(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本開示を説明するが、本開示は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本開示の第1の態様〜第2の態様に係る半導体発光素子組立体、及び、本開示の第1の態様〜第2の態様に係る半導体発光素子、全般に関する説明
2.実施例1(本開示の第1の態様〜第2の態様に係る半導体発光素子組立体、及び、本開示の第1の態様〜第2の態様に係る半導体発光素子)
3.実施例2(実施例1の変形)
4.実施例3(実施例1の別の変形)
5.その他
【0013】
〈本開示の第1の態様〜第2の態様に係る半導体発光素子組立体、及び、本開示の第1の態様〜第2の態様に係る半導体発光素子、全般に関する説明〉
本開示の第1の態様に係る半導体発光素子等において、光パルスの繰り返し周波数fが光学系の距離で決定される基本周波数から基本周波数の2倍の周波数に変化するときの動作電流が、動作電流範囲の上限値である形態とすることができる。尚、次に述べる外部共振器構造の長さによって決まるラウンド・トリップ・タイムは、繰り返し周波数fの逆数に比例する。また、このような好ましい形態を含む本開示の第1の態様に係る半導体発光素子等において、活性層の温度がT
1のときの動作電流範囲の上限値をI
max-1、活性層の温度がT
2のときの動作電流範囲の上限値をI
max-2としたとき、
I
max-2>I
max-1
を満足する形態とすることができる。
【0014】
ここで、本開示の第1の態様〜第2の態様に係る半導体発光素子組立体における上述した光学系は、例えば、半導体発光素子及び光学部材から構成することができる。具体的には、半導体発光素子の有する2つの端面を第1端面及び第2端面とし、第1端面を光反射面、第2端面を光出射面としたとき、半導体発光素子の第2端面から出射した光は光学部材と衝突し、一部の光は半導体発光素子に戻され、残りの光は外部に出射される形態とすることができる。半導体発光素子の第1端面及び光学部材によって外部共振器構造が構成され、この場合、光学系の距離とは外部共振器構造の長さである。光学部材として、格子状の凹凸部や溝部が形成された回折格子、あるいは、半透過鏡や反射鏡を例示することができる。回折格子は、例えば、半導体発光素子から出射された光の内、1次の回折光を半導体発光素子に戻し、0次の回折光を外部に出射する構成とすることができる。回折格子における格子状のパターンの本数として、1200本/mm乃至3600本/mm、望ましくは2400本/mm乃至3600本/mmを例示することができる。半導体発光素子と光学部材との間に、半導体発光素子からの光を平行光束とするためのコリメート手段(具体的には、レンズ)を配してもよいし、半導体発光素子からの光を光学部材に集光するための集光手段(具体的には、レンズ)を配してもよい。即ち、外部共振器構造を有する場合、半導体発光素子は、集光型であってもよいし、コリメート型であってもよい。
【0015】
更には、上記の各種の好ましい形態を含む本開示の第1の態様〜第2の態様に係る半導体発光素子組立体は、ヒートシンク、及び、サブマウントを更に備えており、ヒートシンク、サブマウント及び半導体発光素子が、順次、積層されている形態とすることができる。ここで、サブマウントを構成する材料として、AlN、Si、SiC、Cu、W、Mo、Al、ダイヤモンド、又は、これらの材料を含む複合材料であるCu−W、Al−SiC等を挙げることができるし、ヒートシンクを構成する材料として、Cu、Fe、Al、Au、W、Mo、又は、これらの材料を含む複合材料であるCu−W、Cu−Mo等を挙げることができる。尚、
ヒートシンクとサブマウントとは、第1ハンダ層を介して積層されており、
サブマウントと半導体発光素子とは、第2ハンダ層を介して積層されており、
サブマウントの面積に対する第1ハンダ層の面積は、限定するものではないが、0.2乃至0.8であり、及び/又は、半導体発光素子の面積に対するサブマウントに形成された第2ハンダ層の面積は、限定するものではないが、0.2乃至0.8である形態とすることができる。このように、サブマウントの面積に対する第1ハンダ層の面積、及び/又は、半導体発光素子の面積に対するサブマウントに形成された第2ハンダ層の面積を、0.8以下とすることで、半導体発光素子において発生し、ヒートシンクに伝わる熱をより少なくすることができ、所謂蓄熱構造を得ることができるので、活性層の温度を所望の高い温度に保持することが可能となる。活性層の温度を高く保持するための蓄熱構造として、その他、サブマウントとヒートシンクの接触する面積、又は、サブマウントと半導体発光素子の接触面積を0.8以下にすることによって、あるいは又、サブマウントとヒートシンクとの接触界面、又は、サブマウントと半導体発光素子との接触界面に熱伝導率が50W/mK以下の低い材料を挿入することによっても、蓄熱構造を得ることができる。
【0016】
更には、上記の各種の好ましい形態を含む本開示の第1の態様〜第2の態様に係る半導体発光素子組立体にあっては、ヒートシンクによって活性層の温度を制御する形態とすることができるし、この場合、ヒートシンクを加熱することによって活性層の温度を制御する形態とすることができる。
【0017】
更には、上記の各種の好ましい形態を含む本開示の第1の態様〜第2の態様に係る半導体発光素子等において、積層構造体は、共振器方向に発光領域と可飽和吸収領域とが並置された構造を有する構成とすることができ、この場合、可飽和吸収領域は、共振器方向の積層構造体の端部領域に配置されている構成とすることができ、更には、これらの場合、発光領域に流す電流を、発光領域の単位面積当たり1×10
2アンペア/cm
2乃至1×10
5アンペア/cm
2とする構成とすることができる。
【0018】
あるいは又、上記の各種の好ましい形態を含む本開示の第1の態様〜第2の態様に係る半導体発光素子等において、積層構造体は、複数の機能領域が集積された構造を有する構成とすることができ、この場合、複数の機能領域の内の少なくとも1つは可飽和吸収領域から成る構成とすることができる。機能領域として、その他、利得領域、可飽和吸収領域、位相制御領域、分布帰還領域、分布
ブラッグ反射領域等を挙げることができる。
【0019】
上記の各種の好ましい形態を含む本開示の第1の態様〜第2の態様に係る半導体発光素子等(以下、これらを総称して、『本開示の半導体発光素子等』と呼ぶ場合がある)は、上述したとおり、発光領域及び可飽和吸収領域を有する半導体発光素子、具体的には、発光領域及び可飽和吸収領域を有するモード同期半導体レーザ素子から成る形態とすることができる。尚、従来の光励起型のモード同期半導体レーザ素子では発振特性を制御するのに半導体可飽和吸収体(SESAM)の温度特性を利用するが、可飽和吸収領域を有する形態にあっては、可飽和吸収領域への逆バイアス電圧V
saに基づき発振特性を制御することができるので、発振特性の制御が容易である。また、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本開示の第1の態様〜第2の態様に係る半導体発光素子組立体(以下、これらを総称して、『本開示の半導体発光素子組立体』と呼ぶ場合がある)において、半導体光増幅器(Semiconductor Optical Amplifier,SOA)が備えられている形態とすることができる。
【0020】
半導体レーザ素子(LD)にあっては、活性層において生成した光は、積層構造体の第2端面から外部に出射される。即ち、積層構造体の第1端面の光反射率、及び、第2端面の光反射率の最適化を図ることで、共振器が構成され、光は第2端面から出射される。半導体光増幅器(SOA)は、光信号を電気信号に変換せず、直接光の状態で増幅するものであり、共振器効果を極力排除したレーザ構造を有し、半導体光増幅器の光利得に基づき入射光を増幅する。半導体光増幅器にあっては、積層構造体における第1端面及び第2端面の光反射率を非常に低い値とし、共振器を構成することなく、第1端面から入射した光を増幅して第2端面から出射する。半導体発光素子と半導体光増幅器とが一体になったモノリシック型とすることもできる。
【0021】
モード同期半導体レーザ素子あるいは半導体光増幅器は、より具体的には、
GaN系化合物半導体から成り、第1導電型を有する第1化合物半導体層、
GaN系化合物半導体から成る第3化合物半導体層(活性層)、及び、
GaN系化合物半導体から成り、第1導電型とは異なる第2導電型を有する第2化合物半導体層、
が、順次、基体上に積層されて成る積層構造体、
第2化合物半導体層上に形成された第2電極、並びに、
第1化合物半導体層に電気的に接続された第1電極、
を備えた構成とすることができる。尚、第1化合物半導体層が、基板や基体上に形成されている。
【0022】
具体的には、モード同期半導体レーザ素子は、共振器方向に発光領域と可飽和吸収領域とを並置したバイ・セクション(Bi Section)型のモード同期半導体レーザ素子から成り、第2電極は、発光領域を経由して第1電極に直流電流を流すことで順バイアス状態とするための第1部分と、可飽和吸収領域に電界を加えるための第2部分とに、分離溝によって分離されている形態とすることができる。そして、第2電極の第1部分と第2部分との間の電気抵抗値は、第2電極と第1電極との間の電気抵抗値の1×10倍以上、好ましくは1×10
2倍以上、より好ましくは1×10
3倍以上であることが望ましい。このようなモード同期半導体レーザ素子を、便宜上、『第1の構成のモード同期半導体レーザ素子』と呼ぶ。あるいは又、第2電極の第1部分と第2部分との間の電気抵抗値は、1×10
2Ω以上、好ましくは1×10
3Ω以上、より好ましくは1×10
4Ω以上であることが望ましい。このようなモード同期半導体レーザ素子を、便宜上、『第2の構成のモード同期半導体レーザ素子』と呼ぶ。第1の構成あるいは第2の構成のモード同期半導体レーザ素子にあっては、第2電極の第1部分から発光領域を経由して第1電極に直流電流を流して順バイアス状態とし、第1電極と第2電極の第2部分との間に電圧(逆バイアス電圧V
sa)を印加することによって可飽和吸収領域に電界を加えることで、モード同期動作させることができる。
【0023】
このような第1の構成あるいは第2の構成のモード同期半導体レーザ素子にあっては、第2電極の第1部分と第2部分との間の電気抵抗値を、第2電極と第1電極との間の電気抵抗値の10倍以上とし、あるいは又、1×10
2Ω以上とすることで、第2電極の第1部分から第2部分への漏れ電流の流れを確実に抑制することができる。即ち、可飽和吸収領域(キャリア非注入領域)へ印加する逆バイアス電圧V
saを高くすることができるため、パルス時間幅のより短いレーザ光を有するモード同期動作を実現することができる。そして、第2電極の第1部分と第2部分との間のこのような高い電気抵抗値を、第2電極を第1部分と第2部分とに分離溝によって分離するだけで達成することができる。
【0024】
また、第1の構成及び第2の構成のモード同期半導体レーザ素子において、限定するものではないが、
第3化合物半導体層(活性層)は、井戸層及び障壁層を備えた量子井戸構造を有し、
井戸層の厚さは、1nm以上、10nm以下、好ましくは、1nm以上、8nm以下であり、
障壁層の不純物ドーピング濃度は、2×10
18cm
-3以上、1×10
20cm
-3以下、好ましくは、1×10
19cm
-3以上、1×10
20cm
-3以下である形態とすることができる。このようなモード同期半導体レーザ素子を、便宜上、『第3の構成のモード同期半導体レーザ素子』と呼ぶ場合がある。活性層に量子井戸構造を採用することで、量子ドット構造を採用するよりも高い注入電流量を実現することができ、容易に高出力を得ることができる。
【0025】
このように、第3化合物半導体層を構成する井戸層の厚さを1nm以上、10nm以下と規定し、更には、第3化合物半導体層を構成する障壁層の不純物ドーピング濃度を2×10
18cm
-3以上、1×10
20cm
-3以下と規定することで、即ち、井戸層の厚さを薄くし、しかも、第3化合物半導体層のキャリアの増加を図ることで、ピエゾ分極の影響を低減させることができ、パルス時間幅が短く、サブパルス成分の少ない単峰化されたレーザ光を発生させ得るレーザ光源を得ることができる。また、低い逆バイアス電圧V
saでモード同期駆動を達成することが可能となるし、外部信号(電気信号及び光信号)と同期が取れたレーザ光のパルス列を発生させることが可能となる。障壁層にドーピングされた不純物はシリコン(Si)である構成することができるが、これに限定するものではなく、その他、酸素(O)とすることもできる。
【0026】
本開示の半導体発光素子等は、リッジストライプ型の分離閉じ込めヘテロ構造(SCH構造、Separate Confinement Heterostructure)を有する半導体レーザ素子である形態とすることができる。あるいは又、斜めリッジストライプ型の分離閉じ込めヘテロ構造を有する半導体レーザ素子である形態とすることができる。即ち、半導体発光素子の軸線とリッジストライプ構造の軸線とは、所定の角度で交わっている構成とすることができる。ここで、所定の角度θとして、0.1度≦θ≦10度、好ましくは、0.1度≦θ≦6度を例示することができる。リッジストライプ構造の軸線とは、光出射端面(第2端面)におけるリッジストライプ構造の両端の二等分点と、光出射端面(第2端面)とは反対側の積層構造体の端面(第1端面)におけるリッジストライプ構造の両端の二等分点とを結ぶ直線である。また、半導体発光素子の軸線とは、第1端面及び第2端面に直交する軸線を指す。リッジストライプ構造の平面形状は、直線状であってもよいし、湾曲していてもよい。
【0027】
あるいは又、本開示の半導体発光素子等において、第2端面におけるリッジストライプ構造の幅をW
2、第1端面におけるリッジストライプ構造の幅をW
1としたとき、W
1=W
2であってもよいし、W
2>W
1としてもよい。W
2は5μm以上である形態とすることができ、W
2の上限値として、限定するものではないが、例えば、4×10
2μmを例示することができる。また、W
1は1.4μm乃至2.0μmである形態とすることができる。リッジストライプ構造の各端部は、1本の線分から構成されていてもよいし、2本以上の線分から構成されていてもよい。前者の場合、リッジストライプ構造の幅は、例えば、第1端面から第2端面に向かって、単調に、テーパー状(フレア状)に緩やかに広げられる構成することができる。一方、後者の場合、リッジストライプ構造の幅は、例えば、第1端面から第2端面に向かって、先ず同じ幅であり、次いで、単調に、テーパー状に緩やかに広げられ、あるいは又、リッジストライプ構造の幅は、例えば、第1端面から第2端面に向かって、先ず広げられ、最大幅を超えた後、狭められる構成とすることができる。
【0028】
本開示の半導体発光素子等を半導体レーザ素子から構成する場合、光ビーム(パルス状の光)が出射される積層構造体の第2端面の光反射率は0.5%以下であることが好ましい。具体的には、第2端面には低反射コート層が形成されている構成とすることができる。ここで、低反射コート層は、例えば、酸化チタン層、酸化タンタル層、酸化ジルコニア層、酸化シリコン層及び酸化アルミニウム層から成る群から選択された少なくとも2種類の層の積層構造から成る。尚、この光反射率の値は、従来の半導体レーザ素子においてレーザ光ビーム(パルス状のレーザ光)が出射される積層構造体の一端面の光反射率(通常、5%乃至10%)よりも格段に低い値である。また、第1端面は、高い光反射率、例えば、反射率85%以上、好ましくは反射率95%以上の高い反射率を有することが好ましい。
【0029】
外部共振器構造における外部共振器長さ(X’,単位:mm)の値は、
0<X’<1500
好ましくは、
30≦X’≦500
であることが望ましい。ここで、外部共振器構造とは前述したとおりである。
【0030】
本開示の半導体発光素子等を半導体レーザ素子から構成する場合、積層構造体は、少なくとも第2化合物半導体層の厚さ方向の一部分から構成されたリッジストライプ構造を有するが、このリッジストライプ構造は、第2化合物半導体層のみから構成されていてもよいし、第2化合物半導体層及び第3化合物半導体層(活性層)から構成されていてもよいし、第2化合物半導体層、第3化合物半導体層(活性層)、及び、第1化合物半導体層の厚さ方向の一部分から構成されていてもよい。リッジストライプ構造の形成にあっては、化合物半導体層を、例えば、ドライエッチング法でパターニングすればよい。
【0031】
モード同期半導体レーザ素子において、限定するものではないが、
第2電極の幅は、0.5μm以上、50μm以下、好ましくは1μm以上、5μm以下、
リッジストライプ構造の高さは、0.1μm以上、10μm以下、好ましくは0.2μm以上、1μm以下、
第2電極を第1部分と第2部分とに分離する分離溝の幅は、1μm以上、モード同期半導体レーザ素子における共振器長(以下、単に『共振器長』と呼ぶ)の50%以下、好ましくは10μm以上、共振器長の10%以下であることが望ましい。共振器長として、0.6mmを例示することができるが、これに限定するものではない。リッジストライプ構造の両側面よりも外側に位置する第2化合物半導体層の部分の頂面から第3化合物半導体層(活性層)までの距離(D)は1.0×10
-7m(0.1μm)以上であることが好ましい。距離(D)をこのように規定することによって、第3化合物半導体層の両脇(Y方向)に可飽和吸収領域を確実に形成することができる。距離(D)の上限は、閾値電流の上昇、温度特性、長期駆動時の電流上昇率の劣化等に基づき決定すればよい。尚、以下の説明において、共振器長方向をX方向とし、積層構造体の厚さ方向をZ方向とする。
【0032】
更には、本開示の半導体発光素子等において、第2電極は、例えば、パラジウム(Pd)単層、ニッケル(Ni)単層、白金(Pt)単層、パラジウム層が第2化合物半導体層に接するパラジウム層/白金層の積層構造、又は、パラジウム層が第2化合物半導体層に接するパラジウム層/ニッケル層の積層構造から成る形態とすることができる。尚、下層金属層をパラジウムから構成し、上層金属層をニッケルから構成する場合、上層金属層の厚さを、0.1μm以上、好ましくは0.2μm以上とすることが望ましい。あるいは又、第2電極を、パラジウム(Pd)単層から成る構成とすることが好ましく、この場合、厚さを、20nm以上、好ましくは50nm以上とすることが望ましい。あるいは又、第2電極を、パラジウム(Pd)単層、ニッケル(Ni)単層、白金(Pt)単層、又は、下層金属層が第2化合物半導体層に接する下層金属層と上層金属層の積層構造(但し、下層金属層は、パラジウム、ニッケル及び白金から成る群から選択された1種類の金属から構成され、上層金属層は、後述する工程(D)において第2電極に分離溝を形成する際のエッチングレートが、下層金属層のエッチングレートと同じ、あるいは同程度、あるいは、下層金属層のエッチングレートよりも高い金属から構成されている)から成る構成とすることが好ましい。また、後述する工程(D)において第2電極に分離溝を形成する際のエッチング液を、王水、硝酸、硫酸、塩酸、又は、これらの酸の内の少なくとも2種類の混合液(具体的には、硝酸と硫酸の混合液、硫酸と塩酸の混合液)とすることが望ましい。
【0033】
以上に説明した好ましい形態、構成を含む第1の構成あるいは第2の構成のモード同期半導体レーザ素子において、可飽和吸収領域の長さは発光領域の長さよりも短い構成とすることができる。あるいは又、第2電極の長さ(第1部分と第2部分の総計の長さ)は第3化合物半導体層(活性層)の長さよりも短い構成とすることができる。第2電極の第1部分と第2部分の配置状態として、具体的には、
(1)1つの第2電極の第1部分と1つの第2電極の第2部分とが設けられ、第2電極の第1部分と、第2電極の第2部分とが、分離溝を挟んで配置されている状態
(2)1つの第2電極の第1部分と2つの第2電極の第2部分とが設けられ、第1部分の一端が、一方の分離溝を挟んで、一方の第2部分と対向し、第1部分の他端が、他方の分離溝を挟んで、他方の第2部分と対向している状態
(3)2つの第2電極の第1部分と1つの第2電極の第2部分とが設けられ、第2部分の端部が、一方の分離溝を挟んで、一方の第1部分と対向し、第2部分の他端が、他方の分離溝を挟んで、他方の第1部分と対向している状態(即ち、第2電極は、第2部分を第1部分で挟んだ構造)
を挙げることができる。また、広くは、
(4)N個の第2電極の第1部分と(N−1)個の第2電極の第2部分とが設けられ、第2電極の第1部分が第2電極の第2部分を挟んで配置されている状態
(5)N個の第2電極の第2部分と(N−1)個の第2電極の第1部分とが設けられ、第2電極の第2部分が第2電極の第1部分を挟んで配置されている状態
を挙げることができる。(4)及び(5)の状態は、云い換えれば、
(4’)N個の発光領域[キャリア注入領域、利得領域]と(N−1)個の可飽和吸収領域[キャリア非注入領域]とが設けられ、発光領域が可飽和吸収領域を挟んで配置されている状態
(5’)N個の可飽和吸収領域[キャリア非注入領域]と(N−1)個の発光領域[キャリア注入領域、利得領域]とが設けられ、可飽和吸収領域が発光領域を挟んで配置されている状態
である。(3)、(5)、(5’)の構造を採用することで、モード同期半導体レーザ素子の光出射端面における損傷が発生し難くなる。
【0034】
モード同期半導体レーザ素子は、例えば、以下の方法で製造することができる。即ち、
(A)基体上に、第1導電型を有し、GaN系化合物半導体から成る第1化合物半導体層、GaN系化合物半導体から成る発光領域及び可飽和吸収領域を構成する第3化合物半導体層、並びに、第1導電型と異なる第2導電型を有し、GaN系化合物半導体から成る第2化合物半導体層が、順次、積層されて成る積層構造体を形成した後、
(B)第2化合物半導体層上に帯状の第2電極を形成し、次いで、
(C)第2電極をエッチング用マスクとして、少なくとも第2化合物半導体層の一部分をエッチングして、リッジストライプ構造を形成した後、
(D)分離溝を第2電極に形成するためのレジスト層を形成し、次いで、レジスト層をウエットエッチング用マスクとして、第2電極に分離溝をウエットエッチング法にて形成し、以て、第2電極を第1部分と第2部分とに分離溝によって分離する、
各工程を具備した製造方法に基づき製造することができる。
【0035】
そして、このような製造方法を採用することで、即ち、帯状の第2電極をエッチング用マスクとして、少なくとも第2化合物半導体層の一部分をエッチングして、リッジストライプ構造を形成するので、即ち、パターニングされた第2電極をエッチング用マスクとして用いてセルフアライン方式にてリッジストライプ構造を形成するので、第2電極とリッジストライプ構造との間に合わせずれが生じることがない。また、第2電極に分離溝をウエットエッチング法にて形成する。このように、ドライエッチング法と異なり、ウエットエッチング法を採用することで、第2化合物半導体層に光学的、電気的特性の劣化が生じることを抑制することができる。それ故、発光特性に劣化が生じることを、確実に防止することができる。
【0036】
工程(C)にあっては、第2化合物半導体層を厚さ方向に一部分、エッチングしてもよいし、第2化合物半導体層を厚さ方向に全部、エッチングしてもよいし、第2化合物半導体層及び第3化合物半導体層を厚さ方向にエッチングしてもよいし、第2化合物半導体層及び第3化合物半導体層、更には、第1化合物半導体層を厚さ方向に一部分、エッチングしてもよい。
【0037】
更には、前記工程(D)において、第2電極に分離溝を形成する際の、第2電極のエッチングレートをER
0、積層構造体のエッチングレートをER
1としたとき、ER
0/ER
1≧1×10、好ましくは、ER
0/ER
1≧1×10
2を満足することが望ましい。ER
0/ER
1がこのような関係を満足することで、積層構造体をエッチングすること無く(あるいは、エッチングされても僅かである)、第2電極を確実にエッチングすることができる。
【0038】
本開示の半導体発光素子等において、積層構造体は、具体的には、AlInGaN系化合物半導体から成る構成とすることができる。ここで、AlInGaN系化合物半導体として、より具体的には、GaN、AlGaN、InGaN、AlInGaNを挙げることができる。更には、これらの化合物半導体に、所望に応じて、ホウ素(B)原子やタリウム(Tl)原子、ヒ素(As)原子、リン(P)原子、アンチモン(Sb)原子が含まれていてもよい。また、第3化合物半導体層(活性層)は、量子井戸構造を有することが望ましい。具体的には、単一量子井戸構造[SQW構造]を有していてもよいし、多重量子井戸構造[MQW構造]を有していてもよい。量子井戸構造を有する第3化合物半導体層(活性層)は、井戸層及び障壁層が、少なくとも1層、積層された構造を有するが、(井戸層を構成する化合物半導体,障壁層を構成する化合物半導体)の組合せとして、(In
yGa
(1-y)N,GaN)、(In
yGa
(1-y)N,In
zGa
(1-z)N)[但し、y>z]、(In
yGa
(1-y)N,AlGaN)を例示することができる。
【0039】
更には、本開示の半導体発光素子等において、第2化合物半導体層は、p型GaN層及びp型AlGaN層が交互に積層された超格子構造を有し;超格子構造の厚さは0.7μm以下である構造とすることができる。このような超格子
構造を採用することで、クラッド層として必要な屈折率を維持しながら、半導体発光素子の直列抵抗成分を下げることができ、半導体発光素子の低動作電圧化につながる。超格子構造の厚さの下限値として、限定するものではないが、例えば、0.3μmを挙げることができるし、超格子構造を構成するp型GaN層の厚さとして1nm乃至5nmを例示することができるし、超格子構造を構成するp型AlGaN層の厚さとして1nm乃至5nmを例示することができるし、p型GaN層及びp型AlGaN層の層数合計として、60層乃至300層を例示することができる。また、第3化合物半導体層から第2電極までの距離は1μm以下、好ましくは、0.6μm以下である構成とすることができる。このように第3化合物半導体層から第2電極までの距離を規定することで、抵抗の高いp型の第2化合物半導体層の厚さを薄くし、半導体発光素子の動作電圧の低減化を達成することができる。第3化合物半導体層から第2電極までの距離の下限値として、限定するものではないが、例えば、0.3μmを挙げることができる。また、第2化合物半導体層には、Mgが、1×10
19cm
-3以上、ドーピングされており;第3化合物半導体層からの波長405nmの光に対する第2化合物半導体層の吸収係数は、少なくとも50cm
-1である構成とすることができる。このMgの原子濃度は、2×10
19cm
-3の値で最大の正孔濃度を示すという材料物性に由来しており、最大の正孔濃度、即ち、この第2化合物半導体層の比抵抗が最小になるように設計された結果である。第2化合物半導体層の吸収係数は、半導体発光素子の抵抗を出来るだけ下げるという観点で規定されているものであり、その結果、第3化合物半導体層の光の吸収係数が、50cm
-1となるのが一般的である。しかし、この吸収係数を上げるために、Mgドープ量を故意に2×10
19cm
-3以上の濃度に設定することも可能である。この場合には、実用的な正孔濃度が得られる上での上限のMgドープ量は、例えば8×10
19cm
-3である。また、第2化合物半導体層は、第3化合物半導体層側から、ノンドープ化合物半導体層、及び、p型化合物半導体層を有しており;第3化合物半導体層からp型化合物半導体層までの距離は、1.2×10
-7m以下である構成とすることができる。このように第3化合物半導体層からp型化合物半導体層までの距離を規定することで、内部量子効率が低下しない範囲で、内部損失を抑制することができ、これにより、発振が開始される閾値電流密度を低減させることができる。第3化合物半導体層からp型化合物半導体層までの距離の下限値として、限定するものではないが、例えば、5×10
-8mを挙げることができる。また、リッジストライプ構造の両側面には、SiO
2/Si積層構造から成る積層絶縁膜が形成されており;リッジストライプ構造の有効屈折率と積層絶縁膜の有効屈折率との差は、5×10
-3乃至1×10
-2である構成とすることができる。このような積層絶縁膜を用いることで、100ミリワットを超える高出力動作であっても、単一基本横モードを維持することができる。また、第2化合物半導体層は、第3化合物半導体層側から、例えば、ノンドープInGaN層(p側光ガイド層)、MgドープAlGaN層(電子障壁層)、GaN層(Mgドープ)/AlGaN層の超格子構造(超格子クラッド層)、及び、MgドープGaN層(p側コンタクト層)が積層されて成る構造とすることができる。第3化合物半導体層における井戸層を構成する化合物半導体のバンドギャップは、2.4eV以上であることが望ましい。また、第3化合物半導体層(活性層)から出射される光の波長は、360nm乃至500nm、好ましくは400nm乃至410nmであることが望ましい。ここで、以上に説明した各種の構成を、適宜、組み合わせることができることは云うまでもない。
【0040】
本開示の半導体発光素子等にあっては、半導体発光素子を構成する各種のGaN系化合物半導体層を基板や基体に順次形成するが、ここで、基板や基体として、サファイア基板の他にも、GaAs基板、GaN基板、SiC基板、アルミナ基板、ZnS基板、ZnO基板、AlN基板、LiMgO基板、LiGaO
2基板、MgAl
2O
4基板、InP基板、Si基板、これらの基板の表面(主面)に下地層やバッファ層が形成されたものを挙げることができる。主に、GaN系化合物半導体層を基板や基体に形成する場合、GaN基板が欠陥密度の少なさから好まれるが、GaN基板は成長面によって、極性/無極性/半極性と特性が変わることが知られている。また、本開示の半導体発光素子等を構成する各種の化合物半導体層(例えば、GaN系化合物半導体層)の形成方法として、有機金属化学的気相成長法(MOCVD法,MOVPE法)や分子線エピタキシー法(MBE法)、ハロゲンが輸送あるいは反応に寄与するハイドライド気相成長法等を挙げることができる。
【0041】
ここで、化合物半導体層としてGaN系化合物半導体層を形成する場合、MOCVD法における有機ガリウム源ガスとして、トリメチルガリウム(TMG)ガスやトリエチルガリウム(TEG)ガスを挙げることができるし、窒素源ガスとして、アンモニアガスやヒドラジンガスを挙げることができる。また、n型の導電型を有するGaN系化合物半導体層の形成においては、例えば、n型不純物(n型ドーパント)としてケイ素(Si)を添加すればよいし、p型の導電型を有するGaN系化合物半導体層の形成においては、例えば、p型不純物(p型ドーパント)としてマグネシウム(Mg)を添加すればよい。また、GaN系化合物半導体層の構成原子としてアルミニウム(Al)あるいはインジウム(In)が含まれる場合、Al源としてトリメチルアルミニウム(TMA)ガスを用いればよいし、In源としてトリメチルインジウム(TMI)ガスを用いればよい。更には、Si源としてモノシランガス(SiH
4ガス)を用いればよいし、Mg源としてシクロペンタジエニルマグネシウムガスやメチルシクロペンタジエニルマグネシウム、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp
2Mg)を用いればよい。n型不純物(n型ドーパント)として、Si以外に、Ge、Se、Sn、C、Te、S、O、Pd、Poを挙げることができるし、p型不純物(p型ドーパント)として、Mg以外に、Zn、Cd、Be、Ca、Ba、C、Hg、Srを挙げることができる。
【0042】
第1導電型をn型とするとき、n型の導電型を有する第1化合物半導体層に電気的に接続された第1電極は、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)、タングステン(W)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、錫(Sn)及びインジウム(In)から成る群から選択された少なくとも1種類の金属を含む、単層構成又は多層構成を有することが望ましく、例えば、Ti/Au、Ti/Al、Ti/Pt/Auを例示することができる。第1電極は第1化合物半導体層に電気的に接続されているが、第1電極が第1化合物半導体層上に形成された形態、第1電極が導電材料層や導電性の基板や基体を介して第1化合物半導体層に接続された形態が包含される。第1電極や第2電極は、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法等の各種PVD法にて成膜することができる。
【0043】
第1電極や第2電極上に、外部の電極あるいは回路と電気的に接続するために、パッド電極を設けてもよい。パッド電極は、Ti(チタン)、アルミニウム(Al)、Pt(白金)、Au(金)、Ni(ニッケル)から成る群から選択された少なくとも1種類の金属を含む、単層構成又は多層構成を有することが望ましい。あるいは又、パッド電極を、Ti/Pt/Auの多層構成、Ti/Auの多層構成に例示される多層構成とすることもできる。
【0044】
第1の構成あるいは第2の構成のモード同期半導体レーザ素子においては、前述したとおり、第1電極と第2部分との間に逆バイアス電圧V
saを印加する構成(即ち、第1電極を正極、第2部分を負極とする構成)とすることが望ましい。尚、第2電極の第2部分には、第2電極の第1部分に印加するパルス電流あるいはパルス電圧と同期したパルス電流あるいはパルス電圧を印加してもよいし、直流バイアスを印加してもよい。また、第2電極から発光領域を経由して第1電極に電流を流し、且つ、第2電極から発光領域を経由して第1電極に外部電気信号を重畳させる形態とすることができる。そして、これによって、レーザ光と外部電気信号との間の同期を取ることができる。あるいは又、積層構造体の一端面から光信号を入射させる形態とすることができる。そして、これによっても、レーザ光と光信号との間の同期を取ることができる。また、第2化合物半導体層において、第3化合物半導体層と電子障壁層との間には、ノンドープ化合物半導体層(例えば、ノンドープInGaN層、あるいは、ノンドープAlGaN層)を形成してもよい。更には、第3化合物半導体層とノンドープ化合物半導体層との間に、光ガイド層としてのノンドープInGaN層を形成してもよい。第2化合物半導体層の最上層を、MgドープGaN層(p側コンタクト層)が占めている構造とすることもできる。電子障壁層、ノンドープ化合物半導体層、光ガイド層、p側コンタクト層は、第2化合物半導体層を構成する。
【0045】
モード同期半導体レーザ素子は、バイ・セクション型(2電極型)の半導体レーザ素子に限定するものではなく、その他、マルチセクション型(多電極型)の半導体レーザ素子、発光領域と可飽和吸収領域とを垂直方向に配置したSAL(Saturable Absorber Layer)型や、リッジストライプ構造に沿って可飽和吸収領域を設けたWI(Weakly Index guide)型の半導体レーザ素子を採用することもできる。
【0046】
半導体光増幅器において、積層構造体は、具体的には、AlInGaN系化合物半導体から成る構成とすることができる。半導体光増幅器の構成、構造は、第2電極が分割されていない点を除き、実質的に、半導体発光素子の構成、構造と同様とすることができる。
【0047】
本開示の半導体発光素子組立体を、例えば、光ディスクシステム、通信分野、光情報分野、光電子集積回路、非線形光学現象を応用した分野、光スイッチ、レーザ計測分野や種々の分析分野、超高速分光分野、多光子励起分光分野、質量分析分野、多光子吸収を利用した顕微分光の分野、化学反応の量子制御、ナノ3次元加工分野、多光子吸収を応用した種々の加工分野、医療分野、バイオイメージング分野、量子情報通信分野、量子情報処理分野といった分野に適用することができる。
【実施例1】
【0048】
実施例1は、本開示の第1の態様〜第2の態様に係る半導体発光素子、及び、本開示の第1の態様〜第2の態様に係る半導体発光素子組立体に関する。実施例1の半導体発光素子の概念図を
図1Aに示し、半導体発光素子(具体的には半導体レーザ素子であり、以下の説明においては『半導体レーザ素子10』と呼ぶ)の共振器の延びる方向に沿った(即ち、
図3の矢印I−Iに沿った)模式的な端面図を
図2に示し、半導体レーザ素子10の共振器の延びる方向と直角方向に沿った(即ち、
図2の矢印II−IIに沿った)模式的な断面図を
図3に示す。また、実施例1の半導体発光素子組立体を分解したときの概念的な斜視図を
図4に示す。
【0049】
実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例3における半導体レーザ素子10は、第1化合物半導体層30、活性層40及び第2化合物半導体層50が積層された積層構造体を有する。また、実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例3における半導体発光素子組立体は、第1化合物半導体層30、活性層40及び第2化合物半導体層50が積層された積層構造体を有する半導体発光素子(具体的には、半導体レーザ素子10)を備えている。
【0050】
積層構造体は、共振器方向に発光領域41と可飽和吸収領域42とが並置された構造を有する。そして、可飽和吸収領域42は、共振器方向の積層構造体の端部領域に配置されている。より具体的には、実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例3における半導体レーザ素子10は、発光領域41及び可飽和吸収領域42を有するモード同期半導体レーザ素子から成る。モード同期半導体レーザ素子は、具体的には、発光波長405nm帯のバイ・セクション型のモード同期半導体レーザ素子から成り、
GaN系化合物半導体から成り、第1導電型(実施例においては、n型導電型)を有する第1化合物半導体層30、
GaN系化合物半導体から成る第3化合物半導体層(活性層)40、及び、
GaN系化合物半導体から成り、第1導電型とは異なる第2導電型(実施例においては、p型導電型)を有する第2化合物半導体層50、
が、順次、基体上に積層されて成る積層構造体、
第2化合物半導体層
50上に形成された第2電極62、並びに、
第1化合物半導体層
30に電気的に接続された第1電極61、
を備えている。第1化合物半導体層30は、基体(具体的には、基板21)上に形成されている。そして、実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例3におけるモード同期半導体レーザ素子は、より具体的には、ピークパワーの光密度が1×10
10ワット/cm
2以上、好ましくは1.4×10
10ワット/cm
2以上であり、且つ、キャリア密度が1×10
19/cm
3以上である電流注入型であって受動モード同期のモード同期半導体レーザ素子であり、第1の構成あるいは第2の構成のモード同期半導体レーザ素子である。
【0051】
第2電極62は、発光領域(利得領域)41を経由して第1電極61に直流電流を流すことで順バイアス状態とするための第1部分62Aと、可飽和吸収領域42に電界を加えるための第2部分62B(可飽和吸収領域42に逆バイアス電圧V
saを加えるための第2部分62B)とに、分離溝62Cによって分離されている。ここで、第2電極62の第1部分62Aと第2部分62Bとの間の電気抵抗値(『分離抵抗値』と呼ぶ場合がある)は、第2電極62と第1電極61との間の電気抵抗値の1×10倍以上、具体的には1.5×10
3倍である。また、第2電極62の第1部分62Aと第2部分62Bとの間の電気抵抗値(分離抵抗値)は、1×10
2Ω以上、具体的には、1.5×10
4Ωである。半導体レーザ素子10の共振器長を600μm、第2電極62の第1部分62A、第2部分62B、分離溝62Cのそれぞれの長さを、560μm、30μm、10μmとした。
【0052】
実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例3における半導体レーザ素子10は、具体的には、リッジストライプ型の分離閉じ込めヘテロ構造(SCH構造)を有する半導体レーザ素子である。より具体的には、この半導体レーザ素子10は、インデックスガイド型のAlInGaNから成るGaN系半導体レーザ素子であり、リッジストライプ構造55を有する。リッジストライプ構造55の幅を1.4μmとした。リッジストライプ構造55は、端面反射を軽減させるために光出射端面(第2端面)に向かって湾曲しているが、このような形状に限定するものではない。リッジストライプ構造55は、光反射端面(第1端面)には直交している。
【0053】
第1化合物半導体層30、第3化合物半導体層(活性層)40、及び、第2化合物半導体層50は、具体的には、AlInGaN系化合物半導体から成り、より具体的には、以下の表1に示す層構成を有する。ここで、表1において、下方に記載した化合物半導体層ほど、n型GaN基板21に近い層である。第3化合物半導体層40における井戸層を構成する化合物半導体のバンドギャップは3.06eVである。実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例3における半導体レーザ素子10は、n型GaN基板21の(0001)面上に設けられており、第3化合物半導体層40は量子井戸構造を有する。n型GaN基板21の(0001)面は、『C面』とも呼ばれ、極性を有する結晶面である。
【0054】
[表1]
第2化合物半導体層50
p型GaNコンタクト層(Mgドープ)54
p型GaN(Mgドープ)/AlGaN超格子クラッド層53
p型AlGaN電子障壁層(Mgドープ)52
ノンドープInGaN光ガイド層51
第3化合物半導体層40
InGaN量子井戸活性層
(井戸層:In
0.08Ga
0.92N/障壁層:In
0.02Ga
0.98N)
第1化合物半導体層30
n型GaNクラッド層32
n型AlGaNクラッド層31
但し、
井戸層(2層) 8nm ノン・ドープ
障壁層(3層) 14nm Siドープ
【0055】
また、p型GaNコンタクト層54及びp型GaN/AlGaN超格子クラッド層53の一部は、RIE法にて除去されており、リッジストライプ構造55が形成されている。リッジストライプ構造55の両側にはSiO
2/Siから成る積層絶縁膜56が形成されている。尚、SiO
2層が下層であり、Si層が上層である。ここで、リッジストライプ構造55の有効屈折率と積層絶縁膜56の有効屈折率との差は、5×10
-3乃至1×10
-2、具体的には、7×10
-3である。そして、リッジストライプ構造55の頂面に相当するp型GaNコンタクト層54上には、第2電極(p側オーミック電極)62が形成されている。一方、n型GaN基板21の裏面には、Ti/Pt/Auから成る第1電極(n側オーミック電極)61が形成されている。
【0056】
実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例3における半導体レーザ素子10において、コリメート手段11と対向する光出射端面(第2端面)には、無反射コート層(AR)が形成されている。一方、半導体レーザ素子10における光出射端面(第2端面)と対向する光反射端面(第1端面)には、高反射コート層(HR)が形成されている。可飽和吸収領域42は、半導体レーザ素子10における第1端面の側に設けられている。無反射コート層(低反射コート層)として、酸化チタン層、酸化タンタル層、酸化ジルコニア層、酸化シリコン層及び酸化アルミニウム層から成る群から選択された少なくとも2種類の層の積層構造を挙げることができる。
【0057】
実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例3における半導体レーザ素子10のパルス繰返し周波数を1GHzとした。半導体レーザ素子10は、レーザ光の繰返し周波数が1GHz以下であることが好ましい。尚、外部共振器長さX’(第1端面と光学部材12との間の距離)と共振器の長さLによって光パルス(光パルス列)の繰り返し周波数fが決定され、次式で表される。ここで、cは光速であり、nは共振器の実効的な屈折率である。
f=c/{2(X’+L(n−1))}
【0058】
ところで、上述したとおり、第2化合物半導体層50上に、1×10
2Ω以上の分離抵抗値を有する2電極62を形成することが望ましい。GaN系半導体レーザ素子の場合、従来のGaAs系半導体レーザ素子とは異なり、p型導電型を有する化合物半導体における移動度が小さいために、p型導電型を有する第2化合物半導体層50をイオン注入等によって高抵抗化することなく、その上に形成される第2電極62を分離溝62Cで分離することで、第2電極62の第1部分62Aと第2部分62Bとの間の電気抵抗値を第2電極62と第1電極61との間の電気抵抗値の10倍以上とし、あるいは又、第2電極62の第1部分62Aと第2部分62Bとの間の電気抵抗値を1×10
2Ω以上とすることが可能となる。
【0059】
ここで、第2電極62に要求される特性は、以下のとおりである。即ち、
(1)第2化合物半導体層50をエッチングするときのエッチング用マスクとしての機能を有すること。
(2)第2化合物半導体層50の光学的、電気的特性に劣化を生じさせることなく、第2電極62はウエットエッチング可能であること。
(3)第2化合物半導体層50上に成膜したとき、10
-2Ω・cm
2以下のコンタクト比抵抗値を示すこと。
(4)積層構造とする場合、下層金属層を構成する材料は、仕事関数が大きく、第2化合物半導体層50に対して低いコンタクト比抵抗値を示し、しかも、ウエットエッチング可能であること。
(5)積層構造とする場合、上層金属層を構成する材料は、リッジストライプ構造を形成する際のエッチングに対して(例えば、RIE法において使用されるCl
2ガス)に対して耐性があり、しかも、ウエットエッチング可能であること。
【0060】
実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例3にあっては、第2電極62を厚さ0.1μmのPd単層から構成した。
【0061】
実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例3における半導体発光素子組立体は、具体的には、半導体レーザ素子10及び光学部材12から構成されている。そして、半導体レーザ素子10の第2端面(光出射面)から出射した光は光学部材12と衝突し、一部の光は半導体レーザ素子10に戻され、残りの光は、反射鏡13で反射され、光アイソレータ14を通過して外部に出射される。光アイソレータ14は、戻り光が半導体レーザ素子10に向かうことを防止するために配置されている。半導体レーザ素子10の第1端面(光反射面)及び光学部材12によって外部共振器構造が構成される。光学系の距離とは外部共振器構造の長さである。光学部材12は、格子状の凹凸部や溝部が形成された回折格子から成り、リトロー配置(リットマン配置とも呼ばれる)を有し、半導体レーザ素子10から出射された光の内、1次の回折光を半導体レーザ素子10に戻し、0次の回折光を外部に出射する。回折格子における格子状のパターンの本数を2400本/mmとした。半導体レーザ素子10と光学部材12との間に、半導体レーザ素子10からのレーザ光を平行光束とするためのコリメート手段(具体的には、レンズ11)が配されており、コリメート型の外部共振器構造を構成する。
【0062】
実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例3における半導体発光素子組立体は、ヒートシンク101及びサブマウント104を更に備えており、ヒートシンク101、サブマウント104及び半導体レーザ素子10が、順次、積層されている。ヒートシンク101は、例えば、Cu、Fe、Au等から成り、図示しないペルチェ素子によって温度が制御される。サブマウント104は、例えば、AlNセラミックから成り、熱伝導率は、230W/K・mである。ヒートシンク101とサブマウント104とは、第1ハンダ層102を介して積層されており、サブマウント104と半導体レーザ素子10とは、第2ハンダ層103を介して積層されている。尚、
図4において、半導体レーザ素子10側のサブマウント104の面に形成された第2ハンダ層103を明示するために斜線を付し、ヒートシンク101側のサブマウント104の面に形成された第1ハンダ層102を点線で示した。参照番号22は、半導体レーザ素子10に設けられたパッド電極であり、明示のため斜線を付した。
【0063】
サブマウント104の面積に対する第1ハンダ層102の面積、及び、サブマウント104の面積に対する第2ハンダ層103の面積を「1」とし、最大光出力が得られるように半導体レーザ素子10を動作させたとき(即ち、発光領域41に流す電流を、発光領域41の単位面積当たりI
0アンペア/cm
2としたとき)であって、ヒートシンク101によって何らの温度制御を行わない場合、室温25゜Cにおいて、ヒートシンク101の温度は40゜Cあるいはそれ以下であった。一方、サブマウント104の面積に対する第1ハンダ層102の面積、及び、サブマウント104の面積に対する第2ハンダ層103の面積を上記のとおりとし、発光領域41に流す電流を、発光領域41の単位面積当たりI
0アンペア/cm
2としたとき、ヒートシンク101によって何らの温度制御を行わなくとも、室温25゜Cにおいて、ヒートシンク101の温度は55゜Cとなった。即ち、このような構成にすることで、半導体レーザ素子10において発生し、ヒートシンク101に伝わる熱をより少なくすることができ、所謂蓄熱構造を得ることができる。
【0064】
活性層(第3化合物半導体層)40の温度T
actとヒートシンク101の温度T
hsとの間には、半導体レーザ素子10の熱抵抗をR
th[K/W]、投入電力をP
in[W]としたときに、以下のような関係がある。
T
act=T
hs+R
th×P
in
ここで、同じ動作電流値ではP
inがほぼ等しいので、活性層の温度T
actはヒートシンク101の温度T
hsと同じように変化する。活性層(第3化合物半導体層)40の温度T
actとヒートシンク101の温度T
hsとの関係は、種々の試験を行うことで求めることができる。以下の説明においては、活性層(第3化合物半導体層)40の温度T
actの代わりに、ヒートシンク101の温度T
hsを用いる。
【0065】
実施例1の半導体発光素子組立体において、ペルチェ素子によってヒートシンク101の温度T
hsを制御して、第2電極62の第1部分62Aと第1電極61との間に電流(動作電流)I
1(単位:ミリアンペア)を流し、第2電極62の第2部分62Bと第1電極61との間に逆バイアス電圧V
sa(=7.5ボルト)を印加したときの光出力(単位:ミリワット)を求めた結果を
図5に示す。尚、
図5中、「A」はT
hs=20゜Cのときのデータであり、「B」はT
hs=30゜Cのときのデータであり、「C」はT
hs=40゜Cのときのデータであり、「D」はT
hs=50゜Cのときのデータであり、「E」はT
hs=60゜Cのときのデータである。動作電流I
1を増加していくと、レーザ発振が生じる。そのときの動作電流の値を、動作電流範囲の下限値(発振閾値電流)I
minと呼ぶ。そして、動作電流I
1を更に増加していくと、光出力は直線状に増加し、動作電流範囲の上限値I
maxを超えると、半導体レーザ素子10から出射されるレーザ光の光出力が急激に増加する。ここで、光パルスの繰り返し周波数fが光学系の距離(外部共振器構造の長さ)で決定される基本周波数から基本周波数の2倍の周波数に変化するときの動作電流が、動作電流範囲の上限値I
maxである。T
hs=70゜Cのときには、動作電流を流し始めた直後から、上限値I
maxを超えたときに半導体レーザ素子10から出射されるレーザ光の光出力が急激に増加する現象が発生し、安定したレーザ発振ができなかった。
【0066】
また、
図5に示す結果に基づき、
図6Aに、ヒートシンク101の温度T
hsと動作電流範囲の下限値(発振閾値電流)I
minの関係を求めた結果(
図6Aの「A」の黒菱形の印を参照)、及び、光出力12.5ミリワットが得られるときの動作電流の値(
図6Aの「B」の黒四角の印を参照)を示す。動作電流範囲の下限値(発振閾値電流)I
minの上昇は、ヒートシンク101の温度T
hsの上昇によって活性層(第3化合物半導体層40)の温度が上昇した結果生じた現象であり、従来の半導体レーザ素子と同様の傾向を示す。同様の理由で、光出力が12.5ミリワットときの動作電流を比較すると、ヒートシンク101の温度T
hsの上昇によってこの動作電流が増加することも確認された。云い換えれば、或る同じ動作電流では、ヒートシンク101の温度T
hsの上昇によって光出力が低下することが確認された。
【0067】
尚、動作電流範囲の上限値I
maxを超えると光出力が急激に増加する現象は、以下のように説明することができる。即ち、
図15に示すように、光パルスの繰り返し周波数fは、光学系を光が周回する時間で決まり、周回時間内では可飽和吸収領域42での吸収(ロス)が利得領域41での利得(ゲイン)を上回っている必要がある。そして、利得領域41への注入電流を増加していくと、利得の回復時間が基本周回時間よりも早くなり、基本周回時間の半分の周回時間で到達した光パルスも利得が得られるようになる。その結果、基本周回時間で決まる基本周波数ではなく、基本周回時間の半分の時間、つまり、基本周波数の2倍の周波数で光パルスが発生するようになる。
【0068】
図5に示した温度依存性の測定結果を、
図6Bに、同じパルス状態での動作電流範囲(
図6Bの「A」の黒菱形の印を参照)と最大光出力(
図6Bの「B」の黒四角の印を参照)で比較した結果を示す。ヒートシンク101の温度T
hsが高くなるほど、同じパルス状態で光パルスを発生する動作電流範囲が広がり、最大光出力が増加する傾向がみられた。即ち、活性層の温度がT
1のときの動作電流範囲をΔI
1、活性層の温度がT
2(但し、T
2>T
1)のときの動作電流範囲をΔI
2としたとき、
ΔI
2>ΔI
1
を満足する。動作電流範囲が増大した要因として、
図15より、微分利得が減少して利得の回復時間が長くなったことや、可飽和吸収領域42の飽和レベルが上昇したことが考えられるが、発振直後の出力も向上していることから、ここでは可飽和吸収レベルの上昇が要因と推測される。また、活性層の温度がT
1のときの動作電流範囲の上限値をI
max-1、活性層の温度がT
2のときの動作電流範囲の上限値をI
max-2としたとき、
I
max-2>I
max-1
を満足する。更には、活性層の温度がT
1のときに出射される最大光出力をP
1、活性層の温度がT
2(但し、T
2>T
1)のときに出射される最大光出力をP
2としたとき、
P
2>P
1
を満足する。また、発光領域に流す電流を、発光領域の単位面積当たり1×10
2アンペア/cm
2乃至1×10
5アンペア/cm
2(具体的には、例えば、1×10
4アンペア/cm
2)とすることが好ましい。
【0069】
このように、実施例1の半導体発光素子にあっては、ΔI
2>ΔI
1の関係を満足するので、活性層の温度を高くするほど、動作電流範囲が広くなり、その結果、光出力の増加を図ることができるし、P
2>P
1を満足するので、活性層の温度を高くするほど、最大光出力が高くなり、光出力の増加を図ることができるし、動作時(光出射時)の活性層の温度を50゜C以上、70゜C未満とすることで、光出力の増加を図ることができる。
【0070】
前述したとおり、ヒートシンク101によって何らの温度制御を行わなくとも、室温25゜Cにおいて、ヒートシンク101の温度は55゜Cとなった。但し、
図5に示すように、活性層の温度は55゜Cよりも高いことが望ましい場合があるので、このような場合には、ヒートシンク101によって活性層の温度を制御する、具体的には、ヒートシンク101を加熱することによって活性層(第3化合物半導体層40)の温度を制御(加熱)することが好ましい。
【0071】
以下、
図12A、
図12B、
図13A、
図13B、
図14を参照して、実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例3におけるモード同期半導体レーザ素子の製造方法を説明する。尚、
図12A、
図12B、
図13A、
図13Bは、基板等をYZ平面にて切断したときの模式的な一部断面図であり、
図14は、基板等をXZ平面にて切断したときの模式的な一部端面図である。
【0072】
[工程−100]
先ず、基体上、具体的には、n型GaN基板21の(0001)面上に、周知のMOCVD法に基づき、第1導電型(n型導電型)を有し、GaN系化合物半導体から成る第1化合物半導体層30、GaN系化合物半導体から成る発光領域(利得領域)41及び可飽和吸収領域42を構成する第3化合物半導体層(活性層)40、並びに、第1導電型と異なる第2導電型(p型導電型)を有し、GaN系化合物半導体から成る第2化合物半導体層50が、順次、積層されて成る積層構造体を形成する(
図12A参照)。
【0073】
[工程−110]
その後、第2化合物半導体層50上に帯状の第2電極62を形成する。具体的には、真空蒸着法に基づきPd層63を全面に成膜した後(
図12B参照)、Pd層63上に、フォトリソグラフィ技術に基づき帯状のエッチング用レジスト層を形成する。そして、王水を用いて、エッチング用レジスト層に覆われていないPd層63を除去した後、エッチング用レジスト層を除去する。こうして、
図13Aに示す構造を得ることができる。尚、リフトオフ法に基づき、第2化合物半導体層50上に帯状の第2電極62を形成してもよい。
【0074】
[工程−120]
次いで、第2電極62をエッチング用マスクとして、少なくとも第2化合物半導体層50の一部分をエッチングして(具体的には、第2化合物半導体層50の一部分をエッチングして)、リッジストライプ構造を形成する。具体的には、Cl
2ガスを用いたRIE法に基づき、第2電極62をエッチング用マスクとして用いて、第2化合物半導体層50の一部分をエッチングする。こうして、
図13Bに示す構造を得ることができる。このように、帯状にパターニングされた第2電極62をエッチング用マスクとして用いてセルフアライン方式にてリッジストライプ構造を形成するので、第2電極62とリッジストライプ構造との間に合わせずれが生じることがない。
【0075】
[工程−130]
その後、分離溝を第2電極62に形成するためのレジスト層64を形成する(
図14参照)。尚、参照番号65は、分離溝を形成するために、レジスト層64に設けられた開口部である。次いで、レジスト層64をウエットエッチング用マスクとして、第2電極62に分離溝62Cをウエットエッチング法にて形成し、以て、第2電極62を第1部分62Aと第2部分62Bとに分離溝62Cによって分離する。具体的には、王水をエッチング液として用い、王水に約10秒、全体を浸漬することで、第2電極62に分離溝62Cを形成する。そして、その後、レジスト層64を除去する。こうして、
図2及び
図3に示す構造を得ることができる。このように、ドライエッチング法と異なり、ウエットエッチング法を採用することで、第2化合物半導体層50の光学的、電気的特性に劣化が生じることがない。それ故、モード同期半導体レーザ素子の発光特性に劣化が生じることがない。尚、ドライエッチング法を採用した場合、第2化合物半導体層50の内部損失α
iが増加し、閾値電圧が上昇したり、光出力の低下を招く虞がある。ここで、第2電極62のエッチングレートをER
0、積層構造体のエッチングレートをER
1としたとき、
ER
0/ER
1≒1×10
2
である。このように、第2電極62と第2化合物半導体層50との間に高いエッチング選択比が存在するが故に、積層構造体をエッチングすること無く(あるいは、エッチングされても僅かである)、第2電極62を確実にエッチングすることができる。尚、ER
0/ER
1≧1×10、好ましくは、ER
0/ER
1≧1×10
2を満足することが望ましい。
【0076】
第2電極を、厚さ20nmのパラジウム(Pd)から成る下層金属層と、厚さ200nmのニッケル(Ni)から成る上層金属層の積層構造としてもよい。ここで、王水によるウエットエッチングにあっては、ニッケルのエッチングレートは、パラジウムのエッチングレートの約1.25倍である。
【0077】
[工程−140]
その後、第1電極61の形成、基板21の劈開等を行い、更に、パッケージ化を行うことで、半導体レーザ素子10を作製することができる。
【0078】
製作した半導体レーザ素子10の第2電極62の第1部分62Aと第2部分62Bとの間の電気抵抗値を4端子法にて測定した結果、分離溝62Cの幅が20μmのとき、第2電極62の第1部分62Aと第2部分62Bとの間の電気抵抗値は15kΩであった。また、製作した半導体レーザ素子10において、第2電極62の第1部分62Aから発光領域41を経由して第1電極61に直流電流を流して順バイアス状態とし、第1電極61と第2電極62の第2部分62Bとの間に逆バイアス電圧V
saを印加することによって可飽和吸収領域42に電界を加えることで、セルフ・パルセーション動作させることができた。即ち、第2電極62の第1部分62Aと第2部分62Bとの間の電気抵抗値は、第2電極62と第1電極61との間の電気抵抗値の10倍以上であり、あるいは又、1×10
2Ω以上である。従って、第2電極62の第1部分62Aから第2部分62Bへの漏れ電流の流れを確実に抑制することができる結果、発光領域41を順バイアス状態とし、しかも、可飽和吸収領域42を確実に逆バイアス状態とすることができ、確実にシングルモードのセルフ・パルセーション動作を生じさせることができた。
【実施例2】
【0079】
実施例2は、実施例1の変形であり、
図1Bに半導体発光素子の概念図を示すように、半導体レーザ素子10から出射されたレーザ光を増幅する、III−V族窒化物系半導体層の積層構造体から成る半導体光増幅器(SOA)200が備えられている。半導体光増幅器200は、「Master Oscillator Power Amplifier,MOPA」と呼ばれる方式によってレーザ光を増幅する。ここで、半導体光増幅器とは、光信号を電気信号に変換せず、直接光の状態で増幅するものであり、共振器効果を極力排除したレーザ構造を有し、半導体光増幅器の光利得に基づき入射光を増幅する。半導体光増幅器は周知の半導体光増幅器から成る。
【0080】
具体的には、半導体レーザ素子(モード同期半導体レーザ素子)10から出射されたレーザ光は、コリメート手段(レンズ11)、光学部材(回折格子)12、反射鏡13、光アイソレータ14、集光手段(レンズ)15Aを通過し、半導体光増幅器200に入射する。そして、半導体光増幅器200から出力されたレーザ光は、集光手段(レンズ)15Bを経由して系外に出力される。
【0081】
半導体光増幅器200は、
GaN系化合物半導体から成り、第1導電型を有する第1化合物半導体層30、
GaN系化合物半導体から成る第3化合物半導体層(活性層)40、及び、
GaN系化合物半導体から成り、第1導電型と異なる第2導電型を有する第2化合物半導体層50、
が、順次、基体上に積層されて成る積層構造体、
第2化合物半導体層50上に形成された第2電極62、並びに、
第1化合物半導体層30に電気的に接続された第1電極61、
を備えている。尚、第1化合物半導体層30は、基板(具体的には、基板21)上に形成されている。第2電極62から第1電極61へと順バイアス電圧が印加される。半導体光増幅器200において、レーザ光は基本的に一方向にのみ導波される。光入射端面から半導体光増幅器200に入射したレーザ光は、半導体光増幅器200の内部で光増幅され、反対側の光出射端面から出力され、レンズ15Bを介して、外部に出力される。
【0082】
半導体光増幅器200の構成、構造は、第2電極が分割されていない点、及び、リッジストライプ構造は、湾曲しておらず、代わりに、光入射端面(第1端面)から光出射端面(第2端面)に向かって、その幅が広くなっている点を除き、実質的に、半導体レーザ素子10と同じ構成、構造を有する。具体的には、半導体光増幅器200は、デバイス長3.0mm、フレア幅15μmのテーパー型の半導体光増幅器である。以上の点を除き、実質的に、実施例1において半導体レーザ素子の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【実施例3】
【0083】
実施例3は、実施例1〜実施例2の変形であり、具体的には、実施例1において説明したモード同期半導体レーザ素子の変形であり、第3の構成のモード同期半導体レーザ素子に関する。実施例1においては、半導体レーザ素子10を、極性を有する結晶面であるn型GaN基板21の(0001)面、C面上に設けた。ところで、このような基板を用いた場合、第3化合物半導体層(活性層)40にピエゾ分極及び自発分極に起因した内部電界によるQCSE効果(量子閉じ込めシュタルク効果)によって、電気的に可飽和吸収が制御し難くなる場合がある。即ち、場合によっては、セルフ・パルセーション動作及びモード同期動作を得るために第1電極に流す直流電流の値及び可飽和吸収領域に印加する逆バイアス電圧の値を高くする必要が生じたり、メインパルスに付随したサブパルス成分が発生したり、外部信号と光パルスとの間での同期が取り難くなることが判った。
【0084】
そして、このような現象の発生を防止するためには、第3化合物半導体層(活性層)40を構成する井戸層の厚さの最適化、第3化合物半導体層40を構成する障壁層における不純物ドーピング濃度の最適化を図ることが好ましいことが判明した。
【0085】
具体的には、InGaN量子井戸活性層を構成する井戸層の厚さを、1nm以上、10.0nm以下、好ましくは、1nm以上、8nm以下とすることが望ましい。このように井戸層の厚さを薄くすることによって、ピエゾ分極及び自発分極の影響を低減させることができる。また、障壁層の不純物ドーピング濃度を、2×10
18cm
-3以上、1×10
20cm
-3以下、好ましくは、1×10
19cm
-3以上、1×10
20cm
-3以下とすることが望ましい。ここで、不純物として、シリコン(Si)あるいは酸素(O)を挙げることができる。そして、障壁層の不純物ドーピング濃度をこのような濃度とすることで、活性層のキャリアの増加を図ることができる結果、ピエゾ分極及び自発分極の影響を低減させることができる。
【0086】
実施例3においては、表1に示した層構成における障壁層と井戸層から成るInGaN量子井戸活性層から構成された第3化合物半導体層(活性層)40の構成を以下の表2のとおりとした。また、参考例3のモード同期半導体レーザ素子においては、表1に示した層構成における第3化合物半導体層40の構成を以下の表2のとおりとした。
【0087】
[表2]
実施例3 参考例3
井戸層 8nm 10.5nm
障壁層 12nm 14nm
井戸層の不純物ドーピング濃度 ノン・ドープ ノン・ドープ
障壁層の不純物ドーピング濃度 Si:2×10
18cm
-3 ノン・ドープ
【0088】
実施例3においては井戸層の厚さが8nmであり、また、障壁層にはSiが2×10
18cm
-3、ドーピングされており、活性層内のQCSE効果が緩和されている。一方、参考例3においては井戸層の厚さが10.5nmであり、また、障壁層には不純物がドーピングされていない。
【0089】
モード同期は、実施例1と同様に、発光領域に印加する直流電流と可飽和吸収領域に印加する逆バイアス電圧V
saとによって決定される。実施例3及び参考例3の注入電流と光出力の関係(L−I特性)の逆バイアス電圧依存性を測定した。その結果、参考例3にあっては、逆バイアス電圧V
saを増加していくと、レーザ発振が開始する閾値電流が次第に上昇し、更には、実施例3に比べて、低い逆バイアス電圧V
saで変化が生じていることが判った。これは、実施例3の活性層の方が、逆バイアス電圧V
saにより可飽和吸収の効果が電気的に制御されていることを示唆している。但し、参考例3にあっても、可飽和吸収領域に逆バイアスを印加した状態でシングルモード(単一基本横モード)のセルフ・パルセーション動作及びモード同期(モードロック)動作が確認されており、参考例3も本開示に包含されることは云うまでもない。
【0090】
以上、本開示を好ましい実施例に基づき説明したが、本開示はこれらの実施例に限定するものではない。実施例において説明した半導体発光素子組立体、半導体レーザ素子、モード同期半導体レーザ素子、半導体光増幅器の構成、構造の構成は例示であり、適宜、変更することができる。また、実施例においては、種々の値を示したが、これらも例示であり、例えば、使用する半導体レーザ素子、半導体光増幅器の仕様が変われば、変わることは当然である。例えば、半導体レーザ素子や半導体光増幅器の軸線とリッジストライプ構造の軸線とは、所定の角度で交わっている構成としてもよいし、リッジストライプ構造の平面形状をテーパー状としてもよい。
【0091】
実施例1における半導体発光素子組立体の変形例を
図7A、
図7B、
図8A、
図8B、
図8Cに示す。集光型の外部共振器構造を有する
図7Aに示す半導体発光素子組立体、あるいは、コリメート型の外部共振器構造を有する
図7Bに示す半導体発光素子組立体において、光学部材12Aは、半透過鏡から構成されている。半導体レーザ素子10から出射されたレーザ光は、光学部材(半透過鏡)12Aに衝突し、一部は半導体レーザ素子10に戻される。一方、残部は、光学部材(半透過鏡)12Aを通過し、場合によっては、集光手段(レンズ)16を通過し、光アイソレータ14を通過して外部に出射される。集光型の外部共振器構造を有する
図8Aに示す半導体発光素子組立体、あるいは、コリメート型の外部共振器構造を有する
図8Bに示す半導体発光素子組立体にあっては、半導体レーザ素子10の第2端面と外部鏡(反射鏡)から成る光学部材12Bとで外部共振器構造が構成され、半導体レーザ素子10から光ビームを取り出す。第2端面には低反射コート層(AR)が形成されている。あるいは又、
図8Cに示すように、半導体レーザ素子をモノリシック型とすることもできる。
【0092】
積層構造体は、複数の機能領域が集積された構造を有する構成とすることができ、この場合、複数の機能領域の内の少なくとも1つは可飽和吸収領域から成る構成とすることができる。機能領域として、可飽和吸収領域の他、例えば、利得領域、可飽和吸収領域、位相制御領域、分布帰還領域、分布
ブラッグ反射領域等を挙げることができる。
【0093】
発光領域41や可飽和吸収領域42の数は1に限定されない。1つの第2電極の第1部分62Aと2つの第2電極の第2部分62B
1,62B
2とが設けられたモード同期半導体レーザ素子(マルチセクション型(多電極型)の半導体レーザ素子)の模式的な端面図を
図9に示す。
図9に示すモード同期半導体レーザ素子にあっては、第1部分62Aの一端が、一方の分離溝62C
1を挟んで、一方の第2部分62B
1と対向し、第1部分62Aの他端が、他方の分離溝62C
2を挟んで、他方の第2部分62B
2と対向している。そして、1つの発光領域41が、2つの可飽和吸収領域42
1,42
2によって挟まれている。あるいは又、2つの第2電極の第1部分62A
1,62A
2と1つの第2電極の第2部分62Bとが設けられたモード同期半導体レーザ素子の模式的な端面図を
図10に示す。このモード同期半導体レーザ素子にあっては、第2部分62Bの端部が、一方の分離溝62C
1を挟んで、一方の第1部分62A
1と対向し、第2部分62Bの他端が、他方の分離溝62C
2を挟んで、他方の第1部分62A
2と対向している。そして、1つの可飽和吸収領域42が、2つの発光領域41
1,41
2によって挟まれている。
【0094】
半導体レーザ素子を、斜め導波路を有する斜めリッジストライプ型の分離閉じ込めヘテロ構造の半導体レーザ素子とすることもできる。このような半導体レーザ素子におけるリッジストライプ構造55’を上方から眺めた模式図を
図11に示す。このモード同期半導体レーザ素子にあっては、直線状の2つのリッジストライプ構造が組み合わされた構造を有し、2つのリッジストライプ構造の交差する角度θの値は、例えば、
0<θ≦10(度)
好ましくは、
0<θ≦6(度)
とすることが望ましい。斜めリッジストライプ型を採用することで、無反射コートをされた第2端面の反射率を、より0%の理想値に近づけることができ、その結果、半導体レーザ素子内で周回してしまうレーザ光の発生を防ぐことができ、主たるレーザ光に付随する副次的なレーザ光の生成を抑制できるといった利点を得ることができる。
【0095】
実施例においては、半導体レーザ素子や半導体光増幅器を、n型GaN基板の極性面であるC面,{0001}面上に設けた。ところで、このような場合、第3化合物半導体層(活性層)にピエゾ分極及び自発分極に起因した内部電界によるQCSE効果(量子閉じ込めシュタルク効果)によって、電気的に可飽和吸収が制御し難くなる場合がある。即ち、場合によっては、セルフ・パルセーション動作及びモード同期動作を得るために第1電極に流す直流電流の値及び可飽和吸収領域に印加する逆バイアス電圧の値を高くする必要が生じたり、メインパルスに付随したサブパルス成分が発生したり、外部信号と光パルスとの間での同期が取り難くなることがある。このような現象の発生を抑制するためには、{11−20}面であるA面、{1−100}面であるM面、{1−102}面といった無極性面上、あるいは又、{11−24}面や{11−22}面を含む{11−2n}面、{10−11}面、{10−12}面といった半極性面上に、半導体レーザ素子や半導体光増幅器を設ければよい。これによって、半導体レーザ素子や半導体光増幅器の第3化合物半導体層(活性層)にたとえピエゾ分極及び自発分極が生じた場合であっても、第3化合物半導体層の厚さ方向にピエゾ分極が生じることは無く、第3化合物半導体層の厚さ方向とは略直角の方向にピエゾ分極が生じるので、ピエゾ分極及び自発分極に起因した悪影響を排除することができる。{11−2n}面とは、ほぼC面に対して40度を成す無極性面を意味する。また、無極性面上あるいは半極性面上に半導体レーザ素子10を設ける場合、実施例3にて説明したような、井戸層の厚さの制限(1nm以上、10nm以下)及び障壁層の不純物ドーピング濃度の制限(2×10
18cm
-3以上、1×10
20cm
-3以下)を無くすことが可能である。
【0096】
尚、本開示は、以下のような構成を取ることもできる。
[A01]《半導体発光素子組立体:第1の態様》
第1化合物半導体層、活性層及び第2化合物半導体層が積層された積層構造体を有する半導体発光素子を備えており、
活性層の温度がT
1のときの動作電流範囲をΔI
1、活性層の温度がT
2(但し、T
2>T
1)のときの動作電流範囲をΔI
2としたとき、
ΔI
2>ΔI
1
を満足する半導体発光素子組立体。
[A02]光パルスの繰り返し周波数が光学系の距離で決定される基本周波数から基本周波数の2倍の周波数に変化するときの動作電流が、動作電流範囲の上限値である[A01]に記載の半導体発光素子組立体。
[A03]活性層の温度がT
1のときの動作電流範囲の上限値をI
max-1、活性層の温度がT
2のときの動作電流範囲の上限値をI
max-2としたとき、
I
max-2>I
max-1
を満足する[A01]又は[A02]に記載の半導体発光素子組立体。
[A04]《半導体発光素子組立体:第2の態様》
第1化合物半導体層、活性層及び第2化合物半導体層が積層された積層構造体を有する半導体発光素子を備えており、
活性層の温度がT
1のときに出射される最大光出力をP
1、活性層の温度がT
2(但し、T
2>T
1)のときに出射される最大光出力をP
2としたとき、
P
2>P
1
を満足する半導体発光素子組立体。
[A05]ヒートシンク、及び、サブマウントを更に備えており、
ヒートシンク、サブマウント及び半導体発光素子が、順次、積層されている[A01]乃至[A04]のいずれか1項に記載の半導体発光素子組立体。
[A06]サブマウントは、AlN、Si、SiC、Cu、W、Mo、Al、ダイヤモンド、又は、これらの材料を含む複合材料から成る[A05]に記載の半導体発光素子組立体。
[A07]ヒートシンクによって活性層の温度を制御する[A05]又は[A06]に記載の半導体発光素子組立体。
[A08]ヒートシンクを加熱することによって活性層の温度を制御する[A07]に記載の半導体発光素子組立体。
[A09]積層構造体は、共振器方向に発光領域と可飽和吸収領域とが並置された構造を有する[A01]乃至[A08]のいずれか1項に記載の半導体発光素子組立体。
[A10]可飽和吸収領域は、共振器方向の積層構造体の端部領域に配置されている[A09]に記載の半導体発光素子組立体。
[A11]発光領域に流す電流を、発光領域の単位面積当たり1×10
2アンペア/cm
2乃至1×10
5アンペア/cm
2とする[A09]又は[A10]に記載の半導体発光素子組立体。
[A12]積層構造体は複数の機能領域が集積された構造を有する[A01]乃至[A08]のいずれか1項に記載の半導体発光素子組立体。
[A13]複数の機能領域の内の少なくとも1つは可飽和吸収領域から成る[A12]に記載の半導体発光素子組立体。
[B01]《半導体発光素子:第1の態様》
第1化合物半導体層、活性層及び第2化合物半導体層が積層された積層構造体を有し、
活性層の温度がT
1のときの動作電流範囲をΔI
1、活性層の温度がT
2(但し、T
2>T
1)のときの動作電流範囲をΔI
2としたとき、
ΔI
2>ΔI
1
を満足する半導体発光素子。
[B02]光パルスの繰り返し周波数が光学系の距離で決定される基本周波数から基本周波数の2倍の周波数に変化するときの動作電流が、動作電流範囲の上限値である[B01]に記載の半導体発光素子。
[B03]活性層の温度がT
1のときの動作電流範囲の上限値をI
max-1、活性層の温度がT
2のときの動作電流範囲の上限値をI
max-2としたとき、
I
max-2>I
max-1
を満足する[B01]又は[B02]に記載の半導体発光素子。
[B04]《半導体発光素子:第2の態様》
第1化合物半導体層、活性層及び第2化合物半導体層が積層された積層構造体を有し、
活性層の温度がT
1のときに出射される最大光出力をP
1、活性層の温度がT
2(但し、T
2>T
1)のときに出射される最大光出力をP
2としたとき、
P
2>P
1
を満足する半導体発光素子。
[B05]積層構造体は、共振器方向に発光領域と可飽和吸収領域とが並置された構造を有する[B01]乃至[B04]のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
[B06]可飽和吸収領域は、共振器方向の積層構造体の端部領域に配置されている[B05]に記載の半導体発光素子。
[B07]発光領域に流す電流を、発光領域の単位面積当たり1×10
2アンペア/cm
2乃至1×10
5アンペア/cm
2とする[B05]又は[B06]に記載の半導体発光素子。
[B08]積層構造体は複数の機能領域が集積された構造を有する[B01]乃至[B04]のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
[B09]複数の機能領域の内の少なくとも1つは可飽和吸収領域から成る[B08]に記載の半導体発光素子。