特許第6934295号(P6934295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6934295水処理剤組成物、水処理方法、および水処理剤組成物の保管または使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6934295
(24)【登録日】2021年8月25日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】水処理剤組成物、水処理方法、および水処理剤組成物の保管または使用方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/00 20060101AFI20210906BHJP
   A01N 25/22 20060101ALI20210906BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20210906BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20210906BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20210906BHJP
   C02F 1/00 20060101ALI20210906BHJP
   C02F 1/50 20060101ALI20210906BHJP
   C02F 1/76 20060101ALI20210906BHJP
【FI】
   A01N59/00 Z
   A01N25/22
   A01N25/02
   A01P1/00
   A01P3/00
   C02F1/00 K
   C02F1/50 531L
   C02F1/76 A
   C02F1/50 540B
   C02F1/50 510C
   C02F1/50 520A
   C02F1/50 520K
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-233828(P2016-233828)
(22)【出願日】2016年12月1日
(65)【公開番号】特開2018-90513(P2018-90513A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 浩
(72)【発明者】
【氏名】都司 雅人
【審査官】 伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−101251(JP,A)
【文献】 特開2010−189390(JP,A)
【文献】 特開2015−044765(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/135916(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
C02F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、
水処理剤組成物全体の量に対する有効臭素濃度として9.4〜16.5質量%の臭素と
前記臭素のモル量に対して1〜1.5倍当量のスルファミン酸と、
アルカリとして水酸化ナトリウムのみと、
を含有し、
pHが12.5以上であり、かつ水処理剤組成物全体の量に対する水分の濃度が54質量%以上であり、溶質濃度が4.1〜7.3mol/kgであることを特徴とする水処理剤組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理剤組成物であって、
凍結点が0℃未満であることを特徴とする水処理剤組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水処理剤組成物を用いて水を処理することを特徴とする水処理方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の水処理剤組成物を、5℃未満、−20℃以上の環境下で保管または使用することを特徴とする水処理剤組成物の保管または使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理剤組成物、その水処理剤組成物を用いる水処理方法、および、その水処理剤組成物の保管または使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却水系等の工業用水システムや製紙工程等での生物付着等を制御するための殺菌剤として、有機系スライムコントロール剤よりも酸化力がある、すなわち即効効果の高い、無機系スライムコントロール剤が用いられている場合が増えている。無機系スライムコントロール剤としては、主に次亜塩素酸ナトリウム等の次亜塩素酸塩が使用されるが、より効果を高めるため、次亜臭素酸ナトリウム等の次亜臭素酸塩が使用されることもある。
【0003】
次亜塩素酸ナトリウムより高いスライムコントロール性能を有する次亜臭素酸ナトリウムは不安定であり、工業的には、例えば、臭化ナトリウム等の臭化物塩と次亜塩素酸ナトリウム等の次亜塩素酸塩とを使用する直前に混合し、系内で次亜臭素酸ナトリウムを生成させる手法や、次亜臭素酸塩をスルファミン酸等で安定化した安定化次亜臭素酸組成物を用いる方法が採られている。
【0004】
安定化次亜臭素酸組成物は、臭素や、臭化ナトリウム等の臭化物と次亜塩素酸等の塩素系酸化剤とを反応させて生成させた次亜臭素酸等の臭素系酸化剤と、スルファミン酸とを含有するものである(例えば、特許文献1,2,3参照)。
【0005】
この安定化次亜臭素酸組成物は、組成によっては、低温において凍結や結晶化が起こり易くなるという問題がある。具体的には、0℃付近でも凍結や結晶化が起こる場合がある。このため、特に寒冷地での使用に関して、使用上および保管上の制限を受ける場合がある。
【0006】
特許文献4には、添加するアルカリを2種類以上とすることで、安定化次亜臭素酸組成物の凍結点および結晶化点を低下できることが記載されている。しかし、安定化次亜臭素酸組成物の水分濃度や溶質濃度と凍結点との関係については、言及されていない。また、特許文献4の組成物は、組成物全体の量に対する水分濃度が50質量%以下であり、溶質濃度が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願2015−062889号公報
【特許文献2】特願2015−044765号公報
【特許文献3】特願2015−209610号公報
【特許文献4】国際特許出願公開第2007/142618号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含み、理論凍結温度よりも低い凍結点を有し、安定な水処理剤組成物、その水処理剤組成物を用いる水処理方法、および、その水処理剤組成物の保管または使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、水と、水処理剤組成物全体の量に対する有効臭素濃度として9.4〜16.5質量%の臭素と、前記臭素のモル量に対して1〜1.5倍当量のスルファミン酸と、アルカリとして水酸化ナトリウムのみと、を含有し、pHが12.5以上であり、かつ水処理剤組成物全体の量に対する水分の濃度が54質量%以上であり、溶質濃度が4.1〜7.3mol/kgである、水処理剤組成物である。
【0012】
前記水処理剤組成物において、凍結点が0℃未満であることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、前記水処理剤組成物を用いて水を処理する水処理方法である。
【0014】
また、本発明は、前記水処理剤組成物を、5℃未満、−20℃以上の環境下で保管または使用する、水処理剤組成物の保管または使用方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含み、理論凍結温度よりも低い凍結点を有し、安定な水処理剤組成物、その水処理剤組成物を用いる水処理方法、および、その水処理剤組成物の保管または使用方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0017】
一般的に、溶液は、溶質の濃度(モル濃度)に比例して凝固点(凍結点)が降下する(凝固点降下)。臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物においても、含有する溶質の濃度を増加させると、ある範囲までは、凍結点がモル凝固点降下の理論値通りに低下する。しかし、本発明者らの検討により、安定化次亜臭素酸組成物の溶質濃度をさらに増加させると、凍結点がモル凝固点降下の理論値以上に低下するようになり、さらに溶質濃度を増加させると、今度は逆に、凍結点がモル凝固点降下の理論値より高くなることがわかった。
【0018】
この現象の詳細な原因は不明であるが、溶質濃度の増加により、水分濃度が低下し、それにより溶解度の関係から低温において溶質の結晶化が起こり易くなり、生成した溶質の結晶が核となり、溶液の凍結を促進するためと考えられる。
【0019】
このように本発明者らは、臭素系酸化剤とスルファミン酸とを含む安定化次亜臭素酸組成物において、一般的に知られている「溶質濃度の上昇に伴う凝固点降下」以外に、「水分濃度」が凍結点に大きく影響していることを見出した。すなわち、安定化次亜臭素酸組成物の凍結点については、「溶質濃度」と「水分濃度」の2つの要因が影響しており、これら2つの要因の適度な範囲では、驚くべきことに「理論上のモル凝固点降下」以上に、凍結点を低下させることができる。
【0020】
具体的には、本発明の実施形態に係る水処理剤組成物は、水と、水処理剤組成物全体の量に対する有効臭素濃度として1〜16.5質量%の臭素系酸化剤と、臭素系酸化剤のモル量に対して0.7〜2.0倍当量のスルファミン酸と、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムのうちの少なくとも1つを含むアルカリと、を含有し、pHが12.5以上であり、かつ水処理剤組成物全体の量に対する水分の濃度が54質量%以上である。
【0021】
本実施形態に係る水処理剤組成物において、臭素系酸化剤の含有量は、水処理剤組成物全体の量に対する有効臭素濃度として1〜16.5質量%の範囲であり、3〜16質量%の範囲であることが好ましく、6〜15質量%の範囲であることがより好ましい。臭素系酸化剤の含有量が水処理剤組成物全体の量に対する有効臭素濃度として1質量%未満である、または、16.5質量%を超えると、凍結点が理論凍結温度以上となる。
【0022】
本実施形態に係る水処理剤組成物において、スルファミン酸の含有量は、臭素系酸化剤のモル量に対して0.7〜2.0倍当量の範囲であり、1〜1.5倍当量の範囲であることが好ましく、1.03〜1.49倍当量の範囲であることがより好ましい。スルファミン酸の含有量が臭素系酸化剤のモル量に対して0.7倍当量未満であると、反応系内の臭素酸の生成量が増加する場合があり、2.0倍当量を超えると、製剤性が悪化する場合がある。
【0023】
本実施形態に係る水処理剤組成物のpHは、12.5以上であり、13.0以上であることが好ましく、13.5以上であることがより好ましく、13.7以上であることがさらに好ましい。水処理剤組成物のpHが12.5未満であると、水処理剤組成物中の有効ハロゲンが不安定になる。
【0024】
本実施形態に係る水処理剤組成物において、水処理剤組成物全体の量に対する水分の濃度は、54質量%以上であり、55質量%以上90質量%以下の範囲であることが好ましく、60質量%以上90質量%以下の範囲であることがより好ましい。水処理剤組成物全体の量に対する水分の濃度が54質量%未満であると、凍結点が0℃を超える。
【0025】
本実施形態に係る水処理剤組成物において、水処理剤組成物中の溶質濃度は、0.4mol/kg以上であることが好ましく、3.0mol/kg以上であることがより好ましい。水処理剤組成物中の溶質濃度が0.4mol/kg未満であると、凍結点が0℃を超える場合がある。
【0026】
本実施形態に係る水処理剤組成物において、水処理剤組成物中の溶質濃度が0.4mol/kg以上であり、かつ、水分濃度が54質量%以上であることが好ましく、溶質濃度が3.0mol/kg以上であり、かつ、水分濃度が55質量%以上であることがより好ましく、溶質濃度が3.0mol/kg以上であり、かつ、水分濃度が60質量%以上であることがさらに好ましい。水処理剤組成物中の溶質濃度が0.4mol/kg未満、または、水分濃度が54質量%未満であると、凍結点が0℃を超える。
【0027】
ここで、本明細書において、「溶質濃度」とは、水処理剤組成物中の、水酸化物イオン(OH)、水素イオン(H)以外のイオン成分のモル濃度(mol/kg)をいう。
【0028】
本実施形態に係る水処理剤組成物の凍結点は、0℃未満であり、−5℃以下であることが好ましく、−10℃以下であることがより好ましく、−15℃以下であることがさらに好ましく、−20℃以下であることが特に好ましい。
【0029】
本実施形態に係る水処理剤組成物において、溶質濃度(mol/kg)×1.86で計算される「理論凝固点降下度(a)」と、「凍結点(b)」とから求める(a)+(b)を「凍結点低下効果」としたとき、(a)+(b)が、0℃未満であることが好ましく、−1℃未満であることがより好ましく、−2℃未満であることがさらに好ましい。
【0030】
本実施形態に係る水処理剤組成物は、5℃未満、−20℃以上の環境下、好ましくは0℃以下、−17℃以上の環境下で保管または使用することができる。
【0031】
本実施形態に係る水処理剤組成物は、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を含有する。「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物」は、「臭素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」との混合物を含む安定化次亜臭素酸組成物であってもよいし、「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」を含む安定化次亜臭素酸組成物であってもよい。
【0032】
安定化次亜臭素酸組成物を構成する臭素は、何らかの手段で活性臭素として供給する必要があり、臭素系酸化剤として臭素(液体臭素)を用いてもよく、または、臭素化合物と次亜塩素酸塩等の塩素系酸化剤とを反応させることにより発生する活性臭素を用いてもよく、または、臭素系酸化剤として塩化臭素や臭素酸塩等を経由した活性臭素を用いてもよい。これらの中で、最も好ましいものは、臭素(液体臭素)を用いることである。
【0033】
臭素系酸化剤としては、臭素(液体臭素)、塩化臭素、臭素酸、臭素酸塩、次亜臭素酸等が挙げられる。上記の通り、臭素化合物と次亜塩素酸塩等の塩素系酸化剤とを反応させて得られる「臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物」も臭素系酸化剤に含まれる。
【0034】
これらのうち、臭素を用いた「臭素とスルファミン酸化合物(臭素とスルファミン酸化合物の混合物)」または「臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物」を含む安定化次亜臭素酸組成物は、「次亜塩素酸と臭素化合物とスルファミン酸」を含む安定化次亜臭素酸組成物および「塩化臭素とスルファミン酸」を含む安定化次亜臭素酸組成物等に比べて、有効臭素の安定性が高く、臭素酸の副生も抑制できるため、より好ましい。
【0035】
臭素化合物としては、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、臭化アンモニウムおよび臭化水素酸等が挙げられる。これらのうち、製造コスト等の点から、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化アンモニウムが好ましい。
【0036】
塩素系酸化剤としては、例えば、塩素ガス、二酸化塩素、次亜塩素酸またはその塩、亜塩素酸またはその塩、塩素酸またはその塩、過塩素酸またはその塩、塩素化イソシアヌル酸またはその塩等が挙げられる。これらのうち、塩としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム等の次亜塩素酸アルカリ金属塩、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸バリウム等の次亜塩素酸アルカリ土類金属塩、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム等の亜塩素酸アルカリ金属塩、亜塩素酸バリウム等の亜塩素酸アルカリ土類金属塩、亜塩素酸ニッケル等の他の亜塩素酸金属塩、塩素酸アンモニウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム等の塩素酸アルカリ金属塩、塩素酸カルシウム、塩素酸バリウム等の塩素酸アルカリ土類金属塩等が挙げられる。これらの塩素系酸化剤は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。塩素系酸化剤としては、取り扱い性等の点から、次亜塩素酸ナトリウムを用いるのが好ましい。
【0037】
スルファミン酸化合物は、以下の一般式(1)で示される化合物である。
NSOH(1)
(式中、Rは独立して水素原子または炭素数1〜8のアルキル基である。)
【0038】
スルファミン酸化合物としては、例えば、2個のR基の両方が水素原子であるスルファミン酸(アミド硫酸)の他に、N−メチルスルファミン酸、N−エチルスルファミン酸、N−プロピルスルファミン酸、N−イソプロピルスルファミン酸、N−ブチルスルファミン酸等の2個のR基の一方が水素原子であり、他方が炭素数1〜8のアルキル基であるスルファミン酸化合物、N,N−ジメチルスルファミン酸、N,N−ジエチルスルファミン酸、N,N−ジプロピルスルファミン酸、N,N−ジブチルスルファミン酸、N−メチル−N−エチルスルファミン酸、N−メチル−N−プロピルスルファミン酸等の2個のR基の両方が炭素数1〜8のアルキル基であるスルファミン酸化合物、N−フェニルスルファミン酸等の2個のR基の一方が水素原子であり、他方が炭素数6〜10のアリール基であるスルファミン酸化合物、またはこれらの塩等が挙げられる。スルファミン酸塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩、マンガン塩、銅塩、亜鉛塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩等の他の金属塩、アンモニウム塩およびグアニジン塩等が挙げられる。スルファミン酸化合物およびこれらの塩は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。スルファミン酸化合物としては、環境負荷等の点から、スルファミン酸(アミド硫酸)を用いるのが好ましい。
【0039】
本実施形態に係る水処理剤組成物は、さらにアルカリを含む。アルカリは、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムのうちの少なくとも1つを含む。アルカリとしては、水酸化ナトリウムのみであることが好ましい。低温時の製品安定性等の点から、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとを併用してもよい。また、アルカリは、固形でなく、水溶液として用いてもよい。アルカリの含有量は、水処理剤組成物のpHが12.5以上となる量である。
【0040】
本実施形態に係る水処理剤組成物には、必要に応じて、前述した成分に加えて、スケール分散剤を配合してもよい。スケール分散剤は、スケール発生に関与するカルシウムイオンやマグネシウムイオン等をキレート化して水中における当該イオンの溶解度を高めることにより、スケールの発生を抑制するためのものである。これにより、冷却塔内等におけるスラッジの堆積等が抑制され、堆積したスラッジ等による腐食を抑制することができる。
【0041】
このスケール分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸やその塩、ポリマレイン酸やその塩、アクリルアミド系重合体とアクリル酸系重合体、(メタ)アクリル酸および/またはその塩の単量体単位、(メタ)アクリルアミド−アルキル−および/またはアリール−スルホン酸および/またはその塩の単量体単位、および置換(メタ)アクリルアミドの単量体単位からなる水溶性共重合体等ポリアクリル酸、アクリル酸とアクリルアミドの共重合体、ホスフィン酸やビス(ポリ−2−カルボキシエチル)ホスフィン酸等のホスフィン酸化合物やホスフィノカルボン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−1.2−トリカルボン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、ヒドロキシホスホノ酢酸等のホスホン酸塩や重合燐酸塩、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロトリ酢酸や、これらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1つが挙げられる。
【0042】
<水処理剤組成物の製造方法>
本実施形態に係る水処理剤組成物は、例えば、水にアルカリを混合した後、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物を混合することにより得られる。
【0043】
臭素とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を含有する水処理剤組成物の製造方法としては、水、アルカリおよびスルファミン酸化合物を含む混合液に臭素を不活性ガス雰囲気下で添加して反応させる工程、または、水、アルカリおよびスルファミン酸化合物を含む混合液に臭素を不活性ガス雰囲気下で添加する工程を含むことが好ましい。不活性ガス雰囲気下で臭素を添加して反応させる、または、不活性ガス雰囲気下で臭素を添加することにより、水処理剤組成物中の臭素酸イオン濃度が低くなる。
【0044】
用いる不活性ガスとしては限定されないが、製造等の面から窒素およびアルゴンのうち少なくとも1つが好ましく、特に製造コスト等の面から窒素が好ましい。
【0045】
臭素の添加の際の反応器内の酸素濃度は6%以下が好ましいが、4%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が特に好ましい。臭素の反応の際の反応器内の酸素濃度が6%を超えると、反応系内の臭素酸の生成量が増加する場合がある。
【0046】
臭素の添加率は、水処理剤組成物全体の量に対して25重量%以下であることが好ましく、1重量%以上20重量%以下であることがより好ましい。臭素の添加率が水処理剤組成物全体の量に対して25重量%を超えると、反応系内の臭素酸の生成量が増加する場合がある。1重量%未満であると、殺菌力が劣る場合がある。
【0047】
臭素添加の際の反応温度は、0℃以上25℃以下の範囲に制御することが好ましいが、製造コスト等の面から、0℃以上15℃以下の範囲に制御することがより好ましい。臭素添加の際の反応温度が25℃を超えると、反応系内の臭素酸の生成量が増加する場合があり、0℃未満であると、凍結する場合がある。
【0048】
本実施形態に係る水処理剤組成物の製造方法により、水処理剤組成物が臭素酸イオンを実質的に含有せず、安全に取扱うことが可能である。本実施形態に係る水処理剤組成物の製造方法により、臭素酸イオンを実質的に含まない、かつ殺菌性能に優れ、保存安定性に優れる一剤系の水処理剤組成物が得られる。
【0049】
<水処理剤組成物を用いた水処理方法>
本実施形態に係る水処理剤組成物は、冷却水等の工業用水システムの水処理や、生物付着汚染の進んだ配管洗浄等の水処理方法に用いることができる。
【0050】
本実施形態に係る水処理剤組成物を添加した水系における有効臭素濃度は、0.01〜100mg/L(as Cl)であることが好ましい。0.01mg/L(as Cl)未満であると、十分なスライム抑制効果を得ることができない場合があり、100mg/L(as Cl)より多いと、配管等の腐食等を引き起こす可能性がある。
【実施例】
【0051】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
[安定化次亜臭素酸組成物の調製例]
窒素雰囲気下で、液体臭素:16.9重量%(wt%)、スルファミン酸:10.7重量%、水酸化ナトリウム:12.9重量%、水酸化カリウム:3.94重量%、水:残分を混合して、安定化次亜臭素酸組成物を調製した。安定化次亜臭素酸組成物のpHは14、全塩素濃度は7.5重量%であった。全塩素濃度は、HACH社の多項目水質分析計DR/4000を用いて、全塩素測定法(DPD(ジエチル−p−フェニレンジアミン)法)により測定した値(mg/L asCl)である。安定化次亜臭素酸組成物の詳細な調製方法は以下の通りである。
【0053】
反応容器内の酸素濃度が1%に維持されるように、窒素ガスの流量をマスフローコントローラでコントロールしながら連続注入で封入した2Lの4つ口フラスコに1436gの水、361gの水酸化ナトリウムを加え混合し、次いで300gのスルファミン酸を加え混合した後、反応液の温度が0〜15℃になるように冷却を維持しながら、473gの液体臭素を加え、さらに48%水酸化カリウム溶液230gを加え、組成物全体の量に対する重量比でスルファミン酸10.7%、臭素16.9%、臭素の当量に対するスルファミン酸の当量比が1.04である、目的の安定化次亜臭素酸組成物を得た。生じた溶液のpHは、ガラス電極法にて測定したところ、14であった。生じた溶液の臭素含有率は、臭素をヨウ化カリウムによりヨウ素に転換後、チオ硫酸ナトリウムを用いて酸化還元滴定する方法により測定したところ16.9%であり、理論含有率(16.9%)の100.0%であった。また、臭素反応の際の反応容器内の酸素濃度は、株式会社ジコー製の「酸素モニタJKO−02 LJDII」を用いて測定した。なお、臭素酸濃度は5mg/kg未満であった。
【0054】
なお、pHの測定は、以下の条件で行った。
電極タイプ:ガラス電極式
pH測定計:東亜ディーケーケー社製、IOL−30型
電極の校正:関東化学社製中性リン酸塩pH(6.86)標準液(第2種)、同社製ホウ酸塩pH(9.18)標準液(第2種)の2点校正で行った
測定温度:25℃
測定値:測定液に電極を浸漬し、安定後の値を測定値とし、3回測定の平均値
【0055】
参考例1、実施例2〜6、比較例1〜3>
上記安定化次亜臭素酸組成物の調製例に従い、表1に示す量で、水、液体臭素、スルファミン酸、アルカリを含む製剤を調製し、それぞれ製剤の凍結点、pHを測定した。凍結点は、それぞれの製剤を所定温度で24時間保管し、測定した。
【0056】
各製剤の溶質濃度から「理論凝固点降下度(a)」を、溶質濃度(mol/kg)×1.86で計算した。また、上記の通り測定した凍結点を「凍結点の実測値(b)」とした。(a)+(b)を「凍結点低下効果」と規定し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
◎:凍結点低下効果(a)+(b)が、−1℃未満
〇:凍結点低下効果(a)+(b)が、0℃未満−1℃以上
×:凍結点低下効果(a)+(b)が、0℃以上
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示す通り、「溶質の増加=水分濃度の低下」に伴い、凍結点(b)は低下し、「凍結点低下効果」も低下したが、水分濃度が約60質量%を下回ると、今度は「溶質の増加=水分濃度の低下」に伴い、「凍結点低下効果」は逆に増加に転じた。そして、水分濃度が54質量%を下回ると凍結点は0℃以上となり、寒冷地での使用に支障をきたすことがわかった。
【0059】
このように実施例では、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含み、理論凍結温度よりも低い凍結点を有し、安定な水処理剤組成物が得られた。