(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の前記アンテナ素子は、電波を放射又は受信する放射素子部を有し、当該放射素子部が、当該アンテナ素子の内側において、前記基体から隔離されていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ構造体。
前記分配器は、信号を伝搬する分配回路を有し、当該分配回路が、当該分配器の内側において、前記基体から隔離されていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ構造体。
複数の前記アンテナ素子は電波を送信又は受信する放射素子部をそれぞれ有し、当該放射素子部は、放射電極と接地電極とが対向するように設けられたパッチアンテナであって、
前記放射電極の平面形状が円形であって、交差する偏波の電波の送信及び受信ができるように、二つの給電電極が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ構造体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、アンテナを設置する際、多くの場合、景観や環境に配慮する必要があり、アンテナを見えにくくすることが求められている。しかし、従来のアンテナは、大型で厚みもあるため、アンテナを設置すること自体に難色を示されることも多かった。また、設置には、大型で厚みもあって重量が大きいことから、大掛かりな工事が必要であり、設置場所も限られていた。
本発明の目的は、簡易に取り付け可能で環境に溶け込みやすいアンテナ構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、個別にそれぞれが構成され、離散的に配置された複数のアンテナ素子と、複数の前記アンテナ素子の少なくとも側面に付着して、複数の当該アンテナ素子を埋め込んで固定するとともに、外形を板状に形作る基体と、複数の前記アンテナ素子と個別に構成され、当該アンテナ素子への信号を分配若しくは当該アンテナ素子からの信号を合成し、又は信号の位相を変更する、前記基体に少なくとも側面が付着して埋め込まれて固定され、当該アンテナ素子とは、当該基体に埋め込まれた信号を送受信する
可撓性を有する同軸ケーブルにて接続されている分配器とを備えるアンテナ構造体である。
請求項
2に記載の発明は、前記基体が可撓性を有する材料で構成され、前記アンテナ素子及び前記分配器が可撓性を有しない材料で構成されていることを特徴とする請求項
1に記載のアンテナ構造体である。
請求項
3に記載の発明は、前記基体を構成する前記材料が、ショアD硬度60以下の硬度を有することを特徴とする請求項
2に記載のアンテナ構造体である。
請求項
4に記載の発明は、複数の前記アンテナ素子は、列状に配置されていることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載のアンテナ構造体である。
請求項
5に記載の発明は、前記基体は、平面形状が円形又は多角形であることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1項に記載のアンテナ構造体である。
請求項
6に記載の発明は、前記基体の平面形状の中心を軸として回転させて、複数の前記アンテナ素子が構成するチルトの方向を、電波の方位角に対応させることを特徴とする請求項
5に記載のアンテナ構造体である。
請求項
7に記載の発明は、複数の前記アンテナ素子は、電波を放射又は受信する放射素子部を有し、当該放射素子部が、当該アンテナ素子の内側において、前記基体から隔離されていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ構造体である。
請求項
8に記載の発明は、複数の前記アンテナ素子は、前記放射素子部上に空気層を構成する空隙又は発泡体を備えていることを特徴とする請求項
7に記載のアンテナ構造体である。
請求項
9に記載の発明は、前記分配器は、信号を伝搬する分配回路を有し、当該分配回路が、当該分配器の内側において、前記基体から隔離されていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ構造体である。
請求項
10に記載の発明は、前記分配器は、前記分配回路上に空気層を構成する空隙又は発泡体を備えていることを特徴とする請求項
9に記載のアンテナ構造体である。
請求項
11に記載の発明は、複数の前記アンテナ素子は電波を送信又は受信する放射素子部をそれぞれ有し、当該放射素子部は、放射電極と接地電極とが対向するように設けられたパッチアンテナであって、前記放射電極の平面形状が円形であって、交差する偏波の電波の送信及び受信ができるように、二つの給電電極が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ構造体である。
請求項
12に記載の発明は、複数の前記アンテナ素子は、列状に配置されてセクタアンテナを構成し、複数の前記アンテナ素子への信号を分配若しくは複数の当該アンテナ素子からの信号を合成し、又は信号の位相を変更する、交差する前記偏波のそれぞれに対応して設けられる分配器が、複数の当該アンテナ素子が配置された配列の両側に分けて設けられていることを特徴とする請求項
11に記載のアンテナ構造体である。
請求項
13に記載の発明は、交差する前記偏波のそれぞれに対応して、外部から信号を入力し、外部へ信号を出力する入出力信号線を有し、前記入出力信号線は、複数の前記アンテナ素子の配列に沿った方向に前記基体から出るように設けられていることを特徴とする請求項
12に記載のアンテナ構造体である。
請求項
14に記載の発明は、表面及び裏面のいずれか一方の面に絵柄が描かれたシートが貼りつけられ、表面及び裏面のいずれか他方の面に粘着剤が塗布された請求項1乃至
13のいずれか1項に記載のアンテナ構造体である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、簡易に取り付け可能で環境に溶け込みやすくできる。
請求項
2に記載の発明によれば、基体が可撓性を有する材料で構成しない場合に比べ、アンテナ構造体を全体として可撓性を有するようにできる。
請求項
3に記載の発明によれば、ショアD硬度が60超である場合に比べ、設置の場所の曲面状態に追従できる。
請求項
4に記載の発明によれば、列状に配置されていない場合に比べ、セクタアンテナとして機能できる。
請求項
5に記載の発明によれば、平面形状が円形又は多角形でない場合に比べ、中心の回りに回転させても外見の差が見えない。
請求項
6に記載の発明によれば、回転させない場合に比べ、方位角の変更ができる。
請求項
7、
9に記載の発明によれば、隔離されていない場合に比べ、特性の変動が抑制される。
請求項
8、
10に記載の発明によれば、空隙又は発泡体を備えない場合に比べ、単体での特性が維持される。
請求項
11に記載の発明によれば、二つの給電電極を備えない場合に比べ、一つの放射電極で交差する偏波の電波の送受信ができる。
請求項
12に記載の発明によれば、両側に配置しない場合に比べ、分配器の配置が容易になる。
請求項
13に記載の発明によれば、アンテナ素子の配列に沿った方向に配置しない場合に比べ、信号線の配置が容易になる。
請求項
14に記載の発明によれば、容易に設置できると共に、環境に溶け込みやすくなる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
基地局アンテナは、扱う電波が5波、6波と多くなりつつある。このため、電波の数に対応するように設けられた複数のアンテナ素子を一つのレドーム内に収容することが、限界に近づいている。また、今後追加される電波は、周波数が高い。周波数が高くなると直進性が増すとともに、到達距離が短くなる。
そこで、アンテナを高い周波数に対応した薄型とし、場合によっては可撓性(フレキシブル性、柔軟性)を持たせて、室内における壁、天井、床など、又は、建物の壁面、路面に設けられた柱、道路などに貼り付けるなどにより簡易に設置可能とすると共に、景観や環境に配慮したアンテナ構造体を考えた。アンテナをこのような構造のアンテナ構造体とすることで、取り付けるための金具を不要にするとともに、設置コストも低減できる。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0011】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態が適用されるアンテナ構造体1の一例の斜視図である。ここでは、後述する基体60が透明であるとして、アンテナ構造体1の内部が見えるようにしている。
【0012】
アンテナ構造体1は、外形が板状に構成されている。そして、アンテナ構造体1は、電波の送信又は電波の受信を行なう複数(
図1では、6個)のアンテナ素子10、アンテナ素子10へ信号を分配する又はアンテナ素子10からの信号を合成する分配器20、30、アンテナ構造体1に信号を送信又はアンテナ構造体1から信号を受信する入出力信号線40−1、40−2を備える。以下では、信号の送信と受信とを合わせて信号の送受信などと表記する。
【0013】
ここでは、アンテナ構造体1は、アンテナ素子10が列状に配列されセクタアンテナとして機能するようになっている。そして、アンテナ構造体1は、偏波共用であって、一方の偏波がA側において送受信され、他方の偏波がB側において送受信される。よって、入出力信号線40は、二つ設けられており、入出力信号線40−1によってA側の信号が送受信され、入出力信号線40−2によって、B側の信号が送受信される。入出力信号線40−1、40−2を区別しない場合は、入出力信号線40と表記する。ここでは、アンテナ素子10が列状に配列された方向をz方向とし、アナテナ素子10が列状に配列された方向(z方向)と直交し、アンテナ構造体1の板状の面に沿った方向をx方向とする。そして、x方向及びz方向と右ネジの関係で直交する方向をy方向とする。さらに、+y方向から見たアンテナ構造体1の面をアンテナ構造体1の表面、−y方向から見たアンテナ構造体1の面をアンテナ構造体1の裏面と表記する。なお、y方向と直交する方向から見た面を側面と表記する。アンテナ構造体1の裏面側を下側、アンテナ構造体1の表面側を上側と表記する。アンテナ素子10、分配器20、30においても同様とする。
【0014】
また、2分岐の分配器20と3分岐の分配器30とを用いて、2段で信号の分配と合成とを行っている。分配器30がアンテナ素子10側、分配器20が入出力信号線40側に設けられている。入出力信号線40は、同軸ケーブル41とコネクタ42とで構成され、同軸ケーブル41の一端部が分配器20に接続され、他端部がコネクタ42に接続されている。アンテナ構造体1は、コネクタ42を介して、不図示の信号入出力装置に接続されている。
【0015】
そして、アンテナ構造体1は、アンテナ素子10と分配器30との間及び分配器20と分配器30との間を接続する複数の信号線50を備える。ここでは、信号線50は、一例として可撓性を有する同軸ケーブルである。
さらに、アンテナ構造体1は、アンテナ素子10、分配器20、30、信号線50を埋め込んで収容する基体60を備える。なお、入出力信号線40は、同軸ケーブル41の一部分及びコネクタ42が基体60から外側に飛び出している。
【0016】
アンテナ素子10、分配器20、30は、それぞれが個別の(分離した)、可撓性を有しない(剛性を有する)部品(モジュール)として構成されている。そして、アンテナ素子10は、離散的に配置されている。アンテナ素子10、分配器20、30の構造については、後述する。
【0017】
なお、可撓性を有するとは、曲げようとした場合、曲げようとする力に応じで曲がる性質をいう。一方可撓性を有しない(剛性を有する)とは、曲げることを想定して構成されていないことを示し、まったく曲げられないことを意味するものではない。よって、後述するように基体60が可撓性を有する場合であって、基体60が曲げ変形を受けた場合であっても、アンテナ素子10、分配器20、30は基体60の曲げ変形に追随して変形しないことを意味する。
【0018】
一方、基体60は、後述するように、例えばエポキシ、ウレタン、ポリイミドなどの樹脂で構成される。これにより、基体60は、アンテナ素子10、分配器20、30、入出力信号線40及び信号線50を埋め込んで、アンテナ素子10、分配器20、30などの相対的な位置を固定するとともに、アンテナ構造体1の外形を板状に形作る(成型する)。つまり、アンテナ構造体1は、基体60により固められた状態となっている。基体60については、後述する。
【0019】
そして、アンテナ構造体1の裏面及び表面は、基体60によりアンテナ素子10及び分配器20、30などの作る凹凸が埋め込まれて平坦になっている。これにより、アンテナ構造体1は、平板状になっている。なお、平坦とは、アンテナ素子10及び分配器20、30などの作る凹凸が感知されない程度になっていることをいう。なお、ここでは、アンテナ構造体1の裏面と表面とは、平行になっているとする。
【0020】
図1では、アンテナ構造体1は、平面形状が四角形の板状であって、側面がテーパ面になっている。つまり、表面が裏面に比べて小さく構成されている。アンテナ構造体1は、側面が表面及び裏面に対して垂直であってもよく、逆に裏面が表面に比べて小さい、逆のテーパ状になっていてもよい。側面をテーパ面にしたのは、アンテナ構造体1の厚み(y方向の大きさ)を目立たなくするためである。アンテナ構造体1の厚みは、用いる周波数によって変わる。よって、アンテナ構造体1に厚さが薄い場合には、側面をテーパ面にすることを要しない。
【0021】
そして、可撓性を有する素材により基体60を構成すれば、アンテナ構造体1は、全体として可撓性を有する。つまり、信号線50を可撓性を有する同軸ケーブルとすることで、例えアンテナ素子10、分配器20、30が可撓性を有しない(剛性を有する)部品で構成されていても、アンテナ構造体1は、全体として可撓性を有するようになる。特に、アンテナ素子10、分配器20、30のそれぞれをアンテナ構造体1において占める面積を小さく構成することで、アンテナ構造体1の可撓性がより高くなる。ここでは、6個のアンテナ素子10に信号を分配するために、2分岐の分配器20と3分岐の分配器30とで構成したが、6分岐の分配器を用いてもよい。分配器20、30のそれぞれが占める面積が、6分岐の分配器に比べて小さくなる場合には、2段に分けた分配器20、30で構成することがよい。
【0022】
また、曲げられる領域を確保するために、アンテナ構造体1において曲げる方向と交差する方向に、アンテナ素子10、分配器20、30を重複して配列しないようにすれば、アンテナ構造体1は、より曲げやすくなる。
【0023】
このようなアンテナ構造体1であれば、表面又は裏面のいずれか一方の面に両面テープなどにより粘着剤を予め塗布しておけば、容易に屋内の壁、天井、床などにアンテナ構造体1を貼り付けることで設置できる。このとき、アンテナ構造体1が可撓性を有すれば、曲面を有する壁や柱に貼り付けやすい。そして、アンテナ構造体1の粘着剤が塗布されていない面に壁、天井、床などの模様が描かれたシートを貼り付けておけば、アンテナ構造体1が環境に溶け込みやすい。また、アンテナ構造体1を壁、天井、床などに埋め込んだ後に、壁、天井、床などを施工すれば、アンテナ構造体1が見え(視認され)にくくなる。また、アンテナ構造体1を取り付ける前の状態を撮影しフィルムに印刷しておいて、アンテナ構造体1を取り付けた後に、取り付ける前の状態を印刷したフィルムをアンテナ構造体1の表面に貼り付けてもよい。このようにすることで、アンテナ構造体1を取り付ける前の状態が再現される。
【0024】
なお、アンテナ構造体1の粘着剤が塗布されていない面に、模様が描かれていてもよい。例えば、アンテナ構造体1の粘着剤が塗布されていない面に、「会議室A」、「避難場所」などの名称表示、「避難経路→」などの誘導表示などが予め設けられていてもよい。壁、天井、床などの模様の他、名称表示、誘導表示など、アンテナ構造体1の粘着剤が塗布されていない面に設けられる図形を絵柄と表記する。なお、フィルムに絵柄を設ける場合には、フィルムはアンテナとしての特性に影響を与えにくいものがよい。
このようにすれば、アンテナ構造体1は、環境に溶け込み、景観や雰囲気を害さない。
【0025】
また、アンテナ構造体1は、道路の表面部分に埋め込まれてもよい。このときも、アンテナ構造体1が可撓性を有すれば、路面などの凹凸に追従してアンテナ構造体1を貼り付けることが可能となる。この場合、アンテナ構造体1には、車などが載ったり、通過したりしても壊れない強度が必要となる。この場合であっても、アンテナ構造体1は、基体60にて固められた状態であるので、基体60を構成する材料を選択すれば強度を確保しやすい。
【0026】
以上説明したように、アンテナ素子10及び分配器20、30は、可撓性を有しない(剛性を有する)部品として構成され、入出力信号線40及び信号線50は、可撓性を有する同軸ケーブルで構成されている。よって、基体60を可撓性を有する材料で構成して、アンテナ構造体1が全体として可撓性を有するように構成しても、アンテナとしての特性が変動することが抑制される。
【0027】
以下では、アンテナ構造体1をより詳細に説明する。
図2は、アンテナ構造体1の平面図である。
アンテナ構造体1は、アンテナ素子10を6個備える。個々のアンテナ素子10をアンテナ素子10−1、10−2、10−3、10−4、10−5、10−6と表記する。なお、x方向、y方向及びz方向は、
図1と同じである。
アンテナ素子10は、平面形状が角を切り落とされた正方形である。なお、角を切り落とさなくともよく、正方形でなくともよい。
【0028】
そして、アンテナ構造体1は、2分岐の分配器20を2個備える。個々の分配器20を分配器20−1、20−2と表記する。また、アンテナ構造体
1は、3分岐の分配器30を4個備える。個々の分配器30を分配器30−1、30−2、30−3、30−4と表記する。
【0029】
アンテナ構造体1には、2つの入出力信号線40(入出力信号線40−1、40−2)から2つの信号が入力される。入出力信号線40−1、40−2には、振動方向が90°異なる偏波(具体的には、z方向に対して±45°の偏波)の信号が送信される。つまり、アンテナ構造体1は、偏波共用であって、2MIMO(Multiple-Input and Multiple-Output)に対応しうる。
【0030】
接続関係を説明する。
入出力信号線40−1は、2分岐の分配器20−1の入力端子に接続されている。分配器20−1は、入力した信号を2分岐して二つの出力端子から出力する。分配器20−1の一方の出力端子は、分配器30−1の入力端子に接続されている。分配器20−1の他方の出力端子は、分配器30−2の入力端子に接続されている。
入出力信号線40−2は、2分岐の分配器20−2の入力端子に接続されている。分配器20−2は、入力した信号を2分岐して2つの出力端子から出力する。分配器20−2の一方の出力端子は、分配器30−3の入力端子に接続されている。分配器20−2の他方の出力端子は、分配器30−4の入力端子に接続されている。
【0031】
アンテナ素子10−1〜10−6のそれぞれは、二つの入力端子を備える。
3分岐の分配器30−1の三つの出力端子のそれぞれは、アンテナ素子10−1、10−2、10−3の一方の入力端子に接続されている。また、分配器30−2の三つの出力端子のそれぞれは、アンテナ素子10−4、10−5、10−6の一方の入力端子に接続されている。
3分岐の分配器30−3の三つの出力端子のそれぞれは、アンテナ素子10−1、10−2、10−3の他方の入力端子に接続されている。また、分配器30−4の三つの出力端子のそれぞれは、アンテナ素子10−4、10−5、10−6の他方の入力端子に接続されている。
【0032】
このようにして、入出力信号線40−1に入力した信号は、分配器20−1、30−1、30−2を経由してアンテナ素子10−1〜10−6の一方の端子に分配される(A側)。そして、入出力信号線40−2に入力した信号は、分配器20−2、30−3、30−4を経由してアンテナ素子10−1〜10−6の他方の端子に分配される。
【0033】
なお、アンテナの可逆性により、アンテナ素子10−1〜10−6が受信した信号は、上記の経路を逆に経由して合成され、入出力信号線40−1、40−2から出力される。
【0034】
図2に示すように、アンテナ素子10−1〜10−6の配列のA側とB側と(両側)に分けて、二つの偏波のそれぞれに対応する分配器20、30及び信号線50を分けて配置している。このようにすることで、分配器20、30及び信号線50の配置がしやすくなる。
【0035】
また、二つの偏波に対する入出力信号線40(入出力信号線40−1、40−2)をアンテナ素子10−1〜10−6の配列に沿った方向に設け、平面形状が四角形の基体60の短辺側から飛び出すようにしている。このようにすることで、アンテナ構造体1をセクタアンテナとして用いるために、アンテナ素子10−1〜10−6の配列(z方向)を重力の方向である地表に対して垂直な方向(鉛直方向)に配置した場合、上方(室内であれば天井側)又は下方(室内であれば床側)から入出力信号線40に接続される配線を設ければよい。つまり、配線の施工が容易になる。さらに、複数のアンテナ構造体1を並列に配置する場合であっても、隣接するアンテナ構造体1の入出力信号線40が邪魔になることがない。また、上下に二つのアンテナ構造体1を積み重ねて用いることも可能になる。上方に上側に配置したアンテナ構造体1からの配線を、下方に下側に配置したアンテナ構造体1からの配線を設ければよい。
【0036】
図3は、アンテナ素子10の構造を説明する図である。
図3(a)は、アンテナ素子10近傍の断面図(
図2のx方向の断面図)、
図3(b)は、アンテナ素子10の放射素子部11の平面図である。
図3(a)には、アンテナ素子10に加え、アンテナ素子10近傍の基体60を示している。
【0037】
まず、
図3(a)を参照して、基体60を説明する。
基体60は、アンテナ構造体1の下側に位置する下層部61と、アンテナ素子10、分配器20、30、信号線50及び入出力信号線40の一部を埋め込む埋込部62と、及びアンテナ構造体1の上側に位置する上層部63とを備える。ここでは、下層部61、埋込部62及び上層部63は、一体(連続した構造体)として構成されている。つまり、アンテナ素子10、分配器20、30、信号線50及び入出力信号線40の一部は、基体60を構成する下層部61、埋込部62及び上層部63によって包み込まれるように封止されている。つまり、アンテナ構造体1は、基体60により固められた状態となっている。そして、アンテナ構造体1は、表面が平坦な平板状に構成されている。
なお、下層部61、埋込部62及び上層部63は、一体(連続した構造体)として構成されなくてもよい。
【0038】
アンテナ素子10は、パッチアンテナを構成する放射素子部11と、無給電素子部12と、収容部13とを備える。放射素子部11は、絶縁基板111と、絶縁基板111の裏面(−y方向の面)に設けられた接地電極112と、絶縁基板111の表面(+y方向の面)に設けられた放射電極113とを備える。無給電素子部12は、絶縁基板121と、絶縁基板
121の表面(+y方向の面)に設けられた無給電電極122とを備える。
絶縁基板111、121は、例えば、ガラスエポキシ、ポリテトラフルオロエチレンなど誘電損失(tanδ)の小さい電気絶縁性材料で構成されている。接地電極112、放射電極113及び無給電電極122は、銅(箔)又は銀(箔)などの薄い導電性材料で構成されている。
【0039】
そして、収容部13は、平面視した時の外形が正方形で、中央に平面視した時の形状が円形のカップ状に刳り貫かれた底部131と、無給電素子部12を保持し、底部131に対して蓋として機能する蓋部132とを備える。底部131には、放射素子部11が収納されている。蓋部132には、表面側(y方向側)から無給電素子部12が嵌め込まれている。つまり、蓋部132の表面と無給電素子部12の表面とが平坦になるように、無給電素子部12は、蓋部132の表面側(y方向側)に設けられたくぼみに落とし込まれている。このようにして、収容部13は、放射素子部11を保持するとともに、放射素子部11に対して定められた距離に無給電素子部12を保持する。つまり、放射素子部11と無給電素子部12とは、対向するように配置されている。
【0040】
なお、収容部13は、底部131と蓋部132とが固定されている。ここでは、一例として、底部131に設けた突起に蓋部132に設けた穴を嵌め込むことで、底部131と蓋部132との位置決めを行っている(
図1、2のアンテナ素子10の表面に表記した小丸参照)。そして、底部131と蓋部132とは、接着剤により固定されている。アンテナ素子10は、基体60(下層部61、埋込部62、上層部62)により包み込まれて封止されるので、接着剤による底部131と蓋部132との固定は簡易であってよい。また、底部131と蓋部132とを、ネジにより固定してもよく、凸状部材を凹部に嵌め込むスナップフィット構造により固定してもよい。
【0041】
図3(a)、(b)により、放射素子部11を説明する。
放射素子部11の絶縁基板111は、平面形状が円形に構成されている。そして、絶縁基板111の裏面(−y方向の面)には、全面に接地電極112が形成されている。絶縁基板111の表面(+y方向の面)には、中央部に平面形状が円形の放射電極113が形成されている。すなわち、放射素子部11は、パッチアンテナを構成する。
そして、放射電極113の2か所に同軸ケーブルで構成された信号線50の内導体(心線)が接続可能なように給電電極114−1、114−2(区別しない場合は、給電電極114と表記する。)が設けられている。そして、給電電極114−1、114−2のそれぞれに同軸ケーブルで構成された信号線50の内導体(心線)が接続されている。放射電極113の給電電極114−1、114−2は、放射電極113の中心の回りで90°離れて設けられている。よって、放射電極113を90°離れた給電電極114−1、114−2から給電することにより、電界の振動方向が90°異なる偏波(クロス偏波)を放射できる。つまり、1つの放射電極113により、直交する偏波の電波の送受信が可能になっている。
なお、同軸ケーブルで構成された信号線50の外導体(シールド)は、金具115により絶縁基板111の裏面に設けられた接地電極112に接続されている。なお、金具115は、露出した内導体(心線)を覆うように設けられている。
【0042】
ここでは、給電電極114−1、114−2は、z方向に対して+45°、−45°に設けられているので、偏波は鉛直方向に対して±45°偏波となる。なお、給電電極114−1、114−2をz方向に対して0°、90°に設ければ、鉛直方向の偏波(垂直偏波)及び鉛直方向に対して直交する偏波(水平偏波)になる。
【0043】
アンテナ素子10の放射素子部11と無給電素子部12との間(アンテナ素子10の内側)は、空気層を確保するための空隙(空間)14になっている。そして、収容部13は、放射素子部11と無給電素子部12とを保持するとともに、基体60を構成する材料が侵入しないように封止(封入)している。つまり、アンテナ素子10の放射素子部11及び無給電素子部12は、アンテナ素子10の内側において、基体60から隔離されている。
これは、放射素子部11と無給電素子部12との間に、基体60を構成する材料が侵入すると、誘電損失やインピーダンスが変化してアンテナ素子10の特性が変化してしまうためである。つまり、アンテナ素子10は、単体で設計された特性がそのまま維持されるようになっている。また、アンテナ素子10の特性に影響がないように、基体60の上層部63は、薄いことがよい。
【0044】
アンテナ素子10を一例として周波数4.7GHz帯の電波の送受信に用いるとすると、放射電極113の直径は19.5mmである。
【0045】
このように、アンテナ素子10の放射素子部11をパッチアンテナとすることで、アンテナ素子10が薄型になる。そして、アンテナ構造体1が薄型になる。
なお、アンテナ素子10の放射素子部11は、パッチアンテナ以外であってもよい。アンテナ素子10として、厚さ(y方向の長さ)が薄いこと(低背であること)がよい。
【0046】
分配器20、30は、図示しないが、アンテナ素子10と同様の収容部を備え、収容部の底部にマイクロストリップラインにより構成された信号を分配する分配回路が収容されている。そして、蓋部によって底部が覆われている。そして、分配回路は、絶縁基板の裏面に接地電極が形成され、表面に配線が形成されて構成されている。分配器20、30も、分配回路が設けられた収容部の内部(分配器20、30の内側)に基体60を構成する材料が侵入しないように底部と蓋部とが固定されるとともに、マイクロストリップラインで構成された分配回路と蓋部との間は、空気層を確保するための空隙(空間)となっている。つまり、分配器20、30の分配回路は、分配器20、30の内側において、基体60から隔離されている。
これも、分配回路を構成するマイクロストリップラインの表面に、基体60を構成する材料が侵入すると、誘電損失やインピーダンスが変化してマクロストリップラインの伝達特性が変化してしまうためである。
【0047】
一方、入出力信号線40、信号線50は、同軸ケーブルとしている。よって、入出力信号線40、信号線50が基体60に埋め込まれても、誘電損失やインピーダンスが変化することがない。つまり、第1の実施の形態が適用されるアンテナ構造体1では、基体60を構成する材料が浸入すると、誘電損失やインピーダンスが変化して特性が変化するアンテナ素子10、分配器20、30は、空気層を確保した密閉構造とし、それらの間を接続する信号線50や入出力信号線40を同軸ケーブルとして、基体60で埋め込んだ構造としても、特性に影響が生じないようになっている。
【0048】
なお、入出力信号線40、信号線50の外導体は、分配器20、30の接地電極、アンテナ素子10の放射素子部11の接地電極112に接続され、共通の接地電位(GND電位)になるように構成されている。
【0049】
分配器20、30の分配回路を入出力信号線40−1、40−2からアンテナ素子10−1〜10−6までの信号の伝搬距離が同じとなるように構成すると、アンテナ素子10−1〜10−6は、同相の信号を放射する。つまり、電波は、アンテナ構造体1の表面に垂直な方向(y方向)に放射される。この場合、分配器20、30は、等分配器と呼ばれることがある。
【0050】
一方、分配器20、30の分配回路を入出力信号線40−1、40−2からアンテナ素子10−1〜10−6までの信号の伝搬距離がアンテナ素子10−1〜10−6において徐々に異なる(位相がずれる)ように構成すると、電波は、アンテナ構造体1の表面に垂直な方向(y方向)からz方向又は−z方向にずれて(チルトされて)放射される。この場合、分配器20、30は、移相分配器と呼ばれることがある。
【0051】
なお、分配器20、30の内、分配器20を等分配器とし、分配器30を移相分配器としてもよい。このとき、等分配器である分配器20−1と分配器20−2との間で、位相差が設けられていてもよい。さらに、分配器20、30を等分配器とし、分配器20と分配器30とを接続する信号線50又は/及び分配器30とアンテナ素子10とを接続する信号線50の長さを異ならせることで、位相差を設けてもよい。
【0052】
以上説明したように、第1の実施の形態が適用されるアンテナ構造体1におけるアンテナ素子10は、放射素子部11と無給電素子部12とを備えていた。しかし、無給電素子部12を備えていなくてもよい。この場合には、収容部13の蓋部に無給電素子部12を嵌め込むための開口を設けないようにすればよい。また、無給電素子部12の無給電電極122をなくしてもよい。つまり、放射素子部11に埋込部62を構成する材料が侵入しないようにすればよい。
【0053】
なお、埋込部62を構成する材料により誘電損失やインピーダンスが変化しても、特性に影響がない場合には、アンテナ素子10における空気層を確保するための空隙14や分配器20、30における空気層を確保するための空隙14を設けることを要しない。
【0054】
アンテナ構造体1は、一例として、次のようにして製造される。
まず、アンテナ構造体1の外形に対応して構成された型枠を用意する。
そして、アンテナ素子10、分配器20、30を入出力信号線40、信号線50で接続する。
次に、型枠の底面が水平になるように型枠を配置する。そして、型枠の底面から下層部61の厚さ(y方向の長さ)に相当する距離だけ離した状態になるように、入出力信号線40、信号線50で接続されたアンテナ素子10、分配器20、30を定められた平面位置に配置する。なお、型枠は、入出力信号線40におけるコネクタ42及び同軸ケーブル41の一部が型枠の外に出るように構成しておく。
そして、型枠に、基体60となる未硬化な状態の材料を流し込み、その後硬化させる。なお、未硬化な状態の材料は、硬化後に上層部63が構成されるように、アンテナ素子10及び分配器20、30のそれぞれの表面を覆うように流し込む。このようにすることで、基体60を構成する下層部61、埋込部62及び上層部63は、一体(連続した構造体)として形成される。
型枠から、硬化した基体60を入出力信号線40、信号線50で接続されたアンテナ素子10及び分配器20、30とともに取り出すことで、アンテナ構造体1が製造される。
【0055】
このとき、基体60となる未硬化な状態の材料が硬化することにより、入出力信号線40、信号線50で接続されたアンテナ素子10、分配器20、30が基体60に埋め込まれた状態で固定される。
【0056】
なお、下層部61を形成した後、入出力信号線40、信号線50で接続されたアンテナ素子10、分配器20、30を定められた平面位置に配置して、埋込部62、上層部63を形成してもよい。また、上層部63を形成した後、入出力信号線40、信号線50で接続されたアンテナ素子10、分配器20、30を裏返した状態で定められた平面位置に配置して、埋込部62、下層部61を形成してもよい。
【0057】
基体60となる未硬化な状態の材料は、柔軟で型枠に充填できるものであればよい。そして、溶媒の蒸発、加熱、紫外線照射などで硬化するものであればよい。これには、多くの樹脂やゴム、シリコーン等を用い得る。例えば、エポキシ、ウレタン、EVA(エチレンビニルアセタールコポリマ)、オレフィン、軟質塩化ビニル、ブタジエンゴム、各種のシリコーン等がある。また、基体60は、上記の他、粉末状の木材などを接着剤で固めて成型する素材などで構成されてもよい。
【0058】
基体60となる未硬化な状態の材料として、2液硬化型の樹脂が好適に使用でき、より好適には室温で2液が反応する樹脂を使用できる。このような材料としては、エポキシやウレタン、アクリル、シリコーン等が挙げられる。このような材料を使用すると、未硬化な状態の材料を硬化させるために高い温度で材料を加熱する必要がない。そのため、加工が容易となり、アンテナ素子10や分配器20、30など(入出力信号線40、信号線50を含む)のアンテナ構造体1の構成物を熱で劣化させるリスクを低減できる。もちろん、硬化反応を加速するために、アンテナ構造体1の構成物に損傷を与えない程度の低い温度で加熱してもよい。
【0059】
基体60を構成する材料は、未硬化な状態から硬化させた後に、ショアD硬度60以下を有することが好ましい。ショアD硬度60以下において、アンテナ構造体1は設置される場所の曲面形状にある程度追従できる柔軟性を有する。さらには、基体60を構成する材料は、未硬化な状態から硬化させた後に、ショアA硬度50以下を有することが好ましい。ショアA硬度50以下において、アンテナ構造体1は全体として高い柔軟性を有し、設置する場所の曲面形状に、より追従させることができる。一方で、基体60を構成する材料の硬度が低いと、柔軟性は高くなるがアンテナ構造体1の構成物を外力から保護する能力が低くなる。なお、アンテナ構造体1が設置される場所の形状などに応じて、基体60を構成する材料の硬度を適宜選択することができる。
【0060】
以上においては、基体60は、埋込部62に加え、下層部61、上層部63を備えていたが、下層部61及び上層部63のいずれか一方、又は、両方を備えなくてもよい。
また、アンテナ構造体1の裏面及び表面は、基体60によりアンテナ素子10及び分配器20、30などの作る凹凸が埋め込まれて平坦になっているとしたが、アンテナ素子10及び分配器20、30の作る凹凸が感知される状態であってもよい。この場合、アンテナ構造体1は、裏面が平らになっているが、表面がアンテナ素子10及び分配器20、30の作る凹凸を反映した凹凸になっている。そして、上層部63を備えない場合であれば、基体60の埋込部62が、アンテナ素子10、分配器20、30の側面(アンテナ構造体1の裏面と垂線が交差する方向の面)に付着して保持すればよい。このとき、埋込部62は、アンテナ素子10、分配器20、30の側面の幅方向(y方向)の一部にのみ付着するものであってもよい。つまり、側面の下側のみに埋込部62が付着している状態であってもよい。そして、アンテナ素子10が薄型(低背)であれば、アンテナ構造体1は、平板状になる。
【0061】
(変形例)
次に、アンテナ素子10の変形例(アンテナ素子10′)を説明する。
アンテナ素子10は、放射素子部11と無給電素子部12との間に空気層を確保するための空隙14を設けていた。
変形例であるアンテナ素子10′では、空隙14の代わりに、放射素子部11上に発泡(多孔質)体15を設けている。なお、アンテナ素子10′は、無給電素子部12を備えない場合であって、基体60を構成する材料に直接触れると誘電損失やインピーダンスが変化してアンテナ特性が変化してしまう場合に有効である。
図4は、変形例であるアンテナ素子10′の構造を説明する断面図である。
図3(a)と同じ部分は、同じ符号を付して説明を省略する。
【0062】
収容部13′は、カップ状の底部のみで構成されている。そして、カップ状の底に放射素子部11が収容されている。そして、放射素子部11上には、発泡体15が設けられている。
【0063】
発泡体15として、例えば発泡ポリエチレン、アクリルスポンジ、ウレタンスポンジなどが適用できる。発泡体15は、基体60の埋込部62となる未硬化な状態の材料が侵入しようとしても、侵入を抑制するとともに、空気を多く含むために、アンテナ素子10の空隙14と同様に空気層として機能する。
【0064】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態では、アンテナ構造体1は、平面形状が四角形であった。第2の実施の形態が適用されるアンテナ構造体2は、平面形状が円形である。
図5は、第2の実施の形態が適用されるアンテナ構造体2を示す図である。
図5(a)は、平面図、
図5(b)は、側面図である。
【0065】
アンテナ構造体2は、アンテナ素子10、分配器20、30、入出力信号線40、信号線50及び基体70を備える。
図5(a)、(b)に示すように、アンテナ構造体2において、アンテナ素子10、分配器20、30、入出力信号線40、信号線50は、
図2に示したアンテナ構造体と同様である。よって、同じ符号を付して、説明を省略する。
しかし、基体70は、平面形状が円形に構成されている。つまり、基体70の中心を軸として回転させても、同じに見える(外見が変化しない)。
【0066】
図6は、アンテナ構造体2を、アンテナ素子10の配列(z方向)が鉛直方向に向くように設定した場合を示す図である。
図6(a)は、正面図、
図6(b)は、側面図、
図6(c)は、上面図である。つまり、アンテナ構造体2のz方向(アンテナ素子10の配列方向)が鉛直方向に配置された場合である。
アンテナ構造体2は、分配器20、30により、アンテナ素子10からの電波(ビーム100)がアンテナ素子10の配列方向(z方向)下方にチルトするように設定されているとする。
アンテナ構造体2を、アンテナ素子10の配列(z方向)が鉛直方向に向くように設定すると、
図6(a)、(b)、(c)に示すようにアンテナ構造体2からのビーム100は、鉛直方向下方にチルト角θで向かう。
【0067】
図7は、アンテナ構造体2を、アンテナ素子10の配列(z方向)が鉛直方向から傾いた斜め方向に向くように設定した場合を示す図である。
図7(a)は、正面図、
図7(b)は、側面図、
図7(c)は、上面図である。
アンテナ構造体2をアンテナ素子10の配列(z方向)が鉛直方向から傾いた斜め方向に向くように設定すると、
図7(a)、(b)、(c)に示すようにアンテナ構造体2からのビーム100は、斜め下方に向かう。つまり、アンテナ構造体2を回転させると、ビーム100は、頂角が2θの円錐の母線の方向に向く。よって、アンテナ構造体2を、基体70の円形の中心を軸として、その周りで回転させるだけで、室内の中央部などに電波を送受信する方向(ビーム100の方向)が向けられる。つまり、アンテナ構造体2を回転させることで、アンテナ構造体2の構成するチルトの方向(チルト角)を、電波を送受信する方位(方位角)に対応させることで、チルトを方位角の変更に使用することができる。
【0068】
そして、アンテナ構造体2は、平面形状が円形であるので、アンテナ素子10の配列(z方向)が鉛直方向から傾いた斜め方向に向くように設定して、基体70の円形の中心を軸として回転させても、外見は変化しない。よって、アンテナ構造体2を室内の端部分に露出させて設置して、アンテナ構造体2を回転させても、アンテナ構造体2の外見に違いが見られないため、景観や環境を害さない。
【0069】
なお、通常のアンテナであれば、電波を送受信する方向(方位角)を変更する場合、方位角に合わせてアンテナの取り付け位置を変更するか、アンテナ自体のビーム方向を変更するしかなかった。
これに対して、第2の実施の形態が適用されるアンテナ構造体2では、第1の実施の形態が適用されるアンテナ構造体1と同様に、裏面又は表面に塗布された粘着剤により、壁などに簡易に設置されている。よって、方位角を変更したい場合、アンテナ構造体2を外して、基体70の中心を軸として回転させることで、新たな方位角に対応させられる。また、アンテナ構造体2は、回転させることで任意の方位角に設定することができるため、1機種を用意すれば、さまざまな方位角に対応させられる。
【0070】
なお、平面形状が四角形のアンテナ構造体1(
図2)を用いてもよいが、アンテナ構造体1では、回転させることで外見が異なってしまう。このため、室内などに露出させて設置した場合には、景観や環境を害してしまう。
【0071】
つまり、アンテナ構造体2では、基体60の平面形状を円形として、回転によって外見に違いが見られないようにすることで、チルトを方位角の変更に用いている。なお、回転によって外見の変化が小さければ、回転による変化が視認されにくく、景観や環境を害しにくい。よって、基体60の平面形状は、多角形等であってもよい。
【0072】
[第3の実施の形態]
第1の実施の形態が適用されるアンテナ構造体1、第2の実施の形態が適用されるアンテナ構造体2では、アンテナ素子10は1列に配列されていた。
第3の実施の形態が適用されるアンテナ構造体3では、アンテナ素子10は、複数列配列されている。
図8は、第3の実施の形態が適用されるアンテナ構造体3の平面図である。
アンテナ構造体3は、z方向に6個の配列をx方向に4列並行に並べたアンテナ素子10と、基体80とを備える。なお、z方向のそれぞれの配列を配列α、β、γ、δと表記する。ここでは、
図2、
図5(a)、(b)、(c)に示した分配器20、30を示さないが、
図2、
図5(a)、(b)、(c)と同様にアンテナ素子10の配列に沿って設けられていてもよい。また、アンテナ素子10のみでアンテナ構造体3を構成し、アンテナ素子10に対して分配器20、30を接続するようにしてもよい。
基体80は、アンテナ構造体1の基体60、アンテナ構造体2の基体70と同様に構成されている。
このようにしても、アンテナ構造体3は、薄型とすることができ、可撓性を有する材料で基体80を構成することで、アンテナ構造体3を全体として可撓性を有するようにできる。
【0073】
アンテナ素子10の配列α、β、γ、δを、同じに駆動すると、アンテナ構造体3からのビーム幅を狭くすることができる。また、アンテナ素子10の配列α、β、γ、δを、異なる波長の電波とすることで、4MIMO、8MIMOなどに対応することが可能になる。また、複数のアンテナ素子10のそれぞれを個別に駆動して、アンテナ構造体3の前面に電波空間を構成するようにしてもよい。
【0074】
第1の実施の形態が適用されるアンテナ構造体1から第3の実施の形態が適用されるアンテナ構造体3において、z方向には、アンテナ素子10が6個配列されていたが、6個に限らず他の数であってもよい。また、分配器20、30の数も2個と4個に限らず他の数であってもよい。また、アンテナ素子10の配列は、必ずしも列状でなくてもよく、交互にずれて並んでいてもよい。
【0075】
以上、第1の実施の形態から第3の実施の形態を説明したが、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な変形を行っても構わない。