特許第6934306号(P6934306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6934306
(24)【登録日】2021年8月25日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】分離膜及び分離膜モジュール
(51)【国際特許分類】
   B01D 69/00 20060101AFI20210906BHJP
   B01D 63/00 20060101ALI20210906BHJP
   B01D 71/26 20060101ALI20210906BHJP
   B01D 71/32 20060101ALI20210906BHJP
   B01D 71/34 20060101ALI20210906BHJP
   B01D 71/36 20060101ALI20210906BHJP
   B01D 71/38 20060101ALI20210906BHJP
   B01D 71/40 20060101ALI20210906BHJP
   B01D 71/52 20060101ALI20210906BHJP
   B01D 71/06 20060101ALI20210906BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20210906BHJP
【FI】
   B01D69/00 500
   B01D63/00
   B01D71/26
   B01D71/32
   B01D71/34
   B01D71/36
   B01D71/38
   B01D71/40
   B01D71/52
   B01D71/06
   B01D71/02
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-27960(P2017-27960)
(22)【出願日】2017年2月17日
(65)【公開番号】特開2018-130699(P2018-130699A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2020年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591178012
【氏名又は名称】公益財団法人地球環境産業技術研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多久 俊平
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 照彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 譲宣
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−134310(JP,A)
【文献】 特開2014−079751(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/117349(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0094379(US,A1)
【文献】 特開2016−041415(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/054619(WO,A1)
【文献】 特開2014−014809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/02−71/82
B01D 53/22
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給側に供給されるガス中の二酸化炭素をガス透過側に透過させて二酸化炭素を分離する分離機能層と、
前記分離機能層の前記ガス供給側に配置された親水性多孔膜と、
前記親水性多孔膜の前記ガス供給側に配置された疎水性多孔膜と、
を備え
前記分離機能層は、吸水性を有する有機高分子と、二酸化炭素と親和性を有し、かつ水溶性を示す二酸化炭素キャリアとを含む有機高分子膜である分離膜。
【請求項2】
前記二酸化炭素キャリアは、アルカリ金属塩、アルカリ金属水酸化物、アンモニア、アンモニウム塩、アミン、アミン塩、ポリアミン、及びアミノ酸からなる群より選択される少なくとも一つを含む請求項に記載の分離膜。
【請求項3】
前記吸水性を有する有機高分子は、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩共重合体及びポリエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも一つを含む請求項又は請求項に記載の分離膜。
【請求項4】
前記分離機能層の前記ガス透過側に配置された多孔質支持層を更に備える請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の分離膜。
【請求項5】
前記疎水性多孔膜の厚さは、2μm〜200μmである請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の分離膜。
【請求項6】
前記親水性多孔膜は、親水化処理された、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも一つを含む請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の分離膜。
【請求項7】
前記親水性多孔膜の厚さは、1μm〜200μmである請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の分離膜。
【請求項8】
請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の分離膜を備える分離膜モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離膜及び分離膜モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離膜、並びに二酸化炭素分離膜を備える二酸化炭素分離システムが知られている。
【0003】
例えば、水溶性ポリマー及び二酸化炭素キャリアを含む二酸化炭素分離層と、疎水性の多孔質基材及び、前記多孔質基材の少なくとも一方の面に設けられた親水性基を有する高分子被膜を備え、前記高分子被膜を介して前記二酸化炭素分離層と接し、前記二酸化炭素分離層を支持する多孔質支持体と、を備えた二酸化炭素分離膜が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。より具体的には、特許文献1では、二酸化炭素分離膜は、多孔質支持体と二酸化炭素分離層とが接する界面、即ち、二酸化炭素分離層のCO放出側の面において、親水性基を有する高分子被膜がH(プロトン)を供給するように作用していることが開示されている。そのため、特許文献1では、二酸化炭素分離層のCO放出側(ガス透過側)に親水性基を有する高分子被膜を配置した二酸化炭素分離膜が開示されている。
【0004】
また、100℃以上の温度条件下でCO/H選択性を有するCO促進輸送膜であって、グリシン、及び、前記グリシンのアミノ基のプロトン化を防止する脱プロトン化剤をハイドロゲル膜に含んで構成されたゲル層を、100℃以上の耐熱性を有した多孔膜に担持させてなることを特徴とするCO促進輸送膜が開示されている(例えば、特許文献2を参照)。より具体的には、特許文献2では、ガス非透過側から、疎水性PTFE多孔膜/ゲル層(ガス透過側の親水性PTFE多孔膜に担持されたキャリア含有ゲル層)/疎水性PTFE多孔膜の順番で構成されているCO促進輸送膜が開示されている。すなわち、CO放出側(ガス透過側)に親水性の多孔膜を配置したCO促進輸送膜が開示されている。
【0005】
また、ガス透過性支持体と、吸水性ポリマー及び二酸化炭素キャリアを含む二酸化炭素分離層と、平均厚さ1μm以上500μm以下の水蒸気透過性の多孔質保護層と、供給ガス流路用部材と、をこの順で備え、前記ガス透過性支持体と前記二酸化炭素分離層とが、及び前記二酸化炭素分離層と前記多孔質保護層とが、互いに接しており、かつ前記二酸化炭素分離層が、前記多孔質保護層及び前記ガス透過性支持体に浸入していない二酸化炭素分離用複合体が開示されている(例えば、特許文献3を参照)。より具体的には、特許文献3では、二酸化炭素分離層のガス供給側に多孔質保護層が配置されており、かつ、多孔質保護層としては、疎水性とすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−27806号公報
【特許文献2】国際公開2013/018659号
【特許文献3】特許第5865317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜3に記載の複層構造を有する分離膜は、いずれも分離機能層である二酸化炭素分離層又はゲル層のガス供給側に、親水性多孔膜を配置する構成を想定していない。また、複層構造を有する分離膜として、二酸化炭素透過性をより向上させたものが求められている。
【0008】
本発明は、二酸化炭素透過性を向上させた分離膜及び分離膜モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、例えば以下の手段により解決される。
<1> ガス供給側に供給されるガス中の二酸化炭素をガス透過側に透過させて二酸化炭素を分離する分離機能層と、前記分離機能層の前記ガス供給側に配置された親水性多孔膜と、を備える分離膜。
<2> 前記分離機能層は、吸水性を有する有機高分子と、二酸化炭素と親和性を有し、かつ水溶性を示す二酸化炭素キャリアとを含む有機高分子膜である<1>に記載の分離膜。
<3> 前記二酸化炭素キャリアは、アルカリ金属塩、アルカリ金属水酸化物、アンモニア、アンモニウム塩、アミン、アミン塩、ポリアミン、及びアミノ酸からなる群より選択される少なくとも一つを含む<2>に記載の分離膜。
<4> 前記吸水性を有する有機高分子は、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩共重合体及びポリエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも一つを含む<2>又は<3>に記載の分離膜。
<5> 前記分離機能層の前記ガス透過側に配置された多孔質支持層を更に備える<1>〜<4>のいずれか1つに記載の分離膜。
<6> 前記親水性多孔膜の前記ガス供給側に配置された疎水性多孔膜を更に備える<1>〜<5>のいずれか1つに記載の分離膜。
<7> 前記疎水性多孔膜の厚さは、2μm〜200μmである<6>に記載の分離膜。
<8> 前記親水性多孔膜は、親水化処理された、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも一つを含む<1>〜<7>のいずれか1つに記載の分離膜。
<9> 前記親水性多孔膜の厚さは、1μm〜200μmである<1>〜<8>のいずれか1つに記載の分離膜。
<10> <1>〜<9>のいずれか1つに記載の分離膜を備える分離膜モジュール。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、二酸化炭素透過性を向上させた分離膜及び分離膜モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る分離膜を示す概略構成図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る分離膜を示す概略構成図である。
図3】実施例1の分離膜及び比較例1の分離膜におけるCOの透過流速を示すグラフである。
図4】実施例1の分離膜及び比較例1の分離膜における透過係数比α(PCO2/PHe)を示すグラフである。
図5】実施例1の分離膜及び比較例1の分離膜におけるHOの透過流速を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
〔分離膜〕
以下、本発明の分離膜の一実施形態について図1を用いて説明する。図1は、第1実施形態に係る分離膜を示す概略構成図である。
【0014】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る分離膜10は、ガス供給側に供給されるガス中の二酸化炭素をガス透過側に透過させて二酸化炭素を分離する分離機能層2と、分離機能層2のガス供給側に配置された親水性多孔膜1と、を備える。これにより、分離膜10は、分離機能層2のガス供給側に親水性多孔膜1が配置されていない分離膜と比較して二酸化炭素透過性が向上している。この理由は、炭酸ガスと分離機能層成分とが反応し重炭酸イオンとなって二酸化炭素が透過するが、分離機能層2の一部、及びCOと反応する二酸化炭素キャリアの少なくとも一方が親水性多孔膜1の孔部に入り込み、分離機能層2と親水性多孔膜1との接触面積が増加することにより、反応性が向上して重炭酸イオンが発生しやすくなるためであると推定される。
【0015】
分離膜10は、膜強度を向上させる観点から、分離機能層2のガス透過側に多孔質支持層3を更に備えていてもよい。また、分離膜の形状は、図1に示す平板状に限定されず、スパイラル状、管状、中空糸状等であってもよい。
【0016】
分離膜は、ガス供給側に供給されるガス中の二酸化炭素をガス透過側に透過させて二酸化炭素を分離する分離機能層を備える。分離機能層としては、例えば、有機高分子膜、無機材料膜、有機高分子−無機材料複合膜、液体膜などが挙げられる。また、分離機能層は、ゴム状高分子膜、イオン交換樹脂膜、アミン水溶液膜又はイオン液体膜であることがより好ましい。
【0017】
有機高分子膜の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂;キサンタンガム、ローカストビーンガム、ゼラチン、デンプン、アミロース、アミロペクチン、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、キチン等の各種の多糖類;ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリピロール、ポリフェニレンオキシド、ポリアニリン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン等の各種有機材料が挙げられる。また、有機高分子膜は、1種の有機材料から構成される膜であってもよく、2種以上の有機材料から構成される膜であってもよい。
【0018】
また分離機能層としては、より好ましくは、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩共重合体、ポリエチレングリコールなどの吸水性を有する有機高分子と、二酸化炭素と親和性を有し、かつ水溶性を示す二酸化炭素キャリアとを含む有機高分子膜であってもよい。吸水性を有する有機高分子は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
前述の有機高分子は、架橋剤により形成された架橋構造を有していてもよい。架橋構造を有することにより、分離機能層の強度及び耐久性が向上する。
【0020】
架橋剤としては、特に制限されず、例えば、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、アルデヒド化合物、紫外線架橋型化合物、脱離基含有化合物、カルボン酸化合物、ウレア化合物、有機金属化合物等が挙げられる。
【0021】
二酸化炭素キャリアとしては、無機材料及び有機材料が用いられ、例えば、無機材料としては、アルカリ金属塩(好ましくはアルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩)、アルカリ金属水酸化物、アンモニア、アンモニウム塩などが挙げられ、有機材料としては、例えば、アミン、アミン塩、ポリアミン、アミノ酸などが挙げられる。より具体的には、無機材料としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、有機材料としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、グリシンが挙げられる。また、前記したアルカリ金属塩の場合、補助添加成分として、アルカリ金属イオンと錯体を形成する多座配位子、亜砒酸ナトリウム、炭酸アンヒドラーゼ、ホウ酸等を併用してもよい。二酸化炭素キャリアは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、二酸化炭素キャリアは、無機材料膜、有機高分子−無機材料複合膜、液体膜等に含まれていてもよい。
【0022】
分離機能層の厚さは、特に限定されないが、機械的強度の観点からは、10μm〜3000μmであることが好ましく、10μm〜500μmであることがより好ましく、15μm〜150μmの範囲であることが更に好ましい。
また、分離膜が後述する多孔質支持層を備える場合、分離機能層の厚さは、二酸化炭素透過性を好適に確保する観点から、100nm〜100μmであることが好ましく、100nm〜50μmであることがより好ましい。
【0023】
また、分離機能層として、例えば、特許第5329207号に記載の高分子膜、特許第4965928号に記載のCO促進輸送膜、特許第5743639号に記載の分離膜、特許第5738704号に記載の透過膜などを用いてもよい。
【0024】
分離膜は、分離機能層のガス供給側に親水性多孔膜を備える。親水性多孔膜は、親水性基を有するものであればよく、また、親水化処理された、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも一つを含むものであってもよい。なお、親水化処理は、化学修飾等により行われていてもよい。
【0025】
親水性基としては、特に制限されず、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、アクリルアミド基、イソシアネート基、酸クロライド基、ニトロ基、チオ基、イミノ基、S−オキシド基等が挙げられる。中でも、耐久性、二酸化炭素透過性の観点から、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、アクリルアミド基、イソシアネート基及び酸クロライド基の少なくとも1種が好ましく、カルボキシ基、スルホン酸基の少なくとも1種がより好ましい。
【0026】
親水性多孔膜の厚さは、二酸化炭素透過性と膜強度とを好適に両立する観点から、1μm〜3000μmであることが好ましく、1μm〜500μmであることがより好ましく、1μm〜200μmであることが更に好ましい。
【0027】
また、親水性多孔膜の平均孔径は、0.5μm以下であることが好ましく、0.3μm以下であることがより好ましく、0.2μm以下であることが更に好ましい。親水性多孔膜の空隙率は、50%〜90%であることが好ましく、60%〜80%であることがより好ましい。
また、親水性多孔膜における水の保持率(100×水の保持質量/(水の保持質量+親水性多孔膜の質量)は、40質量%〜90質量%であることが好ましく、50質量%〜80質量%であることがより好ましい。
【0028】
前述のように、分離膜は、分離機能層のガス透過側に多孔質支持層が配置されていてもよい。多孔質支持層としては、分離機能層を支持可能であり、かつ二酸化炭素透過性を有するものであれば特に限定されず、その材質としては、紙、セルロース、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、金属、ガラス、セラミックなどが挙げられる。より具体的には、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフッ化ビニリデンなどの樹脂材料が挙げられる。
【0029】
多孔質支持層の厚さは、二酸化炭素透過性と膜強度とを好適に両立する観点から、10μm〜500μmであることが好ましく、30μm〜300μmであることがより好ましい。
【0030】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態に係る分離膜20について図2を用いて説明する。図2は、第2実施形態に係る分離膜を示す概略構成図である。第2実施形態に係る分離膜20は、親水性多孔膜1のガス供給側に疎水性多孔膜4が配置されている点で第1実施形態に係る分離膜10と相違する。なお、本実施形態では、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付しており、その詳細な説明を省略する。
【0031】
本実施形態に係る分離膜20は、親水性多孔膜1のガス供給側に疎水性多孔膜4を備えているため、膜強度が向上しており、かつ、分離機能層をガス供給側に供給されるガス中の水蒸気由来の凝縮水から保護することができる。
【0032】
疎水性多孔膜としては、疎水性及び二酸化炭素透過性を有するものであれば特に限定されず、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも一つを含むものであってもよい。また、疎水性多孔膜は、化学修飾等により親水化処理される前の多孔膜と同じ材質であってもよい。
【0033】
疎水性多孔膜の厚さは、二酸化炭素透過性と膜強度とを好適に両立する観点から、2μm〜3000μmであることが好ましく、2μm〜500μmであることがより好ましく、2μm〜200μmであることが更に好ましい。
【0034】
また、疎水性多孔膜の平均孔径は、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましく、0.3μm以下であることが更に好ましい。疎水性多孔膜の空隙率は、50%〜90%であることが好ましく、60%〜80%であることがより好ましい。
【0035】
また、分離機能層として吸湿性のある材料を用いたとき、温度条件の変化によって体積が変化しうるが、疎水性多孔膜と分離機能層との間に親水性多孔膜が配置されているため、分離機能層の膨潤時に疎水性多孔膜の多孔部に分離機能層が入りこむことが抑制される。
【0036】
〔分離膜モジュール〕
本実施形態に係る分離膜モジュールは、前述の分離膜を備えている。本実施形態に係る分離膜モジュールは、前述の分離膜を備え、ガス供給側に供給されるガス中の二酸化炭素をガス透過側に透過させて二酸化炭素を分離する。
【0037】
本実施形態に係る分離膜及び分離膜モジュールにおいて、ガス供給側に供給されるガスは、二酸化炭素を含むガスであればよく、好ましくは二酸化炭素及び水蒸気を含むガスであればよく、例えば、水素製造プラントにて発生する改質ガス;天然ガスプラントでの採掘ガス;IGCC(石炭ガス化複合発電)の燃焼前ガス;火力発電システム、燃料電池システムなどにて発生する燃焼排ガス;燃料電池システムから発生するオフガス;化学プラントなどにて発生する排出ガス等であってもよい。
【0038】
本実施形態に係る分離膜及び分離膜モジュールは、二酸化炭素透過性を向上させる観点から高湿度条件で使用することが好ましく、そのため、ガス供給側に二酸化炭素及び水蒸気を含むガスを供給することが好ましい。
【0039】
更に、本実施形態に係る分離膜及び分離膜モジュールは、CO透過性が高いため、必要膜面積(モジュール総体積)を低減することができる。
【0040】
本実施形態に係る分離膜及び分離膜モジュールは、システム内外で発生した二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離システムに組み込まれていてもよい。二酸化炭素分離システムは、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を分離するために用いられる。
【0041】
二酸化炭素分離システムとしては、二酸化炭素を含むガスが流通する供給ガス流通経路と、ガス供給側に供給されたガス中の二酸化炭素をガス透過側に透過させて二酸化炭素を分離する前述の分離膜(分離膜モジュール)と、を備えていればよい。また、二酸化炭素の分離を促進する観点から、ガス透過側を減圧あるいは吸引する手段を配置してもよく、ガス透過側にスイープガスを供給するスイープガス供給経路を配置してもよい。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0043】
[実施例1]
親水性ポリマーであるポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(Poly−EGDGE)により架橋した親水性高分子(ポリアクリル酸)をマトリックスとし、二酸化炭素キャリアである炭酸セシウムを含有した膜(有効膜面積8.04cm)を分離機能層とした。次に、分画分子量30万のPES(ポリエーテルスルホン)限外ろ過膜(メルクミリポア社製、バイオマックス)を多孔質支持層として、分離機能層の一方の面上に配置した。また、分離機能層のもう一方の面上に、親水性多孔膜(メルクミリポア社製、VVLP04700、Durapore(登録商標) PVDF 孔径0.1μm、厚さ125μm)及び疎水性多孔膜(メルクミリポア社製、GVHP04700、Durapore(登録商標) PVDF 孔径0.22μm、厚さ125μm)をこの順番で配置し、分離膜を作製した。作製した分離膜は、ガス供給側から順に、疎水性多孔膜(疎水性PVDF)、親水性多孔膜(親水性PVDF)、分離機能層、及び多孔質支持層を備える。
【0044】
<透過流速及び透過係数比の測定>
次に、分離膜のガス供給側(疎水性多孔質膜側)に、120kPa(abs)で、湿度59.6%のCO/He混合ガスをドライベースで100Nml/min導入し、分離膜のガス透過側(多孔質支持層側)に、大気圧で、ドライArを100Nml/min導入し、CO/He混合ガス中のCO濃度を変化させたときのCOの透過流速、HOの透過流速及び透過係数比α(PCO2/PHe)を測定した。
結果を図3図5に示す。
【0045】
[比較例1]
親水性多孔膜を設けていない点以外は、実施例1と同様にして分離膜を作製した。作製した分離膜は、ガス供給側から順に、疎水性多孔膜(疎水性PVDF)、分離機能層、及び多孔質支持層を備える。
次に、実施例1と同様にしてCOの透過流速、HOの透過流速及び透過係数比α(PCO2/PHe)を測定した。
結果を図3図5に示す。
【0046】
図3図5に示すように、分離機能層のガス供給側に親水性多孔膜を配置した実施例1の分離膜は、分離機能層のガス供給側に親水性多孔膜が配置されていない比較例1の分離膜よりもCO透過性に優れていることが示された。
【符号の説明】
【0047】
10、20 分離膜
1 親水性多孔膜
2 分離機能層
3 多孔質支持層
4 疎水性多孔膜
図1
図2
図3
図4
図5