【実施例1】
【0017】
本発明に係る車両用シート1の外観を
図1に示す。本発明に係る車両用シート1は、搭乗者が着座するシートクッション2、シートクッション2に着座した搭乗者が背をもたれかけるシートバック3、搭乗者の頭部を支えるヘッドレスト4を備え、シートクッション2の両側のサイドにはサイドサポート5が形成されている。
【0018】
図1におけるシートバック3のA−A断面の矢視図を
図2に示す。
図2には、シートバックの断面構造のうち、本実施例に係るシートバックを構成するウレタンパッドの部分について示し、その他の構成については省略し、簡略化して示している。
【0019】
図2に示した構成において、31は搭乗者の背中が触れるシートバック3の上面側ウレタンパッド、32は下面側ウレタンパッドで、この上面側ウレタンパッド31と下面側ウレタンパッド32との間に送風用のチャンバー33が挟み込まれた構成を有している。また、下面側ウレタンパッド32には穴状の窓部321が形成されており、この窓部において送風ファン34が送風用のチャンバー33と接続されている。
【0020】
図2におけるBの丸で囲んだ部分の詳細を
図3に示す。上面側ウレタンパッド31と下面側ウレタンパッド32とで挟まれた送風用のチャンバー33は、上面側チャンバー331と下面側チャンバー332と形成され、上面側チャンバー331と下面側チャンバー332との間は、上面側チャンバー331に形成されたボス3312によって一定の間隔が保たれている。
【0021】
図4には、上面側ウレタンパッド31の斜視図を示す。上面側ウレタンパッド31には、送風ファン34から送り出された空気を、着座した搭乗者の背中の側に吹き出すための穴である貫通穴311が多数形成されている。
【0022】
図5には、上面側チャンバー331の斜視図を示す。上面側チャンバー331には、上面側ウレタンパッド31に形成された全ての貫通穴311をカバーするような形状を有しており、上面側ウレタンパッド31側の全ての貫通穴311に対応する位置に送風穴3311が形成されている。即ち、上面側チャンバー331は、特許文献1に記載されているような枝分れした複数の送風用の通路を有する形ではなく、上面側ウレタンパッド31側に形成された全ての貫通穴311が形成された領域をカバーするような、広い面の形状に形成されている。
【0023】
また、上面側チャンバー331は、着座した搭乗者がシートバック3に背中をもたれかけたときの搭乗者の背中の形状に添った形に湾曲した形状を有している。更に、
図5における上面側チャンバー331の裏面側には、
図3に示したようなボス3312が複数の箇所に形成されている。
【0024】
なお、ボス3312は、下面側チャンバー332の側に形成しても良い。更に、ボス3312を、上面側チャンバー331の側と下面側チャンバー332の側とに形成しても良い。また、ボス3312の断面形状は全て同じである必要はない。例えば、比較的大きな力が係る部分では大きな断面積を有して、比較的大きな力がかかっても上面側チャンバー331と下面側チャンバー332との間隔を維持できるようにし、比較的小さな力しかかからない部分は断面積を小さくして流通する空気に対する抵抗が小さくなるように形成しても良い。
【0025】
上面側チャンバー331の上面と接する上面側ウレタンパッド31の側の面は、上面側チャンバー331の上面とほぼ同じ曲面形状に形成されている。
【0026】
図6には、下面側チャンバー332の斜視図を示す。下面側チャンバー332は上面側チャンバー331とほぼ同じ形状を有しており、送風ファンを取り付けるための穴3321が形成されている。
【0027】
上面側チャンバー331と下面側チャンバー332とは、樹脂部品であって、モールドにより成形される。
図7に上面側チャンバー331と下面側チャンバー332と組み合わせた状態における端部付近を示す。上面側チャンバー331の端部3313が下面側チャンバー332の側に延びて、下面側チャンバー332を嵌め込むような形状になっている。下面側チャンバー332を上面側チャンバー331に嵌め込んだ状態で、上面側チャンバー331に形成された複数のボス3312が下面側チャンバー332に当たる。
【0028】
上面側チャンバー331と下面側チャンバー332との間の送風部分は、上面側ウレタンパッド31の貫通穴311が形成された複数の領域を面状に覆う上面側チャンバー331と下面側チャンバー332の幅方向全体に亘って形成され、比較的大きな断面積が確保されている。これにより、特許文献1又は2に記載されている構成と比べて、送風抵抗を比較的小さくすることができる。この上面側チャンバー331と下面側チャンバー332との間の送風部分は、上面側チャンバー331に形成された複数のボス3312で間隔が保たれるので、着座した搭乗者がシートバック3に背をもたれた状態でも、上面側チャンバー331と下面側チャンバー332との間に形成された空間(送風部分)は潰されることがない。その結果、送風抵抗を従来の断面積が比較的小さい送風用ダクトを用いた場合と比べて小さくすることができるので、送風ファン34として、従来と比べて小型のものを採用することができる。
【0029】
このように、送風ファン34として従来と比べて比較的小型のものを採用できるようにしたことにより、特許文献2に記載されているような取付け部ラケットを用いずに、送風ファン34を、下面側チャンバー332に直接、又は取付け部材を介して取り付けることができるようになる。
【0030】
図8には、下面側ウレタンパッド32の斜視図を示す。下面側ウレタンパッド32の上面は、下面側ウレタンパッド32が接する下面側チャンバー332の下面の形状と同様な形状に成形されている。また、下面側ウレタンパッド32には、下面側チャンバー332に取付けた送風ファン34と干渉しないように、窓部321が形成されている。
【0031】
このように、下面側ウレタンパッド32に形成した窓部321の内部で送風ファン34を下面側チャンバー332に直接取り付けることができるようにしたことにより、
図2の断面図に示したように、送風ファン34を下面側ウレタンパッド32に埋め込んだ形になり、少なくとも下面側ウレタンパッド32の厚み分だけシートバック3を薄型化することができる。
【0032】
ここで、
図9に示すように、上面側チャンバー331に1対の穴3314と3315とを複数個所に設け、
図10に示すように、上面側ウレタンパッド31の表面を覆う表皮部材312の縫合部分313を吊り込むための吊り込み部材314を取り付けるようにしてもよい。このような構成とすることにより、従来上面側ウレタンパッド31の中に埋め込んでいた吊り込み部材314を取り付けるためのワイヤを無くすことができる。
【0033】
本実施例によれば、シートバックを構成するウレタンパッドの内部の送風路の断面積を大きくして送風抵抗を低減したことにより、従来と比べて比較的小型の送風ファンを採用することが可能になり、シートバックの厚みを低減することができるようになった。
【実施例2】
【0034】
本発明の第2の実施例を、
図11及び
図12を用いて説明する。
本実施例においては、実施例1で説明した、樹脂材料をモールドにより成形した上面側チャンバー331と下面側チャンバー332とに代えて、
図11(a)に示すような、上面側チャンバー431と下面側チャンバー432とを用いる。
【0035】
本実施例における上面側チャンバー431は、実施例1で説明した送風穴3311が形成される領域及びボス3312が形成される領域と、それらが形成されない領域とに分ける。このうち、送風穴4313が形成される領域及びボス4314が形成される領域は、実施例1の場合と同様に樹脂をモールドして形成した樹脂部材4311を用いる。一方、送風穴3311又はボス3312が形成されない領域については、エラストマーなどの柔軟な部材4312で形成し、樹脂をモールドすることにより成形した部材と接続する。
【0036】
下面側チャンバー432は、上面側チャンバー431の樹脂部材4311に対向する領域を、樹脂をモールドして形成した樹脂部材4321で形成し、上面側チャンバー431のエラストマーなどの柔軟な部材4312で形成した領域に対抗する領域をエラストマーなどの柔軟な部材4322で形成する。
【0037】
これにより、
図11の(a)に示すような断面構造を有するチャンバー430が形成される。このチャンバー430は、実施例1で説明したチャンバー33の場合と異なり、上面側チャンバー431と下面側チャンバー432とを平坦な形状に成形する。
【0038】
図12には、
図11の(a)の状態における上面側チャンバー431の一部分の平面図を示す。上面側チャンバー431は、送風穴4313またはボス4314が形成された樹脂をモールドして形成した樹脂部材4311が、エラストマーなどの柔軟な部材4312で接続された構造を有している。
【0039】
このような構造のチャンバー430を用いたシートバック3に搭乗者が背をもたれかけた場合、チャンバー430は、
図11の(b)に示すように、柔軟な部材4312で形成された領域が変形して、搭乗者の背中に沿った形状に変形する。
【0040】
本実施例によれば、シートバック3に搭乗者が背をもたれかけても、上面側チャンバー431と下面側チャンバー432とが、ボス4314の高さ分の間隔を保った状態で搭乗者の背中に沿った形状に変形するので、搭乗者の違和感を無くすことができると共に、従来と比べて比較的小型の送風ファンを採用することが可能になり、シートバックの厚みを低減することができるようになった。
【実施例3】
【0041】
本実施例では、実施例2で説明したエラストマーなどの柔軟な部材4312に代えて、樹脂をモールドして形成した樹脂部材4321と同じ材料を用いて薄く形成し、この部分に柔軟性を持たせた場合について説明する。
【0042】
図13に、本実施例に係る上面側チャンバー531と下面側チャンバー532との断面図を、
図14に上面側チャンバー531の一部分の平面図を示す。本実施例に係る上面側チャンバー531は、樹脂をモールドして形成した樹脂部材5311で形成されており、送風穴5313またはボス5314が形成されている部分以外の部分に、薄肉化した部分5312が形成されている。下面側チャンバー532にも、樹脂をモールドして形成した樹脂部材5321のうち、上面側チャンバー531の薄肉化した部分5312に対向する位置に、薄肉化した部分5322が形成されている。
【0043】
このような構造のチャンバー530を用いたシートバック3に搭乗者が背をもたれかけた場合、チャンバー530は、薄肉化した部分5312及び5322形成された領域が変形して、搭乗者の背中に沿った形状に変形する。
【0044】
本実施例によれば、シートバック3に搭乗者が背をもたれかけても、上面側チャンバー531と下面側チャンバー532とが、ボス5314の高さ分の間隔を保った状態で搭乗者の背中に沿った形状に変形するので、搭乗者の違和感を無くすことができると共に、従来と比べて比較的小型の送風ファンを採用することが可能になり、シートバックの厚みを低減することができるようになった。
【0045】
上記した実施例1乃至3は、シートバック3に本発明を適用した場合について説明したが、シートクッション2に適用することもできる。
【0046】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。