(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ゴム成分(A)と、熱可塑性樹脂(B)と、充填剤(C)と、を含むゴム組成物であって、
前記ゴム成分(A)は、
(A1)ゴム成分(A)100質量部当たり、ガラス転移温度(Tg)が−50℃以下である変性スチレン−ブタジエン共重合体ゴム100質量部を含み、または
(A2)ゴム成分(A)100質量部当たり、ガラス転移温度(Tg)が−50℃以下である変性スチレン−ブタジエン共重合体ゴム30〜60質量部と、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴムまたはブタジエンゴム70〜40質量部とを含み、
前記熱可塑性樹脂(B)が、C5系樹脂、C5〜C9系樹脂、C9系樹脂、テルペン系樹脂、テルペン−芳香族化合物系樹脂、ロジン系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂およびアルキルフェノール系樹脂の中から選ばれる少なくとも1種であり、
前記ゴム組成物は、ゴム成分(A)100質量部当たり、前記熱可塑性樹脂(B)15〜30質量部を含み、
前記充填剤(C)の配合量は、ゴム成分(A)100質量部に対して、30〜100質量部であり、
前記充填剤(C)は、シリカを90質量%以上含み、
前記変性スチレン−ブタジエン共重合体ゴムが、下記一般式(IV):
【化1】
(一般式(IV)中、q1+q2=3(但し、q1は0〜2の整数であり、q2は1〜3の整数である)であり、R
31は炭素数1〜20の二価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基であり、R
32およびR
33はそれぞれ独立して加水分解性基、炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、R
34は炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、q1が2の場合には同一でも異なっていてもよく、R
35は炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、q2が2以上の場合には同一でも異なっていてもよい);または
下記一般式(V):
【化2】
(一般式(V)中、r1+r2=3(但し、r1は1〜3の整数であり、r2は0〜2の整数である)であり、R
36は炭素数1〜20の二価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基であり、R
37はジメチルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノメチル基、ジエチルアミノエチル基、メチルシリル(メチル)アミノメチル基、メチルシリル(メチル)アミノエチル基、メチルシリル(エチル)アミノメチル基、メチルシリル(エチル)アミノエチル基、ジメチルシリルアミノメチル基、ジメチルシリルアミノエチル基、炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、r1が2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、R
38は炭素数1〜20のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、r2が2の場合には同一でも異なっていてもよい)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物で変性されていることを特徴とする、ゴム組成物。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。これらの記載は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0025】
(ゴム組成物)
本発明に係るゴム組成物は、ゴム成分(A)と、熱可塑性樹脂(B)と、充填剤(C)と、を含むゴム組成物であって、ゴム成分(A)は、ゴム成分(A)100質量部当たり、ガラス転移温度(Tg)が−50℃以下である変性SBR10〜100質量部を含み、ゴム組成物は、ゴム成分(A)100質量部当たり、熱可塑性樹脂(B)5〜30質量部を含む、ことを特徴とする。これにより、タイヤのウェットグリップ性を向上することができる。
【0026】
<ゴム成分(A)>
ゴム組成物に含まれるゴム成分(A)は、ゴム成分(A)100質量部当たり、ガラス転移温度(Tg)が−50℃以下である変性SBR10〜100質量部を含み、必要に応じて、その他のゴム成分を含む。
【0027】
<変性スチレン−ブタジエン共重合体ゴム>
本発明で用いる変性SBRは、Tgが−50℃以下であり、このような変性SBRと後述する熱可塑性樹脂(B)とを用いることにより、タイヤのウェットグリップ性を向上することができる。
【0028】
変性SBRのベースポリマー(すなわち、SBR)は、1,3−ブタジエンとスチレンとの比を適宜調節することができるが、変性SBRの全単量体成分に対し、50〜80質量%の1,3−ブタジエンと、20〜50質量%のスチレンとを重合してなる共重合体であることが好ましい。ゴム組成物のウェットグリップ性を向上することができるためである。
【0029】
ベースポリマーを得るための重合方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。このような重合方法として、例えば、アニオン重合、配位重合および乳化重合などが挙げられる。
【0030】
変性SBRにおける変性官能基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。変性官能基としては、例えば、後述する充填剤に対して相互作用性を有する変性官能基などが好適に挙げられる。充填剤に対する相互作用性を高めて、ウェットグリップ性をより向上することができる。充填剤(例えば、シリカ)との相互作用性の高い変性官能基としては、特に制限はなく、例えば、含窒素官能基、含ケイ素官能基、含酸素官能基などが好適に挙げられる。
【0031】
変性SBRを得るための変性剤は、公知の変性剤から適宜選択して用いることができる。変性剤としては、例えば、アニオン重合または配位重合の重合活性末端と反応する変性剤であってもよいし、重合開始剤として用いられるリチウムアミド化合物のアミド部分等であってもよい。変性剤は、上述した変性官能基を有する公知の変性剤から適宜選択して用いることができる。
【0032】
変性剤は、ケイ素原子、窒素原子および酸素原子から選ばれる少なくとも1つの原子を有する変性剤であることが好ましい。
【0033】
充填剤(例えば、シリカ)に対して高い相互作用性を有するため、変性剤は、アルコキシシラン化合物、ヒドロカルビルオキシシラン化合物およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0034】
上記アルコキシシラン化合物は、特に限定されないが、下記一般式(I)で表されるアルコキシシラン化合物であることがより好ましい。
R
1a−Si−(OR
2)
4-a ・・・ (I)
一般式(I)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基を示し、aは0〜2の整数であり、OR
2が複数ある場合、各OR
2は互いに同一でも異なっていてもよく、また分子中には活性プロトンは含まれない。
【0035】
一般式(I)で表されるアルコキシシラン化合物の具体例としては、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−トリエトキシシリル−1−プロパンアミン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、プロピルトリイソプロポキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトリジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジビニルジエトキシシランなどが挙げられる。これらの中でも、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシランが好適である。アルコキシシラン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
上記ヒドロカルビルオキシシラン化合物は、下記一般式(II)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物であることが好ましい。
【0037】
【化1】
一般式(II)中、n1+n2+n3+n4=4(但し、n2は1〜4の整数であり、n1、n3およびn4は0〜3の整数である)であり、A
1は、飽和環状3級アミン化合物残基、不飽和環状3級アミン化合物残基、ケチミン残基、ニトリル基、(チオ)イソシアナート基、(チオ)エポキシ基、イソシアヌル酸トリヒドロカルビルエステル基、炭酸ジヒドロカルビルエステル基、ニトリル基、ピリジン基、(チオ)ケトン基、(チオ)アルデヒド基、アミド基、(チオ)カルボン酸エステル基、(チオ)カルボン酸エステルの金属塩、カルボン酸無水物残基、カルボン酸ハロゲン化合物残基、ならびに加水分解性基を有する第一もしくは第二アミノ基またはメルカプト基の中から選択される少なくとも1種の官能基であり、n4が2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、A
1は、Siと結合して環状構造を形成する二価の基であってもよく、R
21は、炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、n1が2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、R
23は、炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基、炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基またはハロゲン原子であり、n3が2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、R
22は、炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、いずれも窒素原子および/またはケイ素原子を含有していてもよく、n2が2以上の場合には、互いに同一もしくは異なっていてもよく、あるいは、一緒になって環を形成しており、R
24は、炭素数1〜20の二価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基であり、n4が2以上の場合には同一でも異なっていてもよい。
【0038】
加水分解性基を有する第一もしくは第二アミノ基または加水分解性基を有するメルカプト基における加水分解性基として、トリメチルシリル基またはtert−ブチルジメチルシリル基が好ましく、トリメチルシリル基が特に好ましい。
【0039】
一般式(II)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物は、下記一般式(III)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物であることが好ましい。
【化2】
一般式(III)中、p1+p2+p3=2(但し、p2は1〜2の整数であり、p1およびp3は0〜1の整数である)であり、A
2は、NRa(Raは、一価の炭化水素基、加水分解性基または含窒素有機基である)、あるいは、硫黄であり、R
25は、炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、R
27は、炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基、炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基またはハロゲン原子であり、R
26は、炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基、炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基または含窒素有機基であり、いずれも窒素原子および/またはケイ素原子を含有していてもよく、p2が2の場合には、互いに同一でも異なっていてもよく、あるいは、一緒になって環を形成しており、R
28は、炭素数1〜20の二価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基である。加水分解性基として、トリメチルシリル基またはtert−ブチルジメチルシリル基が好ましく、トリメチルシリル基が特に好ましい。
【0040】
一般式(II)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物は、下記一般式(IV)または(V)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物であることが好ましい。これによりウェットグリップ性をより向上することができる。
【化3】
一般式(IV)中、q1+q2=3(但し、q1は0〜2の整数であり、q2は1〜3の整数である)であり、R
31は炭素数1〜20の二価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基であり、R
32およびR
33はそれぞれ独立して加水分解性基、炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、R
34は炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、q1が2の場合には同一でも異なっていてもよく、R
35は炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、q2が2以上の場合には同一でも異なっていてもよい。
【0041】
【化4】
一般式(V)中、r1+r2=3(但し、r1は1〜3の整数であり、r2は0〜2の整数である)であり、R
36は炭素数1〜20の二価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基であり、R
37はジメチルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノメチル基、ジエチルアミノエチル基、メチルシリル(メチル)アミノメチル基、メチルシリル(メチル)アミノエチル基、メチルシリル(エチル)アミノメチル基、メチルシリル(エチル)アミノエチル基、ジメチルシリルアミノメチル基、ジメチルシリルアミノエチル基、炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、r1が2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、R
38は炭素数1〜20のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、r2が2の場合には同一でも異なっていてもよい。
【0042】
一般式(II)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物は、下記一般式(VI)または(VII)で表される2つ以上の窒素原子を有するヒドロカルビルオキシシラン化合物であることが好ましい。これによりウェットグリップ性をより向上することができる。
【化5】
一般式(VI)中、R
40はトリメチルシリル基、炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、R
41は炭素数1〜20のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、R
42は炭素数1〜20の二価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基である。
【0043】
【化6】
一般式(VII)中、R
43およびR
44はそれぞれ独立して炭素数1〜20の二価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基であり、R
45は炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、各R
45は、同一でも異なっていてもよい。
【0044】
一般式(II)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物は、下記一般式(VIII)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物であることが好ましい。
【化7】
一般式(VIII)中、r1+r2=3(但し、r1は0〜2の整数であり、r2は1〜3の整数である)であり、R
46は炭素数1〜20の二価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基であり、R
47およびR
48はそれぞれ独立して炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基である。複数のR
47またはR
48は、同一でも異なっていてもよい。
【0045】
一般式(II)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物は、下記一般式(IX)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物であることが好ましい。
【化8】
一般式(IX)中、Xはハロゲン原子であり、R
49は炭素数1〜20の二価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基であり、R
50およびR
51はそれぞれ独立して加水分解性基、炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基、または、炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であるか、あるいは、R
50およびR
51は結合して二価の有機基を形成しており、R
52およびR
53はそれぞれ独立してハロゲン原子、ヒドロカルビルオキシ基、炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基である。R
50およびR
51としては、加水分解性基であることが好ましく、加水分解性基として、トリメチルシリル基またはtert−ブチルジメチルシリル基が好ましく、トリメチルシリル基が特に好ましい。
【0046】
一般式(II)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物は、下記一般式(X)〜(XIII)で表される構造を有するヒドロカルビルオキシシラン化合物であることが好ましい。
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
一般式(X)〜(XIII)中、記号U、Vはそれぞれ0〜2かつU+V=2を満たす整数である。一般式(X)〜(XIII)中のR
54〜
92は同一でも異なっていても良く、炭素数1〜20の二価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基である。一般式(XIII)中のαおよびβは0〜5の整数である。
【0047】
一般式(X)〜(XII)の化合物の中でも、N1,N1,N7−テトラメチル−4−((トリメトキシシリル)メチル)−1,7へプタン、2−((ヘキシル−ジメトキシシリル)メチル)−N1,N1,N3,N3−2−ペンタメチルプロパン−1,3−ジアミン、N1−(3−(ジメチルアミノ)プロピル−N3,N3−ジメチル−N1−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン−1,3−ジアミン、4−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−N1,N1,N7,N7−テトラメチル−4−((トリメトキシシリル)メチル)へプタン−1,7−ジアミンが好ましい。
【0048】
一般式(XIII)の化合物の中でも、N,N−ジメチル−2−(3−(ジメトキシメチルシリル)プロポキシ)エタンアミン、N,N−ビス(トリメチルシリル)−2−(3−(トリメトキシシリル)プロポキシ)エタンアミン、N,N−ジメチル−2−(3−(トリメトキシシリル)プロポキシ)エタンアミン、N,N−ジメチル−3−(3−(トリメトキシシリル)プロポキシ)プロパン−1−アミンが好ましい。
【0049】
一般式(II)〜(XIII)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物は、変性SBRの変性剤として用いることが好ましいが、任意のその他のゴム成分の変性剤として用いてもよい。
【0050】
一般式(II)〜(XIII)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物は、アルコキシシラン化合物であることが好ましい。
【0051】
変性共重合体をアニオン重合によって得る場合に好適な変性剤としては、例えば、3,4−ビス(トリメチルシリルオキシ)−1−ビニルベンゼン、3,4−ビス(トリメチルシリルオキシ)ベンズアルデヒド、3,4−ビス(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ベンズアルデヒド、2−シアノピリジン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンおよび1−メチル−2−ピロリドンから選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0052】
上記変性剤は、アニオン重合における重合開始剤として用いられるリチウムアミド化合物のアミド部分であることが好ましい。このようなリチウムアミド化合物としては、例えば、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムへプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジへプチルアミド、リチウムジへキシルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチウムジ−2−エチルへキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウム−N−メチルピベラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミドおよびこれらの組み合わせが挙げられる。例えば、リチウムヘキサメチレンイミドのアミド部分となる変性剤はヘキサメチレンイミンであり、リチウムピロリジドのアミド部分となる変性剤はピロリジンであり、リチウムピペリジドのアミド部分となる変性剤はピペリジンである。
【0053】
変性共重合体を配位重合によって得る場合に好適な変性剤としては、例えば、2−シアノピリジンおよび3,4−ジトリメチルシリルオキシベンズアルデヒドから選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0054】
変性共重合体を乳化重合によって得る場合に好適な変性剤としては、例えば、3,4−ジトリメチルシリルオキシベンズアルデヒドおよび4−ヘキサメチレンイミノアルキルスチレンから選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。乳化重合において好ましく用いられるこれらの変性剤は、窒素原子および/またはケイ素原子を含むモノマーとして、乳化重合時に共重合されることが好ましい。
【0055】
変性SBRの変性率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜調整することができる。変性率は、例えば、30%以上が好ましく、35%以上がより好ましく、70%以上が特に好ましい。これにより、シリカを含む充填剤が変性SBRの相により選択的に存在するようになり、ウェットグリップ性をより向上することができる。
【0056】
変性SBRのガラス転移温度(Tg
2)は、−50℃以下であればよく、−60℃以下であることが好ましい
【0057】
変性SBRの一例を説明する。まず、スチレンと1,3−ブタジエンとの共重合体(ミクロ構造:スチレン10質量%/1,3−ブタジエン由来のビニル結合量40質量%、ベース分子量(ポリスチレン換算):180,000)であるベースポリマーを作製し、末端をアニオンとした状態で、N,N−ビス(トリメチルシリル)−3−[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピルアミンを用いて変性して、変性SBR(変性率:70%、重量平均分子量(Mw):200,000)を得る。
【0058】
変性SBRの配合量は、ゴム成分(A)100質量部当たり、10〜100質量部である。
【0059】
<その他のゴム成分>
ゴム成分(A)は、ゴム成分(A)100質量部当たり、変性SBR10〜100質量部を含めばよく、目的に応じて、その他のゴム成分を含んでいてもよい。その他のゴム成分は、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴムなど公知のゴムポリマーから適宜選択することができる。また、その他のゴム成分は、例えば、上記変性SBRで挙げたものを用いることができる。その他のゴム成分のポリマーは、未変性(共)重合体でもよいし、変性(共)重合体でもよい。
【0060】
<天然ゴム>
天然ゴムは、特に限定されず、公知の天然ゴムを適宜選択して用いることができる。天然ゴムは、後述する熱可塑性樹脂(B)との相溶性が高いため、ゴム成分(A)と熱可塑性樹脂(B)の相溶性が高くなる点で有利となる。
【0061】
天然ゴムの分子量は、特に限定されず、ピーク分子量を50,000以上とすることで良好な耐破壊特性および耐摩耗性が得られ、700,000以下とすることで良好な加工性が得られる。さらに、高度に耐破壊特性および耐摩耗性と加工性を両立するためには、100,000〜350,000のピーク分子量であることが好ましい。
【0062】
天然ゴムの配合量は適宜調整することができる。本発明に係るゴム組成物では、ゴム成分(A)が、天然ゴム60〜90質量部を含むことが好ましい。これにより、優れたウェットグリップ性と耐破壊性を得ることができる。
【0063】
本発明に係るゴム組成物では、天然ゴムのガラス転移温度Tg
1と、変性SBRのガラス転移温度Tg
2が、0<|Tg
1−Tg
2|≦20の関係を満たし、天然ゴムと変性SBRは、互いにサブミクロンオーダーで相分離していることが好ましい。これにより、優れたウェットグリップ性と耐破壊性を得ることができる。
【0064】
天然ゴムと変性SBRが互いにサブミクロンオーダーで相分離している場合、変性SBRの相のドメイン幅は、特に限定されないが、200nm以下であることが好ましい。これにより、より優れたウェットグリップ性と耐破壊性を得ることができる。
【0065】
天然ゴムと変性ポリマーが互いにサブミクロンオーダーで相分離している場合、変性SBRの相に存在する充填剤(C)の平均凝集塊面積が、2100nm
2以下であることが好ましい。これにより、より優れたウェットグリップ性と耐破壊性を得ることができる。
【0066】
上述した0<|Tg
1−Tg
2|≦20の関係を満たし、天然ゴムと変性SBRを互いにサブミクロンオーダーで相分離するためには、例えば、天然ゴムのSP値(SP
1)と変性SBRのSP値(SP
2)が異なり、0.15<|SP
1−SP
2|であることが好ましい。これにより、互いにサブミクロンオーダーで相分離しやすい。
【0067】
<熱可塑性樹脂(B)>
熱可塑性樹脂(B)は、C
5系樹脂、C
5〜C
9系樹脂、C
9系樹脂、テルペン系樹脂、テルペン−芳香族化合物系樹脂、ロジン系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂およびアルキルフェノール系樹脂の中から選ばれる少なくとも1種である。ゴム組成物が一定量の熱可塑性樹脂(B)を含むことで、ゴムのTgが高くなり、0℃での損失正接(tanδ)が向上するため、タイヤのウェットグリップ性を向上させることができる。
【0068】
熱可塑性樹脂(B)の配合量としては、ゴム成分(A)100質量部当たり、熱可塑性樹脂(B)5〜30質量部であればよく、適宜調整することができる。熱可塑性樹脂(B)の配合量が、5〜30質量部であることにより、ウェットグリップ性を向上することができる。
【0069】
<C
5系樹脂>
C
5系樹脂は、C
5系合成石油樹脂を指し、C
5留分を、AlCl
3やBF
3などのフリーデルクラフツ型触媒を用いて重合して得られる樹脂を意味する。例えば、イソプレン、シクロペンタジエン、1,3−ペンタジエンおよび1−ペンテンなどを主成分とする共重合体、2−ペンテンとジシクロペンタジエンとの共重合体、1,3−ペンタジエンを主体とする重合体などが挙げられる。
【0070】
<C
5〜C
9系樹脂>
C
5〜C
9系樹脂は、C
5〜C
9系合成石油樹脂を指し、C
5〜C
11留分を、AlCl
3やBF
3などのフリーデルクラフツ型触媒を用いて重合して得られる樹脂を意味する。例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、インデン等を主成分とする共重合体などが挙げられる。これらの中でも、C
9以上の成分の少ないC
5〜C
9系樹脂は、ゴム成分(A)との相溶性が優れる点で好ましい。具体的には、C
5〜C
9系樹脂におけるC
9以上の成分の割合が50質量%未満の樹脂が好ましく、40質量%以下の樹脂がより好ましい。
【0071】
<C
9系樹脂>
C
9系樹脂は、C
9系合成石油樹脂を指し、C
9留分をAlCl
3やBF
3などのフリーデルクラフツ型触媒を用いて重合して得られる樹脂を意味する。例えば、インデン、メチルインデン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等を主成分とする共重合体などが挙げられる。
【0072】
<テルペン系樹脂>
テルペン系樹脂は、松属の木からロジンを得る際に同時に得られるテレビン油またはこれから分離した重合成分を配合し、フリーデルクラフツ型触媒を用いて重合して得ることができる。例えば、β−ピネン樹脂、α−ピネン樹脂などが挙げられる。
【0073】
<テルペン−芳香族化合物系樹脂>
テルペン−芳香族化合物系樹脂は、テルペン類と種々のフェノール類とを、フリーデルクラフツ型触媒を用いて反応させる、あるいはさらにホルマリンで縮合することで得ることができる。例えば、テルペン−フェノール樹脂などが挙げられる。テルペン−フェノール樹脂のなかでも、テルペン−フェノール樹脂中のフェノール成分が50質量%未満の樹脂が好ましく、40質量%以下の樹脂がより好ましい。原料のテルペン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、α−ピネン、リモネン等のモノテルペン炭化水素などが挙げられる。これらの中でも、α−ピネンを含むものが好ましく、α−ピネンがより好ましい。
【0074】
<ロジン系樹脂>
ロジン系樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。ロジン系樹脂としては、例えば、生松ヤニやトール油に含まれるガムロジン、トール油レジン、ウッドロジン等の天然樹脂ロジン;変性ロジン;ロジン誘導体などが挙げられる。変性ロジン誘導体は、例えば、重合ロジン、その部分水添ロジン;グリセリンエステルロジン、その部分水添ロジンや完全水添ロジン;ペンタエリスリトールエステルロジン、その部分水添ロジンや完全水添ロジンなどが挙げられる。
【0075】
<ジシクロペンタジエン樹脂>
ジシクロペンタジエン樹脂は、ジシクロペンタジエンを、AlCl
3やBF
3などのフリーデルクラフツ型触媒等を用いて重合して得ることができる。ジシクロペンタジエン樹脂の市販品の具体例としては、クイントン1920(日本ゼオン株式会社製)、クイントン1105(日本ゼオン株式会社製)、マルカレッツM−890A(丸善石油化学社製)などが挙げられる。
【0076】
<アルキルフェノール系樹脂>
アルキルフェノール系樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。アルキルフェノール系樹脂としては、例えば、p−tert−ブチルフェノール−アセチレン樹脂等のアルキルフェノール−アセチレン樹脂、低重合度のアルキルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。
【0077】
<充填剤(C)>
充填剤(C)としては、例えば、シリカ、カーボンブラック、酸化アルミニウム、クレー、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、ガラスバルーン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、チタン酸カリウム、硫酸バリウム等の成分を挙げることができる。充填剤(C)にシリカが含まれると、補強性と低ロス性とを付与することができる。
【0078】
本発明に係るゴム組成物では、充填剤(C)が、シリカを70質量%以上含むことが好ましく、90%以上含むことがより好ましい。充填剤(C)は、シリカがカーボンブラックとシリカの合計に対して90質量%以上であることが好ましい。これにより、ウェットグリップ性をより向上することができる。
【0079】
充填剤(C)の配合量としては、特に限定されず、適宜調整することができる。充填剤(C)の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30〜100質量部、より好ましくは40〜80質量部である。
【0080】
<シリカ>
シリカとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。シリカとしては、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、湿式シリカは、ウェットグリップ性能を向上させることができる点で有利である。シリカのBET比表面積は、例えば、70〜280m
2/gであってもよい。あるいはシリカのBET比表面積は、例えば、75〜110m
2/g、220〜270m
2/gまたはこれらの組み合わせであってもよい。シリカのCTAB表面積は、例えば、70〜210m
2/gであってもよい。あるいはシリカのCTAB表面積は、例えば、75〜130m
2/g、170〜210m
2/gまたはこれらの組み合わせであってもよい。
【0081】
充填剤(C)は、さらにカーボンブラックを含むことが好ましい。カーボンブラックの配合量は、ゴム成分(A)100質量部に対して1〜10質量部であることが好ましく、3〜8質量部であることがより好ましい。
【0082】
カーボンブラックとしては、特に限定されず、公知のカーボンブラックを適宜選択して用いることができる。例えば、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFグレードのカーボンブラックなどが挙げられる。カーボンブラックは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0083】
ゴム組成物は、ゴム成分(A)、熱可塑性樹脂(B)、充填剤(C)の他、例えば、軟化剤(D)、シランカップリング剤(E)、脂肪酸金属塩、ステアリン酸、老化防止剤、酸化亜鉛(亜鉛華)、加硫促進剤、加硫剤等のゴム工業界で通常使用される配合剤を含んでいてもよい。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
【0084】
<軟化剤(D)>
ゴム組成物は、加工性、作業性の観点から、更に、軟化剤(D)を含んでいてもよい。軟化剤(D)としては、鉱物由来のミネラルオイル、石油由来のアロマチックオイル、パラフィンオイル、ナフテンオイル、天然物由来のパームオイル等が挙げられる。これらの中でも、タイヤのウェットグリップ性の観点から、鉱物由来の軟化剤及び石油由来の軟化剤が好ましい。軟化剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0085】
軟化剤(D)の配合量は、適宜調整すればよいが、ゴム成分100質量部に対して1〜5質量部の範囲が好ましく、1.5〜3質量部の範囲がより好ましい。
【0086】
<シランカップリング剤(E)>
ゴム組成物は、シリカの配合効果を向上させるために、更に、シランカップリッグ剤を含むことが好ましい。
【0087】
シランカップリング剤(E)としては、特に限定されるものではなく、公知のシランカップリング剤を適宜選択して用いることができる。シランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド等が挙げられる。シランカップリング剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
シランカップリング剤(E)の配合量は、シリカ100質量部に対して2〜20質量部の範囲が好ましく、5〜15質量部の範囲がより好ましい。シランカップリング剤の配合量がシリカ100質量部に対して2質量部以上であれば、シリカの配合効果が十分に向上し、また、シランカップリング剤の配合量がシリカ100質量部に対して20質量部以下であれば、ゴム成分のゲル化の可能性が低い。
【0089】
ゴム組成物は、更に、脂肪酸金属塩を含むことが好ましい。脂肪酸金属塩に用いられる金属としては、Zn、K、Ca、Na、Mg、Co、Ni、Ba、Fe、Al、Cu、Mn等が挙げられ、Znが好ましい。脂肪酸金属塩に用いられる脂肪酸としては、炭素数4〜30の飽和又は不飽和の直鎖、分岐もしくは環状構造を有する脂肪酸、あるいはそれらの混合物が挙げられ、これらの中でも、炭素数10〜22の飽和又は不飽和の直鎖脂肪酸が好ましい。炭素数10〜22の飽和直鎖脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が挙げられ、また、炭素数10〜22の不飽和直鎖脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等が挙げられる。脂肪酸金属塩は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0090】
脂肪酸金属塩の配合量は、ゴム成分(A)100質量部に対して0.1〜10質量部の範囲が好ましく、0.5〜5質量部の範囲がより好ましい。
【0091】
<ゴム組成物の製造方法>
本発明に係るゴム組成物の製造方法は、上記ゴム組成物の製造方法であって、加硫剤及び加硫促進剤を含む加硫系配合剤を除いて、上記ゴム成分(A)と、上記熱可塑性樹脂(B)と、上記充填剤(C)とを150〜165℃で混練する工程を含むことを特徴とする、ゴム組成物の製造方法である。これにより、タイヤのウェットグリップ性を向上することができるゴム組成物を製造することができる。
【0092】
加硫系配合剤を除いて、150〜165℃で混練することで、早期加硫(スコーチ)を避けつつ、加硫系配合剤以外の配合剤をゴム成分(A)に均一に分散させることができ、各配合剤の配合効果が十分に発揮されて、ゴム組成物の0℃におけるtanδを低下させることができる。
【0093】
本発明に係るゴム組成物の製造方法では、150〜165℃で混練した後、更に150℃未満の別の温度で混練を行ってもよい。
【0094】
本発明に係るゴム組成物の製造方法では、加硫系配合剤以外の配合剤をゴム成分(A)に十分均一に分散させた後、加硫剤及び加硫促進剤を含む加硫系配合剤を配合して、早期加硫(スコーチ)を防止できる温度、例えば、90〜120℃で混練することが好ましい。
【0095】
各温度での混練は、混練時間に制限はなく、混練装置の大きさ、原料の体積、原料の種類や状態等を勘案して、適宜設定することができる。
【0096】
加硫剤としては、特に限定されず、公知の加硫剤を適宜選択して用いることができる。加硫剤としては、例えば、硫黄等が挙げられる。
【0097】
加硫剤の配合量は、ゴム成分(A)100質量部に対し、硫黄分として0.1〜10.0質量部の範囲が好ましく、1.0〜4.0質量部の範囲が更に好ましい。加硫剤の配合量が硫黄分として0.1質量部以上であれば、加硫ゴムの破壊強度、耐摩耗性等を確保でき、また、10.0質量部以下であれば、ゴム弾性を十分に確保できる。
【0098】
加硫促進剤としては、特に限定されず、グアニジン類、スルフェンアミド類、チアゾール類など公知の加硫促進剤を適宜選択して用いることができる。加硫促進剤としてグアニジン類、スルフェンアミド類、チアゾール類を用いると、シランカップリング剤の活性を高めることができる点で有利である。加硫促進剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0099】
<グアニジン類>
グアニジン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。グアニジン類としては、例えば、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジン、1−o−トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ−o−トリルグアニジン塩、1,3−ジ−o−クメニルグアニジン、1,3−ジ−o−ビフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−クメニル−2−プロピオニルグアニジンなどが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、反応性が高い点で、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジン、1−o−トリルビグアニドが好ましく、1,3−ジフェニルグアニジンがより好ましい。
【0100】
<スルフェンアミド類>
スルフェンアミド類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。スルフェンアミド類としては、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−メチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−エチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−プロピル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ペンチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オクチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−2−エチルヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−デシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ドデシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ステアリル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジメチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジエチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジプロピル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジペンチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジオクチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジ−2−エチルヘキシルベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジドデシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジステアリル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドなどが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、反応性が高い点で、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドが好ましい。
【0101】
<チアゾール類>
チアゾール類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。チアゾール類としては、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2−(N,N−ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(4´−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、4−メチル−2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−(4−メチル−2−ベンゾチアゾリル)ジスルフィド、5−クロロ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム、2−メルカプト−6−ニトロベンゾチアゾール、2−メルカプト−ナフト[1,2−d]チアゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾチアゾール、6−アミノ−2−メルカプトベンゾチアゾールなどが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、反応性が高い点で、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィドが好ましい。
【0102】
加硫促進剤の配合量は、ゴム成分(A)100質量部に対して0.1〜5.0質量部の範囲が好ましく、0.2〜3.0質量部の範囲が更に好ましい。
【0103】
本発明に係るゴム組成物の製造方法では、例えば、バンバリーミキサーやロール等を用いて、上述のように、ゴム成分(A)に、熱可塑性樹脂(B)及び充填剤(C)と、必要に応じて適宜選択した各種配合剤とを配合して混練した後、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
【0104】
<タイヤ>
本発明に係るタイヤは、上記ゴム組成物をトレッドゴムに用いたことを特徴とする。本発明のタイヤは、ウェットグリップ性を向上させたタイヤである。
【0105】
本発明に係るタイヤの製造方法は、上述した製造方法によって得られたゴム組成物をトレッドゴムに用いること以外は、特に限定されず、公知のタイヤの製造法を用いることができる。例えば、上述した製造方法によって得られたゴム組成物をトレッドゴムに用いて生タイヤを成形し、その生タイヤを加硫することで製造することができる。
【実施例】
【0106】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0107】
実施例で用いた材料の詳細は以下のとおりである。
(ゴム成分A)
天然ゴム(NR):RSS#3、Tg
1=−73℃
変性剤1:N,N−ビス(トリメチルシリル)−3−[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピルアミン、一般式(IV)のヒドロカルビルオキシシラン化合物に相当
(熱可塑性樹脂B)
C
9系樹脂:JX日鉱日石エネルギー株式会社製の商品名日石ネオポリマー140
ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD):日本ゼオン株式会社製の商品名クイントン1105
C
5〜C
9系樹脂:エクソンモービルケミカル社製の商品名ECR213
C
5系樹脂:エクソンモービルケミカル社製の商品名エスコレッツ(登録商標)1102B
(充填剤C)
シリカ:東ソー・シリカ株式会社製の商品名NipSil AQ
(軟化剤D)
プロセスオイル:三共油化工業株式会社製の商品名A/Oミックス
(シランカップリング剤E)
シランカップリング剤:ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、エボ
ニックデグッサ社製の商品名Si75
(その他)
老化防止剤:N−(1,3−ジメチルブチル)−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン、大内新興化学工業株式会社製の商品名ノクラック 6C
ワックス:マイクロクリスタリンワックス、日本精蝋株式会社製の商品名オゾエース0701
加硫促進剤1:ビス(2−ベンゾチアゾリル)ペルスルフィド、大内新興化学工業株式会社製の商品名ノクセラーDM−P
加硫促進剤2:1,3−ジフェニルグアニジン、大内新興化学工業株式会社製の商品名ノクセラーD
加硫促進剤3:N−(tert−ブチル)−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、三新化学工業株式会社製の商品名サンセラーNS−G
【0108】
(変性SBRの調製)
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、1,3−ブタジエンのシクロヘキサン溶液およびスチレンのシクロヘキサン溶液を、1,3−ブタジエン67.5gおよびスチレン7.5gになるように加え、2,2−ジテトラヒドロフリルプロパン0.6mmolを加え、0.8mmolのn−ブチルリチウムを加えた後、50℃で1.5時間重合を行った。この際の重合転化率がほぼ100%となった重合反応系に対し、変性剤を0.72mmol添加し、50℃で30分間変性反応を行った。その後、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)のイソプロパノール5質量%溶液2mLを加えて反応を停止させ、常法に従い乾燥して変性SBRを得た。得られた変性SBRのミクロ構造を測定した結果、結合スチレン量が10質量%、ブタジエン部分のビニル結合量が40%、ピーク分子量が200,000であった。
【0109】
(比較未変性SBRの調製)
重合反応までを行い、変性反応を行わなかったこと以外は、変性SBRの重合反応と同様にして、未変性SBRを得た。得られた未変性SBRのミクロ構造を測定した結果、結合スチレン量が10質量%、ブタジエン部分のビニル結合量が40%、ピーク分子量が200,000であった。
【0110】
表1に示す配合に加えて、以下の成分も配合してゴム組成物を調製した。
プロセスオイル:1.0質量部
ステアリン酸:2質量部
老化防止剤:1質量部
ワックス:2質量部
亜鉛華:2.5質量部
加硫促進剤1:1.2質量部
加硫促進剤2:1.2質量部
加硫促進剤3:1質量部
硫黄:1.8質量部
【0111】
得られた各ゴム組成物について、以下に示すようにウェットグリップ性および耐破壊性の評価を行った。結果を合わせて表1に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
<性能評価>
ウェットグリップ性
得られたゴム組成物を145℃で33分間加硫して得られた加硫ゴムを用いて、ブリティッシュ・ポータブル・スキッド・テスターを用いて、湿潤コンクリート路面に対する試験片(加硫ゴム)の抵抗値を測定した。評価結果は、比較例1の値を100として、指数表示した。数値が大きいほど、ウェットグリップ性に優れる。
【0114】
耐破壊性
得られたゴム組成物を145℃で33分間加硫して得られた加硫ゴムを用いて、JIS K 6251に準拠して室温で引張試験を行い、加硫したゴム組成物の引張強さを測定した。評価結果は、比較例1の値を100として、指数表示した。数値が大きいほど、耐破壊性に優れる。
【0115】
未変性SBRを用いた比較例1に対して、変性SBRを用いた実施例1では、ウェットグリップ性が向上した。比較例1に対して、熱可塑性樹脂(B)を用いなかった比較例2では、ウェットグリップ性が低下した。また、比較例2の未変性SBRを変性SBRに変更した比較例3では、性能は向上しなかった。実施例1に対して、天然ゴムを併用した実施例2〜8では優れたウェットグリップ性と耐破壊性を示した。