(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の工具は、一対のアーム部を回動させる把手アーム部の操作に大きな力を必要とし、トロリ線が硬質材料である場合や外径の大きな場合には、その矯正作業が非常に困難となるという問題があった。
また、機械の動力を利用する場合でも、出力の大きな大型機械が必要となるという問題があった。
【0008】
本発明は、トロリ線の矯正作業を容易に行うことが可能なトロリ線曲げ工具を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、回動可能に連結され、その回動端部から回動操作が入力される一対のハンドルと、トロリ線の外周の片側から接する第一の接触部及び第二の接触部と、前記トロリ線の外周の逆側から接する第三の接触部とを備え、前記第一から第三の接触部は、いずれも、前記トロリ線が嵌まる凹部を有する当接部材を備えており、前記第一から第三の接触部のうちいずれか二つの接触部は回転可能であり、残りの一つの接触部は回転しないように
構成されており、
前記第一から第三の接触部は、夫々が前記一対のハンドルに連結された一対のレバーに固定され、前記一対のハンドルから、二段階の梃子構造を介して、前記第一の接触部及び前記第二の接触部と前記第三の接触部とが相対的に接近又は離隔するように移動させる構成とする。
上記構成によれば、二段階の梃子構造により、一対のハンドルから加える力に対して第一から第三の接触部によりトロリ線に大きな加圧力を加えることができる。
また、このような構成とすることにより、第一から第三の接触部のいずれかが転動してトロリ線の位置ズレを生じることを抑制することができる。
【0010】
さらに、
本発明は、回動可能に連結され、その回動端部から回動操作が入力される一対のハンドルと、トロリ線の外周の片側から接する第一の接触部及び第二の接触部と、前記トロリ線の外周の逆側から接する第三の接触部とを備え、前記第一から第三の接触部は、いずれも、前記一対のハンドルの回動中心線に沿った方向の一方と他方の両方に向かって突出した状態で設けられ、前記第一から第三の接触部は、いずれも、前記一対のハンドルの回動中心線に沿った方向の一方と他方の両方に、前記トロリ線が嵌まる凹部を有する当接部材を備えており、前記第一から第三の接触部の、前記一対のハンドルの回動中心線に沿った方向の一方に設けられた前記当接部材の凹部と、前記一対のハンドルの回動中心線に沿った方向の他方に設けられた前記当接部材の凹部は、外径のサイズが異なるトロリ線が嵌まる大きさで形成され
、前記一対のハンドルから、二段階の梃子構造を介して、前記第一の接触部及び前記第二の接触部と前記第三の接触部とが相対的に接近又は離隔するように移動させる構成とする。
このような構成とすることにより、第一から第三の接触部の一方の突出側ともう一方の突出側とでそれぞれ外径のサイズが異なるトロリ線を容易に嵌め込むことができ、外径が異なる複数のトロリ線の矯正作業を良好に行うことができる。
【0012】
さらに、
本発明は、回動可能に連結され、その回動端部から回動操作が入力される一対のハンドルと、トロリ線の外周の片側から接する第一の接触部及び第二の接触部と、前記トロリ線の外周の逆側から接する第三の接触部とを備え、前記一対のハンドルから、二段階の梃子構造を介して、前記第一の接触部及び前記第二の接触部と前記第三の接触部とが相対的に接近又は離隔するように移動させ、さらに、工具に対して着脱可能なスタンドを備える構成とする。
このような構成とすることにより、トロリ線をドラムから引き出した後の地上における曲げ矯正作業において、スタンドに支えられた状態でトロリ線の矯正作業を行うことができ、トロリ線の重量による負担を軽減する。
また、スタンドは着脱可能であることから、必要に応じて使用することができる。
【0013】
さらに、望ましくは、前記スタンドは、前記工具を揺動可能とする揺動構造を有する構成とする。
このような構成とすることにより、スタンドに支えられた状態でトロリ線の矯正作業を行う場合に、トロリ線曲げ工具を容易に傾けることができ、トロリ線の姿勢に応じて矯正作業を行うことができる。
【0014】
さらに、望ましくは、前記一対のハンドルの回動範囲を調節する調節器を備える構成とする。
このような構成とすることにより、トロリ線の矯正量を調節器で調節することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、一対のハンドルの回動端部から回動操作を入力を有し、工具の一端部にトロリ線に接する第一から第三の接触部が設けられているので、ト取り回しが容易で、トロリ線がどのような向きであっても矯正作業を容易に行うことができる。
さらに、本発明のトロリ線曲げ工具は、第一から第三の接触部でトロリ線の矯正作業を行うので、大きく湾曲した場合に限らず、局所的な凹凸等の種々の変形状態にあるトロリ線を矯正することができる。
また、二段階の梃子構造を備えるので、第一から第三の接触部からトロリ線に大きな加圧力を加えることができ、トロリ線が硬質材料からなる場合や径の大きな場合にも矯正す
ることが可能となる。また、これにより、機械の動力を利用する場合でも、出力の大きな大型機械を不要とし、小型の動力機械を使用することが可能となる。
従って、本発明により作業性の高いトロリ線曲げ工具を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[トロリ線曲げ工具の全体構成]
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態はトロリ線曲げ工具10を例示する。
図1はトロリ線曲げ工具10の平面図、
図2は側面図である。
【0018】
トロリ線曲げ工具10は、回動可能に連結され、その回動端部から手動による回動操作が入力される一対のハンドル21,22と、トロリ線Tの一方の側に接する第一の接触部30及び第二の接触部40と、トロリ線Tの他方の側に接する第三の接触部50と、第一の接触部30を支持する第一のレバー60と、第二の接触部40を支持する第二のレバー70と、一対のハンドル21,22の回動範囲を調節する調節器80と、スタンド90とを備えている。
なお、以下の説明では、一対のハンドル21,22の長手方向に平行であって、一対のハンドル21,22が相互に回動する際の軌跡を含む平面を「回動面」とする。
【0019】
[ハンドル]
一対のハンドル21,22は、同一構造であり、これらは、いずれも、剛性の高い金属、例えば、ステンレス製であって、
図1に示すように、棒状の本体部211と、本体部211の一端部から延出された連結部212と、本体部211の他端部に設けられたグリップ213とを備えている。
【0020】
連結部212は、本体部211の一端部を挿入可能な円筒部214と、円筒部214から延びる板状の延出部215とを有している。
円筒部214は、一端部が開口して本体部211を挿入可能である。また、他端部は閉塞され、その閉塞端面から延出部215が延出されている。また、円筒部214には、その外周から内側に貫通するネジ穴が二つ形成されており、各ネジ穴に螺入された止めネジにより本体部211に締結固定されている。
【0021】
延出部215は、本体部211を延長する方向に対して幾分傾斜した方向に延出されており、その延出端部において、もう一方のハンドル21又は22の延出部215の延出端部と重ねられてボルト216により連結されている。
ボルト216は、支軸として機能し、ハンドル21とハンドル22とをそれぞれの長手方向に対して垂直な方向に沿った軸回りに回動可能に連結する。これにより、一対のハンドル21,22は、互いの回動端部を近接又は離隔させることができる。
【0022】
なお、一対のハンドル21,22が互いに近接し且つ平行となる状態をトロリ線曲げ工具10の基準姿勢とし、当該基準姿勢における一対のハンドル21,22の長手方向をトロリ線曲げ工具10の長手方向とする。また、
図1に示すように、この長手方向における一方(ボルト216による連結端部側)を「前」とし、長手方向における他方(グリップ213側)を「後」とする。また、前述した回動面に平行であって、基準姿勢における一対のハンドル21,22の長手方向に直交する方向の一方を「左」とし、長手方向に直交する方向の他方を「右」とする。
さらに、
図2に示すように、前述した回動面に垂直な方向の一方を「上」とし、回動面に垂直な方向の他方を「下」とする。
【0023】
グリップ213は、一対のハンドル21,22の回動端部を被覆するように設けられている。グリップ213は、一対のハンドル21,22の回動端部を回動操作する際に作業者が手で握るための把手であり、滑りにくい弾性材料であるゴムや樹脂から形成されている。
【0024】
[第一及び第二のレバー]
第一のレバー60は、一端部がハンドル21の延出部215の中間部に回動可能に連結され、他端部は第一の接触部30を支持している。
さらに、第一のレバー60は、他端部近傍から、その長手方向に対して概ね直交する方向であって後述する第二のレバー70側に向かって延出されたアーム部61を備えており、後述する第二のレバー70のアーム部71と回動可能に連結されている。
【0025】
第一のレバー60は、剛性の高い金属、例えばステンレスの金属板の折曲により、その長手方向から見て断面コ字状となる構造が形成されている。
そして、第一のレバー60の一端部では、断面コ字状の内側にハンドル21の延出部215を挿入させた状態で、ボルト62により連結されている。
ボルト62は、支軸として機能し、第一のレバー60とハンドル21の延出部215とを上下方向に沿った軸回りに回動可能に連結する。
【0026】
第二のレバー70は、平面視で、第一のレバー60と対称な構造であり、一端部がハンドル22の延出部215の中間部に回動可能に連結され、他端部は第二の接触部40を支持している。
さらに、第二のレバー70は、他端部近傍から、その長手方向に対して概ね直交する方向であって第一のレバー60側に向かって延出されたアーム部71を備えており、前述したように、第一のレバー60のアーム部61と回動可能に連結されている。
【0027】
第二のレバー70は、剛性の高い金属、例えばステンレスの金属板の折曲により、その長手方向から見て断面コ字状となる構造が形成されている。
そして、第二のレバー70の一端部では、断面コ字状の内側にハンドル22の延出部215を挿入させた状態で、ボルト72により連結されている。
ボルト72は、支軸として機能し、第二のレバー70とハンドル22の延出部215とを上下方向に沿った軸回りに回動可能に連結する。
【0028】
さらに、第一のレバー60のアーム部61の先端部と第二のレバー70のアーム部71の先端部とは上下に重なっており、これらを上下に貫通するボルト63により回動可能に連結されている。このボルト63は、段ネジ構造であって、第一のレバー60のアーム部61と第二のレバー70のアーム部71とを上下方向に沿った軸回りに回動可能に連結する支軸として機能する。なお、このボルト63と前述したボルト216,62,72とはいずれも平行となっている。
従って、一対のハンドル21,22と第一及び第二のレバー60,70は、いずれも同一の平面(回動面)に沿って回動動作を行うように連結されている。
【0029】
各ハンドル21,22は、それぞれが、ボルト216を支点、その回動端部のグリップ213を力点として、ボルト62,72を作用点とする梃子構造を構成している。
さらに、第一と第二のレバー60,70は、それぞれが、ボルト63を支点、ボルト62,72を力点とし、第一と第二の接触部30,40を作用点とする梃子構造を構成している。
そして、各ハンドル21,22において、支点(ボルト216)から力点(グリップ213)までの長さは、支点(ボルト216)から作用点(ボルト62,72)までの長さよりも十分に長い。
また、第一と第二のレバー60,70において、支点(ボルト63)から力点(ボルト62,72)までの長さは、支点(ボルト63)から作用点(第一と第二の接触部30,40)までの長さよりも十分に長い。
従って、一対のハンドル21,22と第一と第二のレバー60,70は、二段階の梃子構造を構成し、それぞれの梃子構造が各ハンドル21,22のグリップ213から入力される力を増力するので、第一と第二の接触部30,40においてトロリ線Tにより大きな曲げ荷重を付与することができる。
【0030】
[第一及び第二の接触部]
第一及び第二の接触部30,40は、第一及び第二のレバー60,70の上面から上方に突出した状態で設けられた当接部材としての第一のコマ部材31と、第一及び第二のレバー60,70の下面から下方に突出した状態で設けられた当接部材としての第二のコマ部材32と、第一のコマ部材31と第二のコマ部材32とを回転可能に軸支するボルト33とを備えている。
【0031】
第一のコマ部材31は、外周に凹部としての凹溝311を有する滑車状の部材であり、その中心を貫通したボルト33によって回転可能に支持されている。
第二のコマ部材32は、外周に凹部としての凹溝321を有し、第一のコマ部材31よりも小径な滑車状の部材であり、その中心を貫通したボルト33によって回転可能に支持されている。
【0032】
第一のコマ部材31の凹溝311と第二のコマ部材32の凹溝321とは、それぞれトロリ線Tが上下にずれないようにその外周をホールドするためのものである。
従って、第一のコマ部材31と第二のコマ部材32は硬質の樹脂から形成されている。これにより矯正作業の際に、トロリ線Tに対する傷の発生を低減することができる。なお、第一のコマ部材31と第二のコマ部材32のトロリ線Tに接触する外周部分のみを樹脂で形成して、その内側は強度の高い金属から形成しても良い。
【0033】
そして、第一のコマ部材31と第二のコマ部材32の外周の凹溝311,321の断面形状は、いずれも中心側に凹となる円弧状であり、第一のコマ部材31の凹溝311は第二のコマ部材32の凹溝321よりも径の大きな円弧状となっている。
【0034】
ボルト33は、第一のコマ部材31、第一又は第二のレバー60,70及び第二のコマ部材32を上下に貫通しており、第一のコマ部材31と第二のコマ部材32とを第一又は第二のレバー60,70を挟んで同心で回転可能に支持している。
このボルト33は、支軸として機能し、第一のコマ部材31と第二のコマ部材32とを上下方向に沿った軸回りに回転可能に支持する。
【0035】
なお、第二の接触部40は、
図1に示すように、第一のコマ部材31と第二のレバー70の上面との間にスペーサー34が介挿されており、第一の接触部30の第一のコマ部材31と第二の接触部40の第一のコマ部材31との高さが等しくなるように調整されている。
また、同様にして、第一の接触部30の第二のコマ部材32と第二のレバー70の下面との間にも図示しないスペーサーが介挿されており、第一の接触部30の第二のコマ部材32と第二の接触部40の第二のコマ部材32との高さも等しくなるように調整されている。
【0036】
[第三の接触部]
第三の接触部50は、第一のレバー60のアーム部61の上面から上方に突出した状態で設けられた当接部材としての第一のコマ部材51と、第二のレバー70のアーム部71の下面から下方に突出した状態で設けられた当接部材としての第二のコマ部材52とを備えており、これらは前述したアーム部61,71を連結するボルト63により支持されている。
【0037】
図3(A)は第三の接触部50の平面図、
図3(B)は側面図である。
第一のコマ部材51と第二のコマ部材52は、いずれも、平面視で略扇状であり、その中央部にはボルト63を挿通する上下方向に沿った貫通孔513,523が形成されている。
また、第一及び第二のコマ部材51,52の前端部には、その周面に沿って凹部としての凹溝511,521が形成されている。
【0038】
上記第一及び第二のコマ部材51,52は、金属で形成されているが、十分な強度が確保できるのであれば、前述した第一及び第二のコマ部材31,32のように、硬質の樹脂から形成しても良い。或いは、トロリ線Tと接触する周面部分のみを硬質の樹脂で形成しても良い。
【0039】
第一のコマ部材51の凹溝511は、前述した第一のコマ部材31の凹溝311との協働により、トロリ線Tが上下にずれないようにその外周をホールドするためのものである。
また、第二のコマ部材52の凹溝521は、前述した第二のコマ部材32の凹溝321との協働により、トロリ線Tが上下にずれないようにその外周をホールドするためのものである。
第一のコマ部材51と第二のコマ部材52の凹溝511,521の断面形状は、いずれも後方に凹となる円弧状である。
そして、第一のコマ部材51の凹溝511の断面形状は前述した第一のコマ部材31の凹溝311と径の等しい円弧状であり、第二のコマ部材52の凹溝521の断面形状は前述した第二のコマ部材32の凹溝321と径の等しい円弧状である。
【0040】
このように、第一の接触部30の第一のコマ部材31の凹溝311と第二の接触部40の第一のコマ部材31の凹溝311と第三の接触部50の第一のコマ部材51の凹溝511とは、いずれも径の等しい円弧状であることから、これら円弧の径に応じた外径のトロリ線Tのクセ直し作業を好適に行うことができる。
また、第一の接触部30の第二のコマ部材32の凹溝321と第二の接触部40の第二のコマ部材32の凹溝321と第三の接触部50の第二のコマ部材52の凹溝521とは、いずれも小径であって径の等しい円弧状であることから、凹溝321,521は溝が深くなり、各溝の底部の距離が広がるので、これらは外径の大きなトロリ線Tのクセ直し作業を好適に行うことができる。
【0041】
また、第一及び第二のコマ部材51,52の後端部には前後方向に対して垂直な平坦面512,522が形成されている。
そして、第一のコマ部材51と第二のコマ部材52とは、これらの平坦面512、522の両方に密着する平板状の規制板53により連結されている。
【0042】
規制板53は、第一のコマ部材51と第二のコマ部材52に対して個別にネジ止めされている。さらに、規制板53は、第一のコマ部材51と第二のコマ部材52の間において、前述した第一のレバー60のアーム部61の先端部後端面と第二のレバー70のアーム部71の先端部後端面とに当接している。これらによって規制板53の平板面が前後方向に対して垂直な向きを維持するように固定されている。アーム部61,71の先端部はボルト63を中心とする円弧状なので、アーム部61,71が回動しても、これらに当接する規制板53はその向きを一定に維持することができる。
従って、第一のコマ部材51及び第二のコマ部材52はボルト63により支持されているが、規制板53によって、ボルト63を中心とする回動が規制される。
これにより、第一及び第二のコマ部材51,52は、それぞれの凹溝511,521を第一の接触部30の第一及び第二のコマ部材31,32と第二の接触部40の第一及び第二のコマ部材31,32とに向けた状態を維持することができる。
【0043】
[調節器]
一対のハンドル21,22には、個別に、調節器80が設けられている。
それぞれの調節器80は、円筒部214の外周面に形成されたネジ穴に螺合する調節ネジ81と、調節ネジ81の途中部分に設けられた蝶ナット82とからなる。
そして、ハンドル21側のネジ穴は、円筒部214の外周面のハンドル22側の部分に設けられ、ハンドル22側のネジ穴は、円筒部214の外周面のハンドル21側の部分に設けられている。
【0044】
これにより、一対のハンドル21,22が互いに接近する方向に回動させると、それぞれの調節器80の調節ネジ81の頭部同士が当接し、それ以上接近する方向に回動しないように回動範囲を規制することができる。
また、各調節ネジ81は回転により突出量が変わるので、これにより、一対のハンドル21,22の接近可能な回動範囲を調節することができる。
なお、蝶ナット82は、調節ネジ81の回転によりその突出量を決定した後に、調節ネジ81が回転しないように締結し、調節ネジ81の位置を固定することができる。
【0045】
[スタンド]
図4はスタンド90の全体図、
図5はスタンド90の部分拡大図である。
スタンド90は、トロリ線曲げ工具10の前端部近傍における下部、より具体的には、ボルト63の上端部又はボルト63を締結するためのナット64の下端部に対して着脱可能に装備することができる。
図2は、スタンド90がナット64の下端部から下方に垂下された状態で装備された状態を示している。
【0046】
スタンド90は、
図2、
図4及び
図5に示すように、トロリ線曲げ工具10の全体を支える丸棒状の支柱91と、支柱91の下端部に装備された滑り止めのキャップ92と、ナット64の下端部に形成された図示しない挿入穴に挿入するボス部材93と、ボス部材93の下端部と支柱91の上端部とを連結するコイルバネ94と、ボス部材93と支柱91との連結部分を被覆する円筒状のジョイント部材95とを備えている。
【0047】
支柱91は、トロリ線曲げ工具10の全体と作業対象となるトロリ線Tの重量を支持することが可能な強度を有する金属材料、例えば、スチールやステンレス等から形成されている。
キャップ92は、ゴム、樹脂等からなる。
【0048】
ボス部材93は、円筒状であって、外周にピン931が突設されている。ボス部材93と支柱91の外径は等しくなっており、ボス部材93の下端部がジョイント部材95の一端部から挿入され、支柱91の上端部がジョイント部材95の他端部から挿入されている。
ボス部材93の下端部と支柱91の上端部には、それぞれ縮径部が形成され、これらがコイルバネ94の一端部と他端部とにそれぞれ挿入されている。そして、コイルバネ94は、ジョイント部材95の内部において、ボス部材93の下端部と支柱91の上端部とを連結している。
また、ボス部材93のピン931は、ジョイント部材95の上端部が当接し、ストッパーとなっている。
【0049】
ジョイント部材95は、ゴム等の弾性材料から形成されており、可撓性を有している。
そして、ボス部材93と支柱91は、コイルバネ94で連結されると共に、その周囲をさらにジョイント部材95で連結されている。これらは揺動構造を構成している。
この揺動構造により、支柱91とボス部材93の間で撓みが生じて、ボス部材93は支柱91の周囲360°のいずれの方向にも揺動することができるようになっている。
従って、スタンド90をトロリ線曲げ工具10に装着した状態でトロリ線のクセの矯正作業を行う場合に、トロリ線曲げ工具10の先端部をあらゆる方向に傾けることができ、トロリ線Tの形状や姿勢に応じて適正な向きで作業を行うことができる。
【0050】
また、ボス部材93の上端部近傍の外周には、当該外周の半径方向に沿って円形の有底穴932が形成されており、その内部には、金属の球体96が格納されている。有底穴932は、その入り口部分がかしめ等により縮径されており、内部の球体96が外に飛び出さないように格納されている。
また、球体96の背後には押圧バネ97が配置されており、球体96を外側に向かって押圧している。
かかる構造により、球体96の一部がボス部材93の外周から突出した状態となる。また、球体96は押圧バネ97に抗して押し込み可能となっている。
なお、有底穴932内には、球体に限らず、先端が縮径或いは丸みを帯びた筒状ピンを格納しても良い。
【0051】
前述したボルト63の上端部及びナット64の下端部に形成されたボス部材93の挿入穴は、その内部に周溝が形成されており、ボス部材93を挿入すると、周溝において球体96が外側に突出してボス部材93の抜け止めとして機能する。なお、スタンド90を外す際には、当該スタンド90を強く引っ張ると、球体96が一時的に内側に引っ込むので、ボス部材93をボルト63又はナット64の挿入穴から引き抜くことができる。
【0052】
なお、ボルト63の上端部にスタンド90を装着する場合には、
図2の状態のトロリ線曲げ工具10の上下を反転させた状態とし(第二のコマ部材32,52を使用する場合)、ボルト63の上端部の挿入穴にスタンド90を垂下状態で装着することができる。
【0053】
[トロリ線曲げ工具によるトロリ線の矯正作業]
上記構成からなるトロリ線曲げ工具10のトロリ線のクセの矯正作業について説明する。
ここでは、
図2に示すように、トロリ線曲げ工具10の前端部にスタンド90を装着した状態で作業を行う場合を例示する。
【0054】
スタンド90は、支柱91がほぼ鉛直上下方向に沿った状態となる様に立てた状態でキャップ92を地面や床面に接地させる。
そして、作業者は、一対のハンドル21,22のグリップ213を握り、各ハンドル21,22の回動端部側を左右方向に開くように回動操作する。
これにより、第一及び第二の接触部30,40が前方に、第三の接触部50が後方に移動し、互いに前後方向について離隔する。
【0055】
こうして離隔した第一の接触部30の第一のコマ部材31の凹溝311及び第二の接触部40の第一のコマ部材31の凹溝311と第三の接触部50の第一のコマ部材51の凹溝511との間にトロリ線Tを配置する。なお、この場合、トロリ線Tの突出部分或いは凸状に湾曲した部分が第三の接触部50の第一のコマ部材51の凹溝511に対向するように配置する。
また、トロリ線Tの配置に前後して、一対のハンドル21,22の各調節器80の調節ネジ81の突出量を一対のハンドル21,22が閉じすぎないように適宜調節する。
【0056】
そして、一対のハンドル21,22の回動端部を互いに接近する方向に回動操作すると、第一及び第二の接触部30,40が後方に、第三の接触部50が前方に移動し、互いに前後方向に接近する。
これにより、トロリ線Tの凸状部分が、第一の接触部30の第一のコマ部材31と第二の接触部40の第一のコマ部材31との間で第三の接触部50の第一のコマ部材51により押し込まれ、矯正が行われる。
なお、各調節器80の調節ネジ81の突出量が正確に調節されている場合には、各調節ネジ81同士が当接するまで一対のハンドル21,22の回動端部側が互いに接近する方向に回動させる。
【0057】
また、トロリ線Tの外径がより大きいサイズである場合には、トロリ線曲げ工具10の第一の接触部30の第二のコマ部材32、第二の接触部40の第二のコマ部材32及び第三の接触部50の第二のコマ部材52が上を向いた状態として、ボルト63の挿入穴にスタンド90を装着し、第一及び第二の接触部30,40の第二のコマ部材32の凹溝321と第三の接触部50の第二のコマ部材52の凹溝521との間にトロリ線Tを配置して、上記と同様にして矯正作業を実行する。
【0058】
[発明の実施形態の技術的効果]
上記トロリ線曲げ工具10は、第一から第三の接触部30〜50が工具の前端部側に配置され、一対のハンドル21,22の回動端部が工具の後端部側に配置されているので、作業者はトロリ線曲げ工具10の後端部を持ち、前端部をトロリ線Tに向けた状態で矯正作業を行うことができる。
従って、トロリ線曲げ工具10を自由な方向に向けて矯正作業を行うことができるので、トロリ線Tがどのような向きであっても矯正作業を行うことができ、作業性の向上を図ることが可能となる。
また、トロリ線Tが布設前の地面に置かれた状態であっても、布設されて吊下された状態であっても、矯正作業を容易に行うことが可能となる。
【0059】
また、トロリ線曲げ工具10は、一対のハンドル21,22から、二段階の梃子構造を介して第一から第三の接触部30〜50を相対的に前後方向に移動させる構成であることから、作業者が一対のハンドル21,22から加える力に対して第一から第三の接触部30〜50によりトロリ線Tにより大きな加圧力を加えることができ、従来よりも硬質材料のトロリ線Tや径の大きいトロリ線Tであっても、容易に矯正作業を行うことが可能となる。
【0060】
また、トロリ線曲げ工具10は、第一から第三の接触部30〜50の各コマ部材31,32,51,52は、いずれも、一対のハンドル21,22の回動中心線に沿った方向(上下方向)に向かって突出した状態で設けられているので、第一から第三の接触部30〜50に対して上方又は下方からトロリ線Tを容易に嵌め込むことができ、作業性のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0061】
さらに、第一から第三の接触部30〜50においては、一対のハンドル21,22の回動中心線に沿った方向の一方(上側)に設けられた第一のコマ部材31,51の凹溝311,511と、一対のハンドル21,22の回動中心線に沿った方向の他方(下側)に設けられた第二のコマ部材32,52の凹溝321,521とで、外径のサイズが異なるトロリ線Tが嵌まる大きさで形成されている。
これにより、トロリ線曲げ工具10の第一から第三の接触部30〜50の上側と下側とで外径のサイズが異なるトロリ線Tを容易に嵌め込むことができ、外径について広い範囲のトロリ線Tの矯正作業を行うことが可能となる。
【0062】
また、上記第三の接触部50は、第一及び第二のコマ部材51,52の凹溝511,521の向きが変わらぬように回動動作を規制する規制板53を備えている。このため、トロリ線Tを各コマ部材31,32,51,52で挟む前の状態では、各コマ部材31,32が転動して位置合わせを容易とすると共に、矯正動作を開始した際には、コマ部材51,52がトロリ線Tを挟持して位置ズレを抑えることができ、作業性が良好かつ正確に矯正作業を行うことが可能となる。
【0063】
また、トロリ線曲げ工具10は、前端部側に、下方に延出されたスタンド90を備えるので、トロリ線をドラムから引き出した後の地上における曲げ矯正作業において、当該スタンド90で支えられた状態でトロリ線Tの矯正作業を行うことができ、トロリ線Tの重量による負担を軽減することが可能となる。
また、スタンド90は、着脱可能であることから、必要に応じてスタンド90を使用することができる。
さらに、スタンド90は、当該スタンド90を中心とする周囲360°いずれの方向に揺動可能な揺動構造を有しているので、トロリ線Tの矯正作業を行う場合に、スタンド90を除くトロリ線曲げ工具10の全体を任意の方向に容易に傾けることができ、作業に適した姿勢で矯正作業を行うことができる。
【0064】
また、トロリ線曲げ工具10は、一対のハンドル21,22の回動範囲を調節する調節器80を備えているので、トロリ線Tの矯正量を調節することができ、ミスのない矯正作業を行うことが可能となる。
【0065】
[その他]
上記トロリ線曲げ工具10では、第三の接触部50の第一のコマ部材51と第二のコマ部材52とが規制板53により回転しないように固定される構成を例示したが、第一又は第二の接触部30,40のいずれか一方の第一及び第二のコマ部材を回転しないように規制し、第三の接触部50の第一のコマ部材を滑車状とし、回転可能としても良い。
また、上記トロリ線曲げ工具10は、手動によるトロリ線の矯正作業を例示したが、上記トロリ線曲げ工具10に対して機械的な動力を接続し、一対のハンドル21,22から回動動作を入力する構成としても良い。
そのような構成とした場合、出力の小さな小型の動力機械を使用することが可能である。