(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記紫外線が前記プロセス領域中で合わせられるように、前記少なくとも2つの分割された二色性ミラー部材は、ミラー垂線と前記光源の前記方向との間でα1〜αNまでの各角度で傾くことを特徴とする請求項1に記載の硬化装置。
ミラー部材の前記角度α1〜αΝは互いに異なり、最も大きい角度α1は、前記反射体部材(2)に最も近いミラー部材がとり、さらなるミラー部材の角度は、α1より小さく、前記円盤状部材(9)に最も近いミラー部材の角度はαNであり、角度α1〜αΝの中で最も小さいことを特徴とする請求項2に記載の硬化装置。
前記反射体部材(18)が、照明装置の側方で、前記少なくとも2つのミラー部材の上方縁から、前記円盤状部材(9)まで全高に渡って取り付けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化装置。
直接光線も反射された光線も前記プロセス領域中に偏向されるように、前記光源と前記少なくとも2つの分割された二色性ミラー部材とが配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化装置。
【背景技術】
【0002】
ラッカー被覆は、構成部品表面の保護層として機能し、この表面に所望の特殊な外観を付与することができる。表面の保護は、例えば、表面の耐引っかき性などの機械的な性質の保護でありえるが、化学的な耐性、または光または湿度などの環境影響により引き起こされる経年劣化効果を防ぐことでもありえる。ラッカーは、構成部品の表面が太陽光や湿度などの環境条件に長期に渡って露出された際には、公知のように機械的な耐久性がなくかつ経年劣化現象に対してあまり安定していない材料からなる構成部品の場合に特に採用される。この種の材料は、非常に様々なプラスチックまたは木材などの天然材料でありえる。以下の説明では、わかりやすくするために、プラスチックに限定するが、それ以外の材料を排除するものではない。プラスチック構成部品もラッカー被覆も、限られた温度耐性のみを有し、これにより、確実に臨界変形温度を決して上回らないために、プロセス工程において、その加工における特別な注意を必要とする。
【0003】
紫外線硬化ラッカーは、多くの様々な分野で採用される。ここで、硬化とは、実質的にポリマー鎖架橋であると理解されるべきである。紫外線硬化ラッカーでは、この架橋が紫外線により誘導される。紫外線硬化ラッカー被覆の利点は、熱誘導ラッカーまたは化学的な自己硬化型ラッカーに対して、硬化反応が光子誘導を介して実質的により迅速でかつ目標を定めて行われ、熱的および化学的に誘導される反応において、ラッカー中の拡散プロセスにほぼ依存しないという点である。ラッカーの硬化は、硬化装置中で行われるが、この硬化装置は、露光装置と、様々な周辺部品とから、例えば、とりわけ冷却装置または構成部品搬送装置とからなる。
【0004】
多くのラッカーの場合、完全に硬化するためには、所定の最小ドーズ量が必要であり、これは、面積当たりの光線強度と露光時間との積(より正確には、強度の時間的による積分)により与えられる。しかし、多くの流通している紫外線ラッカーは、この面積あたりの強度に関して非線形の硬化挙動を示し、したがって、硬化度は単に露光ドーズ量に比例するのではなく、ある所定の閾値からは面積あたりの強度が小さくなるにしたがって比例することなく下降し、したがって露光時間を介して補償することができない。したがって、面積あたりの強度を可能な限り高く、すなわち面積単位あたりの強度を達成し、これにより必要な露光時間を可能な限り短くすることが望ましい。
【0005】
強度の高い紫外線光源はガス放電ランプに基づくが、これは、望んだ紫外線以外に多くの成分の可視光(VIS)と赤外線(IR)とを送り出す。可視光と赤外線とは、ラッカーの硬化時に実質的に温度の上昇を招く。しかし、この場合、この温度が、硬化過程の間にプラスチック構成部品とラッカーとのガラス転移温度を越えて上昇することは回避されねばならない。このプロセス行程において可視光および赤外線の寄与を可能な限り抑制し、しかし可能な限り紫外線を失わないようにすることが望ましい。
【0006】
この目的のために、波長選択性ミラーの使用が非常に効率的な手段として明らかであり、これにより、可視光および赤外線の波長範囲、すなわち、入熱を効率的に低減することができる。
【0007】
米国特許出願公開第4644899A1号明細書では、例えば1つまたは2つの半透過ミラーを利用しうる装置が記載されているが、これは、光線を一度または複数回偏向することにより、基板に達する光線のうちで紫外線が相対的に多くの成分となる。ここに記載された複数のミラーの配置により、硬化領域中の赤外線は確かに低減するが、しかし、まさに複数回偏向することにより、作用領域中の紫外線ドーズ量も減少する。発明者らは、さらに、全体構造の小型化を意図している場合には、伝達された赤外線により生じる露光装置中の熱により熱除去問題が生じることも認識した。この問題の解決方法として、空気または液体で冷却された冷却フィンを、紫外線源の主光線方向で半透過ミラーの後ろに配置することが述べられている。しかし、この冷却戦略は、一目でわかる顕著な欠点をはらんでいる。一方では、この場合、露光機器のみは間接的に冷却されるが、ミラーまたは光源の間接的な冷却は行われない。他方では、冷却装置は半透過ミラーの後方に取り付けられていなければならず、これにより装置サイズにも場合によっては生じうる露光装置内の保守作業にも悪影響を与えられる。
【0008】
独国特許出願公開第69707539T2号明細書中には、紫外線源の紫外線を可視光および赤外線成分から分離するためにセグメント化された紫外線偏向ミラーを用い、これにより紫外光を硬化領域中に迂回させることが提案されている。この文献中では、個々の偏向ミラーセグメントは、互いに対して距離をあけていないと想定され、紫外線源の冷却、および偏向ミラーの冷却は、冷却ガス流を用いて行われるが、この冷却ガス流は繋がっている偏向ミラーの端部(この位置は、紫外線源から最も離れた位置にある)で排出される。この場合、この実施形態の冷却光反射アセンブリは、板状の熱屈折フィルターを含み、これが、照明ユニットを空間的に硬化領域に対して遮蔽し、これにより加熱されたガスが基板の反対側から流出することが防がれる。しかし、この硬化装置は、決定的な欠点をはらむが、これは、ガス流により十分冷却するためにはある程度の装置サイズが必須であり、これが、構成部品への紫外線の光路をより長くし、これにより、面積あたりの強度の低減を招いてしまうという点である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
紫外線硬化装置の典型的な構造を
図1中に図示する。高強度で広帯域の紫外線光源は、ガス放電ランプ1とランプ反射体部材2とからなり、このランプ反射体部材は、この構成部品とは逆方向に送り出される紫外線を集光し、紫外線硬化されるラッカー11で被覆された構成部品10がある領域の方向に反射する。この領域(以下では、プロセス領域と称する)には、したがって、直接光線と反射された光線とからなる光線が当てられる。実質的に線形の光源の場合、ガス放電ランプ1は実質的に管状である。しかし、この光源は、実質的に点状のランプ1つまたは一連の個々のランプからなることも可能で、これらが一列に配置されている。
【0014】
紫外線光源としてのガス放電ランプは、高い紫外線透過性を有し、密閉して閉鎖された管1からなり、この管中には、気化可能な金属量と、充填された希ガスとが閉じ込められている。この充填された希ガスは、電気を介して誘導されるガス放電を介して励起され、これにより加熱され、伝熱により金属量の気化が引き起こされる。この結果、形成された金属蒸気も同様に電気的に励起され、この際形成された金属蒸気プラズマは、公知の励起線である光線、とりわけ紫外光を放出する。望まれる紫外光の放出に加えて、プラズマは電磁スペクトルの可視領域(VIS)および赤外領域(IR)の光線も放出する。ガス放電ランプ管は、通常紫外線を透過させる透過性石英ガラスからなるが、このガス放電ランプ管中は、金属蒸気プラズマから放出される赤外線の一部が吸収され、かつ管を加熱する。この管中の熱いガスも、熱を管壁に伝達する。石英ガラスからなる管材料には、その材料特性により、温度に関する限界が設定され、この限界を上回ると、管の強度が失われるので、この管は冷却されねばならない。技術的に重要な応用例では、この冷却は、ガス31(通常、空気)の流入により行われ、このガスが温められ、それによりエネルギーが管から排出される。この冷却ガスの供給は、通常圧力を用いて能動的に行われ、これにより、1つまたは複数の流入開口30を介して流量が増加され、したがって冷却効率が高められる。
【0015】
可能な限り多くの放出された紫外光をプロセス領域中にもたらすために、ランプ管は、一方の側でランプ反射体部材2により部分的に取り囲まれるが、この部材は、紫外線を効率的に逆側のプロセス領域中に反射する。冷却ガス31の供給は、実質的にランプ反射体側で行われねばならないが、この理由は、前面側では所望の紫外線が、妨げられることなく露光されるべき構成部品にまで広がることができるべきであるからである。具体的には、ガス流は、ランプ反射体部材2中の穴を通って供給されることができ、これによりガスは、圧力でもってランプ管1の方向に流入する。加熱されたガスは、冷却効果を確保するために、プロセス領域側で、可能な限り妨げられることなく流れ去ることができねばならない。
【0016】
ランプから放出されプロセス領域中に入る光線の望ましくない可視光および赤外線成分を弱めるために、ランプ反射体部材2には被覆が設けられうるが、この被覆は、光線の紫外線成分を良好に反射するが、可視光および赤外線成分はわずかしか反射しない。これは、二色性薄膜被覆により実施可能であり、この被覆は、一方では紫外線成分を大きく反射し、ランプ中の可視光および赤外線成分を反射体中に伝達し、この成分は、下にある反射体材料により吸収される。ランプ反射体はこの際加熱され、結果として生じる熱は、赤外線とガス流とを介して排出されねばならない。
【0017】
管状のガス放電ランプからの直接の光線、すなわち、ランプ反射体を介してプロセス領域に到達するのではない光線では、可視光および/または赤外線成分が減衰しない。さらに、ランプ反射体の被覆により伝達されず反射体中で吸収されない可視光および赤外線光線の残余成分も、プロセス領域中に到達する。可視光および赤外線光線のさらなる抑制は、光路中に追加的に位置付けられた、波長選択性を有する偏向ミラー8により達成される。この偏向ミラー8は、光源からの光線5中にある紫外線成分を可能な限り良好に反射すべきで、逆に可視光および赤外線成分7を可能な限り反射しにくいようにするべきである。この種の偏向ミラーは、最も単純な場合には、二色性薄層フィルター被覆が貼られた平面鏡として実施される。このミラーは、通常、鏡面への垂線と紫外線源の主光線との間の角度が45°になるように配置されていて、この際、紫外線硬化可能なラッカー11が当てられた構成部品10を備えたプロセス領域は、偏向ミラーにより反射された紫外線光路中の下流で、紫外線源の主光線を90°回転した位置にある。偏向ミラーは、ミラー垂線に対して、45°からはずれた角度αで配置されていることもでき、この際、プロセス領域は、紫外線源の主光線に対して相対的に角度2αだけ回転した位置にある。
【0018】
可視光および赤外線光線7は、二色性フィルター被覆を特殊に選択することにより、大部分が伝達される。この可視光および赤外線光線を偏向ミラー基板中で吸収するのに続いて、この赤外線をプロセス領域中に投光した場合には生じるであろう偏向ミラーの過度の加熱を回避するために、偏向ミラーについて適切な可視光および赤外線透過性を有するミラー基板材料を選択し、可視光および赤外線光線7がミラーを通って可能な限りさらに伝達され、したがってプロセス領域から離れ続けるようにする。ミラー基板としては、とりわけ可視光および赤外線の透明性が高いガラスが適している。このためには、ホウケイ酸ガラスまたは石英ガラスが特に適切であるが、しかし、赤外線領域での透明性は、これらのガラスについても2800nmあるいは3500nm未満の波長に限られている。伝達される可視光および赤外線光線7については、この構造の部分で何度も反射することを介して、プロセス領域中にも紫外線源自身中にも、もはや有意な量の成分が達することができないように、これらの光線は構造の残りの部分中でさらに偏向されて遠のき、かつ最後には吸収され、これにより双方の場合で起きうる望ましくない加熱を回避することができる。
【0019】
偏向ミラー8のサイズの選択は、光源から放射される光のうちの可能な限り多量の成分がミラーに当たりプロセス領域中に偏向されるように行うべきである。しかし、紫外線偏向ミラーが大きくなるにつれ、紫外線源とプロセス領域との間の光路dが大きくなり、これにより、この領域中の紫外光強度が低下する。さらに紫外線源からの冷却ガス流が偏向ミラーを迂回して排出されねばならない。この冷却ガス流は、可能な限り層流であるべきで、これにより、排出が効率的であまり妨げられないように確保される。
【0020】
冷却ガス流は、通常、従来技術から読み取れるようにかつ
図1で図示されているように、閉じられた線に沿って進み、紫外線源から最も離れている紫外線偏向ミラーの端部にある幅aの開口を通って流れ出る。
【0021】
しかし、予想に反して冷却ガス流は、
図4中、架空の線に沿って、ランプ反射体2の端部から、分割された紫外線偏向ミラー81〜83の端部まで複数の開口を介しても行われうる。
図4中からわかるように、断面幅b1〜b4を有する最小の開口が分割された紫外線偏向ミラー間、および偏向ミラーと反射体部材2ないし円盤状部材9との間で存在し、これで、冷却ガス流が領域41〜44中に十分分割されることができる。したがって、円盤状部材9が分割されたミラー部材のより近くに近づくことが可能になり、これが、紫外線源から被覆された基板の表面までの全光路の短縮を引き起こす。ランプ管とランプ反射体との加熱された冷却ガス流が、直接プロセス領域中に流れ込んで露光されるべき構成部品の望ましくない加熱が生じないように、ガス流は円盤状の光学部材9を用いてプロセス領域から分断されるが、この円盤状の光学部材は、所望の紫外線を可能な限り良好に伝達する。最も単純な実施形態では、このために石英ガラスからなる円盤状部材が用いられる。
【0022】
さらに、円盤状の光学部材9によってプロセス領域を露光装置から上述のように空間的に分離することにより、冷却ガスを用いて別途基板冷却を実施することが可能であるが、これにより、許容される露光ドーズ量を高めることが可能になる。
【0023】
確かに偏向ミラーの逆側の領域中にある能動的な吸い取り装置を用いて、断面幅aを小さくし必須の冷却ガス流を達成することができるが、しかし、この場合にミラーの長さLに渡って一様な吸い取り流を確保するために、追加のポンプおよび流体技術的に有利であるミラーとその保持部との配置が必要となる。
図1の平面に垂直の方向でのサイズはミラーの長さLで記されているが、
図2ではこの配置を平面図で示している。しかし、この種の流体技術的に最適化された配置は、プロセス領域中に紫外光を最も効率的に導くにあたっては望ましくない制限となる。
【0024】
少なくとも紫外線源と偏向ミラーとの長さが限られている場合には、冷却ガス流の方向を反らすのは、側方で、すなわち
図1の平面に垂直の方向で行われうる。光源の長さLが大きくなると、これらの両方の側方の開口を介してますます多くの冷却ガス流の排出がされねばならず、これは長さLが長くなることにより、とりわけ紫外線源の中央の領域中で、冷却効率を制限する。
【0025】
照明を紫外線源の長さLに渡って同一性を高くして得るために、好ましくは平坦な反射体部材18が偏向ミラーに隣接して側方で取り付けられる。この側方の反射体部材は、紫外線源の光線(その実質的な成分を紫外線源の長さLに沿って側方で有し、ほとんどこの方向に広がる)を、実質的に紫外線源の長さLに渡って伸張するプロセス領域中に向ける。これらの側方反射体18を用いることにより、プロセス領域における紫外光を用いた照明の同一性がより良好に達成される。
【0026】
図3中では、紫外線光源の長さLに渡っての強度分布曲線を概略的に示す。曲線181は、側方の反射体部材18がない場合、曲線182は側方の反射体部材18がある場合を示し、この場合、曲線181に比して照明が改良されている。
【0027】
長さLに渡って可能な限り均一な照明を得るために、これらの側方の反射体部材18は、
図1および
図4〜7中、偏向ミラー8の上方縁から円盤状部材9までの実質的に全高に渡って伸張している。しかし、好適であるこの側方の反射体部材18を採用するにより、冷却ガスが、側方で排出されなくなる。したがって、プロセス領域の照明にとって有利であるこの構成では、冷却ガス流が断面開口幅aを介してのみ確実に領域4中に流出可能でなければならない。
【0028】
本発明の好適な実施形態は、紫外光をプロセス領域中に可能な限り効率的に導くための解決方法とともに、同時に冷却ガス流を紫外線源から効率的に排出するが、これは
図4中で概略的に図示されている。偏向ミラーを個々の互いに分かれた、主光線の方向で互いにずれたセグメントに区分することにより、冷却ガスを、ミラーセグメント間で、個々の冷却ガス流セグメント41、42、43、44に分けることができる。
図4中に図示した3つのミラーセグメントへの区分は、例示的なものとして理解されるべきである、2つを上回る数の、つまりN個のセグメントへの区分が可能であるが、ここで、Nは2以上の整数でありうる。少なくとも、1つまたは2つの開口のみを備えた上述の配置と同じ冷却効率を確保しうるために、
図4中、開口幅b1、b2、b3、b4の合計は
図1中の幅aと実質的に等しくなければならない。この要件により、様々な構成において冷却ガス流の流出には等しい断面面積が、したがって実質的に同じ冷却効率が生じる。特に有利であるのは、光源とプロセス領域との間の光路dを可能な限り短く構成するために、幅b1も幅b4も可能な限り小さく保つ場合であることは明らかである。必須となる冷却ガス流を得るためには、間隙幅b2および間隙幅b3は、偏向ミラーセグメントの変位としての幅であることが明らかでなる。とりわけb4を最小化することによって、円盤状の光学部材9も、これに応じてラッカー被覆される構成部品10も、実質的に偏向ミラーのより近くに近づけられうる。これにより紫外線源と構成部品との間の光路dは短縮され、これは、構成部品に当たる紫外光の強度をより高くするのに有利である。その結果、紫外線ドーズ量(=紫外線強度を露光時間でかけた値)が同じ場合に、ラッカーを硬化させるための露光時間を短縮することができ、これにより、この配置で露光プロセスにおけるより高い生産性が達成される。
【0029】
しかし、紫外線源からミラーセグメント81への距離b1の低減には、当然制限が存在する。距離がより短い場合には、ミラーセグメント81で反射される紫外光の一部が紫外線源中に戻り、望ましいように所望のプロセス領域中に到達しない。
【0030】
特に好適な実施形態を
図5に提示するが、この場合、個々の偏向ミラーセグメント81、82、83の傾斜角度α1、α2、α3が異なりうる。この実施形態によれば、これらの角度は個々に状況に合わせることができる。例えばセグメント81の傾斜角度α1を、セグメント82の角度α2(この角度は、
図1中の角度αに相当する)よりも大きい値にすることにより、セグメント81から反射された紫外光61は、より大きい効率でプロセス領域中に向けられうる。同様に、例えばセグメント83の角度α3をより小さくすることができ、これにより、反射される紫外光63は、セグメント82からの紫外光62の領域中のより近くにもたらすことができる。これらの角度α1、α2、α3を適合させることにより、紫外光を効率的に集めることができるのみならず、幾何学的な広がりが小さい領域中に紫外光をもたらすことができ、これによりこの領域中で存在する強度をさらに上昇させ、この点は、ラッカーの硬化ドーズ量の上述の強度依存性にとって有利である。このように広がりが小さい領域中に紫外光を集光することは、プロセス領域中に紫外光を合焦させることに相当する。
【0031】
図1および4〜7で示唆するように構成部品が円軌道102上を移動する場合には、利用可能なプロセス領域の幾何学的な広がりは、円移動軌道の半径で拡大縮小する。この移動軌道は、機械技術的に有利な設計では、各構成部品サイズにとって必要最小限の値より大きくするべきではない。したがって、個々の偏向ミラーセグメントの主光線に対する適切な傾斜α1〜αNを用いて、露光設備が幾何学的により小さく、したがってコスト効率がより良いように構築可能であるとの利点が得られる。
【0032】
さらに、紫外線強度が高い場合に、ラッカー被覆される構成部品の温度を、その臨界適用範囲下に保つことが可能であるが、この理由は、本発明により、構成部品10をプロセス領域の非常に近くで、硬化の期間の間に一度移動または交互の往復移動で、線形101ないし円軌道上の回転102で通過することが可能であるからである。
【0033】
上で挙げた実施形態では、偏向ミラーが3つのセグメントで実施されていると想定される。本発明によれば、この偏向ミラーの分割は少なくとも2つからN個のセグメントになるように行われるが、ここで、Nは整数を表す。
【0034】
以下に、本発明を、具体的な例に基づいて説明する。紫外線光源としては、フュージョンUV−へレウス社(FusionUVHeraeus)のLH10型光源を用いるべきであるが、これは、H13プラス水銀金属ハロゲン化物ガス放電ランプを装備している。この光源は、長さLが約25cmである。全放射力は公称6kWで、必要とされる冷却ガス流は、最低150リットル/秒の周囲の空気であり、この空気は、紫外線源におよそ2500Paの過圧をかけることで、この目的のために設けられた接続部を介して供給されねばならない。
図1中の状態によれば、この冷却ガス流は、層流で、紫外線偏向ミラーを迂回して排出される。これは、断面開口幅がa=80mmのサイズであることにより達成されるが、これより冷却ガスの流出速度は結果としておよそ7m/秒となり、これにより、断面開口の周りで実質的に層流またはわずかな乱流が得られうる。
【0035】
構成部品は、直径220mmの円軌道上のプロセス領域中に周期的に導かれ、この際、回転移動の頂点では、円盤状部材9までに20mmの距離がある。この条件下では、個々の偏向ミラーで、円軌道の頂点におけるUVA光線の強度(波長範囲320〜400nmに渡っての平均値)は、290mW/cm
2で、UVAドーズ量率は48mJ/cm
2/秒であるとの結果になり、ここで、ドーズ量率とは、平坦な構成部品の表面部材が、円軌道上で毎秒1回転の回転速度で回転する間に得るドーズ量のことを称する。同様の構成で上述の従来技術による互いに繋がっているセグメント化された偏向ミラーで、断面開口幅a=80mmを等しく保って動作させる場合には、頂点におけるUVA強度は、390mW/cm
2であり、構成部品の回転移動についてのUVAドーズ量率は、58mJ/cm
2/秒が達成可能である。偏向ミラーの全幅が175mmである場合には、ガス放電ランプから構成部品の回転移動の頂点までの主光線の光路の長さdは、双方の場合で四捨五入するとd=285mmである。
【0036】
図5の本発明による構成では、距離の大きさとして、b1=5mm、b2=30mm、b3=40mmおよびb4=5mmが選択され、その結果、合計b1+b2+b3+b4=80mmになり、これは上述の場合のa=80mmと同様である。これとともに、主光線の光路dは、285mmから250mmになり、すなわち、光路は35mm短縮される。この場合、偏向ミラーの角度は、本発明により、プロセス領域中で最大の紫外光強度が達成されるように合わせられる。この例では、α1=60°、α2=45°およびα3=25°が選択されている。この配置により、頂点において、UVA強度がおよそ510mW/cm
2で、構成部品用の周期的な回転移動についてのドーズ量率は72mJ/cm
2/秒で、したがって強度はおよそ30%向上し、ドーズ量率は、セグメント化されているが互いに繋がっている偏向ミラーの場合に比して24%向上する。この改良は、特に紫外線源の出力を等しくしたままで偏向ミラーセグメントの分離および配向によってのみ達成される。
【0037】
この構成中で光路が短縮されることでもって、いまや光線は、紫外線ランプからプロセス領域中の露光されるべき構成部品に直接光路で当たる。この光線では、可視光および赤外線光線が抑制されないので、これらの光線により、構成部品がより強く加熱される。回転周期毎に構成部品に入射される可視光および赤外線光線のドーズ量率は、図示した例では、およそ60mJ/cm
2/秒である一方で、従来技術に対応する、繋がっているセグメント化された偏向ミラーの場合では、27mJ/cm
2/秒にすぎない。可視光および赤外線光は、この構成では、より短い光路および可視光および赤外線の部分的な直接入射により2倍以上に上昇する一方で、望まれる紫外線は、ドーズ量率で24%上昇する。
【0038】
さらなる実施形態を
図6中に提示する。
図4または
図5と比較すると、構成部品移動の回転軸が、紫外線源に対して相対的にずれていて、光線がもはや紫外線ランプから構成部品に直接到達することができない。同時に紫外線偏向ミラーは、主光線に対して<45°の角度で配置されていて、これにより、この場合、およそ62mJ/cm
2/秒のUVAドーズ量率が達成されるが、可視光および赤外線ドーズ量率は31mJ/cm
2/秒で、これは、セグメント化されおよび繋がっているミラーの場合にほぼ等しい。これにより、繋がっていてセグメント化された紫外線偏向ミラーを備えた従来技術に対して、紫外線ドーズ量率は上昇するが、
図5に図示するような分かれた紫外線偏向ミラーを用いた場合のUVAドーズ量率よりは低い値である。
【0039】
これに代えて、基板の回転軸を紫外線源のより近くに位置付ける代わりに、紫外線源を傾斜させて、紫外線源が基板10から離れるようにし、したがって紫外線源の筐体が、紫外線源の基板に対する直接照射を遮蔽し、したがって、基板が反射体部材2および/または分割されたミラー部材から反射された光線からのみ露光されるようにすることも可能である。
【0040】
さらなる応用例を
図7に基づいて具体的に示す。
図5の構成に対応して、長さが25mmの光遮蔽部材21を反射体部材2の下端に導入すると、これが、紫外線ランプからプロセス領域中にある構成部品への全直接光線を遮蔽し、直接入射された可視光および赤外線光による熱負荷を消し去ることができる。この光遮蔽部材21は、反射体部材2と同様に被覆されることができ、これにより、紫外線反射を高めることができ、可視光および赤外線光線については、この光遮蔽部材は必然的に不透過性を有さなければならない。この光遮蔽部材により行われる、紫外線偏向ミラーセグメントからプロセス領域中に反射され当たるべき紫外光の不都合なブロックは、比較的少ない。UVAドーズ量率が69mJ/cm
2/秒で、これは、
図5中の配置と比較するとおよそ3%下がるのみである一方で、可視光および赤外線光線成分は32mJ/cm
2/秒で、繋がっているセグメント化された紫外線偏向ミラーを備えた従来技術で生じる値である27mJ/cm
2/秒にまでほぼ下がる。これにより、
図7で提示された構成では、この場合、UVAドーズ量率がおよそ19%上昇し、可視光および赤外線光の紫外光に対する相対的な量の成分は、繋がっているセグメント化された紫外線偏向ミラーの場合と同じであり続ける。
【0041】
表1中に、ここで提示した
図1、5、6および7の場合について、UVA強度、UVAドーズ量率、および対応する入射した可視光および赤外線光のドーズ量率について挙げたデータをまとめている。UVA強度およびUVAドーズ量率の比較のための100%基準値として、従来技術による繋がっているセグメント化された紫外線偏向ミラーの場合を想定した。
【0042】
プロセス領域を通る構成部品の線形移動は、上述の全ての実施形態で可能であり、この構成部品は、
図5、6および7の構成では、わずかに紫外線ランプの直接照射にさらされている。完全な抑制は、実際の応用ではしばしば不要で、この効果は、経済的な観点から改良した紫外線ドーズ量率、空間的な配置による追加的な基板冷却の可能性、および、したがってより短い露光周期により容易に補償されうる。
【0044】
互いに分かれて配置されたミラーセグメントを備えた本発明による硬化装置によれば、光路dの短縮、およびこれにより構成部品における面積あたりの強度が高まることに加えて、冷却ガスの最適な排出が達成される。本発明に本来備わっている露光装置の冷却の最適化が、さらに、以前には不可能であった紫外線光源の力の上昇を、ラッカー被覆された基板への悪影響のリスクを冒さずに行うことができるが、これは、硬化領域中の紫外線強度の全効率上昇に相当する。
【0045】
個々の互いに分かれたミラー部材は、側方から見ると、すなわち主光線に対して平行に見ると、ずれていて1つのミラー部材の上方縁が、隣接するミラー部材の下縁よりも突出しており、これにより、紫外線源から見ると「不透明で」、したがって連続的な鏡面として認識され、これにより紫外線の強度損失は回避される。
【0046】
硬化可能なラッカー(11)で被覆される構成部品(10)用の硬化装置であって、少なくとも1つの光源(1)と、光源を取り囲む少なくとも1つの反射体部材(2)と、光源と向かい合い分割されている少なくとも2つの二色性ミラー部材であって、光源の可視光および赤外線成分の大部分を伝達しかつこれをプロセス領域から遠ざけ続け、かつ同時に光線源の紫外線成分をプロセス領域の方向に反射させる、二色性ミラー部材と、少なくとも1つの光学的な円盤状部材(9)であって、露光装置中の冷却ガス流をプロセス領域から分離する円盤状部材を具備する硬化装置において、上述の少なくとも2つの二色性ミラー部材は、以下のように配置されていて、すなわち、互いに分かれていて、主光線の方向で互いに変位して、主光線に対して平行方向でずれていて、したがって主光線に対しては不透明で、その結果、生じた開口を通って冷却ガスは流出可能であるが、紫外線の強度損失には至らないことを特徴とする硬化装置である。
【0047】
ある好適な実施形態では、紫外線がプロセス領域中で合わせられるように、少なくとも2つの分割された二色性ミラー部材は、ミラー垂線と紫外線源の主光線方向との間でα1〜αNまでの各角度で傾く。ある好適な実施形態では、偏向ミラー部材の角度α1〜αΝは互いに異なり、最も大きい角度α1は、反射体部材(2)に最も近いミラー部材がとり、さらなるミラー部材の角度は、α1より小さく、円盤状部材(9)に最も近いミラーセグメントの角度はαNであり、角度α1〜αΝの中で最も小さい。
【0048】
ある好適な実施形態では、反射体部材(18)が、照明装置の側方で、少なくとも2つのミラー部材の上方縁から、円盤状部材(9)まで全高に渡って取り付けられている。
【0049】
ある好適な実施形態では、直接光線も反射された光線もプロセス領域中に偏向されるように、紫外線源と少なくとも2つの分割された二色性ミラー部材とが配置されるように設けられている。
【0050】
ある好適な実施形態では、反射された光線のみがプロセス領域中に偏向される。
【0051】
ある好適な実施形態では、直接光線がプロセス領域中に入らないように、紫外線源が傾斜している。
【0052】
ある好適な実施形態では、個々のミラー部材間、反射体部材の最も近くに配置されているミラー部材と、反射体部材(2)との間、および円盤状部材(9)の最も近くに配置されているミラー部材と、円盤状部材(9)との間にある断面幅(b1)〜(bN)の全ての開口のうちで、円盤状部材(9)と上述の最も近いミラー部材との間の開口が、最も小さな断面幅bNをとる。
【0053】
さらに、ラッカー被覆された基板の硬化方法を紹介するが、この方法は、上述のようなミラー部材間の開口を介して冷却ガスが排出される硬化装置を使用し、かつプロセス領域中の紫外線強度は、光源から被覆された基板の表面までの光路dを短縮することにより高められるが、これは、ミラー部材の適切な数、ならびに距離および角度などに関する配置により行われる。ある好適な実施形態では、露光装置の冷却に加えて、ラッカーされた構成部品は冷却ガスを用いて別途冷却がされる。
【符号の説明】
【0054】
1 ガス放電ランプ
2 ランプ反射体
30 冷却ガス供給部
31 冷却ガスの流入
4、41、42、43、44 冷却ガスの流出
5、51、52、53、54 紫外線源から放出された光線
6、61、62、63 紫外線偏向ミラーにより反射された光線(主に紫外線)
7、71、72、73 紫外線偏向ミラーにより伝達された光線(主に可視光および赤外線)
8、81、82、83 偏向ミラー、偏向ミラーセグメント
9 冷却ガス流を分離するための円盤状の光学部材
10 構成部品
11 構成部品のラッカー被覆部
101 構成部品の線形移動
102 構成部品の回転移動
21 光遮蔽部
18 側方反射体部材
181 側方反射体部材がない場合の紫外線強度分布
182 側方反射体部材がある場合の紫外線強度分布
a 円盤状部材9と偏向ミラー8との間の開口断面幅
b1 反射体部材2とミラーセグメント81との間の開口断面幅
b2、b3 ミラーセグメント81−82間、および82−83間の開口断面幅
b4 円盤状部材9とミラーセグメント83との間の開口断面幅
α 紫外線源の主光線軸に対する偏向ミラー8の表面垂線の角度
α1、α2、α3 紫外線源の主光線光軸に対する偏向ミラーセグメント81、82、83の表面垂線の角度
L 露光装置の長さ
紫外線源から構成部品10の表面までの主光線の光路