特許第6933910号(P6933910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6933910
(24)【登録日】2021年8月24日
(45)【発行日】2021年9月8日
(54)【発明の名称】耐久性試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/34 20060101AFI20210826BHJP
【FI】
   G01N3/34 F
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-48544(P2017-48544)
(22)【出願日】2017年3月14日
(65)【公開番号】特開2018-151293(P2018-151293A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2020年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129861
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 滝治
(72)【発明者】
【氏名】府川 徹
(72)【発明者】
【氏名】坂本 淳
【審査官】 森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−061598(JP,A)
【文献】 特開2013−036762(JP,A)
【文献】 特開2002−131205(JP,A)
【文献】 特開2006−007278(JP,A)
【文献】 米国特許第05082553(US,A)
【文献】 特開2001−235412(JP,A)
【文献】 特開平10−260114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00−3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験体の耐久性試験装置であって、
回転軸心を備えた円筒体と、
前記円筒体を収容し、該円筒体の外周面との間に環状隙間を備えたケースと、
前記円筒体を前記回転軸心周りに回転させるアクチュエータと、
前記円筒体の内部に配設されたスライド機構と、
前記スライド機構により、前記円筒体に開設された開口から前記環状隙間へ出入りされる掬い部材と、
前記スライド機構による、前記掬い部材の前記環状隙間への張り出しと前記円筒体内への引き込みを実行制御する制御部と、を備え、
前記ケースにおける前記環状隙間に臨む内面の一部に前記被試験体の一端が取り付けられ、該被試験体が片持ち状態で該環状隙間に張り出しており、
前記制御部により、前記円筒体の回転方向において前記被試験体の下流側で前記掬い部材が前記環状隙間に張り出されて該環状隙間の下方にある被掬い材を掬い、該被掬い材を前記被試験体に自由落下させて衝突させ、前記円筒体の回転方向において前記被試験体の上流側で前記掬い部材が前記円筒体内へ引き込まれる制御が実行される耐久性試験装置。
【請求項2】
前記耐久性試験装置の所定位置にセンサが取り付けられており、
前記センサにて前記掬い部材が検出された際に検出信号が前記制御部に送信され、該検出信号を受信した該制御部より前記スライド機構に対して前記掬い部材の前記環状隙間への張り出しと前記円筒体内への引き込みを実行させる指令信号が送信される請求項1に記載の耐久性試験装置。
【請求項3】
前記被試験体は前記ケースの内面のうち前記円筒体の前記回転軸心を通る水平ラインとの交点に取り付けられている請求項1または2に記載の耐久性試験装置。
【請求項4】
前記ケースが透明もしくは半透明で内部を視認自在である請求項1〜3のいずれか一項に記載の耐久性試験装置。
【請求項5】
前記ケースは半割り構造を有し、二つの半割りケースが蝶番を介して開閉自在となっており、該半割りケースの一方を開いて前記被掬い材が前記環状隙間に収容されるようになっている請求項1〜4のいずれか一項に記載の耐久性試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性部材等の被試験体の耐久性試験をおこなう耐久性試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
RC高架橋やPC高架橋をはじめとする各種インフラ施設や超高層ビルといった大型のコンクリート構造物の施工において、コンクリートポンプ車等のコンクリート供給源から実際のコンクリート打設位置までコンクリートを移送する際に、鉛直方向に長い距離を落下させて移送する場合が往々にしてあるが、落下距離が長くなるにつれてコンクリートの落下速度が増加し、コンクリートは移送管の内壁や打設場所に高速で衝突することになる。このように高速でコンクリートが打設場所等に衝突することにより、コンクリートが粗骨材とモルタル(細骨材、セメントの混合物)に分離するといった課題に対し、特許文献1では、コンクリートの材料分離抑制効果に優れ、移送されるコンクリートによって移送管内が閉塞されることのないコンクリート移送管が開示されている。
【0003】
具体的には、中空を備えた管本体と、管本体の内壁面から中空に延びる複数の支持部材で支持され、中空の中央に位置する中央台座と、中央台座にて支持され、複数の第1の開口を備えるとともに内壁面まで延びた第1の弾性部材と、第1の弾性部材の上に載置され、内壁面まで延び、第1の開口の一部を閉塞するとともに、第1の開口の内側において第1の開口よりも平面積の小さな第2の開口を形成する第2の弾性部材と、から構成され、第1、第2の弾性部材が中央台座を支点として中空内で変形自在となっているコンクリート移送管である。このコンクリート移送管は、管本体の中央にある中央台座から相互に一部でラップした第1、第2の弾性部材がともに管本体の内壁面まで延び、第1の弾性部材の有する開口(第1の開口)の内側に、第2の弾性部材の有する相対的に小さな平面積の第2の開口が配設され、第1、第2の弾性部材がその内壁面側の先端領域で変形自在となっているものであり、この構成により、まず、落下してくるコンクリートの速度を第1、第2の弾性部材の弾性変形によって緩和することができる。また、第1の開口エッジから第2の弾性部材が第1の開口内に延び、この第1の開口内に第2の弾性部材の第2の開口が形成されることから、開口面積が絞られ、コンクリートを形成する粗骨材のみが落下するのを抑制することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−155638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1で記載されるコンクリート移送管の製作に当たり、その構成要素である弾性部材の耐久性を検証することは極めて重要であることから、従来の各種試験方法によって耐久性試験をおこなうことが考えられている。その一つの試験方法は、JIS A1121で規定する、ロサンゼルス試験機による粗骨材のすりへり試験方法である。この試験方法は既に広く適用されており、その信頼性も高いものであるが、この試験方法では、上記するように骨材を用いて被試験体の耐久性を把握することはできない。一方、他の試験方法として、JIS K6264で規定する、加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの耐摩耗性試験(アクロン摩耗試験)がある。この試験は、回転する試験片に摩耗材を押し付けて耐摩耗性を検証する試験であるが、上記するように片持ち状態の被試験体に衝撃が加わるケースを再現することはできない。
【0006】
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、たとえば片持ち状態の被試験体の耐久性を精度よく試験することのできる耐久性試験装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく、本発明による耐久性試験装置は、被試験体の耐久性試験装置であって、回転軸心を備えた円筒体と、前記円筒体を収容し、該円筒体の外周面との間に環状隙間を備えたケースと、前記円筒体を前記回転軸心周りに回転させるアクチュエータと、前記円筒体の内部に配設されたスライド機構と、前記スライド機構により、前記円筒体に開設された開口から前記環状隙間へ出入りされる掬い部材と、前記スライド機構による、前記掬い部材の前記環状隙間への張り出しと前記円筒体内への引き込みを実行制御する制御部と、を備え、前記ケースにおける前記環状隙間に臨む内面の一部に前記被試験体が取り付けられるようになっており、前記制御部により、前記円筒体の回転方向において前記被試験体の下流側で前記掬い部材が前記環状隙間に張り出されて該環状隙間の下方にある被掬い材を掬い、前記円筒体の回転方向において前記被試験体の上流側で前記掬い部材が前記円筒体内へ引き込まれる制御が実行されるものである。
【0008】
本発明の耐久性試験装置は、被試験体に被掬い材を繰り返し衝突させることによって当該被試験体の耐久性試験をおこなう装置であり、ケース内に回転自在に収容された円筒体からスライド機構によって掬い部材が円筒体とケースの間の環状隙間に出入りするように構成されている。掬い部材が円筒体から張り出して環状隙間の下方にある被掬い材を掬い、円筒体の回転によって掬われた被掬い材を環状隙間内の所定場所まで自動搬送し、当該所定場所から被掬い材を環状隙間の任意箇所に固定されている被試験体に円筒体の回転による慣性を与えながら自由落下させ、衝突させるものである。
【0009】
環状隙間の任意箇所に被試験体が固定されていることから、円筒体から掬い部材が環状隙間内に張り出したままでは円筒体の回転途中で掬い部材が被試験体に衝突してしまい、被試験体がこの衝突によって損傷する可能性があるとともに当該被試験体の耐久性を精度よく特定することができなくなる。そこで、円筒体の回転方向において被試験体の下流側で掬い部材が環状隙間に張り出されて該環状隙間の下方にある被掬い材を掬い、円筒体の回転方向において被試験体の上流側で掬い部材が円筒体内へ引き込まれる制御を制御部にて実行することにより、連続的に回転する掬い部材と被試験体の干渉を解消することができる。
【0010】
なお、上記する掬い部材の張り出し制御や引き込み制御は、たとえば円筒体を回転させるアクチュエータとしてサーボモータを用いたベルトドライブ方式を適用した際に、掬い部材の張り出しや引き込みのタイミングに応じた回転角度を設定しておき、円筒体の回転軸心の回転角度が設定された回転角度となった際に制御部を介してスライド機構に指令信号を送信する等によっておこなうことができる。
【0011】
このように、円筒体の連続回転と、各回転途中での掬い部材の環状隙間内への張り出しおよび円筒体内への引き込みが実行されることで、被試験体への被掬い材の提供(円筒体の回転による慣性が与えられた自由落下による衝突)を繰り返し実行することが可能になる。
【0012】
ここで、円筒体を収容するケースの形状は特に限定されるものでないが、環状隙間の下方にある被掬い材の掬い部材による掬い易さを勘案すると、円筒体よりも直径の大きな中空の円盤状で、かつ、試験装置の内空と形状および寸法が同一であるのが好ましい。また、被試験体としては、上記するコンクリート移送管に適用される弾性部材の他、モルタル硬化体やコンクリート硬化体など、その対象は多様である。また、被掬い材としては、砂利や砂、モルタルの破砕体、鋼球などを挙げることができ、試験対象の被試験体に応じて被掬い材の材質や大きさ等が適宜選定される。そして、被試験体が弾性部材の場合には、当該被試験体がケースにおける環状隙間に臨む内面に片持ち状態で取り付けられ、片持ち状態の被試験体に対して連続的に被掬い材が提供され、その耐久時間もしくは耐久回数等が本耐久性試験装置にて測定される。一方、被試験体がモルタル硬化体やコンクリート硬化体などの場合には、ケース外周下部面近傍に当該被試験体を固定し、掬い部材のクリアランスを調節することで、円筒体の回転による慣性が与えられた自由落下とともに、被試験体の接線方向の摩耗について、その耐久時間もしくは耐久回数等が本耐久性試験装置にて測定される。
【0013】
また、円筒体を回転軸心周りに回転させるアクチュエータとしては、サーボモータをはじめとする各種モータや、ラックピニオン型のロータリアクチュエータなどが挙げられる。さらに、スライド機構としては、エアシリンダや油圧シリンダなどが挙げられるが、構造およびメンテナンスが簡単であることと、試験対象となる被試験体の重量が大きくないケースが一般的であることからエアシリンダの適用が好ましい。
【0014】
また、本発明による耐久性試験装置の他の実施の形態は、前記耐久性試験装置の所定位置にセンサが取り付けられており、前記センサにて前記掬い部材が検出された際に検出信号が前記制御部に送信され、該検出信号を受信した該制御部より前記スライド機構に対して前記掬い部材の前記環状隙間への張り出しと前記円筒体内への引き込みを実行させる指令信号が送信されるものである。
【0015】
この実施の形態では、耐久性試験装置の所定位置に取り付けられているセンサが掬い部材を検出した際に検出信号を制御部に送信し、この検出信号に基づいて制御部からスライド機構に対して動作のための指令信号を送信することにより、掬い部材の出し入れを実行するものである。たとえば、円筒体の回転軸心に二つの片の間の角度が90度(二つの片が90度の位相を有している)のL型のセンサ遮光板を取り付けておき、このセンサ遮光板が通過する位置にセンサを設けておき、L型のセンサ遮光板の一方の片がセンサを通過して当該一方の片を当該センサが検出した際に検出信号を制御部に送信し、制御部からスライド機構に対して掬い部材の円筒体内への引き込みを実行させる指令信号が送信される。また、格納された掬い部材が被試験体を通過して90度回転した後、今度はセンサがL型のセンサ遮光板の他方の片を検出した際に検出信号を制御部に送信し、制御部からスライド機構に対して掬い部材の環状隙間への張り出しを実行させる指令信号が送信されるといった制御形態が挙げられる。また、別の形態として、掬い部材が側面視L型を呈していて、L型の掬い部材の一方の片をセンサが検知した際に掬い部材の円筒体内への引き込みが実行され、L型の掬い部材の他方の片をセンサが検知した際に掬い部材の環状隙間への張り出しが実行される制御形態なども挙げられる。
【0016】
このように、掬い部材の出し入れの位相に応じた形状(位相に応じた角度を有する二つの片を備えた形状)のセンサ遮光板や掬い部材を適用することで、一つのセンサにて精度よく、所望の位相を有した掬い部材の環状隙間と円筒体への出入り制御を実行することが可能になる。
【0017】
ここで、前記円筒体が反時計回りに回転する場合、前記被試験体は前記ケースの内面のうち前記円筒体の前記回転軸心から270度の位置に取り付けられ、前記円筒体が時計回りに回転する場合、前記被試験体は前記ケースの内面のうち前記円筒体の前記回転軸心から90度の位置に取り付けられているのが好ましい。
【0018】
これは、たとえば、ケースおよび円筒体を正面から見た場合に被試験体がケースの内面のうち円筒体の回転軸心から270度の位置に取り付けられている場合に、これをケースおよび円筒体の背面から見た場合には円筒体の回転軸心から90度の位置に取り付けられていることから、ケース等を正面および背面のどちらから見るかによって被試験体の取り付け位置が180度変化することを意味しており、実質的に被試験体の取り付け位置に違いはない。円筒体の回転軸心から270度の位置、90度の位置のいずれの場合でも、円筒体の回転軸心を通る水平ラインとケースの内面の交点に被試験体が取り付けられることを意味している。これは、上記するコンクリート移送管を構成する弾性部材のように、取り付け位置において水平方向に被試験体が取り付けられる場合を模擬した耐久性試験装置である。したがって、取り付け位置に所定の傾斜角度で被試験体が取り付けられる場合を模擬する際には、この傾斜角度に応じた角度で被試験体をケースにおける環状隙間に臨む内面に取り付けて耐久性試験装置を構成すればよい。
【0019】
また、本発明による耐久性試験装置の好ましい実施の形態は、前記ケースが透明もしくは半透明で内部を視認自在な形態である。
【0020】
ケース内が視認自在であることから、ケースの外側からケース内の様々な状態、たとえば、被試験体の状態や、掬い部材の出し入れが良好におこなわれているか、あるいは、被掬い材が環状隙間内の任意箇所で詰まって円筒体の回転を阻害していないか、などを確認することができる。そのため、試験装置の損傷の未然防止や被試験体の耐久時間(もしくは耐久回数)等の高精度な特定を図ることができる。
【0021】
また、本発明による耐久性試験装置の他の実施の形態において、前記ケースは半割り構造を有し、二つの半割りケースが蝶番を介して開閉自在となっており、該半割りケースの一方を開いて前記被掬い材が前記環状隙間に収容されるようになっているものである。
【0022】
ケースは半割り構造を有し、下方の半割りケースは試験室の床面等に固定され、この下方の半割りケースに対して蝶番を介して上方の半割りケースが大きく開くように構成されていることで、下方の半割りケースの所望位置に所望量の被掬い材を容易に収容でき、さらには、ケース内の円筒体の取り外しやメンテナンスも容易となる。
【発明の効果】
【0023】
以上の説明から理解できるように、本発明の耐久性試験装置によれば、ケース内において円筒体の連続回転と、各回転途中での掬い部材の環状隙間内への張り出しおよび円筒体内への引き込みが実行されることで、連続的に回転する掬い部材と被試験体の干渉を解消しながら被試験体への被掬い材の提供を繰り返し実行することができ、被試験体の耐久性試験を精度よく、しかも効率的におこなうことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の耐久性試験装置の一実施の形態の正面図である。
図2図1のII方向矢視図であって、シリンダ機構と掬い部材を上から見た平面図である。
図3】掬い部材と被試験体を取り出し、掬い部材の円筒体内への引き込み制御を説明した模式図である。
図4】掬い部材と被試験体を取り出し、掬い部材の環状隙間への張り出し制御を説明した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の耐久性試験装置の実施の形態を説明する。なお、図示例においては、試験対象としてコンクリート移送管に適用される弾性部材を示しているが、本発明の耐久性試験装置の試験対象はこれ以外にもモルタル硬化体やコンクリート硬化体など、多様な部材が試験対象であることは勿論のことである。また、図示例は、円筒体の回転軸心に取り付けられたL型のセンサ遮光板の各片がセンサを通過する際にセンサから検出信号が制御部へ送信される形態を示しているが、これ以外にも、側面視L型の掬い部材の各片をセンサが検知した際にセンサから検出信号が制御部へ送信される制御形態などであってもよい。さらには、円筒体を回転させるサーボモータにて回転角度を割出し、割り出された回転角度に基づいて掬い部材の位置を特定し、被試験体と干渉しないように掬い部材の環状隙間への張り出しと円筒体内への引き込みを実行させる制御形態などであってもよい。
【0026】
(耐久性試験装置の実施の形態)
図1は本発明の耐久性試験装置の一実施の形態の正面図であり、図2図1のII方向矢視図であって、シリンダ機構と掬い部材を上から見た平面図である。また、図3は掬い部材と被試験体を主として取り出し、掬い部材の円筒体内への引き込み制御を説明した模式図であり、図4は掬い部材と被試験体を主として取り出し、掬い部材の環状隙間への張り出し制御を説明した模式図である。
【0027】
図1で示すように、耐久性試験装置10は、回転軸心2aを備えた円筒体2と、円筒体2を収容するケース1と、円筒体2の内部に配設されたスライド機構3と、スライド機構3に取り付けられた掬い部材4と、制御部5と、から大略構成されている。
【0028】
円筒体2は、不図示のモータ等のアクチュエータにより、回転軸心2aを中心にケース1内を回転する(X2方向)。
【0029】
円筒体2の内面にはスライド機構3が固定されている。図2で示すように、このスライド機構3はエアシリンダユニットから構成され、シリンダ3b内で摺動するピストン3aの後端に側面視L型の治具3eが取り付けられており、治具3eに板状の掬い部材4が取り付けられている。
【0030】
円筒体2には開口2bが開設されており、エアシリンダユニット3のピストン3aのスライドに応じて開口2bを介して掬い部材4が円筒体2の外側へ張り出したり(Y1方向)、円筒体2内へ引き込まれたりする(Y2方向)。具体的には、図2で示すように、不図示のエア供給源から張り出し用エア管3cを介してエアがシリンダ3b内に提供されることでピストン3aが図中左側へ押込まれ(Y1方向)、ピストン3aの左側への移動に応じて掬い部材4も左側へスライドする(Y1方向)。
【0031】
一方、不図示のエア供給源から引き込み用エア管3dを介してエアがシリンダ3b内に提供されることでピストン3aが図中右側へ押込まれ(Y2方向)、ピストン3aの右側への移動に応じて掬い部材4も右側へスライドする(Y2方向)。
【0032】
ケース1は円筒体2よりも直径の大きな正面視円形の円盤状を呈しており、その全体が透明で内部が視認自在となっている。さらに、ケース1は半割り構造を有し、下方の半割りケース1Bは試験室の床面等に固定され、この下方の半割りケース1Bに対して蝶番1aを介して上方の半割りケース1Aが大きく開くように構成されている(X1方向)。
【0033】
ケース1と円筒体2の間には環状隙間Gが形成され、半割りケース1Aを開いて環状隙間Gの下方に砂利や砂、モルタルの破砕体等の被掬い材Sが収容される。
【0034】
被試験体Wは、円筒体2の回転軸心2aを中心に270度の位置で円筒体2の回転軸心2aを通る水平ラインLとケース1の内面の交点において、環状隙間G内に張り出すように治具Jを介してケース1に取り付けられる。
【0035】
ここで、被試験体Wは、たとえば特許文献1で記載されるコンクリート移送管に適用される弾性部材である。なお、被試験体Wがコンクリート移送管に適用される弾性部材ゆえに、これに落下衝突される被掬い材Sには砂利や砂、モルタルの破砕体等が適用されるが、被試験体Wが他の部材の場合には、その用途に相応しい素材や大きさの被掬い材Sが適用されることになる。
【0036】
図3,4で示すように、回転軸心2aには二つの片7a,7bの間の角度θ3が90度のL型のセンサ遮光板7が取り付けられており、このセンサ遮光板7が通過する位置にはセンサ6が設けられている。図3で示すように、不図示のアクチュエータによって円筒体2が回転軸心2aを中心に回転し、掬い部材4が回転方向(X2方向)において被試験体Wの上流側の所定位置に到達し、センサ遮光板7の一方の片7aがセンサ6を通過してセンサ6を遮光した際(Q1方向)にセンサ6は一方の片7aを検出する。一方の片7aを検出したセンサ6は検出信号を制御部5に送信し(Q2方向)、制御部5からスライド機構3に対して掬い部材4の円筒体2内への引き込み(Y2方向)を実行させる指令信号が送信される。より具体的には、スライド機構3に対して指令信号が送信されると、不図示のエア供給源から引き込み用エア管3dを介してエアがシリンダ3b内に提供され、ピストン3aの移動に応じて掬い部材4が円筒体2内へ引き込まれる。
【0037】
なお、この被試験体Wの上流側の所定位置は、図1における角度θ1の位置であり、この角度θ1として40度が設定できる。すなわち、掬い部材4が回転途中で環状隙間G下方にある被掬い材Sを掬い、0度の位置を過ぎた段階で被掬い材Sが円筒体2の回転による慣性を有しながら被試験体Wに自由落下され、角度θ1が40度の位置(回転軸心2aの鉛直上方から時計回りに310度の位置)において掬い部材4が円筒体2内へ引き込まれる。
【0038】
このように、掬い部材4がその回転方向において被試験体Wの上流側にて円筒体2内へ引き込まれることにより、回転する掬い部材4と被試験体Wの干渉が回避される。
【0039】
次に、図4で示すように、円筒体2内に格納された掬い部材4が被試験体Wを通過し、掬い部材4が回転方向(X2方向)において被試験体Wの下流側の所定位置に到達し、今度はセンサ遮光板7の他方の片7bがセンサ6を通過してセンサ6を遮光すると(Q3方向)センサ6は他方の片7bを検出する。他方の片7bを検出したセンサ6は検出信号を制御部5に送信し(Q4方向)、制御部5からスライド機構3に対して掬い部材4の環状隙間Gへの張り出し(Y1方向)を実行させる指令信号が送信される。より具体的には、スライド機構3に対して指令信号が送信されると、不図示のエア供給源から張り出し用エア管3cを介してエアがシリンダ3b内に提供され、ピストン3aの移動に応じて掬い部材4が環状隙間Gへ張り出される。なお、この被試験体Wの下流側の所定位置は、図1における角度θ2の位置であり、この角度θ2として50度が設定でき(回転軸心2aの鉛直上方から時計回りに220度の位置)、掬い部材4が引き込まれる位置からの位相90度に対応している。
【0040】
以上の動作を所定の回転数もしくは所定時間実行し、被試験体Wの耐久回数もしくは耐久時間を測定することで被試験体Wの耐久性が特定される。
【0041】
図示する耐久性試験装置10によれば、ケース1内において円筒体2の連続回転と、各回転途中での掬い部材4の環状隙間G内への張り出しおよび円筒体2内への引き込みが実行されることで、連続的に回転する掬い部材4と被試験体Wの干渉を解消しながら、被試験体Wへの被掬い材Sの提供を繰り返し実行することができ、被試験体Wの耐久性試験を精度よく、しかも効率的におこなうことができる。
【0042】
また、ケース1内が視認自在であることから、ケース1の外側からケース1内の様々な状態、たとえば、被試験体Wの状態(被試験体Wが過度に撓んでいないか、被試験体Wが耐久限界に近い状態か、など)や、掬い部材4の出し入れが良好におこなわれているか、あるいは、被掬い材4が環状隙間G内の任意箇所で詰まって円筒体2の回転を阻害していないか、などを確認することができる。そのため、耐久性試験装置10の損傷の未然防止や被試験体Wの耐久時間や耐久回数等の高精度な特定を図ることができる。
【0043】
以上、本発明の実施の形態について図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0044】
1…ケース、1A、1B…半割りケース、1a…蝶番、2…円筒体、2a…回転軸心、2b…開口、3…スライド機構(エアシリンダユニット)、3a…ピストン、3b…シリンダ、3c…張り出し用エア管、3d…引き込み用エア管、3e…治具、4…掬い部材、5…制御部、6…センサ、7…センサ遮光板、7a、7b…片、10…耐久性試験装置、G…環状隙間、W…被試験体(弾性部材)、S…被掬い材
図1
図2
図3
図4