【文献】
Lim, J. et al.,Priming with ceramide-1 phosphate promotes the therapeutic effect of mesenchymal stem/stromal cells on pulmonary artery hypertension,Biochem. Biophys. Res. Commun.,2016年03月15日,Vol. 473(1), pp. 35-41
【文献】
Kang, H. et al.,The Therapeutic Effects of Human Mesenchymal Stem Cells Primed with Sphingosine-1 Phosphate on Pulmonary Artery Hypertension,Stem Cells Dev.,2015年,Vol. 24(14), pp. 1658-1671
【文献】
Marquez-Curtis, L. A. et al.,Migration, proliferation, and differentiation of cord blood mesenchymal stromal cells treated with histone deacetylase inhibitor valproic Acid,Stem Cells Int.,2014年,Vol. 2014:610495, pp. 1-14
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記S1Pは、10〜50nMの濃度で含まれることを特徴とする請求項1に記載の臍帯由来間葉幹細胞(UC−MSCs)の細胞移動性、コロニー形成能及び抗炎症活性促進用組成物。
前記高血圧は、特発性肺動脈性高血圧;家族性肺動脈性高血圧;コラーゲン血管疾患、先天性体肺短絡、門脈高血圧、HIV感染、薬物または毒素と関連した肺動脈性高血圧;甲状腺障害、グリコーゲン貯蔵疾患、ゴーシェ疾患、遺伝性出血性毛細血管拡張、血色素病症、骨髓増殖障害または脾臟切除術と関連した肺動脈性高血圧;肺毛細管血管腫症と関連した肺動脈性高血圧;新生児の持続性肺高血圧;慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、低酸素症誘導肺胞低換気障害、低酸素症誘導睡眠障害呼吸または高い高度での慢性露出と関連した肺高血圧;発達異常と関連した肺高血圧;及び遠位肺動脈の血栓塞栓性閉鎖による肺高血圧からなる群から選択されることを特徴とする請求項5に記載の高血圧の予防または治療用薬学組成物。
前記炎症疾患または免疫疾患は、骨関節炎、リウマチ性関節炎、膀胱炎、間質性膀胱炎、喘息、皮膚炎、アトピー、乾癬、嚢胞性線維症、固形臓器移植後期及び慢性拒否症、移植片対宿主疾患、移植拒否疾患、多発性硬化症、全身性紅斑性狼瘡、シェーグレン症候群、橋本甲状腺、多発性筋炎、強皮症、アジソン病、白斑症、悪性貧血、糸球体腎炎及び肺線維症、炎症性腸疾患、クローン病、自己免疫性糖尿病、糖尿病網膜症、鼻炎、虚血再灌流損傷、血管形成術後の再狭窄、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、グレーブス病、胃腸管アレルギー、結膜炎、アテローム硬化症、冠状動脈疾患、狭心症、癌転移、小動脈疾患及びミトコンドリア疾患からなる群から選択されることを特徴とする請求項7に記載の炎症疾患または免疫疾患の予防または治療用薬学組成物。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】S1PでプライミングされたUC−MSCsで5−アザシチジン(5−azacytidine;5−Aza)の否定的影響に対する結果を示す。(A)1μM 5−Azaまたは0.5mM VPAで24時間処理したヒトUC−MSCsでのCXCR4に対するRQ−PCR分析結果である。表示された遺伝子の相対的発現レベルは、未処理のMSCs(NT)の数値と比較して倍率変化として示し、means±SEM(n=4)、
***p<0.001、one−way ANOVA testで示した。(B)1μM 5−Aza及び50nM S1Pで24時間プライミングされたUC−MSCsで、表示されたMSC表面(CD29、CD73及びCD90)及び造血系統(CD14、CD34、及びCD45)タンパク質の発現を柔細胞分析した結果である。(C)5−Aza+S1PでプライミングされたUC−MSCsを使用して軟骨細胞、骨細胞または脂肪細胞の分化分析した代表的なイメージを示す。軟骨細胞生成、骨細胞生成及び脂肪細胞生成は、アルシアンブルー(Alcian Blue)、アリザリンレッドS(Alizarin Red S)及びオイルレッドO(Oil Red O)染色を通じてそれぞれ測定した。5−Aza+S1Pで24時間プライミングされたUC−MSCsの(D)細胞増殖(n=3)、(E)SDF−1に対する化学走性(n=6)及び(F)CFU−F分析(n≧6)の結果を示す。あらゆる結果は、means±SEMで示した。
**p<0.01、
***p<0.001、compared to non−primed cells(non−parametric Mann Whitney test)。移動した細胞(E)または染色されたコロニー(F)に対する代表的なイメージは、右側パネルに示した。
【
図2】S1PでプライミングされたUC−MSCsでVPAの効果に対する結果を示す。(A及びB)0.5mM VPA単独(VPA)または50nM S1Pとの組合わせ(VPA+S1P)で24時間プライミングされたUC−MSCsの表面抗原(A)に対する柔細胞分析結果と多能性(B)分析結果とを示す。
【
図3】VPA+S1PでプライミングされたUC−MSCsでSDF−1に対する向上した反応性に対する結果を示す。(A及びB)0.5mM VPA単独(VPA)、50nM S1P単独(S1P)または50nM S1Pとの組合わせ(VPA+S1P)に24時間露出されたMSCsの150ng/ml SDF−1に対する化学走性の分析結果を示す。(A)移動分析でトランズウェルインサート(insets)の代表的なイメージを示す。(B)移動に対する相対的な量は、移動した細胞数に対する倍率変化として定量し、means±SEM(n=6)で示した。
**p<0.01、
***P<0.001 compared to nonprime cells(NT)(one−way ANOVA with Bonferroni post−test)。(C)リン酸化された−(p−)または全体AKT及びMAPK
p42/44のウェスタンブロットの分析結果を示す。VPA+S1PでプライミングされたMSCsは、血清欠乏状態で12時間処理した後、150ng/ml SDF−1に表示された時間の間に処理された。
【
図4】S1PでプライミングされたUC−MSCsでVPAの効果に対する結果を示す。(A及びB)VPA、S1P単独またはVPA+S1Pで24時間プライミングされたUC−MSCsの細胞増殖分析(A、n=3)及びCFU−F分析(B、n=6)結果を示す。CFU−F分析のために、60個の細胞を6ウェル培養プレートに接種し、14日間培養し、コロニー数を定量した。付着細胞の代表的な染色されたコロニーは、右側パネルに示した。(C)表示された細胞から収獲された条件培地(conditioned medium;CM)の存否によって、LPSで5時間刺激されたラット肺胞大食細胞株から分泌されたTNF−αタンパク質(n=4)の定量結果を示す。あらゆる結果は、means±SEM、
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001 compared to nonprime cells(NT)、
#p<0.05、
###p<0.001 compared to VPA+S1P primed cells one−way ANOVA testで示した。
【
図5】MSCsの治療効果と関連しているVPA+S1P上向き調節された遺伝子を示す。(A−D)0.5mM VPA単独(VPA)、50nM S1P単独(S1P)または50nM S1Pとの組合わせ(VPA+S1P)で24時間プライミングされたUC−MSCsでのMMP12(A)、成長因子(B)、血管新生(C)及び抗炎症(D)関連遺伝子の発現レベルを示す。発現レベルは、プライミングされていないUC−MSCs(NT)に対するプライミングされたUC−MSCsの数値比率として計算された。結果は、means±SEM(n≧4);
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001 compared to NT group、
#p<0.05、
###p<0.001 compared to VPA+S1P(one−way ANOVA with Bonferroni post−test)で示した。
【
図6】多様なVPA及びS1P濃度によるSDF−1aに対する走化性(Chemo
【
図7】HCl−ICラットモデルで膀胱機能回復と関連して、VPA+S1PプライミングされたUC−MSCの治療可能性の向上を示す結果である。(a)無麻酔下の膀胱内圧測定術(awake cystometry)の結果を示す。(b)対照群(naive)またはVPA+S1PプライミングされたUC−MSCs(各グループ当たり独立した5匹動物)を2.5×10
5(250K)細胞数(K=1,000)で注入し、1週間後の膀胱排尿パラメータの定量的結果を示す。IVP;膀胱内圧(intravesical pressure)、IAP;腹腔内圧(intra−abdominal pressure)。Sham:偽手術群(sham−operated)。あらゆる結果は、means±SEM;
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001 compared to the HCl−IC group;
#p<0.05、
##p<0.001、
###p<0.001 compared to the naive UC−MSC group with Bonferroni post−testで示した。
【
図8】HCl誘導された膀胱損傷において、UC−MSC投与効果に対する組織学的分析の結果を示す。(a)PBSまたは250K細胞数を投与し、1週間後、UC−MSCs HCl−ICラットの膀胱組織での(i)サイトケラチン(cytokeratin)免疫染色(倍率×40、scale bar=100μm)、(ii)トルイジンブルー(Toluidine blue)(倍率×200、scale bar=100μm)、(iii)マッソントリクローム染色(Masson´s trichrome)(倍率×200、scale bar=100μm)及び(iv)TUNEL分析(倍率×400、scale bar=100μm)の結果を示す。矢印は、浸潤された肥満細胞を示す。Sham:偽手術群。核は、Mayer´s hematoxylin(i、ii及びiii)またはDAPI(blue、iv)で染色した。(b)組織学的実験を定量化した結果である。データは、sham group(n=15)から標準化した。結果は、mean±SEM、
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001 compared to the HCl−IC group;
#p<0.05、
##p<0.001、
###p<0.001 compared to the naive UC−MSC group with Bonferroni post−testで示した。
【
図9】MCT誘導されたPAHラットモデルで、UCB−MSCs及びVPA+S1PプライミングされたMSCs(VPA+S1P−MSC)の効果を示す。(a)MCTは、RVSPレベルの増加を誘導し、MCT注入し、2週後にVPA+S1PプライミングされたUC−MSCを投与した結果、このような上昇を非常に減少させた(左側パネル)。MCTは、RV/(LV+S)の重量比率を増加させ、VPA+S1P−UC−MSCは、前記効果を非常に減少させた(右側パネル)。(b)MCTは、肺組織炎症及び中膜(medial wall)厚さ指数(血管直径当たり血管壁の厚さ)を増加させ、VPA+S1P−MSCは、前記増加を非常に減少させた(上部パネル)。プライミングしていないUCB−MSCは、RV/(LV+S)及び中膜厚さ指数の改善効果をほとんど示さなかった。肺動脈でα−SMA
+平滑筋細胞の免疫蛍光染色の結果を示す(下部パネル)(倍率400×)。RVSP、収縮期右心室圧(right ventricular systolic pressure);CTL、対照群;MSC、ヒト臍帯間葉幹細胞(human cord blood mesenchymal stem cell);S1P−MSC、スフィンゴシン−1−リン酸プライミングされたヒト臍帯間葉幹細胞;RV、右心室(right ventricle);LV+S、左心室及び心室中隔(interventricular septum)。
*p<0.05、
**p<0.01 compared to MCT alone(one−way ANOVA with Bonferroni post−test)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
幹細胞プライミングの主要標的であるCXCR4の発現は、DNA脱メチル化剤である5−アザシチジン(5−Aza)及びヒストン脱アセチル化阻害剤であるバルプロ酸(valproic acid;VPA)によって上向き調節される。これにより、本発明者らは、MSCプライミングを向上させて、治療効果を促進させるための戦略において、前記後成遺伝的(epigenetic)調節子の役割を確認し、本発明を完成した。
【0018】
本発明は、ヒストン脱アセチル化阻害剤及びプライミング因子を有効成分として含む幹細胞活性促進用組成物を提供する。
【0019】
望ましくは、前記ヒストン脱アセチル化阻害剤は、バルプロ酸(VPA)、酪酸ナトリウム(sodium butyrate;NaB)、ニコチンアミド(nicotinamide;NAD)またはサーチノール(sirtinol)であり得るが、これらに制限されるものではない。
【0020】
望ましくは、前記プライミング因子は、スフィンゴシン−1−リン酸(S1P)、セラミド−1−リン酸(C1P)、カテリシジン(LL−37)またはピオグリタゾン(pioglitazone)であり得るが、これらに制限されるものではない。
【0021】
望ましくは、前記VPAは、0.1〜1.0mMの濃度で含まれ、前記S1Pは、10〜50nMの濃度で含まれうるが、これらに制限されるものではない。
【0022】
本明細書で使われる用語「プライミング」は、幹細胞の治療効能を増進させるために、反応性(活性)が向上する現象を意味し、本発明では、前記プライミングを誘導するヒストン脱アセチル化阻害剤及びプライミング因子を用いて当該幹細胞の活性を促進させる。
【0023】
本発明において、「幹細胞活性」は、幹細胞の細胞移動性、細胞増殖能、多能性(軟骨細胞、骨細胞または脂肪細胞系統への生体外分化)、コロニー形成能または抗炎症活性などを意味する。
【0024】
本発明において、活性促進またはプライミング誘導は、幹細胞にヒストン脱アセチル化阻害剤及びプライミング因子を直接処理した場合、幹細胞のプライミングが誘導されるものだけではなく、前記プライミング処理(前処理)によって幹細胞の活性が向上した幹細胞を用いて他の分化が誘導されるものも含む。
【0025】
また、前記活性促進用組成物は、治療のための細胞治療剤と混合して生体内注入することにより、細胞治療剤の生体内効果を増進させるだけではなく、幹細胞自体に本組成物を処理した後、機能が増加した細胞治療剤を生体内移植する方法でも使われる。
【0026】
例えば、本発明のプライミングは、幹細胞の細胞移動性、コロニー形成能及び抗炎症活性を含めた幹細胞性に関連した機能を向上させるものである。
【0027】
本明細書で使われる用語「幹細胞」は、自己複製能を有しながら、2つ以上の細胞に分化する能力を有する細胞を言い、万能幹細胞(totipotent stem cell)、多能性幹細胞(pluripotent stem cell)、多分化能幹細胞(multipotent stem cell)に分類することができる。
【0028】
本発明の幹細胞は、目的によって適切に制限なしに選択され、ヒトを含んだ哺乳動物、望ましくは、ヒト由来の公知のあらゆる組織、細胞などの成体細胞から由来し、例えば、骨髓、臍帯血、胎盤(または、胎盤組織細胞)、脂肪(または、脂肪組織細胞)などから由
【0029】
例えば、前記幹細胞は、骨髓、脂肪組織、筋肉組織、ex vivo培養された自己組織肝葉幹細胞、同種異系肝葉幹細胞、臍帯血、胚卵黄嚢、胎盤、臍帯、骨膜、胎児及び思春期皮膚、そして、血液から制限なしに得られる幹細胞であり、胎児または出生直後または成人由来の幹細胞であり得る。
【0030】
本発明の望ましい具現例において、前記幹細胞は、神経幹細胞、肝幹細胞、造血幹細胞、臍帯血幹細胞、表皮幹細胞、胃腸管幹細胞、内皮幹細胞、筋肉幹細胞、間葉幹細胞及び膵腸幹細胞からなる群から選択され、より望ましくは、肝幹細胞、造血幹細胞、臍帯血幹細胞及び間葉幹細胞からなる群から選択されうるが、これらに制限されるものではない。
【0031】
また、本発明は、分離された幹細胞にヒストン脱アセチル化阻害剤及びプライミング因子を処理する段階を含む幹細胞活性促進方法を提供する。
【0032】
望ましくは、前記ヒストン脱アセチル化阻害剤は、バルプロ酸(VPA)、酪酸ナトリウム(NaB)、ニコチンアミド(NAD)またはサーチノールであり得るが、これらに制限されるものではない。
【0033】
望ましくは、前記プライミング因子は、スフィンゴシン−1−リン酸(S1P)、セラミド−1−リン酸(C1P)、カテリシジン(LL−37)またはピオグリタゾンであり得るが、これらに制限されるものではない。
【0034】
望ましくは、前記VPAは、0.1〜1.0mMの濃度で含まれ、前記S1Pは、10〜50nMの濃度で含まれうるが、これらに制限されるものではない。
【0035】
また、本発明は、ヒストン脱アセチル化阻害剤及びプライミング因子で処理された幹細胞またはその培養液を有効成分として含む高血圧の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0036】
一方、プライミングを通じて幹細胞が活性化されれば、高血圧を含めた心血関疾患に効果を示すが、プライミングされた幹細胞の心血関疾患関連の作用機作に対しては、さまざまな報告がある(Stem Cell Research & Therapy(2015)6:218;Stroke.2011;42:2932−2939;J.Cell.Mol.Med.Vol 17,No 5,2013 pp.617−625;Stem Cells International 2015 Article ID 685383)。
【0037】
また、本発明は、ヒストン脱アセチル化阻害剤及びプライミング因子で処理された幹細胞またはその培養液を有効成分として含む炎症疾患または免疫疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0038】
一方、プライミングを通じて幹細胞が活性化されれば、免疫調節及び炎症反応に関与して多様な炎症疾患及び免疫疾患に応用され、プライミングされた幹細胞の免疫調節及び炎症反応関連作用機作に対しては、さまざまな報告がある(J Orthop Res.2016 Apr 6,1−12;Stem Cell Rev and Rep(2014)10:351−375;Stem Cells International 2016 Article ID 9364213)。
【0039】
望ましくは、前記ヒストン脱アセチル化阻害剤は、バルプロ酸(VPA)、酪酸ナトリウム(NaB)、ニコチンアミド(NAD)またはサーチノールであり得るが、これらに制限されるものではない。
【0040】
望ましくは、前記プライミング因子は、スフィンゴシン−1−リン酸(S1P)、セラミド−1−リン酸(C1P)、カテリシジン(LL−37)またはピオグリタゾンであり得るが、これらに制限されるものではない。
【0041】
本発明において「培養液」は、生体外で幹細胞成長及び生存を支持可能にする培地、前記培地に含まれた培養された幹細胞の分泌物などを含む。培養に使われる培地は、幹細胞の培養に適切な当分野で使われる通常の培地をいずれも含む。細胞の種類によって培地と培養条件とを選択することができる。培養に使われる培地は、望ましくは、細胞培養最小培地(cell culture minimum medium:CCMM)であって、一般的に炭素源、窒素源及び微量元素成分を含む。このような細胞培養最小培地には、例えば、DMEM(Dulbecco´s Modified Eagle´s Medium)、MEM(Minimal essential Medium)、BME(Basal Medium Eagle)、RPMI1640、F−10、F−12、αMEM(α Minimal essential Medium)、GMEM(Glasgow´s Minimal essential Medium)、Iscove´s Modified Dulbecco´s Mediumなどがあるが、これらに制限されるものではない。
【0042】
また、前記培地は、ペニシリン(penicillin)、ストレプトマイシン(streptomycin)、ゲンタマイシン(gentamicin)などの抗生剤を含みうる。
【0043】
一方、本発明は、前記幹細胞、その分泌物、培地成分をいずれも含む形態、分泌物及び培地成分のみを含む形態、分泌物のみを分離して単独で、または幹細胞と共に使用する形態、または幹細胞のみを投与して体内で分泌物を生成する形態で使用することもいずれも可能である。
【0044】
前記幹細胞は、通常の当業者に公知の所定の方法を用いて獲得することができる。
【0045】
本発明のヒストン脱アセチル化阻害剤及びプライミング因子で処理された幹細胞は、特定疾患の治療のための細胞治療剤として用いられ、前記処理は、前記分子の直接的な処理または前処理であり得る。
【0046】
前記「細胞治療剤」とは、細胞と組織の機能を復元するために、生きている自己(autologous)、同種(allogenic)、異種(xenogenic)細胞を体外で増殖、選別するか、その他の方法で細胞の生物学的特性を変化させるなど一連の行為を通じて治療、診断、予防目的として使われる医薬品を意味する。
【0047】
前記細胞治療剤は、目的組織に到逹することができる限り、所定の一般的な経路を通じて人体に投与される。
【0048】
本発明の望ましい具現例において、前記高血圧は、特発性肺動脈性高血圧;家族性肺動脈性高血圧;コラーゲン血管疾患、先天性体肺短絡、門脈高血圧、HIV感染、薬物または毒素と関連した肺動脈性高血圧;甲状腺障害、グリコーゲン貯蔵疾患、ゴーシェ(Gaucher)疾患、遺伝性出血性毛細血管拡張、血色素病症、骨髓増殖障害または脾臟切除術と関連した肺動脈性高血圧;肺毛細管血管腫症と関連した肺動脈性高血圧;新生児の持続性肺高血圧;慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、低酸素症誘導肺胞低換気障害、低酸素症誘導睡眠障害呼吸または高い高度での慢性露出と関連した肺高血圧;発達異常と関連した肺高血圧;及び遠位肺動脈の血栓塞栓性閉鎖による肺高血圧からなる群から選択され、より望ましくは、特発性肺動脈性高血圧、家族性肺動脈性高血圧または慢性閉塞性肺疾患であり、最も望ましくは、特発性肺動脈性高血圧である。
【0049】
本発明の望ましい具現例において、前記炎症疾患または免疫疾患は、骨関節炎、リウマチ性関節炎(Rheumatoid Arthritis)、膀胱炎、間質性膀胱炎、喘息(Asthma)、皮膚炎(Dermititis)、アトピー、乾癬(Psoriasis)、嚢胞性線維症(Cystic Fibrosis)、固形臓器移植後期及び慢性拒否症(Post transplantation late and chronic solid organ rejection)、移植片対宿主疾患(graft−versus−host disease)、移植拒否疾患、多発性硬化症(Multiple Sclerosis)、全身性紅斑性狼瘡(systemic lupus erythematosus)、シェーグレン症候群(Sjogren syndrome)、橋本甲状腺(Hashimoto thyroiditis)、多発性筋炎(polymyositis)、強皮症(scleroderma)、アジソン病(Addison disease)、白斑症(vitiligo)、悪性貧血(pernicious anemia)、糸球体腎炎(glomerulonephritis)及び肺線維症(pulmonary fibrosis)、炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Diesese)、クローン病(Crohns disease)、自己免疫性糖尿病(Autoimmune Diabetes)、糖尿病網膜症(Diabetic retinopathy)、鼻炎(Rhinitis)、虚血再灌流損傷(Ischemia−reperfusion injury)、血管形成術後の再狭窄(Post−angioplasty restenosis)、慢性閉塞性肺疾患(Chronic obstructive pulmonary disease;COPD)、グレーブス病(Graves disease)、胃腸管アレルギー(Gastrointestinal allergy)、結膜炎(Conjunctivitis)、アテローム硬化症(Atherosclerosis)、冠状動脈疾患(Coronary artery disease)、狭心症(Angina)、癌転移、小動脈疾患またはミトコンドリア疾患(mitochondrial disease)であり得るが、これらに制限されるものではない。
【0050】
本発明の薬学組成物は、有効成分の以外に薬剤学的に適し、生理学的に許容される補助剤を使用して製造可能であり、前記補助剤としては、賦形剤、崩壊剤、甘味剤、結合剤、被覆剤、膨張剤、潤滑剤、滑沢剤または香味剤などの可溶化剤を使用することができる。本発明の薬学組成物は、投与のために、有効成分の以外にさらに薬剤学的に許容可能な担体を1種以上含んで医薬組成物として望ましく製剤化することができる。液状溶液で製剤化される組成物において、許容可能な薬剤学的担体としては、滅菌及び生体に適したものであって、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、アルブミン注射溶液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びこれらの成分のうち、1成分以上を混合して使用し、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤を付加的に添加して、水溶液、懸濁液、乳濁液のような注射用剤型、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤で製剤化することができる。
【0051】
本発明の医薬組成物の薬剤の製剤形態は、顆粒剤、散剤、被覆錠、錠剤、カプセル剤、座剤、シロップ、汁、懸濁剤、乳剤、点滴剤または注射可能な液剤及び活性化合物の徐放出型製剤などになりうる。本発明の医薬組成物は、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、腹腔内、胸骨内、経皮、鼻側内、吸入、局所、直腸、経口、眼球内または皮内経路を通じて通常の方式で投与することができる。本発明の医薬組成物の有効成分の有効量は、疾患の予防または治療に要求される量を意味する。したがって、疾患の種類、疾患の重症度、組成物に含有された有効成分及び他の成分の種類及び含量、剤型の種類及び患者の年齢、体重、一般健康状態、性別及び食餌、投与時間、投与経路及び組成物の分泌率、治療期間、同時使われる薬物を含めた多様な因子によって調節される。
【0052】
また、本発明は、幹細胞活性促進のためのヒストン脱アセチル化阻害剤及びプライミング因子の用途を提供する。
【0053】
また、高血圧の予防または治療のための薬物の製造において、ヒストン脱アセチル化阻害剤及びプライミング因子で処理された幹細胞またはその培養液の用途を提供する。
【0054】
また、炎症疾患または免疫疾患の予防または治療のための薬物の製造において、ヒストン脱アセチル化阻害剤及びプライミング因子で処理された幹細胞またはその培養液の用途を提供する。
【0055】
以下、本発明の理解を助けるために、実施例を挙げて詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本発明の内容を例示するものであり、本発明の範囲が、下記の実施例に限定されるものではない。本発明の実施例は、当業者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0057】
下記の実験例は、本発明によるそれぞれの実施例に共通して適用される実験例を提供するためのものである。
【0059】
大韓民国の峨山病院の生命倫理審議委員会によって承認されたガイドラインによって親の書面同意を受けて、元気な正常満朔新生児からヒトUCを得た。UC収集前にあらゆる産婦から同意書を受けた。UC−由来MSCs(UC−derived MSCs;UC−MSCs)は、2mM L−グルタミン、20mM 4−(2−hydroxyethyl)−1−piperazineethanesulfonic acid(HEPES)(pH7.3)、最小必須培地(minimum−essential medium;MEM)非必須アミノ酸溶液、ペニシリン/ストレプトマイシン(Corning Cellgro、Pittsburgh、PA)、1mg/mlアスコルビン酸(Sigma−Aldrich)、10%熱不活性化されたウシ胎児血清(fetal bovine serum;FBS)(HyClone)、5ng/mLヒト上皮細胞成長因子(Sigma−Aldrich,St.Louis、MO)、10ng/ml基本線維芽細胞成長因子及び50mg/ml long−R3インスリン類似成長因子−1(ProSpec、Rehovot、Israel)が添加されたlow−glucose Dulbecco´s modified Eagle´s medium(DMEM)(HyClone、Pittsburgh、PA)で5% CO
2大気条件、37℃に培養した。多能性を保持するために、5回以下に継代して確張したUC−MSCsを使用した。表面タンパク質の発現は、以前に報告した通りに分析した(Stem Cells and Dev.24(2015)1658−1671)。
【0061】
8μmポリカーボネート膜を1.0%ゼラチン(Sigma)50μlに1時間コーティングした。UC−MSCsは、VPA(0.5mM;Sigma−Aldrich)または5−Aza(1μM;Sigma−Aldrich)単独または50nM S1Pと混合して、1日間プライミングさせた。UC−MSCsは、TrypLE solution(Thermo Scientific、Pittsburgh PA)で分離させた後、洗浄し、0.5% bovine serum albumin(BSA)を含有したDMEMに再懸濁して、3X10
4細胞/ウェル密度でトランズウェルインサート(Transwell inserts)(Corning Costar、Pittsburgh、PA)の上部チャンバに接種した。下部チャンバには、0.5% BSAを含有したDMEMに入れた150ng/ml SDF−1(R&D Systems)で満たした。1日後、トランズウェルプレートからインサートを除去した。上部チャンバに残っている細胞を脱脂綿で掻き出し、移動した細胞をホスフェート緩衝された食塩水(phosphate−buffered saline;PBS)に溶かした4%パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde;PFA)溶液で固定した後、0.5%クリスタルバイオレット(Sigma−Aldrich)で染色した。Image Pro 5.0 software(Media Cybernetics、Rockville、MD、USA)でデジタルイメージを分析して、膜の下部面にある染色された細胞を定量した。
【0062】
3.MSCsの生体外(in vitro)特性分析
【0063】
MSCsの細胞増殖、線維芽細胞コロニー形成単位(colony−forming unit−fibroblast;CFU−F)、多能性(軟骨細胞、骨細胞または脂肪細胞系統への生体外分化)及び生体外抗炎症分析は、以前に報告した通りに行った(Stem Cells and Dev.24(2015)1658−1671)。
【0064】
4.ウェスタンブロット及びリアルタイム定量的PCR(real−time quantitative PCR;RQ−PCR)
【0065】
50nM S1P及び0.5mM VPAでプライミングされたUC−MSCsは、0.5% BSAを含有するDMEMで37℃に12時間欠乏(starvation)させ、150ng/ml SDF−1で5、10、20または30分間刺激した後、30μg-細胞抽出物を使用してマイトジェン活性化されたタンパク質キナーゼ(MAPK)
p42/44及びAKT(Ser473)のリン酸化をウェスタンブロットを通じて分析した。遺伝子の発現分析のために、表示された細胞から得た全体RNAは、逆転写させ、表示された転写体は、RQ−PCRを通じて定量した。
【0067】
統計的有意性の差を確認するために、データは、non−parametric Mann Whitney testまたはone−way ANOVA with the Bonferroni post−hoc testを使用して分析した。本発明者らは、GraphPad Prism 6.0 software(GraphPad Software、La Jolla、CA)を使用して、あらゆる分析を行い、統計的有意性は、p<0.05、0.01、または0.001に定義した。
【0069】
本発明の目的は、ラットモデルで間質性膀胱炎/膀胱疼痛症侯群(Interstitial cystitis/bladder pain syndrome;IC/BPS)を治療するために、V1P+S1Pでプライミングされたヒト臍帯由来MSCs(umbilical cord−derived MSCs;UC−MSCs)の効果を測定することだけではなく、移植された細胞の生体内(in vivo)細胞的特性も広範囲に観測しようとした。対照群またはV1P+S1PプライミングされたUC−MSCsを膀胱が損傷されたラットに投与し、膀胱排尿機能、尿路上皮剥離(urothelium denudation)、肥満細胞浸潤、組織線維化、細胞死(apoptosis)及び腫瘍形成に対する影響を測定した。あらゆる実験において、グループ当たり5匹の独立した動物に対して、2回の独立した実験を行った。これらは、損傷グループ、細胞移植またはビヒクル(vehicle)投与グループ及び膀胱内圧測定術(Cystometry)グループに任意に配分して処理した。手術過程に関与した研究者には、投与された細胞の形態及び投与量についての情報を知らせなかった。あらゆる膀胱内圧測定、組織学及び遺伝子発現測定は、処理群についての情報が分からない研究者によって行われた。膀胱損傷またはカテーテル挿入によって予想しないように死んだ動物は、あらゆる分析でいずれも除外した。あらゆる動物実験は、大韓民国の蔚山大学校医科大学の動物実験倫理委員会のガイドライン及び規定によって行った(IACUC−2014−14−167)。
【0070】
7.動物モデル及びUC−MSCsの移植
【0071】
HCl注入IC/BPSラットモデルは、以前に報告された(Stem Cells and Development 24,2015,1648−1657)。HCl損傷一週間後、下腹部を切開し、500μmシリンジ及び26ケージ針を用いて、2.5×10
5(250K)UC−MSCsまたはPBSを膀胱の全壁外層及び天井に直接投与した。幹細胞投与一日前から、WntまたはIGF−媒介信号伝逹を遮断するために、インドメタシン(indomethacin;PMG Pharm Co.,Ltd.Ansan、Korea;every 12 h at 2.5mg/kg)またはゲフィチニブ(Gefitinib;Santa Cruz Biotechnology、Santa Cruz、CA、USA;every day at 5mg/kg)をそれぞれ皮下注入した。
【0072】
8.無麻酔(Unanesthetized)及び非抑制(unrestrained)膀胱内圧測定度収集(無麻酔下の膀胱内圧測定術)
【0073】
膀胱内圧測定(Cystometrograms)は、代謝ケージ内の無麻酔及び非抑制されたラットで行われた。膀胱内圧(IVP)及び腹腔内圧(IAP)の記録測定のために、膀胱内圧測定3日前にカテーテルを同時に挿入した。簡単に説明すれば、麻酔誘導後、腹腔切開を通じてカフ(cuff)が付いたポリエチレンカテーテル(PE−50;Becton−Dickinson、Parsippany、NJ、USA)を膀胱天井に挿入した。IAPを記録するために、カテーテルチップのカフ付近腹腔バルーン(Latex;Daewoo Medical、Incheon、Korea)を膀胱近位部に位置させ、シルクスレッド(thread)が付いた他のカテーテルに縛った。ポリエチレンカテーテル(PE−50)を暖かい水で加熱した、挿入部のチップを元の長さの〜1.5倍程度伸ばし、ヘパリン処理した食塩水(100IU/mL)で満たした。膀胱カテーテルが移植されれば、伸ばされたカテーテルが大腿静脈内に挿入された。次いで、前記カテーテルは、皮下空間を通じて突き抜けて通り過ぎ、動物の背中を通じて抜け出されて、背中の皮膚に付着された。手術後、それぞれのラットは、個別的に飼育され、同じ方式で保持された。
【0074】
無麻酔下の膀胱内圧測定分析(awake cystometric analysis)のために、圧力変換器(pressure transducer)(Research Grade Blood pressure transducer;Harvard Apparatus、Holliston、MA、USA)及びmicroinjection pump(PHD22/2000 pump;Harvard Apparatus)に連結されたTチューブを通じて二重弁で膀胱に留置カテーテル(indwelling catheter)を連結した。IAPを記録するために、体液が満たされた腹腔バルーンが連結された他の留置カテーテルは、他の圧力変換器に連結した。滅菌された食塩水を膀胱内に0.4mL/minの速度で注入し、force displacement transducer(Research Grade Isometric Transducer;Harvard Apparatus)が連結された体液収集器を通じて排尿量を記録し続けた。50Hzのサンプリング速度でAcq Knowledge 3.8.1 softwareが装着されたMP150 data acquisition system(Biopac Systems、Goleta、CA、USA)を使用して、IVP、IAP及び排尿量を記録し続けた。各動物から8分間測定されたあらゆる排尿周期数値を評価に使用した。
【0075】
尿排出なしに、基準値から15cm H
2Oを超えるようにIVPが増加すれば、非排尿収縮(non−voiding contraction;NVC)で測定した。BPは、膀胱が満たされる間に最低膀胱圧力を意味し、MPは、排尿周期の間に最高膀胱圧力を意味し、MVは、尿排出時の尿量を意味し、RVは、尿排出後、残余尿量を意味する。BCは、MV+RVとして定義され、MIは、排尿収縮の間の間隔を意味する。
【0076】
9.肺動脈高血圧(Pulmonary artery hypertension;PAH)動物モデル
【0077】
モノクロタリン(monocrotaline;MCT)誘導されたPAHラットモデルは、以前の報告によって確立した(Stem Cells and Development 24,2015,1658−1671)。雄の特定病源菌のフリールイスラット(8週齢、250〜280g)は、飼育温度及び光(12時間明暗周期)の調節下で、食べ物及び水の制限なしに飼育された。MCT(60mg/kg、Sigma)の皮下投与を通じてPAHを誘導した。対照群のラットは、同じ体積のPBSを投与した。MCTまたはPBS投与2週後、プライミング誘導していないUC−MSCsまたはVPA+S1Pで前処理したUC−MSCsを200μl PBS当たり2.5×10
5細胞密度でしっぽ静脈を通じて投与した。溶媒のみ処理した対照群(vehicle control)には、細胞なしに200μl PBSを投与した。注入前、細胞を暖かいPBSで2回洗い、7−AAD(BD Biosciences)排除染色を通じるFACS分析を用いて投与した細胞の生存能を観測した。
【0078】
10.収縮期右心室圧(RVSP)及び右心室肥大症(right ventricular hypertrophy;RVH)測定
【0079】
MCTまたはPBS投与4週後、人工呼吸器(Harvard Apparatus、Holliston、MA)を通じる呼吸保持と、ゾレチル(zoletil;40mg/kg)及びロムプン(rompun;10mg/kg)による麻酔下で、患者モニタ(MDE Escort II patient monitor、Arleta)が連結された26G針を使用した横隔膜の直接穿刺を通じて収縮期右心室圧を測定した。右心室圧(Right ventricular pressure;RVP)は、人工呼吸器を通じて呼吸を保持させた。RVHを測定するために、心臓の右心室を心室中隔から分離させ、右心室(RV)及び心室中隔を含む左心室(LV+S)の重量を測定した。
【0081】
膀胱組織の組織学的分析のために、サイトケラチンに対する免疫染色を通じて上皮細胞剥離、トルイジンブルー染色(Toluidine blue staining;8544−4125;Daejung Chemicals & Metals、Seoul、Korea)を通じて肥満細胞浸潤、マッソントリクローム染色(Masson´s trichrome staining;Junsei Chemical、Tokyo、Japan)を通じて組織線維化及びTUNEL染色(1 684 795;Roche、Mannheim、Germany)を通じて細胞死を測定した。肺組織に対しては、H&E−またはα−平滑筋アクチン(α−smooth muscle actin;α−SMA)−染色された部位で4μmの厚さ及び25〜100μmの直径を有した任意に選択された血管の任意に選択された領域に対して少なくとも5回以上、400×倍率でキャプチャーした。抗α−SMA(1:100、Abcam)を製造社の推薦プロトコルによって適用し、反応させた。核は、4’,6’−ジアミノ−2−フェニルインドール(4’,6’−diamino−2−phenylindole;D9542;DAPI、Sigma−Aldrich)で対比染色した。NIH ImageJ program(http://rsbweb.nih.gov/ij/)を使用して、中膜の厚さを測定した。中膜厚さ指数は、外部直径に対する外部直径−内部直径の比率で定義される。
【0082】
遺伝子の発現分析のために、全体RNAは、RNeasy Mini Kit(Qiagen Inc.,Valencia、CA)を使用して準備し、TaqMan Reverse Transcription Reagents(Applied Biosystems)を使用して逆転写を行い、PikoReal Real−Time PCR System(Thermo Scientific)及びiQ SYBR Green PCR Master Mix(Bio−Rad、Hercules、CA)を使用してリアルタイム定量PCR(real−time quantitative PCR;RQ−PCR)を行った。処理群当たり5匹の独立した動物において、各スライドから任意に選択された3部分の領域(n=15)は、デジタルイメージの定量に使われた。同様に、グループ当たり任意に選択された5匹動物からRQ−PCRを2回繰り返して(n=10)、遺伝子発現データを得た。
【0083】
<実施例1>S1PによるヒトUC−MSCsプライミングにおいて、5−Azaの影響
【0084】
5−Aza及びVPAの低濃度処理(1μM及び0.5mM)は、UC−MSCsでCXCR4の発現を非常に増加させる(
図1A)。次いで、本発明者らは、UC−MSCsの基本特徴に対する前記後成遺伝的調節子の効果を確認した。50nM S1Pのプライミングとは独立して、5−Aza及びVPAは、いずれも表面マーカータンパク質(CD29、CD73及びCD90陽性、CD34及びCD45陰性)の発現にはあまり影響を及ぼさなかった(
図1B及び
図2A)。また、5−Aza(5−Aza+S1P)またはVPA(VPA+S1P)を共に処理したS1Pプライミングは、多系統分化能にはほとんど影響を及ぼさなかったが、多系統分化能は、グリコサミノグリカン(glycosaminoglycans;アルシアンブルー)、無機質沈着(mineral deposition;アリザリンレッドS)及び脂質蓄積(lipid accumulation;オイルレッドO染色)のレベル増加をそれぞれ測定することにより、軟骨細胞、骨細胞及び脂肪細胞系統のin vitro分化分析を基にした(
図1C及び
図2B)。
【0085】
CXCR4の上向き調節とは矛盾して(
図1A)、トランズウェル移動分析において、5−Aza+S1PでプライミングされたUC−MSCsは、SDF−1反応に対する移動活性がプライミングされていない細胞よりも約30%程度減少した(
図1E)。また、5−Aza+S1Pプライミングは、クローン原性(clonogenic)前駆細胞に自己再生される頻度を示すクローン原性CFU−Fの活性を激しく損傷させた(
図1F)。MSCsの細胞増殖は、5−Aza+S1Pのプライミングによってほとんど変化がなかった(
図1D)。
【0086】
<実施例2>低濃度のS1P処理時に、UC−MSCsプライミングを強化させるVPA
【0087】
次いで、本発明者らは、低濃度のS1P処理時に、UC−MSCsのプライミングにVPAが及ぼす影響を調査した。このために、本発明者らは、脂肪−及びUCB−由来MSCsのプライミングのために使われる最適容量(200nM)よりも4倍少ない50nM S1Pを適用した。VPA単独処理とS1P単独処理時とは異なって、VPA+S1P処理時に、UC−MSCsプライミングは、SDF−1に対する化学走性(chemotactic activity)をプライミングされていない細胞よりも2〜3倍高く増加させた(
図3A及び
図3B)。VPA+S1Pプライミングによって強化されたSDF−1に対する反応は、5−Aza+S1Pプライミングの場合とは完全に異なって表われた。次いで、本発明者らは、HSPCsの移動と関連した信号伝逹経路の状態を確認した。化学走性の分析結果と一致するように、VPA+S1Pに露出されたUC−MSCsは、MAPK
p42/44及びAKTタンパク質のリン酸化を増加させたが、これは、信号伝逹経路の活性化を示す(
図3C)。前記結果は、5−Azaとは異なって、VPAが低濃度のS1PでもMAPK
p42/44及びAKT信号伝逹経路を活性化させて、UC−MSCsのプライミングを促進することができるということを示す。
【0088】
<実施例3>VPA+S1PでプライミングされたUC−MSCsの治療能力向上
【0089】
本発明者らは、MSCsの治療効果と関連した他の細胞活性に対するVPA+S1Pプライミングの効果を試験した。5−Aza+S1Pとは異なって(
図1)、VPA+S1PでプライミングされたUC−MSCsは、細胞増殖(
図4A)及びクローン原性CFU−F活性(
図4B)いずれも向上した。しかし、VPA単独処理とS1P単独処理したUC−MSCsでは、細胞増殖能とCFU−F活性増加とが観察されていない(
図4A及び
図4B)。MSCsは、抗炎症及び免疫調節能力に影響を及ぼすので、本発明者らは、VPA+S1Pプライミングが、UC−MSCsの抗炎症効果に影響を及ぼすかを試験した。これにより、本発明者らは、プライミングされていないUC−MSCsまたはVPA単独であるか、VPA+S1PでプライミングされたUC−MSCsから収集された条件培地を準備し、条件培地がリポ多糖類(lipopolysaccharide;LPS)で刺激された肺胞大食細胞(alveolar macrophages cell)であるMH−S細胞から腫瘍壊死因子−α(tumor necrosis factor−α;TNF−α)の分泌を抑制することができるか否かを試験した。UC−MSCsから収集された条件培地は、LPS刺激されたMH−S細胞からTNF−αの分泌の減少に効果的であった(
図4C)。特に、VPA+S1PプライミングされたUC−MSCsから収集された条件培地は、プライミングされていないUC−MSCsまたはVPA単独でプライミングされたUC−MSCsよりもTNF−α分泌をさらに抑制した。本発明者らは、ヒト肺線維芽細胞であるIMR90で収集したCMを対照群として使用したが、これは、in vitro抗炎症分析でTNF−α分泌をさらに増加させると表われた。
【0090】
VPA+S1Pプライミングの効果に対する分子学的機転を確認するために、本発明者らは、MSCsによって分泌される成長因子、前炎症サイトカイン及び抗炎症因子の発現を試験した。前述した細胞学的特性の実験結果と一致するように、VPA+S1PでプライミングされたUC−MSCsは、成長因子及びその受容体[e.g.、PDGFB、PDGFRB、cMET](
図5B)、前血管新生−[e.g.、VEGFB、VEGFC、ANGPT1、ANGPT2](
図5C)、抗炎症−[e.g.、LIF、TSG6、IDO1、IDO2](
図5D)及び幹細胞移動−[e.g.、MMP12](
図5A)関連因子の発現を非常に上向き調節した。しかし、VPA単独処理とS1P単独処理したUC−MSCsでは、前述した遺伝子発現に有意な変化が観察されていない(
図4A及び
図4B)。また、5−Aza+S1Pプライミングは、VPA+S1Pプライミングによって影響を及ぼした前述した遺伝子を下向き調節した。総合すれば、前記結果は、最小濃度のVPA及びS1P処理を通じたMSCsのプライミングがMSCsの移動、増殖、自己再生及び抗炎症能を効果的に促進させるということを示すが、これは、MSCsの治療潜在力に重要な役割を果たす。
【0091】
<実施例3>多様なVPA及びS1P濃度によるSDF−1aに対する走化性の分析
【0092】
本発明者らは、多様なVPA及びS1P濃度によるSDF−1aに対する走化性の分析を行って、VPA及びS1Pの最下濃度を決定しようとした。
【0093】
図6に示すように、VPAは、0.5mMに固定し、S1P濃度を5〜50nMに実験した結果、S1Pの最下濃度は、10nMに決定された(
図6a)。また、S1Pは、50nMに固定し、VPA濃度を0.05〜0.5mMに実験した結果、VPAの最下濃度は、0.1nMに決定された(
図6b)。
【0094】
<実施例4>IC/BPS治療において、VPA+S1PプライミングされたUC−MSCの生体内治療可能性の確認
【0095】
次いで、本発明者らは、HCl注入で確立されたIC/BPS動物モデルを使用してUC−MSCsの生体内効果を確認した。無麻酔下の膀胱内圧測定術を使用した膀胱機能分析結果、HCl注入誘導されたIC/BPSラット(HCl−IC group)は、対照群(sham−operated;sham)ラットに比べて、不規則な排尿を示し、排尿間隔(micturition interval;MI)が減っただけではなく、排尿量(micturition volume;MV)、最大圧力、排尿圧力(micturition pressure;MP)及び膀胱容量(bladder capacity;BC)も低くなったと表われた(
図7a及び
図7b)。2.5×10
5細胞数の対照群(naive)UC−MSCs(UC−MSC 250K)またはVPA+S1Pプライミングされた細胞(UC−MSC 250K+VPA+S1P)の単一移植は、損傷された排尿パラメータを改善させた。重要にも、VPA+S1PプライミングされたUC−MSCsが対照群細胞よりも優れた効果を示した(
図7a及び
図7b)。特に、HCl−ICグループの動物で非排尿期間(non−voiding periods;NVC)の間に収縮頻度が増加すると表われたが、このような症状は、VPA+S1PプライミングされたUC−MSCsで非常に改善されたが、対照群UC−MSCsでは、あまり改善されていない(
図7a及び
図7b)。無麻酔下の膀胱内圧測定術の結果も、前記機能改善効果と一致したが、対照群またはVPA+S1Pプライミングされた2.5×10
5UC−MSCsの投与によってラットモデルで深刻な尿路上皮剥離、肥満細胞浸潤、線維化、細胞死のような非正常な組織学的現象が回復されると表われた(
図8a及び
図8b)。このような非正常な組織学的現象は、ヒトIC/BPS膀胱でも表われる特徴である。特に、組織学的変形の回復は、対照群細胞に比べて、VPA+S1PプライミングされたUC−MSCが移植された膀胱組織でさらに優れた改善効果を示した。総合すれば、前記結果は、IC膀胱治療において、VPA+S1Pプライミングが、UC−MSCsの治療可能性を非常に改善させうるということを示した。
【0096】
<実施例5>PAH動物モデルでUC−MSCのVPA+S1P−媒介治療可能性の向上
【0097】
次いで、本発明者らは、MCTで誘導されたPAH動物モデルを使用して生体内条件下でVPA+S1Pプライミングの効果を確認した。以前の報告と類似に、RVSPは、MCT投与4週後に非常に増加した。対照群(naive)UC−MSC(PAH+MSCグループ)とは異なって、VPA+S1PでプライミングされたUC−MSC(PAH+VPA+S1P−MSCグループ)の投与は、MCT−誘導RVSPの上昇を非常に減少させた(
図9a)。また、MCT投与後、RV/(LV+S)も増加したが、VPA+S1P−MSCは、RV肥大症(hypertrophy)を非常に減少させ、プライミングしていないUC−MSCは、あまり効果がなかった(
図9a)。また、VPA+S1P−MSC投与は、MCTによって誘導された肺組織炎症、中膜厚さ指数及びα−SMA
+平滑筋細胞の増加を減少させた(
図9b)。総合すれば、前記結果は、VPA+S1PによるUC−MSCのプライミングが新生血管形成を促進させ、炎症反応を抑制する微小環境を誘導することができるということを示した。
【0098】
以上、本発明の特定の部分を詳しく記述したところ、当業者にとって、このような具体的な記述は、単に望ましい具現例であり、これにより、本発明の範囲が制限されるものではないという点は明白である。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とその等価物とによって定義される。