特許第6934257号(P6934257)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6934257洗浄槽内の洗浄溶剤の大気への拡散防止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6934257
(24)【登録日】2021年8月25日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】洗浄槽内の洗浄溶剤の大気への拡散防止方法
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/08 20060101AFI20210906BHJP
   B01D 5/00 20060101ALI20210906BHJP
【FI】
   B08B3/08 B
   B01D5/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-228819(P2019-228819)
(22)【出願日】2019年12月19日
(65)【公開番号】特開2021-94542(P2021-94542A)
(43)【公開日】2021年6月24日
【審査請求日】2021年1月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390019884
【氏名又は名称】ジャパン・フィールド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000501
【氏名又は名称】翠特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】内野 正英
【審査官】 程塚 悠
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−012275(JP,A)
【文献】 特開平02−004491(JP,A)
【文献】 特開平02−218403(JP,A)
【文献】 特開平03−238072(JP,A)
【文献】 特開昭64−15192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/00−3/14
B01D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄溶剤を洗浄槽内に収納するとともに、この洗浄槽とは別体に設けた冷却槽にて洗浄溶剤を0℃以下、且つ当該洗浄溶剤の凝固点よりも高い温度に冷却し、この冷却した洗浄溶剤を上記洗浄槽内に流下させることにより被洗浄物の蒸気洗浄時にも液幕を形成して該洗浄槽内の温度を低下させるとともに、この液幕に上記洗浄槽内の洗浄溶剤の溶剤蒸気を接触させることにより、当該溶剤蒸気を凝縮することを特徴とする洗浄槽内の洗浄溶剤の大気への拡散防止方法。
【請求項2】
上記洗浄槽は、その内部に上下二段階の冷却機構を設け、上段の冷却機構には、冷却した洗浄溶剤を流下させて液幕を形成するための、上記冷却槽と連通したノズルを設けるとともに、下段の冷却機構には、洗浄蒸気を冷却するための冷却管を設けたことを特徴とする請求項1の洗浄槽内の洗浄溶剤の大気への拡散防止方法。
【請求項3】
上記洗浄槽内の洗浄溶剤と、上記冷却槽内の洗浄溶剤は同一のものを使用することを特徴とする請求項1、または2の洗浄槽内の洗浄溶剤の大気への拡散防止方法。
【請求項4】
上記液幕に、上記洗浄槽内に収納した洗浄溶剤の溶剤蒸気を接触させることにより当該溶剤蒸気を凝縮するとともに、この上記溶剤蒸気中の水分を氷として回収して凝縮した洗浄溶剤と分離することを特徴とする請求項1、または2の浄槽内の洗浄溶剤の大気への拡散防止方法。
【請求項5】
上記冷却槽内の洗浄溶剤は、0℃以下且つ当該洗浄溶剤の凝固点よりも高い温度であれば、任意の温度に設定できることを特徴とする請求項1、2、3、または4の洗浄槽内の洗浄溶剤の大気への拡散防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄溶剤にて機械部品、電子部品、医療機器等の被洗浄物を洗浄する際の、洗浄槽内の洗浄溶剤の大気への拡散を防止するための方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭60−45922号公報 1995年以前から、機械部品、電子部品、医療機器等の被洗浄物を液洗浄及び/又は蒸気洗浄する際に、図3に示す如く洗浄槽(103)の内面に設けた冷却管(105)に冷却した水又は冷媒ガスを流し、この冷却管(105)の表面にて、上記洗浄槽(103)の内部に収納した洗浄溶剤の溶剤蒸気(102)を凝縮することにより、洗浄槽(103)内の溶剤蒸気の大気への拡散抑制することが一般的に行われている。
【0004】
また特許文献1に示す如く、冷却した洗浄溶剤を洗浄槽内にて流下させて液カーテンを形成し、この液カーテンに溶剤蒸気を接触させることにより、上記洗浄槽内に収納した洗浄溶剤の溶剤蒸気を凝縮し、溶剤蒸気の大気への拡散を抑制する方法についてもすでに公知となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記の従来方法が一般的に行われていた1995年以降に、上記洗浄溶剤として広く使用されてきたフロンがオゾン層を破壊する物質であるとして世界的に全廃となった。またこの時から、洗浄の現場でも地球環境を守るために、洗浄溶剤の使用基準が一層厳しくなってきている。そのため、上記の如き溶剤蒸気の凝縮回収方法では、このように厳しくなった溶剤蒸気の大気への拡散防止に関する規制に対応することが難しくなっていた。
【0006】
そこでこのような厳しい規制に対応するため、冷却管を更に冷却することにより、洗浄槽内の温度を著しく低下させて洗浄槽内の冷却部の温度を低く保つ方法が考えられる。しかし、上記従来例の冷却管(105)を0℃以下とした場合には、この冷却管(105)に付着した大気中の水分が氷となるため、当該冷却管(105)の表面全体に氷が付着して洗浄槽内の冷却効率が低下するおそれがある。
【0007】
また、特許文献1に示す如く、液カーテンを形成した場合、この液カーテンの温度が0℃以上の場合には、洗浄溶剤に大気中の水分が混入するものとなり、特に塩素系溶剤などの場合には加水分解を生じるため、洗浄溶剤を凝縮して確実に回収することは困難となっていた。
【0008】
そこで、本願では上述の如き課題を解決しようとするものであって溶剤蒸気の大気中への拡散を、簡易な方法にて容易に防止可能にしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は上述の如き課題を解決するため、 洗浄溶剤を洗浄槽内に収納するとともに、この洗浄槽とは別体に設けた冷却槽にて洗浄溶剤を0℃以下、且つ当該洗浄溶剤の凝固点よりも高い温度に冷却し、この冷却した洗浄溶剤を上記洗浄槽内に流下させることにより被洗浄物の蒸気洗浄時にも液幕を形成して該洗浄槽内の温度を低下させるとともに、この液幕に上記洗浄槽内の洗浄溶剤の溶剤蒸気を接触させることにより、当該溶剤蒸気を凝縮するものである。
【0010】
上記洗浄槽は、その内部に上下二段階の冷却機構を設け、上段の冷却機構には、冷却した洗浄溶剤を流下させて液幕を形成するための、上記冷却槽と連通したノズルを設けるとともに、下段の冷却機構には、洗浄蒸気を冷却するための冷却管を設けたものであってもよい。
【0011】
また、上記洗浄槽内の洗浄溶剤と、上記冷却槽内の洗浄溶剤は同一のものを使用するものであってもよい。
【0012】
また、上記液幕に、上記洗浄槽内に収納した洗浄溶剤の溶剤蒸気を接触させることにより当該溶剤蒸気を凝縮するとともに、この上記溶剤蒸気中の水分を氷として回収して凝縮した洗浄溶剤と分離するものであってもよい。このように、溶剤蒸気中の水分を氷として回収することができるため、個体となった水分と液体となった洗浄溶剤とを容易に分離することが可能となるとともに、洗浄溶剤を水分を含まない状態で再利用することができる。また、水分の混入により洗浄溶剤が加水分解を引き起こして変質する等の事態を防ぐことができるため、簡易な方法により洗浄溶剤を再利用することが可能となる。
【0013】
また、上記冷却槽内の洗浄溶剤は、0℃以下且つ当該洗浄溶剤の凝固点よりも高い温度であれば、任意の温度に設定できるものであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本願発明は上述の如く構成したものであるから、0℃以下且つ上記洗浄溶剤の凝固点よりも高い温度に冷却した液幕に溶剤蒸気を接触させるという簡易な方法により、溶剤蒸気の大気中への拡散の防止効果をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本願発明を示す実施例1の概念図。
図2】本願発明を示す実施例2の概念図。
図3】従来例の概念図。
【実施例1】
【0016】
本願発明の実施例1を図1に於いて説明すると、(1)は洗浄槽であって、この洗浄槽(1)の開口部(2)側の内周には冷却液管(3)のノズル(4)を設けている。そしてこの冷却液管(3)は、この洗浄槽(1)とは別体に設けた冷却槽(5)の底部側とポンプ(6)を介して連通している。またこのノズル(4)の下方には、洗浄槽(1)の内面に沿って凝縮液の回収トレー(7)を設けている。またこの洗浄槽(1)の底部には、内部に収納した洗浄溶剤(8)を加熱するためのヒーター(10)、及びこの洗浄溶剤(8)の温度を制御する温度センサー(11)を設けている。
【0017】
また上記冷却槽(5)は、内部に上記洗浄槽(1)内に収納したものと同じ洗浄溶剤(8)を収納するとともに、この洗浄溶剤(8)の液面(12)よりも上方には、メッシュ状の受氷トレー(13)を設けている。そして、上記洗浄槽(1)に設けた回収トレー(7)に、回収した凝縮液を回収するための回収管(14)の一端を配置するとともに、この回収管(14)の他端をこの受氷トレー(13)に臨ませて配置している。また、この冷却槽(5)の底部側には、この冷却槽(5)内に収納した洗浄溶剤(8)を冷却するための冷却器(16)を設けている。
【0018】
また上記冷却槽(5)の深さ方向中央部から洗浄槽(1)の底部側に向けて流通可能な洗浄溶剤(8)のオーバーフロー管(15)を設けている。即ちこのオーバーフロー管(15)の一端を冷却槽(5)の深さ方向中央部に接続するとともに、他端を洗浄槽(1)の底部側に接続している。これにより、冷却槽(5)内に回収された洗浄溶剤(8)を一定量に保つとともに、この一定量を超えた洗浄溶剤(8)を、洗浄槽(1)内に還流可能としている。
【0019】
上記の如く構成したものにおいて、被洗浄物の洗浄方法について以下に説明する。まず、洗浄槽(1)内のヒーター(10)を作動させて洗浄溶剤(8)を加熱することにより、洗浄槽(1)内に上記洗浄溶剤(8)の溶剤蒸気(17)を発生させる。これにより、この溶剤蒸気(17)が洗浄槽(1)の開口部(2)に向けて立ち上がる。そのため図1に示す如くこの溶剤蒸気(17)中に被洗浄物(18)を配置することにより、被洗浄物(18)の蒸気洗浄を行うことができる。
【0020】
尚、本実施例で使用する洗浄溶剤(8)は広く一般的に使われているものであって、例えば、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、エタノール、ジクロロメタン、HFО等である。
【0021】
また、上記冷却槽(5)内にはあらかじめ上記洗浄槽(1)内の洗浄溶剤(8)と同じ洗浄溶剤(8)を収納するとともに上記冷却器(16)を作動させることにより、この洗浄溶剤(8)を0℃以下且つこの洗浄溶剤(8)の凝固点よりも高い温度に冷却しておく。そしてこのように冷却槽(5)内にて冷却した洗浄溶剤(8)を、洗浄槽(1)に配置したノズル(4)に移送する。
【0022】
そして、上記ノズル(4)から冷却した洗浄溶剤(8)を連続して流下させることにより、液幕(20)を形成する。このように冷却した洗浄溶剤(8)の液幕(20)を形成することにより、洗浄槽(1)内で立ち上がった溶剤蒸気(17)がこの液幕(20)に接触するものとなる。そのため、液幕(20)に接触した溶剤蒸気(17)は凝縮液化し、回収トレー(7)に回収される。これにより、溶剤蒸気(17)の大気中への拡散の防止効果を高めることができる。またこの液幕(20)は、上記冷却槽(5)から連続的に供給される0℃以下且つ上記洗浄溶剤(8)の凝固点以上に冷却した洗浄溶剤(8)にて形成されるため、溶剤蒸気(17)の冷却効果を低下させることなく持続的に良好に保つことができる。
【0023】
そして上記の如く回収トレー(7)に回収された洗浄溶剤(8)は、回収管(14)を通じて再び冷却槽(5)内に収納される。この時、液幕(20)の温度は0℃以下であることから、この液幕(20)に接触した溶剤蒸気(17)は0℃以下に冷却されるものとなる。そのため、凝縮液化した洗浄溶剤(8)中に含まれていた水分が、冷却状態によっては氷の粒になって回収トレー(7)に回収される。
【0024】
従って、回収管(14)から冷却槽(5)内に収納された洗浄溶剤(8)中の氷は受氷トレー(13)に回収されるとともに、洗浄溶剤(8)はメッシュ状の受氷トレー(13)を通過して冷却槽(5)内に貯留されるものとなる。尚この場合、上記冷却によって溶剤蒸気(17)の全てが氷の粒となるとは限らず、その後冷却槽(5)内で氷となり当該洗浄槽(5)内の洗浄溶剤(8)中に浮くこともある。このように、液幕(20)との接触により大気中の水分による冷却温度の伝達を妨げることがなく、水分の回収を容易に行うことができる。
【0025】
尚、本実施例及び以下の実施例では蒸気洗浄について説明しているが、他の実施例ではこれに限らず、洗浄槽(1)(31)内で被洗浄物(18)(55)の液洗浄を行う際にも同様に、液幕(20)や下記冷却管(44)により洗浄槽(1)(31)内を0℃以下とすることにより洗浄槽(1)(31)内の洗浄溶剤(8)(40)から溶剤蒸気(17)(54)が発生するのを抑制するとともに、溶剤蒸気(17)(54)が発生した場合でも少量となるため、これを液幕(20)(50)にて凝縮することにより、当該洗浄槽(1)(31)内に収納された洗浄溶剤(8)(40)が溶剤蒸気(17)(54)となって大気中に拡散することを効果的に防ぐことができる。
【実施例2】
【0026】
本願発明の実施例2は、上記洗浄槽の内部に上下二段階の冷却機構(57)(58)を設け、上段の冷却機構(57)には、冷却した洗浄溶剤(40)を流下させて液幕(50)を形成するための、上記冷却槽と連通したノズル(36)を設けるとともに、下段の冷却機構(58)には、溶剤蒸気(54)を冷却するための冷却管(44)を設けたものである。
【0027】
本実施例を図2に於いて説明すると、(31)は洗浄槽であって、この洗浄槽(31)の底部には、内部に収納した洗浄溶剤(40)を加熱するためのヒーター(32)、及びこの洗浄溶剤(40)の温度を制御する温度センサー(33)を設けている。そして上段の冷却機構(57)について説明すると、上記実施例1と同様に、開口部(34)側の内周には冷却液管(35)のノズル(36)を設けるとともに、この冷却液管(35)は、この洗浄槽(31)とは別体に設けた第1冷却槽(37)の底部側とポンプ(38)を介して連通している。またこのノズル(36)の下方には、洗浄槽(31)の内面に沿って凝縮化した洗浄溶剤(40)を回収するための第1回収トレー(41)を設けている。
【0028】
また上記第1冷却槽(37)は上記実施例1と同じ構成であって、内部に上記洗浄槽(31)内に収納したものと同じ洗浄溶剤(40)を収納するとともに、受氷トレー(42)を設けている。そして、上記洗浄槽(31)の第1回収トレー(41)には第1回収管(43)の一端を配置するとともに、この第1回収管(43)の他端を上記受氷トレー(42)に臨ませて配置している。
【0029】
次に下段の冷却機構(58)について説明すると、上記第1回収トレー(41)の下方には、冷却管(44)を設けるとともに、この冷却管(44)の下方には第2回収トレー(45)を設けている。そしてこの冷却管(44)には、供給管(46)の一端及び排出管(47)の一端をそれぞれ接続するとともに、この供給管(46)及び排出管(47)の他端を、上記洗浄槽(31)とは別体に設けた第2冷却槽(48)に接続している。そしてこの第2冷却槽(48)には、上記洗浄槽(31)内の洗浄溶剤(40)と同じ洗浄溶剤(40)を収納し、この洗浄溶剤(40)を冷却している。
【0030】
このように洗浄槽(31)の内周に冷却管(44)を設けることにより、洗浄槽(31)内の温度を低下させることができるため、液幕(50)を形成する洗浄溶剤(40)の冷却に要する熱量を低減することができる。また、上記第2回収トレー(45)には、第2回収管(51)の一端を接続するとともに、この第2回収管(51)の他端を、洗浄槽(31)の外方に設けた水分分離器(52)に接続している。そしてこの水分分離器(52)の底部には、還流管(53)の一端を接続するとともに、この還流管(53)の他端を洗浄槽(31)の底部側に接続している。
【0031】
上記の如く構成したものにおいて、被洗浄物(55)の洗浄方法について以下に説明する。まず、洗浄槽(31)内のヒーター(32)を作動させて洗浄溶剤(40)を加熱することにより、洗浄槽(31)内に上記洗浄溶剤(40)の溶剤蒸気(54)を発生させる。これにより、上記洗浄溶剤(40)の溶剤蒸気(54)が洗浄槽(31)の開口部(34)に向けて立ち上がる。そのためこの溶剤蒸気(54)中に被洗浄物(55)を配置することにより、被洗浄物(55)の蒸気洗浄を行うことができる。
【0032】
尚、本実施例で使用する洗浄溶剤(40)は広く一般的に使われているものであって、例えば、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、エタノール、ジクロロメタン、HFО等である。
【0033】
また、上記第1冷却槽(37)内の洗浄溶剤(40)を上記冷却器(56)によって予め0℃以下且つ上記洗浄溶剤(40)の凝固点よりも高い温度に冷却しておく。そして、上記冷却液管(35)に設けたポンプを作動させることにより、上記の如く第1冷却槽(37)内にて冷却した洗浄溶剤(40)を洗浄槽(31)に配置したノズル(36)に移送し、この上段の冷却機構(57)を構成するノズル(36)から第1冷却槽(37)で冷却した洗浄溶剤(40)を連続して流下させることにより液幕(50)を形成する。
【0034】
このように冷却した洗浄溶剤(40)の液幕(50)を形成することにより、洗浄槽(31)内で立ち上がった溶剤蒸気(54)がこの液幕(50)に接触するものとなる。そのため、液幕(50)に接触した溶剤蒸気(54)は凝縮液化して第1回収トレー(41)に回収される。これにより、溶剤蒸気(54)の大気中への拡散の防止効果をより高めることができる。
【0035】
そして第1回収トレー(41)に回収された洗浄溶剤(40)は、第1回収管(43)を通じて第1冷却槽(37)内に回収される。この時、液幕(50)の温度は0℃以下であることから、洗浄溶剤(40)中に含まれていた水分が氷の粒になって回収される。そのため、第1回収管(43)から排出された洗浄溶剤(40)中の氷は、、受氷トレー(42)に回収されるとともに、洗浄溶剤(40)はメッシュ状の受氷トレー(42)を通過して第1冷却槽(37)内に貯留されるものとなる。
【0036】
上記の如く、溶剤蒸気(54)に含まれる水分が液幕(50)との接触により氷の粒となるため、洗浄溶剤(40)中の水分の回収を容易に行うことができるとともに、凝縮させた洗浄溶剤(40)を水分を含まない状態で回収することができる。よって、回収した洗浄溶剤(40)については水分分離作業を行う必要なく再利用することが可能となるため、別途水分分離器(52)を準備して水分分離作業を行う手間をかけることなく、簡易な方法により再利用することが可能となる。また、水分の混入により洗浄溶剤(40)が加水分解を引き起こして変質する事態を防ぐことが可能となる。
【0037】
また上記液幕(50)の形成と同時に、洗浄槽(31)内の下段の冷却機構(58)を構成する冷却管(44)にも第2冷却槽(48)から供給管(46)を通じて冷却管(44)内に冷却された洗浄溶剤(40)を流通させる。これにより、洗浄槽(31)内に溶剤蒸気(54)を立ち上げた際にこの溶剤蒸気(54)が当該冷却管(44)に接触し、溶剤蒸気(54)を凝縮することができる。またこのように洗浄槽(31)の内周に冷却管(44)を設けることにより、洗浄槽(31)内の温度を低下させることができるため、液幕(50)を形成する洗浄溶剤(40)の冷却に要する熱量を低く抑えることができる。
【0038】
またこのように冷却管(44)に接触して凝縮された凝縮液は、第2回収トレー(45)に回収された後、第2回収管(51)を通じて水分分離器(52)内に移送される。そしてこの水分分離器(52)にて凝縮液中の水分と洗浄溶剤(40)とを分離するとともに、分離した洗浄溶剤(40)を、還流管(53)を通じて再び洗浄槽(31)内に還流する。
【符号の説明】
【0039】
1,31 洗浄槽
8,41 洗浄溶剤
17,54 溶剤蒸気
20,50 液幕
44 冷却管
57,58 冷却機構
図1
図2
図3