【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の少なくとも1つの実施形態に係る燃焼器は、
周方向に設けられた複数のノズルと、
前記複数のノズルの出口部の内周側において前記周方向に延在する保炎リングと、
前記保炎リングの上流側において前記周方向に延在し、前記複数のノズルの前記出口部の内周側の環状空間を介して前記保炎リングに向けて空気を供給するための複数の空気入口を有する上流側壁部と、
を備え、
前記上流側壁部は、
第1領域と、
前記第1領域に対して前記周方向にずれた位置に設けられ、前記第1領域よりも前記空気入口の
前記周方向の形成密度が高い第2領域と、
を含む。
【0007】
上記(1)の構成によると、保炎リングの上流側に位置する上流側壁部において、第1領域よりも空気入口の形成密度が相対的に高い第2領域を設けたので、上流側壁部の空気入口を介して保炎リングに向けて供給される空気流量は周方向において分布を有する。このため、第1領域に対応した周方向領域では保炎リングの下流側の低流速域にて保炎される一方、第2領域に対応した周方向領域では上流側壁部から供給される空気の流れによって保炎が阻害される結果、保炎リングによる保炎効果は周方向において不均一となる。このため、予混合が十分でない上流側での燃焼を少なくとも一部の周方向領域において抑制し、保炎を行いながら、局所的な火炎温度の上昇に起因したNOxの発生量の増加を抑制することができる。
【0008】
(2)いくつかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記保炎リングは、前記第2領域の下流側に位置する第1開口を含む。
【0009】
上記(2)の構成によると、上流側壁部の第2領域の下流側に位置するように保炎リングに第1開口を設けたので、保炎リングの第1開口を介して、上流側壁部の第2領域からの比較的大流量の空気が保炎リングの下流側に導かれる。このため、保炎リングの第1開口が設けられた周方向領域において、保炎リングによる保炎を効果的に阻害し、保炎リングの保炎効果の周方向における不均一な分布を容易に実現できる。よって、予混合が十分でない上流側での燃焼をより一層抑制し、保炎を行いながら、局所的な火炎温度の上昇に起因したNOxの発生量の増加を効果的に抑制することができる。
【0010】
(3)いくつかの実施形態では、上記(2)の構成において、
前記第1開口は、前記保炎リングの外周縁から、前記保炎リングの径方向内側に向かって、前記保炎リングの内周縁よりも外周側の位置まで切欠かれた少なくとも1つの切欠きを含む。
【0011】
上記(3)の構成によると、切欠きは、保炎リングの外周縁から内周縁まで切欠かれた開口と比べて開口面積が小さくなるので、切欠きを流れる空気の流量を抑制することができる。切欠きを流れる空気の流量が大きいと、燃焼に使用される空気の量が低下し、NOxの発生量が増加してしまうが、上記(3)の構成では、切欠きを流れる空気の流量を抑制することによって、NOxの発生量の増加を抑制することができる。
【0012】
(4)いくつかの実施形態では、上記(3)の構成において、
前記切欠きの最大の切欠き深さは、前記保炎リングの径方向に関して前記外周縁から前記内周縁までの距離の2/3以下である。
【0013】
上記(4)の構成によると、切欠きが外周縁から内周縁まで切欠かれたものと比べて切欠きを流れる空気の流量が抑制されるので、NOxの発生量の増加を抑制することができる。
【0014】
(5)いくつかの実施形態では、上記(2)の構成において、
前記第1開口は、前記保炎リングの外周縁から前記保炎リングの内周縁の間に形成された少なくとも1つの貫通孔を含む。
【0015】
上記(5)の構成によると、貫通孔は、保炎リングの外周縁から内周縁まで切欠かれた開口と比べて開口面積が小さくなるので、貫通孔を流れる空気の流量を抑制することができる。貫通孔を流れる空気の流量が大きいと、燃焼に使用される空気の量が低下し、予混合気中の燃料濃度が上昇してしまうが、上記(5)の構成では、貫通孔を流れる空気の流量を抑制することによって、NOxの発生量の増加を抑制することができる。
【0016】
(6)いくつかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、
前記第2領域の前記周方向における延在範囲は、前記周方向にて隣り合う一対の前記ノズルの間の周方向位置を含み、
前記第1領域の前記周方向における延在範囲は、前記ノズルの位置に対応する周方向位置を含む。
【0017】
上記(6)の構成によると、ノズルの位置に対応する周方向位置から供給される空気の流量よりもノズル間の周方向位置から供給される空気の流量が大きくなり、ノズル間の周方向位置の下流で保炎が阻害される。ノズル間の下流の領域では予混合気の混合状態が比較的悪いので、この領域で保炎が行われると、局所的な火炎温度の上昇に起因したNOxの発生量の増加が起こりやすい。このため、この領域での保炎を阻害することにより、NOxの発生量の増加を抑制することができる。
【0018】
(7)いくつかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、
燃焼器は、
前記上流側壁部と前記保炎リングとの間の前記環状空間内において軸方向に沿って延在し、該環状空間を、前記第1領域に対応した第1空間と前記第2領域に対応した第2空間とに仕切る少なくとも1つの仕切部材をさらに備える。
【0019】
上記(7)の構成によると、仕切部材は、第2空間内を流れる空気が第1空間に流れ込んで第2空間内の空気量が減少することを抑制する。これにより、空気流量の周方向に対する分布が維持されて、保炎リングによる保炎効果を周方向において不均一にすることができる。
【0020】
(8)いくつかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの構成において、
燃焼器は、
前記保炎リングを下流端に有するパイロットコーンと、
前記パイロットコーンの外周側、且つ、前記複数のノズルの前記出口部の内周側に設けられる冷却リングと、をさらに備え、
前記パイロットコーンと前記冷却リングとの間に隙間が形成される。
【0021】
上記(8)の構成によると、パイロットコーンと冷却リングとの間の隙間を空気が流れることにより、パイロットコーン及び保炎リングを冷却することができる。
【0022】
(9)いくつかの実施形態では、上記(8)の構成において、
前記保炎リングは、前記第2領域の下流側に位置する第1開口を含み、
前記冷却リングの外周側、且つ、前記複数のノズルの前記出口部の内周側の空間を介して、前記上流側壁部の前記空気入口と前記保炎リングの前記第1開口とが連通する。
【0023】
上記(9)の構成によると、上流側壁部の第2領域の下流側に位置するように保炎リングに第1開口を設け、冷却リングの外周側、且つ、複数のノズルの出口部の内周側の空間を介して、上流側壁部の空気入口と記保炎リングの第1開口とが連通するので、保炎リングの第1開口を介して、上流側壁部の第2領域からの比較的大流量の空気が保炎リングの下流側に導かれる。このため、保炎リングの第1開口が設けられた周方向領域において、保炎リングによる保炎を効果的に阻害し、保炎リングの保炎効果の周方向における不均一な分布を容易に実現できる。よって、予混合が十分でない保炎リングよりも上流側での燃焼をより一層抑制し、保炎を行いながら、局所的な火炎温度の上昇に起因したNOxの発生量の増加を効果的に抑制することができる。
【0024】
(10)いくつかの実施形態では、上記(8)又は(9)の構成において、
前記上流側壁部は、前記パイロットコーンと前記冷却リングとの間の前記隙間に開口する冷却空気取込口を有する。
【0025】
上記(10)の構成によると、冷却空気取込口を通った空気がパイロットコーンと冷却リングとの間の隙間を流れることにより、パイロットコーン及び保炎リングを冷却することができる。
【0026】
(11)いくつかの実施形態では、上記(8)乃至(10)の何れかの構成において、
前記パイロットコーンの前記下流端に位置する前記保炎リングは、前記第2領域の下流側に位置する第1開口を含み、
前記冷却リングは、前記保炎リングの上流側に位置するフランジ部を含み、
前記フランジ部は、前記保炎リングの前記第1開口に対応する第2開口を有する。
【0027】
上記(11)の構成によると、上流側壁部の第2領域の下流側に位置するように保炎リングに第1開口を設け、保炎リングの第1開口に対応するように冷却リングのフランジ部に第2開口を設けたので、保炎リングの第1開口及び冷却リングのフランジ部に第2開口を介して、上流側壁部の第2領域からの比較的大流量の空気が保炎リングの下流側に導かれる。このため、保炎リングの第1開口が設けられた周方向領域において、保炎リングによる保炎を効果的に阻害し、保炎リングの保炎効果の周方向における不均一な分布を容易に実現できる。よって、予混合が十分でない上流側での燃焼をより一層抑制し、保炎を行いながら、局所的な火炎温度の上昇に起因したNOxの発生量の増加を効果的に抑制することができる。
【0028】
(12)いくつかの実施形態では、上記(8)乃至(11)の何れかの構成において、
前記パイロットコーンと前記冷却リングとの間に前記隙間を形成するための少なくとも一つのスペーサ部を備える。
【0029】
上記(12)の構成によると、簡単かつ確実に、パイロットコーンと冷却リングとの間に隙間を形成することができ、この隙間に空気が流れることにより、パイロットコーン及び保炎リングを冷却することができる。
【0030】
(13)いくつかの実施形態では、上記(12)の構成において、
前記冷却リングは、前記保炎リングの上流側に位置するフランジ部を含み、
前記フランジ部は、前記保炎リングの前記第1開口に対応する第2開口を有し、
前記少なくとも一つのスペーサ部は、前記保炎リングに向かって下流側に突出するように前記フランジ部に設けられた複数の凸部を含み、
前記複数の凸部は、前記周方向において、前記フランジ部の各々の前記第2開口の両側に位置する一対の凸部を含む。
【0031】
上記(13)の構成によると、保炎リングとフランジ部との間に周方向にわたって均一な間隙を形成することができるので、パイロットコーン及び保炎リングを均一に冷却することができる。
【0032】
(14)本発明の少なくとも1つの実施形態に係る燃焼器は、
周方向に設けられた複数のノズルと、
前記複数のノズルの出口部の内周側において前記周方向に延在する保炎リングと、を備え、
前記保炎リングは、前記周方向にて隣り合う一対の前記ノズルの間の周方向位置にそれぞれ設けられた複数の切欠きを前記保炎リングの外周縁部に有し、
前記保炎リングの各々の前記切欠きは、前記周方向において、隣り合う一対の前記ノズルの間にて前記出口部に設けられた隔壁の下流側端部よりも幅広であり、
前記保炎リングの各々の前記切欠きの径方向における切欠き深さは、前記周方向における前記切欠きの中央部に比べて、前記周方向における前記切欠きの両端部の方が小さい。
【0033】
上記(14)の構成によると、周方向にて隣り合う一対のノズルの間の周方向位置において切欠きが形成された部分では保炎能力が小さいか又は保炎されない一方、切欠きが形成されていないか又は切欠きの切欠き深さが小さい部分では保炎が行われるので、保炎リングの保炎効果の周方向における不均一な分布を容易に実現できる。よって、予混合が十分でない上流側での燃焼を抑制し、保炎を行いながら、局所的な火炎温度の上昇に起因したNOxの発生量の増加を抑制することができる。
【0034】
また、上記(14)の構成によると、切欠きは隔壁の下流側端部よりも幅広であるので、隔壁の下流側端部の下流の領域で保炎が阻害される。隔壁の下流側端部の下流の領域では予混合気の混合状態が比較的悪いので、この領域で保炎が行われると、局所的な火炎温度の上昇に起因したNOxの発生量の増加が起こりやすい。このため、この領域での保炎を阻害することにより、NOxの発生量の増加を抑制することができる。
【0035】
さらに、上記(14)の構成によると、切欠きの径方向における切欠き深さは、周方向における切欠きの中央部に比べて、周方向における切欠きの両端部の方が小さいので、周方向に対して切欠きの両端部から中央部に向かって保炎能力が小さくなる。これにより、隔壁に対応する周方向位置の下流において確実に保炎を阻害することができる。
【0036】
(15)いくつかの実施形態では、上記(14)の構成において、
前記切欠きは、前記隔壁の前記下流側端部の周方向位置において、前記切欠き深さが最大である。
【0037】
上記(15)の構成によると、隔壁の下流側端部の周方向位置において保炎能力が最低になるので、隔壁に対応する周方向位置の下流において確実に保炎を阻害することができる。
【0038】
(16)いくつかの実施形態では、上記(14)又は(15)の構成において、
前記切欠きが、前記保炎リングの内周縁よりも外周側に設けられる。
【0039】
上記(16)の構成によると、前記保炎リングの外周縁から内周縁まで切欠かれた切欠きと比べて開口面積が小さくなるので、切欠きを流れる空気の流量を抑制することができる。切欠きを流れる空気の流量が大きいと、燃焼に使用される空気の量が低下してしまうが、上記(16)の構成では、切欠きを流れる空気の流量を抑制することによって、NOxの発生量の増加を抑制することができる。
【0040】
(17)いくつかの実施形態では、上記(14)乃至(16)の何れかの構成において、
前記切欠きの最大の切欠き深さは、前記保炎リングの径方向に関して前記外周縁から前記内周縁までの距離の2/3以下である。
【0041】
上記(17)の構成によると、切欠きが外周縁から内周縁まで切欠かれたものと比べて切欠きを流れる空気の流量が抑制されるので、NOxの発生量の増加を抑制することができる。
【0042】
(18)いくつかの実施形態では、上記(14)乃至(17)の何れかの構成において、
前記保炎リングの上流側において前記周方向に延在し、前記複数のノズルの前記出口部の内周側の環状空間を介して前記保炎リングに向かう空気流を形成するための複数の空気入口を有する上流側壁部をさらに備え、
前記上流側壁部は、
第1領域と、
前記保炎リングの前記切欠きの上流側において前記第1領域に対して前記周方向にずれた位置に設けられ、前記第1領域よりも前記空気入口の形成密度が高い第2領域と、
を含む。
【0043】
上記(18)の構成によると、保炎リングの上流側に位置する上流側壁部において、第1領域よりも空気入口の形成密度が相対的に高い第2領域を設けたので、上流側壁部の空気入口を介して保炎リングに向けて供給される空気流量は周方向において分布を有する。このため、第1領域に対応した周方向領域では保炎リングの下流側の低流速域にて保炎される一方、第2領域に対応した周方向領域では上流側壁部から供給される空気の流れによって保炎が阻害される結果、保炎リングによる保炎効果は周方向において不均一となる。このため、予混合が十分でない上流側での燃焼を少なくとも一部の周方向領域において抑制し、保炎を行いながら、局所的な火炎温度の上昇に起因したNOxの発生量の増加を効果的に抑制することができる。
【0044】
(19)本発明の少なくとも1つの実施形態に係るガスタービンは、
上記(1)乃至(18)の何れかの燃焼器と、
前記燃焼器からの燃焼ガスによって駆動されるように構成されたタービンと、を備える。
【0045】
上記(19)の構成によると、燃焼器から発生するNOxの量を低減できるので、NOxの発生量を低減可能なガスタービンを実現できる。