(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、粘着剤付き偏光板の一形態を示す断面図である。粘着剤付き偏光板1は、偏光板10の第一主面上に前面側粘着シート20を備える。前面側粘着シート20は、画像表示装置の形成において、偏光板の視認側に前面透明部材を貼り合わせるための粘着シートである。前面側粘着シート20は、偏光板10の偏光子11に接して配置された第一粘着剤層21と、第一粘着剤層21上に設けられた第二粘着剤層22とを有する積層構成であり、第一粘着剤層21が偏光板10の偏光子11に接して配置されている。
【0021】
図2は、視認側表面に前面透明部材を備える画像表示装置の一形態を表す模式的断面図である。画像表示装置100では、透明板71上に印刷部76が設けられた前面透明部材70と画像表示セル60との間に偏光板10が配置されている。偏光板10と画像表示セル60とは、セル側粘着シート30を介して貼り合わせられており、偏光板10と前面透明部材70とは、前面側粘着シート20を介して貼り合わせられている。
【0022】
[片保護偏光板]
偏光板10としては、偏光子11の片面のみに透明保護フィルム15が貼り合わせられたものが用いられる(以下、偏光子の片面のみに透明保護フィルムが設けられた偏光板10を「片保護偏光板」と記載する場合がある)。画像表示セルの視認側に配置される偏光板として片保護偏光板を用いることにより、画像表示装置を薄型化できる。
【0023】
<偏光子>
偏光子11は、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系フィルムである。偏光子に適用されるポリビニルアルコール系フィルムの材料としては、ポリビニルアルコールまたはその誘導体が用いられる。ポリビニルアルコールの誘導体としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール等が挙げられる他、エチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸そのアルキルエステル、アクリルアミド等で変性したものが挙げられる。ポリビニルアルコールは、重合度が1000〜10000程度、ケン化度が80〜100モル%程度のものが一般に用いられる。
【0024】
ポリビニルアルコール系フィルムに、ヨウ素染色および延伸処理を施すことにより偏光子が得られる。偏光子の厚みは、1〜50μm程度が好ましい。偏光子として、厚みが10μm以下の薄型の偏光子を用いることもできる。薄型の偏光子としては、例えば、特開昭51−069644号公報、特開2000−338329号公報、WO2010/100917号、特許第4691205号明細書、特許第4751481号明細書等に記載されている偏光子を挙げることができる。このような薄型偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂層と延伸用樹脂基材とを積層体の状態で延伸する工程と、ヨウ素染色する工程とを含む製法により得られる。
【0025】
<透明保護フィルム>
偏光子11の一方の面(第一主面)には、偏光子11を保護するための透明保護フィルム15が設けられる。透明保護フィルム15は、視野角拡大等を目的とする光学補償フィルムや、偏光子11とともに円偏光板を構成するための1/4波長板等の機能を有していてもよい。
【0026】
透明保護フィルム15を構成する材料としては、例えば、透明性、機械強度、および熱安定性に優れる樹脂材料が挙げられる。このような樹脂材料の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。透明保護フィルム15の厚みは、特に限定されないが、強度や取扱性等の作業性、薄膜性等の点からは、5〜100μm程度が好ましい。偏光子11と透明保護フィルム15とは、適宜の接着剤層(不図示)を介して貼り合せられていることが好ましい。
【0027】
[前面側粘着シート]
本発明の粘着剤付き偏光板は、片保護偏光板10の透明保護フィルム15が設けられていない側の面に、前面側粘着シート20を備える。前面側粘着シート20は、片保護偏光板10の視認側への前面透明部材70の貼り合わせに用いられる。前面側粘着シート20は、少なくとも2層の粘着剤層を備える積層粘着シートである。第一粘着剤層21は偏光子11に接して設けられており、第一粘着剤層21上に第二粘着剤層22が設けられている。前面側粘着シート20が第一粘着剤層21と第二粘着剤層22の2層からなる場合、粘着剤付き偏光板1は、片保護偏光板10上に、第一粘着剤層21および第二粘着剤層22をこの順に備える。
【0028】
前面側粘着シート20は、透湿度が150g/m
2・24h以下であることが好ましい。偏光子11に接して低透湿度の前面側粘着シート20を設けることにより、外部から偏光子11への水分の移行を低減して、高湿度環境下での偏光子の劣化を抑制できる。前面側粘着シート20は、80℃における貯蔵弾性率G’
80が1×10
5Pa以下であることが好ましい。偏光板10と前面透明部材70との貼り合わせに、高温での貯蔵弾性率が小さい前面側粘着シート20を用いることにより、段差吸収性を持たせ、前面透明部材70が印刷段差を有する場合でも、印刷段差付近での気泡混入や、応力歪による表示ムラの発生を抑制できる。薄型化の観点から、前面側粘着シート20の厚みは250μm以下が好ましい。
【0029】
<第一粘着剤層>
偏光子11に接して配置される第一粘着剤層21は、透湿度が150g/m
2・24h以下であることが好ましい。偏光子11に接して低透湿度の粘着剤層を設けることにより、画像表示装置が高湿環度境に晒された場合でも偏光子11の劣化を抑制できる。第一粘着剤層21の透湿度は、120g/m
2・24h以下がより好ましく、100g/m
2・24h以下がさらに好ましく、60g/m
2・24h以下が特に好ましく、40g/m
2・24h以下が最も好ましい。透湿度は、JIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準じて測定される値であり、40℃、92%の相対湿度で、面積1m
2の試料を24時間で透過する水蒸気の重量である。
【0030】
片保護偏光板10の透明保護フィルム15付設面に画像表示セル60が貼り合わせられ、片保護偏光板10の偏光子11に前面側粘着シート20を介して前面透明部材70が貼り合わせられた画像表示装置100では、透明保護フィルム15付設面(第一主面)および前面側粘着シート20付設面(第二主面)から、偏光子11に水分が移行する可能性がある。片保護偏光板では、一般に、透明保護フィルムが設けられていない第二主面側からの偏光子への水分の移行量が大きくなる傾向がある。
【0031】
第二主面側からの偏光子11への水分の移行は、前面側粘着シート20の付設面(主面)からの移行および前面側粘着シート20の側面からの水分の移行が考えられる。視認側表面に前面透明板やタッチパネル等の前面透明部材が設けられた画像表示装置では、前面透明部材70が画像表示装置の主面からの水分の侵入を抑制する作用を有する。そのため、第二主面の前面側粘着シート付設面からの水分の移行はある程度抑制可能である。一方、偏光板10と前面透明部材70との間に設けられる層間充填剤としての前面側粘着シート20は、厚みを大きくして段差吸収性を持たせているため、前面側粘着シート20の側面を介した偏光子11への水分の移行量が大きくなる場合がある。
【0032】
片保護偏光板上に従来の層間充填用粘着シートを配置した場合、粘着シートの側面から偏光子に移行した水分の影響により、偏光子の端面近傍に退色が生じやすい。これに対して、偏光子11に接して低透湿の第一粘着剤層21を設けることにより、前面側粘着シート20の側面を介した偏光子11への水分の移行量を低減し、水分による偏光子の劣化を抑制できる。第二粘着剤層22の透湿度が大きい場合は、第二粘着剤層22の側面から水分が侵入する場合があるが、第二粘着剤層22に侵入した水分は、低透湿の第一粘着剤層21によりブロックされるため、偏光子11への移行が抑制される。そのため、第一粘着剤層21が低湿度であれば、前面側粘着シート20の厚みが大きい場合でも、偏光子11への水分の移行を低減し、偏光子の劣化を抑制できる。
【0033】
薄型化の観点から、第一粘着剤層21の厚みd
1は50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、35μm以下がさらに好ましい。薄型化の観点からは第一粘着剤層の厚みはできる限り小さいことが好ましい。一方、透湿度と厚みは反比例の関係にあり、同一の材料からなるシート状物では、厚みの減少に伴って透湿度が大きくなる傾向がある。透湿度を上記範囲とするために、第一粘着剤層21の厚みは5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。
【0034】
第一粘着剤層21の25℃における貯蔵弾性率G’
25は、1×10
4Pa〜1×10
8Paが好ましく、5×10
4Pa〜1×10
7Paがより好ましく、1×10
5Pa〜5×10
6Paがさらに好ましい。第一粘着剤層21の80℃における貯蔵弾性率G’
80は、5×10
3Pa〜5×10
7Paが好ましく、1×10
4Pa〜5×10
6Paがより好ましく、3×10
4Pa〜1×10
6Paがさらに好ましい。
【0035】
(第一粘着剤層の組成)
第一粘着剤層21を構成する粘着剤は、上記の透湿度を満たすものであればその組成は特に限定されず、アクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系等のポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。前面側粘着シートは、画像表示装置の前面に配置されるため、第一粘着剤層21および第二粘着剤層22は、光学的透明性に優れるものが好ましい。具体的には、第一粘着剤層21および第二粘着剤層22は、それぞれ、ヘイズが1.0%以下であり、全光線透過率が90%以上であることが好ましい。
【0036】
小さな厚みでも低透湿度を実現可能であることから、第一粘着剤層21は、ゴム系ポリマーを主成分として含有するゴム系粘着剤層であることが好ましい。ここで、「主成分」とは、第一粘着剤層において(または、第一粘着剤層を形成するための粘着剤組成物の全固形分を基準として)、ゴム系ポリマーが40重量%以上含まれることをいう。
【0037】
ゴム系ポリマーは、室温付近の温度域においてゴム弾性を示すポリマーである。ゴム系ポリマーとしては、天然ゴム、合成ゴム、および熱可塑性エラストマーからなる群から選択される1種以上を用いることが好ましい。
【0038】
合成ゴムとしては、ポリイソブチレン(PIB)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、イソブチレン−イソプレンゴム(IIR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブタジエン−イソプレン−スチレンランダム共重合体、イソプレン−スチレンランダム共重合体、二元系エチレン−プロピレンゴム(EPR)、三元系エチレン−プロピレンゴム(EPT)、アクリルゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。これらの中でも、透明性、耐光性の観点から、ポリイソブチレン(PIB)およびブチルゴム(IIR)が好ましく、ポリイソブチレン(PIB)が特に好ましい。
【0039】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS;SISの水添物)、スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体(SEP;スチレン−イソプレンブロック共重合体の水添物)、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)等のスチレン系ブロックコポリマーからなるスチレン系熱可塑性エラストマー;ポリウレタン系熱可塑性エラストマー;ポリエステル系熱可塑性エラストマー;ポリプロピレンとEPT(三元系エチレン−プロピレンゴム)とのポリマーブレンド等のブレンド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらの中でも、透明性および耐光性の観点から、スチレン系熱可塑性エラストマーが好ましく、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)が特に好ましい。
【0040】
<第二粘着剤層>
偏光子11から離れて配置される第二粘着剤層22は、前面側粘着シート20に段差吸収性を付与する作用を有する。段差吸収性を持たせるために、第二粘着剤層22は、80℃における貯蔵弾性率G’
80が1.5×10
5Pa以下であることが好ましく、1×10
5Pa以下であることがより好ましく、7×10
4Pa以下であることがさらに好ましい。第二粘着剤層22の高温における貯蔵弾性率が低い場合、真空加熱やオートクレーブによる加熱貼り合わせの際の流動性が高く、粘着剤が段差付近に入り込みやすいため、段差付近での気泡の混入を抑制できる。
【0041】
貼り合わせ時の加熱状態において、偏光板の端面からの粘着剤のはみ出しを抑制するために、第二粘着剤層22のG’
80は、1×10
3Pa以上が好ましく、3××10
3Pa以上がより好ましい。
【0042】
第二粘着剤層22の25℃における貯蔵弾性率G’
25は、1×10
4Pa〜1×10
7Paが好ましく、4×10
4Pa〜6×10
6Paがより好ましく、6×10
4Pa〜1×10
6Paがさらに好ましい。常温における貯蔵弾性率が1×10
4Pa以上であれば、粘着剤付き偏光板を所定サイズにカットする際のカット刃等への粘着剤の付着や、端面からの粘着剤のはみ出しを低減できる。常温における貯蔵弾性率が1×10
7Pa以下であれば、粘着剤付き偏光板を所定サイズにカットする際の切断面における粘着剤の割れや欠け等を防止できる。また、第二粘着剤層22のG’
25が上記範囲であれば、加工性やハンドリング性等に必要な凝集力を保持できるとともに、貼り合わせの際の初期粘着性を確保できる。
【0043】
第二粘着剤層22は、80℃における貯蔵弾性率G’
80と25℃における貯蔵弾性率G’
25との比G’
25/G’
80が3.5以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、7以上であることがさらに好ましい。貯蔵弾性率の温度依存性が大きく、G’
25/G’
80の値が大きい場合、常温では流動性が小さく、カット時のカット刃等への粘着剤の移着や端面からの粘着剤のはみ出しを抑制できるとともに、加熱時には流動性が高く印刷段差付近にも粘着剤が入り込みやすいため、印刷段差付近への気泡の混入や画像表示装置の表示ムラを抑制できる。第二粘着剤層22のG’
25/G’
80の上限は特に制限されないが、常温での貼り合わせ時の粘着性や加熱時の流動性等を勘案すると、100以下が好ましく、50以下がより好ましい。
【0044】
貯蔵弾性率G’は、JIS K7244−1「プラスチック−動的機械特性の試験方法」に記載の方法に準拠して、周波数1Hzの条件で、−50〜150℃の範囲で昇温速度5℃/分で測定した際の、所定温度における値を読み取ることにより求められる。
【0045】
粘着剤層を構成する粘着剤が光硬化型または熱硬化型であり、偏光板10と前面透明部材70との貼り合せ後に硬化が行われる場合は、硬化前(貼り合わせ時)の粘着剤の貯蔵弾性率(G’
25、G’
80、およびG’
25/G’
80)が上記範囲であればよい。粘着シートのカットおよび前面透明部材との貼り合わせは硬化前に実施されるため、硬化前の第二粘着剤層22の貯蔵弾性率を調整することにより、上記の目的を達成できる。
【0046】
段差吸収性を持たせるために、第二粘着剤層22の厚みd
2は、50μm以上が好ましく、60μm以上がより好ましく、70μm以上がさらに好ましい。第二粘着剤層22の厚みを大きくすることにより、段差吸収性が高められ、印刷段差付近への気泡の混入や画像表示装置の表示ムラを抑制できる。第二粘着剤層22の厚みd
2の上限は特に限定されないが、薄型化の観点、および端面からの粘着剤のはみ出し防止等の観点から、250μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、180μm以下がさらに好ましい。
【0047】
(第二粘着剤層の組成)
第二粘着剤層22を構成する粘着剤は、上記の特性を満たすものであればその組成は特に限定されず、アクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系等のポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。前述のように、第二粘着剤層は、光学的透明性に優れるものが好ましい。
【0048】
段差吸収性を付与可能な粘弾特性と高透明性とを両立可能であることから、第二粘着剤層22は、アクリル系ポリマーを主成分として含有するアクリル系粘着剤層であることが好ましい。ここで、「主成分」とは、第二粘着剤層において(または、第二粘着剤層を形成するための粘着剤組成物の全固形分を基準として)、アクリル系ポリマーが40重量%以上含まれることをいう。
【0049】
アクリル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのモノマー単位を主骨格とするものが好適に用いられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0050】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜20である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好適に用いられる。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量に対して40重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましく、60重量%以上がさらに好ましい。アクリル系ポリマーは、複数の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体であってもよい。構成モノマー単位の並びはランダムであっても、ブロックであってもよい。
【0051】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アルキル基が分枝を有していてもよい。分枝を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることにより、粘着剤に柔軟性が付与されやすく、上記の貯蔵弾性率を有するアクリル系粘着剤層を容易に形成できる。分枝アルキル(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸イソテトラデシル、(メタ)アクリル酸イソオクタデシル等が好適に用いられる。
【0052】
アクリル系ポリマーは、共重合成分として、架橋可能な官能基を有するアクリル系モノマー単位を含有することが好ましい。架橋可能な官能基を有する場合、アクリル系ポリマーの熱架橋や光硬化等により、アクリル系粘着剤に高い凝集力を持たせることができる。架橋可能な官能基を有するアクリル系モノマーとしてはヒドロキシ基含有モノマーや、カルボキシ基含有モノマーが挙げられる。中でも、アクリル系ポリマーの共重合成分として、ヒドロキシ基含有モノマーを含有することが好ましい。アクリル系ポリマーが、モノマーユニットとしてヒドロキシ基含有モノマーを有する場合、アクリル系ポリマーの架橋性が高められるとともに、高温高湿環境下での粘着剤の白濁が抑制される傾向があり、透明性の高い粘着剤が得られる。
【0053】
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリルや(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等が挙げられる。
【0054】
ヒドロキシ基含有モノマーユニットの含有量は、アクリル系ポリマーの構成モノマーユニット全量に対して、0.01重量%〜20重量%が好ましく、0.1重量%〜15重量%がより好ましく、0.5重量%〜10重量%がさらに好ましい。ヒドロキシ基含有モノマーユニットの含有量が上記範囲を超えると、第二粘着剤層の凝集力が過度に上昇し、段差吸収性が低下する場合がある。
【0055】
アクリル系ポリマーは、ヒドロキシ基含有モノマーユニット以外に、窒素含有モノマー等の極性の高いモノマーユニットを含有することが好ましい。ヒドロキシ基含有モノマーユニットに加えて、窒素含有モノマーユニット等の高極性モノマーユニットを含有することにより、高接着力と、高温高湿環境下での白濁の抑制とを両立できる。
【0056】
窒素含有モノマーとしては、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、N−ビニルカプロラクタム等のビニル系モノマーや、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレート系モノマー等が挙げられる。中でも、N−ビニルピロリドンおよび(メタ)アクリロイルモルホリンが好ましく用いられる。窒素含有モノマーユニットの含有量は、アクリル系ポリマーの構成モノマーユニット全量に対して、3〜45重量%が好ましく、5〜40重量%がより好ましく、7〜30重量%がさらに好ましい。
【0057】
第二粘着剤層のアクリル系ポリマーは、構成モノマーユニット全量に対するヒドロキシ基含有モノマーユニットの含有量と窒素含有モノマーユニットの含有量の合計が、3〜50重量%であることが好ましく、5〜40重量%であることがより好ましく、7〜30重量であることがさらに好ましい。ヒドロキシ基含有モノマーユニットの含有量と窒素含有モノマーユニットの含有量の合計が上記範囲であれば、適度の凝集性と加熱時の柔軟性を有するアクリル系粘着剤層が形成されやすい。
【0058】
アクリル系ポリマーを形成するためのモノマー成分には、多官能モノマー成分が含まれていてもよい。共重合モノマー成分として多官能モノマーを有することにより、常温での貯蔵弾性率が高められる傾向がある。多官能モノマーは、重合性の官能基(例えばビニル基)を少なくとも2つ有するモノマーである。多官能性モノマーの使用量は、その分子量や官能基数等により異なるが、(メタ)アクリル系ポリマーを形成する全モノマー成分に対して、5重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましく、1重量%以下がさらに好ましい。多官能性モノマーの使用量が5重量%を超えると、粘着剤の柔軟性が低下し、段差付近での気泡や表示ムラが発生する場合がある。
【0059】
アクリル系ポリマーは、溶液重合、UV重合、塊状重合、乳化重合等の公知の重合方法により調製できる。粘着剤の透明性、耐水性、コスト等の点で、溶液重合法、または活性エネルギー線重合法(例えばUV重合)が好ましい。溶液重合の溶媒としては一般に酢酸エチル、トルエン等が用いられる。
【0060】
アクリル系ポリマーの調製に際しては、重合反応の種類に応じて、光重合開始剤や熱重合開始剤等の重合開始剤を用いてもよい。光重合開始剤としては、光重合を開始するものであれば特に制限されず、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤等を用いることができる。熱重合開始剤としては、例えば、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤(例えば、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムの組み合わせ等)を用いることができる。
【0061】
アクリル系ポリマーの分子量を調整するために、連鎖移動剤が用いられていてもよい。連鎖移動剤は、成長ポリマー鎖からラジカルを受け取ってポリマーの伸長を停止させるとともに、ラジカルを受け取った連鎖移動剤がモノマーを攻撃して再び重合を開始させることができる。そのため、連鎖移動剤が用いられることにより、反応系中のラジカル濃度を低下させることなく、アクリル系ポリマーの分子量の増大を抑制し、適度の柔軟性を有する粘着剤が得られる。連鎖移動剤としては、例えば、α−チオグリセロール、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール等のチオール類が好適に用いられる。
【0062】
アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分として、単官能モノマーに加えて多官能モノマーを用いる場合、先に単官能モノマーを重合して、低重合度のプレポリマー組成物を形成し(予備重合)、プレポリマー組成物(予備重合シロップ)中に多官能モノマーを添加して、プレポリマーと多官能モノマーとを重合(後重合)してもよい。このように、プレポリマーの予備重合を行うことによって、多官能モノマー成分に起因する分枝点を、アクリル系ポリマー中に均一に導入できる。また、プレポリマー組成物と未重合のモノマー成分との混合物(粘着剤組成物)を基材上に塗布した後、基材上で後重合を行って、粘着シートを形成してもよい。プレポリマー組成物は低粘度で塗布性に優れるため、プレポリマー組成物と未重合モノマーとの混合物である粘着剤組成物を塗布後に基材上で後重合を行う方法によれば、粘着シートの生産性が高められると共に、粘着シートの厚みを均一とすることができる。
【0063】
プレポリマー組成物は、例えば、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分(「モノマー成分A」と称する)と重合開始剤とを混合した組成物(「プレポリマー形成用組成物」と称する)を、部分重合(予備重合)させることにより調製できる。なお、プレポリマー形成用組成物中の上記モノマー成分Aは、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分のうち、(メタ)アクリル酸アルキルエステルや極性基含有モノマー等の単官能モノマー成分であることが好ましい。モノマー成分Aは、単官能モノマーのみならず、多官能モノマーを含有していてもよい。例えば、アクリル系ポリマーの原料となる多官能モノマー成分の一部をプレポリマー形成用組成物に含有させ、プレポリマーを重合後に多官能モノマー成分の残部を添加して後重合に供してもよい。
【0064】
プレポリマー形成用組成物は、モノマー成分Aおよび重合開始剤以外に、必要に応じて連鎖移動剤等が含まれていてもよい。プレポリマー形成用組成物の重合方法は特に限定されないが、反応時間を調整して、プレポリマーの分子量(重合率)を所望の範囲とする観点から、UV光等の活性光線照射による重合が好ましい。予備重合に用いられる重合開始剤や連鎖移動剤は特に限定されず、例えば、上述の光重合開始剤や連鎖移動剤を用いることができる。
【0065】
プレポリマーの重合率は特に限定されないが、基材上への塗布に適した粘度とする観点から、3〜50重量%が好ましく、より好ましくは5〜40重量%である。プレポリマーの重合率は、光重合開始剤の種類や使用量、UV光等の活性光線の照射強度・照射時間等を調整することによって、所望の範囲に調整できる。なお、プレポリマーの重合率は、プレポリマー組成物を130℃で3時間加熱した際の加熱(乾燥)前後の重量から、下記式により算出される。予備重合が溶液重合により行われる場合、プレポリマー組成物の全重量から溶媒の量を差し引いたものを、下記式における乾燥前重量として、重合率が算出される。
プレポリマー組成物の重合率(%)=乾燥後の重量/乾燥前の重量×100
【0066】
上記プレポリマー組成物に、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分(「モノマー成分B」と称する)、および必要に応じて、重合開始剤、連鎖移動剤、シランカップリング剤、架橋剤等を混合して、粘着剤組成物を形成する。モノマー成分Bは、多官能モノマーを含有することが好ましい。モノマー成分Bは、多官能モノマーに加えて、単官能モノマーを含有していてもよい。
【0067】
後重合に用いられる光重合開始剤や連鎖移動剤は特に限定されず、例えば、上述の光重合開始剤や連鎖移動剤を用いることができる。予備重合の際の重合開始剤がプレポリマー組成物中で失活せずに残存している場合は、後重合のための重合開始剤の添加を省略できる。
【0068】
アクリル系ポリマーは、必要に応じて架橋構造を有していてもよい。架橋構造の形成は、例えば、予備重合後や、ベースポリマーの重合後に、架橋剤を添加することにより行われる。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、金属キレート系架橋剤等の一般に用いられているものを使用できる。
【0069】
架橋剤の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、通常、0〜5重量部の範囲であり、好ましくは0〜3重量部である。架橋剤の含有量が多すぎると、粘着剤の柔軟性が低下し、段差付近での気泡や表示ムラが発生しやすくなる。
【0070】
粘着剤組成物中に架橋剤を含有する場合、被着体との貼り合わせ前に、加熱による架橋処理が行われ、架橋構造が形成されることが好ましい。架橋処理における加熱温度や加熱時間は、使用する架橋剤の種類に応じて適宜設定されるが、通常、20℃〜160℃の範囲で、1分から7日程度の加熱により架橋が行われる。
【0071】
第二粘着剤層22は、光硬化型または熱硬化型の粘着剤でもよい。第二粘着剤層22として、光硬化型または熱硬化型の粘着剤が用いられることにより、偏光板10と前面透明部材70とを前面側粘着シート20を介して貼り合せた後に、第二粘着剤層22を硬化させて、粘着剤層の貯蔵弾性率を大きくすることができる。そのため、画像表示装置が高温環境に晒された場合も、粘着剤の流動が抑制され、気泡の発生や剥離が生じ難い長期信頼性のある接着性を実現できる。特に、前面透明部材との貼り合わせ後の硬化が容易であることから、光硬化型の粘着剤が好ましい。
【0072】
光硬化型の粘着剤は、ベースポリマーに加えて、光硬化性成分を含有する。光硬化性成分としては、炭素−炭素二重結合(C=C結合)を有するラジカル重合性化合物(エチレン性不飽和化合物)が好ましく用いられる。ラジカル重合性化合物は、モノマーまたはオリゴマーとして粘着剤組成物中に存在してもよく、ベースポリマーのヒドロキシ基等の官能基と結合していてもよい。硬化型粘着剤は、重合開始剤(光重合開始剤や熱重合開始剤)を含むものが好ましい。
【0073】
粘着剤組成物中にラジカル重合性化合物がモノマーまたはオリゴマーとして存在する場合、1分子中に2以上の重合性官能基を有する多官能重合性化合物が好ましく用いられる。多官能重合性化合物としては、1分子中に2個以上のC=C結合を有する化合物や、1個のC=C結合と、エポキシ、アジリジン、オキサゾリン、ヒドラジン、メチロール等の重合性官能基とを有する化合物等が挙げられる。中でも、多官能アクリレートのように、1分子中に2個以上のC=C結合を有する多官能重合性化合物が好ましい。
【0074】
ベースポリマーの官能基と結合可能な官能基とラジカル重合性官能基とを有するラジカル重合性化合物を、ベースポリマーと混合することにより、ベースポリマーにラジカル重合性官能基を導入し、粘着剤組成物を硬化型粘着剤とすることができる。ベースポリマーの官能基と結合可能な官能基としては、イソシアネート基が好ましい。イソシアネート基は、ベースポリマーのヒドロキシ基とウレタン結合を形成するため、ベースポリマーへのラジカル重合性官能基の導入を容易に行い得る。
【0075】
光硬化の方法としては、光硬化性化合物と光重合開始剤を含有する系に紫外線等の活性光線を照射する方法が好ましい。特に、光感度の高さや、選択できる材料が豊富であることから、エチレン性不飽和化合物と光ラジカル発生剤を用いたシステムが好ましい。第二粘着剤層22が光硬化型粘着剤である場合、光硬化性化合物の含有量は、粘着剤組成物全体100重量部に対して、2〜50重量部が好ましく、5〜30重量部がより好ましい。
【0076】
<粘着剤組成物中の添加剤>
第一粘着剤層21を形成するための粘着剤組成物および第二粘着剤層22を形成するための粘着剤組成物は、ベースポリマーの他に各種の添加剤を含んでいてもよい。例えば、接着力の調整を目的として、粘着剤組成物中に、シランカップリング剤を添加してもよい。シランカップリング剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を併用して用いることができる。特に、第二粘着剤層がアクリル系ポリマーを主成分とする場合、第二粘着剤層を形成するための粘着剤組成物はシランカップリング剤を含んでいることが好ましい。シランカップリング剤の添加量は、アクリル系ポリマー100重量部に対し通常0.01〜5重量部程度であり、0.03〜2重量部程度が好ましい。
【0077】
粘着剤組成物には、必要に応じて粘着付与剤を添加してもよい。特に第一粘着剤層21がゴム系ポリマーを主成分として含有する粘着剤層である場合、偏光子11との接着性を高める観点から、粘着剤組成物中に粘着付与剤を含有することが好ましい。粘着付与剤としては、例えば、テルペン系粘着付与剤、スチレン系粘着付与剤、フェノール系粘着付与剤、ロジン系粘着付与剤、エポキシ系粘着付与剤、ジシクロペンタジエン系粘着付与剤、ポリアミド系粘着付与剤、ケトン系粘着付与剤、エラストマー系粘着付与剤等を用いることができる。特に、第一粘着剤層に用いられる粘着付与剤としては、ゴム系材料との相溶性および透明性に優れることから、テルペン系粘着付与剤が好ましい。
【0078】
テルペン系粘着付与剤としては、例えば、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体等のテルペン重合体や、テルペンフェノール樹脂、スチレン変性テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂(水素化テルペン樹脂)等の変性テルペン樹脂が挙げられる。
【0079】
第一粘着剤層21に含まれる粘着付与剤は、軟化点が70〜200℃程度であることが好ましく、100〜180℃程度であることがより好ましい。軟化点は、JIS K2207「環球式軟化点試験方法」による測定値である。
【0080】
第一粘着剤層21における粘着付与剤の含有量は、ゴム系ベースポリマー100重量部に対して、100重量部以下が好ましく、80重量部以下がより好ましく、50重量部以下がさらに好ましい。粘着付与剤の含有量の下限値は特に限定されないが、偏光子との接着性向上効果を得るためには、1重量部以上が好ましく、5重量部以上がより好ましい。
【0081】
第二粘着剤層も粘着付与剤を含んでいてもよい。第二粘着剤層への粘着付与剤の使用は、貯蔵弾性率の温度依存性の調整に寄与し得る。第二粘着剤層22の貯蔵弾性率に所期の温度依存性を付与する観点から、第二粘着剤層に含まれる粘着付与剤は、軟化点が50℃〜150℃程度であることが好ましく、70℃〜140℃程度であることがより好ましい。
【0082】
第一粘着剤層21および第二粘着剤層22は、少なくともいずれか一方に紫外線吸収剤を含有することが好ましい。一般に、偏光子の表面に設けられる透明保護フィルムは、紫外線による偏光子の劣化を防止する目的で紫外線吸収剤を含んでいる。一方、片保護偏光板10は、前面側粘着シート20の付設面に透明保護フィルムが設けられていないため、第一粘着剤層21および/または第二粘着剤層22に紫外線吸収性を持たせて、紫外線に起因する偏光子11の劣化を防止することが好ましい。
【0083】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。紫外線吸収剤の含有量は、粘着剤のベースポリマー100重量部に対して、0.01〜15重量部が好ましく、0.1〜10重量部がより好ましい。前面側粘着シート20は、波長380nmの光透過率が15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0084】
上記例示の各成分の他、可塑剤、軟化剤、劣化防止剤、充填剤、着色剤、酸化防止剤、界面活性剤、帯電防止剤等の添加剤を、粘着剤の特性を損なわない範囲で、粘着剤組成物に添加してもよい。
【0085】
第一粘着剤層21を形成するための粘着剤組成物は、ゴム系ポリマーの含有量が40重量%以上であることが好ましく、50重量%であることがより好ましく、60重量%以上であることがさらに好ましい。第二粘着剤層22を形成するための粘着剤組成物は、アクリル系ポリマーの含有量が40重量%以上であることが好ましく、50重量%であることがより好ましく、60重量%以上であることがさらに好ましい。
【0086】
<粘着剤層の形成>
粘着剤層の形成方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーター等による押出しコート法等の方法が挙げられる。これらの中でも、ダイコーターを使用することが好ましく、特にファウンテンダイ、スロットダイを用いるダイコーターを使用することがより好ましい。
【0087】
粘着剤組成物のベースポリマーが溶液重合ポリマーである場合、塗布後に溶剤の乾燥を行うことが好ましい。乾燥方法としては、目的に応じて、適宜、適切な方法が採用され得る。加熱乾燥温度は、好ましくは40℃〜200℃であり、さらに好ましくは、50℃〜180℃であり、特に好ましくは70℃〜170℃である。乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。乾燥時間は、好ましくは5秒〜20分、さらに好ましくは5秒〜15分、特に好ましくは10秒〜10分である。
【0088】
粘着剤組成物が架橋剤を含有する場合、基材上への塗布後に、加熱による架橋が行われてもよい。加熱温度や加熱時間は、使用する架橋剤の種類によって適宜設定されるが、通常、20℃〜160℃の範囲で、1分から7日程度の加熱により架橋が行われる。塗布後の粘着剤を乾燥させるための加熱が、架橋のための加熱を兼ねていてもよい。
【0089】
第一粘着剤層と第二粘着剤層の積層方法は特に限定されない。第一粘着剤層と第二粘着剤層のそれぞれを個別に粘着シートとして形成した後に、両者を重ねあわせてもよく、一方の粘着剤層を先に粘着シートとして形成した後に、その上に他方の粘着剤層をコートして積層粘着シートとすることもできる。また、第一粘着剤層形成用組成物と第二粘着剤層形成用組成物との共押出により、積層粘着シートを形成してもよい。
【0090】
前面側粘着シート20は、第一粘着剤層21および第二粘着剤層粘着22の2層からなる積層粘着シートでもよく第一粘着剤層と第二粘着剤層との間、および/または第二粘着剤層粘着22上に別の粘着剤層を有していてもよい。粘着シートの生産性および薄型化の観点から、前面側粘着シート20は、第一粘着剤層21と第二粘着剤層22の2層からなることが好ましい。
【0091】
<粘着シートの特性>
片保護偏光板10の偏光子11に接して配置される第一粘着剤層21は低透湿度の粘着剤で構成され、偏光子11から離れて配置される第二粘着剤層22は高温での貯蔵弾性率が小さく柔らかい粘着剤で構成されている。偏光子11に接して低透湿の第一粘着剤層21を設けることにより、第二粘着剤層22の透湿度が高い場合でも、第一粘着剤層21により偏光子11への水分の移行がブロックされるため、前面側粘着シート20の側面からの水分の移行に起因する偏光子の劣化を抑制できる。
【0092】
一方、ゴム系ポリマー等からなる低透湿の粘着剤は、一般にガラス転移温度が低いため、常温(25℃)と加熱時(80℃)の粘着剤の貯蔵弾性率の温度依存性が小さく、80℃における貯蔵弾性率G’
80と25℃における貯蔵弾性率G’
25の比G’
25/G’
80は一般に3以下である。ゴム系ポリマーを主成分とする第一粘着剤層21に粘着付与剤を用いても、G’
25/G’
80を大きくすることは困難である。第一粘着剤層に大量の粘着付与剤や可塑剤を含有させることによりG’
80を小さくして段差吸収性を持たせた場合、常温(25℃)での貯蔵弾性率G’
25も低下するため、端面からの粘着剤のはみ出しや、カット刃等への移着が生じやすくなる。
【0093】
低透湿の第一粘着剤層21上に、第二粘着剤層22として柔らかい粘着剤を積層することにより、前面透明部材の印刷段差付近に粘着剤が入り込むことができるため、段差付近への気泡の混入を抑制できる。さらには、前面側粘着シート20全体としての柔らかさが維持されるため、印刷段差に起因する画面の周縁部の表示ムラを抑制できる。
【0094】
前述のように、第二粘着剤層22は、80℃における貯蔵弾性率G’
80と25℃における貯蔵弾性率G’
25との比G’
25/G’
80が3.5以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、7以上であることがさらに好ましい。第二粘着剤層22のG’
25/G’
80は、第一粘着剤層21のG’
25/G’
80よりも大きいことが好ましい。第二粘着剤層22のG’
25/G’
80は、第一粘着剤層21のG’
25/G’
80の2倍以上が好ましく、3倍以上がより好ましく、4倍以上がさらに好ましい。第一粘着剤層と第二粘着剤層のG’
25/G’
80の比は、これらの粘着剤層の貯蔵弾性率の温度依存性の相違を表す指標で、その比率が大きいほど、粘弾性挙動の違いが大きいことを示している。
【0095】
第二粘着剤層22の厚みd
2は、第一粘着剤層21の厚みd
1よりも大きいことが好ましい。第一粘着剤層21の厚みd
1と第二粘着剤層22の厚みd
2の比d
2/d
1は、1.5〜15が好ましく、2〜10がより好ましく、2.5〜8がさらに好ましい。第一粘着剤層に比して第二粘着剤層の厚みを相対的に大きくすることにより、第一粘着剤層21と第二粘着剤層22とが積層された前面側粘着シート20全体としての粘弾性挙動は、第二粘着剤層の粘弾性が支配的になる。そのため、前面側粘着シート20の段差吸収性が高められ、印刷段差付近への気泡の混入や画像表示装置の表示ムラを抑制できる。
【0096】
加熱時の流動性が高く、かつ端面からの粘着剤のはみ出しを抑制する観点から、前面側粘着シート20の80℃における貯蔵弾性率G’
80は、1×10
3Pa〜1.5×10
5Paが好ましく、3×10
3Pa〜1×10
5Paがより好ましく、5×10
3Pa〜7×10
4Paがさらに好ましい。端面からの粘着剤のはみ出しや、粘着剤付き偏光板を所定サイズにカットする際のカット刃等への粘着剤の移着を防止し、かつ粘着剤の割れや欠けを抑制する観点から、前面側粘着シート20の25℃における貯蔵弾性率G’
25は、1×10
4Pa〜1×10
7Paが好ましく、4×10
4Pa〜6×10
6Paがより好ましく、6×10
4Pa〜1×10
6Paがさらに好ましい。
【0097】
前面側粘着シート20の80℃における貯蔵弾性率G’
80と25℃における貯蔵弾性率G’
25との比G’
25/G’
80は、2〜100が好ましく、5〜50がより好ましく、7〜30がさらに好ましい。前述のように、第一粘着剤層21に比して第二粘着剤層22の厚みを相対的に大きくすることにより、前面側粘着シート20全体としての粘弾性挙動は、第二粘着剤層の粘弾性が支配的になるため、前面側粘着シート20の貯蔵弾性率の温度依存性を大きくして、G’
25/G’
80の値を上記範囲内に調整できる。
【0098】
前面側粘着シート20を構成する第一粘着剤層および/または第二粘着剤層が光硬化型または熱硬化型の粘着剤からなる場合は、前述のように硬化前の粘着シートの貯蔵弾性率が上記範囲であることが好ましい。一方、前面側粘着シートの透湿度は、前面透明板と偏光子とを貼り合わせ後の画像表示装置の加湿耐久性に関連するため、硬化後(画像表示装置形成後)の値が、前述のように150g/m
2・24h以下であることが好ましい。
【0099】
[粘着剤付き偏光板の形成]
片保護偏光板10上に前面側粘着シート20を付設する方法は特に限定されない。第一粘着剤層21と第二粘着剤層とが積層された積層粘着シートを予め形成しておき、積層粘着シートの第一粘着剤層21を偏光子11上に貼り合わせてもよく、偏光子11上に、第一粘着剤層21および第二粘着剤層22を順次貼り合わせてもよい。偏光子11上に、第一粘着剤層形成用組成物を塗布して第一粘着剤層21を形成し、その上に塗布あるいは転写により第二粘着剤層22を形成してもよい。また、偏光子11上に、第一粘着剤層形成用組成物と第二粘着剤層形成用組成物との共押出により積層粘着シートを形成して、粘着剤付き偏光板を得ることもできる。
【0100】
図1に示すように、粘着剤付き偏光板1の前面側粘着シート20上には、保護シート41が剥離可能に貼着されることが好ましい。保護シートは、粘着剤が被着体との貼り合わせに用いられるまでの間、粘着剤の露出面を保護する目的で用いられる。粘着剤層の形成(塗布)時に用いられた基材を、そのまま前面側粘着シート上の保護シート41として用いてもよい。
【0101】
保護シート41の構成材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルム等のプラスチックフィルムが好ましく用いられる。保護シートの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは10〜150μm程度である。保護シートは、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型等の帯電防止処理もすることもできる。特に、保護シートの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の剥離処理を適宜おこなうことにより、粘着剤からの剥離性をより高めることができる。
【0102】
[両面粘着剤付き偏光板]
片保護偏光板10の偏光子11と接するように前面側粘着シート20を設け、透明保護フィルム15の付設面に他の粘着シート(セル側粘着シート)30を設けることにより、
図3に示すような両面粘着剤付き偏光板が得られる。
図3に示す形態では、両面粘着剤付き偏光板2の前面側粘着シート20上に保護シート41が剥離可能に貼着されており、セル側粘着シート30上に保護シート42が剥離可能に貼着されている。
【0103】
このように、偏光板10の両面に予め粘着剤層が付設された両面粘着剤付き偏光板を用いれば、画像表示セルの表面に偏光板を貼り合わせた後、偏光板上に別途の粘着シートを付設する工程を省略でき、画像表示装置の製造工程を簡略化できる。
【0104】
<セル側粘着シート>
セル側粘着シート30の厚みは、3μm〜30μmが好ましく、5μm〜27μmがより好ましく、10μm〜25μmがさらに好ましい。セル側粘着シートとしては、偏光板と画像表示セルとの貼り合わせに用いられる各種の粘着剤を用いることができる。セル側粘着シートを構成する粘着剤としては、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0105】
セル側粘着シート30は、20℃における貯蔵弾性率G’
25が、1×10
4Pa〜1×10
7Paであることが好ましく、5×10
4Pa〜5.0×10
6Paであることがより好ましく、1×10
5Pa〜1×10
6Paであることがさらに好ましい。セル側粘着シートのG’
25が上記範囲であれば、適度の接着性を示すとともに、カット時のカット刃等への粘着剤の移着や、粘着剤の割れ・欠け等を抑制できる。
【0106】
[画像表示装置]
図2は、画像表示装置の一形態を示す模式的断面図である。本発明の粘着剤付き偏光板は、片保護偏光板10の偏光子11側の主面(視認側)にタッチパネルや前面透明板等の前面透明部材70を備え、透明保護フィルム15側の主面に液晶セルや有機ELセル等の画像表示セル60を備える画像表示装置100の形成に好適に用いられる。この画像表示装置100において、前面側粘着シート20は、片保護偏光板10の偏光子11と前面透明部材70との貼り合わせに用いられる。
【0107】
前面透明部材70としては、前面透明板(ウインドウ層)やタッチパネル等が挙げられる。前面透明板としては、適宜の機械強度および厚みを有する透明板が用いられる。このような透明板としては、例えばアクリル系樹脂やポリカーボネート系樹脂のような透明樹脂板、あるいはガラス板等が用いられる。タッチパネルとしては、抵抗膜方式、静電容量方式、光学方式、超音波方式等、任意の方式のタッチパネルが用いられる。
【0108】
図3に示す両面粘着剤付き偏光板を用いる場合、画像表示セル60と粘着剤付き偏光板2との貼り合わせ方法、および前面透明部材70と粘着剤付き偏光板2との貼り合わせ方法は特に限定されず、前面側粘着シート20およびセル側粘着シート30のそれぞれの表面に貼着された保護シート41,42を剥離した後、各種公知の方法により貼り合わせることができる。
【0109】
貼り合わせの作業性や、偏光板の軸精度を高める観点からは、セル側粘着シート30の表面から保護シート42を剥離後、偏光板10と画像表示セル60とが粘着シート30を介して貼り合わせられるセル側貼合工程が行われ、その後に、前面側粘着シート20の表面から保護シート41を剥離し、偏光板10と前面透明部材70とが前面側粘着シート20を介して貼り合わせられる前面側貼合工程が行われることが好ましい。
【0110】
前面側粘着シート20に前面透明部材70を貼り合わせた後には、前面側粘着シート20と前面透明部材70との界面や、前面透明部材70の印刷部76等の非平坦部近辺の気泡を除去するための脱泡が行われることが好ましい。脱泡方法としては、加熱、加圧、減圧等の適宜の方法が採用され得る。例えば、減圧・加熱下で気泡の混入を抑制しながら貼り合わせが行われ、その後、ディレイバブルの抑制等を目的として、オートクレーブ処理等により、加熱と同時に加圧が行われることが好ましい。
【0111】
前面側粘着シート20が、光硬化型または熱硬化型の粘着剤を含む場合、偏光板10と前面透明部材70との貼り合せ後に、硬化が行われることが好ましい。粘着剤層を硬化することにより、偏光板10と前面透明部材70との接着の信頼性を高めることができる。粘着剤層の硬化方法は特に限定されない。光硬化が行われる場合は、前面透明部材70を通して紫外線等の活性光線を照射する方法が好ましい。
【実施例】
【0112】
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0113】
[粘着剤および粘着シートの物性の評価方法]
<貯蔵弾性率>
複数の粘着シートを積層して厚さ約1.5mmとしたものを測定用試料とした。なお、積層粘着シートの貯蔵弾性率の測定には、第一粘着剤層と第二粘着剤層とを交互に積層して厚さ約1.5mmとしたものを測定用試料として用いた。光硬化型の粘着シートM1については、硬化前後のそれぞれの粘着シートを測定用試料とした。Rheometric Scientific製「Advanced Rheometric Expansion System(ARES)」を用いて、以下の条件により、動的粘弾性測定を行い、測定結果から、25℃および80℃における貯蔵弾性率(G’
25,G’
80)を読み取った。
(測定条件)
変形モード:ねじり
測定周波数:1Hz
昇温速度:5℃/分
測定温度:−50〜150℃の範囲
形状:パラレルプレート 8.0mmφ
【0114】
<透湿度>
粘着シートの一方の面のセパレータを剥離して、露出面に厚み25μmのトリアセチルセルロースフィルム(透湿度:1070g/m
2・24h)に貼り合せた後、他方の面のセパレータを剥離し、JIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準拠して、温度40℃、相対湿度92%の恒温恒湿槽中で24時間の透湿試験を行い、透湿度を算出した。光硬化型の粘着シートM1、および粘着シートM1を用いた実施例3の積層粘着シートについては、粘着シートをトリアセチルセルロースフィルムに貼り合わせ、UV硬化を行った後に、透湿試験を実施した。本測定により求めた透湿度は、トリアセチルセルロースフィルムと粘着シートとの積層体の透湿度であるが、トリアセチルセルロースフィルムの透湿度が粘着シートの透湿度よりも十分に大きいため、積層体の透湿度=粘着シートの透湿度とみなした。
【0115】
<紫外線透過率>
可視紫外分光光度計により粘着シートの透過率スペクトルを測定し、波長380nmにおける透過率を読み取った。
【0116】
[ゴム系粘着シートの作製]
<粘着シートA1〜A5の作製>
ポリイソブチレン(PIB;BASF製「OPPANOL B80」、重量平均分子量:約75万、ガラス転移温度:−63℃):100重量部、およびベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤(BASF製「TINUVIN 384−2」):7.8重量部を、300重量部のトルエンと混合して、粘着剤組成物Aを調製した。セパレータ(片面がシリコーンで剥離処理されたポリエステルフィルム)の剥離処理面に、上記の粘着剤組成物Aを、表1に示す乾燥後厚みとなるように塗布した後、130℃で2分間加熱して溶媒を除去して粘着シートを作製した。
【0117】
<粘着シートB1の作製>
紫外線吸収剤を添加しない粘着剤組成物Bを用い、上記と同様にして粘着シートB1を作製した。
【0118】
<粘着シートC1およびC2の作製>
ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)−ポリスチレンブロック共重合体(クラレ製「セプトン2063」、スチレン含有量:13%;SEPS):100重量部、およびトリアジン系の紫外線吸収剤(BASF製「TINOSORB S」):8.9重量部を、300重量部のトルエンと混合して、粘着剤組成物Cを調製した。セパレータの剥離処理面に、上記の粘着剤組成物Cを、表1に示す乾燥後厚みとなるように塗布した後、130℃で2分間加熱して溶媒を除去して粘着シートを作製した。
【0119】
上記の粘着剤組成物A〜Cの組成、ならびに各粘着シートの特性(厚み、透湿度および貯蔵弾性率)を表1に示す。
【0120】
【表1】
【0121】
[アクリル系粘着シートの作製]
<粘着シートK1〜K3の作製>
(粘着剤組成物の調製)
反応容器内に、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA):40重量部、イソステアリルアクリレート(ISA):40重量部、N−ビニルピロリドン(NVP):19重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA):1重量部、および光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASF製「イルガキュア184」):0.1重量部を投入し、窒素雰囲気下で紫外線を照射して、重合率10%のプレポリマー組成物を得た。このプレポリマー組成物100重量部に、光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(BASF製「イルガキュア651」;IRG651)、多官能モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、連鎖移動剤としてα−チオグリセロール(TGR)、およびシランカップリング剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学製「KBM403」)を、表2に示す配合量で添加した後、これらを均一に混合して、粘着剤組成物Kを調製した。
【0122】
(粘着シートの作製)
セパレータの剥離処理面に、上記の粘着剤組成物Kを、表2に示す厚みとなるように塗布して塗布層を形成し、塗布層上に別のセパレータの剥離処理面を貼り合わせた。その後、ランプ直下の照射面における照射強度が5mW/cm
2になるように位置調節したブラックライトにより、積算光量が3000mJ/cm
2となるまでUV照射を行って、重合を進行させ、アクリル系粘着シートを作製した。
【0123】
<粘着シートL1およびL2>
粘着剤組成物Kに、プレポリマー組成物100重量部に対して0.7重量部のトリアジン系の紫外線吸収剤(BASF製「TINOSORB S」)を添加して、粘着剤組成物Lを調製した。この粘着剤組成物Lを用いて、上記と同様に塗布およびUV重合を行い、厚み100μmの粘着シートL1および厚み125μmの粘着シートL2を作製した。
【0124】
<粘着シートM1>
反応容器内に、2EHA:72重量部、NVP:13重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA):14重量部、熱重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN):0.2重量部、および連鎖移動剤としてTGR:0.12重量部を、酢酸エチル150重量部とともに投入し、23℃の窒素雰囲気下で1時間撹拌し、窒素置換を行った。その後、65℃で7時間反応させ、重量平均分子量(Mw)が25万のアクリルベースポリマーの溶液を得た。このアクリルベースポリマー溶液に、イソシアネート系架橋剤としてキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井化学製「タケネートD110N」)、光重合性多官能モノマーとしてポリプロピレングリコールジアクリレート(新中村工業化学製「NKエステルAPG400」)、光重合開始剤としてイルガキュア651、およびシランカップリング剤としてKBM403を、表2に示す配合量で添加した後、均一に混合して粘着剤組成物溶液を調製した。セパレータの剥離処理面に、上記の粘着剤組成物を、乾燥後の厚みが100μmとなるように塗布し、100℃で6分間加熱して、溶媒を乾燥除去するとともにイソシアネート架橋剤を熱架橋させて、光硬化型の粘着シートM1を得た。
【0125】
<粘着シートN1およびO1>
プレポリマーの仕込みモノマー組成、ならびに多官能モノマーおよび紫外線吸収剤の添加量を表2に示すように変更したこと以外は、上記粘着剤組成物Kと同様にして、粘着剤組成物NおよびOを調製した。これらの粘着剤組成物を用い、上記と同様にして、厚み125μmの粘着シートN1およびO1を作製した。
【0126】
上記の粘着剤組成物K〜Oの組成、ならびに各粘着シートの特性(厚み、透湿度および貯蔵弾性率)を表2に示す。
【0127】
【表2】
【0128】
[セル側粘着シートの作製]
(粘着剤組成物の調製)
反応容器内に、モノマー成分として、ブチルアクリレート:97重量部、およびアクリル酸:3重量部、ならびに熱重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN):0.2重量部を、酢酸エチル233重量部とともに投入し、23℃の窒素雰囲気下で1時間撹拌し、窒素置換を行った。その後、60℃で5時間反応させ、重量平均分子量(Mw)が110万のアクリルベースポリマーの溶液を得た。このアクリルベースポリマー溶液に、イソシアネート系架橋剤としてトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業製「コロネートL」):0.8重量部、およびシランカップリング剤(信越化学製「KBM403」):0.1重量部を添加した後、均一に混合して粘着剤組成物溶液を調製した。
【0129】
(粘着シートの作製)
セパレータの剥離処理面に、上記の粘着剤組成物を、乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、100℃で3分間乾燥させて溶媒を除去して、粘着シートを得た。その後、50℃で48時間加熱して、架橋処理を行い、セル側粘着シートを得た。
【0130】
[片保護偏光板の作製]
ヨウ素が含浸された厚み25μmの延伸ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光子の一方の面(セル側の面)に、接着剤を介してポリシクロオレフィン保護フィルムを貼り合わせて片保護偏光板を作製した。
【0131】
[実施例1]
片保護偏光板の偏光子の露出面に、ロールラミネータを用いて上記の粘着シートA1を貼り合わせた。さらに、粘着シートA1上に、上記の粘着シートK1を、ロールラミネータを用いて貼り合わせた。その後、片保護偏光板のポリシクロオレフィン保護フィルム上に、上記のセル側粘着シートを、ロールラミネータを用いて貼り合わせた。このようにして、片保護偏光板の偏光子露出面側に粘着シートA1と粘着シートK1との積層粘着シートからなる前面側粘着シートを備え、片保護偏光板の透明保護フィルム付設面にセル側粘着シートを備える両面粘着剤付き偏光板を得た。
【0132】
[実施例2〜7、比較例1〜3]
片保護偏光板の偏光子露出面に貼り合わせる前面側粘着シートの構成を表3に示すように変更したこと以外は、上記実施例1と同様にして、両面粘着剤付き偏光板を得た。
【0133】
[比較例4,5]
片保護偏光板の視認側の面に貼り合わせる粘着シートを、それぞれ、粘着シートA5,L2の単層からなる厚み125μmの粘着シートに変更したこと以外は、上記実施例1と同様にして両面粘着剤付き偏光板を得た。
【0134】
[評価]
<表示ムラ>
任天堂3DSの交換用上部液晶パネルから、バックライト部分を取り外し、液晶パネルのバックライトと反対側の偏光板を取り外した後、エタノールを染みこませた清浄な布を用いて、液晶セル表面の粘着剤を除去した。両面粘着剤付き偏光板を50mm×80mmのサイズにカットした後、セル側の面のセパレータを剥離し、液晶セル表面の中央部にセル側粘着シート面を重ね合わせ、ハンドローラーを用いて貼り合わせた。
【0135】
その後、両面粘着剤付き偏光板の視認側の面のセパレータを剥離し、黒色インクが周縁部に枠状に印刷されたガラス板(0.7mm厚×50mm×100mm、インク印刷厚み=10μm、両短辺(長辺方向)のインク印刷幅:各15mm、両長辺(短辺方向)のインク印刷幅:各5mm)の印刷面を、粘着剤の露出面上に載置し、真空熱圧着装置で貼り合わせを行った(温度25℃、装置内圧力50Pa、圧力0.3MPa、圧力保持時間10秒)。その後、オートクレーブ処理(50℃、0.5MPa、15分)を行い、評価用パネルを得た。光硬化型の粘着シートを用いた実施例3については、オートクレーブ処理後に、高圧水銀ランプを用いて、視認側のガラス板を介して積算光量3000mJ/cm
2の紫外線を照射して、粘着剤のUV硬化を行ったものを評価用パネルとした。
【0136】
評価用パネルを、任天堂3DS本体の画像表示パネルと交換して、電気接続を行い、評価用画像表示装置を得た。パネルを白表示とした際の、印刷枠付近での表示ムラの有無を目視で確認し、表示ムラが確認されなかったものを○、わずかな表示ムラが見られたものを△、表示ムラが容易に確認できたものを×とした。
【0137】
<気泡>
両面粘着剤付き偏光板を45mm×75mmのサイズにカットした後、セル側の面のセパレータを剥離し、0.2mm厚×50mm×100mmのガラス板の中央部へ、ハンドローラーを用いて貼り合わせた。その後、上記の表示ムラ評価用パネルの作製と同様に、両面粘着剤付き偏光板の視認側の面に、黒色インクが周縁部に枠状に印刷されたガラス板を貼り合わせ、オートクレーブ処理を行い、評価用パネルを得た。実施例3については、表示ムラ評価用パネルと同様に、オートクレーブ処理後に粘着剤のUV硬化を行ったものを評価用パネルとした。
【0138】
評価用パネルの黒色インク印刷部の内側近傍を、倍率20倍のデジタルマイクロスコープで観察し、粘着シート中の気泡の有無を確認した(初期評価)。また、85℃のオーブンに48時間投入後、同様の方法で気泡の有無を確認した(加熱後評価)。初期および加熱後のそれぞれにおいて、気泡が確認されなかったものを〇、気泡が確認されたものを×とした。
【0139】
<加湿耐久性(端部色抜け)の評価>
両面粘着剤付き偏光板を50mm×50mmのサイズにカットした後、両面の粘着剤層上のそれぞれに無アルカリガラス板を重ね合わせ、ハンドローラーを用いて貼り合わせた。さらに、実施例3については、第一粘着剤層側に貼り合わせられたガラス板を介して紫外線を照射して、粘着剤のUV硬化を行った。この試験片を60℃、相対湿度95%の恒温恒湿槽に投入し、300時間静置した後に取り出した。試験片の偏光板と標準偏光板とをクロスニコルに配置して、試験片の偏光板のコーナー付近を光学顕微鏡(Olympus製「MX61L」、倍率10倍)で観察し、色抜けが生じている領域の幅(偏光板の端部からの距離)を測定した。実施例1および比較例5の顕微鏡観察像を
図4に示す。
【0140】
[評価結果]
上記各実施例および比較例の両面粘着剤付き偏光板における前面側粘着シートの積層構成、積層粘着シートの物性(ただし、比較例4,5は単層の粘着シートの特性)、および評価結果を表3に示す。実施例3に関しては、貯蔵弾性率はUV硬化前の値、透湿度はUV硬化後の数値を示している。
【0141】
【表3】
【0142】
前面側粘着シートとして単層のアクリル系粘着シートL2が用いられた比較例5では、気泡および表示ムラがなく、粘着シートによる印刷段差吸収性が発揮されているが、図
4Bに示すように加湿試験後の偏光板の端部の色ヌケが大きく加湿耐久性が劣っていた。一方、前面側粘着シートとして単層のゴム系粘着シートA5が用いられた比較例4では、加湿試験後の偏光板の端部の色ヌケは抑制されていたが、前面透明板の印刷段差に起因する気泡の混入および表示ムラがみられた。これらの結果から、片保護偏光板上に設けられる前面側粘着シートが単層の場合は、段差吸収性と耐湿性の両立が困難であることが分かる。
【0143】
これに対して、片面保護フィルムの偏光子に接してゴム系の第一粘着剤層が設けられ、第一粘着剤層上にアクリル系の第二粘着剤層が設けられた実施例1〜8では、段差吸収性と耐湿性を両立できていることが分かる。
【0144】
実施例6と比較例1は、第一粘着剤層および第二粘着剤層の組成が同一であるが、比較例1では、端部の色抜け量が大きくなっていた。これは、比較例1では、第一粘着剤層の厚みが小さく透湿度が大きいために、前面側粘着シートの側面から侵入した水分が偏光子の端面付近に移行しやすく、水分によりヨウ素の退色が生じたためであると考えられる。
【0145】
実施例1、実施例7、実施例8および比較例3は、第一粘着剤層および第二粘着剤層の組成が同一であり、それぞれの厚みが異なっている。これらの実施例および比較例においても、第一粘着剤層の厚みが大きいほど、偏光板の端部の色抜け量が小さくなる傾向がみられ、低透湿度の第一粘着剤層が耐久性向上に寄与していることが分かる。
【0146】
第二粘着剤層の厚みが小さく、第一粘着剤層の厚みが大きい比較例3では、加湿試験後の偏光板の端部の色ヌケは抑制されていたが、前面透明板の印刷段差に起因する気泡の混入および表示ムラがみられた。これは、厚みの大きい第一粘着剤層の粘弾性挙動が積層粘着シート全体の粘弾性挙動の支配的要因となっており、粘着シートのG’
80が大きいために、段差吸収性が不十分であることに起因すると考えられる。
【0147】
第一粘着剤層と第二粘着剤層の厚みが等しい実施例8では、前面透明板の印刷段差に起因する気泡の混入は抑制されていたが、わずかな表示ムラが確認された。これは第二粘着剤層の厚みが大きい他の実施例に比べて実施例8の粘着シートは段差吸収性が小さいことに起因すると考えられる。
【0148】
実施例1、実施例3、実施例4および比較例2は、第一粘着剤層としていずれも厚みが25μmのゴム系粘着シートA1を用いており、第二粘着剤層のアクリル系粘着剤の組成が異なっている。これらの実施例および比較例では、加湿試験後の偏光板の端部の色ヌケ量はいずれも同等であることから、低透湿度の第一粘着剤層が耐久性向上に寄与していることが分かる。
【0149】
第二粘着剤層の貯蔵弾性率が高い比較例2では、前面透明板の印刷段差に起因する気泡の混入および表示ムラがみられた。実施例4では、前面透明板の印刷段差に起因する気泡の混入は抑制されていたが、わずかな表示ムラが確認された。一方、実施例1,2では、気泡および表示ムラがなく、粘着シートが良好な段差吸収性を有していた。
【0150】
以上の結果から、片保護偏光板の偏光子露出面に、低透湿度の第一粘着剤層と、貯蔵弾性率の温度依存性が大きくG’
80が小さい第二粘着剤層との積層粘着シートを設けることにより、高い耐久性と段差吸収性を付与し、かつ画像表示装置の薄型化を実現できることが分かる。