(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6934198
(24)【登録日】2021年8月25日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】紫外線照射装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B01J 19/12 20060101AFI20210906BHJP
C02F 1/32 20060101ALI20210906BHJP
H01L 33/64 20100101ALI20210906BHJP
H01L 23/44 20060101ALI20210906BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20210906BHJP
【FI】
B01J19/12 C
C02F1/32
H01L33/64
H01L23/44
H05K7/20 D
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-538350(P2018-538350)
(86)(22)【出願日】2017年8月24日
(86)【国際出願番号】JP2017030340
(87)【国際公開番号】WO2018047629
(87)【国際公開日】20180315
【審査請求日】2020年2月10日
(31)【優先権主張番号】特願2016-176898(P2016-176898)
(32)【優先日】2016年9月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391031155
【氏名又は名称】株式会社日本フォトサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100077539
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 義仁
(72)【発明者】
【氏名】山越 裕司
【審査官】
宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−233646(JP,A)
【文献】
特表2009−532200(JP,A)
【文献】
特開2015−174026(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第104803445(CN,A)
【文献】
特開平09−097988(JP,A)
【文献】
特開平05−248788(JP,A)
【文献】
特開2015−091582(JP,A)
【文献】
特開2010−194414(JP,A)
【文献】
特開平11−087770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/12
H01L 23/44
H01L 33/64
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開放端と紫外線透光性の閉塞端と前記開放端の周囲に一体的に設けられたフランジとを有するハウジングと、
前記ハウジング内に収納された紫外線発光ダイオードであって、発光した紫外線が前記閉塞端を透過して前記ハウジング外に放射されるものと、
前記ハウジングの前記開放端の側に設けられ、前記閉塞端とは反対方向に延びた長手形状をなした放熱部と、
を備え、被処理液体が流れる容器内に前記ハウジングの前記閉塞端を突出させた状態で、かつ、前記ハウジングが内方に引き込まれないように前記フランジを介して該ハウジングを係止した状態で、該閉塞端とは反対方向に延びた前記放熱部の端部寄りの部分で前記容器に固定されるように配置され、前記容器内で前記被処理液体に接することにより、前記ハウジングの前記閉塞端を介して前記紫外線発光ダイオードからの紫外線を該被処理液体に照射し、かつ、該被処理液体により前記ハウジングを冷却し、さらに前記紫外線発光ダイオードによる発熱を前記放熱部を介して放出することを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
内周に雌ねじを設けたカラーをさらに備え、
前記放熱部には前記長手形状をなした部分の外周に雄ねじが設けられており、該雄ねじは前記雌ねじとねじ結合し、
前記カラーの上部は内側に縮径したフランジ部となっており、前記ハウジングの開放端に設けられた前記フランジは外側に伸径していて、前記フランジ部と係合可能であり、
前記カラーを回してねじを締めることにより、前記ハウジングの前記フランジが前記カラーの前記フランジ部に係合し、これにより、前記ハウジングが内方に引き込まれないように前記フランジを介して該ハウジングを係止することを特徴とする、請求項1の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記ハウジングと前記放熱部との間に充填された熱伝導物質をさらに備える、請求項1又は2の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記熱伝導物質は、前記ハウジングと前記放熱部との間の隙間の少なくとも一部に液密に充填された水又は放熱用オイルコンパウンドからなる、請求項3の紫外線照射装置。
【請求項5】
前記放熱部の一部が直接に前記被処理液体に接するように構成された、請求項1乃至4のいずれかの紫外線照射装置。
【請求項6】
前記ハウジングは耐圧性を持つ構造からなる、請求項1乃至5のいずれかの紫外線照射装置。
【請求項7】
前記ハウジングの前記閉塞端はドーム形状をなしている、請求項6の紫外線照射装置。
【請求項8】
開放端と紫外線透光性の閉塞端と前記開放端の周囲に一体的に設けられたフランジとを有するハウジング、及び前記ハウジング内に収納された紫外線発光ダイオードであって、発光した紫外線が前記閉塞端を透過して前記ハウジング外に放射されるものと、前記ハウジングの前記開放端の側に設けられ、前記閉塞端とは反対方向に延びた長手形状をなした放熱部と、を備えた紫外線照射装置を使用する紫外線照射方法であって、
被処理液体が流れる容器内に前記ハウジングの前記閉塞端を突出させた状態で、かつ、前記ハウジングが内方に引き込まれないように前記フランジを介して該ハウジングを係止した状態で、該閉塞端とは反対方向に延びた前記放熱部の端部寄りの部分で前記容器に固定されるように、前記紫外線照射装置を前記容器に配置することと、
前記容器内に配置された前記紫外線照射装置が前記被処理液体に接した状態で、前記ハウジングの前記閉塞端を介して前記紫外線発光ダイオードからの紫外線を該被処理液体に照射することと、
前記容器内で前記紫外線照射装置が前記被処理液体に接することで前記ハウジングが該被処理液体により冷却されることにより、且つ前記放熱部を介した放熱により、前記紫外線発光ダイオードによる発熱を冷却すること
からなる紫外線照射方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線発光ダイオード(UV−LED)を用いて被処理液体を紫外線処理するための紫外線照射装置及び方法に関し、特に、紫外線発光ダイオードからの発熱を簡易な構成で効率的に冷却する技術に関する。本発明は、例えば、超純水、純水、浄水、下水などの被処理液体に紫外線を照射して、生物の不活化、有機物分解などを行う技術分野に適用可能であり、さらには、医薬、農薬などの薬品製造の化学工場で行う光塩素化、光ニトロソ化などの光化学反応の技術分野に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
半導体素子のような発熱体を用いた装置においては、冷却のために放熱器やヒートシンクが用いられる。紫外線照射装置において、光源として紫外線発光ダイオードを用いる場合も、適切な冷却又は放熱を行う必要がある。下記特許文献1においては、紫外線発光ダイオードを冷却するために、専用の冷却用流体を導入するように構成することを開示している。また、加圧環境下にある被処理液体に対して紫外線を照射する装置においては、加圧環境下にある被処理液体に接する光源装置には所要の耐圧性が要求される。下記特許文献2においては、紫外線発光ダイオード等の紫外線光源から発光された紫外線を、光ファイバーを介して、加圧環境下にある被処理液体に接する位置まで伝達するように構成することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-65128
【特許文献2】特開2016-64111
【0004】
前記特許文献1においては、紫外線発光ダイオードを冷却するために専用の冷却用流体を導入するように構成しなければならないので、装置の構造が複雑化し、かつコスト高になる。前記特許文献2においては、紫外線発光ダイオード等の紫外線光源を加圧された被処理液体から離れて配置するので、紫外線光源装置に耐圧性をもたせる必要がなくなることで、耐圧性の問題は解決できる。しかし、紫外線発光ダイオード等の紫外線光源を冷却するための工夫については、格別の開示がなく、よって、そのためには、例えば前記特許文献1と同様の専用の冷却用流体を用いるしかない。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたもので、紫外線発光ダイオードを用いて被処理液体を紫外線処理するための紫外線照射装置において、紫外線発光ダイオードからの発熱を簡易な構成で効率的に冷却することを目的とする。
【0006】
本発明に係る紫外線照射装置は、開放端と紫外線透光性の閉塞端と
前記開放端の周囲に一体的に設けられたフランジとを有するハウジングと、前記ハウジング内に収納された紫外線発光ダイオード
であって、発光した紫外線が前記閉塞端を透過して前記ハウジング外に放射されるものと、前記ハウジングの前記開放端の側に設けられ、前記閉塞端とは反対方向に延びた長手形状をなした放熱部とを備え、
被処理液体が流れる容器内に前記ハウジングの前記閉塞端を突出させた状態で、かつ、前記ハウジングが内方に引き込まれないように前記フランジを介して該ハウジングを係止した状態で、該閉塞端とは反対方向に延びた前記放熱部の端部寄りの部分で前記容器に固定されるように配置され、前記容器内で前記被処理液体に接
することにより、前記ハウジングの前記閉塞端を介して前記紫外線発光ダイオードからの紫外線を該被処理液体に照射し、かつ、該被処理液体により前記ハウジングを冷却
し、さらに前記紫外線発光ダイオードによる発熱を前記放熱部を介して放出することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、紫外線発光ダイオードを収納したハウジングが被処理液体に接することにより、該被処理液体により該ハウジングを冷却し、もって、該ハウジング内に収納された紫外線発光ダイオードによる発熱を冷却するよう作用する。したがって、従来技術のように紫外線発光ダイオードを冷却するための専用の冷却用流体を導入する構成を用いることなく、紫外線発光ダイオードからの発熱を簡易な構成で効率的に冷却することができる。また、放熱部がハウジングに接触又は近接することにより、放熱部が紫外線発光ダイオードから吸収した熱の外部への放出を、ハウジングに接した被処理液体による冷却によって、促進することができる。
【0008】
さらに、前記紫外線発光ダイオードによる発熱を外部に放出するための放熱部を前記ハウジングの前記開放端の側に備え
ているので、ハウジングの一端(閉塞端)を紫外線発光部位として、他端(開放端)に放熱部を備えたコンパクトな構造を提供することができ、かつ、コンパクトな構造でありながら、ハウジングの紫外線透光性閉塞端の側における被処理液体による冷却と開放端の側における放熱部による冷却との組合せにより、効率的な冷却を行うことができる。
また、ハウジングは、開放端の周囲に一体的に設けられたフランジを有し、かつ、被処理液体が流れる容器内に前記ハウジングの前記閉塞端を突出させた状態で、かつ、前記ハウジングが内方に引き込まれないように前記フランジを介して該ハウジングを係止した状態で、該閉塞端とは反対方向に延びた前記放熱部の端部寄りの部分で前記容器に固定されるように配置されるので、被処理液体が流れる容器の内部が陰圧になることがある場合、ハウジング及び収納された紫外線発光ダイオードが容器内に引き込まれることを防止することができる。
【0009】
本発明に係る紫外線照射方法は、開放端と紫外線透光性の閉塞端と
前記開放端の周囲に一体的に設けられたフランジとを有するハウジング、及び前記ハウジング内に収納された紫外線発光ダイオード
であって、発光した紫外線が前記閉塞端を透過して前記ハウジング外に放射されるものと、前記ハウジングの前記開放端の側に設けられ、前記閉塞端とは反対方向に延びた長手形状をなした放熱部とを備えた紫外線照射装置を使用する紫外線照射方法であって、
被処理液体が流れる容器内に前記ハウジングの前記閉塞端を突出させた状態で、かつ、前記ハウジングが内方に引き込まれないように前記フランジを介して該ハウジングを係止した状態で、該閉塞端とは反対方向に延びた前記放熱部の端部寄りの部分で前記容器に固定されるように、前記紫外線照射装置を前記容器に配置することと、前記容器内に配置された前記紫外線照射装置
が前記被処理液体に
接した状態で、
前記ハウジングの前記閉塞端を介して前記紫外線発光ダイオードからの紫外線を該被処理液体に照射することと、
前記容器内で前記紫外線照射装置が前記被処理液体に
接することで前記ハウジングが該被処理液体により冷却されることにより、
且つ前記放熱部を介した放熱により、前記紫外線発光ダイオードによる発熱を冷却することからなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る紫外線照射装置の一実施例を示す外観斜視図。
【
図3】本発明に係る紫外線照射装置の使用例を示す側面略図。
【
図4】本発明に係る紫外線照射装置の別の使用例を示す側面略図。
【
図5】本発明に係る紫外線照射装置の別の実施例を示す縦断面図。
【
図6】本発明に係る紫外線照射装置のさらに別の実施例を示す縦断面図。
【
図7】本発明に係る紫外線照射装置において使用する放熱部の変更例を示す縦断面図。
【
図8】本発明に係る紫外線照射装置のさらに他の実施例を示す外観斜視図。
【
図10】本発明に係る紫外線照射装置の処理槽に対する取り付け構造の一例を示す一部断面側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明の紫外線照射装置1の一実施例を示す外観斜視図であり、
図2は
図1に示す紫外線照射装置1の縦断面図である。紫外線照射装置1のハウジング10は、全体として略円筒状をなしており、図中で下方に位置する開放端10aと、図中で上方に位置するドーム状の閉塞端10bとを有する。すなわち、ドーム状の閉塞端10bにつながるハウジング10の側面10cが円筒形状であり、該側面10cの一端が開放端10aとして開口している。ハウジング10内において、開放端10a寄りに放熱部12が配置され、閉塞端10b寄りにLEDユニット11が収納される。LEDユニット11は、ケース11a内に1又は複数個の紫外線発光ダイオード11bを収納してなり、ケース11aの上部に紫外線透過性の照射窓11cが形成されたものからなる。市販のLEDユニットで知られるように、照射窓11cは平板状である。LEDユニット11は、ハウジング10内において、ケース11aの下面が放熱部12に接し、照射窓11cがハウジング10の閉塞端10bに対面するように、所定の位置関係で固定的に配置される。ハウジング10は、少なくともドーム状閉塞端10bの部分が紫外線透光性を持つ材質で構成される。一例として、ハウジング10全体が紫外線透光性を持つ石英ガラスによって形成されている。この配置により、LEDユニット11の紫外線発光ダイオード11bから発光された紫外線が、照射窓11cから出て、ハウジング10のドーム状閉塞端10bを通り抜けて、外部に放射される。なお、ハウジング10内において、LEDユニット11の照射窓11cとドーム状閉塞端10bとの間には、短い距離の単なる空間が存在するだけであり、光ファイバーを介在させる必要がない。
【0012】
詳しくは後述するように、この紫外線照射装置1の使用時において、少なくともハウジング10のドーム状閉塞端10bの側が被処理液体に接し(浸潤され)、紫外線発光ダイオード11bからの紫外線を該被処理液体に照射するようになっている。このように、少なくともハウジング10のドーム状閉塞端10bの側が被処理液体に接する(浸潤する)ことにより、被処理液体に接した該ハウジング10の部分が冷却され、もって、該ハウジング10内に収納された紫外線発光ダイオード11bによる発熱を冷却するよう作用する。石英ガラスからなっていても、ハウジング10はドーム状閉塞端10b及び円筒状の側面10cを有するので、必要十分な耐圧性能をもたせることができる。例えば、一般の水処理装置の仕様として必要とされる1.0Mpa以上の耐水圧を持つようにハウジング10を構成することができる。
【0013】
放熱部12は、全体として、ハウジング10の側面10cの内周に緩く適合した円筒形状をなしており、熱伝導性の良い材質(アルミニウム、ステンレスなどの金属)からなり、内部が完全にソリッドである必要はなく、適宜に空間が形成されていてよい。例えば、LEDユニット11用の電気配線(図示せず)を通すための空間が少なくとも形成されており、ハウジング10の開放端10aから該電気配線を引き出すことができるようになっている。また、放熱部12は、アルミニウム、ステンレスなどの金属を主体として、その表面をフッ素樹脂で覆ったものからなっていてもよい。放熱部12は、LEDユニット11からの発熱を吸収し、吸収した熱をハウジング10の開放端10aから外部に放出する。また、放熱部12が吸収した熱は、ハウジング10の側面10cを経由しても外部に放出し得る。
【0014】
このように、紫外線発光ダイオード11bによる発熱を外部に放出するための放熱部12をハウジング10の開放端10aの側に備えることにより、ハウジング10の一端(閉塞端10b)を紫外線発光部位として、他端(開放端10a)に放熱部12を備えたコンパクトな構造を提供することができる。かつ、コンパクトな構造でありながら、被処理液体に接したハウジング10の閉塞端10bの側における該被処理液体による冷却と、開放端10aの側における放熱部12による冷却との組合せにより、効率的な冷却を行うことができる。また、放熱部12がハウジング10に接触又は近接することにより、放熱部12が紫外線発光ダイオード11bから吸収した熱の外部への放出を、ハウジング10に接した被処理液体による冷却によって、促進することができる。
【0015】
石英ガラス製のハウジング10の側面10cの内周と、そこに挿入された金属製の放熱部12の外周との間には隙間が生ずることが避けられないため、ハウジング10と放熱部12との間の熱伝導性を良好にするために、適宜の熱伝導物質14で該隙間を充填することが好ましい。そのために、放熱部12の外周の2箇所にOリング13a,13bを取り付け、該Oリング13a,13bがハウジング10の側面10cの内周面に液密に密着するように構成し、該2つのOリング13a,13bの間の前記隙間内に熱伝導物質14を充填する。熱伝導物質14としては、一例として、水又は放熱用オイルコンパウンドなどの流体又は半流体の充填剤を使用し、該Oリング13a,13bの間で液密に充填・封入される。
【0016】
このように、熱伝導物質14を介して放熱部12がハウジング10に熱的に密接することにより、放熱部12が紫外線発光ダイオード11bから吸収した熱の外部への放出を、ハウジング10に接した被処理液体による冷却によって、より一層促進することができる。
【0017】
ここで、放熱部12による冷却効果について考察してみる。発熱時の紫外線発光ダイオード11bの温度をT
J、その紫外線発光ダイオード11bがケース11aと接して該ケース11a内を伝わってのケース表面温度をT
Ref、そのケースの1ワット(W)当たりの温度勾配(これを熱抵抗という)をRθ
J・Ref、とすると、次式が成り立つ。
Rθ
J・Ref =(T
J−T
Ref)/P (式1)
ここで、Pは紫外線発光ダイオード11bの消費電力である。使用する市販のUV−LEDのRθ
J・Refが150℃/Wであったとする。0.13WのUV−LEDを80℃以下に保つように冷却するには、上記式1を適用して、
150℃/W=(80℃−T
Ref)/0.13W
から、T
Ref=60.5℃となり、よって、ケース表面温度T
Refが60.5℃以下になるように冷却する必要がある。
【0018】
ここで、冷却に関与する被処理水の温度をT
W℃とすると、放熱部12の冷却能力は次式で近似できる。
(T
Ref−T
W)/T
Ref =0.9
L (式2)
ここで、L [cm]は冷却棒の長さであり、底「0.9」に対するべき指数となっている。なお、「0.9」は、放熱部12の放熱特性を示す、当該材質に固有の値を例示している。式2の場合、水温が25℃のとき、L=5.06 [cm]となる。この「0.9」の実際値を、放熱部12として使用する金属の材質ごとに実験で求めれば、その放熱部12の長さLを容易に設計できる。
【0019】
なお、ハウジング10内に収納するLEDユニット11の数は1個に限らず複数個であってもよい。また、1個のLEDユニット11内に備わる紫外線発光ダイオード11bの素子数は1個に限らず複数個であってもよい。また、LEDユニット11のケース11aの形状は、円形あるいは方形等、任意であってよい。勿論、既存又は市販のLEDユニット11を使用することなく、紫外線発光ダイオード11bを適宜のアセンブリでハウジング10内に収納するようにしてもよく、その場合、照射窓11cは必ずしも必要とされない。
【0020】
図3は紫外線照射装置1の使用例を示す略図であり、(a)は処理槽20の縦断面略図、(b)は処理槽20の端面図である。一例として、処理槽20は円筒形の耐圧容器からなり、(a)に示すように、図示省略した流入管路から流入した被処理液体が処理槽20内を矢印方向に流れ、該処理槽20の一端20a側に設けられた流出管路21から排出される。(b)に示すように、処理槽20の一端20a側には、例えば4本の流出管路2が円周方向に略等間隔で設けられ、かつ、例えば5個の紫外線照射装置1が、それぞれのハウジング10のドーム状閉塞端10bを内向きにして、適宜の間隔で、取り付けられる。これにより、使用時において、各紫外線照射装置1において、少なくともハウジング10のドーム状閉塞端10bの側が処理槽20内に納められて被処理液体に接し(浸潤され)、紫外線発光ダイオード11bから放射された紫外線が処理槽20内の該被処理液体に照射され、該被処理液体に対する紫外線処理が行われる。また、被処理液体に接したハウジング10の閉塞端10bの側において該被処理液体による冷却が行われるので、紫外線発光ダイオード11bによる発熱を効率的に冷却することができる。
【0021】
図4は紫外線照射装置1の別の使用例として、円筒形の耐圧容器からなる処理槽30の側面に複数の紫外線照射装置1を取り付ける例を示している。(a)は処理槽30の縦断面略図、(b)は処理槽30の横断面略図である。処理槽30の側面に取り付けられた複数の紫外線照射装置1は、それぞれのハウジング10のドーム状閉塞端10bを内向きにして、適宜の間隔で配置される。図示省略した流入管路から流入した被処理液体が処理槽30内を矢印方向に流れ、各紫外線照射装置1において、少なくともハウジング10のドーム状閉塞端10bの側が処理槽30内に納められて被処理液体に接する。これにより、紫外線発光ダイオード11bから放射された紫外線が処理槽30内の該被処理液体に照射され、該被処理液体に対する紫外線処理が行われる。この場合も、被処理液体に接したハウジング10の閉塞端10bの側において該被処理液体による冷却が行われるので、紫外線発光ダイオード11bによる発熱を効率的に冷却することができる。
【0022】
本発明に係る紫外線照射装置1の具体的構造は、
図1、
図2に示すものに限らず、種々変形してよい。
図5は、本発明に係る紫外線照射装置1の別の実施例を示す縦断面図であり、ハウジング10の形状が
図2に示された形状と幾分相違している。すなわち、
図5におけるハウジング10は、開放端10aの周囲にフランジ10dを備えており、該紫外線照射装置1を処理槽20又は30に取り付けた状態において、フランジ10dの部分が処理槽20又は30の外壁面に引っかかって外側に留まるようになっている。これにより、処理槽20又は30の内部が陰圧になることがある場合、紫外線照射装置1が内部に引き込まれることを防止することができる。
図5において、その他の構成は、
図2に示された紫外線照射装置1と同一であるため、重複説明を省略する。
【0023】
図6は、本発明に係る紫外線照射装置1のさらに別の実施例を示す縦断面図であり、ハウジング10と放熱部12との関係が
図2に示された関係と相違している。
図6においては、紫外線照射装置1のハウジング10の側面10eの長さが
図2に示された側面10cよりも短くなっており、放熱部12は一部分12aのみがハウジング10内に挿入され、放熱部12の残りの部分12bはハウジング10の開放端10aから外側に露出している。放熱部12の1箇所のみにOリング13が取り付けられ、該Oリング13がハウジング10の側面10eの内周面に液密に密着し、LEDユニット11を収納したハウジング10の内部空間を液密に維持する。この構成においては、使用時において、ハウジング10の開放端10aから露出した放熱部12の部分12bが、処理槽20又は30内に位置し、該処理槽20又は30内を流れる被処理液体に接することになり、これにより、放熱部12が被処理液体によって直接的に冷却される。したがって、
図6の例においては、
図2の例において設けられている熱伝導物質14は不要である。なお、
図6に示すように、全体として円筒形状からなる放熱部12において、ハウジング10開放端10aから露出する部分12bの外径が、ハウジング10の側面10eの外径と略同程度となるように、該ハウジング10内に挿入される部分12aよりも、適宜大きくされる。
【0024】
図7は、本発明に係る紫外線照射装置1において使用する放熱部12の変更例を示す縦断面図である。
図7において、放熱部12は、前記
図6に示された例と同様に、一部分12aのみがハウジング10内に挿入され、放熱部12の残りの部分12bはハウジング10の開放端10aから外側に露出している。
図6と異なる点は、
図7においては、放熱部12の露出部分12bにおいて多数のフィン12cが形成されていて、その表面積が大きくされ、熱交換効率を高めていることである。放熱部12の露出部分12bには、フィン12cに限らず、表面積が大きくとれるような、その他適宜のラジエーター構造をもたせてよい。
【0025】
図8は、本発明に係る紫外線照射装置1のさらに他の実施例を示す外観斜視図であり、
図9は
図8に示す紫外線照射装置1の縦断面図である。
図8の例において、ハウジング10は、石英ガラスではなく、紫外線透光性を持つフッ素樹脂を素材としており、ドーム等の特定の形状を要することなく、素材自体によって必要な(1.0Mpa以上の)耐圧性をもたせることができるものである。そのため、
図8、
図9の実施例において、紫外線照射装置1のハウジング10の閉塞端10bは、ドーム形状ではなく、フラットな面からなっている。また、加工の容易性によって、フッ素樹脂からなるハウジング10は、複数のネジ15によって放熱部12に固定することができる。ハウジング10内には、上述した各実施例と同様に、紫外線発光用のLEDユニット11が収納される。
【0026】
図10は、紫外線照射装置1の処理槽20(又は30)に対する取り付け構造の一具体例を示す一部断面側面図である。
図10において、紫外線照射装置1のハウジング10は、前記
図5に示したものと似たようなフランジ10dを有しているが、その側面10cは前記
図6に示したもののように比較的短い。また、紫外線照射装置1は、熱伝導物質14を具備しておらず、放熱部12が処理槽20(又は30)内の被処理液体に直接的に接して冷却されるようになっている。つまり、放熱部12は一部分12aのみがハウジング10内に挿入され、放熱部12の残りの部分12bはハウジング10の開放端10aから外側に露出している。放熱部12の1箇所のみにOリング13が取り付けられ、該Oリング13がハウジング10の側面10eの内周面に液密に密着し、LEDユニット11を収納したハウジング10の内部空間を液密に維持する。
【0027】
図10において、放熱部12の露出部分12bの外周に雄ねじが設けられ、カラー16の内周に設けられた雌ねじにねじ結合する。カラー16の上部は内側に縮径したフランジ16aとなっており、パッキン17を介して、ハウジング10の開放端に設けられた外側に伸径したフランジ10dに当接しうる。これにより、カラー16を回してねじを締めることにより、ハウジング10のフランジ10dがパッキン17を介してカラー16のフランジ16aに係合し、処理槽20(又は30)内に負圧が発生したとしても、ハウジング10が放熱部12からすっぽ抜けることが起こらない。
【0028】
図10において、放熱部12の他端は外向きのフランジ12dとなっていて、該フランジ12dは、処理槽20(又は30)の取付用部位(壁面)20bに形成された取付孔の周縁部の台座に対してパッキン18を介して液密に係合する。放熱部12のフランジ12dの外側からエンドプレート19が押しつけられ、該エンドプレート19を複数のネジ21によって処理槽20(又は30)の取付用部位(壁面)20bにきつく固定する。こうして、紫外線照射装置1が処理槽20(又は30)の所定の取付用部位(壁面)20bに対して液密に取り付けられる。勿論、紫外線照射装置1の処理槽20(又は30)に対する取り付け構造は、
図10に示したものに限らず、その他任意の構造を採用してよい。