特許第6934672号(P6934672)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6934672
(24)【登録日】2021年8月26日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】トンネル用防水シート及びトンネル
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/38 20060101AFI20210906BHJP
【FI】
   E21D11/38 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-241993(P2018-241993)
(22)【出願日】2018年12月26日
(65)【公開番号】特開2020-63647(P2020-63647A)
(43)【公開日】2020年4月23日
【審査請求日】2020年6月30日
(31)【優先権主張番号】特願2018-194756(P2018-194756)
(32)【優先日】2018年10月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502198320
【氏名又は名称】株式会社エイチケーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100092679
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 盛之助
(72)【発明者】
【氏名】浜瀬 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 明夫
【審査官】 東 芳隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−086688(JP,A)
【文献】 特開昭63−060400(JP,A)
【文献】 米国特許第04915542(US,A)
【文献】 特開平10−196295(JP,A)
【文献】 特開2018−091011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 11/00−11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透水層と、
前記透水層の幅方向両端部に設けられ前記透水層と接着されない部分である端部不接着部、前記透水層を幅方向に横切って両方の前記端部不接着部に接続するように設けられ前記透水層と接着されない部分である横断不接着部、及び前記透水層と接着される部分である接着部を設けて前記透水層に接着される不透水層と、
を備える防水シート単体部を、前記端部不接着部において複数枚を幅方向に連ねて接着したトンネル用防水シートであって、
前記接着部が、当該接着部の前記防水シート単体部の伸延方向の長さを、前記横断不接着部の前記防水シート単体部の伸延方向の長さより長く形成すると共に、
当該接着部の前記防水シート単体部の伸延方向に対する垂直方向の長さを、前記端部不接着部の前記防水シート単体部の伸延方向に対する垂直方向の長さより長く形成したトンネル用防水シート。
【請求項2】
前記接着部は、
互いに前記横断不接着部が前記トンネル用防水シートの幅方向に直列して配置されないように互い違いに配置される請求項1に記載のトンネル用防水シート。
【請求項3】
前記接着部は、
前記防水シート単体部の長手方向に複数の列をなす請求項1又は2に記載のトンネル用防水シート。
【請求項4】
掘削した地山にコンクリートを吹き付けて形成した吹付けコンクリート層と、
前記吹付けコンクリート層に背面充填剤によって全面接着された透水層と、
前記透水層の幅方向両端部に設けられ、前記透水層と接着されない部分である端部不接着部、前記透水層を幅方向に横切り、両方の前記端部不接着部に接続するように設けられ、前記透水層と接着されない部分である横断不接着部、及び前記透水層と接着される部分である接着部を設けて前記透水層に接着される不透水層と、
を備える防水シート単体部を、前記端部不接着部において複数枚を幅方向に連ねて接着したトンネル用防水シートであって、前記接着部が、当該接着部の前記防水シート単体部の伸延方向の長さを、前記横断不接着部の前記防水シート単体部の伸延方向の長さより長く形成すると共に、当該接着部の前記防水シート単体部の伸延方向に対する垂直方向の長さを、前記端部不接着部の前記防水シート単体部の伸延方向に対する垂直方向の長さより長く形成したトンネル用防水シートと
前記トンネル用防水シートのトンネル内側の表面にコンクリートによって形成される二次覆工コンクリート層と、
を備えるトンネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル用防水シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば新幹線を始めとする高速鉄道などの鉄道や高速道路などの道路等のトンネル工事には背面平滑型トンネルライニング工法(以下、FILM工法という。)が用いられてきた。
【0003】
このFILM工法は、掘削後の地山にコンクリートを吹き付けて吹付けコンクリート層を生成し、防水シートをモルタルなどの背面充填剤によって全面接着させる。そして、この防水シートの上に二次覆工コンクリートが打設され、トンネルの壁面が形成される。
【0004】
FILM工法によれば、防水シートは表面が平滑になり、確実な防水効果を発揮するものと期待される。
【0005】
ここで用いられる従来の防水シートは、樹脂によって形成される不織布の透水層と、樹脂によって形成されるフィルムの不透水層とを全面溶着して形成される。
【0006】
この従来の防水シートを使用したFILM工法の場合、背面充填剤が含浸した透水層と、不透水層との間に閉じ込められた空気が二次覆工コンクリートの打設時に防水シートの背面においてトンネルの頂部に押し上げられる現象が起きることがある。
【0007】
この現象が生じると、隣接する防水シート同士の溶着接合部分が空気によって膨らみ、破損して防水性能が低下する。
【0008】
この点に関し、防水シートのトンネルの頂部付近に空気抜け穴を設け、この穴に空気抜き装置を取り付けて空気を抜く技術が提案されている(例えば、特許文献1。)。
【0009】
しかし、この技術では、二次覆工コンクリートを打設するまで空気抜け穴を開放しておき、二次覆工コンクリートの打設が頂部付近に来たタイミングを見計らって空気抜け穴を塞ぐ必要があり、空気抜き装置の取り付け位置のみならず、空気抜き装置の閉鎖タイムミングも合わせることは、うまくいかないことも多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2018−91011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、防水シートの背面の空気をより簡便に、かつ、より確実に抜くことができるトンネル用防水シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、透水層と、前記透水層の幅方向両端部に設けられ、前記透水層と接着されない部分である端部不接着部、前記透水層を幅方向に横切り、両方の前記端部不接着部に接続するように設けられ、前記透水層と接着されない部分である横断不接着部、及び前記透水層と接着される部分である接着部を設けて前記透水層に接着される不透水層と、を備える防水シート単体部を前記端部不接着部において複数枚を幅方向に連ねて接着したトンネル用防水シートを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、防水シートの背面の空気をより簡便に、かつ、より確実に抜くことができるトンネル用防水シートを提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態の背面平滑型トンネルライニング工法の施工方法を示す図。
図2】第1の実施形態の防水シートに含まれる防水シート単体部の正面図。
図3】第1の実施形態の防水シート単体部の図2におけるAA断面図。
図4】第1の実施形態の防水シートの正面図。
図5】第1の実施形態の防水シートの図4におけるBB断面図。
図6】第1の実施形態の防水シートを用いた背面平滑型トンネルライニング工法の施工手順の例を示す図。
図7】第1の実施形態の防水シートを複数枚設置したトンネルの様子を示す部分断面図。
図8】第2の実施形態の防水シート単体部の正面図。
図9】第2の実施形態の変形例に係る防水シート単体部の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係るトンネル用防水シート(以下、防水シート100という。)及びトンネルを、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、背面平滑型トンネルライニング工法(以下、FILM工法という。)の施工方法を示す図である。
【0017】
図1に示すように、FILM工法は、掘削後の地山10にコンクリートを吹き付けて吹付けコンクリート層11をまず形成する。次に、防水シート100をモルタルなどの背面充填剤12によって全面接着させる。さらに、防水シート100のトンネル内側の表面にセントル型枠14を設け、防水シート100とセントル型枠14の間の二次覆工打設空間13に、防水シート100の上からコンクリートを打設して二次覆工コンクリート層13A(図6参照。)を形成する。最後にセントル型枠14を取り除く。
【0018】
図2は本実施形態の防水シート100に含まれる防水シート単体部110の正面図、図3は防水シート単体部110の図2におけるAA断面拡大図である。
【0019】
図2及び図3に示すように、防水シート単体部110は、透水層101と、透水層101に透水層101の幅方向両端部に接着されない部分である端部不接着部105、透水層101を幅方向に横切り、両方の端部不接着部105に接続するように設けられる接着されない部分である横断不接着部106、及び接着される部分である接着部103を設けて透水層101に接着される不透水層102と、を備える。
【0020】
透水層101は、樹脂等によって形成される不織布を備える。透水層101の厚みは、2mm〜10mm、望ましくは3mm〜5mmである。この範囲を下回ると透水性能に問題が生じ、上回ると作業性が悪くなる。
【0021】
不透水層102は、樹脂フィルムを備える。不透水層102の厚みは、0.4mm〜3mm、望ましくは0.8mm〜2mmである。この範囲を下回ると破損等が生じやすくなり、上回ると作業性が悪くなる。
【0022】
透水層101と不透水層102との接着は、加熱による樹脂の溶着であっても、接着剤による接着であってもよい。
【0023】
接着部103の防水シート単体部110の伸延方向の長さH1は、横断不接着部106の防水シート単体部110の伸延方向の長さH2より長い。
【0024】
接着部103の防水シート単体部110の伸延方向の長さH1は、防水シート100を背面充填剤12によって吹付けコンクリート層11に固定するのに適した長さから適宜選択できる。
【0025】
横断不接着部106の防水シート単体部110の伸延方向の長さH2は、防水シート100の背面に溜まった空気を排気するのに適した長さから適宜設定できる。
【0026】
接着部103の防水シート単体部110の伸延方向に対する垂直方向である幅方向の長さである幅長W1は、防水シート単体部110の幅の長さW2から幅長W1を除いた残りの長さ、つまり端部不接着部105の防水シート単体部110の伸延方向に対する垂直方向の幅方向の長さW3より長い。
【0027】
接着部103の防水シート単体部110の伸延方向に対する垂直方向である幅方向の長さW1は、防水シート100を背面充填剤12によって吹付けコンクリート層11に固定するのに適した長さから適宜選択できる。
【0028】
横断不接着部106の防水シート単体部110の伸延方向の長さW2は、防水シート100の背面に溜まった空気を排気するのに適した長さから適宜設定できる。
【0029】
接着部103の内部は、透水層101と不透水層102とが全面に接着される。接着部103の形状は、特に限定されず、矩形であっても、多角形であっても、曲線を含んでもよい。
【0030】
横断不接着部106の形状は、特に限定されず、矩形であっても、多角形であっても、曲線を含んでもよい。
【0031】
図4は本実施形態の防水シート100の正面図、図5は防水シート100の図4におけるBB断面図である。
【0032】
図4及び図5に示すように、防水シート100は複数の防水シート単体部110を幅方向に連ねてつなぎ合わせて形成されることができる。
【0033】
防水シート100は、防水シート単体部110の端部不接着部105における不透水層102を溶着により接着される伸延方向接着部104を備える。端部不接着部105における不透水層102と透水層101とは、接着されていないが、通気性を損なわない限りにおいて接着されていてもよい。
【0034】
隣接して接着される防水シート単体部110の接着部103同士は、互いに横断不接着部106が防水シート100の幅方向に直列して配置されないように互い違いに配置される。
【0035】
互い違いに接着部103を配置することは、防水シート100の吹付けコンクリート層11への接着強度を、背面の空気の廃棄性能を低下させずに高めることができるという効果がある。
【0036】
防水シート100の背面の空気は、矢印X1に示すように、横断不接着部106から端部不接着部105を介して、さらに横断不接着部106へと順に排気される。
【0037】
図6は、防水シート100を用いたFILM工法の施工手順の例を示す図である。
【0038】
図6(A)に示すように、シート台車202に次の防水シート100を、透水層101を吹付けコンクリート層11に向けて載置する。この際、不透水層102の端部は互いに「拝み合わせ」に合わせる。
【0039】
図6(B)に示すように、シート台車202を吹付けコンクリート層11側に移動させ、隣接する防水シート100同士を近づける。
【0040】
図6(C)に示すように、「拝み合わせ」にした不透水層102の幅方向両端部同士を溶着し、透水層101と吹付けコンクリート層11との間の空間に背面充填剤12を注入する。
【0041】
図6(D)に示すように、矢印X2のように、図6の正面視左から右に向けて、つまり隣接する防水シート100の反対側に向けて、背面の空気を追い出す。そして、背面充填剤12が固化したらセントル型枠14及び妻板14Aを設け、コンクリートを打設して二次覆工コンクリート層13Aを生成する。
【0042】
図7は、防水シート100を複数枚設置したトンネルの様子を示す部分断面図である。
【0043】
図7に示すように、防水シート100は伸延方向をトンネルの下から頂部に向かうように設置される。
【0044】
以上述べたように、本実施形態の防水シート100は、透水層101と、透水層101の幅方向両端部に設けられ、透水層101と接着されない部分である端部不接着部105、透水層101を幅方向に横切り、両方の端部不接着部105に接続するように設けられ、透水層101と接着されない部分である横断不接着部106、及び透水層101と接着される部分である接着部103を設けて透水層101に接着される不透水層102と、を備え、伸延方向に端部不接着部105の不透水層102が接着され、幅方向に連なる複数の防水シート単体部110を備える。
【0045】
従って、防水シート100の背面に閉じ込められた空気は、横断不接着部106から端部不接着部105を介して、さらに横断不接着部106へと順に排気される。
【0046】
よって、本発明によれば、空気抜き装置等を設けることなく、防水シートの背面の空気をより簡便に、かつ、より確実に抜くことができるトンネル用防水シートを提供することができるという効果がある。
【0047】
(第2の実施形態)
本実施形態の防水シート100及びトンネルは、防水シート単体部110の接着部103の形状が第1の実施形態の接着部103の形状と異なる以外、第1の実施形態の態様と同様である。従って、接着部103の形状のみについて説明する。
【0048】
図8は、本実施形態の防水シート単体部110の正面図である。図8に示すように、本実施形態の防水シート単体部110は、接着部103が防水シート単体部110の長手方向に複数の列をなす。従って、接着部103は何本かの点線状ないし破線状に配置される。透水層101と不透水層102との接着を強力な接着剤によって行った場合には、ほぼ円形の接着部103が点線状に配置される。
【0049】
横断不接着部106の防水シート単体部110の伸延方向の長さH2と、接着部103の防水シート単体部110の伸延方向の長さH3と、は任意の長さに設定されうる。特に、透水層101と不透水層102との接着を強力な接着剤によって行った場合には、横断不接着部106の防水シート単体部110の伸延方向の長さH2は、接着部103の防水シート単体部110の伸延方向の長さH3より長くなっても差し支えない。また、横断不接着部106の防水シート単体部110の伸延方向の長さH2は、接着部103の防水シート単体部110の伸延方向の長さH3以下の長さであってもよいことは、接着強度が増すのであるからもちろんである。
【0050】
接着部103の幅方向の長さW4は、端部不接着部105の防水シート単体部110の伸延方向に対する垂直方向の幅方向の長さW3より長い。
【0051】
接着部103同士の幅方向の間隔は、適宜定められる。
【0052】
接着部103の形状は、長方形が望ましいが、正方形でも、多角形でも、円形など、曲線を含む形状でもよい。
【0053】
接着部103の配置は、防水シート単体部110の幅方向に並んで配置される。
【0054】
図9は、本実施形態の変形例に係る防水シート単体部110の正面図である。図9に示すように、接着部103の配置は、防水シート単体部110の幅方向に互い違いに配置されていてもよい。
【0055】
以上述べたように、本実施形態の防水シート100は、接着部103が防水シート単体部110の長手方向に複数の列をなす。
【0056】
従って、本発明によれば、防水シートの背面の空気を、さらに簡便に、かつ、さらに確実に抜くことができるトンネル用防水シートを提供することができるという効果がある。
【符号の説明】
【0057】
10 地山
11 吹付けコンクリート層
12 背面充填剤
13 二次覆工打設空間
13A 二次覆工コンクリート層
14 セントル型枠
14A 妻板
100 防水シート
101 透水層
102 不透水層
103 接着部
104 伸延方向接着部
105 端部不接着部
106 横断不接着部
110 防水シート単体部
202 シート台車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9