【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく、本発明による耐久性試験装置は、被試験体の耐久性試験装置であって、回転軸心を備えた円筒体と、前記円筒体を収容し、該円筒体の外周面との間に環状隙間を備えたケースと、前記円筒体を前記回転軸心周りに回転させるアクチュエータと、前記円筒体の内部に配設されたスライド機構と、前記スライド機構により、前記円筒体に開設された開口から前記環状隙間へ出入りされる掬い部材と、前記スライド機構による、前記掬い部材の前記環状隙間への張り出しと前記円筒体内への引き込みを実行制御する制御部と、を備え、前記ケースにおける前記環状隙間に臨む内面の一部に前記被試験体が取り付けられるようになっており、前記制御部により、前記円筒体の回転方向において前記被試験体の下流側で前記掬い部材が前記環状隙間に張り出されて該環状隙間の下方にある被掬い材を掬い、前記円筒体の回転方向において前記被試験体の上流側で前記掬い部材が前記円筒体内へ引き込まれる制御が実行されるものである。
【0008】
本発明の耐久性試験装置は、被試験体に被掬い材を繰り返し衝突させることによって当該被試験体の耐久性試験をおこなう装置であり、ケース内に回転自在に収容された円筒体からスライド機構によって掬い部材が円筒体とケースの間の環状隙間に出入りするように構成されている。掬い部材が円筒体から張り出して環状隙間の下方にある被掬い材を掬い、円筒体の回転によって掬われた被掬い材を環状隙間内の所定場所まで自動搬送し、当該所定場所から被掬い材を環状隙間の任意箇所に固定されている被試験体に円筒体の回転による慣性を与えながら自由落下させ、衝突させるものである。
【0009】
環状隙間の任意箇所に被試験体が固定されていることから、円筒体から掬い部材が環状隙間内に張り出したままでは円筒体の回転途中で掬い部材が被試験体に衝突してしまい、被試験体がこの衝突によって損傷する可能性があるとともに当該被試験体の耐久性を精度よく特定することができなくなる。そこで、円筒体の回転方向において被試験体の下流側で掬い部材が環状隙間に張り出されて該環状隙間の下方にある被掬い材を掬い、円筒体の回転方向において被試験体の上流側で掬い部材が円筒体内へ引き込まれる制御を制御部にて実行することにより、連続的に回転する掬い部材と被試験体の干渉を解消することができる。
【0010】
なお、上記する掬い部材の張り出し制御や引き込み制御は、たとえば円筒体を回転させるアクチュエータとしてサーボモータを用いたベルトドライブ方式を適用した際に、掬い部材の張り出しや引き込みのタイミングに応じた回転角度を設定しておき、円筒体の回転軸心の回転角度が設定された回転角度となった際に制御部を介してスライド機構に指令信号を送信する等によっておこなうことができる。
【0011】
このように、円筒体の連続回転と、各回転途中での掬い部材の環状隙間内への張り出しおよび円筒体内への引き込みが実行されることで、被試験体への被掬い材の提供(円筒体の回転による慣性が与えられた自由落下による衝突)を繰り返し実行することが可能になる。
【0012】
ここで、円筒体を収容するケースの形状は特に限定されるものでないが、環状隙間の下方にある被掬い材の掬い部材による掬い易さを勘案すると、円筒体よりも直径の大きな中空の円盤状で、かつ、試験装置の内空と形状および寸法が同一であるのが好ましい。また、被試験体としては、上記するコンクリート移送管に適用される弾性部材の他、モルタル硬化体やコンクリート硬化体など、その対象は多様である。また、被掬い材としては、砂利や砂、モルタルの破砕体、鋼球などを挙げることができ、試験対象の被試験体に応じて被掬い材の材質や大きさ等が適宜選定される。そして、被試験体が弾性部材の場合には、当該被試験体がケースにおける環状隙間に臨む内面に片持ち状態で取り付けられ、片持ち状態の被試験体に対して連続的に被掬い材が提供され、その耐久時間もしくは耐久回数等が本耐久性試験装置にて測定される。一方、被試験体がモルタル硬化体やコンクリート硬化体などの場合には、ケース外周下部面近傍に当該被試験体を固定し、掬い部材のクリアランスを調節することで、円筒体の回転による慣性が与えられた自由落下とともに、被試験体の接線方向の摩耗について、その耐久時間もしくは耐久回数等が本耐久性試験装置にて測定される。
【0013】
また、円筒体を回転軸心周りに回転させるアクチュエータとしては、サーボモータをはじめとする各種モータや、ラックピニオン型のロータリアクチュエータなどが挙げられる。さらに、スライド機構としては、エアシリンダや油圧シリンダなどが挙げられるが、構造およびメンテナンスが簡単であることと、試験対象となる被試験体の重量が大きくないケースが一般的であることからエアシリンダの適用が好ましい。
【0014】
また、本発明による耐久性試験装置の他の実施の形態は、前記耐久性試験装置の所定位置にセンサが取り付けられており、前記センサにて前記掬い部材が検出された際に検出信号が前記制御部に送信され、該検出信号を受信した該制御部より前記スライド機構に対して前記掬い部材の前記環状隙間への張り出しと前記円筒体内への引き込みを実行させる指令信号が送信されるものである。
【0015】
この実施の形態では、耐久性試験装置の所定位置に取り付けられているセンサが掬い部材を検出した際に検出信号を制御部に送信し、この検出信号に基づいて制御部からスライド機構に対して動作のための指令信号を送信することにより、掬い部材の出し入れを実行するものである。たとえば、円筒体の回転軸心に二つの片の間の角度が90度(二つの片が90度の位相を有している)のL型のセンサ遮光板を取り付けておき、このセンサ遮光板が通過する位置にセンサを設けておき、L型のセンサ遮光板の一方の片がセンサを通過して当該一方の片を当該センサが検出した際に検出信号を制御部に送信し、制御部からスライド機構に対して掬い部材の円筒体内への引き込みを実行させる指令信号が送信される。また、格納された掬い部材が被試験体を通過して90度回転した後、今度はセンサがL型のセンサ遮光板の他方の片を検出した際に検出信号を制御部に送信し、制御部からスライド機構に対して掬い部材の環状隙間への張り出しを実行させる指令信号が送信されるといった制御形態が挙げられる。また、別の形態として、掬い部材が側面視L型を呈していて、L型の掬い部材の一方の片をセンサが検知した際に掬い部材の円筒体内への引き込みが実行され、L型の掬い部材の他方の片をセンサが検知した際に掬い部材の環状隙間への張り出しが実行される制御形態なども挙げられる。
【0016】
このように、掬い部材の出し入れの位相に応じた形状(位相に応じた角度を有する二つの片を備えた形状)のセンサ遮光板や掬い部材を適用することで、一つのセンサにて精度よく、所望の位相を有した掬い部材の環状隙間と円筒体への出入り制御を実行することが可能になる。
【0017】
ここで、前記円筒体が反時計回りに回転する場合、前記被試験体は前記ケースの内面のうち前記円筒体の前記回転軸心から270度の位置に取り付けられ、前記円筒体が時計回りに回転する場合、前記被試験体は前記ケースの内面のうち前記円筒体の前記回転軸心から90度の位置に取り付けられているのが好ましい。
【0018】
これは、たとえば、ケースおよび円筒体を正面から見た場合に被試験体がケースの内面のうち円筒体の回転軸心から270度の位置に取り付けられている場合に、これをケースおよび円筒体の背面から見た場合には円筒体の回転軸心から90度の位置に取り付けられていることから、ケース等を正面および背面のどちらから見るかによって被試験体の取り付け位置が180度変化することを意味しており、実質的に被試験体の取り付け位置に違いはない。円筒体の回転軸心から270度の位置、90度の位置のいずれの場合でも、円筒体の回転軸心を通る水平ラインとケースの内面の交点に被試験体が取り付けられることを意味している。これは、上記するコンクリート移送管を構成する弾性部材のように、取り付け位置において水平方向に被試験体が取り付けられる場合を模擬した耐久性試験装置である。したがって、取り付け位置に所定の傾斜角度で被試験体が取り付けられる場合を模擬する際には、この傾斜角度に応じた角度で被試験体をケースにおける環状隙間に臨む内面に取り付けて耐久性試験装置を構成すればよい。
【0019】
また、本発明による耐久性試験装置の好ましい実施の形態は、前記ケースが透明もしくは半透明で内部を視認自在な形態である。
【0020】
ケース内が視認自在であることから、ケースの外側からケース内の様々な状態、たとえば、被試験体の状態や、掬い部材の出し入れが良好におこなわれているか、あるいは、被掬い材が環状隙間内の任意箇所で詰まって円筒体の回転を阻害していないか、などを確認することができる。そのため、試験装置の損傷の未然防止や被試験体の耐久時間(もしくは耐久回数)等の高精度な特定を図ることができる。
【0021】
また、本発明による耐久性試験装置の他の実施の形態において、前記ケースは半割り構造を有し、二つの半割りケースが蝶番を介して開閉自在となっており、該半割りケースの一方を開いて前記被掬い材が前記環状隙間に収容されるようになっているものである。
【0022】
ケースは半割り構造を有し、下方の半割りケースは試験室の床面等に固定され、この下方の半割りケースに対して蝶番を介して上方の半割りケースが大きく開くように構成されていることで、下方の半割りケースの所望位置に所望量の被掬い材を容易に収容でき、さらには、ケース内の円筒体の取り外しやメンテナンスも容易となる。