特許第6934137号(P6934137)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 李耀輝の特許一覧 ▶ 蘇文淵の特許一覧

特許6934137暗色の布帛、もしくはエンジニアリングプラスチックに用いるカラーマスターバッチ組成物及びその製品
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6934137
(24)【登録日】2021年8月25日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】暗色の布帛、もしくはエンジニアリングプラスチックに用いるカラーマスターバッチ組成物及びその製品
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/22 20060101AFI20210906BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20210906BHJP
   D01F 6/92 20060101ALI20210906BHJP
【FI】
   C08J3/22CFD
   C09D17/00
   D01F6/92 303C
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-565998(P2019-565998)
(86)(22)【出願日】2018年2月13日
(65)【公表番号】特表2020-511585(P2020-511585A)
(43)【公表日】2020年4月16日
(86)【国際出願番号】IB2018050864
(87)【国際公開番号】WO2018154409
(87)【国際公開日】20180830
【審査請求日】2019年8月19日
(31)【優先権主張番号】106105677
(32)【優先日】2017年2月21日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】519300840
【氏名又は名称】李耀輝
(73)【特許権者】
【識別番号】519300851
【氏名又は名称】蘇文淵
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】蘇文淵
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−511793(JP,A)
【文献】 特開2014−169432(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0251395(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103865294(CN,A)
【文献】 特表2008−542489(JP,A)
【文献】 特表2014−531484(JP,A)
【文献】 特開平05−293434(JP,A)
【文献】 特開2002−317054(JP,A)
【文献】 特開平07−188577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00−3/28;99/00
C09C 1/00− 3/12
C09D 1/00−10/00
C09D 15/00−17/00
C09D 101/00−201/10
D01F 1/00− 6/96
D01F 9/00− 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリエステルと、
顔料イエロー147か、顔料イエロー181か、顔料イエロー183か、染料ブラウン53か、もしくはこれらの組合せを含むグループから選択する黄色着色成分と、
顔料レッド122か、顔料レッド144か、顔料レッド202か、顔料レッド214か、もしくはこれらの組合せを含むグループから選択する赤色着色料成分と、
顔料ブルー60か、染料ブルー67か、もしくはこれらの組合せを含むグループから選択する青色着色成分と、を含み、
これら着色料がカラーインデックスの一般名称に基づいて表示されるカラーマスターバッチ組成物であって、
前記カラーマスターバッチ組成物の総重量を100wt%とした場合、
該黄色着色料成分の含有量が7wt%〜15wt%の範囲であって、
該赤色着色料成分の含有量が8wt%〜15wt%の範囲であって、
該青色着色料成分の含有量が5wt%〜15wt%の範囲である
ことを特徴とするカラーマスターバッチ組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のカラーマスターバッチ組成物において、
前記カラーマスターバッチ組成物が酸化チタンを含み、該カラーマスターバッチ組成物の総重量を100wt%とした場合、該酸化チタンの含有量の範囲が0wt%より大きく、5wt%までとする
ことを特徴とするカラーマスターバッチ組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のカラーマスターバッチ組成物において、
前記熱可塑性ポリエステルが、ポリエチレンテレフタラートか、ポリブチレンテレフタレートか、官能基化したポリエチレンテレフタラート誘導体か、官能基化したポリブチレンテレフタレート誘導体か、もしくはこれらの共重合体か、又はこれらの混合物を含んでなるグループから選択される
ことを特徴とするカラーマスターバッチ組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のカラーマスターバッチ組成物において、
前記カラーマスターバッチ組成物の総重量を100wt%とした場合、該黄色着色料成分は含有量が7wt%〜10wt%の範囲の染料ブラウン53である
ことを特徴とするカラーマスターバッチ組成物。
【請求項5】
請求項1に記載のカラーマスターバッチ組成物において、
前記カラーマスターバッチ組成物の総重量を100wt%とした場合、該青色着色料成分は含有量が5wt%〜10wt%の範囲の染料ブルー67である
ことを特徴とするカラーマスターバッチ組成物。
【請求項6】
前記請求項1に記載するカラーマスターバッチ組成物を粒状にカットし、それを熱可塑性ポリエステルを主要成分とした基材に加えて展色を行なって得られることを特徴とする粒状樹脂。
【請求項7】
請求項6に記載の粒状樹脂において、
前記粒状樹脂の総重量を100wt%とした場合、該カラーマスターバッチ組成物の含有量が1wt%〜10wt%の範囲であって、暗色の布帛か、またはエンジニアリングプラスチックに用いる
ことを特徴とする粒状樹脂。
【請求項8】
前記請求項6に記載する粒状樹脂から285℃〜3300℃の温度条件で糸を抽出することで得られることを特徴とする繊維。
【請求項9】
前記請求項6に記載する粒状樹脂をモールド成型して得ることを特徴とするプラスチック
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カラーマスターバッチ組成物(color masterbatch compositionに関し、特に布帛、もしくはエンジニアリングプラスチック(engineering plastics)にカラーマスターバッチ組成物及びその製品に関する。
【背景技術】
【0002】
暗色の布帛は、被服、カーテン、ソファーなどに広く用いられており、暗色のエンジニアリングプラスチックは、電器及び自動車部品などに広く応用されていて、好ましい遮光性を具え、かつ汚濁を防ぐ効果を具える。一般に暗色の布帛、もしくはエンジニアリングプラスチックは、着色の前工程において原料に、所得が容易でかつ顔料となるカーボンブラック(carbon black)を添加する。但し、このため生産時に赤外線を容易に吸収し、製品の温度が急激に上昇するという問題を招く。
【0003】
台湾特許第1509038号には、赤外線による温度上昇を抑える顔料組成物が開示されている。係る顔料組成物は、特定の顔料を複数選択し、これらを組み合わせることによって、赤外線を吸収することから起きる温度の上昇を抑える効果を得る。然しながら、上述する特許について、本発明者が注意深く検討したところ、開示される顔料組成物は、ほとんどが熱可塑性ポリエステル(themoplastic poly esters)によって形成されたフィルムであって、布帛、もしくはエンジニアリングプラスチックの加工に必要とする工程(例えば285〜300℃の温度条件で加熱する)を経ると、顔料組成物本来の色を維持することができなくなる。よって、製品を形成してから再度染色工程を進行させなければ暗色の布帛(織布工程後に着色)、又はエンジニアリングプラスチックが得られない。したがって、加工工程が複雑になるとともに、排水の汚染問題も深刻度が増す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】台湾特許第1509038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、加工の工程が複雑になることなく、効率よく赤外線による温度上昇を緩和、又は低減させる暗色の布帛、もしくはエンジニアリングプラスチックに用いるカラーマスターバッチ組成物及びその製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明によるカラーマスターバッチ組成物は、熱可塑性ポリエステルと、 顔料イエロー147か、顔料イエロー181か、顔料イエロー183か、染料ブラウン53か。もしくはこれらの組合せを含むグループから選択する黄色着色成分と、顔料レッド122か、顔料レッド144か、顔料レッド202か、顔料レッド214か、もしくはこれらの組合せを含むグループから選択する赤色着色料成分と、顔料ブルー60か、染料ブルー67か、もしくはこれらの組合せを含むグループから選択する青色着色成分と、を含む。これら着色料がカラーインデックスの一般名称に基づいて表示される。
【0007】
また、この発明は粒状樹脂を提供する。即ち、前記カラーマスターバッチ組成物は、熱可塑性ポリエステルを主要成分とした基材において展色(coloring)を行なって得られる。
【0008】
また、この発明は、前記粒状樹脂から抽出して得る繊維を提供する。
【0009】
また、この発明は前記粒状樹脂をモールド成型して得るプラスチックを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明の特徴と長所を説明するために、上述する課題を解決する手段について具体的な実施例を挙げて以下に詳述する。
【0011】
この発明の説明に用いる全ての技術用語、又は科学に係る学術用語は、定義がなされていない限り、当業者の技術者が等しくその意義を理解できるものである。また、この発明が包含される技術分野を熟知した者であれば、本明細書の記述に近似した、もしくは均等の効果を有する方法及び材料を認知している。これらは、いずれもこの発明に応用して実施できるものである。よって、当然のことながら、この発明は、本明細書に記載する方法と材料に限定されるものではない。
【0012】
この発明に開示する内容は、一種のカラーマスターバッチ組成物の提供であって、該カラーマスターバッチ組成物は、熱可塑性ポリエステルと、黄色着色料成分と、赤色着色料成分と、青色着色料成分とを含む。該黄色着色料成分は、顔料イエロー147か、顔料イエロー181か、顔料イエロー183か、染料ブラウン53か。もしくはこれらの組合せから選択する。該赤色着色料成分は、顔料レッド122か、顔料レッド144か、顔料レッド202か、顔料レッド214か、もしくはこれらの組合せから選択する。該青色着色成分は、顔料ブルー60か、染料ブルー67か、もしくはこれらの組合せから選択する。上述する着色料は、カラーインデックスの一般名称に基づいて表示する。
【0013】
一部の具体的な例において、前記カラーマスターバッチ組成物には、さらに酸化チタンが含まれる。前記カラーマスターバッチ組成物の総重量を100wt%とした場合、酸化チタンの含有量の範囲が0wt%より大きく、5wt%までとする。
【0014】
この発明の開示内容に適用する熱可塑性ポリエステルは、ポリエチレンテレフタラート(PET)か、ポリブチレンテレフタレート(PBT)か、官能基化したポリエチレンテレフタラート誘導体(functionalized derivatives of PET)か、官能基化したポリブチレンテレフタレート誘導体(functionalized derivatives of PBT)か、もしくはこれらの共重合体(copolymers)か、又はこれらの混合物(blends)を含む。但し、これらに限定しない。
【0015】
この発明の開示内容に基づけば、前記カラーマスターバッチ組成物の総重量を100wt%とした場合、該赤色着色料成分の含有量は8wt%〜15wt%の範囲とする。また、前記カラーマスターバッチ組成物の総重量を100wt%とした場合、該黄色着色料成分の含有量は7wt%〜15wt%の範囲とする。また、前記カラーマスターバッチ組成物の総重量を100wt%とした場合、該青色着色料成分の含有量は5wt%〜15wt%の範囲とする。
【0016】
一部の具体的な例において、前記カラーマスターバッチ組成物の総重量を100wt%とした場合、該黄色着色料成分は含有量が7wt%〜10wt%の範囲の染料ブラウン53である。
【0017】
一部の具体的な例において、前記青色着色料成分は含有量が5wt%〜10wt%の範囲の染料ブルー67である。
【0018】
また、この発明の開示内容によれば、前記カラーマスターバッチ組成物は、例えば赤外線吸収剤か、抗酸化剤か、難燃剤か、もしくはこれらの組合である既存の添加剤をさらに含む。
【0019】
また、この発明の開示内容によれば、一種の粒状樹脂を提供する。該粒状樹脂は、前記のカラーマスターバッチ組成物のように、熱可塑性ポリエステルを主要成分とした基材において展色を行なって得る。さらに、この発明の開示内容によれば、粒状樹脂の製造方法をも提供する。即ち、前記するカラーマスターバッチ組成物のように、熱可塑性ポリエステルを主要成分とした基材において展色する工程を含む。一部の具体的な例において、前記粒状樹脂の総重量を100wt%とした場合、該カラーマスターバッチ組成物の含有量を1wt%〜10wt%の範囲とする。
【0020】
この発明の開示内容によれば、前記基材における熱可塑性ポリエステルは、前記カラーマスターバッチ組成物における熱可塑性ポリエステルと同一であるか、又は異なる。
【0021】
また、本発明者は、上述する粒状樹脂から得られる加工製品(例えば繊維、もしくはプラスチック)が、熱吸収を緩和するか、低下させる効果を具え、かつ必要とする加工過程において、依然として本来の色を維持することを発見した。これは布帛、又はエンジニアリングプラスチックへの応用に有利であって、特に暗色の布帛、又はエンジニアリングプラスチックに対して有用である。
【0022】
したがって、この発明の開示内容によれば、一種の繊維を提供する。該繊維は、前記粒状樹脂から糸を抽出して得られる。また、この発明の開示内容は、さらに繊維の製造方法を提供する。該繊維の製造方法は、前記の粒状樹脂からの糸の抽出を含む。この抽出は、当該技術分野で常用される操作の条件に基づいて行う。例えば、温度条件を285℃から300℃とする。
【0023】
また、この発明の開示内容は、一種のプラスチックを提供する。該プラスチックは、前記の粒状樹脂をモールド成型(molding)して得る。さらに、この発明の開示内容は、プラスチックの製造方法を提供する。該プラスチックの製造方法は、前記の粒状樹脂に対するモールド成型を含む。この発明の開示内容によれば、該プラスチックの実例としてフィルム、及びプラスチックフィルムを含むが、但しこれらに限定しない。
【0024】
ここにおいて用いる技術用語について、「モールド成型」とは、型(mold)、又は鋳型(matrix)を使用して原材料(raw material)を成型する製造方法を指す。この発明の開示内容に適用されるモールド成型方法には、射出成型(injection molding)、押出し成型(extrusion molding)、圧縮成形(compression molding)、回転成型(rotational molding)、もしくはこれらに類似する方法を含む、但し、これらに限定しない。これらモールド成型は、当該技術分野で常用される操作の条件に基づいて行う。例えば、温度条件を285℃から300℃とする。
【0025】
この発明の開示内容について、以下のとおり実施例を挙げて、更に一歩進んで説明する。但し、記載する実施例は例示して説明するためのものに過ぎず、実施例の記載を以ってこの発明の実施の範囲を限定すると解釈すべきではなく、この点について理解すべきである。
【実施例1】
【0026】
第1の実施例は、以下に掲げる表1に記載するA1〜A32のカラーマスターバッチ組成物に関し、表1に記載する含有量の比例に基づいて着色料を粉砕した熱可塑性ポリエステルの粒の中に投入して混合する。さらに、240℃〜280℃の温度条件で、ツインスクリュー押出し機にて押し出して混合して、以下の表1に記載するA1からA32のカラーマスターバッチ組成物を得る、
【0027】
【表1】






























【実施例2】
【0028】
第2の実施例は、以下に掲げる表2に記載するB1〜B32のカラーマスターバッチ組成物に関し、表2に記載する含有量の比例に基づいて着色料を粉砕した熱可塑性ポリエステルの粒の中に投入して混合する(合計95wt%)。さらに、5wt%の酸化チタンを添加して、240℃〜280℃の温度条件で、ツインスクリュー押出し機にて押し出して混合して、以下の表2に記載するA1〜A32のカラーマスターバッチ組成物を得る。
【0029】
【表2】

【実施例3】
【0030】
第3の実施例は、C1〜C32、及びD1〜D32のカラーマスターバッチ組成物を提供する。該C1〜C32、及び該D1〜D32のカラーマスターバッチ組成物の製造のステップは、前記A1〜A32、及びB1〜B32のステップに近似するが、但しPETに代わってPBTを用いてカラーマスターバッチ組成物を得て、これらをC1〜C32、及びD1〜D32のカラーマスターバッチ組成物とする。
【0031】
比較例として、CB、及びZ1〜Z4のカラーマスターバッチ組成物を製造する。
【0032】
該CBのカラーマスターバッチ組成物は、30wt%のカーボンブラックを70wt%の粉砕した熱可塑性ポリエステルの粒に加えて混合し、さらに240℃から280℃の温度条件で、ツインスクリュー押出し機にて押し出して混合して、比較例CBのカラーマスターバッチ組成物を得る。別途、以下に掲げる表3の含有量比例に基づいて着色料を粉砕した熱可塑性ポリエステルの粒に加えて混合する。さらに240℃から280℃の温度条件で、ツインスクリュー押出し機にて押し出して混合して、比較例Z1〜Z4のカラーマスターバッチ組成物を得る。
【0033】
【表3】
【0034】
この発明の第1の応用例としてのPET粒状樹脂について述べる。
【0035】
上述するそれぞれの実施例のA1〜A32、B1〜B32、C1〜C32、及びD1〜D32のカラーマスターバッチ組成物を粒状にカットし、PETに加えて展色し(カラーマスターバッチ組成物が総重量の6wt%を占める)、第1の応用例としてのPET粒状樹脂であるPETA1-A32、PETB1-B32、PETC1-C32、及びPETD1-D32を得る。
【0036】
この発明の第2の応用例としての繊維について述べる。
【0037】
前記第1の応用例のPET粒状樹脂であるPETA1-A32、PETB1-B32、PETC1-C32、及びPETD1-D32から285℃〜3300℃の温度条件で糸を抽出して、第2の応用例としての繊維であるFA1-A32、FB1-B32、Fc1-C32及びFD1-D32を得る(繊維の太さを3DPとする)。該繊維FA1-A32とFB1-B32とは黒色であって、該繊維c1-C32FとFD1-D32とは暗いグレーであって、暗色の布帛の製造に適用できる。
【0038】
第3の応用例としてのフィルムについて述べる。
【0039】
前記第1の応用例のPET粒状樹脂であるPETA1-A32、PETB1-B32、PETC1-C32、及びPETD1-D32を285℃〜3300℃の温度条件で射出して、第3の応用例としてのフィルムであるSA1-A32、SB1-B32、Sc1-C32及びSD1-D32を得る。該フィルムSA1-A32とSB1-B32とは黒色であって、該フィルムSc1-C32とSD1-D32とは暗いグレーであって、暗色のエンジニアリングプラスチックに適用できる。
【0040】
前記比較例に基づいて第1の比較対象であるPET粒状樹脂を得る。
【0041】
前記比較例であるCB及びZ1〜Z4のカラーマスターバッチ組成物を粒状にカットした後、PETに添加して展色し(カラーマスターバッチ組成物が総重量に対して5.5wt占める)、第1の比較対象としてのカーボンブラックPET粒状樹脂であるPETCB、及び第2の比較対象として黒色PET粒状樹脂であるPETZ1-Z4を得る。
【0042】
前記比較例に基づいて第3の比較対象であるPET粒状樹脂を得る。
【0043】
前記第1の比較対象としてのカーボンブラックPET粒状樹脂であるPETCB、及び第2の比較対象として黒色PET粒状樹脂であるPETZ1-Z4から285℃〜300℃の温度条件で糸を抽出して。第3の比較対象である繊維F13、及び繊維FZ1-Z4を得る。繊維FZ1-Z4は、いずれも色褪せして色が薄くなり、褐色状を呈する。このため暗色の布帛の製造に直接応用することができない。
【0044】
前記比較対象について、赤外線を照射して温度上昇の状況を測定した。
【0045】
23℃の温度条件下において、赤外線ランプ(Philips《登録商標》PA38 I Red 150W 125〜130V、波長範囲600〜1400nm)でPET粒状樹脂に対して、距離17cmで55分間照射した。また。赤外線温度計にて5分間隔で前記第1の比較対象としてのカーボンブラックPET粒状樹脂であるPETCB、及び前記第1の応用例としてのPET粒状樹脂の温度を計測した。その結果は、次に掲げる表4の通りである。
【0046】
【表4】
【0047】
表4には、赤外線による温度上昇の状況を測定した結果を開示する。この発明の開示内容に基づくカラーマスターバッチ組成物から得たPET粒状樹脂であるPETA1.A32が赤外線を10分間吸収した時点における温度は、いずれも67℃以下であった。赤外線を55分間吸収した時点における温度は、いずれも74℃以下であった。カーボンブラックを用いて得たカーボンブラックPET粒状樹脂PETCBは、赤外線を10分間吸収した時点において温度が100℃に達していた。これは温度上昇速度が大きく、温度上昇の幅も広いことを示している。また、PET粒状樹脂であるPETB1-B32、PETC1-C32、及びPETD1-D32の温度上昇に係る測定結果は、いずれもPET粒状樹脂であるPETA1-A32の測定結果に近似した。
【0048】
以上の実験の結果は、この発明の開示内容によるカラーマスターバッチ組成物が、赤外線を吸収することによって発生する温度上昇を緩衝し、低減させる効果を有することを表わしている。
【0049】
以上述べたとおり、この発明の開示内容によるカラーマスターバッチ組成物は、別途放熱物資根度を添加したり、又は特性を転換したりすることなく、赤外線を吸収することによって発生する温度上昇を緩衝し、低減させる効果が得られる。さらに、繊維の製造、またはプラスチックの加工工程において、本来の色を維持することができる、よって、暗色の布帛、又はエンジニアリングプラスチックの製造に適用することができ、この発明の目的を確実に達成することができる。
【0050】
以上は、この発明の実施例に過ぎず、この発明の実施の範囲を限定するものではない。即ち、この発明の特許請求の範囲及び明細書の記載に対して均等の効果を有する変更、修正などは、いずれもこの発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。