(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに噛み合う凹凸を周面部に有する前記第1ロール及び第2ロールを回転させながら、両ロールの噛み合い部に前記第1シートを導入して凹凸形状に変形させる賦形工程を有し、
前記重ね合わせ工程においては、前記賦形工程によって凹凸形状に変形させた前記第1シートを、前記第1ロールの周面部上に保持しつつ搬送し、搬送中の前記第1シートに前記第2シートを重ね合わせ、前記超音波処理工程によって前記接合部を形成することで、前記第1シートにおける前記接合部以外の部分の少なくとも一部が、前記第2シート側とは反対側に突出した凸部を形成している複合シートを製造する、請求項1に記載の複合シートの製造方法。
前記押し当て部材を加熱し、加熱された該押し当て部材と前記第1ロールの凸部とを用いて、前記押し当て工程で前記第1シート及び前記第2シートの一方を加熱しながら前記接合部に前記貫通孔を形成する、請求項1〜4の何れか1項に記載の複合シートの製造方法。
互いに噛み合う凹凸を周面部に有する前記第1ロール及び第2ロールを有し、回転する両ロールの噛み合い部に導入された前記第1シートを凹凸形状に変形させる凹凸賦形部を備え、
前記超音波処理部においては、前記凹凸賦形部によって凹凸形状に変形させた状態の前記第1シート上に前記第2シートを重ね合わせた後、前記接合部を形成することによって、前記第1シートにおける前記接合部以外の部分の少なくとも一部が、前記第2シート側とは反対側に突出した凸部を形成している複合シートを製造する、請求項7に記載の複合シートの製造装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
先ず、本発明の複合シートの製造方法により製造される複合シートについて、
図1を参照しつつ説明する。
図1に示す複合シート10は、本発明の複合シートの製造方法により製造される複合シートの一例である。複合シート10は、
図1に示すように、第1シート1及び第2シート2が接合した多数の接合部4を有している。本実施形態では、複合シート10は、第1シート1における接合部4以外の部分の少なくとも一部が、第2シート2側とは反対側に突出した凸部5を形成している。複合シート10は、吸収性物品の表面シート等として好ましく用いられる。吸収性物品の表面シートとして用いられるときには、第1シート1が、着用者の肌側に向けられる面(以下、肌対向面ともいう)を形成し、第2シート2が、着用時に吸収体側に向けられる面(以下、非肌対向面ともいう)を形成する。
【0011】
凸部5及び接合部4は、
図1に示すように、複合シート10の面と平行な一方向である
図1中の第1方向Xに、交互に且つ一列をなすように配置されており、そのような列が、複合シート10の面と平行で且つ第1方向Xに直交する方向である
図1中の第2方向Yに、多列に形成されている。第2方向Yに互いに隣接する列における凸部5及び接合部4は、それぞれ、第1方向Xにずれて配置されており、より具体的には、第1方向Xに半ピッチずれて配置されている。尚、複合シート10において、前記第2方向Yは、製造時にシートが搬送されている搬送方向(MD,機械方向)と一致し、前記第1方向Xは、製造時における該搬送方向に直交する幅方向(CD)と一致している。
【0012】
第1シート1及び第2シート2は、シート材料から構成されている。シート材料としては、例えば不織布、織布及び編み地などの繊維シートや、フィルムなどを用いることができ、肌触り等の観点から繊維シートを用いることが好ましく、特に不織布を用いることが好ましい。第1シート1と第2シート2を構成するシート材料の種類は同じでもよく、あるいは異なっていてもよい。
【0013】
第1シート1及び第2シート2を構成するシート材料として不織布を用いる場合の不織布としては、例えば、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、メルトブローン不織布、レジンボンド不織布、ニードルパンチ不織布などが挙げられる。これらの不織布を2種以上組み合わせた積層体や、これらの不織布とフィルム等とを組み合わせた積層体を用いることもできる。第1シート1及び第2シート2を構成するシート材料として用いる不織布の坪量は、好ましくは10g/m
2以上、より好ましくは15g/m
2以上であり、また好ましくは40g/m
2以下、より好ましくは35g/m
2以下である。不織布の坪量は10g/m
2以上40g/m
2以下であることが好ましく、15g/m
2以上35g/m
2以下であることが更に好ましい。
【0014】
不織布を構成する繊維としては、各種の熱可塑性樹脂からなる繊維を用いることができる。不織布以外のシート材料としても、構成繊維や構成樹脂が、各種の熱可塑性樹脂からなるものが好ましく用いられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブデン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で又は2種以上のブレンド物として用いることができる。また、芯鞘型やサイド・バイ・サイド型などの複合繊維の形態で用いることができる。
【0015】
複合シート10は、
図1に示すように、第1シート1側の面に、第1方向X及び第2方向Yの両方向において凸部5に挟まれた多数の凹部3を有しており、個々の凹部3の底部に、貫通孔14を有する接合部4が形成されている。複合シート10は、全体として見ると、第1シート1側の面に、前記の凹部3と前記の凸部5とからなる起伏の大きな凹凸を有し、第2シート2側の面は、平坦であるか、又は第1シート1側の面に対して相対的に起伏が小さい略平坦面となっている。
【0016】
複合シート10における個々の接合部4は、
図2に示すように、前記第2方向Yに長い、略長方形状の平面視形状を有しており、それぞれの内側に貫通孔14が形成されている。貫通孔14は、一つの接合部4に一つのみ形成されていることが好ましく、接合部4の位置との関係において予め決められた特定の位置に形成されていることが好ましい。接合部4においては、第1シート1及び第2シート2の少なくとも一方を構成する熱融着性樹脂が溶融固化していることによって第1シート1と第2シート2とが接合している。第1シート1及び第2シート2が、不織布等の繊維シートから構成されている場合、接合部4においては、第1シート1及び第2シート2の構成繊維は、溶融するか溶融した樹脂に埋没して、目視においては繊維状の形態を観察できないこと、すなわち外観上フィルム化した状態となっていることが好ましい。複合シート10は、凹凸を有する上に凹部の底部に、貫通孔14を有する接合部4を有するため、肌触りや平面方向における液の拡散防止性に優れており、また通気性や液の引き込み性にも優れている。複合シート10は、斯かる特性を生かして、使い捨ておむつ等の吸収性物品の表面シートとして好ましく用いられるが、複合シート10の用途はそれに限られるものではない。
【0017】
次に、本発明の複合シートの製造方法を、前述した複合シート10の製造方法を例にとり
図3〜
図6を参照して説明する。
図3には、
図1に示す複合シート10を製造する好ましい一実施形態の製造装置20(以下「製造装置20」ともいう)が示されている。複合シート10の製造方法を説明するにあたり、先に製造装置20を説明する。
【0018】
製造装置20は、
図3に示すように、超音波振動を印加して第1シート1と第2シート2とを接合する接合部4を形成する超音波処理部40、及び、接合部4で接合された両シート1,2を押し当て部材で第1ロール31の周面に押し当てる押し当て部70を備えている。また製造装置20は、好ましくは、互いに噛み合う凹凸を周面部有する第1ロール31及び第2ロール32の噛み合い部33に導入された第1シート1を凹凸形状に変形させる凹凸賦形部30を備えている。更に製造装置20は、好ましくは、製造された複合シート10を第1ロール31から引き剥がすターンロール50を備えている。以下、製造装置20について詳述する。
【0019】
凹凸賦形部30は、
図3に示すように、互いに噛み合う凹凸を周面部に有する第1ロール31及び第2ロール32を有している。
第1ロール31は、フレーム(図示せず)に軸周りに回転自在に支持されており、該第1ロール31を
図3に示す矢印R1方向に周速V1で回転させる駆動源(図示せず)に接続されている。第1ロール31は、
図4に示すように、所定の歯幅を有する平歯車31a,31b,・・を複数枚組み合わせてロール状に形成したものである。そして各平歯車31a,31b,・・の歯が、第1ロール31の周面部における凹凸形状の凸部35を形成している。凸部35の先端面35cは、接合対象である第1シート1及び第2シート2に対して、後述する超音波接合機41の超音波ホーン42が印可する超音波を受ける受け面となる。一方、超音波ホーン42は、第1ロール31の先端面35cと対向する対向面42tを有しており、該対向面42tは加圧面となっている。
【0020】
各歯車の歯幅(歯車の軸方向の長さ)は、複合シート10の凸部5における前記第1方向Xの寸法を決定し、各歯車の歯の厚み(歯車の回転方向の長さ)は、複合シート10の凸部5における前記第2方向Yの寸法を決定する。隣り合う歯車は、
図4に示すように、その歯のピッチが半ピッチずつずれるように組み合わされている。その結果、第1ロール31は、その周面部が凹凸形状となっている。製造装置20では、各凸部35の先端面35cは、第1ロール31の回転方向が長辺で、軸方向が短辺の矩形状となっている。先端面35cは回転方向の方が長い形状であると、第1ロール31の凸部35一つにおける超音波ホーン42の対向面42tとの接触時間を長くして温度を上げやすくすることができるので好ましい。また第1ロール31の幅方向に隣り合う該平歯車31a,31b・・間には、所定の空隙Gが設けられている。該空隙Gを設けることで、第1シート1に無理な伸長力を加えたり、両ロール31,32の噛み合い部33で、第1シート1を切断したりすることを抑制することができ、第1シート1を第1ロール31の周面に沿った形状に変形させ得るので好ましい。
【0021】
第1ロール31における各歯車の歯溝部は、
図4に示すように、第1ロール31の周面における凹凸の凹部を形成している。各歯車の歯溝部の底部には、吸引孔34が形成されている。吸引孔34は、ブロワや真空ポンプなどの吸引源(図示せず)に通じ、第1ロール31と第2ロール32との噛み合い部33から、第1シート1と第2シート2との合流部までの間で吸引が行われる様に制御されている。
【0022】
第2ロール32は、その周面が第1ロール31の周面と対向配置されると共にフレーム(図示せず)に軸周りに回転自在に支持されており、該第2ロール32を
図3に示す矢印R2方向に周速V1で回転させる駆動源(図示せず)に接続されている。第2ロール32は、周面部に、第1ロール31の周面部の凹凸と互いに噛み合う凹凸形状を有している。第2ロール32は、吸引孔34を有しない以外は、第1ロール31と同様の構成を有している。第2ロール32の周面部には、第1ロール31の凹部に挿入される複数の凸部が形成されているが、第2ロール32に、第1ロール31の凹部のすべてに対応する凸部が形成されていることは必須ではない。
【0023】
超音波処理部40は、
図3に示すように、超音波ホーン42を備えた超音波接合機41を備えている。超音波接合機41は、
図3及び
図5に示すように、超音波発振器(図示せず)、コンバーター43、ブースター44及び超音波ホーン42を有している。超音波発振器は、コンバーター43と電気的に接続されており、該超音波発振器により発生された周波数15kHz〜50kHz程度の波長の高電圧の電気信号が、コンバーター43に入力される。超音波発振器は、
図3に示すように、可動台45上又は可動台45外に設置されている。コンバーター43は、ピエゾ圧電素子等の圧電素子を内蔵し、超音波発振器から入力された電気信号を、圧電素子により機械的振動に変換する。ブースター44は、コンバーター43から発せられた機械的振動の振幅を調整、好ましくは増幅して超音波ホーン42に伝達する。
【0024】
超音波ホーン42は、アルミ合金やチタン合金などの金属でできており、使用する周波数で正しく共振するように設計されている。従って、ブースター44から超音波ホーン42に伝達された超音波振動は、超音波ホーン42の内部においても増幅されて、接合対象である第1シート1及び第2シート2に印加される。
【0025】
超音波ホーン42は、
図5及に示すように、第1ロール31に対向する対向面42tを有している。対向面42tは、該対向面42tを平面視した形状が、第1シート1及び第2シート2の搬送方向に対応する縦方向Yよりも該縦方向Yに直交する幅方向Wに長い長方形形状に形成されている。対向面42tの幅方向Wの長さは、超音波接合機41において超音波振動を印加する印加部36に搬送される第1シート1上に第2シート2を重ね合せた状態の両シート1,2の幅方向の長さよりも長くなっている。また、対向面42tの縦方向Yの長さは、第1ロール31の1個の凸部35のロール回転方向に沿う長さよりも長いことが好ましく、例えば、第1ロール31を構成する1個の平歯車31aに着目するとき、該平歯車31aのロール回転方向に間欠的に配された1個以上20個以下の凸部35に跨る長さであることが好ましい。
【0026】
超音波ホーン42は、
図3に示すように、第1ロール31に対向配置されている。超音波接合機41は、
図3に示すように、可動台45上に固定されている。可動台45は、第1ロール31の周面に近づく方向に向かって進退可能に形成されている。超音波接合機41は、可動台45を進退させることで、超音波ホーン42の対向面42tと、第1ロール31の凸部35の先端面35cとの間のクリアランス、及び積層された第1シート1及び第2シート2に対する加圧力を調節可能となっている。
【0027】
超音波ホーン42は、該超音波ホーン42の凹凸部42bを加熱する加熱手段を備えている。加熱手段は、超音波ホーン42の先端部を加熱する第1ヒーター61及び該第1ヒーター61により加熱された該先端部の熱を蓄熱する第1蓄熱部62を有している。第1ヒーター61は、
図6に示すように、超音波ホーン42の先端部に配されている。第1蓄熱部62は、
図6に示すように、超音波ホーン42の先端部に配されている。好ましくは、第1蓄熱部62は、
図6に示すように、超音波ホーン42の対向面42t(
図5参照)に配されている。
【0028】
押し当て部70は、
図3及び
図6に示すように、第1ロール31における超音波ホーン42との対向位置よりも回転方向R1における下流側に配されている。押し当て部70は、アンビルロール71を有している。アンビルロール71は、第1ロール31の周面上に支持されている第1シート1及び第2シート2を、該周面に向けて押し当てる押し当て部材として用いられる。アンビルロール71は、第1シート1及び第2シート2を第1ロール31に押し当てる加圧部37において、第1ロール31の周速V1と異なる周速V2で回転する。異なる周速とは、加圧部37を基準として見たときに、アンビルロール71の周面の移動速度と、第1ロール31の周面の移動速度とが異なることを意味し、アンビルロール71の回転方向R3と第1ロール31の回転方向R1とが同じ方向である場合には、加圧部37においてはアンビルロール71の周面の移動方向と第1ロール31の周面の移動方向とが異なる逆方向となるので、アンビルロール71及び第1ロール31の回転速度によらず、異なる周速となる。一方、アンビルロール71の回転方向R3と第1ロール31の回転方向R1とが逆方向である場合には、該加圧部37においては第1ロール31の周面の移動方向とアンビルロール71の周面の移動方向とが同じ順方向となるので、アンビルロール71の周速が、第1ロール31の周速よりも速い周速又は遅い周速の場合に、異なる周速となる。本実施形態では、アンビルロール71の回転方向が第1ロール31の回転方向と同じ方向なので、アンビルロール71は、該加圧部37における移動方向が第1ロール31の移動方向と逆方向となっており、第1ロール31の周速V1と異なる周速V2で回転している。
【0029】
アンビルロール71は、周面が平滑な金属製のローラである。アンビルロール71は、その幅方向の長さが第1シート1及び第2シート2の幅方向の長さよりも長くなっている。アンビルロール71は、第1ロール31と対向配置されている。第1ロール31の周面に当接した状態で支持部材72に回転自在に支持されている。アンビルロール71は、該アンビルロール71を
図3に示す矢印R3方向に周速V2で回転させる駆動源(図示せず)に接続されている。尚、アンビルロール71の周速V2は、該アンビルロール71の外周面における周速である。
【0030】
第1ロール31の回転方向R1と逆方向の回転方向R3にアンビルロール71が回転している場合における、第1ロール31の周速V1に対する、第1ロール31の周速V1とアンビルロール71の周速V2との周速差の絶対値の割合((V1−V2)/V1)×100)は、接合部4の内側に貫通孔14を形成するし易さの観点から、5%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、100%以下が好ましく、50%以下がより好ましく、5%以上100%以下が好ましく、20%以上50%以下がより好ましい。また、第1ロール31の周速V1とアンビルロール71の周速V2との周速差の絶対値は、5m/min以上が好ましく、20m/min以上がより好ましく、300m/min以下が好ましく、100m/min以下がより好ましく、5m/min以上300m/min以下が好ましく、20m/min以上100m/min以下がより好ましい。
【0031】
尚、第1ロール31の回転方向R1と同方向にアンビルロール71が回転している場合は、第1ロール31の周速V1に対する、第1ロール31の周速V1とアンビルロール71の周速との周速差の絶対値の割合は、接合部4の内側に貫通孔14を形成するし易さの観点から、5%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、100%以下が好ましく、50%以下がより好ましく、5%以上100%以下が好ましく、20%以上50%以下がより好ましい。また、第1ロール31の周速V1とアンビルロール71の周速との周速差の絶対値は、5m/min以上が好ましく、20m/min以上がより好ましく、300m/min以下が好ましく、100m/min以下がより好ましく、5m/min以上300m/min以下が好ましく、20m/min以上100m/min以下がより好ましい。
【0032】
第1ロール31の凸部35とアンビルロール71との間に挟んだ状態での第1シート1及び第2シート2に加える加圧力は、接合部4の内側への貫通孔14の形成し易さの観点から、10N/mm以上が好ましく、15N/mm以上がより好ましく、40N/mm以下が好ましく、25N/mm以下がより好ましく、10N/mm以上40N/mm以下が好ましく、15N/mm以上25N/mm以下がより好ましいい。ここでいう加圧力は、いわゆる線圧であり、アンビルロール71の加圧力(N)をアンビルロール71と触れる凸部35の歯幅(X方向)の合計(第1ロール31の凹部は含まない)の長さで除した値(単位長さあたりの圧力)で示す。
【0033】
アンビルロール71は、該アンビルロール71を加熱する加熱手段を備えている。加熱手段は、
図6に示すように、アンビルロール71を加熱する第2ヒーター63及び該第2ヒーター63により加熱されたアンビルロール71の熱を蓄熱する第2蓄熱部64を有している。第2ヒーター63及び第2蓄熱部64は、アンビルロール71の内部に配されている。第2蓄熱部64は、アンビルロール71の内部において、アンビルロール71の幅方向に沿って間隔を空けて複数配されている。
【0034】
製造装置20は、超音波振動を印加する前の第1シート1及び第2シート2の温度を計測可能な第1測温手段(図示せず)と、超音波振動を印加した後の第1シート1及び第2シート2の温度を計測可能な第2測温手段(図示せず)と、第1測温手段及び第2測温手段の測定値に基づき、第1ヒーター61及び第2ヒーター63の温度を制御する温度制御部(図示せず)とを備えている。
【0035】
次に、本発明の複合シートの製造方法を、上述した製造装置20を用いた複合シート10の製造方法を例にとり、
図3及び
図6を参照しながら説明する。
複合シート10の製造方法は、第1シート1に第2シート2を重ね合わせる重ね合わせ工程、重ね合わせた両シート1,2を、第1ロール31の周面部上に保持しつつ搬送しながら、第1ロール31の凸部と超音波接合機41の超音波ホーン42との間に挟んで超音波振動を印加し、貫通孔14を有する接合部4を形成する超音波処理工程、及び、接合部4で固定された両シート1,2を第1ロール31の周面部上に保持しつつ搬送し、両シート1,2をアンビルロール71を用いて第1ロール31の周面に押し当てる押し当て工程を具備する。また該製造方法は、好ましくは、重ね合わせ工程の前工程として、互いに噛み合う第1ロール31及び第2ロール32を回転させながら、両ロール31,32の噛み合い部に第1シート1を導入して凹凸形状に変形させる賦形工程を有する。以下に、該製造方法について詳述する。
【0036】
先ず、
図3に示すように、第1ロール31及び第2ロール32に接続された駆動源(図示せず)を駆動して、第1ロール31を周速V1にて
図3に示す矢印R1方向に回転させると共に、第2ロール32を周速V1にて
図3に示す矢印R2方向に回転させる。第1ロール31及び第2ロール32の周速V1は、第1ロール31及び第2ロール32の歯先における速度である。そして、原反ロール(図示せず)から繰り出した第1シート1を両ロール31,32の噛み合い部33に導入する。このように、互いに噛み合う凹凸を有する第1ロール31及び第2ロール32を回転させながら、両ロール31,32の噛み合い部33に第1シート1を導入することで、第1シート1を凹凸形状に沿った形状に変形する賦形工程を行う。噛み合い部33においては、第1シート1の複数個所が、第2ロール32の凸部によって第1ロール31の周面部の凹部に押し込まれる。このように押し込まれた部分は、製造される複合シート10の凸部5となる。
【0037】
そして、第1ロール31及び第2ロール32を回転に接続された駆動源(図示せず)を駆動すると共に、ブロワや真空ポンプなどの吸引源(図示せず)を駆動する。そして、噛み合い部33によって凹凸形状に変形された第1シート1を、吸引孔34による吸引力によって第1ロール31の凹凸に沿った形状に変形した状態で第1ロール31によって搬送し、第1シート1と第2シート2との合流部及び超音波接合機41による超音波振動の印加部36に搬送する。
【0038】
次いで、
図3に示すように、凹凸形状に変形させた第1シート1を、第1ロール31上に保持しつつ搬送する。そして、搬送中の第1シート1の上方に、第1シート1とは別の原反ロール(図示せず)から繰り出した第2シート2を、両シート1,2の搬送方向に沿う両側縁どうしが一致するように重ね合せる重ね合わせ工程に付す。
【0039】
次いで、重ね合せた第1シート1及び第2シート2を、
図6に示すように、第1ロール31の周面部上に保持しつつ搬送しながら、第1ロール31の凸部35と超音波接合機41の超音波ホーン42の対向面42tとの間に導入する。そして、第1シート1及び第2シート2を、第1ロール31の凸部35の先端面35cと、超音波ホーン42の対向面42tとの間に挟んで超音波振動を印加する超音波処理工程を行う。本工程においては、凸部35の先端面35c上に位置する第1シート1の部分と第2シート2とが接合して接合部4が形成されるとともに、両シート1,2を貫通する貫通孔14が該接合部4の内側に形成される。このとき接合部4の内側に形成される貫通孔14は、重ね合せた第1シート1及び第2シート2の地合いムラや加工条件等によって不完全な貫通孔になる場合がある。不完全な貫通孔とは、第1シート1及び第2シート2の一部が接合部4の内側に残っている状態等をいう。
【0040】
次いで、第1シート1及び第2シート2を、
図6に示すように、第1ロール31の吸引孔34による吸引力によって第1ロール31の凹凸に沿った形状に変形した状態で第1ロール31の周面上に保持しつつ搬送する。そして、超音波接合機41の下流側のアンビルロール71と第1ロール31との加圧部37において、第1ロール31の周速V1と異なる周速V2で回転するアンビルロール71を用いて、該第1シート1及び第2シート2を第1ロール31の周面に押し当てる押し当て工程を行う。本実施形態では、第2ヒーター63によって加熱されたアンビルロール71を用いて第1シート1及び第2シート2を加熱しながら第1シート1及び第2シート2を第1ロール31の凸部35に押し当てる。これにより、超音波処理工程において貫通孔14が形成されなかった貫通孔形成予定部位に対して、貫通孔14を確実に形成することができる。尚、「超音波処理工程において貫通孔14が形成されなかった」には、貫通孔が全く形成されなかった場合のみならず、上述した不完全な貫通孔が形成された場合も含まれる。
【0041】
加圧部37において、第1ロール31と逆方向に回転するアンビルロール71によって、該アンビルロール71と第1ロール31の凸部35との間に位置する接合部4にせん断力が作用する。このせん断力によって接合部4の内側部分に確実に貫通孔14が形成される。このようにして、アンビルロール71を接合部4を介して第1ロール31の凸部35に押し当てながら該接合部4に貫通孔14の形成された複合シート10を製造する。
【0042】
接合部4に貫通孔14が形成された複合シート10は、第1ロール31の凹凸に沿った形状に変形した状態に保持しつつR1方向に更に搬送され、第1ロール31に対して間隔を空けた位置に配されたターンロール50によって第1ロール31から剥され、連続して製造される。
【0043】
複合シート10の製造方法においては、温度制御部(図示せず)を用いて、超音波ホーン42の先端部に配された第1ヒーター61の温度を制御して該超音波ホーン42の先端部を加熱しておくことが好ましい。第1ヒーター61を介して超音波ホーン42の先端部の温度を制御することにより、超音波振動を印加する直前の第1シート1及び第2シート2の温度を、所望の温度に高精度に制御することができる。また、第1蓄熱部62を用いることで超音波ホーン42の先端部を所望の温度に維持することが容易となる。第1シート1及び第2シート2の一方又は双方の温度は、接合部4の形成のし易さの観点から、該シートの融点未満、該融点より50℃低い温度以上となるように、温度制御部(図示せず)によって超音波ホーン42の先端部を加熱することが好ましい。
【0044】
また超音波ホーン42の加熱とは別に、第1シート1及び第2シート2の少なくとも一方を、該シートが溶融しない前述した特定の範囲の温度に予熱しておき、その上で、一方又は双方が予熱された状態の両シート1,2に対して、超音波振動を印加することが好ましい。このとき、超音波振動を印加する際の条件、例えば、印加する超音波振動の波長、強度、両シート1,2を加圧する圧力等を調節して、超音波振動により、両シート1,2が溶融して接合部4が形成されるとともに、両シート1,2を貫通する貫通孔14が、接合部分に囲まれた状態に形成されるようにすることが好ましい。
【0045】
また、温度制御部(図示せず)を用いて、アンビルロール71に配された第2ヒーター63の温度を制御して該アンビルロール71を加熱しておくことが好ましい。第2ヒーター63を介してアンビルロール71の温度を制御することにより、アンビルロール71を押し当てる直前の第1シート1及び第2シート2の温度を、所望の温度に高精度に制御することができる。また、第2蓄熱部64を用いることでアンビルロール71を所望の温度に維持することが容易となる。第1シート1及び第2シート2の温度は、貫通孔14を形成するし易さの観点から、該シートの融点未満、該融点より50℃低い温度以上となるように、温度制御部(図示せず)によってアンビルロール71を加熱することが好ましい。
【0046】
第1シート1及び第2シート2の融点は、以下の方法により測定される。例えば、Perkin−Elmer社製の示差走査熱量測定装置(DSC)PYRIS Diamond DSCを用いて測定する。測定データのピーク値から融点を割り出す。第1シート1又は第2シート2が、不織布等の繊維シートであり、その構成繊維が、芯鞘型、サイド・バイ・サイド型等の複数成分からなる複合繊維である場合、そのシートの融点は、DSCにより測定した複数の融点の内、最低温度の融点を複合繊維シートの融点とする。
【0047】
接合部4の内側に貫通孔14を形成するという効果がより確実に得られるようにする観点から、複合シート10の製造方法は、以下の条件の一又は二以上を満たすことが更に好ましい。
【0048】
第1ロール31の凸部35の先端面35cと超音波ホーン42の対向面42tとによって第1シート1及び第2シート2に加える加圧力は、10N/mm以上が好ましく、15N/mm以上がより好ましく、好ましくは30N/mm以下が好ましく、25N/mm以下がより好ましく、10N/mm以上30N/mm以下が好ましく、15N/mm以上25N/mm以下がより好ましい。ここでいう加圧力は、いわゆる線圧であり、超音波ホーン42の加圧力(N)を超音波ホーン42と触れる凸部35の歯幅(X方向)の合計(第1ロール31の凹部は含まない)の長さで除した値(単位長さあたりの圧力)で示す。
【0049】
また、印加する超音波振動の周波数は、15kHz以上が好ましく、20kHz以上がより好ましく、50kHz以下が好ましく、40kHz以下がより好ましく、好ましくは15kHz以上50kHz以下が好ましく、20kHz以上40kHz以下がより好ましい。周波数の測定方法としては、レーザー変位計等でホーン先端の変位を計測し、サンプリングレート200kHz以上、精度1μm以上にすることで周波数を測定する。
【0050】
また、印加する超音波振動の振幅は、20μm以上が好ましく、25μm以上がより好ましく、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、20μm以上50μm以下が好ましく、25μm以上40μm以下がより好ましい。振幅の測定方法としては、レーザー変位計等でホーン先端の変位を計測し、サンプリングレート200kHz以上、精度1μm以上にすることで振幅を測定する。
【0051】
複合シート10は、通気性向上等の観点から、以下の構成を有することが好ましい。凸部5の高さH(
図1参照)は1〜10mm、特に3〜6mmであることが好ましい。複合シート10の単位面積(1cm
2)当たりの凸部5の数は1〜20、特に6〜15個であることが好ましい。凸部5の第1方向Xの底部寸法A(
図1参照)は0.5〜5.0mm、特に1.0〜4.0mmであることが好ましい。凸部5の第2方向Yの底部寸法B(
図1参照)は1.0〜10mm、特に2.0〜7.0mmであることが好ましい。
【0052】
第1方向Xの底部寸法Aと第2方向Yの底部寸法Bとの比(底部寸法A:底部寸法B)は1:1〜1:10、特に1:2〜2:5であることが好ましい。凸部5の底部面積(底部寸法A×底部寸法B)は0.5〜50mm
2、特に2〜20mm
2であることが好ましい。
【0053】
接合部4は、第1方向Xの寸法C(
図1参照)が0.5〜2mm、特に0.8〜1.5mmであることが好ましく、第2方向Yの寸法D(
図1参照)が1.0〜5.0mm、特に1.2〜3.0mmであることが好ましい。第1方向Xの寸法Cと第2方向Yの寸法Dとの比(寸法C:寸法D)は1:1〜1:3、特に2:3〜2:5であることが好ましい。
【0054】
接合部4は、外周縁より内側の面積が、0.5mm
2以上が好ましく、1.0mm
2以上がより好ましく、5.0mm
2以下が好ましく、4.0mm
2以下がより好ましく、0.5mm
2以上5.0mm
2以下が好ましく、1.0mm
2以上4.0mm
2以下がより好ましい。接合部4の外周縁より内側の面積には、貫通孔14の面積も含まれる。
【0055】
貫通孔14の開口面積は、接合部4の外周縁より内側の面積に対して、50%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、100%未満が好ましく、95%以下がより好ましく、50%以上100%未満が好ましく、80%以上95%以下がより好ましい。
【0056】
上述した複合シート10は、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッドなどの吸収性物品の表面シートとして好適に用いられる。
【0057】
また、吸収性物品の表面シート以外の用途に用いることもできる。例えば、吸収性物品用のシートとして、表面シートと吸収体の間に配置されるシート、立体ギャザー(防漏壁)形成用のシート(特にギャザーの内壁を形成するシート)等に用いることができ、また、吸収性物品以外の用途として、清掃シート、特に液吸収を主とする清掃シートや、対人用の化粧シート等として用いることができる。清掃シートに用いる場合、凸部において、平滑でない被清掃面への追従性が良好であるため、第1不織布側を被清掃面に向けて使用することが好ましい。化粧シートとして用いる場合、凸部において対象者の肌に追従し、またマッサージ効果を発現するとともに、余分な化粧剤(別途使用)や汗の吸収を行うことができるため、第1不織布側を肌側に向けて使用することが好ましい。
【0058】
本発明の複合シートの製造方法及び製造装置は、上記の実施形態に何ら制限されず、適宜変更可能である。
【0059】
例えば、
図3及び
図6に示す製造装置20では、押し当て部70の押し当て部材として、第1ロール31の周速V1と異なる周速V2で回転するアンビルロール71を用いたが、該アンビルロール71に替えて、例えば、
図7に示すように、定まった位置に配されたアンビルブロック73を用いてもよい。アンビルブロック73を用いた場合においても、該アンビルブロック73によってせん断力を作用させて接合部4の内側部分に貫通孔14が形成し易くなる。アンビルブロック73としては、第1ロール31と対向する対向面を平面視した形状が搬送方向よりも幅方向に長い長方形形状に形成されている、直方体状の金属ブロックを用いることができる。アンビルブロック73の幅方向の長さは、第1ロール31の1個の凸部35のロール回転方向における長さよりも長いことが好ましく、ロール回転方向に間欠的に配された1個以上20個以下の凸部35に跨る長さであることが好ましい。またアンビルブロック73の対向面に第1ロール31側に隆起した凹凸部を設けることが好ましい。凹凸部は、対向面の全体に形成してもよいが、第1シート1及び第2シート2に対応する任意の位置に形成してもよい。アンビルロール71の対向面に凹凸部を設けることで、更に接合部4に貫通孔14を形成し易くなる。
【0060】
また、
図3に示す製造装置では、押し当て部材として周面が平滑なアンビルロール71を用いたが、アンビルロール71に替えて、第1ロール31の周面部の凹凸と互いに噛み合う凹凸形状の周面部を有するギアロールを用いてもよい。
【0061】
また、前記の各実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜に組み合わせることが可能である。