【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第30条第2項適用、一般社団法人日本機械学会関東支部 第22期総会・講演会の講演論文集(平成28年03月09日発行)で発表、一般社団法人日本機械学会関東支部主催 第22期総会・講演会(平成28年03月11日開催)で発表、一般社団法人日本機械学会動力エネルギーシステム部門 第21回動力・エネルギー技術シンポジウムの講演論文集(平成28年06月06日発行)で発表、一般社団法人日本機械学会動力エネルギーシステム部門 第21回動力・エネルギー技術シンポジウム(平成28年06月16日開催)で発表
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記混合ガスの組成を制御する工程では、前記第1の天然ガスから前記第2の天然ガスへの切り替え時間を制御することで、前記変化量が小さくなるように制御する請求項1または2に記載の燃焼制御方法。
前記混合ガスの組成を制御する工程では、前記第1の天然ガスおよび前記第2の天然ガスに、さらに所定の熱量を有する調整ガスを混合して前記混合ガスとすることで、前記変化量が小さくなるように制御する請求項1から4のいずれか1項に記載の燃焼制御方法。
前記第1の天然ガス、メタン、エタンおよびプロパンの密度と、前記第1の天然ガス、メタン、エタンおよびプロパンの熱量とから、前記第1の天然ガスが、メタン、エタンおよびプロパンの3成分のみからなることとして近似したときの第1近似組成比を算出し、
前記第2の天然ガス、メタン、エタンおよびプロパンの密度と、前記第2の天然ガス、メタン、エタンおよびプロパンの熱量とから、前記第2の天然ガスが、メタン、エタンおよびプロパンの3成分のみからなることとして近似したときの第2近似組成比を算出して、
前記第1近似組成比から算出される前記第1の熱量と、前記第2近似組成比から算出される前記第2の熱量と、に基づいて、前記変化量が小さくなるように前記調整ガスの混合量を制御する請求項5または6に記載の燃焼制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、工場では燃料として天然ガスが用いられている。通常、天然ガスはタンクなどに貯蔵された状態のものが使用される。このとき、タンクごとに異なる産地(異なる組成比)の天然ガスが貯蔵されていることがあった。しかしながら、連続運転している燃焼器に対して異なる組成比の天然ガスを切り替える際、熱量の変化に伴う不具合が生じることが想定される。具体的には、熱量の小さな天然ガスから熱量の大きな天然ガスに切り替える場合、熱量が急激に増加して火炎が長くなることが想定される。また、熱量の大きな天然ガスから熱量の小さな天然ガスに切り替える場合、熱量が急激に減少して失火することが想定される。そこで、異なる組成比の天然ガスの切替に伴う熱量の変動を抑制できる燃焼制御方法が求められていた。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、異なる組成比の天然ガスの切替に伴う熱量の変動を抑制できる燃焼制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、連続運転している燃焼器に供給する燃料を、第1の天然ガスから、第1の天然ガスと組成比の異なる第2の天然ガスへ切り替える際に行われる燃焼制御方法であって、切り替え時には、第1の天然ガスと第2の天然ガスとを含む混合ガスが燃焼器に供給され、第1の天然ガスの組成比から算出される第1の熱量と、第2の天然ガスの組成比から算出される第2の熱量と、
前記混合ガスを燃焼させたときの対象物の温度と、に基づいて、切り替え時の単位時間における前記燃焼器に供給された混合ガスの熱量の変化量または前記燃焼器に供給された前記混合ガスを燃焼させたときの対象物の温度の変化量が小さくなるように、切り替え時に変化する混合ガスの組成を制御する工程を有する燃焼制御方法を提供する。
本発明の一態様においては、前記対象物の温度とは、前記混合ガスを燃焼させたときの火炎の温度、前記燃焼器の内部の温度、又は前記混合ガスを燃焼させたときの火炎を利用して加熱又は燃焼させたときの温度である。
【0008】
本発明の一態様においては、混合ガスの組成を制御する工程では、第1の天然ガスから第2の天然ガスへの切り替え時間を制御することで、変化量が小さくなるように制御する方法としてもよい。
【0009】
本発明の一態様においては、切り替え時間が5秒より長い方法としてもよい。
【0010】
本発明の一態様においては、混合ガスの組成を制御する工程では、第1の天然ガスおよび第2の天然ガスに、さらに所定の熱量を有する調整ガスを混合して混合ガスとすることで、変化量が小さくなるように制御する方法としてもよい。
【0011】
本発明の一態様においては、調整ガスは、不活性ガス、メタンまたはプロパンである方法としてもよい。
【0012】
本発明の一態様においては、第1の天然ガス、メタン、エタンおよびプロパンの密度と、第1の天然ガス、メタン、エタンおよびプロパンの熱量とから、第1の天然ガスが、メタン、エタンおよびプロパンの3成分のみからなることとして近似したときの第1近似組成比を算出し、第2の天然ガス、メタン、エタンおよびプロパンの密度と、第2の天然ガス、メタン、エタンおよびプロパンの熱量とから、第2の天然ガスが、メタン、エタンおよびプロパンの3成分のみからなることとして近似したときの第2近似組成比を算出して、第1近似組成比から算出される第1の熱量と、第2近似組成比から算出される第2の熱量と、に基づいて、変化量が小さくなるように調整ガスの混合量を制御する方法としてもよい。
【0013】
本発明の一態様は、連続運転している燃焼器に供給する燃料を、第1の天然ガスから、第1の天然ガスと組成比の異なる第2の天然ガスへ切り替える際に行われる燃焼制御方法であって、切り替え時には、第1の天然ガスと第2の天然ガスとを含む混合ガスが燃焼器に供給され、第1の天然ガスの組成比から算出される第1の熱量と、第2の天然ガスの組成比から算出される第2の熱量と、
前記混合ガスを燃焼させたときの対象物の温度と、に基づいて、切り替え時の単位時間における前記燃焼器に供給された混合ガスの熱量の変化量または前記燃焼器に供給された混合ガスを燃焼させたときの対象物の温度の変化量が小さくなるように、天然ガスの供給量を制御する工程を有する燃焼制御方法を提供する。
【0014】
本発明の一態様においては、第1の天然ガスおよび第2の天然ガスは、経時的な組成変化を伴い、第1の熱量として、経時的な組成変化から予測される切り替え時の第1の天然ガスの組成比から算出した値を用い、第2の熱量として、経時的な組成変化から予測される切り替え時の第2の天然ガスの組成比から算出した値を用いる方法としてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、異なる組成比の天然ガスの切替に伴う熱量の変動を抑制できる燃焼制御方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
本実施形態は、燃料として供給される天然ガスの切替時での組成変化に着目し、天然ガスの熱量を制御しようとするものである。通常、天然ガスは、液化されてタンクなどに貯蔵された状態のものが使用される。このとき、タンクごとに異なる産地(異なる組成比)の天然ガスが貯蔵されていることがあった。しかしながら、連続運転している燃焼器に対して異なる組成比の天然ガスを切り替える際、熱量の変化に伴う不具合が生じることが想定される。このように異なる組成比の天然ガスの切替に伴う熱量の変動を模式的に表したグラフを
図1に示す。なお、連続運転している燃焼器に対して異なる組成比の天然ガスを切り替える際、天然ガスを燃焼させたときの対象物の温度の変化に伴う不具合が生じることもあるが、ここでの説明は省略し、熱量の変化に伴う不具合についてのみ説明する。
【0018】
異なる組成比の天然ガスの切替について
図1および
図2を用いて説明する。
図1は、本実施形態における異なる組成比の天然ガスの切替に伴うオーバーシュートを模式的に表したグラフである。
図2は、本実施形態における異なる組成比の天然ガスの切替に伴うアンダーシュートを模式的に表したグラフである。
【0019】
図1および
図2では、横軸に時間、縦軸に天然ガスの組成比に基づいて算出される温度を示している。ここでの温度は、天然ガスを燃焼させたときの火炎の温度を意味する。
図1および
図2に示すように、時間t
0からt
1の間は平均温度がT
Aの天然ガスAが供給される。一方で、時間t
2からt
3の間は平均温度がT
Bの天然ガスBが供給される。天然ガスAから天然ガスBに切り替え時には、時間t
1からt
2の間、第1の天然ガスと第2の天然ガスとを含む混合ガスが燃焼器に供給される。
【0020】
図1に示すように、温度T
A<T
Bとき、天然ガスAは、天然ガスBと比べて組成比から算出される熱量が低い。このとき、切り替え時の単位時間における混合ガス(天然ガスA+天然ガスB)の熱量の変化量が大きいほど、温度T
Bよりも温度が大きくなることがある。このような現象のことを、一般にオーバーシュートという。
【0021】
一方、
図2に示すように、温度T
A>T
Bとき、天然ガスAは、天然ガスBと比べて組成比から算出される熱量が高い。このとき、切り替え時の単位時間における混合ガスの熱量の変化量が大きいほど、温度T
Bよりも温度が小さくなることがある。このような現象のことを、一般にアンダーシュートという。
【0022】
そこで、異なる組成比の天然ガスの切替に伴う熱量の変動を抑制できる燃焼制御方法が求められていた。
【0023】
以下、本実施形態の燃焼制御方法について説明する。
本実施形態の燃焼制御方法は、連続運転している燃焼器に供給する燃料を、第1の天然ガスから、第1の天然ガスと組成比の異なる第2の天然ガスへ切り替える際に行われるものである。
【0024】
以下の説明において、
図1および
図2における天然ガスAを第1の天然ガス、天然ガスBを第2の天然ガスとする。本実施形態の燃焼制御方法は、第1の天然ガスの組成比から算出される第1の熱量と、第2の天然ガスの組成比から算出される第2の熱量と、に基づいて、切り替え時の単位時間における混合ガスの熱量の変化量または天然ガスを燃焼させたときの対象物の温度の変化量が小さくなるように、切り替え時に変化する混合ガスの組成を制御する工程を有する。
【0025】
本発明者らが検討を重ねた結果、混合ガスの熱量の変化量が5秒間あたり3MJ/m
3以上であると、オーバーシュートまたはアンダーシュートしやすいことがわかった。そのため、混合ガスの熱量の変化量が5秒間あたり3MJ/m
3未満になるように制御することが好ましい。
【0026】
また、本実施形態において「対象物の温度」は、天然ガスを燃焼させたときの火炎の温度であってもよいし、燃焼器の内部の温度であってもよいし、天然ガスを燃焼させたときの火炎を利用して加熱または燃焼させるものであってもよい。
【0027】
なお、以下では、燃焼器に供給される熱量の変化量が小さくなるように、切り替え時に変化する混合ガスの組成を制御することについて説明する。
【0028】
(1)切り替え時間
混合ガスの組成を制御する工程では、第1の天然ガスから第2の天然ガスへの切り替え時間を制御することで、変化量が小さくなるように制御してもよい。本実施形態では、切り替え時間(
図1または
図2のt
2−t
1)が5秒より長いこととしてもよい。切り替え時間は、5秒以上が好ましく、10秒以上がより好ましく、20秒以上がさらに好ましく、それ以上であってもよい。これにより、切り替え時間を十分増大させることができるので、切り替え時の単位時間における混合ガスの熱量の変化量を十分に小さくすることができる。
【0029】
(2)調整ガスの混合量
また、別の方法としては、混合ガスの組成を制御する工程では、第1の天然ガスおよび第2の天然ガスに、さらに所定の熱量を有する調整ガスを混合して混合ガスとすることで、変化量が小さくなるように制御してもよい。この方法は、単独で行ってもよいし、他の2つ以上の方法と適宜組み合わせて行ってもよい。
【0030】
所定の熱量を有する調整ガスとしては、例えばメタンまたはプロパンが挙げられる。なお、本実施形態において、所定の熱量を有する調整ガスとしては、所定の熱量は0MJ/m
3である不活性ガスを含んでもよい。
【0031】
一般に、天然ガスは、主成分としてメタン、エタンおよびプロパンを含んでいる。また、メタン、エタンおよびプロパンは、熱量がそれぞれ異なる。燃焼させたときに得られる熱量は、メタンが最も低く、エタン、プロパンの順に熱量が高くなることが知られている。天然ガスに含まれる上記3成分以外の成分は微量であることから、上記3成分の組成比を変えることにより、混合ガスの熱量を調整することが可能である。
【0032】
調整ガスの選択について具体例を挙げて説明する。
例えば、第2の天然ガスの組成比から算出される第2の熱量が、第1の天然ガスの組成比から算出される第1の熱量と比べて大きい場合、調整ガスとして窒素ガスなどの不活性ガスまたはメタンが好ましく用いられる。
【0033】
不活性ガスを用いる場合、その熱量は0MJ/m
3であるため、第1の天然ガスおよび第2の天然ガスよりも熱量が小さい。一方、メタンを用いる場合、その熱量は、エタンやプロパンのようにメタンよりも熱量の大きい成分を含む第1の天然ガスおよび第2の天然ガスと比べて小さい。したがって、不活性ガスまたはメタンを用いることで、混合ガスの熱量の変化量を小さくすることができる。
【0034】
一方、第2の天然ガスの組成比から算出される第2の熱量が、第1の天然ガスの組成比から算出される第1の熱量と比べて小さい場合、調整ガスとしてプロパンが好ましく用いられる。
【0035】
プロパンを用いる場合、その熱量は、メタンやエタンのようにプロパンよりも熱量の小さい成分を含む第1の天然ガスおよび第2の天然ガスと比べて大きい。したがって、プロパンを用いることで、混合ガスの熱量の変化量を小さくすることができる。
【0036】
(3)近似組成比
本実施形態では、熱量を算出する際に用いる天然ガスの組成比について、分析の結果明らかになる真の組成比を用いてもよいが、近似値を用いてもよい。本発明者らの検討により、天然ガスが、メタン、エタン、プロパンの3成分からなると仮定し、天然ガスに微量含まれるブタンやペンタンについては捨象して天然ガスの組成を近似しても、熱量を計算するにあたっては不具合が生じないことが分かった。
【0037】
ここで、天然ガスの組成比について、上記3成分のみ考慮した場合と、他の成分を含めた全成分を考量した場合とで、燃焼特性に差が生じるのか検証した。具体的には、公知のソフトウェアを用いて、一般的な天然ガスと、上記3成分の合計を1としたとき、当該天然ガスの上記3成分の割合になるように換算した模擬天然ガスとをそれぞれ計算し、燃焼特性を比較した。その結果、一般的な天然ガスと模擬天然ガスとの間で燃焼特性にほとんど差は見られなかった。
【0038】
公知のソフトウェアとしては、例えば、株式会社菱化システムが販売している詳細化学反応解析支援ソフトウェア「CHEMKIN−PRO」などが挙げられる。計算モデルには、例えば予混合よどみ流火炎モデルを採用し、ガス流量0.8m/秒、温度298.15K、圧力101.325kPa、当量比0.7の条件で計算することができる。なお、当量比とは、実際の燃料および空気の体積比を、理論混合比における燃料および空気の体積比で除した値を指す。
【0039】
本実施形態では、第1の天然ガスが、メタン、エタンおよびプロパンの3成分のみからなることとして近似したときの第1近似組成比を用いて制御してもよい。同様に、第2の天然ガスが、メタン、エタンおよびプロパンの3成分のみからなることとして近似したときの第2近似組成比を用いて制御してもよい。そして、第1近似組成比から算出される前記第1の熱量と、前記第2近似組成比から算出される前記第2の熱量と、に基づいて、混合ガスの熱量の変化量または前記天然ガスを燃焼させたときの対象物の温度の変化量が小さくなるように、(1)天然ガスの切り替え時間や、(2)調整ガスの混合量を制御することができる。
【0040】
具体的には、第1の天然ガス、メタン、エタンおよびプロパンの密度と、第1の天然ガス、メタン、エタンおよびプロパンの熱量とから、第1の天然ガスが、メタン、エタンおよびプロパンの3成分のみからなることとして近似したときの第1近似組成比を算出する。同様に、第2の天然ガス、メタン、エタンおよびプロパンの密度と、第2の天然ガス、メタン、エタンおよびプロパンの熱量とから、第2の天然ガスが、メタン、エタンおよびプロパンの3成分のみからなることとして近似したときの第2近似組成比を算出する。第1近似組成比および第2近似組成式は、次の式(S1)〜(S3)の連立式に基づいて算出することができる。
【0041】
ρ
f=ρ
1R
1+ρ
2R
2+ρ
3R
3 (S1)
〔式(S1)中、ρ
1〜ρ
3は、それぞれ、この順にメタン、エタンおよびプロパンの比重を表し、ρ
fは、混合ガスが、上記3成分のみからなるとして近似したときの混合ガスの熱量を表す。また、R
1〜R
3は、それぞれ、この順にメタン、エタンおよびプロパンの近似組成比を表す。〕
【0042】
Q
f=Q
1R
1+Q
2R
2+Q
3R
3 (S2)
〔式(S2)中、Q
1〜Q
3は、それぞれ、この順にメタン、エタンおよびプロパンの熱量を表し、Q
fは、混合ガスが、上記3成分のみからなるとして近似したときの混合ガスの熱量を表す。また、R
1〜R
3は上記と同様である。〕
【0043】
R
1+R
2+R
3=1 (S3)
〔式(S3)中、R
1〜R
3は上記と同様である。〕
【0044】
なお、天然ガスの密度(比重)は、燃焼器(例えば、バーナー)の上流において、ガス密度計を用いて測定される。ガス密度計としては、従来公知のものを用いることが可能であり、例えば横河電機株式会社製の「GD400」を使用することができる。なお、本明細書において、燃焼器の上流とは、タンクの出口から燃焼器の出口までの間を指す。天然ガスの測定のしやすさから、具体的に燃焼器の上流とは、タンクの出口または燃焼器の入口であることが好ましい。
【0045】
以上のように、メタン、エタン、プロパンのみからなる近似組成比を用いると、注目する天然ガスの成分の数が少なくて済むので、天然ガスの熱量の制御が容易となる。
【0046】
(4)経時的な組成変化
ここで、第1の天然ガスおよび第2の天然ガスは、経時的な組成変化を伴うことがあった。
図3は、本実施形態における天然ガスの経時的な組成変化に伴う熱量の変動を模式的に表したグラフである。液化天然ガスをタンクに保管する場合、通常、タンク内で機械的な撹拌を行わないため、タンクの上部では比重が比較的小さいメタンが多く存在しやすく、下部では比重が比較的大きいプロパンが多く存在しやすくなっている。このような現象は、タンク内の液化天然ガスの量が少なくなり、液化天然ガスの一部が気化する際に顕著に確認される。
【0047】
このようなタンクから天然ガスを流出させる際、比重が比較的大きいプロパンが流出しやすく、比重が比較的小さいメタンが残存しやすい。したがって、切り替え直前のタンクから流出する天然ガスは、天然ガスの平均組成よりもメタンの比率が大きくなっていることが予想される。一方で、切り替え直後のタンクから流出する天然ガスは、天然ガスの平均組成よりもプロパンの比率が大きくなっていることが予想される。
【0048】
このような場合、切り替え直前の天然ガスは、メタンの比率が大きいので、その熱量は天然ガスの平均熱量よりも低くなっている。そのため、
図3に示すように、切り替え直前(時間t
1直前)では、平均温度がT
Aの天然ガスAを供給しているにもかかわらず、温度がT
Aよりも低いT
cとなることが予想される。
【0049】
一方で、切り替え直後の天然ガスはプロパンの比率が大きいので、その熱量は天然ガスの平均熱量よりも低くなっている。そのため、
図3に示すように、切り替え直後(時間t
2直後)では、平均温度がT
Bの天然ガスBを供給しているにもかかわらず、温度がT
Bよりも高いT
Dとなることが予想される。
【0050】
このように、燃焼器に供給する天然ガスは、経時的な組成変化を伴うことがあった。また、このような継時的な組成変化に起因して、時間t
1から時間t
2の間に変化する温度幅が拡大し、オーバーシュートの幅が増加することが想定される。
【0051】
したがって、経時的な組成変化から予測される切り替え時の第1の天然ガスの組成比および経時的な組成変化から予測される切り替え時の第2の天然ガスの組成比を用いることにより、より正確に異なる組成比の天然ガスの切替に伴う熱量の変動を抑制することができる。
【0052】
このような事情を顧みて、本実施形態では、第1の熱量として、経時的な組成変化から予測される切り替え時の第1の天然ガスの組成比から算出した値を用い、第2の熱量として、経時的な組成変化から予測される切り替え時の第2の天然ガスの組成比から算出した値を用いることとしてもよい。予測方法としては、特に制限されるものではないが、例えば短期予測法などを用いることができる。
【0053】
また、本実施形態では、第1の天然ガスおよび第2の天然ガスの周期的な組成変化をさらに考慮して、第1の天然ガスおよび第2の天然ガスの組成比を近似してもよい。
【0054】
ここで、短期予測法とは、タンクから供給される天然ガスの組成比についての過去の測定値に基づいて、未来の予測値を得る方法を指す。例えば、
図1において時間t
1までの組成変化を測定したデータがあるとする。このような測定データは、ある程度の周期的な変化は含んでいるとしても、完全には周期的なデータとはなっていない。そこで、このような測定データについてカオス理論に基づいた軌道平行測度法(TPM:Trajectory Parallel Measure)により、時間t
1以降の近い将来の組成変化を予測することとしてもよい。
【0055】
また、上述のような測定データに基づいて、周期回帰分析やスペクトル解析を行うことにより測定データの周期回帰曲線を求め、得られる周期回帰曲線の周期に基づいて、近い将来(例えば時間t
B)の組成変化を予測することとしてもよい。
【0056】
その他、天然ガスの組成比の測定データに基づいて、天然ガスの組成比変化の周期性を近似する解析方法であれば、種々の統計的手法を用いることができる。
【0057】
以上のような方法によれば、異なる組成比の天然ガスの切替に伴う熱量の変動を抑制することができる。
【0058】
[第2実施形態]
以下、第2実施形態の燃焼制御方法について説明する。
第2実施形態は、
図1および
図2における天然ガスAを第1の天然ガス、天然ガスBを第2の天然ガスとする点で第1実施形態と共通している。
【0059】
本実施形態では、第1の天然ガスの組成比から算出される第1の熱量と、第2の天然ガスの組成比から算出される第2の熱量と、に基づいて、切り替え時の単位時間における混合ガスの熱量の変化量または天然ガスを燃焼させたときの対象物の温度の変化量が小さくなるように、天然ガスの供給量を制御する工程を有する。
【0060】
ここでは、第1の熱量および第2の熱量の説明は省略し、燃焼器に供給される熱量の変化量が小さくなるように、天然ガスの供給量を制御する工程について具体例を挙げて説明する。なお、以下では、燃焼器に供給される熱量の変化量が小さくなるように、天然ガスの供給量を制御することについて説明する。
【0061】
例えば、当量比が1より小さい場合であって、第2の天然ガスの組成比から算出される第2の熱量が、第1の天然ガスの組成比から算出される第1の熱量と比べて大きい場合、天然ガスの供給量を減少させる。これにより、第2の天然ガスの総熱量が減少する。そのため、
図1に示すグラフのT
B−T
Aの値が小さくなり、異なる組成比の天然ガスの切替に伴う熱量の変動が抑えられる。
【0062】
一方、当量比が1より小さい場合であって、第2の天然ガスの組成比から算出される第2の熱量が、第1の天然ガスの組成比から算出される第1の熱量と比べて小さい場合、天然ガスの供給量を増加させる。これにより、第2の天然ガスの総熱量が増加する。そのため、
図2に示すグラフのT
A−T
Bの値が小さくなり、異なる組成比の天然ガスの切替に伴う熱量の変動が抑えられる。
【0063】
以上のような方法によれば、第2実施形態においても第1実施形態と同様に、異なる組成比の天然ガスの切替に伴う熱量の変動を抑制することができる。