特許第6934228号(P6934228)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6934228テストベンチ用シールド性回転伝達機構及びそれを用いたモーター/インバーターテストベンチおよびEMC試験設備装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6934228
(24)【登録日】2021年8月25日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】テストベンチ用シールド性回転伝達機構及びそれを用いたモーター/インバーターテストベンチおよびEMC試験設備装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20210906BHJP
   F16C 3/02 20060101ALI20210906BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20210906BHJP
【FI】
   H05K9/00 P
   F16C3/02
   B60L3/00 L
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-36882(P2020-36882)
(22)【出願日】2020年3月4日
【審査請求日】2020年7月9日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】595104574
【氏名又は名称】株式会社オータマ
(73)【特許権者】
【識別番号】594168665
【氏名又は名称】株式会社戸田レーシング
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(74)【代理人】
【識別番号】100151068
【弁理士】
【氏名又は名称】塩崎 進
(72)【発明者】
【氏名】中山 勝
(72)【発明者】
【氏名】梶谷 郊二
【審査官】 小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/055578(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103149480(CN,A)
【文献】 実開昭62−109494(JP,U)
【文献】 特開2014−009941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
B60L 3/00
F16C 3/02
H02K 11/00
G01R 29/08
G01R 31/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部を定盤に対して固定した導電性剛体筒と、該導電性剛体筒の両端部に設けた金属ベアリングと、金属ベアリングに支持された炭素繊維強化プラスチック製のシャフトと、を有する、回転伝達装置であって、導電性剛体筒両端の金属ベアリング間距離が900mm以上であり、回転数が毎分1万6千回転以上可能とする剛性をシャフトが有しており、導電性剛体筒両端においてシャフト周囲に接触させ導電性剛体筒とシャフトとの間の空間を塞ぐシャフト表面の円周を囲む導電性樹脂繊維ブラシによって電磁波シールドをおこなう、前記回転伝達装置。
【請求項2】
導電性剛体筒と、該導電性剛体筒の両端部に設けたベアリングと、ベアリングに支持された炭素繊維強化プラスチック製のシャフトと、を含む電磁シールド境界用回転伝達装置であって、剛体筒両端部においてシャフトと導電性剛体筒との電気的導通を確保した、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の装置と、電磁シールド境界壁とを含む電磁シールド境界用回転伝達装置であって、導電性剛体筒両端部においてシャフトと導電性剛体筒との、また、境界壁において導電性剛体筒と境界壁との電気的導通を確保し電磁シールドを行う、前記回転伝達装置。
【請求項4】
導電性剛体筒と電磁シールド境界壁との接合部が、シールド壁に接合した導電性柔軟シールドを介して境界壁と導電性剛体筒とが接合する構成を含む、請求項に記載の装置。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載の装置を有する、電波暗室。
【請求項6】
毎分1万6千回転において運転される駆動負荷をさらに含む、請求項に記載の電波暗室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高回転数でも有効に回転を伝達できる、モーターテストベンチ、EMC試験等に使用するに好適な、高速回転伝達シャフト構造、同シャフト構造を用いたモーターテストベンチ用伝達装置、および、同シャフトを用いて電波暗室の室内と室外とに存在する、モーターや発電機等の機械的回転装置の間の、高トルク高回転を伝達するが、電磁的ノイズは遮断する、伝達装置および試験装置に関し、より詳しくは、モーター試験用モーターテストベンチに用いるもの、および、EV(Electric Vehicle)、HV(Hybrid Vehicle)、PHEV・PHV(Plug-in Hybrid Vehicle)、FCV(Fuel Cell Vehicle)等で使用される自動車の動力用電気モーターとインバーターシステムを電波暗室内において実車の走行状態を模擬しながら部品としてのEMC評価試験を実施するための装置に用いるのに好適な回転伝達機構に関する。
【背景技術】
【0002】
回転するシャフトを剛体のチューブ内に収容し、剛体チューブの両端に設けた軸受けでシャフトを回転可能に支持することによって、スラスト力伝達は剛体チューブが負担し、回転シャフトは回転力のみを伝達するという形式の回転伝達手段が、トルクチューブとして自動車の動力伝達分野では周知であった。
【0003】
自動車のトルクチューブは、懸架装置の揺動が起きてもスラスト力伝達は剛体チューブが負担するので、シャフトの回転力伝達機構が揺動への対処をする必要がないという利点を有するため、揺動を伴う箇所における回転力伝達に使用されてきた。
【0004】
しかしながら、トルクチューブは、シャフトを剛体チューブに入れて両端の軸受けで支持するという複雑な構造であるため、揺動への対処が必要な個所には使用されてきたが、回転力伝達の動力源と回転負荷との相対位置が元々変化しない、モーターテストベンチ、EMC試験装置等には、利用されていなかった。
【0005】
また、モーターテストベンチやEMC試験においては、従来、回転シャフトは金属シャフトを用いるのが通常であった。
【0006】
また、EMC試験で使用される電波暗室は、暗室外部から電磁波が侵入しないように設計・設備されているため、暗室内の供試機器から発生する電磁波のみを測定することができる設備であり、電波暗室内において供試機器に電磁波を照射あるいは注入することで誤作動等の現象を確認する際に、電波暗室外部に電磁波が漏洩しないように工夫されている。
【0007】
従来、自動車駆動用のモーターのEMC試験は、供試機器(モーター)を動作状態(スタンバイ/通常動作等)に設定して実施していた。しかしながら、モーターは本来の自動車走行時の負荷状態ではなく空転状態であった。
【0008】
また、モーター制御のためのインバーターのEMC試験は、負荷としてモーターを接続してはいたが、前述と同じく自動車走行状態を模擬した負荷状態ではなかった。
【0009】
従来のこのようなEMC評価方法に対して、国際規格であるCISPR 25 Edition 4:2016(エミッション測定)及びISO 11452-2:2019(イミュニティ試験)が策定され、試験セットアップに関する条件が規定された。これらによると、電波暗室内にセットされた供試品である電気モーターは、電波暗室外の負荷モーターに機械的に接続されなければならない。
【0010】
しかしながら、電波暗室の壁に穴をあけ、電気モーターと負荷モーターを機械的に接続した高速に回転するシャフトを電波暗室の内側と外側に貫通させる場合、電磁波を遮断することは容易ではない。
【0011】
更に、供試機器(電気モーター)と電波暗室の内側の壁に取り付けられた電波吸収体の先端までの距離は、前述の国際規格において1000mm以上であることと規定されている。そのため、電気モーターと負荷モーターの距離は、電波吸収体や接続されるカップリングなどの機械的な機構部分を考慮すると、1500mm以上となることが想定される。
【0012】
国際規格の試験セットアップ図にみられるような1000mm以上のシャフトを用いて高速に回転させると、シャフトの自重とたわみにより縄跳び現象が発生し設備が破損する危険があるが、国際規格には格別の対処を規定していない。
【0013】
従来、高速回転状態で試験をする電気モーターの近い位置に減速機を設置することで高速回転するシャフト部分を極力短くし、負荷モーターに接続されるシャフト側の回転数を数分の1から数十分の1に減速させることで、縄跳び現象の発生を抑えていた。
【0014】
しかしながら、電気モーターと負荷モーターの間に減速機を取り付けることで、その冷却システム及び温度管理、機械部分のメンテナンス、また、それらの静電気や電磁波対策等が必要となる。さらに、減速機をシャフトの途中に入れることで、電気モーターの評価試験において減速機の効率など電気モーター以外の不確かな要因も包含されるため、それらを考慮した上で評価を実施しなければならない。
電気自動車等に用いられるモーターのEMC試験において、従来技術には以上のような問題点が存在した。
【0015】
EMC試験とは関りのない、別の分野における回転力伝達装置の軽量化の技術の従来例として、特許文献1のようなものが存在した。
同文献には、「後側のプロペラシャフト44は、後述するようにスペースに余裕がある為、軽量化と高剛性化を狙い、炭素繊維強化樹脂(CFRP)製の中空パイプとしている」(段落番号0044)とあるように、自動車のプロペラシャフトにおいて軽量化と高剛性化のためにはCFRP製の回転力伝達手段を用いることが開示されている。しかしながら、これは自動車のプロペラシャフトであって、電気モーターのEMC試験との関連性は無く、必要トルクおよび回転数においても、EMC試験の電波暗室における室内と室外の間で回転力を伝達することを示すものではない。
【0016】
特許文献2にも、同様に「動力伝達軸用シャフトを、軽量高強度素材であるCFRP(炭素繊維強化プラスチック)で形成したパイプ状のCFRP部材」(段落番号0018)を、高剛性で軽量な回転伝達シャフトとして開示するが、テストベンチやEMC試験のためのものではなく、また、回転シャフトを剛体筒に収納した構成でもない、単なるシャフトである。
また、特許文献1及び2の利用は、今回の発明が達成した低速回転から15000rpm以上の高速回転を意図したものではない。
【0017】
電気自動車等に用いられるモーターのダイナモ試験やEMC試験に関する従来技術としては、上記の国際規格に適合した発明の特許文献は見当たらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2016−055658号公報
【特許文献2】特開2011−017413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
モーターのテストベンチ等において、回転シャフトのダイナモ側とモーター側において軸を正確に合わせる芯出しの作業は非常に困難を伴うものである。本願の発明は、この、駆動側と被駆動側との間で回転伝達を行う装置において、高速回転を可能とし、芯出し作業を容易化すること、また、スパンが長くても高速回転を可能とし、さらに、駆動側と被駆動側とを電波遮断するものにおいては、これらに加えて高速回転、高トルク伝達とともに優れた電波遮断をおこなうことができるようにすること等の事項を課題とする。
【0020】
駆動源回転装置と被駆動回転装置を回転シャフトで連結する場合、駆動源と被駆動回転装置葉は、ともに床に固定され、駆動源装置と被駆動装置との回転軸の芯出しは高精度でなければならない。そのため、両者を連結する回転シャフトと、駆動源、および、被駆動回転装置が、いずれも正確に芯がそろっていなければならない。この芯出し作業のためには、回転シャフトの両端近くを支持する軸受けが、回転シャフトを正確に支持した状態で、駆動源および被駆動回転体を固定する定盤に対して固定されなければならない。
【0021】
電波暗室回転装置の試験においては、電波暗室の壁に穴をあけ、その穴に高速回転する回転シャフトを貫通させなければならないので、電波暗室の電磁波に対する遮蔽は、当然に穴が無い状態に比べれば劣るものとならざるを得ない。
【0022】
また、モーターのトルクと減速機の減速比は、反比例の関係があるため、減速機を取り付けることにより、減速機の出力軸での回転数は減少するが、トルクは増加する。すなわち、接続される負荷モーターの回転数を数分の1に抑えることができるが、トルクは数倍必要となる。言い換えると、減速機を取り付けることで、電気モーターを高回転で動作させることは可能となるが、トルクが小さくなるため電気モーターの試験としては不十分となる。
【0023】
そのため、減速機を取り付けずに回転及びトルクが1:1の伝達機構を利用することが望ましいが、従来技術においては、減速機なしの試験機を作成すると、供試機器である電気モーターと負荷モーターを接続するシャフトが長くなり、高速に回転すると縄跳び現象が発生し、機器・設備が破損することがある。
よって、伝達ができるトルクが大きく、シャフトの長さは長く、それでいて、高速回転させても問題が起きず、電波暗室の壁を通過してしまう電磁ノイズは完全に遮断される、または、可能な限り小さく抑えられる、という性能を有する回転伝達機構を提供するという課題がある。
本発明は、この課題を解決する回転伝達機構を提供する。また、本発明は、この課題を解決しているので低速回転高トルクや高速回転低トルクなど様々な条件でのモーター等の回転電気機器のEMC試験を可能にする装置を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本願の発明は、以下の態様を含む。
[1]
両端部を定盤に対して固定した導電性剛体筒と、該導電性剛体筒の両端部に設けたベアリングと、ベアリングに支持された導電性繊維強化プラスチック製のシャフトと、を有する、回転伝達装置。
[2]
導電性剛体筒と、該導電性剛体筒の両端部に設けたベアリングと、ベアリングに支持された導電性繊維強化プラスチック製のシャフトと、を含む電磁シールド境界用回転伝達装置であって、剛体筒両端部においてシャフトと導電性剛体筒との電気的導通を確保した、[1]に記載の装置。
[3]
シャフトと導電性剛体筒間の電磁波的シールドは、シャフト両端において導電性樹脂繊維ブラシによって確保する、[2]に記載の装置。
[4]
繊維強化プラスチックは、炭素繊維を含むものである、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の装置。
[5]
導電性剛体筒と、該導電性剛体筒の両端部に設けたベアリングと、ベアリングに支持された回転シャフトと、電磁シールド境界壁とを含む電磁シールド境界用回転伝達装置であって、導電性剛体筒両端部においてシャフトと導電性剛体筒との、また、境界壁において導電性剛体筒と境界壁との電気的導通を確保した、前記回転伝達装置。
[6]
導電性剛体筒と電磁シールド境界壁との接合部が、シールド壁に接合した導電性柔軟シールドを介して境界壁と導電性剛体筒とが接合する構成を含む、[5]に記載の装置。
[7]
シャフト長が900mm以上、回転数が毎分1万6千回転以上において伝達トルクが350Nm以上である、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の装置
[8]
[1]〜[7]のいずれか一項に記載の回転伝達装置を有する、電波暗室。
【0025】
回転を伝達するシャフトを必要とするテストベンチにおいては、床に固定された軸受けに支持させた単純な回転シャフトでは、二つの軸受けの相互位置の調整が必要であって、芯出し作業に困難が生じるのであり、これに対して剛体筒の両端部で回転シャフトを支持した構造、所謂トルクチューブ形式のシャフトであれば、剛体筒を床に固定するだけで、回転シャフトの両端の芯出しがなされるので、剛体筒の位置決めを正確に設置するだけで、回転駆動源と被駆動回転装置の両者との芯出しが容易におこなえることに、本願の発明の発明者は想到した。
【0026】
また、縄跳び現象なしに高速回転を可能とするためには、回転シャフトがねじり剛性が高く、それでいて重量が軽いものであれば可能であるという点に本願発明の発明者は気が付いた。そして、そのためには、炭素繊維強化樹脂製のシャフトを用いればよいことに想到した。
炭素繊維強化樹脂製のシャフトは、カーボンが含まれているため、伝導される回転シャフトの電荷を金属ベアリングを経由して即座に接地電位に逃がすことができるという点にも想到した。
更に、シャフトとそれを覆う導電性剛体筒例えば金属製剛体筒カバーを電波暗室の壁に貫通させるが、金属カバーに電気的に接続された導電性繊維がシャフト表面の円周を囲むことで高周波をシールドできることに想到した。
【0027】
縄跳び現象は、金属シャフトを使用した場合には、両端ベアリングだけでは防止不可能である。また、導電性が高すぎるので、電波暗室に使用するには不向きである。
【0028】
高速回転するシャフトを導電性剛体筒であるシールドボックスで遮蔽し、シールドボックスの両はじにおいて金属ベアリングを利用して回転シャフトを支持し、グランディングの効果を狙うことができる。
さらに、シールドボックスの両はじに導電性樹脂ブラシをシャフトの周囲に接触させ、空間を塞ぐことでシールド効果を向上させる。
シールドボックスは導電性であり、電磁遮蔽壁と電気的にも接続され、電磁的遮蔽が保たれる。
【0029】
本発明においては、減速機は使用せずに負荷モーターのトルク能力を最大限利用する。減速機を使用しないため、供試機器である電気モーターと電波暗室外の負荷モーターの距離が長くなるが、炭素繊維強化樹脂製のシャフトを使用するので、軽量高剛性になり、低速回転から高速回転でも問題が生じない。
【0030】
本明細書において、導電性剛体筒の語は、アルミニウム、鉄、銅、真鍮等の金属類の導電性、すなわち室温で2x10−8Ωm〜100x10−8Ωmの体積抵抗値を有する材質を、導電性と称し、剛体、の語もこれら金属の有する程度の剛性を有することを意味する。
また、テストベンチの語は、床に固定した回転力駆動源と、同じ床に固定した被駆動回転装置とを連結して、回転駆動源の出力試験や、回転状態における電波試験等の、何らかのテストを行う設備を意味する。
さらに、「シャフト長」の語は、導電性剛体筒の両端のベアリング間距離をいうものである。
【発明の効果】
【0031】
導電性剛体筒は、円筒が最も好ましく、剛体であるので、回転シャフトの正確な位置決めのためには、導電性剛体筒が床に固定されれば足りる。導電性剛体筒の両端に近い位置でそれぞれ固定するのが、回転シャフトの位置決めが最も正確となる。
この床は、回転シャフトの両端の相対的位置が確定し不動となるように、定盤であってよい。
また、回転シャフトのハウジングとなる導電性剛体筒は、剛体であるので、壁を貫通させた場合の壁との接合部の、運転時の位置変動も極めて小さいものである。
【0032】
本願発明により電波暗室の壁に穴をあけても電磁波の漏洩がなく、EMC試験に必要な低いトルクから高いトルクまでの広範囲のトルクと毎分数十回転の低速から毎分数万回転までの高速回転を実現し、国際規格で規定されたEMC試験が可能となる。
また、シャフトを炭素繊維強化樹脂にすることで、縄跳び現象の発生を抑えることが可能となる。
それ故に、従来よりも高トルクかつ高速回転を伝達することが可能となり、たとえば、毎分2万回転、伝達トルク350Nmを、シャフト長900mmでも、それを超えるものでも実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の装置の一例を示す図である。
図2】本発明の装置の、導電性柔軟シールドを有する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1に基づいて説明する。軽量で高速回転に耐える回転シャフトを実現するために、シャフト1は炭素繊維強化樹脂製の中空シャフトを用いる。
そして、シールド性を与えるために、シャフトは導電性剛体筒としての円筒であるハウジング2の中を通し、ハウジング2の両端において、ベアリング4および導電性繊維ブラシ5を用いて、シャフトとの導電性及び電磁波シールドを確保する。
【0035】
導電性ハウジング2は、シールド壁3に接合されているとともに、装置が設置される床に固定される。
【0036】
回転シャフト1をシールドする導電性ハウジング2は、電波暗室のシールド壁3に電気的に接合し、電磁波の漏洩を防止する。壁の一方の側から他方の側への電流または電磁波の漏洩は、電流が導電シャフトを通じて侵入せずに、回転シャフトとハウジング2との導通手段を経由して、ハウジング2から壁へと逃げるので、防止される。シールド壁と導電性ハウジングとは、電磁波漏洩が十分に小さければ、完全に密閉されている必要はない。
この電波暗室は、例えば電気自動車用の電動機のEMC試験に使用するのに好適な電波暗室である。
【0037】
図2に示すように、シールド壁3と導電性ハウジング2との接合は、導電性柔軟シールド6によって行うこともできる。導電性柔軟シールド6は、たとえば、金属製の蛇腹、柔軟な導電性メッシュ材料、導電性織物等が使用可能である。
【0038】
本発明による、回転伝達機構は、電磁シールド性を保ったまま、従来に無い高トルクで高速回転する回転運動を伝達することを可能とするものである。したがって、これを用いたEMC試験用電波暗室は、従来に無い高速な回転での試験を可能とするものである。
【0039】
本発明による電波暗室は、EMC試験において必要な、9kHZ〜数GHzの電波を有効に遮断することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 回転シャフト
2 導電性剛体円筒(導電性ハウジング)
3 電波暗室シールド壁
4 ベアリング
5 導電性繊維ブラシ
6 導電性柔軟シールド
【要約】      (修正有)
【課題】高速回転を可能とし、電波暗室の壁を通過してしまう電磁ノイズを完全に遮断するか又は可能な限り小さく抑えられる回転伝達機構及び低速回転高トルクや高速回転低トルクなど様々な条件でのモーター等の回転電気機器のEMC試験を可能にする回転伝達装置を提供する。
【解決手段】回転伝達装置において、高回転高トルクでの回転伝達を可能とするために、繊維強化プラスチック製の回転シャフト1を、導電性ハウジング2内にベアリング4で支持し、導電性ハウジング2と回転シャフト1との電気導通を図る、導電性繊維ブラシ5を設ける。高回転高トルクでの回転伝達を可能とするために、両端以外に複数のベアリングを用いてもよい。
【選択図】図1
図1
図2