(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6934169
(24)【登録日】2021年8月25日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】給湯器
(51)【国際特許分類】
F24H 9/02 20060101AFI20210906BHJP
【FI】
F24H9/02 301Z
F24H9/02 301H
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-80732(P2017-80732)
(22)【出願日】2017年4月14日
(65)【公開番号】特開2018-179424(P2018-179424A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】本間 勉
【審査官】
礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−309613(JP,A)
【文献】
実開昭55−010981(JP,U)
【文献】
国際公開第2010/106606(WO,A1)
【文献】
特開2001−129295(JP,A)
【文献】
特開2005−195246(JP,A)
【文献】
特開2011−021852(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第3098342(EP,A1)
【文献】
国際公開第2014/203396(WO,A1)
【文献】
特開平07−218000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00 − 4/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼装置を収容して前面を開口する筐体と、その筐体の前面にネジ止めされるフロントカバーとを備えてなる給湯器であって、
前記フロントカバーに、前記筐体へのネジ止め部を覆う樹脂カバーが着脱可能に装着されて、
前記樹脂カバーは、前記ネジ止め部に隣接して前記フロントカバーに切り起こし形成される被係止部に、前記樹脂カバーの裏面に設けた係止部を前方から弾性係止させることで装着されていることを特徴とする給湯器。
【請求項2】
前記フロントカバーの背面に、前記被係止部の切り起こし形成によって生じる透孔を閉塞するシール部材が貼着されていることを特徴とする請求項1に記載の給湯器。
【請求項3】
前記樹脂カバーに、前記フロントカバーからの取り外しの際に前記係止部の弾性係止を解除させるための操作位置を示す表示部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の給湯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼装置を収容する筐体の前面にフロントカバーを設けてなる給湯器に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯器は、例えば特許文献1に開示されるように、バーナや熱交換器等の燃焼装置が収容され、前面が開口される筐体と、筐体の前面に取り付けられるフロントカバーとを備える。フロントカバーは、周縁に設けた係合部を、筐体の周縁に設けた係合部にネジ止めすることで固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−155773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の給湯器においては、フロントカバーを固定するネジが外部に露出しているため、美観を損なうおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、フロントカバーをネジ止めしても美観に優れる給湯器を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、燃焼装置を収容して前面を開口する筐体と、その筐体の前面にネジ止めされるフロントカバーとを備えてなる給湯器であって、
フロントカバーに、筐体へのネジ止め部を覆う樹脂カバーが着脱可能に装着されて、樹脂カバーは、ネジ止め部に隣接してフロントカバーに切り起こし形成される被係止部に、樹脂カバーの裏面に設けた係止部を前方から弾性係止させることで装着されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、フロントカバーの背面に、被係止部の切り起こし形成によって生じる透孔を閉塞するシール部材が貼着されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の構成において、樹脂カバーに、フロントカバーからの取り外しの際に係止部の弾性係止を解除させるための操作位置を示す表示部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、フロントカバーのネジ止め部を覆う樹脂カバーの採用により、フロントカバーをネジ止めしても美観に優れるものとなる。また、弾性係止する樹脂カバーは前方から容易に着脱可能であるため、メンテナンス等の際にフロントカバーを筐体に着脱する手間も面倒にならない。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、シール部材の採用により、被係止部を切り起こし形成しても透孔から筐体内への雨水等の浸入を防止することができる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加えて、表示部の採用により、樹脂カバーの取り外し作業が簡単に行える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】フロントカバーを取り外した筐体の斜視図である。
【
図4】フロントカバーと樹脂カバーとの分解斜視図である。
【
図5】(A)は樹脂カバーの前方からの斜視図、(B)は樹脂カバーの後方からの斜視図である。
【
図6】樹脂カバーの説明図で、(A)は平面、(B)は背面、(C)は底面、(D)は左側面をそれぞれ示す。
【
図7】フロントカバーの上部の後方からの斜視図である。
【
図8】(A)はフロントカバーの上部の正面図、(B)はA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、給湯器の一例を示す正面図、
図2はフロントカバーを取り外した筐体の斜視図、
図3はフロントカバーの斜視図である。
給湯器1は、前面を開口して天板3及び底板4、左右の側板5,5、背板6とからなる縦長箱状の筐体2と、筐体2の前面を閉塞するフロントカバー7とを備えている。筐体2内には、バーナを有する燃焼部9と、熱交換器を有する熱交換部10と、排気部11とを含む燃焼装置8等の構成部品が収容されて、開口の四辺には、フロントカバー7の取付用のフランジ部12,12・・が外側へ折り返し形成されている。上下のフランジ部12,12には、左右一対ずつネジ孔13,13が形成されている。14,14は、背板6の上下に取り付けられた設置用金具である。
【0010】
フロントカバー7は、正面視が筐体2と略同形の縦長矩形状で、筐体2のフランジ部12,12・・を含む前面に嵌合する外周部15と、外周部15の内側から全体的に前方へ膨出する正面視縦長矩形状の膨出部16とを備えて前後に厚みを有する形状となっている。膨出部16の前面上側には、排気部11の前面に設けた横長の排気口11aが嵌合する長孔17が形成され、膨出部16の前面下側と側方とには、吸気孔18,18・・が形成されている。
また、膨出部16の上部には、
図4に示すように、左右両端を除く上辺部分が下降して外周部15の上側を上下に幅広とする正面視横長台形状の上凹部19が形成され、同様に膨出部16の下部にも、左右両端を除く下辺部分が上昇して外周部15の下側を上下に幅広とする正面視横長台形状の下凹部20が形成されている。上凹部19と下凹部20とによって幅広となる外周部15の上下には、フランジ部12のネジ孔13,13に対応するネジ止め部としての左右一対のネジ止め孔21,21がそれぞれ形成されている。
【0011】
さらに、上凹部19及び下凹部20に隣接する膨出部16の上下面には、正面視が台形状の被係止部22,22が、それぞれ左右一対ずつ切り起こし形成されている。
このため、膨出部16の上下面には、被係止部22,22の切り起こしに伴う透孔23,23が形成されることになるが、フロントカバー7の裏面には、
図7,8に示すように、上凹部19の後側で外周部15の裏面(ネジ止め孔21,21は除く)を覆う上板25と、上凹部19の下側で膨出部16の下側内面を覆う下板26とからなるシール部材としての断面L字状のシール板24が貼着されて、下板26に設けた左右一対の延設片27,27が、透孔23,23を下方から閉塞している。なお、下凹部20側では、透孔23,23は膨出部16の下面に開口するため、シール板24を設けなくても雨水等が浸入するおそれはないが、ここにもシール板24を貼着して差し支えない。
【0012】
そして、膨出部16の上凹部19と下凹部20とには、樹脂カバー30,30がそれぞれ着脱可能に装着されている。
この樹脂カバー30は、合成樹脂の一体成形品で、
図5,6に示すように、上凹部19と下凹部20との正面視形状に対応する横長台形状の前板部31と、前板部31の長辺へ直角に連設され、平面視が帯状の平板部32とを有し、前板部31と平板部32との間の内面には、上下方向の補強リブ33,33・・が、左右に所定間隔をおいて4枚設けられている。また、前板部31の裏面には、後方へ突出して端部寄りの上面に凸部35をそれぞれ形成した左右一対の係止部としての係止片34,34が設けられている。この係止片34,34は、膨出部16の被係止部22,22にそれぞれ前方から差し込み可能となっている。さらに、平板部32における係止片34,34の上方位置には、樹脂カバー30を取り外す際の操作位置を示す表示部36,36が、後端へ行くに従って深くなる傾斜を有して凹設されている。
【0013】
以上の如く構成された給湯器1において、フロントカバー7を取り付ける場合、まず、樹脂カバー30を装着する前のフロントカバー7を筐体2の前面に組み付け、外周部15の上下のネジ止め孔21,21を介してそれぞれネジ37,37(
図8)をフランジ部12のネジ孔13,13にねじ込むことで固定する。
その後、上凹部19に対し、樹脂カバー30を、平板部32を上にして係止片34,34を被係止部22,22に差し込むようにして前方から組み付ける。すると、
図8に示すように、凸部35が被係止部22を越えるまで係止片34が差し込まれて弾性係止すると共に、平板部32が外周部15の前面に当接し、各補強リブ33が外周部15の前面及び膨出部16の上面に当接する位置で固定される。この位置で前板部31は、前面が膨出部16の前面と略同一面上にあって上凹部19を前方から覆い、平板部32は上凹部19を上方から覆う。よって、上側の樹脂カバー30によってネジ37,37は隠されることになる。
【0014】
同様に、下凹部20に対して、樹脂カバー30を、平板部32を下にして係止片34,34を被係止部22,22に差し込むようにして前方から組み付けると、凸部35が被係止部22を越えるまで係止片34が差し込まれて弾性係止すると共に、平板部32が外周部15の前面に当接し、各補強リブ33が外周部15の前面及び膨出部16の下面に当接する位置で固定される。この位置で前板部31は、前面が膨出部16の前面と略同一面上にあって下凹部20を前方から覆い、平板部32は下凹部20を下方から覆う。よって、下側の樹脂カバー30によってネジ37,37は隠されることになる。
一方、フロントカバー7を取り外す場合、まず、各樹脂カバー30を、左右の表示部36,36を押して前板部31を手前へ押し出すようにすれば、係止片34,34が被係止部22,22から抜き取られて上凹部19及び下凹部20から取り外すことができる。これにより外周部15の上下でネジ37,37が露出するため、各ネジ37を緩めて取り外せばフロントカバー7を筐体2から取り外すことができる。
【0015】
このように、上記形態の給湯器1によれば、フロントカバー7に、筐体2へのネジ止め孔21,21を覆う樹脂カバー30が着脱可能に装着されて、樹脂カバー30は、ネジ止め孔21,21に隣接してフロントカバー7に切り起こし形成される被係止部22,22に、樹脂カバー30の裏面に設けた係止片34,34を前方から弾性係止させることで装着されているので、フロントカバー7をネジ止めしても美観に優れるものとなる。また、弾性係止する樹脂カバー30は前方から容易に着脱可能であるため、メンテナンス等の際にフロントカバー7を筐体2に着脱する手間も面倒にならない。
【0016】
特にここでは、フロントカバー7の背面に、被係止部22の切り起こし形成によって生じる透孔23を閉塞するシール板24が貼着されているので、被係止部22を切り起こし形成しても透孔23から筐体2内への雨水等の浸入を防止することができる。
また、樹脂カバー30に、フロントカバー7からの取り外しの際に係止片34,34の弾性係止を解除させるための操作位置を示す表示部36,36が設けられているので、樹脂カバー30の取り外し作業が簡単に行える。
【0017】
なお、樹脂カバーの位置や大きさ、形状は、上記形態に限らず、ネジ止め孔の位置や上下凹部の形状等に応じて適宜変更可能である。よって、係止片の位置や数も変更して差し支えない。
また、シール部材は上記形態のシール板に限らず、例えば透孔の部分のみを個別に閉塞する小面積のシール板とする等、少なくとも被係止部の切り起こし形成による透孔を閉塞可能であれば、適宜変更できる。表示部の位置や形状も変更可能である他、表示部の省略も可能である。
【符号の説明】
【0018】
1・・給湯器、2・・筐体、7・・フロントカバー、8・・燃焼装置、12・・フランジ部、13・・ネジ孔、15・・外周部、16・・膨出部、19・・上凹部、20・・下凹部、21・・ネジ止め孔、22・・被係止部、23・・透孔、24・・シール板、30・・樹脂カバー、31・・前板部、32・・平板部、33・・補強リブ、34・・係止片、36・・表示部、37・・ネジ。