(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金属析出型の抵抗変化膜と、前記抵抗変化膜の一方の面に接続し前記抵抗変化膜に金属イオンを供給する第1の電極と、前記抵抗変化膜の他方の面に接続する第2の電極と、を有する抵抗変化素子と、
前記第1の電極にドレインもしくはソースが接続する第1のトランジスタと、
前記第2の電極にソースもしくはドレインが接続する第2のトランジスタと、を有し、
前記第1のトランジスタと前記第2のトランジスタが前記第2の電極の電位を前記第1の電極の電位よりも高くして前記抵抗変化素子を低抵抗状態から高抵抗状態にスイッチする際に、
前記第1のトランジスタもしくは前記第2のトランジスタのゲート電圧を第1のゲート電圧とし、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電位差を第1の電位差とする、第1のモードと、
前記第1のトランジスタもしくは前記第2のトランジスタのゲート電圧を第2のゲート電圧とし、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電位差を第2の電位差とする、第2のモードと、
を有して前記スイッチをし、
前記第1のゲート電圧は前記第2のゲート電圧よりも大きく、前記第1の電位差は前記第2の電位差よりも小さくし、
前記第1のモードと前記第2のモードを交互に繰り返す、
スイッチ素子。
前記第1の電位差と前記第2の電位差は、前記第1のトランジスタのソースもしくはドレインの電位と、前記第2のトランジスタのドレインもしくはソースの電位との差に基づく、
請求項1記載のスイッチ素子。
金属析出型の抵抗変化膜と、前記抵抗変化膜の一方の面に接続し前記抵抗変化膜に金属イオンを供給する第1の電極と、前記抵抗変化膜の他方の面に接続する第2の電極と、を有する抵抗変化素子と、
前記第1の電極にドレインもしくはソースが接続する第1のトランジスタと、
前記第2の電極にソースもしくはドレインが接続する第2のトランジスタと、
を有するスイッチ素子のスイッチ方法において、
前記第2の電極の電位を前記第1の電極の電位よりも高くして前記抵抗変化素子を低抵抗状態から高抵抗状態にスイッチする際に、
前記第1のトランジスタもしくは前記第2のトランジスタのゲート電圧を第1のゲート電圧とし、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電位差を第1の電位差とする、第1のモードと、
前記第1のトランジスタもしくは前記第2のトランジスタのゲート電圧を第2のゲート電圧とし、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電位差を第2の電位差とする、第2のモードと、を有して前記スイッチをし、
前記第1のゲート電圧は前記第2のゲート電圧よりも大きく、前記第1の電位差は前記第2の電位差よりも小さくし、
前記第1のモードと前記第2のモードを交互に繰り返す、
スイッチ方法。
【背景技術】
【0002】
半導体装置である半導体集積回路は、半導体基板に形成されたトランジスタと、トランジスタを接続するために半導体基板の上層に形成された配線層とを備えている。トランジスタや配線の構成は、集積回路の設計段階で決められており、半導体集積回路の製造後にトランジスタ同士の接続を変更することは困難である。一方、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの再構成が可能なプログラマブル論理集積回路は、論理演算回路の動作や論理演算回路の接続の構成情報をメモリに記憶することで、論理動作や配線接続の変更を可能にしている。
【0003】
この構成情報の記憶を行うメモリ素子としては、SRAM(Static Random Access Memory)セル、アンチフューズ、フローティングゲートMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタなどが用いられている。しかしながら、これらのメモリ素子はトランジスタと同じ層に形成されるため、メモリ素子の面積の分、半導体集積回路の面積が大きくなり、製造コストが上昇している。また、メモリ素子の面積の分、半導体集積回路の面積に占める論理演算回路の割合が低下するために、回路の動作速度の低下や動作電力の増大による電力性能比の低下をもたらしている。
【0004】
特許文献1および非特許文献1には、配線層に形成された抵抗変化素子により、半導体集積回路の製造後に配線接続の変更を可能とするプログラマブル論理集積回路が開示されている。これにより、製造後の回路の不具合の修正や仕様の変更、半導体集積回路の面積の縮小や電力性能比の向上、さらには、起動時の回路構成情報を読み出す動作の省略を、可能としている。
【0005】
特許文献1および非特許文献1の抵抗変化素子は、イオンが電界などによって自由に移動することのできる固体電解質と、これを挟んで対向する第1電極と第2電極を有する。固体電解質には、第1電極から金属イオンが供給され、第2電極からは供給されない。金属イオンは固体電解質中での移動と電気化学反応により金属として析出する。析出した金属が第1電極と第2電極を接続する金属架橋(フィラメント、導電性パスとも呼ばれる)となることで、抵抗変化素子は低抵抗状態(ON)となる。また、この金属架橋が消滅することで高抵抗状態(OFF)となる。
【0006】
図10は、バイポーラ特性を有する当該抵抗変化素子の動作を説明するための図である。まず、高抵抗状態から低抵抗状態へ遷移するセット動作(a)では、第2電極を接地して第1電極に正電圧を印加すると、第1電極の金属が金属イオンになって固体電解質に溶解する。金属イオンは固体電解質中での移動と電気化学反応により金属として析出し、セット電圧で、析出した金属により第1電極と第2電極を接続する金属架橋が形成される。金属架橋により第1電極と第2電極が電気的に接続されることでONとなる。このONである低抵抗状態で、第2電極を接地して第1電極に正電圧を印加すると、抵抗変化素子は低抵抗状態を維持してオーミックな電流−電圧特性を示す(低抵抗動作(b))。
【0007】
一方、ONである低抵抗状態からOFFである高抵抗状態へ遷移するリセット動作(c)では、第2電極を接地して第1電極に負電圧を印加すると、金属架橋の一部が金属イオンとなって固体電解質に溶解し金属架橋が切れる。これにより、第1電極と第2電極との電気的接続が切れてOFFとなる。なお、電気的接続が完全に切れる前の段階から電極間の抵抗が大きくなったり静電容量が変化したりするなどの電気特性の変化が生じ、最終的にリセット電圧で電気的接続が切れる。このOFFである高抵抗状態からONである低抵抗状態とするには、再び第2電極を接地して第1電極に正電圧を印加すればよい(再セット動作(d))。
【0008】
以上の抵抗変化素子によるスイッチは、前記のMOSトランジスタなどの半導体スイッチよりも小型でオン状態の抵抗値(オン抵抗と呼ぶ)が小さい。さらに抵抗変化素子は配線層に形成される。このため、半導体集積回路の面積の縮小や電力性能比の向上が可能である。また、抵抗変化素子は電圧を印加しなくてもONやOFFの状態が維持される不揮発性を有するため、起動時に回路構成情報を読み出す動作が不要である。以上の特徴から、当該抵抗変化素子によるスイッチは、プログラマブル論理集積回路への適用に有利である。また、当該抵抗変化素子は、その不揮発性から、不揮発性メモリとしての利用も可能である。
【0009】
特許文献2では、さらに、金属イオンを供給する第1電極の形状を電界が集中しやすい形状に工夫することで、セット/リセット電圧とこれらのばらつきとを低減する技術が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。
【0021】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態のスイッチ素子の構成を示す図である。本実施形態のスイッチ素子1は、抵抗変化素子11と、第1のトランジスタ12と、第2のトランジスタ13とを有する。抵抗変化素子11は、金属析出型の抵抗変化膜14と、抵抗変化膜14の一方の面に接続し抵抗変化膜14に金属イオンを供給する第1の電極15と、抵抗変化膜14の他方の面に接続する第2の電極16と、を有する。第1の電極15には、第1のトランジスタ12のドレインもしくはソースが接続し、第2の電極16には、第2のトランジスタ13のソースもしくはドレインが接続する。
【0022】
スイッチ素子1は、第1、第2のトランジスタ12、13が、第2の電極16の電位を第1の電極15の電位よりも高くして抵抗変化素子11を低抵抗状態から高抵抗状態にスイッチする。抵抗変化素子11を低抵抗状態から高抵抗状態にするスイッチ動作は、第1のモードと第2のモードとを有する。ここで、第1のモードにおける、第1のトランジスタもしくは第2のトランジスタ12、13のゲート電圧を第1のゲート電圧とし、第1と第2の電極15、16間の電位差を第1の電位差とする。また、第2のモードにおける、第1もしくは第2のトランジスタ12、13のゲート電圧を第2のゲート電圧とし、第1と第2の電極間の電位差を第2の電位差とする。この時、第1のゲート電圧は第2のゲート電圧よりも大きく、第1の電位差は第2の電位差よりも小さくする。
【0023】
スイッチ素子1によれば、第1のモードと第2のモードを組み合わせることで、リセット動作における電流制限と電圧制限とが実行され、高電圧で大電流が流れることによる抵抗変化膜14の破壊を抑制することができる。これにより、リセットのための電圧を印加しているにも関わらず、低抵抗状態化してしまうという不良動作の発生を抑制することができる。
【0024】
以上のように、本実施形態によれば、金属架橋型の抵抗変化素子の低抵抗状態から高抵抗状態への遷移を安定化したスイッチ素子を提供することができる。
【0025】
(第2の実施形態)
図2は、本発明の第2の実施形態のスイッチ素子の構成を示す図である。本実施形態のスイッチ素子2は、抵抗変化素子21と、行選択トランジスタ22と、ビット選択トランジスタ23とを有する。
【0026】
抵抗変化素子21は、金属析出型の抵抗変化膜24と、抵抗変化膜24の一方の面に接続し抵抗変化膜24に金属イオンを供給する第1の電極25と、抵抗変化膜24の他方の面に接続する第2の電極26と、を有する。第1の電極25を活性電極、第2の電極26を不活性電極とも呼ぶ。
【0027】
行選択トランジスタ22は、抵抗変化素子21の第1の電極25にドレインが接続する。行選択トランジスタ22はまた、第1の電極25にソースが接続してもよい。ビット選択トランジスタ23は、抵抗変化素子21の第2の電極26にソースが接続する。ビット選択トランジスタ23はまた、第2の電極26にドレインが接続してもよい。
【0028】
図3は、抵抗変化素子21の動作を説明するための図である。抵抗変化素子21を高抵抗状態(OFF)から低抵抗状態(ON)にスイッチする際には、第1の電極25の電位を第2の電極26の電位よりも高くする。また、抵抗変化素子21を低抵抗状態から高抵抗状態にスイッチする際には、第2の電極26の電位を第1の電極25の電位よりも高くする。
【0029】
行選択トランジスタ22とビット選択トランジスタ23とは、抵抗変化素子21を低抵抗状態から高抵抗状態にスイッチする際には、第2の電極26の電位を第1の電極25の電位よりも高くする。さらに、このとき、行選択トランジスタ22とビット選択トランジスタ23とは、電流モードと電圧モードとを有して、低抵抗状態から高抵抗状態にスイッチする。
【0030】
図4Aと
図4Bとは、スイッチ素子2を低抵抗状態から高抵抗状態に、電流モードと電圧モードとを有してスイッチする動作を説明するための図である。
【0031】
図4Aでは、
図2に示すように、行選択トランジスタ22のソースは接地(GND)されている。また、ビット選択トランジスタ23のゲートには、ビット選択トランジスタ23をONする電圧Vgblが印加される。電流モードでは、行選択トランジスタ22のゲートに正の電圧Vgpl−1、ビット選択トランジスタ23のドレインに正の電圧Vbl−1が印加される。また、電圧モードでは、行選択トランジスタ22のゲートに正の電圧Vgpl−2、ビット選択トランジスタ23のドレインに正の電圧Vbl−2が印加される。このとき、Vgpl−1>Vgpl−2、Vbl−1<Vbl−2の関係であるとする。
【0032】
図4Bでは、
図2とは異なり、ビット選択トランジスタ23のドレインは接地(GND)されている。また、行選択トランジスタ22のゲートには、行選択トランジスタ22をONする電圧Vgplが印加される。電流モードでは、ビット選択トランジスタ23のゲートに正の電圧Vgbl−1、行選択トランジスタ22のソースに負の電圧Vpl−1が印加される。また、電圧モードでは、ビット選択トランジスタ23のゲートに正の電圧Vgbl−2、行選択トランジスタ22のソースに負の電圧Vpl−2が印加される。このとき、Vgbl−1>Vgbl−2、|Vpl−1|<|Vpl−2|の関係であるとする。
【0033】
スイッチ素子2を低抵抗状態から高抵抗状態に、電流モードと電圧モードとを有してスイッチする場合、電流モードからスイッチを開始することが好ましい。また、電流モードと電圧モードを交互に複数回繰り返すことができる。また、電流モードと電圧モードを交互に繰り返すたびに、各ゲート電圧や、第1と第2の電極25、26間の電圧を増やすようにしてもよい。また、電流モードと電圧モードの間で抵抗変化素子21の抵抗値をモニタリングするようにしてもよい。
【0034】
図5は、
図11に示す、抵抗変化素子21の低抵抗状態から高抵抗状態への遷移の(a)正常動作と(b)不良動作とを説明するための図である。
図5の不良動作のメカニズムは、発明者が鋭意検討を行い考察したものである。
【0035】
まず、正常動作において、抵抗変化素子21は、金属架橋により低抵抗状態にある。このとき、第1の電極25を接地し、第2の電極26に正電圧を印加すると、金属架橋の金属が金属イオンになって抵抗変化膜24中に溶け出し、金属架橋の一部が切れる。抵抗変化膜24中に溶け出した金属は、第1の電極25に回収される。これにより、第1の電極25と第2の電極26との電気的接続が切れ、さらに金属架橋の回収が進行することで、高抵抗状態となる。なお、第2の電極26を接地し、第1の電極25に負電圧を印加した場合も同様である。
【0036】
これに対して、不良動作においては、金属架橋の金属が金属イオンになって抵抗変化膜24中に溶け出し、金属架橋の一部が切れる際に、金属架橋の金属が局所的に残存する。この金属架橋の金属が局所的に残存する箇所には高電界が発生する。この局所的な高電界で大きな電流が流れることによって固体電解質が破壊され、金属架橋の回収が不能となるとともに低抵抗な箇所が生じ、抵抗変化素子21が低抵抗状態に陥る。このことは、抵抗変化素子21がリセット動作の際に低抵抗状態に陥った場合、再度同じリセット動作を行っても正常にはならないことと矛盾しない。なお、第2の電極26を接地し、第1の電極25に負電圧を印加した場合も同様である。
【0037】
以上の不良動作のメカニズムに基づいて、リセット動作の際に低抵抗な箇所の発生を抑制するためには、リセット動作における電流制限と電圧制限とを組み合わせることにより、高電界で大電流が流れることによる固体電解質の破壊を抑制することが有効である。
【0038】
図6Aおよび
図6Bは、各々、電流モードおよび電圧モードにおけるスイッチ素子2の低抵抗状態から高抵抗状態へのリセット動作を説明するための図である。
【0039】
図6Aと
図6Bは、
図4Aの条件に対応しており、各々、ビット選択トランジスタ23のドレイン電圧Vblを2Vと3Vとし、行選択トランジスタ22のゲート電圧Vgplをパラメータとする。
図6Aと
図6Bは、このときの、抵抗変化素子21の第1と第2の電極25、26間の電位差と、抵抗変化素子21の抵抗値との関係を、SPICE(Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis)により見積った結果を示す。
【0040】
また、
図6Aと
図6Bの銅稼動領域とは、実験に基づいて算出された、抵抗変化素子21において第1の電極25を銅とした場合の、銅が移動するために必要な電圧の領域を示す。この領域内であれば、金属架橋の銅のイオン化と第1の電極25での回収が可能である。
【0041】
まず、
図6Aにおいて、1kΩの低抵抗状態にある抵抗変化素子21のリセット動作が開始されるためには、Vgplを1.1V以上として銅稼動領域とする必要がある。例えば、Vgplを1.3Vとした場合、図示された電流モードに沿って抵抗値が増大し、銅稼動領域の境界である200kΩ程度まで高抵抗化される。
【0042】
電流モードでは、Vgplが高いため大きい電流を流すことができるので、初期段階での金属架橋のイオン化(イニシエーション)を促進することができる。また、第1と第2の電極25、26間の電位差は小さいため、高電界による固体電解質(抵抗変化膜24)の破壊は抑制される。一方で、銅稼動領域の制限から、抵抗変化素子21の抵抗値は200kΩ程度に留まる。
【0043】
次に、
図6Bにおいて、
図6Aの電流モードで200kΩ程度まで高抵抗化した抵抗変化素子21は、Vgplを0.7V程度として電流を抑制しても、銅稼動領域となる。抵抗変化素子21は、図示された電圧モードに沿って抵抗値が増大し、銅稼動領域の境界である1MΩ以上にまで高抵抗化され、リセット動作を終了することができる。
【0044】
電圧モードでは、Vgplが低いため大きい電流を流すことができないことから、第1と第2の電極25、26間の電位差が大きくなっても、高電界による固体電解質の破壊は抑制される。また、第1と第2の電極25、26間の電位差が大きくなると、銅稼動領域が高抵抗側に拡大することから、抵抗変化素子21の抵抗値は1MΩ以上にまで高抵抗化され、所望の高抵抗状態となる。
【0045】
一方、
図6Bの電圧モードだけで、1kΩの低抵抗状態にある抵抗変化素子21のリセット動作を行う場合、Vgplを1.1V以上として銅稼動領域とする必要がある。例えば、Vgplを1.3Vとして銅稼動領域の限界の1MΩ以上にまで高抵抗化すると仮定する。この場合、高抵抗化の途中の過程では、Vgplが高いため大きい電流を流すことができ、かつ第1と第2の電極25、26間の電位差が大きいことから、高電界で大電流が流れることによる固体電解質の破壊が生じやすくなる。
図6Aの電流モードと
図6Bの電圧モードを組み合わせることで、このような高電界で大電流が流れることによる固体電解質の破壊を抑制することができる。
【0046】
以上のように、電流モードと電圧モードを組み合わせることで、固体電解質の破壊を抑制することができる。電流モードと電圧モードの組み合わせにおいては、電流モードを先に行うことが好ましい。電流モードによれば、Vgplが高いため大きい電流を流すことができるので、初期段階での金属架橋のイオン化を促進できるためである。また、電流モードと電圧モードの組み合わせにおいては、電圧モードを後に行うことが好ましい。電圧モードによれば、Vgplを低くしても、銅稼動領域の限界の1MΩ以上にまで高抵抗化することができるためである。
【0047】
また、電流モードと電圧モードを交互に複数回繰り返してもよい。電流モードと電圧モードを交互に繰り返すことによって、初回の電流モードと電圧モードによるリセット動作で高抵抗化に失敗しても、2回目以降のリセット動作で高抵抗化できるためである。なお、電流モードと電圧モードを交互に繰り返した場合、電流モードで終了するようにしてもよい。
【0048】
また、電流モードと電圧モードを交互に繰り返すたびに、ドレイン電圧Vblやゲート電圧Vgplを増やすようにしてもよい。ドレイン電圧Vblやゲート電圧Vgplを増やすことで、初回の電流モードと電圧モードによるリセット動作で高抵抗化に失敗しても、2回目以降のリセット動作で、より確実に高抵抗化できるためである。
【0049】
また、電流モードと電圧モードを交互に繰り返す際に、電流モードと電圧モードの間に抵抗変化素子21の抵抗値をモニタリングしてもよい。抵抗変化素子21の抵抗値をモニタリングすることによって、高抵抗化するまで電流モードと電圧モードを交互に繰り返すことができる。また、抵抗変化素子21の抵抗値をモニタリングすることによって、電流モードと電圧モードの不必要な繰り返しを防ぐことができる。
【0050】
なお、以上の
図6Aと
図6Bは、
図4Aの条件に対応させた場合を説明しているが、
図4Bの条件に対応させた場合でも、同様の説明が可能である。すなわち、
図4Bの条件に対応させた場合は、行選択トランジスタ22のソース電圧Vplを−2Vと−3Vとし、ビット選択トランジスタ23のゲート電圧Vgblをパラメータとすればよい。
【0051】
本実施形態のスイッチ素子2の抵抗変化素子21において、抵抗変化膜24は、固体電解質材料であって、酸化物や硫化物や有機物などを用いることができる。例えば、Al、Ti、Ta、Si、Hf、Zrなどを含む酸化物や、Ge、As、TeSなどを含むカルコゲナイド化合物や、炭素と酸素とシリコンを含む有機ポリマー膜などを用いることができる。また、これらの積層膜であっても良い。また、酸素空孔を有するフィラメント型のReRAM(Resistive Random Access Memory)に用いられる酸化物材料などを用いることができる。
【0052】
第1の電極25は、抵抗変化膜24に金属イオンを供給する活性電極である。このために、第1の電極25には銅を用いることができる。また、第1の電極25は、銅を主成分とし、Ti、Al、Mn、W、Mgなどを添加物として含んでいても良い。
【0053】
第2の電極26は、抵抗変化膜24に金属イオンを供給しない不活性電極である。このために、第2の電極26にはRuやPtなどの貴金属を用いることができる。あるいは、これらを主成分とし、Ta、Ti、Wなどを含んでいても良い。
【0054】
図7は、本実施形態の半導体装置200の構成を示すブロック図である。半導体装置200は半導体集積回路20を有し、半導体集積回路20はスイッチ素子2を有する。半導体集積回路20は論理演算回路を有することができ、スイッチ素子2は論理演算回路の動作や論理演算回路の接続を変更することができる。スイッチ素子2は、クロスバスイッチの構成とすることができる。論理演算回路は、LUT(Look Up Table)などの論理ブロックなどから構成することができる。
【0055】
半導体集積回路20は、半導体基板の上層に形成された多層の銅配線層を有し、スイッチ素子2の抵抗変化素子21は銅配層内に組み込まれている。また、スイッチ素子2の行選択トランジスタ22とビット選択トランジスタ23は、半導体基板内に形成されている。これにより、抵抗変化素子21と当該トランジスタとが階層構成となることから、半導体集積回路20の面積を小さくでき、半導体装置は小型化される。また、銅配線を抵抗変化素子21の第1の電極25に兼用できるため、半導体装置の製造工程が簡素化される。
【0056】
半導体装置200は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)やバイポーラトランジスタを有するメモリ回路、マイクロプロセッサなどの論理演算回路、これらを同時に搭載した回路、などの半導体集積回路20を有することができる。
【0057】
また、半導体装置200に電子回路装置、光回路装置、量子回路装置、マイクロマシン、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)などを接続することができ、本実施形態のスイッチ素子2を接続の際のスイッチとして用いることができる。また、本実施形態のスイッチ素子2を、不揮発性メモリとして用いることができる。
【0058】
図8は、本実施形態のスイッチ素子2のスイッチ方法の動作を示すフローチャートである。本フローチャートは、低抵抗状態(ON)にあるスイッチ素子2を、高抵抗状態(OFF)とするためのリセット動作を開始することで開始となる。
【0059】
まず、ステップS01で、スイッチ素子2を電流モードでのリセットを行う。電流モードでのリセットは、
図4Aや
図4Bの電流モードや、
図6Aの電流モードで行うことができる。
【0060】
次に、ステップS02で、スイッチ素子2を電圧モードでのリセットを行う。電圧モードでのリセットは、
図4Aや
図4Bの電圧モードや、
図6Bの電圧モードで行うことができる。
【0061】
次に、ステップS03で、スイッチ素子2の抵抗変化素子21の抵抗値を読み出してモニタリングする。抵抗変化素子21の抵抗値が予め定められた閾値以上である場合(ステップS04のYES)、所定の高抵抗状態が得られたとして、フローチャートを終了する。
【0062】
一方、抵抗変化素子21の抵抗値が当該閾値未満である場合(ステップS04のNO)、所定の高抵抗状態が得られていないとして、ステップS01以降を繰り返す。このとき、所定の高抵抗状態が得られるまでステップS01以降を繰り返すことができる。また、ステップS01以降を繰り返す回数に上限を設けて、所定の回数を繰り返しても所定の高抵抗状態が得られない場合、フローチャートを終了し、当該抵抗変化素子21を不良素子と判定してもよい。
【0063】
また、ステップS01以降を繰り返す場合、例えば
図4Aの条件の場合、ドレイン電圧Vblやゲート電圧Vgplを増やすようにしてもよい。また、ステップ1とステップ2の間で抵抗変化素子21の抵抗値を読み出してモニタリングしてもよい。
【0064】
図9は、本実施形態のスイッチ方法でリセット動作を行った場合と、既知のスイッチ方法でリセット動作を行った場合の、複数のスイッチ素子2での不良率と平均電流の比較結果を示す図である。
【0065】
まず、セット/リセット動作を行っていない初期状態(高抵抗状態)においては、不良率は0ppm、平均電流は1×10
−8Aであった。
【0066】
次に、セット動作を行い低抵抗状態とした後に、リセット動作を行った。既知のスイッチ方法でのリセット動作では、ビット選択トランジスタ23のドレイン電圧Vblを2V、2.5V、3V、3.5Vとした場合について、それぞれ行った。また、本実施形態のスイッチ方法でのリセット動作では、Vblを2.5Vと3.5Vとした電流モードと電圧モードを3回繰り返す場合について行った。本実施形態のスイッチ方法は、
図4Aの条件とした。
【0067】
既知のスイッチ方法でリセット動作を行った場合、Vblを2V、2.5V、3Vと増やすに従って、不良率は2510ppm、144ppm、20ppmと減少するが、Vblを3.5Vとすると914ppmに増大した。このとき、平均電流は、Vblを2V、2.5Vと増やすと2×10
−6A、2×10
−7Aと減少するが、Vblが3Vでは8×10
−7Aに増大し、Vblが3.5Vでは7×10
−5Aにさらに増大した。Vblが3Vでは、2.5Vに対して不良率は減少するが、その一方で、平均電流は増大した。これは、3.5Vで不良率と平均電流が共に大幅に増大したことの予兆が、3Vでの平均電流の増大として現れたものと考えられた。
【0068】
これらの既知のスイッチ方法でのリセット動作の結果は、
図5や
図11に示す不良動作に起因するものと考えられた。すなわち、既知のスイッチ方法では、初期状態並みの不良率(0ppm)と平均電流(1×10
−8A)を得ることはできなかった。
【0069】
これに対して、本実施形態のスイッチ方法でリセット動作を行った場合、不良率は0ppm、平均電流は3×10
−8Aと、初期状態並みの不良率と平均電流を得ることができた。すなわち、本実施形態のスイッチ方法によれば、低抵抗状態から高抵抗状態への遷移が安定化することが確認された。
【0070】
以上のように、本実施形態のスイッチ素子2によれば、電流モードと電圧モードを組み合わせることで、リセット動作における電流制限と電圧制限がされることにより、高電圧で大電流が流れることによる抵抗変化膜24(固体電解質材料)の破壊を抑制することができる。これにより、リセットのための電圧を印加しているにも関わらず、低抵抗状態化してしまうという不良動作の発生を抑制することができる。
【0071】
以上のように、本実施形態によれば、金属架橋型の抵抗変化素子の低抵抗状態から高抵抗状態への遷移を安定化したスイッチ素子を提供することができる。
【0072】
また、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
(付記1)
金属析出型の抵抗変化膜と、前記抵抗変化膜の一方の面に接続し前記抵抗変化膜に金属イオンを供給する第1の電極と、前記抵抗変化膜の他方の面に接続する第2の電極と、を有する抵抗変化素子と、
前記第1の電極にドレインもしくはソースが接続する第1のトランジスタと、
前記第2の電極にソースもしくはドレインが接続する第2のトランジスタと、を有し、
前記第1のトランジスタと前記第2のトランジスタが前記第2の電極の電位を前記第1の電極の電位よりも高くして前記抵抗変化素子を低抵抗状態から高抵抗状態にスイッチする際に、
前記第1のトランジスタもしくは前記第2のトランジスタのゲート電圧を第1のゲート電圧とし、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電位差を第1の電位差とする、第1のモードと、
前記第1のトランジスタもしくは前記第2のトランジスタのゲート電圧を第2のゲート電圧とし、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電位差を第2の電位差とする、第2のモードと、
を有して前記スイッチをし、
前記第1のゲート電圧は前記第2のゲート電圧よりも大きく、前記第1の電位差は前記第2の電位差よりも小さく
し、
前記第1のモードと前記第2のモードを交互に繰り返す、
スイッチ素子。
(付記2)
前記第1と第2の電位差は、前記第1のトランジスタのソースもしくはドレインの電位と、前記第2のトランジスタのドレインもしくはソースの電位との差に基づく、付記1記載のスイッチ素子。
(付記3)
前記第1のモードで前記スイッチを開始する、付記1または2記載のスイッチ素子。
(付記
4)
前記第1のモードと前記第2のモードを交互に繰り返すたびに、前記第1のゲート電圧と前記第2のゲート電圧、もしくは前記第1の電位差と前記第2の電位差を増やす、
請求項
1から3の内の1項記載のスイッチ素子。
(付記
5)
前記第1のモードと前記第2のモードの間で前記抵抗変化素子の抵抗値をモニタリングする、
請求項1から
4の内の1項記載のスイッチ素子。
(付記
6)
請求項1から
5の内の1項記載のスイッチ素子を有する半導体集積回路を有する
半導体装置。
(付記
7)
前記半導体集積回路は配線層を有し、前記スイッチ素子の前記抵抗変化素子は前記配線層内に設けられている、
請求項
6記載の半導体装置。
(付記
8)
金属析出型の抵抗変化膜と、前記抵抗変化膜の一方の面に接続し前記抵抗変化膜に金属イオンを供給する第1の電極と、前記抵抗変化膜の他方の面に接続する第2の電極と、を有する抵抗変化素子と、
前記第1の電極にドレインもしくはソースが接続する第1のトランジスタと、
前記第2の電極にソースもしくはドレインが接続する第2のトランジスタと、
を有するスイッチ素子のスイッチ方法において、
前記第2の電極の電位を前記第1の電極の電位よりも高くして前記抵抗変化素子を低抵抗状態から高抵抗状態にスイッチする際に、
前記第1のトランジスタもしくは前記第2のトランジスタのゲート電圧を第1のゲート電圧とし、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電位差を第1の電位差とする、第1のモードと、
前記第1のトランジスタもしくは前記第2のトランジスタのゲート電圧を第2のゲート電圧とし、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電位差を第2の電位差とする、第2のモードと、を有して前記スイッチをし、
前記第1のゲート電圧は前記第2のゲート電圧よりも大きく、前記第1の電位差は前記第2の電位差よりも小さく
し、
前記第1のモードと前記第2のモードを交互に繰り返す、
スイッチ方法。
(付記
9)
前記第1の電位差と前記第2の電位差は、
前記第1のトランジスタのソースもしくはドレインの電位と、前記第2のトランジスタのドレインもしくはソースの電位との差に基づく、
請求項
8記載のスイッチ方法。
(付記
10)
前記第1のモードで前記スイッチを開始する、
請求項
8または
9記載のスイッチ方法。
(付記
11)
前記第1のモードと前記第2のモードを交互に繰り返すたびに、
前記第1のゲート電圧と前記第2のゲート電圧もしくは前記第1の電位差と前記第2の電位差を増やす、
請求項
8から10記載のスイッチ方法。
(付記
12)
前記第1のモードと前記第2のモードの間で前記抵抗変化素子の抵抗値をモニタリングする、
請求項
8から
11の内の1項記載のスイッチ方法。
【0073】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0074】
この出願は、2017年7月6日に出願された日本出願特願2017−133083を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。