスG2との混合ガスは、前処理装置106によって前処理が施される。前処理は、混合ガスがバイオガス利用メタネーションシステム100に適した被処理ガスGに精製するための処理である。例えば、前処理装置106は、混合ガスに対して脱硫処理を実施することで、混合ガスに含まれる硫黄成分を脱硫することで、被処理ガスGを精製する。
【0016】
バイオガス利用メタネーションシステム100は、固体酸化物形燃料電池114と、水素生成装置116と、メタネーション装置118と、貯蔵装置120と、システム制御部122と、を備える。
【0017】
固体酸化物形燃料電池114は、燃料ガスと酸化性ガスとを化学反応させることにより発電する発電デバイスであり、優れた発電効率及び環境対応等の特性を有している。固体酸化物形燃料電池114は、燃料極114aと、電解質114bと、空気極114cとを備える。
【0018】
燃料極114aは、Niとジルコニア系電解質材料との複合物で構成され、例えば、Ni/YSZが用いられる。この場合、燃料極114aは、燃料極114aの成分であるNiが、燃料ガスとして供給される被処理ガスGに対して触媒作用を備える。この触媒作用では、固体酸化物形燃料電池114に供給された被処理ガスGに含まれる、メタンと、排燃料ガスおよびメタン精製装置から回収された水蒸気を反応させ、水素(H
2)と一酸化炭素(CO)に改質する。また燃料極114aは、改質により得られる水素(H
2)及び一酸化炭素(CO)と、固体電解質114bを介して空気極114cから供給される酸素イオン(O
2−)とを固体電解質114bとの界面付近において電気化学的に反応させて水(H
2O)及び二酸化炭素(CO
2)を生成する。このような反応を経た燃料極114aからの排燃料ガスは、第1排燃料ガスライン117を介して排出される。
【0019】
電解質114bは、ジルコニアセラミックスなどのセラミックスが用いられる。この電解質114bは、空気極114cで生成される酸素イオン(O
2−)を燃料極114aに移動させるものである。
【0020】
空気極114cは、例えば、LaSrMnO
3系酸化物、又はLaCoO
3系酸化物で構成される。この空気極114cは、電解質114bとの界面付近において、供給される空気等の酸化性ガス中の酸素が還元され酸素イオン(O
2−)を生成するものである。空気極114cで酸素イオンを電解質114bへ供給した残りの排酸化性ガスは、酸化性ガス排出部103から外部に排出可能である。
【0021】
固体酸化物形燃料電池114は、燃料極114aからの排燃料ガスと、空気極114cからの排酸化性ガスが独立して外部に取り出すことが可能に構成されてもよい。具体的には、燃料極114aからの排燃料ガスは、第1排燃料ガスライン117を介して取り出し可能であり、空気極114cからの排酸化性ガスは、酸化性ガス排出部103から取り出し可能である。本実施形態では前述のように、空気極114cにおいて酸化性ガス中の酸素は固体酸化物形燃料電池の電解質114b中を酸素イオンとして燃料極114a側に移動し、燃料極114aでは被処理ガスG中のメタンや改質反応により生成した一酸化炭素と反応して排燃料ガス中に二酸化炭素を生成するため、原理的に通常の燃焼設備の排ガスに比べ排燃料ガス中の二酸化炭素の濃度が高くなる。一方、排燃料ガスと排酸化性ガスをスタック内部で燃焼させる、いわゆるシールを行わない固体酸化物形燃料電池では、排燃料ガス中に酸化性ガス中の窒素が混入するため二酸化炭素の濃度が希釈される。シールを行わない固体酸化物形燃料電池やガスエンジンの排ガスでは、二酸化炭素が数%、窒素が約80%含まれるが、シールを行う当該固体酸化物形燃料電池では、二酸化炭素の濃度が35〜45%と高い。本実施形態では、燃料極114aからの排燃料ガスにおける二酸化炭素の濃度が高いため二酸化炭素の回収に要する動力が低減され、後述するように排燃料ガスに含まれる二酸化炭素の有効活用を効果的に行うことができる。
【0022】
固体酸化物形燃料電池114のうち燃料極114aには、燃料ガスとして、前述の被処理ガスG、又は、メタネーション装置118で生成されたメタンの少なくとも一方が供給される。燃料ガスにおける被処理ガスGと、メタネーション装置118で生成されたメタンとの割合は、後述するように運用パターンによって可変である。また固体酸化物形燃料電池114のうち空気極114cには、燃料ガスと反応させるための酸化性ガスとして、酸化性ガス供給源111からの酸化性ガス(空気)又は水素生成装置116で水素を生成する際に副産物として生成される酸素の両方又は少なくとも一方が酸化性ガス供給ライン148を介して供給される。
【0023】
固体酸化物形燃料電池114では、これら燃料ガス及び酸化性ガスを反応させることで発電を行う。固体酸化物形燃料電池114で発電された電力は、電力需要に応じて、固体酸化物形燃料電池114の出力端(破線で図示)から送電回路115を介して外部の電力系統(例えば所内電力系統や商用電力系統)に供給可能に構成されている。
【0024】
尚、固体酸化物形燃料電池114の詳細構造については公知の例に従い、本願明細書では省略することとする。
【0025】
固体酸化物形燃料電池114のうち燃料極114aから排出される排燃料ガスには、発電反応の生成物である二酸化炭素や水、及び、発電反応で消費されなかったメタン、一酸化炭素、水素が含まれる。燃料極114aから排出された排燃料ガスは、第1排燃料ガスライン117を介してドライヤ119に導入され、排燃料ガスに含まれる水分が除去される。ドライヤ119で除去された水分は、水分回収器121によって回収されることで、後述する生成メタン供給ライン124を流れるメタンの改質用蒸気として用いられるとともに、純水タンク130に貯留される。
尚、空気極114cから排出される排酸化性ガスは二酸化炭素を含んでおらず、クリーンなガスとして酸化性ガス排出部103から外部に排出可能である。
【0026】
ドライヤ119によって水分が除去された排燃料ガスは、リサイクルガス圧縮機132によって二酸化炭素回収装置134に導入される。二酸化炭素回収方法には吸収剤を用いた化学吸収法(アミン吸収液など)や吸着剤を用いた物理吸収法(PSAやTSAなど)、膜分離法、深冷分離法など様々な方式があるが、処理量や排燃料ガス中の二酸化炭素濃度、供給圧力、温度などの条件により適切な方法が選択される。二酸化炭素回収装置134は、排燃料ガスに含有される二酸化炭素の少なくとも一部を回収可能であり、その回収量は、後述する運用パターンによって可変である。
【0027】
二酸化炭素回収装置134で回収された二酸化炭素は、二酸化炭素貯蔵ライン136を介して貯蔵装置120に貯蔵される。貯蔵装置120は、例えば、二酸化炭素を貯蔵可能なタンク設備であり、システム内で二酸化炭素が過剰になった際の最大量を貯蔵可能な容量を有する。そのため、システム内で二酸化炭素が過剰になった場合であっても、二酸化炭素の過剰分を貯蔵装置120に貯蔵でき、外部に対して排出されない。また二酸化炭素回収装置134で二酸化炭素が回収された後の排燃料ガスは、第2排燃料ガスライン135を介して固体酸化物形燃料電池114に戻されるように構成される。
尚、貯蔵装置120に貯蔵される二酸化炭素は、食品用原料や石鹸、コンクリート注入、ドライアイス、ボイラ中和水などの工業用ガスとして適宜外部に取り出し可能である。
【0028】
貯蔵装置120は、貯蔵ガス供給ライン138を介して、メタネーション装置118に接続されている。貯蔵ガス供給ライン138には貯蔵ガス供給量調整弁139が設けられており、貯蔵ガス供給量調整弁139の開度を制御することで、貯蔵装置120に貯蔵された二酸化炭素をメタネーション反応に必要な量をメタネーション装置118に供給されるように構成されている。
【0029】
メタネーション装置118では、貯蔵ガス供給ライン138を介して導入される二酸化炭素と、水素生成装置116から水素供給ライン140を介して供給される高純度の水素とを反応させることでメタネーション処理を行うことで、二酸化炭素と水素からメタンを生成する。メタネーション処理は、以下の化学反応式で表される直接法が用いられてもよいし、間接法が用いられてもよい。
(直接法)
CO
2+4H
2→CH
4+2H
2O−39.4kcal/mol
(間接法)
CO
2+H
2→CO+H
2O+9.8kcal/mol
CO+3H
2→CH
4+H
2O−49.3kcal/mol
【0030】
メタネーション装置118で生成されたメタンは、メタン精製装置142に導入される。メタン精製装置142は、メタネーション装置118で生成されたメタンを精製することにより高純度なメタンを精製する。メタン精製装置142で精製されたメタンは、メタン排出ライン144を介して化学原料として外部に取り出すことができる。また、精製後の残りのオフガスはメタン供給ライン124を介して固体酸化物形燃料電池114に燃料ガスとして供給されてもよい。尚、生成メタン供給ライン124を介して固体酸化物形燃料電池114に供給されるメタンと、メタン排出ライン144を介して外部に取り出されるメタンとの割合は、後述するように運用パターンによって可変である。
【0031】
水素生成装置116は、再生可能エネルギ発電装置の電力又は余剰電力146を用いて水素を生成可能なデバイスであり、具体的には、純水タンク130に貯留された純水を再生可能エネルギ発電装置の電力又は余剰電力146を用いて水電解することで、水素を生成する。尚、再生可能エネルギ発電装置は、再生可能エネルギを用いて二酸化炭素の排出を伴わない方式で発電可能であり、余剰電力は例えば原子力発電や水力発電のように二酸化炭素の排出を伴わない方式で発電可能であり、これらで発電された電力を水素生成装置116で利用することで、本システムにおける二酸化炭素の排出量を低減するために効果的である。また再生可能エネルギ発電装置は季節的又は時間帯的に発電量が変動するため、例えば、再生可能エネルギ発電装置における発電量だけでは水素生成装置116で必要な電力を賄うことが難しい場合には、余剰電力を利用することで不足分をカバーすることができる。
【0032】
水素生成装置116は、水電解処理によって生成した水素を、水素供給ライン140を介してメタネーション装置118に供給するとともに、水電解処理で副産物として生成される酸素を、酸化性ガス供給ライン148を介して、固体酸化物形燃料電池114に酸化性ガスとして供給してもよい。これにより、酸化性ガスに含まれる酸素濃度が上昇することで固体酸化物形燃料電池114の発電性能が向上する。
【0033】
尚、純水タンク130は純水供給ライン145を介して水素生成装置116に接続されている。純水供給ライン145には純水供給量調整弁147が設けられており、純水供給量調整弁147の開度を制御することにより、水素生成装置116への純水の供給量を調整できるようになっている。
【0034】
システム制御部122は、例えば、バイオガス利用メタネーションシステム100を構成する上記各要素の制御を行うためのコントロールユニットである。システム制御部122は、例えば、CPU(Central ProcessingUnit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等である。
【0035】
システム制御部122は、バイオガス利用メタネーションシステム100に供給される被処理ガスGの供給量Qsを検出するための被処理ガス供給量検出部122aと、再生可能エネルギ発電装置146の電力Paを検出するための再生可能エネルギ電力検出部122bと、被処理ガス供給量検出部122a及び再生可能エネルギ電力検出部122bの検出結果によって特定される運用条件に基づいて、バイオガス利用メタネーションシステム100の各構成要素を制御するための制御部122cと、を備える。
【0036】
被処理ガス供給量検出部122aは、被処理ガス供給ライン102に設置された供給量センサ150の検出値を取得することにより、バイオガス利用メタネーションシステム100に対する被処理ガスGの供給量Qsを検出する。また被処理ガス供給量検出部122aは、供給量センサ150のような測定デバイスの測定結果に代えて、又は、加えて、例えばバイオガスG1の供給源であるビール工場(バイオガス供給源104)の稼働計画に関するデータやビール工場における生産量に影響を与える気象情報のような環境因子に関するデータに基づいて、バイオガス供給源104からのバイオガスG1の供給量から、被処理ガスGの供給量Qsをフィードフォワード的に推定した結果を用いてもよい。
【0037】
再生可能エネルギ電力検出部122bは、再生可能エネルギ発電装置146の電力Paを検出する。電力Paは、例えば、再生可能エネルギ発電装置146に設けられた電力センサ152で検出されるある時間における平均電力量として求められる。
【0038】
システム制御部122によるバイオガス利用メタネーションシステム100の制御は、被処理ガス供給量検出部122a及び再生可能エネルギ電力検出部122bの検出結果によって特定される運用条件に基づいて、幾つかの運用パターンに分類される。
図2は
図1のバイオガス利用メタネーションシステム100の運用パターンの例を運用条件ごとに示す図である。本実施形態では、バイオガス利用メタネーションシステム100の運用パターンは、第1運用パターンP1〜第4運用パターンP4を含む。
【0039】
第1運用パターンP1は、被処理ガスGの供給量Qsが多く、且つ、再生可能エネルギ発電装置146の電力Paが被処理ガスGの供給量Qsに対して多い運転条件に対応する運用パターンである。すなわち、第1運用パターンP1では、ニュートラルな運転条件(例えば、被処理ガスGの供給量Qs及び再生可能エネルギ発電装置146の電力Paが年間平均値である場合)に対して、被処理ガスGの供給量Qsが増加し、且つ、再生可能エネルギ発電装置146の電力Paが増加した場合に選択される。このような運転条件は、例えば、ビール工場におけるビール生産量が増加することで被処理ガスGの排出量が増加し、日照時間が長くなることにより太陽エネルギなどの再生可能エネルギが増加する「夏季の日中」に相当する。
【0040】
第1運用パターンP1では、制御部122cは、電力Paの変動量に対応するように固体酸化物形燃料電池114を制御するとともに、メタネーション装置118の運転負荷を増加するように制御する。この場合、被処理ガスGの供給量Qsと再生可能エネルギ発電装置146の電力Paの双方が豊富に存在する。そのため固体酸化物形燃料電池114は、比較的大きな電力需要を賄うとともに、再生可能エネルギ発電装置146の電力Paの変動を吸収するように発電を行うことができる。またメタネーション装置118の運転負荷を増加させることで、供給量が増加する被処理ガスに含有される二酸化炭素や、貯蔵装置120に蓄えられた二酸化炭素をメタネーション処理し、メタンを増産する。この場合、貯蔵装置120内の二酸化炭素はメタネーション処理しメタンとして外部へ供給され、電力Paが減少する場合においても発生する二酸化炭素は一時的に貯蔵装置120に貯蔵可能となり、外部に排出されることはない。
【0041】
第2運用パターンP2は、被処理ガスGの供給量Qsが多く、且つ、再生可能エネルギ発電装置146の電力Paが少ない運転条件に対応する運用パターンである。すなわち、第2運用パターンP2では、ニュートラルな運転条件(例えば被処理ガスGの供給量Qsや再生可能エネルギ発電装置146の電力Paが年間平均値である場合)に対して、被処理ガスGの供給量Qsが増加し、且つ、再生可能エネルギ発電装置146の電力Paが減少した場合に選択される。このような運転条件は、例えば、ビール工場におけるビール生産量が増加することで被処理ガスGの排出量が増加するものの、日照時間が短くなることにより太陽エネルギなどの再生可能エネルギが減少する「冬季の夜間」に相当する。
【0042】
第2運用パターンP2では、制御部122cは、固体酸化物形燃料電池114の発電量を電力需要に対応して制御するとともに、水素生成装置116の水素の生成量に対して過剰な二酸化炭素が貯蔵装置120に貯蔵されるように制御する。この場合、被処理ガスGの供給量Qsに対して再生可能エネルギ発電装置146の電力Paが不足しているため、水素生成装置116における水素の生成量が、メタネーション装置118でシステム内の二酸化炭素を全量処理するために必要な量に満たない。そのため、システム内で過剰な二酸化炭素(すなわちメタネーション処理しきれない二酸化炭素)を一時的に貯蔵装置120に貯蔵することで、外部への排出が防止される。一方で、固体酸化物形燃料電池114では電力需要に応じた範囲で必要最小限の発電を行うことで二酸化炭素を含む排燃料ガスを削減し、システム内で過剰になる二酸化炭素の量を抑制する。
【0043】
また第2運用パターンP2では、再生可能エネルギ発電装置による発電量が少なくなるため、再生可能エネルギ装置に代えて又は加えて余剰電力を利用することで、水素生成装置116において貯蔵装置120に貯蔵された二酸化炭素からメタネーションに必要な水素を生成することができる。このように再生可能エネルギ装置の発電量が少ない状況下においても、余剰電力によって二酸化炭素の処理が可能となるため、貯蔵装置120に貯蔵される二酸化炭素の容量が過大になることがない。すなわち、貯蔵装置120に要求される二酸化炭素の貯蔵容量を抑えることができるため、貯蔵装置120をコンパクトにすることができる。
【0044】
尚、第2運用パターンP2において貯蔵装置120に一時的に貯蔵された二酸化炭素は、再生可能エネルギ発電装置146の電力Paが回復することで水素生成装置116における水素の生成量が増加した際に、メタネーション装置118においてメタネーション処理することで、外部への二酸化炭素ガスの排出を伴うことなく、メタンを生産することができる。また、回収された二酸化炭素は食品用原料や石鹸、コンクリート注入、ドライアイス、ボイラ中和水などの工業用ガスとして大気放出せずに外部へ取り出し利用することも可能である。
【0045】
第3運用パターンP3は、被処理ガスGの供給量Qsが少なく、且つ、再生可能エネルギ発電装置146の電力Paが多い運転条件に対応する運用パターンである。すなわち、第3運用パターンP3では、ニュートラルな運転条件(例えば被処理ガスGの供給量Qsや再生可能エネルギ発電装置146の電力Paが年間平均値である場合)に対して、被処理ガスGの供給量Qsが減少し、且つ、再生可能エネルギ発電装置146の電力Paが増加した場合に選択される。このような運転条件は、例えば、ビール工場におけるビール生産量が減少することで被処理ガスGの排出量が減少するとともに、日照時間が長くなることにより太陽エネルギなどの再生可能エネルギが増加する「春季や秋季の日中」に相当する。
【0046】
第3運用パターンP3では、制御部122cは、固体酸化物形燃料電池114及びメタネーション装置118の運転負荷が減少するように制御する。この場合、再生可能エネルギ発電装置146の電力Paが被処理ガスGの供給量Qsに対して十分多く存在するため、水素生成装置116ではシステム内の二酸化炭素の全量をメタネーション処理するために必要な水素を賄うことができる。そのため、被処理ガスGに含有される二酸化炭素や、少ない運転負荷で運転される固体酸化物形燃料電池114からの排燃料ガスに含まれる二酸化炭素の全量は、メタネーション装置118においてメタネーション処理することができ、外部に対して二酸化炭素が排出されることはない。
【0047】
第4運用パターンP4は、被処理ガスGの供給量Qsが少なく、且つ、再生可能エネルギ発電装置146の電力Paが少ない運転条件に対応する運用パターンである。すなわち、第4運用パターンP4では、ニュートラルな運転条件(例えば被処理ガスGの供給量Qsや再生可能エネルギ発電装置146の電力Paが年間平均値である場合)に対して、被処理ガスGの供給量Qsが減少し、且つ、再生可能エネルギ発電装置146の電力Paが減少した場合に選択される。このような運転条件は、例えば、ビール工場におけるビール生産量が減少することで被処理ガスGの排出量が減少するとともに、日照時間が短くなることにより太陽エネルギなどの再生可能エネルギが減少する「春季や秋季の夜間」に相当する。
【0048】
第4運用パターンP4では、制御部122cは、固体酸化物形燃料電池114の発電量を電力需要に応じて制御するとともに、水素生成装置116の水素の生成量に対して過剰な二酸化炭素が貯蔵装置120に一時的に貯蔵されるように制御する。この場合、固体酸化物形燃料電池114では電力需要に応じて排燃料ガスが排出されるが、再生可能エネルギ発電装置146の電力Paが少ないため水素生成装置116ではシステム内にある二酸化炭素の全量をメタネーション処理するために必要な水素を賄うことができず、システム内に過剰な二酸化炭素が生じる。このようなシステム内で過剰な二酸化炭素は貯蔵装置120に一時的に貯蔵されることで、外部への排出が防止される。
【0049】
尚、第4運用パターンP4において貯蔵装置120に貯蔵された二酸化炭素は、再生可能エネルギ発電装置146の電力Paが回復することで水素生成装置116における水素の生成量が増加した際や余剰電力により水素生成装置116の生成量を増加させ、メタネーション装置118においてメタネーション処理することで、外部への二酸化炭素ガスの排出を伴うことなく、メタン化することができる。また、回収された二酸化炭素は食品用原料や石鹸、コンクリート注入、ドライアイス、ボイラ中和水などの工業用ガスとして大気放出せずに外部へ取り出し利用することも可能である。
【0050】
以上説明したようにバイオガス利用メタネーションシステム100は、被処理ガスGの供給量Qs及び再生可能エネルギ発電装置146の電力Paによって規定される運用条件に基づく運用パターンで制御される。これにより、被処理ガスGの供給量Qsや再生可能エネルギ発電装置146の電力Paが変動した場合においても、二酸化炭素ガスの外部への排出を伴わないメタンの生産と高効率でクリーンかつフレキシブルな発電が可能である。
【0051】
続いて上述のバイオガス利用メタネーションシステム100の他の実施形態について説明する。
図3は他の実施形態に係るバイオガス利用メタネーションシステム100´の全体構成図である。バイオガス利用メタネーションシステム100´は、前述のバイオガス利用メタネーションシステム100と主要構成を共通としているが、システム内における構成要素のレイアウトが少なくとも部分的に異なる。以下の説明では、前述のバイオガス利用メタネーションシステム100と対応する構成については共通の符号を付し、重複する説明は適宜省略して述べる。
【0052】
バイオガス利用メタネーションシステム100´が備えるメタネーション装置118には、被処理ガス供給ライン102を介して被処理ガスGが供給される。被処理ガスGは、前述のようにビール工場から排出されるバイオガスG1であり、メタン及び二酸化炭素を含有する。またメタネーション装置118には、貯蔵ガスライン138を介して二酸化炭素が導入される。このようにメタネーション装置118に導入される二酸化炭素は、水素生成装置116から水素供給ライン140を介して供給される水素と反応させることでメタネーション処理され、メタン生成が行われる。
【0053】
メタネーション装置118で生成されたメタンは、メタン精製装置142に導入されることにより精製される。メタン精製装置142で生成されたメタンの少なくとも一部は化学原料として外部へ供給可能であり、オフガスは生成メタン供給ライン124を介して固体酸化物形燃料電池114に供給可能に構成される。固体酸化物形燃料電池114では、燃料ガスとして、固体酸化物形燃料電池114の燃料極114aから排出される排燃料ガスから水分および二酸化炭素の少なくとも一部が回収された排燃料ガス、又は、メタン精製装置142から生成メタン供給ライン124を介してメタンを主成分とするオフガスが導入される。また固体酸化物形燃料電池114の空気極114cには、燃料ガスと反応させるための酸化性ガスとして、酸化性ガス供給源111からの酸化性ガス(空気)又は水素生成装置116で水素を生成する際に副産物として生成される酸素の両方または少なくとも一方が酸化性ガス供給ライン148を介して導入される。
【0054】
固体酸化物形燃料電池114では、これら燃料ガス及び酸化性ガスを反応させることで発電を行う。固体酸化物形燃料電池114で発電された電力は、電力需要に応じて、固体酸化物形燃料電池114の出力端(破線で図示)から送電回路115を介して外部の電力系統(例えば商用電力系統)に供給可能に構成されている。
【0055】
メタン精製装置142は、メタネーション装置118で生成されたメタンを精製することにより高純度なメタンを精製する。メタン精製装置142で精製されたメタンは、メタン排出ライン144を介して化学原料として外部に取り出すことができる。また、精製後の残りのオフガスは生成メタン供給ライン124を介して固体酸化物形燃料電池114の燃料極114aに燃料ガスとして供給される。
【0056】
固体酸化物形燃料電池114の燃料極114aから排出される排燃料ガスは、第1排燃料ガスライン117を介してドライヤ119に導入され、排燃料ガスに含まれる水分が除去される。ドライヤ119で除去された水分は、水分回収器121によって回収され、一部は第2排燃料ガスライン135を流れるメタンの改質用蒸気として用いられるとともに、純水タンク130に貯留され水素発生装置に供給される。
【0057】
ドライヤ119によって水分が除去された排燃料ガスは、リサイクルガス圧縮機132によって二酸化炭素回収装置134に導入される。二酸化炭素回収方法には吸収剤を用いた化学吸収法(アミン吸収液など)や吸着剤を用いた物理吸収法(PSAやTSAなど)、膜分離法、深冷分離法など様々な方式があるが、処理量や排燃料ガス中の二酸化炭素濃度、供給圧力、温度などの条件により適切な方法が選択される。二酸化炭素回収装置134は、排燃料ガスに含有される二酸化炭素の少なくとも一部を回収可能であり、その回収量は、前述した運用パターンによって可変である。二酸化炭素回収装置134で回収された二酸化炭素は二酸化炭素貯蔵ライン136を介して二酸化炭素貯蔵装置に貯蔵される。少なくとも一部の二酸化炭素を回収された排燃料ガスは、第2排燃料ガスライン135を介して固体酸化物形燃料電池114の燃料極114aに導入され再利用される。
【0058】
上記構成を有するバイオガス利用メタネーションシステム100´においても、システム制御部122は、被処理ガス供給量検出部122a及び再生可能エネルギ電力検出部122bの検出結果によって特定される運用条件に基づいて、制御部122cがバイオガス利用メタネーションシステム100´の各構成要素を制御する。バイオガス利用メタネーションシステム100´は、前述のバイオガス利用メタネーションシステム100(
図1を参照)と各構成要素のレイアウトが少なくとも部分的に異なっているが、
図2を参照して前述した4つの運用パターンを運用条件に基づいて同様に制御可能である。これによりバイオガス利用メタネーションシステム100´においても、被処理ガスGの供給量Qsや再生可能エネルギ発電装置146の電力Paが変動した場合においても、二酸化炭素ガスの排出を伴わない高効率でクリーンな発電が可能である。
【0059】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0060】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0061】
(1)一態様に係るバイオガス利用メタネーションシステムは、
メタン及び二酸化炭素を含有する被処理ガスを燃料ガスとして用いることにより発電可能な固体酸化物形燃料電池と、
再生可能エネルギ発電装置の電力を用いて水素を生成可能な水素生成装置と、
前記固体酸化物形燃料電池の排燃料ガスに含まれる二酸化炭素と、前記水素生成装置で生成された前記水素とを用いてメタネーション処理することでメタンを生成し、当該メタンを化学原料として生産、又は、前記燃料ガスとして前記固体酸化物形燃料電池に供給可能なメタネーション装置と、
前記メタメーション装置で生成されたメタンガスを精製し、当該メタンの少なくとも一部を化学原料として外部へ供給可能であると共にオフガスを前記固体酸化物形燃料電池に供給可能なメタン精製装置と、
前記被処理ガスの供給量、又は、前記再生可能エネルギ発電装置の電力の少なくとも一方に基づいて、前記メタネーション装置に供給される前記二酸化炭素の少なくとも一部を貯蔵可能な貯蔵装置と、
を備える。
【0062】
上記(1)の態様によれば、メタン及び二酸化炭素を含有する被処理ガスを、固体酸化物形燃料電池の燃料ガスとして使用し、燃料排ガス中の二酸化炭素を回収し再生可能エネルギ発電装置の電力を用いて生成された水素ガスとメタネーション装置でメタンを生成し、化学原料として外部に提供すると共にメタン精製装置のオフガスを固体酸化物形燃料電池の燃料ガスとして再使用することで、外部への二酸化炭素の排出が抑制される。
【0063】
また再生可能エネルギ発電装置の電力は日照条件や気象条件などによって変動するが、電力の変動による影響は、固体酸化物形燃料電池、水素生成装置、及び、メタネーション装置の動作バランスを調整することで吸収される。これにより、コスト的に不利な大容量バッテリのような蓄電設備を用いることなく、バイオガスの発生量や再生可能エネルギの電力の変動に対応することが可能である。
【0064】
またメタネーション装置の処理能力に対してシステム内の二酸化炭素が過剰になった場合には、二酸化炭素を貯蔵装置に貯蔵することができる。これにより、メタネーション装置の処理能力に余裕が生じた際に、貯蔵装置に貯蔵された二酸化炭素をメタネーション処理することが可能となり、一時的にシステム内の二酸化炭素が過剰になったとしても、貯蔵装置に二酸化炭素をバッファ的に貯蔵することで、外部に二酸化炭素を排出することがないクリーンなバイオガス利用メタネーションシステムを実現できる。特に、メタネーション反応において二酸化炭素は水素に比べて必要なモル数が少ないため、貯蔵装置への貯蔵対象として二酸化炭素を選択することで、貯蔵装置の容量を少なくでき、よりコンパクトな構成で上記システムを構築することができる。
【0065】
(2)一態様に係るバイオガス利用メタネーションシステムは、
再生可能エネルギ発電装置の電力を用いて水素を生成可能な水素生成装置と、
メタン及び二酸化炭素ガスを含有する被処理ガスと前記水素生成装置で生成された前記水素とをメタネーション処理することでメタンを生成するメタネーション装置と、
前記メタメーション装置で生成されたメタンガスを精製し、当該メタンの少なくとも一部を化学原料として外部へ供給可能であると共にオフガスを固体酸化物形燃料電池に供給可能な前記メタン精製装置と、
前記メタン精製装置のオフガスを用いて発電可能な前記固体酸化物形燃料電池と、
前記被処理ガスの供給量、又は、前記再生可能エネルギ発電装置の電力の少なくとも一方に基づいて、前記メタネーション装置に供給される前記二酸化炭素の少なくとも一部を貯蔵可能な貯蔵装置と、
を備える。
【0066】
上記(2)の態様によれば、被処理ガスに含まれる二酸化炭素ガスを、再生可能エネルギ発電装置の電力を用いて生成された水素ガスとメタネーション処理することでメタンガスを生成することで、被処理ガスの有効利用が可能となる。このように生成されたメタンガスは、化学原料として外部に供給したり、精製オフガスを固体酸化物形燃料電池に燃料ガスとして供給可能である。
【0067】
また再生可能エネルギ発電装置の電力は日照条件や気象条件などによって変動するが、電力の変動による影響は、固体酸化物形燃料電池、水素生成装置、及び、メタネーション装置の動作バランスを調整することで吸収される。これにより、コスト的に不利な大容量バッテリのような蓄電設備を用いることなく、再生可能エネルギの電力の変動に対応することが可能である。
【0068】
またメタネーション装置の処理能力に対してシステム内の二酸化炭素が過剰になった場合には、二酸化炭素を貯蔵装置に貯蔵することができる。これにより、メタネーション装置の処理能力に余裕が生じた際に、貯蔵装置に貯蔵された二酸化炭素をメタネーション処理することが可能となり、一時的にシステム内の二酸化炭素が過剰になったとしても、貯蔵装置に二酸化炭素をバッファ的に貯蔵することで、外部に二酸化炭素を排出することがないクリーンなバイオガス利用メタネーションシステムを実現できる。特に、メタネーション反応において二酸化炭素は水素に比べて必要なモル数が少ないため、貯蔵装置への貯蔵対象として二酸化炭素を選択することで、貯蔵装置の容量を少なくでき、よりコンパクトな構成で上記システムを構築することができる。
【0069】
(3)他の態様では上記(1)又は(2)の態様において、
前記貯蔵装置は前記固体酸化物形燃料電池の排燃料ガスから回収した二酸化炭素を貯蔵可能であり、流量調整弁が設けられた貯蔵ガス供給ラインを介して前記メタネーション装置に接続されると共に二酸化炭素を食品用原料又は工業用ガスとして外部への供給可能である。
【0070】
上記(3)の態様によれば、貯蔵装置は貯蔵ガス供給ラインを介してメタネーション装置に接続される。貯蔵ガス供給ラインには流量調整弁が設けられており、流量調整弁の開度を制御することによって、貯蔵装置に貯蔵された二酸化炭素を任意のタイミングでメタネーション装置に供給することができる。これにより、メタネーション装置の処理能力すなわち水素供給能力に余裕が生じたタイミングで、貯蔵装置に貯蔵された二酸化炭素を貯蔵ガス供給ラインを介してメタネーション装置に供給することで、一時的にシステム内で過剰になった二酸化炭素を外部に排出することなく、メタンに変換することが可能であると共に二酸化炭素を食品用原料や工業用ガスとして利用可能となる。
【0071】
(4)他の態様では上記(1)から(3)のいずれか一態様において、
前記再生可能エネルギ発電装置の電力が不足した場合に、前記固体酸化物形燃料電池で発電された電力及び余剰電力を前記水素生成装置に供給可能である。
【0072】
上記(4)の態様によれば、再生可能エネルギ発電装置の電力が変動することによって水素生成装置において水素の生成に必要な電力が不足した場合には、固体酸化物形燃料電池で発電された電力を供給することで補うことができ、また長期間にわたって再生可能エネルギ発電装置の電力が不足する場合は原子力・水力などの余剰電力を受け入れることで水素の生成に必要な電力を賄うことができる。
【0073】
(5)他の態様では上記(1)から(4)のいずれか一態様において、
前記水素発生装置で生成された酸素を前記固体酸化物形燃料電池の酸化性ガスの一部として供給可能である。
【0074】
上記(5)の態様によれば、水素発生装置で水素を生成する際に生じる酸素を、固体酸化物形燃料電池に供給される酸化性ガスの一部として有効利用できる。
【0075】
(6)他の態様では上記(1)から(5)のいずれか一態様において、
前記被処理ガスにメタンを供給可能なメタン供給源を更に備える。
【0076】
上記(6)の態様によれば、メタンガス供給源によって被処理ガスにメタンを供給することで、被処理ガス中のメタン供給量を調整することで電力の需要に応じて安定したシステムの運用が可能となる。
【0077】
(7)他の態様では上記(1)から(6)のいずれか一態様において、
前記固体酸化物形燃料電池は排燃料ガスと排酸化性ガスが独立して外部に取り出すことが可能である。
【0078】
尚、本開示においては、燃料電池として排燃料ガスと排酸化性ガスとを独立して取り出すことが可能な固体酸化物形燃料電池を利用することで、上記システムを実現できる。この場合、酸化性ガス中の酸素は固体酸化物形燃料電池の電解質中を酸素イオンとして燃料側に移動するため燃料中のメタンや一酸化炭素と反応して排燃料中に二酸化炭素を生成するため、原理的に通常の燃焼設備の排ガスに比べ二酸化炭素の濃度が高くなる。一方、排燃料と排酸化性ガスをスタック内部で燃焼させる、シールを行わない固体酸化物形燃料電池では排燃料ガスが空気中の窒素により希釈されるため二酸化炭素濃度は1/10程度に低下する。
また燃料電池として固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)、リン酸形燃料電池(PAFC:Phosphoric Acid Fuel Cell)のような他のデバイスを用いる場合は予めメタンを水素に改質する必要があり、この際に改質装置の加熱用バーナから二酸化炭素が発生するため本システムのメリットを享受できない。またガスエンジンなどのデバイスを用いる場合は酸素燃焼を行う必要があり、水電解装置で発生する酸素を使用するか別途酸素製造装置が必要となるためシステムの運用性やエネルギ効率が低下することが避けられない。
【0079】
(8)他の態様では上記(1)から(7)のいずれか一態様において、
前記被処理ガスの供給量、又は、前記再生可能エネルギ発電装置の電力の少なくとも一方に基づいて、前記固体酸化物形燃料電池、前記水素生成装置、前記メタネーション装置、若しくは、前記貯蔵装置の少なくとも一部を制御するためのシステム制御部を更に備える。
【0080】
上記(8)の態様によれば、前述のバイオガス利用メタネーションシステムの各構成は、被処理ガスの供給量、又は、再生可能エネルギ発電装置の電力の少なくとも一方に基づいて制御される。これにより、被処理ガスの供給量や再生可能エネルギの電力が変動した場合においても、それぞれの動作バランスを調整することで、二酸化炭素の排出を抑制したクリーンなバイオガス利用メタネーションシステムを実現できる。
【0081】
(9)他の態様では上記(8)の態様において、
前記システム制御部は、前記被処理ガスの供給量が増加し、且つ、前記再生可能エネルギ発電装置の電力が増加した場合、前記電力の変動量に対応して前記固体酸化物形燃料電池を制御するとともに、前記メタネーション装置の運転負荷を増加するように制御する。
【0082】
上記(9)の態様によれば、被処理ガスの供給量と再生可能エネルギ発電装置の電力の双方が豊富に存在する場合には、固体酸化物形燃料電池は比較的大きな電力需要を賄うとともに、再生可能エネルギ発電装置の電力の変動を吸収するように発電を行う。またメタネーション装置の運転負荷を増加させることで、供給量が増加する被処理ガスに含有される二酸化炭素や、固体酸化物形燃料電池の排燃料ガスに含有される二酸化炭素の全量をメタネーション処理することで二酸化炭素の外部への排出を防止するとともに、メタンを増産し化学原料として供給することでシステム運用の経済的利点を高めることができる。
【0083】
(10)他の態様では上記(8)又は(9)の態様において、
前記システム制御部は、前記被処理ガスの供給量が増加し、且つ、前記再生可能エネルギ発電装置の電力が減少した場合、前記固体酸化物形燃料電池の発電量を電力需要に対応して制御するとともに、前記水素生成装置の前記水素の生成量に対して過剰な二酸化炭素が貯蔵されるように前記貯蔵装置を制御するとともに貯蔵装置の二酸化炭素の貯蔵量が許容量以上にならないよう余剰電力を利用する。
【0084】
上記(10)の態様によれば、被処理ガスの供給量に対して再生可能エネルギ発電装置の電力が不足している場合には、水素生成装置における水素の生成量が、メタネーション装置でシステム内の二酸化炭素を全量処理するために必要な量に満たない。そのため、システム内で過剰な二酸化炭素(すなわちメタネーション処理しきれない二酸化炭素)を一時的に貯蔵装置に貯蔵することで、外部への排出が防止される。一方で、固体酸化物形燃料電池では電力需要に応じた範囲で必要最小限の発電を行うことで二酸化炭素を含む排燃料ガスを削減し、システム内で過剰になる二酸化炭素の量を抑制できる。貯蔵装置に貯蔵された二酸化炭素は、再生可能エネルギ発電装置の電力が回復することで水素生成装置における水素の生成量が増加した際に、メタネーション装置においてメタネーション処理することで、外部への二酸化炭素ガスの排出を伴うことなく、消費することができる。また長期間にわたって再生可能エネルギ発電装置の電力が不足する場合は外部から余剰電力を受け入れることで水素の生成に必要な電力を賄うことができる。このように二酸化炭素を電力供給のバッファとし活用することで再生可能エネルギ及び余剰電力と電力需要のアンバランスの調整機能を持たせることが可能になる。また、再生可能エネルギの電力量Paが被処理ガスGの供給量Qsに対して大幅に少なく、二酸化炭素をシステム内に貯蔵できない場合は食品用原料や工業用ガスとして大気放出せずに外部へ取り出し利用することも可能である。
【0085】
(11)他の態様では上記(8)から(10)のいずれか一態様において、
前記システム制御部は、前記被処理ガスの供給量が減少し、且つ、前記再生可能エネルギ発電装置の電力が増加した場合、前記固体酸化物形燃料電池及び前記メタネーション装置を運転負荷が減少するように制御する。
【0086】
上記(11)の態様によれば、再生可能エネルギ発電装置の電力が被処理ガスの供給量に対して十分多く存在する場合には、水素生成装置ではシステム内の二酸化炭素の全量をメタネーション処理するために必要な水素を賄うことができる。そのため、被処理ガスに含有される二酸化炭素や、少ない運転負荷で運転される固体酸化物形燃料電池からの排燃料ガスに含まれる二酸化炭素の全量は、メタネーション装置においてメタネーション処理することができ、外部に対して二酸化炭素が排出されることはない。
【0087】
(12)他の態様では上記(8)から(11)のいずれか一態様において、
前記システム制御部は、前記被処理ガスの供給量が減少し、且つ、前記再生可能エネルギ発電装置の電力が減少した場合、メタンガス供給源から前記被処理ガスにメタンを供給し、前記固体酸化物形燃料電池の発電量を電力需要に応じて制御するとともに、前記水素生成装置の前記水素の生成量に対して過剰な二酸化炭素が貯蔵されるように前記貯蔵装置を制御する。
【0088】
上記(12)の態様によれば、固体酸化物形燃料電池では電力需要に応じて発電することで排燃料ガスが排出されるが、再生可能エネルギ発電装置の電力が少ないため水素生成装置ではシステム内にある二酸化炭素の全量をメタネーション処理するために必要な水素を賄うことができず、システム内に過剰な二酸化炭素が生じる。このようなシステム内で過剰な二酸化炭素は貯蔵装置に貯蔵されることで、外部への排出が防止される。貯蔵装置に貯蔵された二酸化炭素は、再生可能エネルギ発電装置の電力が回復することで水素生成装置における水素の生成量が増加した際に、メタネーション装置においてメタネーション処理することで、外部への二酸化炭素ガスの排出を伴うことなく、消費することができる。また、再生可能エネルギの電力量Paが被処理ガスGの供給量Qsに対して大幅に少なく、二酸化炭素をシステム内に貯蔵できない場合は食品用原料や工業用ガスとして大気放出せずに外部へ取り出し利用することも可能である。
【0089】
(13)他の態様では上記(1)から(12)のいずれか一態様において、
前記被処理ガスはビール工場から排出されるバイオガスである。
【0090】
上記(13)の態様によれば、被処理ガスとして、ビール工場から排出されるバイオガスが用いられる。ビール工場では季節によってビール生産量が大きく変動するため、それに伴ってバイオガスの排出量も大きく変動するが、上記システムの各構成の動作バランスを調整することで、被処理ガスの供給量の変動をバッファ的に吸収しつつ、二酸化炭素の排出を伴わないクリーンな発電システムを実現できる。
【0091】
(14)他の態様では上記(1)から(12)のいずれか一態様において、
前記被処理ガスは液化天然ガスが貯蔵されるタンク内に生じるボイルオフガスである。
【0092】
上記(14)の態様によれば、被処理ガスとして、液化天然ガスが貯蔵されるタンク内にあるボイルオフガスが用いられる。ボイルオフガスは、タンクが置かれる環境や液化天然ガスの残量によって発生量が大きく変動するが、上記システムの各構成の動作バランスを調整することで、被処理ガスの供給量の変動をバッファ的に吸収しつつ、二酸化炭素の排出を抑制したクリーンな発電システムを実現できる。
【解決手段】バイオガス利用メタネーションシステムは、被処理ガスを燃料ガスとして用いる固体酸化物形燃料電池と、再生可能エネルギ発電装置の電力を用いて水素を生成可能な水素生成装置と、システム内の二酸化炭素を水素生成装置で生成された水素とメタネーション処理するメタネーション装置と、を備える。システム内の二酸化炭素は、被処理ガスの供給量、又は、再生可能エネルギ発電装置の電力に基づいて貯蔵装置に貯蔵可能である。