特許第6934196号(P6934196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6934196
(24)【登録日】2021年8月25日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】CRMP2のSUMO付加抑制剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 317/68 20060101AFI20210906BHJP
   C07D 405/12 20060101ALI20210906BHJP
   C07D 295/135 20060101ALI20210906BHJP
   C07D 295/185 20060101ALI20210906BHJP
   A61K 31/496 20060101ALN20210906BHJP
   A61K 31/495 20060101ALN20210906BHJP
   A61K 31/4525 20060101ALN20210906BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALN20210906BHJP
   A61K 31/452 20060101ALN20210906BHJP
   A61P 29/00 20060101ALN20210906BHJP
   A61P 25/04 20060101ALN20210906BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20210906BHJP
【FI】
   C07D317/68
   C07D405/12
   C07D295/135
   C07D295/185
   !A61K31/496
   !A61K31/495
   !A61K31/4525
   !A61K31/5377
   !A61K31/452
   !A61P29/00
   !A61P25/04
   !A61P43/00 111
【請求項の数】2
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2018-517688(P2018-517688)
(86)(22)【出願日】2016年10月7日
(65)【公表番号】特表2018-529748(P2018-529748A)
(43)【公表日】2018年10月11日
(86)【国際出願番号】US2016056051
(87)【国際公開番号】WO2017062804
(87)【国際公開日】20170413
【審査請求日】2019年9月26日
(31)【優先権主張番号】62/238,182
(32)【優先日】2015年10月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505167532
【氏名又は名称】アリゾナ ボード オブ リージェンツ オン ビハーフ オブ ザ ユニバーシティ オブ アリゾナ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】カンナ,メイ
(72)【発明者】
【氏名】カンナ,ラジェッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ゴケール,ヴィジェイ
(72)【発明者】
【氏名】チャウラ,リーナ
【審査官】 六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/134920(WO,A1)
【文献】 特表2013−507980(JP,A)
【文献】 特表2013−536241(JP,A)
【文献】 特表2011−507910(JP,A)
【文献】 SUBSTANCE RECORD FOR SID 844767,2005年 6月 4日,DATABASE PUBCHEM SUBSTANCE [ONLINE],AN: SID 844767,URL,https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/substance/844767
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 38/00−38/58
A61K 45/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式の範囲内に包含される化合物。
【化1】

XはNH又はOであり;
は、下記式
【化2】

からなる群より選択され;
は、水素、OCH及びフッ素からなる群より選択され;
は、下記式
【化3】

からなる群より選択される。
【請求項2】
【化4】

である、請求項1に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経表面に存在する、電位依存性(voltage−gated)ナトリウムチャンネルNav1.7たんぱく質の量を調節することができる化合物と、そのような化合物を用いる方法とに関する。特に、本発明の化合物は、CRMP2のSUMO付加を調節することによって、細胞表面でのNav1.7たんぱく質の量を調節すると考えられており、ここで、SUMO付加とは、小さなユビキチン様修飾因子(SUMO)の付加である。
【0002】
〔関連出願との相互参照〕
本願は、米国仮出願第62/238,182号(出願日:2015年10月7日)の利益に対する優先権を主張し、これは、参照によってその全体がここに組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
慢性の痛み、特に、神経障害性の痛みは、数百万人に影響を与え、何十億ドルもの費用がかかり、そして、疾病、苦しみ、自殺の主因となっている。いくつかの慢性の痛みの状態は、既存の薬剤で十分治療可能だが、多くの患者は、多剤投与しても、十分な痛みの除去が達成できていない。さらに、現在利用可能なオピオイド痛み治療は、一般にはただ部分的に効果的であるだけであり、耐性や常用癖を含めて、その臨床効果を制限する多くの副作用と関連する場合が多い。
【0004】
分子および細胞レベルでの神経障害性の痛みのメカニズムの現在の理解は不完全である。したがって、従来処方されている鎮痛剤は、苦しんでいる患者のほぼ3分の1でしか有効でない。
【0005】
したがって、特定の、より効果的な治療のために新しい道を開くことができる痛みメカニズムをさらに理解するには、新しい研究と治療が必要である。
【発明の概要】
【0006】
本発明のいくつかの特徴は、CRMP2のSUMO付加抑制剤に向けられている。CRMP2のSUMO付加を抑制することは、細胞表面でのNav1.7たんぱく質の個数を減少させ、それによって、細胞表面Nav1.7の過剰な存在および/または過度の活性化と関連する種々の臨床状態を緩和する。いくつかの実施形態において、CRMP2のSUMO付加抑制剤は、式:
【0007】
【化1】
【0008】
の化合物であり、Ara1は、随意的に置換されたフェニルであり、La1は、水素結合受容体部分を有するリンカーであり、Ara2は、フェニレン、ピリジレンまたはピラジニレンであり、そのそれぞれは随意的に置換され、Ra1は、少なくとも1つの水素結合受容体を有するヘテロシクリルまたはヘテロアルキルであり、Arb1は、ベンゾ[d][1,3]ジオキソリル、ベンゾ[d]オキサゾリル、ベンゾ[d]イソキサゾリル、ベンゾ[d]イミダゾリル、ナフチルまたはキノリニルであり、Lb1は、立体構造的に窮屈なリンカーであり、Rb1は、ヘテロシクリルまたは窒素−ヘテロアルキルであり、Arc1は、2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシニル、キノロニル、ベンゾキサジニル、キナゾリニルまたはキノキサリニルであり、Lc1は、水素結合受容体部分を有するリンカーであり、Rc1は、少なくとも1つの水素結合受容体を有するヘテロシクリルまたはヘテロアルキルである。式Iの一つの特定の化合物は、式:
【0009】
【化2】
【0010】
であり、Ara1およびRa1は、ここで規定されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ラットの後根神経節(DRG)の神経細胞における細胞質ゾルNaの、ベラトラジンで誘導された増加を軽減する、本発明の各化合物の能力を示す棒グラフである。
図2A】本発明の化合物がラットDRGにおけるテトロドトキシン感受性(TTX−S)のNaV1.7電流を抑制していることを示す、グラフ形式での実験結果であり、活性化のグラフサマリーである。
図2B】本発明の化合物がラットDRGにおけるテトロドトキシン感受性(TTX−S)のNaV1.7電流を抑制していることを示す、グラフ形式での実験結果であり、不活性化適合度(fits)のグラフサマリーである。
図2C】本発明の化合物がラットDRGにおけるテトロドトキシン感受性(TTX−S)のNaV1.7電流を抑制していることを示す、グラフ形式での実験結果であり、電流−電圧の関係のグラフである。
図2D】本発明の化合物がラットDRGにおけるテトロドトキシン感受性(TTX−S)のNaV1.7電流を抑制していることを示す、グラフ形式での実験結果であり、DMSOまたは本発明の化合物で処理されたラットDRGからの、使用に依存した不活性化を示す。
図3A】本発明の化合物がラットDRGにおけるテトロドトキシン感受性(TTX−S)のNaV1.7電流を抑制していることを示す、グラフ形式での実験結果であり、活性化のグラフサマリーである。
図3B】本発明の化合物がラットDRGにおけるテトロドトキシン感受性(TTX−S)のNaV1.7電流を抑制していることを示す、グラフ形式での実験結果であり、不活性化適合度のグラフサマリーである。
図3C】本発明の化合物がラットDRGにおけるテトロドトキシン感受性(TTX−S)のNaV1.7電流を抑制していることを示す、グラフ形式での実験結果であり、電流−電圧の関係のグラフである。
図3D】本発明の化合物がラットDRGにおけるテトロドトキシン感受性(TTX−S)のNaV1.7電流を抑制していることを示す、グラフ形式での実験結果であり、DMSOまたは本発明の化合物で処理されたラットDRGからの、使用に依存した不活性化を示す。
図4A】本発明の化合物がラットDRGにおけるテトロドトキシン感受性(TTX−S)のNaV1.7電流を抑制していることを示す、グラフ形式での実験結果であり、活性化のグラフサマリーである。
図4B】本発明の化合物がラットDRGにおけるテトロドトキシン感受性(TTX−S)のNaV1.7電流を抑制していることを示す、グラフ形式での実験結果であり、不活性化適合度のグラフサマリーである。
図4C】本発明の化合物がラットDRGにおけるテトロドトキシン感受性(TTX−S)のNaV1.7電流を抑制していることを示す、グラフ形式での実験結果であり、電流−電圧の関係のグラフである。
図4D】本発明の化合物がラットDRGにおけるテトロドトキシン感受性(TTX−S)のNaV1.7電流を抑制していることを示す、グラフ形式での実験結果であり、DMSOまたは本発明の化合物で処理されたラットDRGからの、使用に依存した不活性化を示す。
図5】パネルAは、ナトリウム電流トレースの代表系統を示し、パネルBは、化合物AZ002のサマリーピーク電流を示し、パネルCは、DMSOまたは本発明の化合物で処理されたラットDRGからの活性化および不活性化の適合度を示し、パネルDは、AZ002での一晩の培養が細胞の形態や健康に影響を与えないことを示している、混合されたグリア−DRGの共培養における2つのヒトDRG(黄色い矢印)を示す写真であり、パネルEは、AZ002で処理されたヒトDRGにおけるH−無限大を差し引かれた(すなわちNaV1.7)電流の抑制を示している電流トレースの系統を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔定義〕
他のことを文脈が要求していない限り、明細書全体で以下の定義が用いられる。「アルキル」は、1個ないし12個の、典型的には1個ないし6個の、炭素原子の、1価の直線状飽和炭化水素部分、または、3個ないし12個の、好ましくは3個ないし6個の、炭素原子の、1価の分岐状飽和炭化水素部分、を指す。例示的なアルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、2−プロピル、tert−ブチル、ペンチルなどを含むが、これに限定されない。「アルキレン」は、1個ないし12個の、典型的には1個ないし6個の、炭素原子の、2価の直線状飽和炭化水素部分、または、3個ないし12個の、好ましくは3個ないし6個の、炭素原子の、2価の分岐状飽和炭化水素部分、を指す。例示的なアルキレン基は、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレンなどを含むが、これに限定されない。「アリール」は、随意的に、環状構造の中にて1つ以上、好ましくは1個、2個または3個の置換基で置換された、6個ないし15個の環状原子の、1価の、単環式、二環式または三環式の芳香族炭化水素部分を指す。アリール基に2つ以上の置換基が存在する場合、各置換基は独立して選択される。用語「ハロ」、「ハロゲン」、「ハライド」は、ここでは交換可能に用いられ、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを指す。「ハロアルキル」は、1つ以上の水素原子が同じまたは異なるハロ原子で置き換えられた、ここで定義されたようなアルキル基を指す。用語「ハロアルキル」は、全てのアルキル水素原子がハロゲン原子で置き換えられた、過ハロゲン化されたアルキル基も含む。例示的なハロアルキル基は、−CHCl、−CF、−CHCF、−CHCClなどを含むが、これに限定されない。「ヘテロシクリル」は、1個または2個の環状原子がN,OまたはS(O)から選択され(nは0ないし2の整数)、残りの環状原子がCであり、1個または2個のC原子が随意的にカルボニル基であることができる、3個ないし8個の環状原子の、非芳香族単環部分を意味する。ヘテロシクリル環は、随意的に、独立して1つ以上、好ましくは1個、2個または3個の置換基で選択されることができる。ヘテロシクリル基に2つ以上の置換基が存在する場合、各置換基は独立して選択される。「薬学的に受容可能な補形剤」は、一般に、安全で、非毒性で、生物学的にもそれ以外でも望ましくないものではない薬学的組成物を調製するのに有用な補形剤を指し、人間の医薬用途と同様に獣医用途にも受容可能な補形剤を含む。化合物の「薬学的に受容可能な塩」は、薬学的に受容可能な塩であって、親化合物の望ましい薬理活性を持つ塩を意味する。このような塩は、(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、燐酸などのような無機酸で形成された、または、酢酸、プロピオン酸、ヘキサノン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、琥珀酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクト−2−エン−1カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tertiaryブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などのような有機酸で形成された、酸付加塩(acid addition salt)、または、(2)親化合物に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、またはアルミニウムイオン、によって置き換えられたとき、または、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミンなどのような有機塩基と調和して働くときに、形成される塩を含む。用語「プロ−ドラッグ」または「プロドラッグ」は、ここでは交換可能に用いられ、哺乳類の対象者にこのようなプロドラッグが投与されたときにin vivoで式Iに係る活性親薬剤を放出する任意の化合物を指す。式Iの化合物のプロドラッグは、式Iの化合物に存在する1つ以上の官能基を修飾して、その修飾が、親化合物をin vivoで放出するように開裂されるようにすることによって調製される。プロドラッグは、式Iの化合物を含み、そこでは、式Iの化合物におけるヒドロキシ基、アミノ基またはメルカプト基がそれぞれ、遊離のヒドロキシ基、アミノ基またはメルカプト基を再生するようにin vivoで開裂されるような任意の基と結合している。プロドラッグの例は、式Iの化合物のヒドロキシ官能基のエステル(例えばアセテート、フォルメートおよびベンゾエート誘導体)、カルバメート(例えばN,N−ジメチルアミノカルボニル)などを含むが、これに限定されない。「保護基」は、分子マスクにおいて反応性基に結合されると反応性を減少させるまたは防止する、アルキル基を除く部分を指す。保護基の例は、T.W. Greene and P.G.M. Wuts、Protective Groups in OrganicSynthesis、第3版、John Wiley & Sons、New York、1999、およびHarrison and Harrisonet al.、Compendium of Synthetic Organic Methods、Vols. 1−8(John Wiley and Sons,1971−1996)に見出すことができ、これらはその全てが参照によりここに盛り込まれる。代表的なヒドロキシ保護基は、アシル基、ベンジルおよびトリチルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテルおよびアリルエーテルを含む。代表的なアミノ保護基は、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、トリメチルシリル(TMS)、2−トリメチルシリル−エタンスルホニル(SES)、トリチルおよび置換されたトリチル基、アリルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)、ニトロ−ベラチルオキシカルボニル(NVOC)などを含む。「対応する保護基」は、それが結合されるヘテロ原子(すなわちN、O、PまたはS)に対応する適切な保護基を意味する。「治療上の有効量」は、疾病の治療のために化合物が投与されると、そのような疾病の治療を果たすのに十分な、化合物の量を意味する。「治療上の有効量」は、化合物、疾病およびその重症度および治療される哺乳類の年齢、体重などによって変化する。疾病の「治療」は、(1)疾病を防止すること、すなわち、疾病に曝露したまたはかかりやすくなっているが、その疾病の症状をまだ経験したり示したりしていない哺乳類においてその疾病の臨床症状が進行しないようにすること、(2)疾病を抑制すること、すなわち、その疾病またはその臨床症状の進行を抑止するまたは減少させること、または(3)疾病を軽減すること、すなわち、その疾病またはその臨床症状を後退させること、を含む。化学反応を記述するとき、用語「処理」、「接触」および「反応」は、ここでは交換可能に用いられ、示されたおよび/または所望の生成物を生成するための適切な条件下で、2つ以上の試薬を加えるまたは混ぜることを指す。示されたおよび/または所望の生成物を生成する反応は、始めに加えられた2つの試薬の組み合わせから直接得られるとは限らないこと、すなわち、混合物中で生成した1つ以上の中間体であって最終的に、示されたおよび/または所望の生成物を生成するような中間体がありうることを理解すべきである。ここで用いられるときには、用語「上で定義したもの」および「ここで定義したもの」は、変数を指す場合には、任意の狭いおよび/または好ましい、より好ましいおよび最も好ましい定義があればそれと同様に、その変数の広い定義を、参照により盛り込む。
【0013】
〔本発明の化合物〕
慢性の痛みは、公共の主要な健康問題であり、1億人を超えるアメリカ人に影響を与えている。オピオイドは、有用な鎮痛剤であり、多くのタイプの痛みに対する痛み管理で不可欠なものである。しかしながら、オピオイドは、便秘、吐き気、精神的曇りおよび、ときに死に至る呼吸低下を含めて、多くの副作用を有する。痛み状態の広範囲とリンクされているたんぱく質である、電位依存性ナトリウムチャンネルNav1.7を狙うことが、痛み治療の進展のための方策として出現した。
【0014】
本発明のいくつかの特徴は、細胞表面に存在するNav1.7たんぱく質の量を直接または間接に調節することができる化合物の本発明者による発見に基づいている。したがって、本発明の化合物は、細胞表面でのNav1.7の存在と関連する任意の数の臨床状態を治療するのに用いられることができる。本発明の一つの特定の実施形態では、本発明の化合物は、慢性および/または急性の痛みを含む痛みを治療するのに用いられる。
【0015】
電位依存性Nav1.7ナトリウムチャンネルは、後根神経節(DRG)、三叉神経の神経節および交感神経神経節を含めて、組織損傷性の痛みに関連する神経節内の末梢神経系で優先的に発現されると考えられている。痛み信号の形質導入の原因である組織損傷性の神経細胞では、チャンネルは、刺激に応じて活動電位を始動させるのに必要な電圧活動閾値を修飾する。機能獲得型変異(gain−of−function mutations)、すなわち、活動電位の開始のためのNav1.7電流閾値を下げる変化は、異痛症―下げられた、痛みの刺激閾値を生成する。このような変異は、肢端紅痛症、発作性の極度の痛み障害、および、小さな繊維組織神経障害を含めて、痛み症状の原因となる。
【0016】
細胞表面でのNav1.7の増加した存在は、また、糖尿病の神経障害、炎症、それに続く組み合わされた座骨神経の圧迫、髄核適用モデリング腰部椎間板ヘルニア、およびその後の神経枝結紮損傷(SNI)から起こる痛みとも関連している。逆に、Nav1.7における機能喪失型変異(loss−of−function mutations)は、刺激が、痛みを伝搬するための閾値に達するのを防止する。このような変異を有する患者は、痛み感覚の完全な消失を示す。さらに、DRG感覚神経におけるNav1.7の、ヘルペス媒介動物で媒介されるノックダウンは、完全フロインドアジュバントに応答する痛覚過敏(すなわち、痛みのある刺激への増加した反応)の進行を著しく防止する。したがって、Nav1.7は、痛み形質導入にとって必要であり十分でもある。事実、このような役割の証拠として、Nav1.7ノックアウトのマウスは、炎症および神経障害性の痛みモデルにおいて痛覚過敏を進行させないが、形質欠損は発現しないことが示されている。
【0017】
どの理論にも拘束されることなく、本発明の化合物は、細胞表面に存在するNav1.7たんぱく質の量を調節し、またそれによって、このたんぱく質によって制御される細胞興奮性を調節すると考えられる。特に、本発明の化合物は、細胞表面に対する特定の電位依存性ナトリウムチャンネルの細胞通行(cellular rafficking)を引き起こす原因である細胞内処理を調節(例えば抑制)し、それによって、細胞表面でのこのチャンネル(すなわちNav1.7たんぱく質)の存在を選択的に減少させると考えられている。
【0018】
どの理論にも拘束されることなく、本発明の化合物は、CRMP2のSUMO付加処理を抑制すると考えられる。SUMO付加処理は、種々の細胞処理に関与する翻訳後の修飾である。用語「SUMO」は、小さなユビキチン様修飾因子を指す。SUMOたんぱく質は、細胞内の標的と共有結合的に脱着してその機能を修飾する小さなたんぱく質の系統である。ここで用いられるときには、「SUMO付加」または「SUMO付加処理」を調節または抑制することは、SUMOたんぱく質の結合を調節または抑制すること、および/または、SUMOたんぱく質の結合の後のたんぱく質の修飾を調節または抑制すること、を意味する。
【0019】
細胞表面に存在するNav1.7たんぱく質の量は、一つには、CRMP2たんぱく質、すなわちCRMP2、のSUMO付加によって調節される。CRMP2は、小さな分子サイズ(60−66kDa)の、5つの細胞内燐酸たんぱく質(CRMP1、CRMP2、CRMP3、CRMP4、CRMP5)からなる、コラプシン(collapsin)反応媒介たんぱく質(response mediator protein)(CRMP)系統のメンバーである。CRMP2の発現または生物活性を調節することができる化合物は、また、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病および脳卒中などの神経疾患に関連する臨床状態を治療するのにも用いられることができる。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病および脳卒中などの神経疾患を、これらの疾患のうちのいくつかのものと関連する痛みを含めて、治療するのに用いられることができる。
【0020】
痛み治療に関して、本発明の化合物は、慢性の痛み、急性の痛み、そう痒、および臭覚障害を含めて、種々のタイプの痛みを治療するのに用いられることができる。本発明の化合物で治療することができる例示的な慢性の痛みは、癌性疼痛、火傷の痛み、関節痛、化学療法で誘導された末梢神経障害、疱疹後神経痛、原発性肢端紅痛症などの散発的痛み、および、発作性の極度の痛み障害などを含むが、これに限定されない。本発明の化合物で治療することができる例示的な急性の痛みは、有害な熱痛み、そう痒、および外科的な痛みを含むが、これに限定されない。
【0021】
オピオイド化合物を用いる伝統的な痛み治療と比べて、本発明の化合物の利点のうちのいくつかは、運動性の機能障害や鎮静作用がないこと、所定の用量レベルにおける、モルヒネやガバペンチン(gabapentin)に対しての、より高い有効性および同等の効き目、麻薬性鎮痛薬と比べて、有益な効果および誤用に対して、存在しないかまたは大きく減少された可能性、を含むが、これに限定されない。
【0022】
本発明の他の特徴は、対象者の痛みを治療する方法を含み、この方法は、この治療の必要な対象者に、本発明の化合物の治療上の有効量を投与することを含む。本発明の他の特徴は、細胞表面でのNav1.7たんぱく質の存在および/または活性化と関連する臨床状態を治療する方法を含み、この方法は、細胞表面でのNav1.7たんぱく質の存在および/または活性化と関連する臨床状態に苦しむ対象者に、本発明の化合物の治療上の有効量を投与して、それによって細胞表面でのNav1.7たんぱく質の量を減少させることを含む。どの理論にも拘束されることなく、本発明の化合物は、CRMP2のSUMO付加を抑制することによって、神経細胞表面に存在するNav1.7の量を減少させると考えられる。
【0023】
本発明の代表的な化合物は、式:
【0024】
【化3】
【0025】
を含むが、これに限定されない。
【0026】
式Iの化合物の中で、Ara1は、随意的に置換された、フェニルまたはピリジンのようなアリールである。ある実施形態では、Ara1は、(C1位として任意に指定された、La1を有する炭素に対して、)3位、4位および/または5位に置換基を有する置換されたフェニルである。式Iの化合物のフェニル基(例えばAra1およびAra2)(または本発明の化合物における任意の他のフェニル基)に対する例示的な置換基は、アルコキシ(例えば、メトキシ、イソプロピロキシなど)、シクロアルコキシ(例えばシクロプロピロキシ)、アリールオキシ(例えばフェノキシであり、ここに記載の通り、フェノキシのフェニル基は随意的に置換される)、アルキル、ハロアルキル、ハロアルコキシ(すなわちR−O−であり、Rは、トリフルオロメトキシなどのようなハロアルキルである)、フルオロ、シアノ、アラルコキシ(すなわちAr−R−O−であり、Arはアリールであり、Rは、ベンジルオキシのようなアルキレンであり、アリール基は、随意的に、上述したもののような1−3個の置換基で置換される)、および、ヘテロシクリルアルコキシ(すなわちHet−R−O−であり、Hetはヘテロシクリルであり、Rはアルキレンである)を含む。典型的には、フェニルAra1の3位および/または4位は、相対的に疎水性のエーテル基で置換されている。フェニルAra1の5位は、典型的には、H結合受容体で置換されている。用語「H結合受容体」および「H結合受容体部分」は、ここでは交換可能に用いられ、窒素(N)、酸素(O)または硫黄(S)などのような電気陰性度の高い原子に結合された水素原子を有する分子と水素結合を形成することができる非共有電子対を有するヘテロ原子(例えばO、N、S、Pなど)を指す。例えば、en.wikipedia.org/wiki/Hydrogen_bondを参照されたい。Ara1に適した例示的なH結合受容体は、アルコキシおよびハロアルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシおよびトリフルオロメトキシ)のような、酸素を含有する置換基を含むが、これに限定されない。
【0027】
式Iの化合物のLa1は、水素結合受容体部分を有するリンカーである。ある特定の実施形態では、La1は、式:−C(=O)−NR−の部分であり、Rは、水素、アルキルまたは窒素保護基である。別の実施形態では、La1は、(例えば、環の1、3位にイミダゾリルの2つのN原子を有する)イミダゾリル部分である。
【0028】
式Iの化合物のAra2は、フェニレン、ピリジレンまたはピラジニレンであり、そのそれぞれは1−3個の置換基で随意的に置換され、そのそれぞれは独立して選択される。適切な置換基は、上述したものを含む。全てのAra2がRa1で置換されていることが認識されるべきであり、それゆえ、Ara2のことを置換されているものと呼ぶときには、Ara2がRa1のほかにも少なくとも1つの他の置換基を有していることを意味する。典型的には、Ra1は、La1基に対してパラ位にて置換されている。特に、Ara2に対する適切な置換基は、ハロ(例えば、クロロ、ブロモ、ヨードおよび/またはフルオロ)、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、アルキルアミノ、アルキルオキシアルキルアミノなどを含む。
【0029】
式Iの化合物のRa1は、少なくとも1つの水素結合受容体を有するヘテロシクリルまたはヘテロアルキルである。Ra1に適した例示的なヘテロシクリルは、ピペラジン−1−イル(例えば4−メトキシピペラジン−1−イルまたは4−アルキルピペラジン−1−イル)、モルフォリニル、ピロリジニル、ピペリジニルなどを含むが、これに限定されない。あるいは、Ra1は、式:−NH−(CH−ORの部分、または式:−NH−(CH−N(R)(R)の部分であり、ここで、mは2または3であり、Rは、水素、アルキルまたはヒドロキシル保護基であり、RおよびRは、水素、アルキル、シクロアルキル、または、RおよびR、ならびに、そのRおよびRが窒素原子に結合されて、置換されたまたは置換されていない環系であってその環系の中に随意的に1つ以上のさらなるヘテロ原子を有するような環系を形成するような当該窒素原子、からなるグループから独立して選択される。
【0030】
他の実施形態では、Ra1はヘテロアルキルである。典型的には、Ra1のヘテロアルキルは、塩基性アミノ基、カルボニル基(すなわち−C(=O)−)、アルコキシ、アリールオキシまたはそれらの組み合わせのような、H結合受容体を含む。
【0031】
ある実施形態では、化合物Iは、式:
【0032】
【化4】
【0033】
であり、ここで、Ara1およびRa1は、ここで定義したものである。Ara1の具体例は、3,5−ジメトキシフェニル;3−メトキシフェニル;3−イソプロポキシフェニル;3,4,5−トリメトキシフェニル;3−フルオロ−4−[(2−ピペリジン−1−イル)エトキシ]フェニルまたはその塩;3−メトキシ−4−[(4−トリフルオロメトキシフェニル)メトキシ]フェニル;ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル;3−フルオロ−4−[(2−モルフォリノ)エトキシ]フェニル;3−メトキシ−4−[(3−フルオロフェニル)メトキシ]フェニル;3−メトキシ−4−[(4−フルオロフェニル)メトキシ]フェニル;3−メトキシ−4−[(3−トリフルオロメチルフェニル)メトキシ]フェニル;3−メトキシ−4−[(4−シアノフェニル)メトキシ]フェニルなどを含むが、これに限定されない。Ra1の具体例は、4−メチルピペラジニルおよびその塩;4−アセチルピペラジニル;4−メトキシピペラジニル;、および、他の、置換された、ピペラジニルおよびピペラジニル部分を含むが、これに限定されない。
【0034】
一般に、CRMP2のSUMO付加を調節(例えば妨害または抑制)することができる任意の化合物は、本発明の範囲内である。このような化合物は、実施例セクションで記載したin silicoまたはin vitroでの分析方法を用いることによって容易に特定されることができる。神経細胞表面でのNav1.7の数(すなわち量)を制御するのに用いられることができるRMP2のSUMO付加抑制剤を開発するために、高い処理能力の分析を行って、E2 SUMO結合酵素であるUbc9の、CRMP2への結合能力をテストした。簡単に言えば、Niキレート受容体ビード(bead)に結合されたCRMP2−Hisたんぱく質を、グルタチオンでコーティングされたドナービードに結合されたUbc9−GSTたんぱく質と共に培養した。受容体ビードがドナービードの近傍に入ると、受容体ビードは、520−620nmの蛍光信号を放出した。ドナービードは、周囲の(ambient)の酸素を励起一重項形式の酸素に変換する光感作物質であるフタロシアニンを含有した。この一重項酸素は、化学発光による反応において最高点に達する(culminating)受容体ビードにてチオキセン誘導体と反応する。この反応は、ビードが互いのおよそ200ナノメートル以内にある場合だけ起こる。一重項酸素反応の強さは、また、存在する検体の量にも比例し、そえゆえ、スクリーニングに用いられることができる。このビードに基づく増幅発光近傍均質分析(Amplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay)(ALPHA)技術(Perkin Elmer)を用いて、CRMP2−HisとUbc9−GSTとの間の推定上の相互作用を検査した。Ubc9が、CRMP2に対してマイクロモル以下(sub−micromolar)の親和性で結合したことが明らかになり、この結合は、少なくとも18時間の期間中ずっと安定であった。
【0035】
本発明の化合物を生成するのに用いられることができる方法のうちのいくつかを以下に示す:
【0036】
【化5】
【0037】
上から分かるように、典型的には、開始物質としては、適切な芳香族化合物(例えば化合物の左側部)が用いられ、所望の部分が結合され、化合物の所望の右側部へ転換される。異なる「左側部」および異なる「右側部」を用いることによって、非常に様々な本発明の化合物を調製することができる。異なる置換基を有する化合物を生成するために、中間体および/または生成物のいずれかにおいて置換基をさらに転換することもできる。本発明の化合物は、以下の化合物:
【0038】
【化6】
【0039】
を含むが、これに限定されない。
【0040】
化合物AZ002のいくつかのPKプロフィールは、tmax=2hr、Cmax=263.1ng/ml、AUC(0−24hr)=2375.1hr.ng/ml、t1/2=5.8hr、生物学的利用性(F)=31%である。いくつかの例では、本発明の化合物は、薬学的に受容可能な塩として提供される。適切な薬学的に受容可能な塩は、ここに記載したものを含む。いくつかの実施形態では、本発明の薬学的に受容可能な塩は、より良好な薬物動態を提供する。例えば、化合物AZ002塩酸塩の薬物動態(「PK」)分析は、化合物AZ002自身よりも大きな溶解度を示し、CRMP2で媒介される他の機能に影響を与えることなく、〜45%、Nav1.7電流を抑制した。
【0041】
図1ないし図5に、有効性を示す化合物のうちのいくつかのものの生物学的データを示す。簡単に言えば、図1は、培養された、ラットの後根神経節(DRG)の神経細胞における細胞質ゾルNaの、ベラトラジンで誘導された増加を軽減する、本発明の代表的な化合物の能力を示すデータである。これは、痛みにリンクされた電位依存性Nav1.7チャンネルを介してナトリウムの流入を減少させる化合物能力を示している。DRGの神経細胞に、Ca2+に感受性のある色素であるFura2−AMを装填し、次いで、Naチャンネルを開けるための30μMのベラトラジンのみ(DMSO)で、または、5μMのAZ化合物で、DRGの神経細胞を処理した。ベラトラジンおよびAZ化合物を適用した後に、120秒間、濃度曲線下面積(AUC)を計算することによって、時間に対する細胞内ナトリウム濃度([Na]c)における、ベラトラジンで誘導された変化を定量化した。示したデータは、平均値±SEM.N=4の独立した実験(1実験あたり細胞n=104−520個)である。
【0042】
図2Aないし図4Dは、主要なラットDRGにおけるテトロドトキシン感受性(TTX−S)のNaV1.7電流に対する化合物AZ002、AZ155およびAZ191の効果を示す。活性化のサマリーを図2A図3Aおよび図4Aにそれぞれ示す。不活性化適合度のサマリーを図2B図3Bおよび図4Bにそれぞれ示す。図2C図3Cおよび図4Cは、それぞれ、化合物AZ002、AZ155およびAZ191の電流−電圧の関係を示す。図2D図3Dおよび図4Dは、それぞれ、DMSOまたは化合物AZ002、AZ155およびAZ191で処理されたラットDRGからの、使用に依存した不活性化を示す。示したデータは、示されたように、平均値±SEM.N=10ないし11の細胞である。
【0043】
図5は、化合物AZ002がラットとヒトのDRGにおけるTTX−S Nav1.7電流を抑制することを示す。thatパネルAは、対照(DMSO)および化合物AZ002で処理されたラットDRGの、ナトリウム電流トレースを示す。パネルBは、種々の濃度の化合物AZ002で処理したDRGのサマリーピーク電流を示す。パネルCは、活性化および不活性化の適合度を示す。パネルDは、混合されたグリア−DRGの共培養におけるヒトDRG(黄色い矢印)の写真である。パネルEは、対照(DMSO処理された)または化合物AZ002で処理されたヒトDRGからH−無限大を差し引かれた(すなわちNaV1.7)電流を示すトレースの系統である。*、P<0.05(Student’s t−テスト)。
【0044】
〔薬学的組成物〕
本発明は、本発明の少なくとも1つの化合物、または、個々の異性体、異性体のラセミ体または非ラセミ体の混合物、または、薬学的に受容可能な塩またはその溶媒和物、ならびに、少なくとも1つの薬学的に受容可能な担体、および、随意的に他の治療上のおよび/または予防的な成分を含む薬学的組成物を含む。
【0045】
一般に、本発明の化合物は、同様の効用を果たす薬剤について受容されている投与形式のうちの任意のものによって、治療上の有効量分、投与される。治療される疾患の重篤度、対象者の年齢および相対的な健康、用いられる化合物の効力、投与の経路および形式、投与が指導された適応、および、関与する医師の優先傾向および経験、などの多くの要因に依存して、適切な用量範囲は、典型的には一日1−500mg、典型的には一日1−100mg、および、しばしば、1−30mgである。このような疾患を治療する当業者は、典型的には、過度の経験なしに、また、個人的な知識および本願の開示に頼って、本発明の化合物の治療上の有効量を確認することができる。
【0046】
典型的には、本発明の化合物は、経口(バッカルおよび舌下を含む)、直腸、点鼻、局所、肺、膣、または非経口(筋肉内、動脈内、くも膜下、皮下および静脈内を含む)の投与に適したものを含む薬学的処方として、または、吸入または吹き入れによる投与に適した形式で、投与される。投与の典型的な方法は、一般に、苦痛の程度に応じて調整されることができる便利な一日用量処方計画(daily dosage regimen)を用いる経口である。
【0047】
本発明の化合物、ならびに、1つ以上の従来のアジュバント、担体、または賦形剤は、薬学的組成物および単位用量の形式で配置されることができる。薬学的組成物および単位用量の形式は、追加の活性化合物や原理を用いてまたは用いずに、従来の比率で、従来の成分から構成されることができ、また、単位用量の形式は、採用されるべき意図した一日用量範囲と釣り合った活性成分の任意の適切な有効量を含有することができる。薬学的組成物は、錠剤または充填されたカプセルなどの固体、半固体、粉末、徐放性処方、溶液などの液体、懸濁液、乳化液、エリキシル剤、または経口用途のための充填されたカプセルとして、または、直腸または膣の投与のための座剤の形式で、または、非経口用途のための無菌の注射液の形式で、用いられることができる。したがって、1錠あたり、およそ1ミリグラム、または、より広くは、およそ0.01ないしおよそ100ミリグラムの活性成分を含有する処方が、代表的な適切な単位用量形式である。
【0048】
本発明の化合物は、非常に様々な経口投与用量形式で処方されることができる。薬学的組成物および用量形式は、活性成分として、本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な塩を含むことができる。薬学的に受容可能な担体は、固体または液体とすることができる。固体形式の調製物は、粉末、錠剤、ピル、カプセル、カシェ剤(cachets)、座剤および分散顆粒を含む。固体の担体は、賦形剤、香料添加剤、可溶化剤、潤滑剤、懸濁化剤、結合剤、保存料、錠剤分解剤、または被包物質として作用することもできる。粉末では、担体は一般に、細かく分割された活性成分との混合物である細かく分割された固体である。錠剤では、活性成分は一般に、適切な比率で必要な結合能力を持つ担体と混合され、所望の形状およびサイズに圧縮される。粉末と錠剤は、好ましくは、活性化合物のおよそ1ないしおよそ70パーセントを含有する。適切な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、澱粉、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオバターなどを含むが、これに限定されない。用語「調製」は、担体としての被包物質で活性化合物を処方することを含むことを意図され、担体のあるまたは無い活性化合物が、それに関連する担体によって囲まれるようなカプセルを提供する。同様に、カシェ剤およびトローチ剤も含まれる。錠剤、粉末、カプセル、ピル、カシェ剤およびトローチ剤は、経口投与のために適した固体形式であることができる。
【0049】
経口投与に適した他の形式は、乳化液、シロップ、エリキシル剤、水溶液、水性懸濁液を含む液体形式の調製物、または、使用直前に液体形式の調製物に変換されることを意図された固体形式の調製物を含む。乳化液は、溶液にて、例えば、プロピレングリコール水溶液にて調製されることができ、または、乳化剤、例えば、レシチン、ソルビタンモノオレエートまたはアカシアを含有してもよい。水溶液は、水に活性成分を溶解させ、適切な着色料、風味、安定剤および増粘剤を加えることによって調製されることができる。水性懸濁液は、天然または合成ガム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび他の公知の懸濁剤のような、粘性物質と共に、水に細かく分割された活性成分を分散させることによって調製されることができる。固体形式の調製物は、溶液、懸濁液および乳化液を含み、また、活性成分に加えて、着色料、風味、安定剤、緩衝液、人工および天然甘味料、分散剤、増粘剤、安定剤などを含むことができる。
【0050】
本発明の化合物は、非経口投与(例えば、注射、例えば、ボーラス注射または連続注入)として処方されることもでき、また、アンプル、事前に充填された注射器、小体積注入での単位用量形式で、または、追加の保存料を有する多重用量容器で、提供されることができる。組成物は、油性または水性の媒体で、例えば水性ポリエチレングリコール中の溶液で、懸濁液、溶液または乳化液のような形式をとることができる。油性または非水性の担体の例、賦形剤、溶媒または媒体は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、野菜油(例えばオリーブオイル)、および注射可能な有機エステル(例えばオレイン酸エチル)を含み、また、保存料、湿潤剤、乳化剤または懸濁剤、安定剤および/または分散剤のような、処方剤を含有することができる。あるいは、活性成分は、無菌の固体の無菌の分離によって、または、適切な媒体、例えば無菌で発熱物質の無い水、での使用前に構成のための溶液からの凍結乾燥によって、粉末形式とすることができる。
【0051】
本発明の化合物は、軟膏、クリーム、ローションとして、または経皮貼布として、表皮への局所投与のために処方されることができる。軟膏とクリームは、例えば、水性または油性の基剤に、適切な増粘剤および/またはゲル化剤を加えて処方されることができる。ローションは、水性または油性の基剤で処方されることができ、また、一般に、同じく、1つ以上の乳化剤、安定剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤または着色剤を含有することができる。口での局所投与に適した処方は、香料基剤、通常、スクロースおよびアカシアまたはトラガカント、中に活性成分を含むトローチ剤と、ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアのような不活性な基剤中に活性成分を含む錠剤と、適切な液体担体中に活性成分を含む口腔洗浄液と、を含む。
【0052】
本発明の化合物は、座剤としての投与のために処方されることができる。脂肪酸グリセリドまたはカカオバターの混合物のような低融点ワックスが最初に融解し、例えば撹拌によって、活性成分が均質に分散する。その後、融解した均質な混合物は、使いやすいサイズの型に流し込まれ、冷却されて固化することができる。
【0053】
本発明の化合物はまた、膣投与のために処方されることもできる。活性成分に加えてこのような担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ジェル、ペースト、泡またはスプレーが当業者には適切であることが知られている。
【0054】
本発明の化合物は、点鼻投与のために処方されることができる。溶液または懸濁液が、従来の方法、例えば、点滴器、ピペットまたはスプレーによって、鼻腔に直接適用される。処方は、単一または多重形式で提供されることができる。点滴器またはピペットの多重形式は、溶液または懸濁液の適切な好ましい体積を投与する患者によって達成されることができる。スプレーの場合は、例えば計量噴霧スプレーポンプを用いて達成されることができる。
【0055】
本発明の化合物は、特に気道への、また、鼻腔内投与を含む、エアロゾル投与のために処方されることができる。化合物は、一般に、例えば5ミクロンまたはそれ未満のオーダーの、小さい粒子径を有する。このような粒子径は、当業者に知られた方法、例えば微粉化によって達成されることができる。活性成分は、加圧されたパックにて、クロロフルオロカーボン(CFC)、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタンまたはジクロロテトラフルオロエタンのような、または、二酸化炭素または他の適切なガスのような、適切な発射薬と共に提供される。エアロゾルは、好都合には、レシチンのような界面活性剤を含有することもできる。薬剤の用量は、計量弁によって制御されることができる。あるいは、活性成分は、乾燥粉末の形式で、例えば、ラクトース、澱粉、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリジン(PVP)のような澱粉誘導体などの、適切な粉体基剤における化合物の粉末混合物の形式で、提供されることができる。粉末担体は、典型的には、部空内にゲルを形成する。粉末組成物は、単位用量形式で、例えば、粉末がそこから吸入器を用いて投与されることができるような、例えばゼラチンまたはブリスターパックのカプセルまたはカートリッジで、提示されることができる。
【0056】
所望であれば、処方には、活性成分の徐放性または制御された放出の投与のために適用された腸溶性のコーティングを調製することができる。例えば、本発明の化合物は、経皮的または皮下薬剤送達装置にて処方されることができる。これらの送達システムは、化合物の徐放性が必要または所望のとき、また、治療計画での患者のコンプライアンスが命に関わるときに、有利である。経皮的送達システムでの化合物は、しばしば、皮膚粘着性の固体支持材に結合される。当該化合物は、貫通促進剤、例えばアゾン(Azone)(1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン)と結合されることができる。徐放送達システムは、外科手術または注射によって皮下層に皮内挿入されることができる。皮下注入物は、脂質可溶性膜、例えばシリコーンゴムまたは生物分解性ポリマー、例えばポリ乳酸にて、化合物をカプセルに包む。
【0057】
薬学的調製物は、典型的には、単位用量形式である。このような形式では、調製物は、しばしば、適切な量の活性成分を含有する単位用量に再分割される。単位用量形式は、包装された調製物であることができ、包装は、ガラスビンまたはアンプル内の、包装された錠剤、カプセルおよび粉末のような、個別量の調製物を含有する。また、単位用量形式は、カプセル、錠剤、カシェ剤またはトローチ剤そのものであることができ、または、それは、包装された形式でのこれらのうちの適切な数の任意のものであることができる。
【0058】
他の適切な薬学的担体およびそれらの処方は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 1995、E.W.Martin編集、Mack Publishing Company、第19版、Easton、Pa.に記載されている。
【0059】
治療での使用のために、式(I)の化合物およびその薬学的に受容可能な塩の治療上の有効量が、未加工の化学物質として投与されることができる可能性があれば、その活性成分は、薬学的組成物として提示されることができる。したがって、本開示はさらに、薬学的組成物を提供し、これは、式(I)の化合物またはその薬学的に受容可能な塩またはそのプロドラッグ、および、1つ以上の薬学的に受容可能な担体、賦形剤または補形剤の治療上の有効量を含む。組み合わせに適用された場合、組み合わせて、順次、または同時に投与されたかを問わず、用語は、治療上の効果を生む活性成分の組み合わせられた量を指す。式(I)の化合物およびその薬学的に受容可能な塩は上述されている。担体、賦形剤または補形剤は、処方の他の成分と両立でき、その受領者にとって有害でないという意味で受容可能でなければならない。本開示の他の特徴によれば、式(I)の化合物またはその薬学的に受容可能な塩またはそのプロドラッグ、および、1つ以上の薬学的に受容可能な担体、賦形剤または補形剤を混合することを含む、薬学的処方の調製のための処理も提供される。
【0060】
本開示の組成物は、本開示の化合物と、1つ以上の追加の治療上のおよび/または予防的な薬剤との組み合わせを含み、化合物と追加の薬剤との両方が、通常、単位治療計画において通常に投与される用量の、およそ10ないし150%、より典型的にはおよそ10ないし80%の用量レベルで存在する。
【0061】
本発明のさらなる目的、利点および新規な特徴は、限定を意図するものではない以下の実施例の試験に基づき、当業者には明らかである。実施例では、構造的に減少されて実行される処理は現在時制で記載し、実験室で行われた処理は過去時制で記載する。
【実施例】
【0062】
〔in silicoモデリング〕
ヒトCRMP2に対する化合物のin silicoドッキングを行った。簡単に言えば、53個のドッキングされた化合物を有するヒトCRMP2の構造を分析した。CRMP2に結合する低分子を探索するために、コンピュータによるスクリーニングを用いた。ドッキングは、SUMO付加のモチーフの中のK374残基を収容するCRMP2における10Åのポケットに集中させた。得られた複合体を、すべり(Glide)スコアおよび他のエネルギー関連条件を用いてランク分けした。ほとんどの化合物は、CRMP2上の2つの異なる部位にドッキングした。先導的な化合物を確認するために、化合物のドッキングからCRMP 1、4および5の結晶構造までのすべりスコアを用いた。
【0063】
〔スクリーニング分析〕
ALPHA分析によって、Ubc9−CRMP2抑制剤のスクリーニングを行った。簡単に言えば、さらに先導的な化合物を確認するために、in silicoモデリングでの先導的な化合物として確認された100μMの化合物を、Ubc9−CRMP2たんぱく質の相互作用のパーセント抑制について分析した。
【0064】
〔ベラトラジンで誘導されたスクリーン〕
NaV不活性化の抑制剤であるベラトラジンは、Naの開口を増加させることによって、電圧開閉式のカルシウムチャンネルの開口をもたらす脱分極を起こす。レシオメトリック(ratiometric)Fura2−AM分析によって、カルシウムの流入をモニターした。ここで、本発明の種々の化合物を用いて感覚神経を一晩中培養し、ベラトラジンで誘導されたカルシウムの流入に影響を与える能力をテストした。対照(DMSO、0.03%)および化合物において、平均340nm/380nmの比率を要約する棒をプロットした。条件あたり>100細胞からのデータを得た。閾値より上を示す化合物は、おそらく活性化剤を表していると思われ、一方、閾値より下を示す化合物は、Nav1.7に影響を与えるCRMP2のSUMO付加の潜在的な抑制剤として確認された。
【0065】
〔ラットの行動痛み分析〕
化合物AZ002は、神経損傷で誘導された慢性痛みのモデルにおいて、機械的な過敏性を逆転させた。AZ002(5μg/10μL)の脊髄投与は、神経障害性痛みの神経枝結紮損傷モデルにおいて、機械的な過敏性を著しく逆転させた。前足引き閾値の結果、AZ002投与後の30ないし240分の時間に(n=6、*p<0.05)著しく逆転した、損傷の7日後での著しい減少となったが、媒体対照(DMSO)ではそうならなかった。
【0066】
さらに、AZ002(5μg/10μL)およびAZ008(5μg/10μL)の脊髄投与は、神経障害性痛みの神経枝結紮損傷モデルにおいて、機械的な過敏性を著しく逆転させた。前足引き閾値の結果、AZ002投与後の15、30、90および120分の時間に(n=6、*p<0.05)、および、AZ008投与後の90、120、150および210分の時間に(n=6、*p<0.05)、著しく逆転した、損傷の7日後での著しい減少となった。対照として損傷後の基準線を用い、一方通行のANOVAおよびその後のDunnett’s Multiple Comparison Testを用いてデータを分析した。
【0067】
〔カテコールアミンA分化(differentiated)(CAD)およびヒト胎児腎臓293(HEK293)細胞株の培養およびトランスフェクション〕
マウスの神経由来のCADおよびヒト由来のHEK293細胞を、37℃、5% COの標準細胞培養条件で増殖させた。全ての培地に、10,000μg/mlのストックから、10% FBS(Hyclone)および1%ペニシリン/硫酸ストレプトマイシンを補った。CAD細胞をDMEM/F12培地で維持し、HEK293細胞をDMEM培地で維持した。Dr.Theodore R.Cummins(Indiana University School of Medicine)から、種々のNaV1.Xアイソフォーム(isoforms)を発現するHEK293細胞株を得た。pTargetベクターにおけるhNaV1.1、pcDNA3.1−modベクターにおけるrNaV1.3またはhNaV1.7、または、pRcCMVIIベクターにおけるNaV1.5の燐酸カルシウム沈殿トランスフェクションによって、NaV1.Xサブタイプ(subtypes)を安定して発現するHEK293細胞が生成された。NaV1.X発現細胞を選択するために、ゲネチシン(Geneticin)(Cat#10131035、Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)を500μg/mlで用いた。全体のナトリウム電流に対してNaV1.7による〜80%の寄与により、モデルの神経細胞株として、CAD細胞を選択した。この〜80%の寄与は、HWTX−IV(Alomone Laboratories、Jerusalem、Israel)およびProTox−II(Sigma、St.Louis、MO)の両方によって、NaV1.7のアイソフォーム特異性の遮断によって決定した。細胞は、2μg/μlのCRMP2プラスミドおよび/または1μg/μlの他の指示されたプラスミドと複合された1μg/μlのポリエチレンイミン(PEI)(Sigma、St.Louis、MO)を用いてトランスフェクションした。これらの条件下で、トランスフェクション効率は〜50%であった。たんぱく質の定量化に必要な、より高いトランスフェクション効率を達成するために、製造者の指示に沿い、Lipofectamine 2000(Cat#11668019、Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)を用いてトランスフェクションされた細胞においていくつかのウェスタンブロットを行った。これらのケースでは、トランスフェクション効率は典型的には>95%であった。500nMの濃度で、製造者の指示に沿い、Lipofectamine 2000を用いてsiRNAをトランスフェクションした。すべての実験は、トランスフェクション後の48hと72hとの間に行った。プラスミドのトランスフェクションはdsRed蛍光性によって確認し、ノックダウンはウェスタンブロットによって確認した。
【0068】
〔ラットの主要な後根神経節DRGの神経細胞の培養およびトランスフェクション〕
ラットDRGの神経細胞を50−174gのSprague−Dawleyラットから分離し、次いで、公知の処置を用いてトランスフェクションした。簡単に言えば、背部の皮膚と筋肉を除去することと、解体段階に並行に最高点の骨の処理を行うことによって、DRGを露出させた。次いで、DRGが集められ、その根で切り取って形を整え、中性のプロテアーゼ(3.125mg.ml−1、Cat#LS02104、Worthington、Lakewood、NJ)とコラゲナーゼType I(5mg.ml−1、Cat#LS004194、Worthington、Lakewood、NJ)とを含む3mlの、重炭酸塩の無い、血清の無い、無菌のDMEM(Cat#11965、Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)溶液にて消化し、異邦人の撹拌下で45分、37℃にて培養した。次いで、分離されたDRG神経細胞(〜1.5x106)を穏やかに遠心分離し、細胞を集め、10,000μg/mlのストックからの1%ペニシリン/硫酸ストレプトマイシン、30ng.ml−1の神経増殖因子、および10%のウシ胎仔血清(Hyclone)を含有するDRG培地DMEMで洗浄した。集められた細胞を、上述の動作濃度で、プラスミドまたはsiRNAを含有する核因子トランスフェクション試薬に再度懸濁した。次いで、細胞を、Amaxa Biosystem(Lonza、Basel、スイス)にて電気穿孔法プロトコルO−003に付し、ポリ−D−リジンおよびラミニンでコーティングされたガラスの12mmまたは15mmのカバーガラス上に置いた。トランスフェクション効率は定期的に20%ないし30%であり、細胞死はおよそ〜10%であった。Aδ−およびc−線維痛覚神経細胞(fiber nociceptive neuron)を狙うために、小さい直径の神経細胞を選択した。ラットDRG培養については、小さい細胞は〜<30μmであると考えられた。
【0069】
〔パッチクランプ電気生理現象〕
EPC 10 Amplifier−HEKAを用いて、室温で、全部の細胞の電圧クランプおよび電流クランプの記録を行った。電圧クランプCAD細胞記録のための内部溶液は、110 CsCl、5 MgSO、10 EGTA、4 ATP Na2−ATP、および25 HEPES(pH 7.3、290−310 mOsm/L)を含み(mMで)、外部溶液は、100 NaCl、10 塩化テトラエチルアンモニウム、1 CaCl、1 CdCl、1 MgCl、10 D−グルコース、4 4−アミノピリジン、0.1 NiCl、10 HEPES(pH7.3、310−315mosM/L)を含んだ(mMで)。DRGおよびHEK293細胞については、電圧クランプのための内部溶液は、140 CsF、1.1Cs−EGTA、10 NaClおよび15 HEPES(pH7.3、290−310mOsm/L)を含み(mMで)、外部溶液は、140 NaCl、3 KCl、30 塩化テトラエチルアンモニウム、1 CaCl、0.5 CdCl、1 MgCl、10 D−グルコース、10 HEPES(pH7.3、310−315mosM/L)を含んだ(mMで)。DRGについては、電流クランプのための内部溶液は、140 KCl、10 NaCl、1 MgCl、1 EGTA、10 HEPES(pH7.2)および1 ATP−Mg(pH7.3、285−295mOsm/L)を含み(mMで)、外部溶液は、154 NaCl、5.6 KCl、2 CaCl、2.0 MgCl、1.0 グルコースおよび10 HEPES(pH7.4、305−315mOsm/L)を含んだ(mMで)。クラスリンで媒介されるエンドサイトーシスを20μM Pitstop2(Cat#ab120687、Abcam、Cambridge、MA)で防止した実験では、実験の前に組織細胞ウェルにて化合物を培養した。Sutter InstrumentsからのP−97電極引き抜き器具で、Warner Instrumentsからの標準壁ホウケイ酸塩ガラスキャピラリから電極を引き抜き、熱で磨き上げて、内部溶液で満たしたときに最終抵抗を1.5−3メガオームとした。全体の細胞キャパシタンスと直列抵抗を、電圧クランプ実験についてP/4法にてデジタル的に減算した直線リーク電流で補償し、電流クランプ実験においてブリッジバランスを補償した。信号を10kHzでフィルター処理し、10−20kHzでデジタル化した。直列抵抗またはブリッジバランスが15メガオームを超える、または、実験方針から30%を超えて変動する細胞は、データセットから省いた。HEKAからのFitmasterソフトウェアおよびOriginLab CorpからのOrigin9.0ソフトウェアを用いて分析を行った。
【0070】
〔電圧クランププロトコル〕
CAD細胞およびHEK293細胞を、電流−密度(I−V)プロトコルおよび高速不活性化電圧プロトコルに付した。I−Vプロトコルでは、細胞は、5mVの増加量で−70mVから+60mVまでの20msの電圧ステップでの脱分極の前に、−80mVの保持電位に保持された。この結果、電流密度データの収集によって、電流対(vs.)電圧の関数としてのナトリウムチャンネルの活性化と、典型的に〜0−10mVの近くで観察されて細胞キャパシタンス(pF)に対して正規化されたピーク電流密度と、を分析することが可能になった。高速不活性化プロトコルでは、細胞は、5mVの増加量で−120mVから−10mVまでの間での500ms間の過分極化および再分極のパルスの前に、−80mVの保持電位に保持された。このステップは、20msに対する0mVのテストパルスが、最大電流に対して正規化された相対的な高速不活性化を示すことができるように、チャンネルの種々のパーセンテージを高速不活性化状態に調整した。ラットおよびヒトの両方からのDRGを、電流−密度(I−V)プロトコルとH−無限大(予備パルス(pre−pulse)不活性化プロトコル)とに付した。TTX−R寄与を評価するため、500nMのTTXで培養した後でI−Vプロトコルを実行した。−100mVに保持した後、5mVの増加量で−70mVから+60mVまでの200msの電圧ステップによって、ピーク電流の分析が可能になった。TTX−Rピーク電流密度は、常に、0mVに近い脱分極で、および、電圧ステッププロトコルの10ms以内で、測定された。NaV1.8およびNaV1.9 TTX−R電流の以前確認された特性を考慮すれば、この電圧依存性と活性化プロフィールは、およそNaV1.8電流のピーク電流密度の分析を示した。したがって、−60mVまでの電圧パルスに続く150msに存在するナトリウム電流を分析し、NaV1.9電流を分離する確立された方法である。しかしながら、CRMP2プラスミドで電気穿孔した細胞では、このプロトコルではNaV1.9電流は観察されなかった。CRMP2修飾の変化に応じたNaV1.9電流の分析は、記録溶液とトランスフェクションプロトコルの最適化との両方を必要としうる可能性がある。このTTX−R電流密度データから推論はすべきではない。
【0071】
H−無限大プロトコルでは、細胞を、−100mVに保持し、10mVの増加量で−120mVから0mVまで変化する1s間の調整電圧ステップに付した。この調整ステップの次に、電流を分析するための200ms間の0mVテストパルスが続いた。H−無限大プロトコルは、TTX−S電流を評価するために、全体の電流(−120mVの予備パルスの後に利用可能な電流)から、電気的に分離されたTTX−R(−40mVの予備パルスの後に利用可能な電流)を減算することを可能にする。このプロトコルは、TTX−Rチャンネル対(vs.)TTX−Sチャンネルの差動不活性化動力学(differential inactivation kinetics)によって可能であり、ここで、TTX−S電流は、活性化し、その後、1sの−40mVのパルス中に高速不活性化する。電圧プロトコル中の減速(run−down)または加速(run−up)を評価するために、また、時間の関数として変化した電流を有する細胞からデータを省くために、全てのプロトコルに対し、テストパルスを、電圧プロトコルの前後に実行した。
【0072】
〔留置くも膜下カテーテル〕
ラットを麻酔し(ケタミン/キシラジン麻酔、80/12mg/kg i.p.;Sigma−Aldrich)、定位の頭部ホルダーに置いた。くも膜下槽マグナが露出されて切断され、8cmのカテーテル(PE−10;Stoelting)を注入し、脊髄の腰部で終結させた。深い筋肉の中にカテーテルが縫合され(3−0絹縫合)、首の後ろで外面化(externalized)し、皮膚はオートクリップで閉じた。留置カニューレの注入の5−7日後の回復期間の後に、神経枝結紮損傷が誘導された。
【0073】
〔神経枝結紮損傷(SNI)〕
イソフルレン麻酔下(2L/分の空気中で、5%誘導、2.0%維持)で、左後部太腿の横表面上の皮膚を切開した。大腿二頭筋を無遠慮に(bluntly)切開し、坐骨神経の3つの末端分岐を露出した。簡単に言えば、共通の腓骨分岐および脛骨分岐を、4−0絹できつく縛り、結紮まで2.0mm離れた所で軸索切断した。偽の動物も同じ処理を受けたが、露出した神経は縛られなかった。切開の封鎖は、2つの層で行われた。筋肉は5−0 吸収性の縫合糸でいったん縫合され、皮膚は自動的に切り取られた。動物は、任意の試験の前の5−7日間、回復することが許容された。
【0074】
〔機械的異痛症〕
行動評価の前に30分間、吊り下げられた金網のかごの中でラットを新環境に慣れるようにさせた。左後部足の横足底表面に垂直になっていることが立証された、校正されたvon Freyフィラメント(g)に対する反応を測定するために、前(基準線前)、SNI後(基準線後)および5時間まで、を用いた。Dixonノンパラメトリックテストを用いて、前足引き閾値をグラムで計算し、GraphPad Prism 6.0において、前足引き閾値(平均±標準誤差、SEM)として表現した。全ての行動実験は、条件を隠して行われた。
【0075】
〔化合物の合成〕
以下の略語を用いる:1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt);ジクロロメタン(DCM);酢酸エチル(EtOAc);メタノール(MeOH);2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロフォスフェート(HBTU);N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA);N,N−ジメチルホルムアミド(DMF);エタノール(EtOH);トリエチルアミン(EtN);薄層クロマトグラフィー(TLC);核磁気共鳴(NMR);1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)および1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジニウム 3−オキシド ヘキサフルオロフォスフェート(HATU)。
【0076】
〔一般的手順〕
全ての化学物質は、商業的供給メーカーから購入した。全ての溶媒は、Fischer Scientificから得られた。フラッシュ・クロマトグラフィーは、シリカゲル(230/400メッシュ、Fisher Scientific)で行った。全ての無水反応は、窒素の正圧下で行った。HPLC−MS分析は、Zorbax C18逆相カラムを用いたAgilent 1100シリーズ機器にて行った。HRMSの結果は、apex−Qe機器にて得られた。全ての1H−NMRおよび13C−NMRスペクトルは、重水素を含む溶媒を用いて、BRUKER AVANCE−III 400MHz NMR機器で記録した。スペクトルは、ppmで報告され、重水素を含むDMSO(1Hに対して2.49ppm、13Cに対して39.5ppm)または重水素を含むクロロホルム(1Hに対して7.26ppm、13Cに対して77ppm)と関連する。高分解能質量スペクトル(HRMS)は、Bruker 9.4 T Apex−Qh FTICR質量分析計で得られた。全ての化合物は、MSまたはUV吸収度検出器のいずれかを用いて、HPLCによって純度を分析した。全ての最終化合物は、≧95%の純度を示した。
【0077】
〔3−フルオロ−4−ヒドロキシ−N−(4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル)ベンズアミドの合成〕
窒素注入口および磁気撹拌棒を備えた25mLの丸底フラスコに、200mg(1.28mmol)の3−フルオロ−4−ヒドロキシ安息香酸を加えた。反応に、塩化チオニル(2ml、27.32mmol)をゆっくり加えた。次いで、混合物を110℃で2時間撹拌し、その後、追加の塩化チオニル(1ml、13.66mmol)を加えた。反応混合物を還流させながら一晩中撹拌した。過剰の塩化チオニルをトルエンで共蒸発(co−evaporated)させ、225mg(100%)の所望の生成物を得た。無加工の生成物を次のステップで用いた。225mg(1.28mmol)の3−フルオロ−4−ヒドロキシベンゾイルクロライドを含有するフラスコに、CHCl(5mL)中の4−(4−メチルピペラジン−1−イル)アニリン(245mg、1.28mmol)およびEtN(131mg、1.29mmol)を加えた。次いで、混合物を室温で一晩中撹拌した。反応混合物に10mLの水を加え、得られた緑色の沈殿を濾過した。沈殿を真空で乾燥し、253mg(60%)の所望の生成物を暗緑色の固体として得た。H NMR(400MHz、クロロホルム−d)δ 8.36(s、1H)、7.64(s、1H)、7.09(d、J=8.5Hz、1H)、6.62(d、J=8.5Hz、2H)、5.20(s、2H)、4.32(bs、4H)、2.54(t、J=5.1Hz、4H)、2.34(d、J=0.7Hz、3H)。HPLC−MS:予想:330(MH+);実測:330。
【0078】
〔3−フルオロ−N−(4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル)−4−(2−(ピペリジン−1−イル)エトキシ)ベンズアミドの合成〕
窒素注入口および磁気撹拌棒を備えた丸底フラスコに、炭酸カリウム(254mg、1.84mmol)、3−フルオロ−4−ヒドロキシ−N−(4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル)ベンズアミド 3(200mg、0.62mmol)、ヨウ化カリウム(10mg、0.06mmol)、アセトニトリル(5mL)を加えた。混合物を30分間撹拌し、その後、4−(2−クロロエチル)−塩酸ピペリジン(112mg、0.61mmol)を加えた。次いで、混合物を還流温度で一晩中撹拌した。形成された灰色の沈殿を濾過し、水で洗浄し、次いで、真空で乾燥した。HPLCは、10%の3−フルオロ−4−ヒドロキシ−N−(4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル)ベンズアミドがまだ反応中に存在していることを示した。反応に、炭酸カリウム(38.10mg、0.28mmol)、ヨウ化カリウム(1.5mg、0.006mmol)、アセトニトリル(5mL)および4−(2−クロロエチル)塩酸ピペリジン(16.8mg、0.09mmol)を加えた。次いで、混合物を還流温度で一晩中撹拌した。形成された灰色の沈殿を濾過し、水で洗浄し、次いで、真空で乾燥し、151mg(55%)の生成物を得た。極逆相HPLCを用いて灰色の固体を精製し、51mg(6%)の純粋な3−フルオロ−N−(4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル)−4−(2−(ピペリジン−1−イル)エトキシ)ベンズアミドを蟻酸塩として得た。H NMR(400MHz、DMSO−d6)δ 9.55(s、1H、NH)、8.51(s、1H、HCOO)、7.61(d、J=9.1Hz、2H)、7.50(dd、J=13.5、2.3Hz、1H)、7.45(dd、J=8.6、2.3Hz、1H)、6.93(d、J=9.2Hz、2H)、6.55(t、J=8.6Hz、1H)、3.71−3.31(m、10H)、3.16(s、3H)、2.67(t、J=5.9Hz、2H)、2.44−2.32(m、4H)、1.53−1.40(m、4H)、1.41−1.26(m、2H)。13C NMR(101MHz、DMSO−d6)δ 165.58、164.95、145.33、133.46、125.42、121.46、119.14、116.27、114.78(d、J=21.2Hz)、59.89、59.17、54.21、51.81、46.82、42.81、25.91、24.24。HPLC−MS:予想:441(MH+);実測:441。
【0079】
〔エチル 4−ヒドロキシ−3−メトキシベンゾエートの合成〕
窒素注入口および磁気撹拌棒を備えた丸底フラスコに、EtOH(400mL)中のバニリン酸(10g、59.49mmol)の溶液を加えた。上記の溶液に、600mg(6.11mmol)のconc.HSOを加えた。次いで、混合物を還流温度で48時間撹拌した。溶液をロータリー・エバポレータにかけた。次いで、残渣に水(100mL)を加え、次いで、分液漏斗を用いて、分離された緑がかった油を除去した。次いで、生成物を真空で乾燥し、11.45g(98%)のエチル 4−ヒドロキシ−3−メトキシベンゾエートを得た。H NMR(400MHz、クロロホルム−d)δ7.62(dd、J=8.5、2.1Hz、1H)、7.53(d、J=1.8Hz、1H)、6.91(d、J=8.6Hz、1H)、4.33(q、J=7.1Hz、2H)、3.91(s、3H)、1.36(t、J=7.3Hz、3H)。HPLC−MS:予想:197(MH+);実測:197。
【0080】
〔エチル 3−メトキシ−4−((3−(トリフルオロメチル)ベンジル)オキシ)ベンゾエートの合成〕
窒素注入口および磁気撹拌棒を備えた25mLの丸底フラスコに、炭酸カリウム(1.86g、13.46mmol)、エチル 4−ヒドロキシ−3−メトキシベンゾエート(1.2g、6.12mmol)およびCHCN(26mL)を加えた。混合物を30分間撹拌し、その後、1−(ブロモメチル)−3−(トリフルオロメチル)ベンゼン(1.59g、6.65mmol)を加えた。次いで、混合物を還流温度で一晩中撹拌した。反応混合物をロータリー・エバポレータにかけた。次いで、残渣に水(100mL)を加え、次いで、水相をEtOAc(3x50mL)で抽出した。合わせた有機層を蒸発させ、次いで、真空で乾燥し、2.08g(96%)のエチル 3−メトキシ−4−((3−(トリフルオロメチル)ベンジル)オキシ)ベンゾエートをベージュ色の固体として得た。H NMR(400MHz、クロロホルム−d)δ 7.69(s、1H)、7.63(d、J=2.0Hz、1H)、7.60(d、J=2.0Hz、1H)、7.57(d、J=2.0Hz、1H)、7.56(s、1H)、7.48(t、J=7.7Hz、1H)、6.87(d、J=8.4Hz、1H)、5.22(s、2H)、4.34(q、J=7.1Hz、2H)、3.93(s、3H)、1.36(t、J=7.1Hz、3H)。HPLC−MS:予想:355(MH+);実測:355。
【0081】
〔エチル 4−((4−シアノベンジル)オキシ)−3−メトキシベンゾエートの合成〕
エチル 3−メトキシ−4−((3−(トリフルオロメチル)ベンジル)オキシ)ベンゾエートと同様の手順を用いて、エチル 4−((4−シアノベンジル)オキシ)−3−メトキシベンゾエートを2.04g(49%)のベージュ色の固体として合成した。H NMR(400MHz、クロロホルム−d)δ 7.80−7.35(m、6H)、6.82(d、J=8.4Hz、1H)、5.24(s、2H)、4.34(q、J=7.1Hz、2H)、3.93(s、3H)、1.36(t、J=7.1Hz、3H)。
【0082】
〔エチル 3−メトキシ−4−((4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル)オキシ)ベンゾエートの合成〕
エチル 3−メトキシ−4−((3−(トリフルオロメチル)ベンジル)オキシ)ベンゾエートと同様の手順を用いて、エチル 3−メトキシ−4−((4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル)オキシ)ベンゾエートを2.26gのベージュ色の固体として合成した。H NMR(400MHz、クロロホルム−d)δ 7.61(ddd、J=8.4、2.0、0.8Hz、1H)、7.56(s、1H)、7.45(d、J=8.9Hz、2H)、7.21(d、J=8.1Hz、2H)、6.86(d、J=8.4Hz、1H)、4.33(q、J=7.4Hz、1H)、3.92(s、7H)、1.36(t、J=7.1Hz、1H)。
【0083】
〔3−メトキシ−4−((3−(トリフルオロメチル)ベンジル)オキシ)安息香酸の合成〕
窒素注入口および磁気撹拌棒を備えた25mLの丸底フラスコに、MeOH(28mL)中の3−メトキシ−4−((3−(トリフルオロメチル)ベンジル)オキシ)ベンゾエート(2.08g、5.88mmol)の溶液を加えた。上記のものに、8mLの5% NaOHを加えた。反応混合物を室温で一晩中撹拌した。混合物をロータリー・エバポレータにかけ、20mLの冷水を加えた。水相を6N HClで酸性にした。沈殿を濾過し、固体を5mLの水で洗浄し、次いで、真空で乾燥し、純粋な3−メトキシ−4−((3−(トリフルオロメチル)ベンジル)オキシ)安息香酸として1.67g(87%)の白色の固体を得た。H NMR(400MHz、Methanol−d4)δ 7.77(s、1H)、7.71(d、J=6.7Hz、1H)、7.69−7.47(m、4H)、7.07(dd、J=8.4、2.7Hz、1H)、5.24(s、2H)、3.88(s、3H)。
【0084】
〔4−((4−シアノベンジル)オキシ)−3−メトキシ安息香酸の合成〕
3−メトキシ−4−((3−(トリフルオロメチル)ベンジル)オキシ)安息香酸と同様の手順を用いて、4−((4−シアノベンジル)オキシ)−3−メトキシ安息香酸を合成し、純粋で所望の生成物として1.28g(74%)の白色の固体を得た。H NMR(400MHz、クロロホルム−d)δ 7.65(dt、J=6.3、1.4Hz、2H)、7.61−7.56(m、1H)、7.56−7.50(m、3H)、7.24(t、J=1.7Hz、1H)、5.22(s、2H)、3.92(s、3H)。HPLC−MS(ネガティブモード):予想:282(M−1);実測:282。
【0085】
〔3−メトキシ−4−((4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル)オキシ)安息香酸の合成〕
3−メトキシ−4−((3−(トリフルオロメチル)ベンジル)オキシ)安息香酸と同様の手順を用いて、3−メトキシ−4−((4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル)オキシ)安息香酸を合成し、純粋で所望の生成物として2.096g(100%)の白色の固体を得た。H NMR(400MHz、クロロホルム−d)δ 7.58(dd、J=15.1、1.9Hz、2H)、7.45(d、J=8.7Hz、2H)、7.21(d、J=8.6Hz、2H)、6.87(d、J=8.5Hz、1H)、5.17(s、2H)、3.87(s、3H)。HPLC−MS(ネガティブモード):予想:341(M−1);実測:341。
【0086】
〔3−メトキシ−4−((3−(トリフルオロメチル)ベンジル)オキシ)ベンゾイルクロライドの合成〕
300mg(0.83mmol)の3−メトキシ−4−((3−(トリフルオロメチル)ベンジル)オキシ)安息香酸を含む25mLの丸底フラスコに、塩化チオニル(1.5ml、20.68mmol)を加えた。混合物を110℃で2時間撹拌し、その後、追加の塩化チオニル(1.0ml、13.78mmol)を加えた。反応混合物を還流させながら一晩中撹拌した。過剰の塩化チオニルをトルエンで共蒸発させ、292mg(>100%)の3−メトキシ−4−((3−(トリフルオロメチル)ベンジル)オキシ)ベンゾイルクロライドを得た。化合物を次のステップで用いた。
【0087】
〔4−((4−シアノベンジル)オキシ)−3−メトキシベンゾイルクロライドの合成〕
3−メトキシ−4−((3−(トリフルオロメチル)ベンジル)オキシ)ベンゾイルクロライドと同様の手順を用いて、4−((4−シアノベンジル)オキシ)−3−メトキシベンゾイルクロライドを合成し、ベージュ色の固体として451mg(85%)の所望の生成物を得た。H NMR(400MHz、クロロホルム−d)δ 7.75(d、J=8.5Hz、1H)、7.66(t、J=7.9Hz、2H)、7.55(s、2H)、7.53(s、1H)、6.85(dd、J=22.7、8.6Hz、1H)、5.26(s、2H)、3.93(s、3H)。
【0088】
〔3−メトキシ−4−((4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル)オキシ)ベンゾイルクロライドの合成〕
3−メトキシ−4−((3−(トリフルオロメチル)ベンジル)オキシ)ベンゾイルクロライドと同様の手順を用いて、3−メトキシ−4−((4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル)オキシ)ベンゾイルクロライドを合成し、ベージュ色の固体として463mg(78%)の所望の生成物を得た。化合物を次のステップで用いた。
【0089】
〔3−メトキシ−N−(4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル)−4−((4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル)オキシ)ベンズアミドの合成〕
窒素注入口および磁気撹拌棒を備えた丸底フラスコに、CHCl(5mL)中の3−メトキシ−4−((4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル)オキシ)ベンゾイルクロライド(147mg、0.41mmol)、4−(4−メチルピペラジン−1−イル)アニリン(78mg、0.41mmol)およびEtN(0.13mL、0.93mmol)を加えた。次いで、混合物を室温で一晩中撹拌した。沈殿を濾過し、薄い灰色の固体をCHClで洗浄し、次いで、真空で乾燥し、17mg(8%)の純粋な3−メトキシ−N−(4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル)−4−((4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル)オキシ)ベンズアミドを得た。H NMR(400MHz、DMSO−d6)δ 9.88(s、1H)、7.65−7.43(m、6H)、7.38(d、J=8.2Hz、2H)、7.11(d、J=8.6Hz、1H)、6.88(d、J=9.0Hz、2H)、5.18(s、2H)、3.82(s、3H)、3.16−2.89(m、4H)、2.44−2.33(m、4H)、2.18(s、3H)。13C NMR(101MHz、DMSO−d6)δ 164.70、150.50、148.97、148.35、147.81、136.73、131.46、130.43、129.87、128.12、122.34、121.81(d、J=10.9Hz)、121.29(d、J=14.4Hz)、120.77、115.84、112.90(d、J=39.0Hz)、111.66(d、J=59.9Hz)、69.30、56.13(d、J=16.7Hz)、55.07(t、J=30.8Hz)、48.91、46.21(d、J=31.9Hz)。HPLC−MS:予想:516(MH);実測:516。HPLC−MS:予想:516(MH);実測:516。
【0090】
〔3−メトキシ−N−(4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル)−4−((3−(トリフルオロメチル)ベンジル)オキシ)ベンズアミドの合成〕
窒素注入口および磁気撹拌棒を備えた丸底フラスコに、CHCl(5mL)中の3−メトキシ−4−((3−(トリフルオロメチル)ベンジル)オキシ)ベンゾイルクロライド(143mg、0.415mmol)、4−(4−メチルピペラジン−1−イル)アニリン(79.4mg、0.415mmol)およびEtN(0.15mL、1.08mmol)を加えた。次いで、混合物を室温で一晩中撹拌した。次いで、原料を濾過し、白色の固体を得た。白色の固体をCHClで洗浄し、真空で乾燥し、10mgの所望の化合物を得た。沈殿に10mLの水を加え、水相をCHClで抽出した。有機層をNaSOで乾燥し、濾過し、ロータリー・エバポレータにかけた。CHCl中の10% MeOHを用いて原料をプレパラティブTLCによって精製し、80mgの3−メトキシ−N−(4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル)−4−((3−(トリフルオロメチル)ベンジル)オキシ)ベンズアミドを得た。全体に渡っての収量は90mg(39%)であった。H NMR(400MHz、DMSO−d6)δ 9.86(s、1H)、7.82(s、1H)、7.75(d、J=9.0Hz、1H)、7.69(d、J=8.8Hz、1H)、7.62(t、J=8.2Hz、1H)、7.58−7.45(m、4H)、7.14(d、J=8.6Hz、1H)、6.89(d、J=9.1Hz、2H)、5.26(s、2H)、3.83(s、3H)、3.15−2.95(m、4H)、2.48(t、J=4.7Hz、4H、DMSO NMR溶媒ピークによって部分的にカバーされる)、2.21(s、3H)。13C NMR(101MHz、DMSO−d6)δ 164.72、150.47、149.10、147.84、138.81、132.25、131.52、130.08、128.37、125.93−125.06(m)、124.64(d、J=4.1Hz)、122.07、121.10、115.92、113.17、111.76、69.50、56.20、55.05、48.88、46.12。HPLC−MS:予想:500(MH+);実測:500。
【0091】
〔4−((4−シアノベンジル)オキシ)−3−メトキシ−N−(4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル)ベンズアミドの合成〕
3−メトキシ−N−(4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル)−4−((3−(トリフルオロメチル)ベンジル)オキシ)ベンズアミドの合成と同様の手順を用いて、4−((4−シアノベンジル)オキシ)−3−メトキシ−N−(4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル)ベンズアミドを調製した。H NMR(400MHz、DMSO−d6)δ 9.96(s、1H)、7.85(d、J=8.4Hz、2H)、7.67−7.57(m、4H)、7.57−7.50(m、2H)、7.09(d、J=9.1Hz、1H)、6.96(d、J=9.1Hz、2H)、5.27(s、2H)、3.84(s、3H)、3.80−3.50(m、4H)、2.75(s、3H)、2.58−2.28で(bs、DMSOピークの下にカバーされたピペラジン環からの4つのプロトン)。13C NMR(101MHz、DMSO−d6)δ 165.02、150.30、148.98、146.32、142.94、132.86(d、J=32.3Hz)、132.39、128.58(d、J=36.7Hz)、128.06、122.23(d、J=37.8Hz)、121.15(d、J=38.5Hz)、119.20、116.67、113.03(d、J=15.9Hz)、111.60(d、J=37.6Hz)、110.92、69.27、56.16(d、J=22.9Hz)、52.91、46.53、42.68(d、J=28.4Hz)。HPLC−MS:予想:457(MH);実測:457。
【0092】
〔4−((4−シアノベンジル)オキシ)−3−メトキシ−N−(4−(4−メトキシピペリジン−1−イル)フェニル)ベンズアミドの合成〕
窒素注入口および磁気撹拌棒を備えた丸底フラスコに、CHCl(5mL)中の4−((4−シアノベンジル)オキシ)−3−メトキシベンゾイルクロライド(142mg、0.47mmol)、4−(4−メトキシピペリジン−1−イル)アニリン(97mg、0.47mmol)およびEtN(0.14mL、1.00mmol)を加えた。反応混合物をHOで洗浄し、水相をCHClで抽出した。有機層をNaSOで乾燥し、濾過し、次いで、ロータリー・エバポレータを用いて濃縮した。残渣に10mLのCHClおよび4mLの3Nメタノール性HClを加え、室温で5時間撹拌した。次いで、反応混合物を濃縮し、次いで、真空で乾燥し、無加工の生成物として黒色の固体を得た。生成物をEtOHに溶解し、灰色がかった化合物を濾過し、真空で乾燥し、50mg(21%)の4−((4−シアノベンジル)オキシ)−3−メトキシ−N−(4−(4−メトキシピペリジン−1−イル)フェニル)ベンズアミド(100% HPLC純度)を得た。H NMR(400MHz、DMSO−d6)δ 10.34(s、1H)、7.92−7.82(m、4H)、7.79−7.66(m、2H)、7.62(d、J=6.7Hz、2H)、7.60−7.55(m、3H)、7.12(d、J=9.1Hz、1H)、5.28(s、2H)、3.85(s、3H)、3.61−3.48(m、5H)、3.27(s、3H)、2.29−2.11(m、2H)、2.08−1.88(m、2H)。13C NMR(101MHz、DMSO−d6)δ 165.40、150.71、149.10、142.97、133.86−131.37(m)、128.85、128.25、127.67、122.79−120.35(m)、121.14、119.16、113.31、112.83、112.28、111.67、111.00、69.31、56.34、56.22、55.84、55.53。HPLC−MS:予想:472(MH);実測:472。
【0093】
〔N−(4−(4−メトキシピペリジン−1−イル)フェニル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−カルボキサミドの合成〕
窒素注入口および磁気撹拌棒を備えた丸底フラスコに、CHCl(5mL)中のベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−カルボニルクロライド(136mg、0.74mmol)、4−(4−メトキシピペリジン−1−イル)アニリン(150mg、0.74mmol)およびEtN(0.30mL、2.15mmol)を加えた。次いで、混合物を室温で一晩中撹拌した。反応に20mLの水を加え、層を分離した。次いで、水相をCHCl(2x15mL)で洗浄した。次いで、合わせた有機溶媒をNaSOで乾燥し、濾過し、ロータリー・エバポレーションによって濃縮し、次いで、真空で乾燥した。原料をカラムクロマトグラフィーによって精製し、ヘキサン中の35% EtOAcで生成物を溶出させ、41mg(16%)のN−(4−(4−メトキシピペリジン−1−イル)フェニル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−カルボキサミドをベージュ色の固体として得た。H NMR(400MHz、CDCl)δ 7.54−7.50(m、3H)、7.45(s、1H)、7.00(d、J=8Hz、1H)、6.88(d、J=8Hz、2H)、6.09(s、2H)、3.43−3.37(m、2H)、3.30−3.25(m、1H)、3.23(s、3H)、2.82−2.76(m、2H)、1.91−1.87(m、2H)、1.52−1.44(m、2H)。13C NMR(101MHz、DMSO−d6)δ164.30、150.20、147.80、147.73、131.25、129.36、122.99、121.89、116.35、108.30、108.00(d、J=4.5Hz)、102.12(t、J=6.1Hz)、75.83、55.26(d、J=4.3Hz)、47.15、30.61。HPLC−MS:予想:355(MH);実測:355。
【0094】
〔N−(4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−カルボキサミドの合成〕
窒素注入口および磁気撹拌棒を備えた丸底フラスコに、CHCl(5mL)中のベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−カルボニルクロライド(164mg、0.89mmol)、4−(4−メチルピペラジン−1−イル)アニリン(170mg、0.89mmol)およびEtN(0.38mL、2.73mmol)を加えた。次いで、混合物を室温で一晩中撹拌した。次いで、形成された沈殿を濾過し、CHClで洗浄し、残渣を真空で乾燥し、205mg(68%)のN−(4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−カルボキサミドを黒みがかった固体として得た。H NMR(400MHz、CDCl3)δ 9.83(s、1H、NH)、7.55−7.52(m、3H)、7.50(s、1H)、7.00(d、J=8Hz、1H)、6.87(d、J=8Hz、2H)、6.09(s、2H)、3.05(t、J=8Hz、4H)、2.41(t、J=8Hz、4H)、3.23(s、3H)。13C NMR(101MHz、DMSO−d6)δ 164.30、150.20、147.83、147.73、131.45、129.35、12.03、121.87(d、J=4.5Hz)、115.85、108.30、108.00(d、J=4.5Hz)、102.15(t、J=6.1Hz)、55.07、48.90、46.21(d、J=4.3Hz)。HPLC−MS:予想:340(MH);実測:340。
【0095】
〔エチル 3−フルオロ−4−ヒドロキシベンゾエートの合成〕
エチル 4−ヒドロキシ−3−メトキシベンゾエートの調製と同様の手順を用いて、エチル 3−フルオロ−4−ヒドロキシベンゾエートを合成し、保存時にベージュ色の固体に変わるような黄色の固体として1.67g(56%)の所望の生成物を得た。1H NMR(400MHz、Methanol−d4)δ 7.87−7.36(m、2H)、7.94(t、J=7.6Hz、1H)、4.30(q、J=7.4Hz、2H)、1.34(t、J=7.1Hz、3H)。HPLC−MS:予想:185(MH+);実測:185。
【0096】
〔エチル 3−フルオロ−4−(2−モルフォリノエトキシ)ベンゾエートの合成〕
エチル 3−メトキシ−4−((3−(トリフルオロメチル)ベンジル)オキシ)ベンゾエートの調製と同様の手順を用いて、エチル 3−フルオロ−4−(2−モルフォリノエトキシ)ベンゾエートを合成し、ベージュ色の固体として1.26g(98%)の所望の生成物を得た。H NMR(400MHz、Chloroform−d)δ 7.77(d、J=8.5Hz、1H)、7.72(d、J=11.7Hz、1H)、6.95(t、J=9.1Hz、1H)、4.32(q、J=7.6Hz、2H)、4.21(t、J=5.7Hz、2H)、3.74−3.66(m、4H)、2.83(t、J=5.7Hz、2H)、2.63−2.45(m、4H)、1.35(t、J=7.1Hz、3H)。HPLC−MS:予想:299(M+1);実測:299。
【0097】
〔3−フルオロ−4−(2−モルフォリノエトキシ)安息香酸の合成〕
3−メトキシ−4−((3−(トリフルオロメチル)ベンジル)オキシ)安息香酸の調製と同様の手順を用いて、3−フルオロ−4−(2−モルフォリノエトキシ)安息香酸を合成し、純粋で所望の生成物としてベージュ色の固体の1.25g(100%)を得た。H NMR(400MHz、Methanol−d4)δ 8.51(s、1H)、7.70(d、J=8.5Hz、1H)、7.62(dd、J=12.4、2.0Hz、1H)、7.06(t、J=8.4Hz、1H)、4.23(t、J=5.4Hz、2H)、3.70−3.64(m、2H)、2.83(t、J=5.4Hz、2H)、2.67−2.56(m、4H)、2.51(t、J=6.0Hz、2H)。HPLC−MS:予想:270(MH+);実測:270。
【0098】
〔3−フルオロ−N−(4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル)−4−(2−モルフォリノエトキシ)ベンズアミドの合成〕
窒素注入口および磁気撹拌棒を備えた丸底フラスコに、3mL DMF中の3−フルオロ−4−(2−モルフォリノエトキシ)安息香酸(135mg、0.05mmol)、HATU(494mg、1.3mmol)およびDIPEA(0.1mL、0.73mmol)の混合物を加えた。次いで、混合物を室温で1時間撹拌した。上記の溶液に、4−(4−メチルピペラジン−1−イル)アニリン(95mg、0.50mmol)を加えた。混合物を室温で16時間撹拌した。混合物に飽和NaHCO溶液を加え、水相をCHClで抽出した。合わせた有機層をNaSOで乾燥し、濾過し、ロータリー・エバポレーションによって除去し、DCM中の10% MeOHを用いて原料をプレパラティブTLCによって精製し、126mg(57%)の純粋な3−フルオロ−N−(4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル)−4−(2−モルフォリノエトキシ)ベンズアミドを得た。H NMR(400MHz、Chloroform−d)δ 7.62−7.54(m、2H)、7.46(d、J=8.9Hz、2H)、6.96(t、J=8.5Hz、1H)、6.87(d、J=9.0Hz、2H)、4.19(t、J=5.7Hz、2H)、3.69(t、J=4.8Hz、4H)、3.15(t、J=5.2Hz、4H)、2.81(t、J=5.7Hz、2H)、2.60−2.49(m、8H)、2.32(s、3H)。13C NMR(101MHz、Chloroform−d)δ 163.98、153.32、150.86、149.57(d、J=10.9Hz)、148.42、130.16、128.08(d、J=5.5Hz)、123.50(d、J=15.5Hz)、121.78(d、J=14.4Hz)、116.49、115.37、114.10、67.55(t、J=7.3Hz)、66.90(t、J=15.2Hz)、57.30(t、J=8.6Hz)、55.04(t、J=11.8Hz)、54.11(t、J=12.9Hz)、49.36(t、J=3.6Hz)、46.11(d、J=14.2Hz)。HPLC−MS:予想:443(MH);実測:443。
【0099】
上記の本発明の記載は、例証と記述の目的のために示した。上記のものは、本発明をここに記載した形式に限定することを意図しない。本発明の記述は、1つ以上の実施形態およびある変形および修飾を含んでいるが、例えば、本記述の理解の後に当業者の技術および知識の範囲内となり得るような、他の変形および修飾も本発明の範囲内である。特許請求されるものの、代替の、交換可能な、および/または等価な構造、機能、範囲またはステップを含めて、このような代替の、交換可能な、および/または等価な構造、機能、範囲またはステップがここに記載されているかどうかにかかわらず、また、特許可能な主題を公に献呈することを意図せず、許可される範囲にまで、代替の実施形態を含む権利を得ることが意図される。ここで引用した全ての参考文献は、参照によりその全体が盛り込まれる。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5