特許第6934372号(P6934372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ダイセルの特許一覧

<>
  • 特許6934372-ガス発生器 図000002
  • 特許6934372-ガス発生器 図000003
  • 特許6934372-ガス発生器 図000004
  • 特許6934372-ガス発生器 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6934372
(24)【登録日】2021年8月25日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】ガス発生器
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/264 20060101AFI20210906BHJP
   B01J 7/00 20060101ALI20210906BHJP
【FI】
   B60R21/264
   B01J7/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-170198(P2017-170198)
(22)【出願日】2017年9月5日
(65)【公開番号】特開2019-42695(P2019-42695A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】福本 健二
【審査官】 鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0046161(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/079710(WO,A1)
【文献】 米国特許第05372380(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 7/00
B60R 21/16−21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状ハウジング内に点火器と、前記点火器により着火燃焼されるガス発生剤が収容された燃焼室が配置され、さらに筒状ハウジングに対して前記燃焼室内で発生する燃焼ガスを排出するためのガス排出口を有しているディフューザ部が接続されているガス発生器であって、
前記ディフューザ部が、底面部、ガス排出口を有する周壁部および開口部を有しているカップ形状のものであり、
前記ディフューザ部内には、前記ガス排出口を内側から覆った筒状フィルタが配置されており、
前記筒状フィルタが、第1環状端面部が前記ディフューザ部の底面部に当接され、前記第1環状端面部と軸方向に反対側の第2環状端面部が前記ディフューザ部の開口部側になるように配置されており、さらに前記第1環状端面部から内側斜め方向に伸ばされた環状傾斜面部を有しているものであり
記ディフューザ部の底面部と前記環状傾斜面部により囲まれた、燃焼ガスに含まれている燃焼残渣の捕捉空間を有しているものである、ガス発生器。
【請求項2】
筒状ハウジング内に点火器と、前記点火器により着火燃焼されるガス発生剤が収容された燃焼室が配置され、さらに筒状ハウジングに対して、前記燃焼室内で発生する燃焼ガスを排出するためのガス排出口を有しているディフューザ部が接続されているガス発生器であって、
前記ディフューザ部が、底面部、ガス排出口を有する周壁部および開口部を有しているカップ形状のものであり、
前記ディフューザ部内には、前記ガス排出口を内側から覆って筒状フィルタが配置されており、
前記筒状フィルタが、第1環状端面部が前記ディフューザ部の底面部に当接され、前記第1環状端面部と軸方向に反対側の第2環状端面部が前記ディフューザ部の開口部側に位置するように配置されているものであり、
前記ディフューザ部の筒状フィルタの内側には、開口部と、複数の貫通孔が形成されたドーム部を有するドーム体が、前記ドーム部が前記ディフューザ部の内側を向き、開口部に接するドーム部の下端部が前記筒状フィルタの第1環状端面部側の内側周面部に当接されて配置されており、
前記ディフューザ部の底面部と前記ドーム体により囲まれた、燃焼ガスに含まれている燃焼残渣の捕捉空間を有しているものである、ガス発生器。
【請求項3】
前記筒状フィルタの第1端部に点火器が取り付けられ、前記第1端部とは軸方向反対側の第2端部にディフューザ部が形成されており、内部空間にガス発生剤が収容された燃焼室が配置されているものである、請求項1または2記載のガス発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車など車両のエアバッグ装置用として使用できるガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
乗員の側面にエアバッグを展開させる装置などに使用されるガス発生器は、ガス発生源としてガス発生剤を使用しているものが汎用されている。
ガス発生剤が燃焼して生じる燃焼ガス中には、前記ガス発生剤に含まれている金属成分に由来する高温状態の燃焼残渣が含まれているが、ガス発生器から排出された燃焼残渣がガス発生器外部に流出すると、エアバッグが損傷するなどのおそれもあるため、ガス発生器から排出される燃焼残渣量をできるだけ抑制することが望ましい。
特許文献1の発明には、作動時に発生した破裂板の破片を捕捉するための技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−58984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ガス発生剤から生じる燃焼ガスに含まれている金属成分由来の燃焼残渣の捕捉性能が優れているガス発生器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明(第1実施形態)は、筒状ハウジング内に点火器と、前記点火器により着火燃焼されるガス発生剤が収容された燃焼室が配置され、さらに筒状ハウジングに対して前記燃焼室内で発生する燃焼ガスを排出するためのガス排出口を有しているディフューザ部が接続されているガス発生器であって、
前記ディフューザ部が、底面部、ガス排出口を有する周壁部および開口部を有しているカップ形状のものであり、
前記ディフューザ部内には、前記ガス排出口を内側から覆った筒状フィルタが配置されており、
前記筒状フィルタが、第1環状端面部が前記ディフューザ部の底面部に当接され、前記第1環状端面部と軸方向に反対側の第2環状端面部が前記ディフューザ部の開口部側になるように配置されており、さらに前記第1環状端面部から内側斜め方向に伸ばされた環状傾斜面部を有しているものであり、
前記環状傾斜面部、前記ディフューザ部の底面部と前記環状傾斜面部により囲まれた、燃焼ガスに含まれている燃焼残渣の捕捉空間を有しているものである、ガス発生器を提供する。
【0006】
本発明のガス発生器は、筒状フィルタが配置されたディフューザ部の内部に燃焼ガスに含まれている燃焼残渣の捕捉部を有していることが特徴の発明である。
本発明のガス発生器は、ガス発生源としてガス発生剤のみを使用するパイロ式のガス発生剤のほか、ガス発生源としてガス発生剤と加圧ガスを併用するハイブリッド式のガス発生器にも適用することができる。以下において説明する他の実施形態のガス発生器においても同様である。
また本発明のガス発生器は、
筒状ハウジングの第1端部側に点火器が配置され、反対側の第2端部にディフューザ部が接続され、内部空間にガス発生剤が収容された燃焼室が配置されたガス発生器A、
筒状ハウジングの第1端部側に第1点火器と第1ガス発生剤が収容された第1燃焼室が配置され、筒状ハウジングの第2端部側に第2点火器と第2ガス発生剤が収容された第2燃焼室が配置され、筒状ハウジングの中間位置にディフューザ部が接続されたガス発生器B、
前記ガス発生器Bにおいて、第1燃焼室と第2燃焼室のいずれか一方が加圧ガス室であるガス発生器Cのいずれかの形態のガス発生器に適用することができる。以下において説明する他の実施形態のガス発生器においても同様である。
なお、ガス発生器Aは、深絞り成形などの方法により筒状ハウジングの第2端部側が予め閉塞された筒状ハウジングを使用することもできる。その場合には、前記閉塞された第2端部側にガス排出口が形成されることによってディフューザ部として機能させるようにすることもできる。
【0007】
燃焼残渣の捕捉空間は、前記環状傾斜面部と前記ディフューザ部の底面部により囲まれた空間である。
筒状フィルタは、筒状本体部と、筒状本体部の第1環状端面に形成された環状傾斜面部を有しているものであり、環状傾斜面部は、筒状本体部の第1環状端面部が内側に折り曲げられたり、内側に向いて突出する環状の突起が形成されたりしているものが好ましいが、筒状本体部の第1環状端面と別部材のものが組み合わされたものでもよい。
筒状本体部は、ディフューザの周壁部の内周面に当接されていてもよいし、離れていてもよい(筒状本体部とディフューザ周壁部との間に環状の空間が形成されていてもよい)。
筒状フィルタの第1環状端面部(筒状本体部と環状傾斜面部の境界部)はディフューザ部の底面部に当接されているため、環状傾斜面部は第1環状端面部からディフューザ部の内側斜め方向に伸ばされている。
このため、ディフューザ部の底面部と環状傾斜面部により囲まれた燃焼残渣の捕捉空間は、環状傾斜面部で囲まれた穴のみによりディフューザ部の内部と連通されている。
【0008】
ガス発生器の作動時、燃焼室内に発生した燃焼残渣を含む燃焼ガスは、燃焼室からディフューザ部の内部に流入した後、その一部が筒状フィルタを通過してガス排出口から排出される。このとき、燃焼残渣は筒状フィルタの筒状本体部により捕捉される。
また、ディフューザ部内に流入した燃焼残渣を含む燃焼ガスの残部は、筒状フィルタの環状傾斜面部の外側面(筒状フィルタの筒状本体部で囲まれた空間に面する面)に衝突する。このとき燃焼ガス中に含まれる燃焼残渣は環状傾斜面部に捕捉されるほか、環状傾斜面部で囲まれた穴(捕捉空間の入口)から燃焼残渣の捕捉空間内に燃焼ガスとともに入り、ディフューザ部の底面部に衝突して捕捉され、さらに環状傾斜面部の内側面(捕捉空間に面した内側面)と底面部の間でも捕捉され、そのまま捕捉空間内にて保持される。
捕捉空間に入った燃焼ガスは、捕捉空間から出た後、筒状フィルタを通ってガス排出口から排出される過程で再度残った燃焼残渣が捕捉される。しかし捕捉空間から燃焼ガスが排出されても、捕捉空間に捕捉された燃焼残渣は、環状傾斜面部により捕捉空間の入口から流出しにくくなっている。
このように本願発明のガス発生器では、燃焼残渣の捕捉手段が筒状フィルタのみの実施形態と比べると、より多量の燃焼残渣を捕捉することができるため、ガス排出口から排出される燃焼残渣量を著しく減少させることができる。
つまり本願発明のガス発生器は、軸方向に流れてきた燃焼ガスに対して衝突面によって流れが変わる部分に捕捉空間を形成した構造である。よって捕捉空間はディフューザ部の底面部側に形成されており、前記捕捉空間に対向する開口部側から燃焼ガスがディフューザ部に流入する構造になっている。以下に述べる実施形態であってもこの点は同様である。
【0009】
本発明(第2実施形態)は、筒状ハウジング内に点火器と、前記点火器により着火燃焼されるガス発生剤が収容された燃焼室が配置され、さらに筒状ハウジングに対して、前記燃焼室内で発生する燃焼ガスを排出するためのガス排出口を有しているディフューザ部が接続されているガス発生器であって、
前記ディフューザ部が、底面部、ガス排出口を有する周壁部および開口部を有しており、前記底面部の内側面に凹部を有しているカップ形状のものであり、
前記ディフューザ部内には、前記ガス排出口を内側から覆った筒状フィルタが配置されており、
前記筒状フィルタが、第1環状端面部が前記ディフューザ部の底面部に当接され、前記第1環状端面部と軸方向に反対側の第2環状端面部が前記ディフューザ部の開口部側になるように配置されており、さらに前記第1環状端面部から半径方向内側に伸ばされた環状面部を有し、前記環状面部の内周縁が前記凹部の内周面よりも内側に突出しているものであり、
前記環状面部、前記ディフューザ部の底面部に形成された凹部と前記環状面部により囲まれた、燃焼ガスに含まれている燃焼残渣の捕捉空間を有しているものである、ガス発生器を提供する。
【0010】
第2実施形態のガス発生器は、燃焼残渣の捕捉部の形態が異なるほかは第1実施形態のガス発生器と同じものである。
燃焼残渣の捕捉空間は、ディフューザ部の底面部の内側面に形成された凹部および環状面部により囲まれた空間からなるものである。
【0011】
環状面部は、筒状フィルタの第1環状端面部から半径方向内側に伸ばされたものである。
ディフューザ部の底面部に形成された凹部は、ディフューザ部の底面部の中心に形成されたものである。ディフューザ部の凹部と周壁部の境界部は、底面部の一部をなす環状段差部となっており、前記環状段差部に筒状フィルタの第1環状端面部が当接されている。そして筒状フィルタの環状面部は、その内周縁が前記凹部の内周面(環状段差部)よりも内側に突出し、凹部を覆うように配置されている。したがって凹部の内径は、筒状フィルタの環状面部の内周縁によって形成される穴の内径よりも大きい。
筒状フィルタの環状面部が半径方向内側に伸ばされたものであるため、環状面部と凹部で囲まれた燃焼残渣の捕捉空間は、環状面部で囲まれた穴(捕捉空間の入口)のみによりディフューザ部の内部と連通されている。
【0012】
ガス発生器の作動時、燃焼室内に発生した燃焼残渣を含む燃焼ガスは、燃焼室からディフューザ部の内部に流入した後、その一部が筒状フィルタを通過してガス排出口から排出される。このとき、燃焼残渣は筒状フィルタの筒状本体部により捕捉される。
また、ディフューザ部内に流入した燃焼残渣を含む燃焼ガスの残部は、筒状フィルタの環状面部の外側面(筒状フィルタの筒状本体部で囲まれた空間に面する面)に衝突する。このとき燃焼ガス中の燃焼残渣は環状面部に捕捉されるほか、環状面部の穴(捕捉空間の入口)から燃焼残渣の捕捉空間内に燃焼ガスとともに入り、ディフューザ部の底面部に衝突して捕捉され、さらに環状面部の内側面(捕捉空間に面した内側面)と底面部の間でも捕捉され、そのまま捕捉空間内にて保持される。
捕捉空間に入った燃焼ガスは、捕捉空間から出た後、筒状フィルタを通ってガス排出口から排出される過程で再度残った燃焼残渣が捕捉される。しかし捕捉空間から燃焼ガスが排出されても、捕捉空間に捕捉された燃焼残渣は、環状面部により捕捉空間の入口から流出しにくくなっている。
このように本願発明のガス発生器では、燃焼残渣の捕捉手段が筒状フィルタのみの実施形態と比べると、より多量の燃焼残渣を捕捉することができるため、ガス排出口から排出される燃焼残渣量を著しく減少させることができる。
【0013】
本発明(第3実施形態)は、筒状ハウジング内に点火器と、前記点火器により着火燃焼されるガス発生剤が収容された燃焼室が配置され、さらに筒状ハウジングに対して、前記燃焼室内で発生する燃焼ガスを排出するためのガス排出口を有しているディフューザ部が接続されているガス発生器であって、
前記ディフューザ部が、底面部、ガス排出口を有する周壁部および開口部を有しているカップ形状のものであり、
前記ディフューザ部内には、前記ガス排出口を内側から覆った筒状フィルタが配置されており、
前記筒状フィルタが、第1環状端面部が前記ディフューザ部の底面部に当接され、前記第1環状端面部と軸方向に反対側の第2環状端面部が前記ディフューザ部の開口部側に位置するように配置されているものであり、
前記筒状フィルタの第1環状端面部側の内側周面部に当接されて網状成形体が配置されており、
前記網状成形体が、前記筒状フィルタよりも密度が小さいもので、前記燃焼ガスに含まれている燃焼残渣の捕捉空間を形成しているものである、ガス発生器を提供する。
【0014】
第3実施形態のガス発生器は、燃焼残渣の捕捉空間の形態が異なるほかは第1実施形態のガス発生器と同じものである。
第3実施形態のガス発生器では、筒状フィルタの第1環状端面部側の内側周面部に当接されて配置された網状成形体で囲まれた範囲が捕捉空間となっている。
網状成形体は、筒状フィルタよりも密度が小さく、燃焼ガスが侵入し易いものを使用する。網状成形体は、ステンレス、鉄、銅などの金属からなる線材または網材を成形したものを使用することができる。
捕捉空間を形成している網状成形体は、筒状フィルタよりも密度が小さく、燃焼ガスが侵入し易いものであれば、筒状フィルタと一体成形体されたものでもよい。
【0015】
ガス発生器の作動時、燃焼室内に発生した燃焼残渣を含む燃焼ガスは、燃焼室からディフューザ部の内部に流入した後、その一部が筒状フィルタを通過してガス排出口から排出される。このとき、燃焼残渣は筒状フィルタの筒状本体部により捕捉される。
また、ディフューザ部内に流入した燃焼残渣を含む燃焼ガスの残部は、網状成形体内に侵入して、燃焼残渣が網状成形体と底面部の両方により捕捉される。
網状成形体に入った燃焼ガスは、網状成形体から出た後、筒状フィルタを通ってガス排出口から排出される過程で再度残った燃焼残渣が捕捉される。しかし網状成形体から燃焼ガスが排出されても、網状成形体に引っかかって捕捉された燃焼残渣は、流出しにくくなっている。
このように本願発明のガス発生器では、燃焼残渣の捕捉手段が筒状フィルタのみの実施形態と比べると、より多量の燃焼残渣を捕捉することができるため、ガス排出口から排出される燃焼残渣量を著しく減少させることができる。
【0016】
本発明(第4実施形態)は、筒状ハウジング内に点火器と、前記点火器により着火燃焼されるガス発生剤が収容された燃焼室が配置され、さらに筒状ハウジングに対して、前記燃焼室内で発生する燃焼ガスを排出するためのガス排出口を有しているディフューザ部が接続されているガス発生器であって、
前記ディフューザ部が、底面部、ガス排出口を有する周壁部および開口部を有しているカップ形状のものであり、
前記ディフューザ部内には、前記ガス排出口を内側から覆って筒状フィルタが配置されており、
前記筒状フィルタが、第1環状端面部が前記ディフューザ部の底面部に当接され、前記第1環状端面部と軸方向に反対側の第2環状端面部が前記ディフューザ部の開口部側に位置するように配置されているものであり、
前記ディフューザ部の筒状フィルタの内側には、開口部と、複数の貫通孔が形成されたドーム部を有するドーム体が、前記ドーム部が前記ディフューザ部の内側を向き、開口部に接するドーム部の下端部が前記筒状フィルタの第1環状端面部側の内側周面部に当接されて配置されており、
前記ディフューザ部の底面部と前記ドーム体により囲まれた、燃焼ガスに含まれている燃焼残渣の捕捉空間を有しているものである、ガス発生器を提供する。
【0017】
第4実施形態のガス発生器は、燃焼残渣の捕捉部の形態が異なるほかは第3実施形態のガス発生器と同じものである。
燃焼残渣の捕捉空間は、ディフューザ部の底面部とドーム体で囲まれた空間からなるものである。
ドーム体は、半球またはそれに類似した形状のものであり、多数の貫通孔を有しているものである。前記貫通孔は、燃焼残渣を含む燃焼ガスが通過できる大きさのものである。ドーム体は、ステンレスや鉄からなるものが好ましい。
【0018】
ガス発生器の作動時、燃焼室内に発生した燃焼残渣を含む燃焼ガスは、燃焼室からディフューザ部の内部に流入した後、その一部が筒状フィルタを通過してガス排出口から排出される。このとき、燃焼残渣は筒状フィルタの筒状本体部により捕捉される。
また、ディフューザ部内に流入した燃焼残渣を含む燃焼ガスの残部は、ドーム体の外側面に衝突する。このとき燃焼残渣はドーム体の外側面に捕捉されるほか、ドーム体の貫通孔から燃焼残渣の捕捉空間内に入り、ディフューザ部の底面部に衝突して捕捉され、さらにドーム体の内側面(捕捉空間に面した内側面)とドーム体と底面部の間でも捕捉された後、そのまま捕捉空間内にて保持される。
捕捉空間に入った燃焼ガスは、ドーム体の貫通孔を通って捕捉空間から出た後、筒状フィルタを通ってガス排出口から排出される過程で再度残った燃焼残渣が捕捉される。しかし捕捉空間から燃焼ガスが排出されても、捕捉空間に捕捉された燃焼残渣は、ドーム体により捕捉空間から流出しにくくなっている。
このように本願発明のガス発生器では、燃焼残渣の捕捉手段が筒状フィルタのみの実施形態と比べると、より多量の燃焼残渣を捕捉することができるため、ガス排出口から排出される燃焼残渣量を著しく減少させることができる。
【0019】
第1実施形態〜第4実施形態のガス発生器は、前記筒状フィルタの第1端部に点火器が取り付けられ、前記第1端部とは軸方向反対側の第2端部にディフューザ部が接続されており、内部空間にガス発生剤が収容された燃焼室が配置されているものであることが好ましい。
本発明のガス発生器は、上記したガス発生器A、B、Cの内、ガス発生器Aが好適である。
【発明の効果】
【0020】
本発明のガス発生器は、ガス発生源であるガス発生剤の燃焼により生じた燃焼ガスに含まれている燃焼残渣を捕捉することで、ガス排出口から排出される燃焼残渣量を著しく減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のガス発生器の軸方向の断面図。
図2図1とは別実施形態のガス発生器の部分断面図。
図3図1図2とは別実施形態のガス発生器の部分断面図。
図4図1図3とは別実施形態のガス発生器の部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(1)図1のガス発生器1
筒状ハウジング10の第1端部11の開口部には、公知のガス発生器で使用しているものと同じ点火器15が取り付けられている。
なお、点火器15と燃焼室20の間には、必要に応じてエンハンサ剤が収容されたエンハンサ室を設けることもできる。エンハンサ室は、例えば、ガス通過孔を有するカップ状隔壁を配置して形成することができる。
【0023】
燃焼室20には、公知のガス発生器で使用しているものと同じガス発生剤21が収容されている。
図1に示す実施形態では、ディフューザ部40側にカップ部材30が配置されているが、カップ状部材30がない実施形態でもよい。
カップ部材30は、カップ部材底面部31、カップ部材周壁部32、カップ部材開口部33、カップ部材フランジ部34を有しており、カップ部材周壁部32は複数の第1ガス通過孔32aを有している。
第1ガス通過孔32aは、ガス発生剤21が入り込まない大きさのものである。
カップ部材30は、カップ部材フランジ部34において筒状ハウジング10内に固定されており、フランジ部34はディフューザ部40に当接されている。
【0024】
ディフューザ部40は、筒状ハウジング10の第2端部12側の開口部を閉塞して取り付けられている。
ディフューザ部40は、底面部41、周壁部42、開口部43、開口部43に形成されたフランジ部44、フランジ部44に形成された段差部45を有しているカップ形状のものであり、周壁部42に複数のガス排出口42aが形成されている。
図1に示す実施形態では、ディフューザ部40のフランジ部44の段差部45に環状板50が配置され、溶接固定されている。環状板50は、中心部に一つの第2ガス通過孔51を有している。
第2ガス通過孔51は、筒状フィルタ60の筒状本体部61で囲まれた内部空間52にのみ連通されている。よって燃焼ガスの全量が筒状本体部61で囲まれた内部空間52に供給される。
第2ガス通過孔51は、防湿目的でディフューザ部40側からシールテープが貼り付けられている。
【0025】
ディフューザ部40内には、ガス排出口42aを内側から覆った筒状フィルタ60が配置されている。
筒状フィルタ60は、ガス排出口42aが形成された周壁部42に当接されていてもよいし、ガス排出口42aが形成された周壁部42との間に間隔をおいて配置されていてもよい。以下の図2図4の実施形態においても同様である。
筒状フィルタ60は、筒状本体部61の第1環状端面部61aがディフューザ部の底面部41の内側面に当接され、第1環状端面部61aと軸方向に反対側の第2環状端面部61bがディフューザ部の開口部43側に位置する環状板50に当接されている。
筒状フィルタ60は、さらに第1環状端面部61aから内側斜め方向に伸ばされた環状傾斜面部62を有している。
ディフューザ部の底面部41および環状傾斜面部62により囲まれた空間が捕捉空間65となっており、環状傾斜面部62の中心部の穴が捕捉空間の入口66となっている。
捕捉空間65の入口66と環状板50の一つの第2ガス通過孔51は、それぞれの中心軸が一致して、ハウジング10の軸方向に対向されているため、第2ガス通過孔51を通って筒状フィルタ60の筒状本体部61で囲まれた内部空間52内に入った燃焼残渣を含む燃焼ガスは、入口66から捕捉空間65内に入りやすくなる。
【0026】
次に図1のガス発生器1をエアバッグ装置のガス発生器として使用した場合の動作を説明する。
点火器15が作動して燃焼室20内のガス発生剤21が着火燃焼され、燃焼ガスが発生する。
燃焼室20内で発生した燃焼ガスは高温状態の燃焼残渣(溶融状体の金属成分)を含んだ状態で、カップ部材30の第1ガス通過孔32a、環状板50の第2ガス通過孔51のみを通ってディフューザ部40内の筒状本体部61で囲まれた内部空間52に入る。
内部空間52内に入った燃焼残渣を含む燃焼ガスは、その一部が筒状フィルタ60(筒状本体部61)を通過してガス排出口42aから排出される。このとき、燃焼残渣は筒状フィルタ60により捕捉される。
また、内部空間52内に流入した燃焼残渣を含む燃焼ガスの残部は、筒状フィルタの環状傾斜面部62の外側面に衝突して燃焼残渣が捕捉される。
さらに燃焼残渣を含む燃焼ガスは捕捉空間の入口66から燃焼残渣の捕捉空間65内に入り易くなっているため、燃焼残渣はディフューザ部の底面部41に衝突して捕捉され、さらに環状傾斜面部62の内側面(捕捉空間65に面した内側面)と底面部41の間でも捕捉された後、そのまま捕捉空間65内にて保持される。
捕捉空間65に入った燃焼ガスは、捕捉空間65から出た後、筒状フィルタ60(筒状本体部61)を通ってガス排出口42aから排出される過程で残った燃焼残渣が捕捉される。ただし、燃焼ガスが捕捉空間から排出されるときは、環状傾斜面部62によって燃焼残渣は捕捉空間65の捕捉空間の入口66から流出しにくくなっている。
このように本願発明のガス発生器1では、燃焼残渣の捕捉手段が筒状フィルタのみの実施形態と比べると、より多量の燃焼残渣を捕捉することができるため、ガス排出口から排出される燃焼残渣量を著しく減少させることができる。
【0027】
(2)図2のガス発生器
図2のガス発生器1Aは、燃焼残渣の捕捉空間の構成が異なっているほかは図1のガス発生器1と同じものである。
ディフューザ部40Aは、底面部41、ガス排出口42aを有する周壁部42および開口部43を有しており、底面部41の内側面の中心に凹部46を有しているカップ形状のものである。
周壁部42と凹部46の間には凹部段差部(環状段差部)47が形成されている。
【0028】
ディフューザ部40内には、ガス排出口42aを内側から覆った筒状フィルタ160が配置されている。
筒状フィルタ160は、筒状本体部161の第1環状端面部161aが凹部段差部47に当接され、第1環状端面部161aと軸方向に反対側の第2環状端面部161bがディフューザ部の開口部43側に位置する環状板50に当接されており、さらに第1環状端面部161aから半径方向内側に伸ばされた環状面部162を有している。環状面部162の内周縁は、凹部46の内周面よりも内側に突き出されている。
ディフューザ部の底面部41に形成された凹部46と環状面部162により囲まれた空間が捕捉空間165となっており、環状面部162の中心部の穴が捕捉空間の入口166となっている。
捕捉空間165の入口166と環状板50の一つの第2ガス通過孔51は、それぞれの中心軸が一致して、ハウジング10の軸方向に対向されているため、第2ガス通過孔51を通って筒状フィルタ160の筒状本体部161で囲まれた内部空間52内に入った燃焼残渣を含む燃焼ガスは、入口166から捕捉空間165内に入り易くなっている。
【0029】
次に図2のガス発生器1Aをエアバッグ装置のガス発生器として使用した場合の動作を説明する。但し、図2には図示していないが図1と同じ部分は図1に沿って説明する。
点火器15が作動して燃焼室20内のガス発生剤21が着火燃焼され、燃焼ガスが発生する。
燃焼室20内で発生した燃焼ガスは燃焼残渣を含んだ状態で、カップ部材30の第1ガス通過孔32a、環状板50の第2ガス通過孔51を通ってディフューザ部40内の筒状本体部161で囲まれた内部空間52に入る。
内部空間52内に入った燃焼残渣を含む燃焼ガスは、その一部が筒状フィルタ160(筒状本体部161)を通過してガス排出口42aから排出される。このとき、燃焼残渣は筒状フィルタ160(筒状本体部161)により捕捉される。
また、内部空間52内に流入した燃焼残渣を含む燃焼ガスの残部は、筒状フィルタの環状面部162の外側面に衝突して、燃焼残渣が環状面部162に捕捉される。
さらに燃焼残渣を含む燃焼ガスは捕捉空間の入口166から燃焼残渣の捕捉空間165内に入り易くなっているため、燃焼残渣はディフューザ部の底面部41(凹部46)に衝突して捕捉され、さらに環状面部162の内側面(捕捉空間165に面した内側面)と底面部41の間でも捕捉された後、そのまま捕捉空間165内にて保持される。
捕捉空間165に入った燃焼ガスは、捕捉空間165から出た後、筒状フィルタ160(筒状本体部161)を通ってガス排出口42aから排出される過程で残った燃焼残渣が捕捉される。ただし燃焼ガスが捕捉空間から排出されるときは、環状面部162によって燃焼残渣は捕捉空間165の捕捉空間の入口166から流出しにくくなっている。
このように本願発明のガス発生器1Aでは、燃焼残渣の捕捉手段が筒状フィルタのみの実施形態と比べると、より多量の燃焼残渣を捕捉することができるため、ガス排出口から排出される燃焼残渣量を著しく減少させることができる。
【0030】
(3)図3のカップ状隔壁を有するガス発生器
図3のガス発生器1Bは、燃焼残渣の捕捉空間の構成が異なっているほかは図1のガス発生器1と同じものである。
筒状フィルタ260は、第1環状端面部261がディフューザ部の底面部41に当接され、第1環状端面部261と軸方向に反対側の第2環状端面部262がディフューザ部の開口部43側に位置する環状板50に当接されている。
【0031】
ディフューザ部の底面部41、筒状フィルタ260の第1環状端面部261側の内側周面部263に当接されて網状成形体265が配置されている。
網状成形体265は鉄製の網の積層体からなる、筒状フィルタ260よりも密度が小さい成形体であり、燃焼残渣を網状成形体265に付着させて捕捉する。網状成形体265で囲まれた範囲が燃焼残渣の捕捉空間となるものである。
捕捉空間となる網状成形体265と環状板50の一つの第2ガス通過孔51は、それぞれの中心軸が一致して、ハウジング10の軸方向に対向されているため、第2ガス通過孔51を通って筒状フィルタ260で囲まれた内部空間52内に入った燃焼残渣を含む燃焼ガスは、網状成形体265の内部に入り易くなっている。
【0032】
次に図3のガス発生器1Bをエアバッグ装置のガス発生器として使用した場合の動作を説明する。但し、図3には図示していないが図1と同じ部分は図1に沿って説明する。
点火器15が作動して燃焼室20内のガス発生剤21が着火燃焼され、燃焼ガスが発生する。
燃焼室20内で発生した燃焼ガスは燃焼残渣を含んだ状態で、カップ部材30の第1ガス通過孔32a、環状板50の第2ガス通過孔51を通ってディフューザ部40内の筒状フィルタ260で囲まれた内部空間52に入る。
内部空間52内に入った燃焼残渣を含む燃焼ガスは、その一部が筒状フィルタ260を通過してガス排出口42aから排出される。このとき、燃焼残渣は筒状フィルタ260により捕捉される。
また、内部空間52内に流入した燃焼残渣を含む燃焼ガスの残部は、網状成形体265の内部に入り易くなっているため、そこで燃焼残渣が捕捉される。
網状成形体(捕捉空間)265に入った燃焼ガスは、網状成形体265から出た後、筒状フィルタ260を通ってガス排出口42aから排出される過程で残った燃焼残渣が捕捉される。ただし燃焼ガスが網状成形体265から排出されるときは、燃焼残渣は網状成形体265に付着した状態となり、流出しにくくなっている。
このように本願発明のガス発生器1Bでは、燃焼残渣の捕捉手段が筒状フィルタのみの実施形態と比べると、より多量の燃焼残渣を捕捉することができるため、ガス排出口から排出される燃焼残渣量を著しく減少させることができる。
【0033】
(4)図4のガス発生器
図4のガス発生器1Cは、網状成形体265に代えてドーム体360を使用しているほかは、図3のガス発生器1Bと同じものである。
ディフューザ部40の筒状フィルタ260の内側には、ドーム体360が配置されている。ドーム体360は複数の貫通孔363を有するドーム部361と開口部362を有する。ドーム体360は鉄製のものである。
ドーム体360は、ドーム部361がディフューザ部40の内側を向き、開口部362に接するドーム部361の下端部が筒状フィルタ260の第1環状端面部261側の内側周面部263に当接されている。
ディフューザ部の底面部41およびドーム体360で囲まれた空間が捕捉空間364となる。
捕捉空間となるドーム体360と環状板50の一つの第2ガス通過孔51は、それぞれの中心軸が一致して、ハウジング10の軸方向に対向されているため、第2ガス通過孔51を通って筒状フィルタ260で囲まれた内部空間52内に入った燃焼残渣を含む燃焼ガスは、ドーム体360に衝突し、かつ貫通孔363から捕捉空間364に入り易くなっている。
【0034】
次に図4のガス発生器1Cをエアバッグ装置のガス発生器として使用した場合の動作を説明する。但し、図4には図示していないが図1と同じ部分は図1に沿って説明する。
点火器15が作動して燃焼室20内のガス発生剤21が着火燃焼され、燃焼ガスが発生する。
燃焼室20内で発生した燃焼ガスは燃焼残渣を含んだ状態で、カップ部材30の第1ガス通過孔32a、環状板50の第2ガス通過孔51を通ってディフューザ部40内の内部空間52に入る。
内部空間52内に入った燃焼残渣を含む燃焼ガスは、その一部が筒状フィルタ260を通過してガス排出口42aから排出される。このとき、燃焼残渣は筒状フィルタ260により捕捉される。
また、内部空間52内に流入した燃焼残渣を含む燃焼ガスの残部はドーム部361の外側面に衝突して、燃焼残渣がドーム部361の外側面に捕捉される。
さらに内部空間52に流入した燃焼残渣を含む燃焼ガスはドーム部の貫通孔363から燃焼残渣の捕捉空間364内に入り易くなっているため、ディフューザ部の底面部41に衝突して捕捉され、ドーム部361の内側面(捕捉空間364に面した内側面)と底面部41の間でも捕捉された後、そのまま捕捉空間364内にて保持される。
捕捉空間364に入った燃焼ガスは、捕捉空間364から出た後、筒状フィルタ260を通ってガス排出口42aから排出される過程で残った燃焼残渣が捕捉される。ただし燃焼ガスが捕捉空間から排出されるときは、ドーム部361によって燃焼残渣は捕捉空間364から流出しにくくなっている。
このように本願発明のガス発生器1Cでは、燃焼残渣の捕捉手段が筒状フィルタのみの実施形態と比べると、より多量の燃焼残渣を捕捉することができるため、ガス排出口から排出される燃焼残渣量を著しく減少させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のガス発生器は、自動車に搭載するエアバッグ装置用のガス発生器として利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1、1A、1B、1C ガス発生器
10 筒状ハウジング
11 第1端部
12 第2端部
15 点火器
20 燃焼室
21 ガス発生剤
40 ディフューザ部
60、160、260 筒状フィルタ
265 網状成形体
360 ドーム体
図1
図2
図3
図4