特許第6934259号(P6934259)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6934259
(24)【登録日】2021年8月25日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】スプリンクラーヘッド
(51)【国際特許分類】
   A62C 31/02 20060101AFI20210906BHJP
   A62C 37/11 20060101ALI20210906BHJP
【FI】
   A62C31/02
   A62C37/11
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-556432(P2019-556432)
(86)(22)【出願日】2017年11月28日
(86)【国際出願番号】JP2017042598
(87)【国際公開番号】WO2019106713
(87)【国際公開日】20190606
【審査請求日】2020年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000199186
【氏名又は名称】千住スプリンクラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】小岩 康明
【審査官】 村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−67509(JP,A)
【文献】 特開2001−46544(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0113092(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0246232(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水配管と接続されたノズルを内部に備えた本体、
本体からノズルの放水方向に延出した一対のアーム、
アームの先端はノズルの中心軸上に設置した柱状のボスに連結され、
ボスの内部は牝ネジを有しており、該牝ネジに螺合されノズル側に先端が突出しているインプレスネジ、
ボスの先端に設置された円板状のデフレクター、を有しており、
デフレクターの周縁には複数のスリットがデフレクターの外周からノズルの中心軸に向かって等間隔、同じ長さで刻設されており、一対のアームを通過する平面と垂直に交差し、且つノズルの中心軸を通過する線に対して最も近い位置に設けられた第1スリットの長さは、前記スリットよりも長いことを特徴とするスプリンクラーヘッド。
【請求項2】
第1スリットは一対のアームを通過する平面と垂直に交差し、且つノズルの中心軸を通過する線上に設置される請求項1記載のスプリンクラーヘッド。
【請求項3】
前記スリットの長さは4.5〜7mmであり、第1スリットの長さは前記スリットに対して1倍を超え、1.5倍以下である請求項1または請求項2記載のスプリンクラーヘッド。
【請求項4】
前記スリットと第1スリットを含めたスリットの総数は16〜24個である請求項1〜請求項3何れか1項記載のスプリンクラーヘッド。
【請求項5】
第1スリットおよび前記スリットの幅は全て同一である請求項1〜請求項4何れか1項記載のスプリンクラーヘッド。
【請求項6】
前記ボスのノズル側の外周端は曲面形状となっており、インプレスネジの先端形状に沿った延長線が前記曲面と近接または接する請求項1〜請求項5何れか1項記載のスプリンクラーヘッド。
【請求項7】
インプレスネジ先端の斜面の角度が80°〜100°である請求項1〜請求項6何れか1項記載のスプリンクラーヘッド。
【請求項8】
インプレスネジの先端は尖っており、その頂点は曲面状であり曲面半径は2mm以下である請求項7記載のスプリンクラーヘッド。
【請求項9】
ボスのノズル側の外周端が曲面状となっている請求項1〜請求項8何れか1項記載のスプリンクラーヘッド。
【請求項10】
ボスのノズル側の外周端の曲面半径は1mm〜3mmである請求項9記載のスプリンクラーヘッド
【請求項11】
隣接する2つのスリットの間における最小間隔と最大間隔の比は1.8〜2である請求項1〜請求項10何れか1項記載のスプリンクラーヘッド。
【請求項12】
隣接する2つのスリットの間における最小間隔とスリットの幅との比は1.15〜1.3である請求項1〜請求項11何れか1項記載のスプリンクラーヘッド。
【請求項13】
スリットのボス側の端が接する内接円の直径は、18mm〜19.5mmである請求項1〜請求項12何れか1項記載のスプリンクラーヘッド。
【請求項14】
ノズルの流量と放水圧力から導かれるKファクターの値が3〜5.8である請求項1〜請求項13何れか1項記載のスプリンクラーヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火用のスプリンクラーヘッドに関するものであり、特に住宅用のスプリンクラーヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
スプリンクラー設備は建物内に設置されており、火災の熱を感知して自動的に作動して水を撒き消火を行う。スプリンクラーヘッドは内部にノズルを有しており、ノズルは給水源に続く配管と接続されており、常時はノズルが閉じた状態にある。火災が発生して熱によりスプリンクラーヘッドが作動するとノズルが開放され、ノズルから配管内に充填された水が放出される。スプリンクラーヘッドはノズルの出口の延長上に水を四方に飛散させるデフレクターを備えており、デフレクターに衝突した水が所定の範囲に散布され火災を鎮圧・消火する。
【0003】
スプリンクラー設備は商業施設や公共施設、住宅等に設置されており、設置や施工のための基準が定められている。アメリカではthe National Fire Protection Association standardsによりNFPA 13として定められおり、建物の用途に応じたスプリンクラー設備の設計および設置のための基準が定められている。住宅用スプリンクラー設備の基準はNFPA 13D、13Rがある。また住宅用スプリンクラーヘッドの基準としてUnderwriters Laboratories(UL LLC)によりUL 1626が規定されている。
【0004】
従来の住宅用スプリンクラーヘッドとして米国特許第6516893号や米国特許第7201234号がある。これらのスプリンクラーヘッドはデフレクターの構造により所望の散水パターンを得ている。しかしながらデフレクターの形状が複雑となっている。その要因の一つとしてこれらの住宅用スプリンクラーヘッドに用いられている本体が他の仕様のスプリンクラーヘッドと共通使用されていることから本体構造の変更が制限されていることがあげられる。
【0005】
散水パターンはデフレクターの形状が大きく影響するが、これ以外にノズルから放出された水が衝突する本体の部位についても少なからず影響を及ぼしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6516893号明細書
【特許文献2】米国特許第7201234号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明では、上記問題に鑑み、シンプルなデフレクター形状により所望の散水パターンが得られるスプリンクラーヘッドを提供することを第1の目的としている。
【0008】
また第2の目的として、UL 1626に規定されている散水試験および消火試験を、最も少ない流量でクリアできるスプリンクラーヘッドの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は以下のスプリンクラーヘッドを提供する。
給水配管と接続されたノズルを内部に備えた本体、本体からノズルの放水方向に延出した一対のアーム、アームの先端はノズルの中心軸上に設置した柱状のボスに連結され、ボスの内部は牝ネジを有しており、該牝ネジに螺合されノズル側に先端が突出しているインプレスネジ、ボスの先端に設置された円板状のデフレクター、を有しており、デフレクターの周縁には複数のスリットがデフレクターの外周からノズルの中心軸に向かって等間隔、同じ長さで刻設されており、一対のアームを通過する平面と垂直に交差し、且つノズルの中心軸を通過する線に対して最も近い位置に設けられた第1スリットの長さは、他のスリットよりも長い構造を備えたスプリンクラーヘッドである。
【0010】
さらに、給水配管と接続されたノズルを内部に備えた本体、本体からノズルの放水方向に延出した一対のアーム、アームの先端はノズルの中心軸上に設置した柱状のボスに連結され、ボスの内部は牝ネジを有しており、該牝ネジに螺合されノズル側に先端が突出しているインプレスネジ、ボスの先端に設置された円板状で周縁には複数のスリットが刻設されたデフレクター、を有しており、ボスのノズル側の外周端は曲面形状となっており、インプレスネジの先端形状に沿った延長線が前記曲面と近接または接する構造を備えたスプリンクラーヘッドである。
【0011】
上記のスプリンクラーヘッドは住宅用スプリンクラーヘッドであり、ノズルの流量と放水圧力から導かれるKファクターの値が3から5.8となっている。デフレクターおよびデフレクターが設置されたボス、ボスに設置されるインプレスネジの形状により所望の散水パターンを得ることができる。より具体的に説明すると、ノズルから放出された水が最初に衝突するインプレスネジの先端およびインプレスネジとボスの境界部分において乱流が発生しにくい構成にすることで、デフレクターのスリット形状はシンプルになり、散水パターンのコントロールが容易になる。
【0012】
インプレスネジの先端はノズル側に突出しており、その形状は尖っている。これにより水流の抵抗が少なくなるとともに、先端に衝突した水を四方へ均一に分配する効果がある。インプレスネジの先端からボス側にかけては斜面となっており水流は斜面に沿って流れる。斜面に沿った延長線はボスの外周端の曲面と近接または接しており水流は斜面からボス外周端の曲面に沿ってスムーズに流れる。そしてボスの外周を通過してデフレクターの平面に到達した水流は、デフレクターの外周に等間隔で設置されたスリットを通過して床面に向かって飛散する。あるいはデフレクターの外周まで到達して壁面に向かって飛散する。
【0013】
このとき、一対のアームを通過する平面と垂直に交差し、且つノズルの中心軸を通過する線の方向は、アームによって水流が妨げられる影響が最も少ない位置であり、水流を妨げるものが無く流れがスムーズである。そのため水の勢いが強く、より遠くまで水が飛散するので壁面に対しては規定の濡れ高さを超える散水量を得ることができる。しかしその一方で、スプリンクラーヘッド直下の近距離範囲の散水量が不足する傾向がある。これに対して、この位置のスリットを他のスリットよりも長くして水流を床面に導いて近距離範囲の散水量を増やすことができる。これにより床面に対して均一な散水が可能となり壁面に対しても所望の濡れ高さを得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によればインプレスネジの先端とボスによって乱流の発生を抑制することで、シンプルなデフレクター形状により所望の散水パターンを得ることができる。さらに上記構成のスプリンクラーヘッドによれば、UL 1626に規定されている散水試験および消火試験を、最も少ない流量でクリアできるスプリンクラーヘッドを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のスプリンクラーヘッドの外観図。
図2図1のII−II断面図。
図3】は図2のボス周辺の拡大図。
図4】デフレクターの平面図。
図5】スプリンクラーヘッドと散水試験設備との位置関係を示す図。
図6図4のスリット部分の拡大図。
図7図4のデフレクターの変形例。
図8図1の7−7断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1および図2に示す本発明のスプリンクラーヘッドS1は、本体1、デフレクター2、弁3、感熱分解部4から構成される。
【0017】
本体1は中空状をしており、外部は天井裏の配管と接続するための牡ネジ11が設けられ、内部はノズル12となっている。ノズル12のサイズは、ノズル12の流量と放水圧力から導かれるKファクターの値が3から5.8の範囲にあり、本実施形態ではKファクターの値が4.9である。配管と接続される牡ネジ11のサイズはNPT1/2またはR1/2とする。
【0018】
ノズル12の出口付近には、略矩形をしたベース13が設置され、ベース13からノズル12の放水方向に伸びる一対のアーム14が設置されている。アーム14はノズルの中心軸Aと略平行に伸びた直線部14Aと、直線部14Aの端からノズル12の中心軸Aに設置されたボス15に連結される交差部14Bをと備えている。図3に示すように交差部14Bは直線部14Aよりも細く、断面形状は楕円形をしている。
【0019】
ボス15はテーパーが付された円柱状で、その先端にはデフレクター2が設置されており、デフレクター2と接する側のボス15の直径D1は9〜10mmとなっている。ボス15のノズル12側の端の外周径は、デフレクター2側の直径D1よりも小径である。ボス15のノズル12側の外周端15Aは曲面形状であり、曲面の半径は1mm〜3mmの範囲とし、本実施形態では2mmとしている。
【0020】
ボス15の内部には牝ネジ15Bが設置されており、インプレスネジ16が螺入される。インプレスネジ16の先端16Aは尖っており、斜面16Bを備えている。先端16Aはノズル12と対向しており、斜面16Bの角度αは80°〜100°の範囲であり、本実施形態では90°となっている。先端16Aの頂点は球面状となっており、球面半径は2mm以下が好ましく本実施形態では1mm以下としている。
【0021】
インプレスネジ16は感熱分解部4を介して弁3をノズル12側に押圧する機能を有する。図3において、インプレスネジ16の先端16Aの斜面16Bに沿った延長線16Cはボス15の外周端15Aの曲面に対して近接または接しており、先端16Aの表面に沿って流れた水が外周端15Aを通過する際に流れの妨げとならず、乱流の発生を防いでいる。このとき、インプレスネジ16の斜面16Bとボス15のノズル12側の端面との間隔aは2mm以下とし、より好ましくは1mm以下とする。これ以上間隔が広がると乱流が発生する可能性が大きくなる。
【0022】
図4に示すデフレクター2は円板形状をしており、その外周径D3は28〜32mmの範囲とし、本実施形態では30mmである。デフレクター2の周縁には複数のスリット21が設置されている。スリット21はデフレクター2の周縁から中心点を通過する直線上に形成される。図4において、破線で示すアーム14は直線B上に配置されている。直線Bは一対のアーム14を通過する平面を表しており、直線Bと垂直に交差し、且つ中心軸Aを通過する線Cの線上にスリット22(第1スリット)が設置されている。
【0023】
スリット22は、スリット21よりも長く、スリット21の長さは4.5〜7mmの範囲とし、本実施形態では5.8mmとなっている。スリット22の長さは5.5〜8mmの範囲であり、本実施形態では6.3mmとなっている。
【0024】
全てのスリット21、22は、デフレクター2の外周上において隣接するスリットとの間隔が等しい。スリット21とスリット22を合わせたスリットの総数は16〜24個の範囲とし、本実施形態では20個としている。スリット21およびスリット22の幅W1は、全て同一であり1〜2mmの範囲に設定される。本実施形態では全て1.4mmである。デフレクター2は、線Bに対して対称形状であり、さらに線Cに対して対称形状である。
【0025】
図5に示すスプリンクラーヘッドS1と散水試験設備との位置関係において、スプリンクラーヘッドS1は縦横に隙間無く並べられた採水マスMの角の位置の天井に設置される。図中において矢印X方向にアーム14が配置され、矢印Y方向にスリット22が配置される。UL1626では1つのマスMに対して所定の水量以上を確保する必要がある。この試験設備ではスプリンクラーヘッドS1の防護エリアの1/4について散水量が測定できる。散水パターンはデフレクター2の形状を反映して略円形となり、理想的には図5に破線で示す1/4の円の中にある全ての採水マスに均一に水が散布されることが好ましい。
【0026】
しかしながら、アーム14がノズル12から放出された水流の妨げとなり、矢印X方向への水の飛距離は矢印Y方向よりも短くなる。逆に矢印Y方向はスプリンクラーヘッドS1から離れた領域Y1への散水量が多く、手前の領域Y2への散水量が少ない傾向になるが、スリット22の長さを調整することで領域Y1への散水量を減らし、領域Y2への散水量を増やすことができ、水が散水マス全体に略均一に散布される。これにより領域Y1、Y2への散水量を任意にコントロールできる。
【0027】
このとき、スリット22の長さはスリット21に対して1倍を超え、1.5倍以下にすると、床面への散水分布が均一となる。1.5倍を超えるとスプリンクラーヘッドS1の真下付近の領域Y2の散水量が増えすぎる傾向にある。
【0028】
図6はスリット21の拡大図であり、隣接する2つのスリット21における最小間隔をL1、最大間隔をL2で示している。さらにスリット21のボス15側の端が接する内接円D2を表す。ここで、最小スリット間隔L1と最大スリット間隔L2の比(L1/L2)および、スリット21の最小間隔をL1とスリット21の幅W1との比(L1/W1)は、床面の散水密度に影響を与えており、スリット21の形状によってL1/L2の数値が1.8〜2の範囲内、L1/W1の数値が1.15〜1.3の範囲内にするのが好ましい。
【0029】
図5のスプリンクラーヘッドS1において、散水によって濡れた壁面の高さ(壁面における天井面から濡れた箇所までの距離であり、以下「壁面の濡れ高さ」という)を測定するために、一点鎖線で示した位置に相当して壁面が設けられる。スリット21のボス15側の端が接する内接円D2は、壁面の濡れ高さに影響を与えており、内接円D2の直径を18mm〜19.5mmにすると、壁面の濡れ高さが20インチ〜35インチの範囲内となる。
【0030】
上記において、床面への散水量(散水密度)と壁面の濡れ高さはトレードオフの関係にある。そのため、床面への散水量と壁面の濡れ高さの両方を満足させるためには、上記の最小スリット間隔L1と最大スリット間隔L2の比(L1/L2)および、スリット21の最小間隔をL1とスリット21の幅W1との比(L1/W1)、内接円D2の直径寸法が上記の範囲内となるようにスリット21を構成するのが好ましい。
【0031】
図7はデフレクター2の変形例であり、線Cに隣接するスリット22を設置したものである。図7においてスリット22は4つ設けられており、スリット21とスリット22を合わせたスリットの総数は18個である。スリット21、22の幅W2は全て同一であり1〜2mmの範囲に設定される。本実施形態では1.7mmとなっている。線Cに隣接した2つのスリット22、22と線Cとの間隔bは等しい。
【0032】
弁3は平時においてノズル12の出口を塞いでいる。弁3はバルブキャップ31、ディスク32、皿バネ33から構成されている。バルブキャップ31は、筒状をしており一端側は球状の底部31Aとなっている。他端側は拡径されており、段31Bが設置されている。
【0033】
段31Bの内周側には円盤状のディスク32が載置される。ディスク32は中心に凹み32Aを有しており、凹み32Aには感熱分解部3の支柱42の一端と係合される。
【0034】
段31Bの外周側には皿バネ33が係止される。皿バネ33はバルブキャップ31の底部31Aから挿通される。皿バネ33の表面はフッ素樹脂により覆われている。皿バネ33の外周縁はノズル12の出口端に配置され、皿バネ33はインプレスネジ16をボス15の牝ネジ15Bに螺入すると感熱分解部4を介して押圧され弾性変形により潰れた形状になる。その際、フッ素樹脂がシール材の役目をしてノズル12を封止する。
【0035】
感熱分解部4はリンク41、支柱42、レバー43から構成される。リンク41は火災の熱により作動する感熱体であり、2枚の薄い金属板44を低融点合金で接合して構成されている。低融点合金は60〜200℃の範囲内に融点を持つものを使用しており、融点が72℃や96℃の低融点合金が一般的に使用されている。
【0036】
略四角形をした2枚の金属板44は、一方の端に穴45を有しており、他方の端にはコ字型の欠如部46が設置されている。2枚の金属板44は、欠如部46が設置された側の端を重ねた状態で低融点合金により接合されている。その際、一方の金属板44の穴45の位置には、他方の金属板44の欠如部46が重ね合わされる。接合後のリンク41の2つの穴45には、それぞれ支柱42とレバー43が挿通される。
【0037】
支柱42は短冊型であり、一端はノズル12の出口に設置された弁3のディスク32と係合され、他端はレバー43の先端に係合される。前述のように支柱42にはリンク41の穴45が挿通されている。支柱42の中間には突起47が設置されており、突起47の付近に設置された溝47Aにリンク41を係止している。
【0038】
レバー43は細長い板を略L字型に屈曲させて構成している。前述のようにレバー43の一端側はリンク41の穴45に挿通されている。レバー43の他端側は支柱42と係合しており、レバー43には支柱42の先端が係合される溝48が設置されている。
【0039】
溝48が設置された面の裏側の面には、凹部49が設置されている。凹部49は溝48よりもレバー43の他端よりに設置される。凹部49にはインプレスネジ16が接触している。インプレスネジ16の先端がレバー43の凹部49を押圧すると、レバー43には支柱42が係止されている溝48を支点として回転する力が作用する。しかしながらレバー43の一端側にはリンク41の穴45が挿通されており、レバー43の回転を阻止している。これにより感熱分解部4を構成するリンク41、支柱42、レバー43は係合状態を維持している。またインプレスネジ16は感熱分解部4を介して弁3をノズル12側に押圧保持している。
【0040】
火災時において、リンク41の低融点合金が溶融すると、一方の金属板44が上記のレバー43の回転によってもう一方の金属板44から引き剥がされる。これにより感熱分解部4の係合状態は解除され、リンク41、支柱42、レバー43の係合が外れるとともに支柱42によって支えられていた弁3はノズル12から離れて脱落し、ノズル12が開放される。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これ以外の構造、作用を以下に記載する。
【0042】
先に説明した実施形態において、レバー43のインプレスネジ16と係合する箇所の形状は凹部49としたが、これに限らず突起形状にすることができる。その際、インプレスネジ16の先端形状は前記突起形状に対応する凹みや溝に変更可能である。
【0043】
また、感熱分解部4にグラスバルブを用いたスプリンクラーヘッドにも適用可能である。その際、インプレスネジ16の先端形状はグラスバルブを受容可能なように凹形状にしてもよい。
【0044】
ボスの直径D1とスリット21のボス15側の端が接する内接円D2、デフレクターの外周径D3の比は、概ねD1:D2:D3=1:2:3となっている。これにより床面への散水量と壁面の濡れ高さの両方を満足することができる。
【符号の説明】
【0045】
S1 スプリンクラーヘッド
1 本体
2 デフレクター
3 弁
4 感熱分解部
12 ノズル
14 アーム
15 ボス
15A ボスの外周端
16 インプレスネジ
16B 斜面
21 スリット
22 スリット(第1のスリット)
31 バルブキャップ
32 ディスク
33 皿バネ
41 リンク
42 支柱
43 レバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8