特許第6934111号(P6934111)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルプス電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6934111-プッシュスイッチ 図000002
  • 特許6934111-プッシュスイッチ 図000003
  • 特許6934111-プッシュスイッチ 図000004
  • 特許6934111-プッシュスイッチ 図000005
  • 特許6934111-プッシュスイッチ 図000006
  • 特許6934111-プッシュスイッチ 図000007
  • 特許6934111-プッシュスイッチ 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6934111
(24)【登録日】2021年8月24日
(45)【発行日】2021年9月8日
(54)【発明の名称】プッシュスイッチ
(51)【国際特許分類】
   H01H 13/52 20060101AFI20210826BHJP
   H01H 13/48 20060101ALI20210826BHJP
【FI】
   H01H13/52 F
   H01H13/48
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-521713(P2020-521713)
(86)(22)【出願日】2019年3月5日
(86)【国際出願番号】JP2019008665
(87)【国際公開番号】WO2019230100
(87)【国際公開日】20191205
【審査請求日】2020年11月19日
(31)【優先権主張番号】特願2018-102641(P2018-102641)
(32)【優先日】2018年5月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】宮本 純一
(72)【発明者】
【氏名】水越 寿彰
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 礼純
【審査官】 高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−346599(JP,A)
【文献】 実開平2−106643(JP,U)
【文献】 実開昭61−123425(JP,U)
【文献】 実開平2−123029(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0032457(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/00−13/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧操作がなされる押圧部、および前記押圧部の外周から外側に広がりつつ下方に延在する弾性変形可能な周壁部を有する押圧部材と、
前記押圧部材の下方に設けられたドーム状の可動接点と、
前記押圧部材と前記可動接点との間に設けられ、前記周壁部の下端部を受け止めて、前記押圧部材から押圧されることにより、前記可動接点を押圧する介在部材と、
前記可動接点と接触して設けられた第1の固定接点と、
前記可動接点と接離可能に設けられた第2の固定接点と
を備え、
前記押圧部材は、
前記押圧操作により、前記周壁部が弾性変形しつつ、前記周壁部の下端部によって前記介在部材を押圧する
ことを特徴とするプッシュスイッチ。
【請求項2】
前記押圧部材は、
前記周壁部の弾性変形により、単位押圧量あたりの操作荷重の増加量が徐々に小さくなるように、前記操作荷重が増加する荷重特性を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のプッシュスイッチ。
【請求項3】
前記押圧部材は、
前記周壁部を上下移動可能に支持する弾性変形可能な支持部をさらに有し、
前記押圧操作がなされていないとき、前記周壁部の下端部が、前記介在部材から離間している
ことを特徴とする請求項1または2に記載のプッシュスイッチ。
【請求項4】
前記介在部材は、
前記周壁部の下端部を受け止める平板状の当接部と、
前記当接部の中央から下方に突出して設けられた第1の突出部と
を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のプッシュスイッチ。
【請求項5】
前記押圧部材は、
前記周壁部に囲まれた空間内において、前記押圧部から下方に突出して設けられた、弾性変形可能な第2の突出部をさらに有し、
前記介在部材は、
前記周壁部が反転する前に、前記周壁部の弾性変形により下方に移動した前記第2の突出部の下端部をさらに受け止める
ことを特徴とする請求項4に記載のプッシュスイッチ。
【請求項6】
前記可動接点は、
前記介在部材が前記周壁部の下端部と前記第2の突出部の下端部との双方によって押圧されているときに反転し、前記第2の固定接点と接触する
ことを特徴とする請求項5に記載のプッシュスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プッシュスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種電子機器等に用いられるプッシュスイッチにおいて、押圧部材による押圧操作がなされたときに、押圧部材を弾性変形させて、押圧操作に対して操作荷重を加えることにより、操作者に対して押圧操作感を呈示できるようにした技術が用いられている。また、このようなプッシュスイッチにおいて、押圧部材によってドーム状の可動接点を押下して、可動接点を反転させることにより、操作者に対してクリック操作感を呈示できるようにした技術が用いられている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、押圧部と、押圧部と一体に形成された脚部とを備えたラバースプリングを用い、押圧部が押圧されたときに、脚部が屈曲することにより、押圧部から下方に突出する突出部が、ドーム状の可動接点の上面を押圧して、可動接点を反転させることにより、可動接点を固定接点に接触させて、スイッチ入力を行うことができるようにした入力装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/096404号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、ラバースプリングの空間内に可動接点を収容する構成を採用している。このため、特許文献1の技術では、スイッチの小型化に伴ってラバースプリングを小型化するほど、可動接点を小型化する必要があるため、良好なクリック操作感を呈示することが困難になる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態のプッシュスイッチは、押圧操作がなされる押圧部、および前記押圧部の外周から外側に広がりつつ下方に延在する弾性変形可能な周壁部を有する押圧部材と、前記押圧部材の下方に設けられたドーム状の可動接点と、前記押圧部材と前記可動接点との間に設けられ、前記周壁部の下端部を受け止めて、前記押圧部材から押圧されることにより、前記可動接点を押圧する介在部材と、前記可動接点と接触して設けられた第1の固定接点と、前記可動接点と接離可能に設けられた第2の固定接点とを備え、前記押圧部材は、前記押圧操作により、前記周壁部が弾性変形しつつ、前記周壁部の下端部によって前記介在部材を押圧する。
【発明の効果】
【0007】
一実施形態によれば、良好な操作感を呈示することが可能な小型のプッシュスイッチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係るプッシュスイッチの外観斜視図である。
図2】一実施形態に係るプッシュスイッチの分解斜視図である。
図3】一実施形態に係るプッシュスイッチのXZ平面による断面図である。
図4】一実施形態に係るプッシュスイッチの斜視断面図である。
図5】一実施形態に係るラバーステムを底面側から示す斜視図である。
図6】一実施形態に係るプッシュスイッチの動作を説明するための図である。
図7】一実施形態に係るプッシュスイッチの荷重特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、一実施形態について説明する。なお、以降の説明では、便宜上、図中Z軸正方向を上方とし、図中Z軸負方向を下方とする。
【0010】
(プッシュスイッチ100の概要)
図1は、一実施形態に係るプッシュスイッチ100の外観斜視図である。図1に示すように、プッシュスイッチ100は、直方体形状の筐体100Aを備えている。筐体100Aは、ハウジング140と、ハウジング140の上部に取り付けられたフレーム105とを有して構成されている。筐体100Aには、ラバーステム110が、フレーム105に形成された円形の開口部105Aから、上方に突出して設けられている。プッシュスイッチ100は、ラバーステム110の下方への押圧操作により、オン状態とオフ状態との間で切り替わることができる。具体的には、プッシュスイッチ100は、ラバーステム110が押圧されていない状態において、オフ状態となり、ハウジング140に設けられた第1の固定接点142と第2の固定接点144とが非導通状態となる。一方、プッシュスイッチ100は、ラバーステム110が下方へ押圧されることにより、オン状態となり、第1の固定接点142と第2の固定接点144とが導通状態となる。なお、ラバーステム110は、押圧操作から解放されると、弾性復帰力により、自動的に元の状態に復帰する。これにより、プッシュスイッチ100は、自動的にオフ状態となる。
【0011】
(プッシュスイッチ100の構成)
図2は、一実施形態に係るプッシュスイッチ100の分解斜視図である。図3は、一実施形態に係るプッシュスイッチ100のXZ平面による断面図である。図4は、一実施形態に係るプッシュスイッチ100の斜視断面図である。
【0012】
図2に示すように、プッシュスイッチ100は、上方から順に、フレーム105、ラバーステム110、インナーステム120、メタルコンタクト130、およびハウジング140を備えて構成されている。
【0013】
フレーム105は、ハウジング140の上部に取り付けられることにより、ハウジング140とともに筐体100Aを構成する平板状の部材である。フレーム105は、ハウジング140の上部に固定的に取り付けられることにより、ハウジング140の収容空間140A内に各構成部品(インナーステム120およびメタルコンタクト130)が収容された状態で、収容空間140Aの上部開口を閉塞するように設けられたラバーステム110を、ハウジング140との間で挟持する。例えば、フレーム105は、金属板が加工されることにより形成される。フレーム105には、ラバーステム110を上方に突出させるための、円形の開口部105Aが形成されている。また、フレーム105の外周縁部におけるY軸と平行な部分には、下方に垂下したフック105Bが設けられている。フック105Bは、開口部を有しており、当該開口部内にハウジング140の側面に設けられた爪部146が嵌め込まれる。これにより、フック105Bは、ハウジング140に対してフレーム105を固定する。
【0014】
ラバーステム110は、「押圧部材」の一例であり、操作者によって下方への押圧操作がなされる部材である。ラバーステム110は、フレーム105の下側に設けられる。図3に示すように、ラバーステム110は、押圧部112および周壁部114を有する。押圧部112は、上方視において円形状を有し、操作者による押圧操作がなされる部分である。周壁部114は、押圧部112の外周から外側に広がりつつ下方へ延在するスカート形状を有する部分である。押圧部112および周壁部114は、フレーム105の開口部105Aを貫通して、フレーム105の上方に突出する。これにより、ラバーステム110は、フレーム105の上方から、操作者による下方への押圧操作が可能となる。例えば、ラバーステム110は、弾性素材(例えば、シリコン、ゴム等)が用いられて形成される。
【0015】
周壁部114は、押圧部112の押圧操作にともなって、底面がインナーステム120に当接し、さらに弾性変形することにより、押圧部112を下方へ沈み込ませつつ、押圧操作に対して操作荷重を付与することができる。なお、周壁部114は、所定量の操作荷重を超えると急激にスカート形状を崩すような変形、いわゆる反転動作を行うことが可能である。押圧部112の下面における中央部には、下方(すなわち、周壁部114に囲まれた空間内)へ突出した突出部113が設けられている。突出部113は、押圧部112の沈み込みに伴って、インナーステム120の中央部において上方に突出した上側突出部126の上面に当接することにより、インナーステム120を下方へ押圧する部分である。
【0016】
ラバーステム110は、周壁部114の外周の外側に、固定枠部116および支持部118を備える。固定枠部116は、周壁部114の外周から離間して、周壁部114の外周を取り囲むように設けられた枠状の部分である。固定枠部116は、フレーム105とハウジング140との間で挟持される。支持部118は、周壁部114の外周と固定枠部116とを連結するフランジ状の部分である。支持部118は、押圧部112の押圧操作にともなって、弾性変形することにより、周壁部114を下方へ移動させることができる。図3に示すように、周壁部114の底面は、押圧部112の押圧操作がなされていないとき、インナーステム120(フランジ部124)の上面から離間している。そして、押圧部112の押圧操作がなされたとき、支持部118が弾性変形することにより、「プリストローク」として、周壁部114の底面がインナーステム120の上面に当接するまで、周壁部114が下方へ移動する。この際、支持部118の弾性変形により、押圧操作に対して、緩やかに上昇する操作荷重を加えることができる。
【0017】
インナーステム120は、「介在部材」の一例である。インナーステム120は、ラバーステム110とメタルコンタクト130との間に介在して設けられる。インナーステム120は、ラバーステム110の周壁部114の底面およびラバーステム110の押圧部112(突出部113)の底面を受け止める。そして、インナーステム120は、ラバーステム110によって上方から押圧されることにより、メタルコンタクト130の頂部を押圧して、メタルコンタクト130を変形させる。インナーステム120は、下側突出部122、フランジ部124、および上側突出部126を有する。フランジ部124は、水平な円盤状の部分である。下側突出部122は、フランジ部124の中央から下方に突出して設けられた概ね円柱状の部分である。上側突出部126は、フランジ部124の中央から上方に突出して設けられた概ね円柱状の部分である。インナーステム120は、ラバーステム110の押圧操作がなされていない状態において、下側突出部122の底面が、メタルコンタクト130の頂部と当接し、フランジ部124の上面が、ラバーステム110の固定枠部116から突出した突起部116Aと当接する。また、インナーステム120は、ラバーステム110の押圧操作がなされると、初めに、フランジ部124の上面に、ラバーステム110の周壁部114の底面が当接し、周壁部114の底面からの押圧力により、メタルコンタクト130の頂部を押圧する。さらに、ラバーステム110の押圧操作がなされると、インナーステム120は、上側突出部126の上面に、ラバーステム110の突出部113の底面がさらに当接する。これにより、インナーステム120は、周壁部114の底面からの押圧力と、突出部113の底面からの押圧力とにより、メタルコンタクト130の頂部を押圧する。
【0018】
メタルコンタクト130は、「可動接点」の一例であり、インナーステム120の下側に設けられる。メタルコンタクト130は、金属板から形成されるドーム状の部材である。メタルコンタクト130の4隅には、外側に突出し、且つ、下方に湾曲した、舌片部130Aが形成されている。図4に示すように、メタルコンタクト130は、舌片部130Aがハウジング140に設けられた第1の固定接点142と接触することにより、第1の固定接点142と電気的に接続される。メタルコンタクト130は、ラバーステム110の押圧操作がなされたとき、頂部(中央部)がインナーステム120によって下方へ押圧されることにより、所定の操作荷重を超えると急激に頂部が凹状に変形(反転動作)する。これにより、メタルコンタクト130は、その頂部の裏側の部分で、ハウジング140に設けられた第2の固定接点144と接触し、第2の固定接点144と電気的に接続される。メタルコンタクト130は、バネ性を有しているため、インナーステム120からの押圧力から解放されたときに、反発力によって元の凸状に復帰する。なお、本実施形態では、メタルコンタクト130が、同形状の2枚の金属板132,134が重ね合わされた積層構造を有している。これにより、メタルコンタクト130は、好適なクリック操作感が得られるように、操作荷重が調整されている。
【0019】
なお、ここでラバーステム110の荷重特性(操作ストロークと荷重の関係)とメタルコンタクト130の荷重特性とについて比較しておく。まず、メタルコンタクト130の荷重特性はラバーステム110よりも重荷重であり、変形しにくい。すなわち、ラバーステム110とメタルコンタクト130とに同じ押圧力が加わった時には、ラバーステム110の方が先に変形を開始しやすい。また、ラバーステム110の反転動作とメタルコンタクト130の反転動作とを比較すると、メタルコンタクト130の反転動作の方がより急激に行われるため、メタルコンタクト130の方がよりシャープな(切れのよい)クリック操作感が得られる。ラバーステム110の方は周壁部114が膨らみ変形してから反転動作が行われるので、メタルコンタクト130に比べてソフトなクリック操作感である。
【0020】
ハウジング140は、直方体形状を有する容器状の部材である。ハウジング140は、上部が開口した収容空間140Aが形成されている。収容空間140A内には、インナーステム120およびメタルコンタクト130が収容される。例えば、ハウジング140は、比較的硬質な絶縁性素材(例えば、硬質樹脂等)が用いられて形成される。ハウジング140におけるY軸と平行な側面には、外側に突出した爪部146が形成されている。爪部146は、ハウジング140の上部にフレーム105が取り付けられたとき、フレーム105のフック105Bと係合することにより、ハウジング140に対してフレーム105を固定する。
【0021】
収容空間140Aの底部には、第1の固定接点142および第2の固定接点144が設けられている。第1の固定接点142は、収容空間140Aの底部の周縁部に沿って配置されている。第1の固定接点142は、メタルコンタクト130の舌片部130Aと接触することにより、メタルコンタクト130と電気的に接続される。第2の固定接点144は、収容空間140Aの底部の中央に配置されている。第2の固定接点144は、メタルコンタクト130の頂部が凹状に変形した際に、メタルコンタクト130の中央部(すなわち、頂部の裏側の部分)と接触することにより、メタルコンタクト130と電気的に接続され、メタルコンタクト130を介して、第1の固定接点142と導通する。例えば、第1の固定接点142および第2の固定接点144は、金属板が加工されることにより形成される。なお、図1および図2に示すように、ハウジング140におけるX軸と平行な一方の側面(Y軸負側の側面)には、第2の固定接点144が一体的に形成された金属板の一部(当該一方の側面から外側に突出した部分)を上方に折り曲げることにより形成される、露出部144Aが設けられている。また、図示していないが、ハウジング140におけるX軸と平行な他方の側面(Y軸正側の側面)には、第1の固定接点142が一体的に形成された金属板の一部(当該他方の側面から外側に突出した部分)を上方に折り曲げることにより形成される、露出部142Aが設けられている。露出部142Aおよび露出部144Aは、互いに同形状であり、外部の配線などに電気的に接続可能な外部接続端子として機能する。
【0022】
図5は、一実施形態に係るラバーステム110を底面側から示す斜視図である。図5に示すように、ラバーステム110における固定枠部116の底面の4隅には、下方に突出した突起部116Aが設けられている。突起部116Aは、インナーステム120のフランジ部124の上面に当接することにより、インナーステム120をメタルコンタクト130に押し当てて、インナーステム120を収容空間140Aの内部で固定するとともに、インナーステム120のフランジ部124とラバーステム110の周壁部114との間隔を、所定の間隔D1に保つ(図3および図4参照)。この間隔D1は、押圧操作の開始直後の周壁部114の下方への移動量を規定するものであり、すなわち、押圧操作におけるプリストローク量を規定するものである。また、この間隔D1は、ラバーステム110の突出部113とインナーステム120の上側突出部126との間の間隔D2よりも小さい。これにより、押圧操作がなされた際、突出部113が上側突出部126に当接する前に、周壁部114がフランジ部124に当接することとなる。
【0023】
(プッシュスイッチ100の動作および荷重特性)
図6は、一実施形態に係るプッシュスイッチ100の動作を説明するための図である。図7は、一実施形態に係るプッシュスイッチ100の荷重特性を示す図である。
【0024】
図6(a)は、押圧部112の押圧操作がなされていない状態を示している。この状態において、周壁部114の底面とフランジ部124の上面との間に間隔D1を有する。
【0025】
図6(b)に示すように、押圧部112の下方への押圧操作が開始されると、まず、「プリストローク」として、周壁部114の外周を支持する支持部118が弾性変形することにより、周壁部114の底面がフランジ部124の上面に当接するまで、周壁部114が下方へ移動する。この間、図7の区間S1に示すように、押圧操作の操作荷重は、支持部118の弾性変形により、一定の上昇率で緩やかに上昇する。
【0026】
次に、図6(c)に示すように、周壁部114の底面がフランジ部124の上面に当接した状態で、押圧部112がさらに下方へ押圧されると、周壁部114がインナーステム120を下方に押圧しつつ、周壁部114が外側に膨らむように弾性変形することにより、押圧部112が下方へ沈み込む。そして、周壁部114が反転動作する前に突出部113の底面が上側突出部126の上面に当接すると、周壁部114に対する押圧部112の沈み込みが規制され、これにより、周壁部114の反転が防止される。この間、図7の区間S2に示すように、押圧操作の操作荷重は、周壁部114の弾性変形により、単位押圧量あたりの操作荷重の増加量が徐々に小さくなるように増加する。区間S2においては、周壁部114がインナーステム120を下方に押圧するが、メタルコンタクト130よりもラバーステム110の方が変形しやすいため、区間S2の荷重特性はラバーステム110(特に周壁部114)の荷重特性が支配的である。すなわち、操作ストロークが比較的小さいときには、周壁部114が押圧に反発することで操作荷重が急上昇し、且つ、操作ストロークが比較的大きいときには、周壁部114が押圧に対抗しきれず膨らむように変形するので操作荷重が緩やかに上昇する。これにより、操作者に対してより柔らかな押圧操作感が呈示される。
【0027】
図7に示すように、プッシュスイッチ100の荷重特性は、周壁部114が下方へ移動しているときの区間S1と、周壁部114が弾性変形しているときの区間S2とで、異なるものとなっている。これにより、操作者に対して、段階的な押圧操作感が呈示される。
【0028】
そして、図6(d)に示すように、突出部113の底面がフランジ部124の上面に当接した状態で、押圧部112がさらに下方へ押圧されると、周壁部114および突出部113の各々が弾性変形しつつ、突出部113がインナーステム120を下方に押圧する。この際、ラバーステム110(押圧部112や周壁部114など)の弾性変形可能な量が徐々に少なくなり、その分、インナーステム120が徐々に強く押圧される。そして、メタルコンタクト130が、インナーステム120から受けた押圧力により、頂部が凹状に変形するように急激に反転する。これにより、メタルコンタクト130の中央部が第2の固定接点144と接触し、第1の固定接点142および第2の固定接点144が、メタルコンタクト130を介して互いに導通することとなる。このとき、図7の区間S3に示すように、押圧操作の操作荷重は、ラバーステム110の変形量が少なく、メタルコンタクト130の反転により、急激に低下する。すなわち、メタルコンタクト130の荷重特性が支配的である。これにより、操作者に対して切れのよいクリック操作感が呈示される。
【0029】
以上説明したように、一実施形態に係るプッシュスイッチ100は、ラバーステム110とメタルコンタクト130との間に設けられたインナーステム120により、ラバーステム110の周壁部114の底面を受け止めて、メタルコンタクト130の頂部を押圧する。これにより、一実施形態に係るプッシュスイッチ100は、ラバーステム110の空間内に、メタルコンタクト130を収める必要がないため、ラバーステム110の空間よりも大型のメタルコンタクト130を用いることができ、良好なクリック操作感を呈示することができる。
【0030】
特に、一実施形態に係るプッシュスイッチ100は、周壁部114が弾性変形しつつ、周壁部114の底面によってインナーステム120を押圧する。これにより、一実施形態に係るプッシュスイッチ100は、押圧操作の操作荷重を徐々に増加させることができ、よって、良好な押圧操作感を呈示することができる。
【0031】
したがって、一実施形態に係るプッシュスイッチ100によれば、良好な操作感を呈示することが可能な小型のプッシュスイッチを提供することができる。
【0032】
また、一実施形態に係るプッシュスイッチ100は、ラバーステム110が、周壁部114の弾性変形により、単位押圧量あたりの操作荷重の増加量が徐々に小さくなるように、操作荷重が増加する荷重特性を有する。これにより、一実施形態に係るプッシュスイッチ100は、操作ストロークが比較的小さいときには急上昇し、且つ、操作ストロークが比較的大きいときには緩やかに上昇する操作荷重を、押圧操作に加えることができ、その結果、操作者に対してより柔らかな押圧操作感を呈示することができる。
【0033】
また、一実施形態に係るプッシュスイッチ100は、ラバーステム110に設けられた支持部118により、周壁部114が上下移動可能であり、且つ、押圧操作がなされていないとき、周壁部114の底面が、インナーステム120(フランジ部124)の上面から離間する。これにより、一実施形態に係るプッシュスイッチ100は、押圧操作の開始から、周壁部114の底面がインナーステム120に当接するまでの間、「プリストローク」として、周壁部114が下方へ移動し、この際、支持部118の弾性変形により、比較的小さな操作荷重を押圧操作に加えることができる。すなわち、一実施形態に係るプッシュスイッチ100は、周壁部114の底面がインナーステム120に当接した時点で、操作荷重の特性を切り替えることができ、その結果、操作者に対して、段階的な押圧操作感を呈示することができる。
【0034】
また、一実施形態に係るプッシュスイッチ100は、インナーステム120が、周壁部114の底面を受け止めるフランジ部124と、フランジ部124の中央から下方に突出して設けられた下側突出部122とを有する。これにより、一実施形態に係るプッシュスイッチ100は、周壁部114の底面から受けた押圧力を、下側突出部122に集中させることができ、したがって、効率的且つ確実に、メタルコンタクト130の頂部を押圧することができる。
【0035】
また、一実施形態に係るプッシュスイッチ100は、ラバーステム110の周壁部114に囲まれた空間内に、押圧部112から下方に突出する弾性変形可能な突出部113を有し、インナーステム120(上側突出部126)が、周壁部114が反転する前に、周壁部114の弾性変形により下方に移動した突出部113の下端部を受け止める構成を採用している。これにより、一実施形態に係るプッシュスイッチ100は、押圧操作の途中(すなわち、周壁部114の弾性変形によって操作荷重が増加している途中)で、周壁部114の反転によって操作荷重が急激に低下することを防止することができ、その結果、操作者に対してより柔らかな押圧操作感を呈示することができる。
【0036】
また、一実施形態に係るプッシュスイッチ100は、メタルコンタクト130が、インナーステム120が周壁部114の底面と突出部113の底面との双方によって押圧されているときに反転し、第2の固定接点144と接触する。これにより、一実施形態に係るプッシュスイッチ100は、操作荷重が徐々に増加する途中で、急激に操作荷重を低下させることができ、その結果、柔らかな押圧操作感を呈示しつつ、切れのよいクリック操作感を呈示することができる。
【0037】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
【0038】
例えば、上記実施形態では、押圧操作がなされていない状態において、周壁部114の底面と、フランジ部124の上面との間に間隔D1を設けることにより、プリストロークを有する構成としたが、これに限らず、間隔D1を設けないことにより、プリストロークを有しない構成としてもよい。この場合、押圧操作の開始直後に、当該押圧操作の操作荷重を、図7の区間S2に示すように、周壁部114の弾性変形により、単位押圧量あたりの操作荷重の増加量が徐々に小さくなるように増加させることができる。
【0039】
本国際出願は、2018年5月29日に出願した日本国特許出願第2018−102641号に基づく優先権を主張するものであり、当該出願の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0040】
100 プッシュスイッチ
105 フレーム
110 ラバーステム(押圧部材)
112 押圧部
113 突出部(第の突出部)
114 周壁部
116 固定枠部
118 支持部
120 インナーステム(介在部材)
122 下側突出部(第の突出部)
124 フランジ部(当接部)
126 上側突出部
130 メタルコンタクト(可動接点)
140 ハウジング
142 第1の固定接点
144 第2の固定接点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7