特許第6933900号(P6933900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6933900柱と梁との接合方法、及び、柱と梁との接合構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6933900
(24)【登録日】2021年8月24日
(45)【発行日】2021年9月8日
(54)【発明の名称】柱と梁との接合方法、及び、柱と梁との接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/30 20060101AFI20210826BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20210826BHJP
【FI】
   E04B1/30 Z
   E04B1/58 508N
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-4656(P2017-4656)
(22)【出願日】2017年1月13日
(65)【公開番号】特開2018-112038(P2018-112038A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】濱田 真
【審査官】 兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−231644(JP,A)
【文献】 特開平06−033513(JP,A)
【文献】 特開昭49−013918(JP,A)
【文献】 特開2013−053415(JP,A)
【文献】 特開平07−331743(JP,A)
【文献】 特開2003−193570(JP,A)
【文献】 特開2008−007949(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0186503(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/30
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート構造の柱又はプレキャスト鉄筋コンクリート構造の柱と木質系材料により形成された梁との接合方法であって、
梁の端部側の端面と上面となる側面とに開口する溝を形成する溝形成ステップと、
柱の上端面における側縁側に梁の溝が形成された端部側を載置する梁設置ステップと、
通し材を梁の溝内及び柱の上端面の上方に位置されるように上下に複数設置する通し材設置ステップと、
溝に挿入された通し材と溝の周壁との間の隙間に充填材としてエポキシ系の接着剤を充填して通し材を梁に定着させる通し材定着ステップと、
柱の上端面の上方にコンクリートを打設するコンクリート打設ステップとを順に備えたことを特徴とする柱と梁との接合方法。
【請求項2】
鉄筋コンクリート構造の柱又はプレキャスト鉄筋コンクリート構造の柱と木質系材料により形成された梁との接合方法であって、
梁の端部側の端面と上面となる側面とに開口する溝を形成する溝形成ステップと、
柱の上端面における互いに対向する一方の側縁側に一方の梁の溝が形成された端部側を載置するとともに、柱の上端面における互いに対向する他方の側縁側に他方の梁の溝が形成された端部側を載置して、各梁の溝が開口する端面同士を向かい合わせる梁設置ステップと、
通し材を各梁の各溝内及び柱の上端面の上方に位置されるように上下に複数設置する通し材設置ステップと、
溝に挿入された通し材と溝の周壁との間の隙間に充填材としてエポキシ系の接着剤を充填して通し材を梁に定着させる通し材定着ステップと、
柱の上端面の上方にコンクリートを打設するコンクリート打設ステップとを順に備えたことを特徴とする柱と梁との接合方法。
【請求項3】
鉄筋コンクリート構造の柱又はプレキャスト鉄筋コンクリート構造の柱と木質系材料により形成された梁との接合構造において、
柱と、
柱の上端面における側縁側に端部側が載置された梁と、
柱の上端面における側縁側に載置された梁の端部側の端面と上面となる側面とに開口するように形成された溝と、
一端側が梁の溝に挿入され、かつ、他端側が柱の上端面の上方に位置されるように上下に設置された複数の通し材とを備え、
溝に挿入された通し材と溝の周壁との間の隙間に充填されたエポキシ系の接着剤によって通し材が梁に定着されたとともに、柱の上端面の上方にコンクリートが打設されて柱と梁とが接合されたことを特徴とする柱と梁との接合構造。
【請求項4】
鉄筋コンクリート構造の柱又はプレキャスト鉄筋コンクリート構造の柱と木質系材料により形成された梁との接合構造において、
柱と、
柱の上端面における互いに対向する一方の側縁側に端部側が載置された一方の梁と、
柱の上端面における互いに対向する他方の側縁側に端部側が載置された他方の梁と、
柱の上端面における互いに対向する各側縁側に載置された各梁の端部側の端面と上面となる側面とに開口するように形成された溝と、
両端側が各梁の各溝に挿入され、かつ、中央部が柱の上端面の上方に位置されるように上下に設置された複数の通し材とを備え、
溝に挿入された通し材と溝の周壁との間の隙間に充填されたエポキシ系の接着剤によって通し材が梁に定着されたとともに、柱の上端面の上方にコンクリートが打設されて柱と梁とが接合されたことを特徴とする柱と梁との接合構造。
【請求項5】
通し材として、鉄筋部と、鉄筋部の端部に設けられた当該鉄筋部の径よりも大径の定着部とを備えた通し材を使用し、
溝形成ステップにおいては、鉄筋部が挿入される鉄筋挿入溝部と、溝幅が鉄筋挿入溝部の溝幅よりも幅広に形成されて定着部が挿入される定着部挿入溝部とを備えた溝を形成し、
通し材設置ステップにおいては、通し材の鉄筋部を鉄筋挿入溝部に挿入するとともに、通し材の定着部を定着部挿入溝部に挿入したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の柱と梁との接合方法。
【請求項6】
通し材は、鉄筋部と、鉄筋部の端部に設けられた当該鉄筋部の径よりも大径の定着部とを備え、かつ、溝は、鉄筋部が挿入される鉄筋挿入溝部と、溝幅が鉄筋挿入溝部の溝幅よりも幅広に形成されて定着部が挿入される定着部挿入溝部とを備えたことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の柱と梁との接合構造。
【請求項7】
通し材は、溝に挿入され、かつ、柱の上端面の上方に設置されたせん断補強筋の上に位置されるように設置されたことを特徴とする請求項3又は請求項4又は請求項6に記載の柱と梁との接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱と梁との接合に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、柱と梁との接合方法として、例えば、木質系材料で形成された梁を鉄筋コンクリート製の柱に接合する方法が知られている(非特許文献1参照)。
当該方法では、梁内に内蔵させた鉄筋の一端側を当該梁の木口面から所定の長さだけ突出させておき、左右の梁の木口面から突出する鉄筋同士を機械式継手で繋ぐようにしている。
また、木質系材料で形成された梁の一方の端面から他方の端面側に延長するように形成されたねじ孔と、アンカー部材と、連結用ボルトとを備え、梁に形成されたねじ孔にアンカー部材を螺着し、かつ、連結ボルトの先端側をアンカー部材の一方の端面から他方の端面側に延長する中空穴の穴底側に形成されたねじ部に螺着するとともに、連結ボルトの後端側を中空穴より突出させた梁の柱連結部構造が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「鉄筋コンクリート柱と集成材梁の接合方法に関する研究」、日本建築学会大会学術講演梗概集(九州)、2016年8月、p.1495−1496
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−231644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、鉄筋や連結ボルト等の連結材を梁の一端部側に内蔵させるための梁の一端部側の構造が複雑となったり、一端部側に連結材を内蔵させた梁の製造コストが高くなる等の問題があった。
また、非特許文献1に開示された従来技術では、左右の梁の木口面から突出する鉄筋同士を機械式継手で繋ぐようにしているため、左の梁の木口面から突出する鉄筋の位置と右の梁の木口面から突出する鉄筋の位置がずれている場合には、左右の梁の木口面から突出する鉄筋同士を機械式継手で繋ぐことができなくなる。
本発明は、柱に連結される梁の構造を簡単にできて梁の製造コストを抑制でき、また、機械式継手を用いずに柱と梁とを接合できる柱と梁との接合方法、及び、柱と梁との接合構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る鉄筋コンクリート構造の柱又はプレキャスト鉄筋コンクリート構造の柱と木質系材料により形成された梁との接合方法は、梁の端部側の端面と上面となる側面とに開口する溝を形成する溝形成ステップと、柱の上端面における側縁側に梁の溝が形成された端部側を載置する梁設置ステップと、通し材を梁の溝内及び柱の上端面の上方に位置されるように上下に複数設置する通し材設置ステップと、溝に挿入された通し材と溝の周壁との間の隙間に充填材としてエポキシ系の接着剤を充填して通し材を梁に定着させる通し材定着ステップと、柱の上端面の上方にコンクリートを打設するコンクリート打設ステップとを順に備えた方法、あるいは、梁の端部側の端面と上面となる側面とに開口する溝を形成する溝形成ステップと、柱の上端面における互いに対向する一方の側縁側に一方の梁の溝が形成された端部側を載置するとともに、柱の上端面における互いに対向する他方の側縁側に他方の梁の溝が形成された端部側を載置して、各梁の溝が開口する端面同士を向かい合わせる梁設置ステップと、通し材を各梁の各溝内及び柱の上端面の上方に位置されるように上下に複数設置する通し材設置ステップと、溝に挿入された通し材と溝の周壁との間の隙間に充填材としてエポキシ系の接着剤を充填して通し材を梁に定着させる通し材定着ステップと、柱の上端面の上方にコンクリートを打設するコンクリート打設ステップとを順に備えた方法であるので、柱に連結される梁の構造を簡単にできて梁の製造コストを抑制でき、また、機械式継手を用いずに柱と梁とを接合できるようになるとともに、梁と通し材との一体性が向上する。
また、本発明に係る鉄筋コンクリート構造の柱又はプレキャスト鉄筋コンクリート構造の柱と木質系材料により形成された梁との接合構造は、柱と、柱の上端面における側縁側に端部側が載置された梁と、柱の上端面における側縁側に載置された梁の端部側の端面と上面となる側面とに開口するように形成された溝と、一端側が梁の溝に挿入され、かつ、他端側が柱の上端面の上方に位置されるように上下に設置された複数の通し材とを備え、溝に挿入された通し材と溝の周壁との間の隙間に充填されたエポキシ系の接着剤によって通し材が梁に定着されたとともに、柱の上端面の上方にコンクリートが打設されて柱と梁とが接合された構造、あるいは、柱と、柱の上端面における互いに対向する一方の側縁側に端部側が載置された一方の梁と、柱の上端面における互いに対向する他方の側縁側に端部側が載置された他方の梁と、柱の上端面における互いに対向する各側縁側に載置された各梁の端部側の端面と上面となる側面とに開口するように形成された溝と、両端側が各梁の各溝に挿入され、かつ、中央部が柱の上端面の上方に位置されるように上下に設置された複数の通し材とを備え、溝に挿入された通し材と溝の周壁との間の隙間に充填されたエポキシ系の接着剤によって通し材が梁に定着されたとともに、柱の上端面の上方にコンクリートが打設されて柱と梁とが接合された構造であるので、柱に連結される梁の構造を簡単にできて梁の製造コストを抑制でき、また、機械式継手を用いずに柱と梁とを接合できるようになるとともに、梁と通し材との一体性が向上する。
また、通し材として、鉄筋部と、鉄筋部の端部に設けられた当該鉄筋部の径よりも大径の定着部とを備えた通し材を使用し、溝形成ステップにおいては、鉄筋部が挿入される鉄筋挿入溝部と、溝幅が鉄筋挿入溝部の溝幅よりも幅広に形成されて定着部が挿入される定着部挿入溝部とを備えた溝を形成し、通し材設置ステップにおいては、通し材の鉄筋部を鉄筋挿入溝部に挿入するとともに、通し材の定着部を定着部挿入溝部に挿入したことを特徴とするので、梁に対する通し材の定着性能が向上する。
また、通し材は、鉄筋部と、鉄筋部の端部に設けられた当該鉄筋部の径よりも大径の定着部とを備え、かつ、溝は、鉄筋部が挿入される鉄筋挿入溝部と、溝幅が鉄筋挿入溝部の溝幅よりも幅広に形成されて定着部が挿入される定着部挿入溝部を備えたので、梁に対する通し材の定着性能が向上する。
また、通し材は、溝に挿入され、かつ、柱の上端面の上方に設置されたせん断補強筋の上に位置されるように設置されたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】柱と梁との接合構造を示す平面図。
図2】柱と梁との接合構造を示す図1のA−A断面図。
図3】通し材の別例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施形態に係る柱と梁との接合方法は、木質系材料により形成された梁1を鉄筋コンクリート構造の柱2に接合する方法であって、予め梁1の端部10側の端面11と上面12となる側面とに開口する溝13を形成しておき、柱2の上端面20における互いに対向する一方の側縁21a側に一方の梁1Aの端部10側を載置するとともに、柱2の上端面20における互いに対向する他方の側縁21b側に他方の梁1Bの端部10側を載置して、各梁1,1の端面11,11同士を向かい合わせ、通し材3を各梁1,1の各溝13,13内及び柱2の上端面20の上方に設置されたせん断補強筋22の上に位置されるように設置した後に、柱2の上端面20の上方に図外のコンクリートを打設して柱2と梁1A,1Bとを接合する方法である。
即ち、実施形態1に係る柱と梁との接合方法は、梁1の端部10側の端面11と側面とに開口する溝13を形成する溝形成ステップと、柱2の上端面20における互いに対向する一方の側縁21a側に一方の梁1Aの溝13が形成された端部10側を載置するとともに、柱2の上端面20における互いに対向する他方の側縁21b側に他方の梁1Bの溝13が形成された端部10,10側を載置して、各梁1A,1Bの溝13,13が開口する端面11,11同士を向かい合わせる梁設置ステップと、通し材3を各梁1A;1Bの各溝13,13内及び柱2の上端面20の上方に設置されたせん断補強筋22の上に位置されるように設置する通し材設置ステップと、通し材3を設置した後に、柱2の上端面20の上方にコンクリートを打設するコンクリート打設ステップとを備えた方法である。
【0009】
当該接合方法により接合された柱2と梁1との接合構造、即ち、柱2と梁1とが接合された仕口構造は、柱2と、柱2の上端面20における互いに対向する一方の側縁21a側に端部10側が載置された一方の梁1Aと、柱2の上端面20における互いに対向する他方の側縁21b側に端部10側が載置された他方の梁1Bと、柱2の上端面20における互いに対向する各側縁21a,21b側に載置された各梁1A,1Bの端部10,10側の端面11と上面12となる側面とに開口するように形成された各溝13,13と、両端側が各梁1A,1Bの各溝13,13に挿入され、かつ、中央部が柱2の上端面20の上方に設置されたせん断補強筋22の上に位置されるように設置された通し材3とを備え、柱2の上端面20の上方に図外のコンクリートが打設されて柱2と梁1とが接合された構造である。
【0010】
梁1は、例えば、CLT(Cross Laminated Timber(木製集成材))により形成された梁である。
柱2は、現場でのコンクリート打設により形成された鉄筋コンクリート製の柱、又は、プレキャスト鉄筋コンクリート製の柱であり、上端面20から柱主筋23が突出するように形成される。
【0011】
通し材3は、端面11,11同士が対向するように端部10,10側が柱2の上端面20の互いに対向する側縁21a,21b側に載置された各梁1A,1Bの端部10,10に跨るように設置されて、梁1A;1Bと柱2とを連結する連結部材である。
通し材3としては、例えば、両端に定着部31,31を備えた鉄筋を用いる。即ち、通し材3は、鉄筋部32と当該鉄筋部32の両端に設けられた当該鉄筋部32の径よりも大径の定着部31,31とを備えた構成の棒材を用いる。
定着部31は、鉄筋部32の端部に設けられた例えば円板体により形成される。当該円板体は、鉄筋部32の中心線を中心とする当該鉄筋部32の径よりも大径の円板体により形成される。
【0012】
溝13は、例えば、梁1の端部10側が柱2の上端面20における側縁21側に設置された場合において上面12となる側面と端面11とに開口する溝により形成され、通し材3の端部側の鉄筋部32が挿入される鉄筋挿入溝部15と、通し材3の定着部31が挿入される定着部挿入溝部16とを備える。
即ち、当該溝13は、柱2の上端面20における側縁21側に設置された梁1の端部10側の上面12となる側面から下面17となる側面側に延長するとともに、一方の端面11から他方の端面側に延長する溝により形成される。
そして、端部10側が柱2の上端面20における側縁21側に設置された当該梁1を上方から見た場合において、図1に示すように、一方の端面11より他方の端面側に延長する溝13の延長端側に定着部挿入溝部16が形成され、当該定着部挿入溝部16は、溝幅が鉄筋挿入溝部15の溝幅よりも幅広の断面矩形形状に形成される。つまり、一方の端面11から定着部挿入溝部16まで延長する鉄筋挿入溝部15の溝幅は、通し材3の鉄筋部32が挿入可能でかつ定着部31の径よりも小さい一定の溝幅に形成され、定着部挿入溝部16の溝幅は、定着部31が挿入可能な一定の溝幅に形成されている。
そして、柱2の左右に載置された梁1A,1Bの上方から、通し材3の両端の各定着部31,31が各梁1A,1Bの定着部挿入溝部16,16に挿入され、通し材3の両端側の鉄筋部32が鉄筋挿入溝部15,15に挿入されることによって、定着部31が定着部挿入溝部16に係合する。そして、定着部挿入溝部16と定着部31との間、及び、鉄筋挿入溝部15と鉄筋部32との間に、図外の充填材を充填することにより、施工現場において当該溝13,13に挿入された通し材3が梁1A,1Bに定着する。このように通し材3が定着部31;31を備えることで、梁1A,1Bに対する通し材3の定着性能が向上し、また、溝13に挿入された通し材3と溝13の周壁との間の隙間に図外の充填材が充填されることで、梁1と通し材3との一体性が向上する。
【0013】
また、通し材3の上下方向の位置決めは、当該通し材3の鉄筋部32の中央部を、柱2の上部に設置されるせん断補強筋22の上に載置することにより行う。
つまり、柱2の上端面20から突出する複数の柱主筋23,23…を囲むように設置されて当該柱主筋23,23…に連結されるせん断補強筋22を所定の間隔を隔てて上方に複数段配置していく際に、通し材3を設置する。
例えば、溝13内に上下2本の通し材3を設置する場合は、現場にて、柱2の上端面20側にせん断補強筋22を設置した後に、下側の通し材3の両端側を梁1A,1Bの溝13,13に挿入するとともに、下側の通し材3の中央側を当該せん断補強筋22の上に設置する。その後、せん断補強筋22を上方に複数段設置した後、上側の通し材3の両端側を梁1A,1Bの溝13,13に挿入するとともに、上側の通し材3の中央側を直前に設置したせん断補強筋22の上に設置する。
尚、最も下方に位置される通し材3は、図2に示すように、定着部31が定着部挿入溝部16の溝底に接触するように設置してもよい。即ち、最も下方に位置される通し材3は、溝13に挿入されていない中央部が柱2の上端面20より上方に突出する柱主筋23を取り囲むように設置されたせん断補強筋22の上に載るように設置するか、あるいは、両端の定着部31,31が定着部挿入溝部16,16の溝底に接触するように設置すればよい。
【0014】
実施形態に係る柱と梁との接合方法の手順を説明する。
例えば、図1に示すように、柱2の上端面20において互いに平行に対向する各側縁21a,21b側に各梁1A,1Bの端部10,10側を設置する。柱2の上端面20上において端面11,11が互いに向かい合うように柱2の上端面20に設置された一方の梁1Aの溝13に通し材3の一端側を挿入し、かつ、他方の梁1Bの溝13に通し材3の他端側挿入することにより、通し材3が各梁1A,1Bの端部10,10間を跨ぐように設けられる。そして、規定本数のせん断補強筋22及び通し材3を設置した後、定着部挿入溝部16と定着部31との間、及び、鉄筋部挿入溝部15と鉄筋部32との間に、例えばエポキシ系の接着剤等の充填材を充填するとともに、柱2の上端面20の上方にコンクリートを打設することにより、梁1A;1Bと柱2とが接合される。
尚、規定位置に設置されるせん断補強筋22の上に通し材3が載らない場合、通し材3を支持できる補強筋(例えば捨てせん断補強筋)を設ける。
【0015】
実施形態に係る柱と梁との接合方法及び接合構造によれば、端部10側に鉄筋等の連結材を内蔵した梁を製造しなくてもよくなるので、柱2に連結される梁1の構造を簡単にできて梁1の製造コストを抑制できる。
また、柱2の上端面20における互いに対向する各側縁21a,21b側に載置された各梁1A,1Bの端部10,10側の端面11と上面12となる側面とに開口するように形成された各溝13,13に、現場において、通し材3の両端側を挿入するだけなので、機械式継手を用いずに、簡単かつ容易に、梁1A;1Bと柱2とを接合できるようになる。
また、柱2の上端面20における互いに対向する各側縁21a,21b側に載置された各梁1A,1Bの各溝13,13の中心が多少ずれていたとしても、通し材3を各溝13;13内でずらして通し材3の両端側を各溝13;13に挿入させたり、あるいは、通し材3を多少撓ませて通し材3の両端側を各溝13;13に挿入させることが可能となる。従って、非特許文献1に開示された従来技術のように、左の梁の木口面から突出する鉄筋の位置と右の梁の木口面から突出する鉄筋の位置がずれている場合には、左右の梁の木口面から突出する鉄筋同士を機械式継手で繋ぐことができなくなるという問題を解消できるようになる。
また、鉄筋コンクリート製の柱2と木質系材料により形成された梁1A;1Bとを簡単かつ容易に接合できるようになる。
【0016】
尚、上記では、両端に円板状の定着部31,31を備えた通し材3を用いた例を示したが、両端側を曲げて定着部とした構成を通し材を用いてもよい。
また、両端に定着部31,31を備えない通し材を用いてもよい。この場合、梁の一方の端面から他方の端面側に延長する溝13の延長長さを長くして、溝13に挿入される通し材3の定着長さを長くすればよい。
尚、例えば、通し材3を上下方向に2本設置する場合、下側の通し材3として、両端を下方に曲げて定着部としたものを用い、上側の通し材として、上述したような両端に円板状の定着部31,31を備えた通し材3を用いることが好ましい。
また、上記では、鉄筋による通し材3を用いた例を示したが、板状の通し材を用いてもよい。
【0017】
また、上記では、溝13に挿入された通し材3と溝13の周壁との間の隙間に充填材を充填した例を示したが、通し材3が嵌合される寸法に溝13の寸法を設定して、通し材3を溝13内に叩き込んだり、押し込んだりして、設置するようにすることで、溝13に嵌め込まれた通し材3と溝13の周壁との間の隙間に充填材を充填しない構造としてもよい。
【0018】
また、上記では、柱2の上端面20における側縁21側に載置された梁1の端部10側の端面11と上面12となる側面とに開口するように形成された溝13を備えた構成を例示したが、柱2の上端面20における側縁21側に載置された梁1の端部10側の端面11と左右のいずれかの側面とに開口する溝を形成し、梁1の横側から通し材3を当該溝に挿入して設置するようにしてもよい。
【0019】
また、上記では、断面四角形状の柱2の上端面20における互いに対向する一方の側縁21a側と他方の側縁21b側とに左右の梁1A;1Bの端部10,10側を載置して当該柱2と左右の梁1A,1Bとを連結する場合を説明したが、断面四角形状の柱2の上端面20における4つの側縁側にそれぞれ梁1の端部10側を設置してこれら柱2と4つの梁1とを接合する場合には、通し材3を、対向する梁1の各溝13,13内に交互に設置することにより、上方から見て通し材3が十字状に配置された構成とした後に、柱2の上端面20の上方側に図外のコンクリートを打設することにより、断面四角形状の柱2と、当該柱2の上端面20における4つの側縁側に載置された4つの梁1,1…とを接合することができる。
【0020】
また、断面四角形状の柱2の上端面20における互いに対向する側縁側の一方の側縁側にだけ梁1の端部10側が載置されて当該柱2と梁1とを接合させる場合には、当該梁1の端部10側に形成された溝13に通し材3の一端側を設置するとともに、当該通し材3の他端側を柱2の上端面20の上方に設置されたせん断補強筋22の上に載置した後に、柱2の上端面20の上方側に図外のコンクリートを打設することにより、当該柱2と梁1とを接合することができる。
即ち、この場合の柱と梁との接合方法は、梁1の端部10側の端面11と側面とに開口する溝13を形成する溝形成ステップと、柱2の上端面20における側縁21側に梁1の溝13が形成された端部10側を載置する梁設置ステップと、通し材3を梁1の溝13内及び柱2の上端面20の上方に設置されたせん断補強筋22の上に位置されるように設置する通し材設置ステップと、通し材3を設置した後に、柱2の上端面20の上方にコンクリートを打設するコンクリート打設ステップとを備えた方法である。
また、この場合の柱と梁との接合構造は、柱2と、柱2の上端面20における側縁21側に端部10側が載置された梁1と、柱2の上端面20における側縁21側に載置された梁1の端部10側の端面11と側面とに開口するように形成された溝13と、一端側が梁1の溝13に挿入され、かつ、他端側が柱2の上端面20の上方に設置されたせん断補強筋22の上に位置されるように設置された通し材3とを備え、柱2の上端面20の上方にコンクリートが打設されて柱2と梁1とが接合された構造である。
【0021】
尚、上記では、通し材3をせん断補強筋22の上に載置する例を示したが、通し材3をせん断補強筋22からぶら下げたり、せん断補強筋22の上側又は下側に間隔を隔てて位置させるようにしてもよい。即ち、本発明では、通し材3の中央部又は他端側が柱2の上端面20の上方に設置されて柱2の上端面20の上方にコンクリートが打設されることにより柱2と梁1とが接合されるようにすればよい。
【0022】
また、通し材3としては、例えば、図3に示すような、長方形環状に形成された通し材3Aを用いて、当該通し材3Aの互いに対向する長辺を形成する軸部3a,3bが互いに対向する短辺を形成する軸部3c,3cを介して上下に位置されるように設置してもよい。
あるいは、梁1Aの端部10に上方から見て逆コ字状の溝を形成するとともに梁1Bの端部10に上方から見てコ字状の溝を形成して、これらの溝内に、上述した通し材3Aの軸部3a,3bの両端側及び軸部3c,3cを挿入するようにして当該通し材3Aを設置してもよい。
【0023】
また、上記では、木質系材料により形成された梁1を鉄筋コンクリート構造の柱2に接合する方法について説明したが、本発明は、鉄筋コンクリート構造の梁を鉄筋コンクリート構造の柱に接合する場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 梁、2 柱、3 通し材、10 梁の端部、11 梁の端面、
12 梁の上面(梁の側面)、13 溝、16 定着部挿入溝部、20 柱の上端面、
21 柱の側縁、22 柱のせん断補強筋、23 柱主筋、31 定着部。
図1
図2
図3