特許第6934675号(P6934675)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6934675植物栽培施設内の条件を制御するための装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6934675
(24)【登録日】2021年8月26日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】植物栽培施設内の条件を制御するための装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/24 20060101AFI20210906BHJP
   F21V 29/503 20150101ALI20210906BHJP
   F21V 29/57 20150101ALI20210906BHJP
   F28D 20/00 20060101ALI20210906BHJP
【FI】
   A01G9/24 U
   F21V29/503
   F21V29/57
   F28D20/00 B
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-565360(P2018-565360)
(86)(22)【出願日】2017年6月8日
(65)【公表番号】特表2019-520821(P2019-520821A)
(43)【公表日】2019年7月25日
(86)【国際出願番号】FI2017050424
(87)【国際公開番号】WO2017216419
(87)【国際公開日】20171221
【審査請求日】2020年5月8日
(31)【優先権主張番号】20165491
(32)【優先日】2016年6月13日
(33)【優先権主張国】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】512039215
【氏名又は名称】ネットレッド オイ
【氏名又は名称原語表記】Netled Oy
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】キヴィオヤ,ニコ−マッティ
【審査官】 磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−051052(JP,U)
【文献】 特開2011−244697(JP,A)
【文献】 実開昭61−083849(JP,U)
【文献】 特開2016−063787(JP,A)
【文献】 特表2009−527083(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0049417(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/14 − 9/26
A01G 31/00 − 31/06
F21V 29/503
F21V 29/57
F25B 1/00
F28D 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物栽培施設内の条件を制御するための装置であって、
環境的に密閉可能であり、かつ閉鎖可能な栽培施設(K)内に存在する植物に関連して配置され、外部電源で動作するいくつかの電気照明器具(1a)からなり、該照明器具は照明機能を提供する1または複数の電気部品(1a1)を含む、照明システム(1)と、
栽培施設内の温度上昇を低下させるまたは妨げるための循環式の冷却装置(2)であって、栽培施設(K)内の植物に関連して存在する冷却マニホールド(2)を含み、冷却マニホールド(2)によって照明システムに含まれる照明器具(1a)がポンプ作用(P1)によってマニホールド内に導かれる冷却水で冷却されるように構成される、冷却装置(2)と、
冷却装置の循環水に伝達される、栽培施設で発生した余剰熱を利用するための熱回収装置(3)であって、熱回収装置(3)によって回収された熱を貯蔵するための、水タンクおよび/または蓄熱ユニットを含む蓄熱システム(3b)を含む、熱回収装置(3)と、を少なくとも含む装置において、
熱回収装置(3)は、栽培施設の室内空気内に吸収された水および/または熱を収集する1または複数の凝縮器乾燥機/冷却器(3a)と、冷却装置の循環水(2; 2p)お
よび/または凝縮器乾燥機/冷却器の循環水(3;3d)を介して蓄熱システム(3b)に蓄積された熱を、1または複数の水循環ループ(2p,3d)に関して独立した二次回路(tp)に伝達させるためのヒートポンプアセンブリ(3c)とを含むことを特徴とする装置。
【請求項2】
熱交換器(LV)であって、凝縮器乾燥機/冷却器(3a)の出口空気を、二次回路(tp)に含まれるヒートポンプアセンブリ(3c)から、および/または冷却装置(2)から熱交換器に導かれる循環水(tp1および/または2p)で予熱するための熱交換器(LV)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
ヒートポンプアセンブリ(3c)は、ポンプ作動式(P3)の二次回路(tp)に含まれる1または複数の水−水ヒートポンプを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
植物は、栽培施設の長手方向(Ks)に、重ね合わせた複数のレベルで植物を栽培施設(K)内で反対方向に移動させることによって多段栽培で成長されるように構成され、冷却マニホールド(2)は、プラスチック、金属および/または磁性材料から製造され、栽培施設(K)内の植物の間を実質的に一定の断面で連続的に延び、光を生成しながら発生した熱のために、少なくとも照明器具の光生成部品(1a1)を冷却するための、熱伝導冷却導管または熱伝導冷却プロファイル体からなり、これによって、冷却マニホールドは、供給される側と戻り側とが熱回収装置(3)の蓄熱システム(3b)に接続されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
装置に含まれる照明システムの照明器具(1a)は、照明器具を、冷却マニホールド(2)に使用される、シャフト、チューブおよび/またはプロファイル体に連結するための連結システムを含み、それらをその長手方向およびその断面で見たときに、半径方向の任意に選択された位置で連結されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
植物栽培施設(K)内に強固に支えられ、1または複数の区画に植物の間に並んでおよび/または重なり合って存在する冷却マニホールド(2)を含み、該冷却マニホールドに照明システムの照明器具(1a)が固定される/固定可能である、ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
熱回収装置(3)の蓄熱システム(3b)から導かれる循環水をポンプ作用(P2)によって供給可能である凝縮器乾燥機/冷却器(3a)は、栽培施設の室内空気から凝縮される凝縮水と冷却水とを含む収集空間と、収集空間に蓄積された循環水および熱を蓄熱システム(3b)に搬送するための蓄熱システム(3b)への接続パイプ(3d)と含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
装置に含まれる冷却マニホールド(2)は、単一の断面に少なくとも2つの流路(2a”)を含む導管プロファイル体(2’)からなり、一方の流路は、冷却水供給側(2s)から進む入口流を生じる場所であり、他方の流路は、戻り側(2p)に進む戻り流に関することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
凝縮器乾燥機/冷却器(3a)は、導管プロファイル体(2)の表面に凝縮した水を吸収するための、冷却マニホールド(2)の導管プロファイル体(2’)に含まれる単一または複数区画の真空空間(A)を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
冷却マニホールド(2)の導管プロファイル体(2’)は、導管プロファイル体の表面に凝縮した水を吸収するための単一または複数区画の真空空間(A)、二酸化炭素圧力分配室(B)、ミスト灌漑分配室(C)および/または単一または複数区画の内部、照明器具の配線のための表面溝(D)を含むことを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
導管プロファイル体(2;2’)は、それを栽培施設(K)に固定するための結合装置(E1)および/または植物の灌漑用のミストノズルを含む器具を固定するための結合装置(K2)を備えることを特徴とする、請求項9または10に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の前提部分に記載されている植物栽培施設内の条件を制御するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
Lemnis Oreonと呼ばれる会社の厚意によって、植物の栽培のために特別に開発されたLED照明器具が市販されており、そのLED照明器具においては、単一の光ヘッドがLED光源とその冷却のための水循環との両方を一体的に備えている。そのような解決手段は、照明器具を過熱することなくLED光源に高い定格を提供する。
【0003】
この種の解決手段に伴う課題は、そのような照明器具を固定するための別個の取付けフレームを植物栽培施設に提供することが必要であるということである。それに加えて、照明器具はそれぞれ個別に冷却水ネットワークに接続されなければならない。したがって、このタイプの解決手段の設置、取得、および運用コストは非常に高くなる。さらに、そのような照明器具の保守および維持はまた、照明器具特有の水接続のために特に困難である。この種の解決手段では、特にその最適化のために、たとえばその温度/湿度の観点から栽培施設を調整することによって、植物栽培施設内の条件を制御することは不可能である。これに関連して、さらなる問題は、栽培施設内の多数の水接続であり、破滅的な漏洩の危険性を増大させることである。
【0004】
欧州特許出願公開第1933602号明細書は、植物を成長させるための水循環照明システムを開示しており、該システムは、植物に関連して配置され、外部電源で動作しかつ循環式冷却を備えたいくつかのLEDランプからなる照明アレイを含む。この解決手段は、ランプ冷却で伝導的に加熱された冷却水を、たとえば植物の加熱または温室における他の必要な加熱のために直接利用することを可能にするが、特に温室の室内空気中に高まる熱および湿度の総合的制御を提供することはできない。
【0005】
米国特許出願公開第2016/109107号明細書は、園芸施設内の条件を制御するためのシステムをさらに開示しており、該システムは、環境的に密閉可能であり、かつ閉鎖可能な栽培施設内に存在する植物に関連して配置され、複数の電気照明装置からなる照明アレイと、栽培施設内の温度の上昇を低下させるまたは妨げるための循環式の冷却装置であって、栽培施設内の植物に関連して存在する冷却導管システムを含み、それを介して照明アレイに含まれる照明装置がポンプ作用によって冷却導管システム内に運ばれる冷却水によって冷却されるように構成される、冷却装置と、栽培施設内に発生する余剰熱を利用するための熱回収装置であって、該熱回収システムで回収された熱の貯蔵のための蓄熱システムを含む熱回収装置とを含む。しかしながら、この解決手段でさえ、特に温室の室内空気中に高まる熱および湿度を総合的に制御する能力を提供しない。
【発明の概要】
【0006】
本発明に従う、植物栽培施設内の条件を制御することを意図した装置は、前述の課題に関して決定的な改善を提供し、それによって実質的に現在利用可能な技術水準を引き上げることを目的とする。この目的を達成するために、本発明に従う装置は、主に、それに向けられた独立請求項の特徴部分に示されているものによって特徴付けられる。
【0007】
植物栽培施設内の条件を制御することを目的とした本発明の装置によって達成される最も注目すべき利点のいくつかは、その操作およびそれに適用可能な技術の単純さおよび効率を含み、それによって、最も多様な植物の生育条件および環境で、特定の時期に使用される機器の集団の組立ておよび保守を著しく容易にするとともに、植物栽培施設の条件を、栽培施設の室内気候から、および本発明において一体的に使用される凝縮器乾燥機および蓄熱装置を冷却することによって、冷却時に使用される冷却流体循環プロセスから、ポンプ作用によって総合的な熱回収を利用することによって最適化することができる。
【0008】
それ故、本発明によって、たとえば、本発明の好ましい用途として、栽培施設に強固に固定され、1または複数の区画において植物に関連して並んでおよび/または重なり合って存在する冷却マニホールドを利用することによって照明器具用の様々な懸架システムが不要になる。したがって、照明システムのランプは、さらに好ましい用途において、冷却導管プロファイル体の断面で見たときに冷却導管プロファイル体の長手方向に同じ位置に1または複数のランプを並べて配置することによって、冷却マニホールドに取外し可能に固定可能であり、さらに、多数のランプが、冷却導管プロファイル体の長手方向における任意に選択可能な位置に連続して特定の時期に必要である。本発明はまた、たとえば安価な市販の水冷システムをLED照明と統合することを可能にする。
【0009】
本発明によって、照明システム用のLEDランプの製造を簡単にすることがさらに可能であり、その結果、冷却液循環、ヒートシンクまたは冷却フィン原理などの別個の冷却装置を提供する必要がない。本発明によって、その最も単純な形態では、照明システムの照明器具は、それと一体的に接続された機械的取付けフレームを備えてもよく、それによって照明器具は取外し可能な方法で冷却マニホールドに、たとえば取付けフレームに一体的に含まれる機械的および/または磁気的連結アセンブリによって、またはたとえば別個の連結ばねなどによって固定可能である。本発明の冷却動作において、冷却マニホールドの十分に広い滑らかな断面熱伝導接触面によって、取付けフレームと冷却マニホールドとの間の相互熱伝導を最適化することも可能であり、これはまた、冷却導管プロファイル体の断面で見たときに、照明器具を半径方向に任意に選択可能な位置に配置することを可能にする。
【0010】
本発明の装置の蓄熱システムとして使用される蓄熱ユニットまたはいわゆる集熱器によって、凝縮器乾燥機/冷却器およびLED冷却水循環から集められた熱エネルギを単一の集熱器に合流させることができ、単一の集熱器は、そのとき、その内部温度を数度だけ上昇させることによってエネルギを収集する。一方、所望の集熱器温度は、二次回路で動作するヒートポンプによって維持され、それによって、集熱器に蓄えられたエネルギは、たとえば温室暖房などの他の用途に、より高い温度で搬送される。収集された熱エネルギは、地域暖房のために外部の事業者にも販売可能である。
【0011】
本質的なことは、熱エネルギがいわゆる低温熱エネルギの形態であり、これがたとえば乾燥用途または基本熱の維持に最も適していることである。低温熱エネルギは、6COPもの高い効率で回収することができる。集熱器の基本原理は、(a)LEDから得られた熱エネルギ、(b)凝縮器乾燥機/冷却器から収集された潜熱エネルギ、(c)凝縮器乾燥機/冷却器によって栽培施設の室内空気から収集された熱エネルギ、および(d)凝縮器乾燥機/冷却器によって栽培施設の室内空気から収集され、たとえば灌漑用水として植物に再循環させることができる水分または水の蓄積である。全体から見て、施設がいわゆるゼロエネルギ空間のために断熱されていることを条件として、集熱器は、栽培施設に供給されるエネルギの90〜100%を集めることができ、栽培施設に供給される灌漑用水の全エネルギ、最善のシナリオでは、実用的には、70〜90%の回収を可能にする。
【0012】
したがって、本発明は、植物の栽培のための解決手段を提供し、該解決手段は、その取得、設置、および運用コストに関して、現在の技術におけるものよりも著しく費用対効果が高く、それによって、栽培された植物の照明と同時に、たとえば特定の時期に栽培される植物の観点から、栽培施設が最適な温度および湿度を有することを可能にすることによって、栽培施設の物理的条件の管理を実行することができる。
【0013】
本発明の装置の他の好ましい実施形態は、それに向けられた従属請求項に提示されている。
【0014】
以下の説明は、添付の図面を参照して本発明の詳細な検討を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の装置のための一般的な動作原理を表すプロセスフローチャートを示す。
図2a】様々な植物栽培の目的における本発明の装置のためのいくつかの例示的な実施を示す。
図2b】様々な植物栽培の目的における本発明の装置のためのいくつかの例示的な実施を示す。
図3】多段栽培における本発明の装置のための好適な一実施形態を示す。
図4】特に多段栽培で使用される冷却装置に関連して、本発明の照明システムのための2つの利用選択肢を示す。
図5a】本発明の装置で使用可能ないくつかの好ましい冷却導管プロファイル体の選択肢をさらに示す。
図5b】本発明の装置で使用可能ないくつかの好ましい冷却導管プロファイル体の選択肢をさらに示す。
図5c】本発明の装置で使用可能ないくつかの好ましい冷却導管プロファイル体の選択肢をさらに示す。
図5d】本発明の装置で使用可能ないくつかの好ましい冷却導管プロファイル体の選択肢をさらに示す。
図6a】一例として、本発明の装置で利用することができる2つの液体循環プロセスオプションをさらに示す。
図6b】一例として、本発明の装置で利用することができる2つの液体循環プロセスオプションをさらに示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、植物栽培施設内の条件を制御するための装置に関し、該装置は、環境的に密閉可能であり、かつ閉鎖可能な栽培施設K内に存在する植物に関連して配置され、最も好ましくは外部電源によって動作し、照明機能を提供する1または複数の電気部品1aを備えるいくつかの照明器具からなる照明システム1と、栽培施設内の温度の上昇を低下させるまたは妨げるための循環式の冷却装置であって、栽培施設K内の植物に関連して存在する冷却マニホールド2を含み、冷却マニホールド2によって照明システムに含まれる照明器具がポンプ作用P1によってマニホールド内に導かれる冷却水によって冷却されるように構成される、冷却装置と、冷却装置の循環水に伝達される余剰熱を利用するための熱回収装置であって、熱回収装置3によって回収された熱を貯蔵するための、水タンク、蓄熱ユニットのような蓄熱システム3bを含む、熱回収装置と、を少なくとも含む。熱回収装置3は、栽培施設の室内空気に吸収された水および/または熱を収集するための1または複数の凝縮器乾燥機/冷却器3aと、冷却装置の循環水2:2pおよび/または凝縮器乾燥機/冷却器アセンブリの循環水3:3dを介して蓄熱システム3bに蓄積された熱を、その1または複数の水循環ループ2p,3dに関して独立した二次回路tp内に伝達させるためのヒートポンプアセンブリ3cとを含む。
【0017】
特にLEDランプの熱エネルギから伝導的に回収されるものは、典型的には約45〜50%であり、残りは光エネルギとして栽培施設および植物に当てられる放射線からなる。さらに、構造体に当たる、すなわち植物を迂回する光は、空中熱エネルギに変換される。一方、植物はその上に落ちる光エネルギの95%を吸収し、それを湿気として栽培施設の空気中に蒸発させ、残り5%は化学エネルギとして植物に保持される。
【0018】
凝縮器乾燥機または空冷装置は、一般に溶液を使用することによって実施され、凝縮面は、たとえば固体伝熱面(典型的にはアルミニウムシート)および/または液体伝熱面、たとえば、水噴霧を含み、それによって湿気は、温室の露点よりも低温のアルミニウムシート表面上に、またはシステム内に噴霧された水内に凝縮する。凝縮器乾燥機/冷却器は、空気から水分と熱エネルギとを収集し、後者はいわゆる潜熱としてその中に吸収する。凝縮乾燥においてLEDランプの放射エネルギから回収されるものは、気温の上昇または湿度のいずれかとしてすべての放射エネルギが栽培施設に蓄積するので、典型的には約45〜50%である。凝縮乾燥は、両方の形態のエネルギの回収を可能にする。
【0019】
好ましい実施形態としての図1に示される本発明の装置の例示的なプロセスフローチャートを参照すると、そのヒートポンプアセンブリ3cは、ポンプ作動式P3二次回路tpに含まれる1または複数の水−水ヒートポンプなどを含む。
【0020】
図6aおよび図6bは、一例として、図1に示されているものに対して補足的なものに代わる、凝縮器乾燥機/冷却器3aの出口空気の予熱に利用される、2つのプロセスオプションを示している。図6aのプロセスにおいて、出口空気は、たとえばそこに導かれ、高温である水−水ヒートポンプ3cの二次回路tpの循環水tp1を用いて、熱交換器LVで予熱される。これによって、非常に費用対効果の高いシステムを提供することが可能になり、それによって、そのプロセス温度を下げることによって凝縮器乾燥機/冷却器の性能を劇的に向上させることができる。一方、図6bのプロセスにおいて、出口空気は、冷却装置2の戻り側からそこに導かれる循環水2pによって熱交換器LVで予熱される。実際には、本実施形態は照明システム1のLEDが前述の代替物よりも高温で作動することを必要とするが、それは水−水ヒートポンプ3cの流れ接続を決定的に単純化する。図6aおよび図6bにおいて、参照符号SEは電気エネルギを表し、参照符号LEは熱エネルギを表す。
【0021】
前述のプロセスフローチャートを参照すると、照明システムに含まれる照明装置1aのLEDなどの電気部品1a1は、冷却配管2の供給側2sからポンプ作用P1によって導かれる循環水で冷却されるように構成され、これによって、蓄熱システム3bに結合された冷却装置2および凝縮器乾燥機/冷却器の熱伝達回路2p,3dの循環水は、それをヒートポンプアセンブリ3cに供給することによって冷却されるように構成される。
【0022】
本発明は、植物栽培施設内の室内空気の温度および湿度に対する実質的に総合的な制御を可能にし、それに加えて、たとえば水循環を気温より低く保持し、それによって照明器具の直接冷却に加えて空中熱エネルギと水分との両方を収集することによって、本発明を利用することも可能である。
【0023】
本発明に従う装置は、たとえば図3に示されるような、互いに重なり合う栽培コンベヤシステムを有する多段栽培において特に使用されることに特に適している。したがって、植物は、たとえばコンベヤシステムの第1端部でトレイに鉢植えされ、そこから圧力媒体作動式または電動アクチュエータの作用によってコンベヤシステムの第2端部へ移動し、植物は栽培コンベアシステムを第1端から第2端へ進みながら収穫期まで成長する。第2端部において、植物は収集され、販売のために切断/包装される。植物が第2端部まで移動し、より高いまたはより低いレベルに自動的に進み、それに沿って「作業端部」に戻るシステムの変形もある。特に、多段コンベヤシステムは、プロセスタイプおよび完全自動化野菜生産を可能にする。
【0024】
特に前述の多段栽培に関して、図4は、多段栽培のための2つの任意の栽培コンベヤシステムを上から見た図であり、左側のものは、栽培施設Kの長手方向Ksに対して横方向に配置された、冷却流体、実際には最も好ましくは水、の冷却マニホールドに関連して利用される、本発明の装置用の照明システムを示し、また図4の右側部分は、栽培施設Kの長手方向Ksに延びる冷却マニホールドに関連する照明システムを示す。
【0025】
これに関連して特に利用される装置の冷却マニホールド2は、プラスチック、金属および/または磁性材料から製造され、栽培施設K内の植物の間を実質的に一定の断面で連続的に延び、光を生成しながら発生した熱のために、少なくとも照明器具の光生成部品1a1を冷却するための、熱伝導冷却導管または熱伝導冷却プロファイル体からなり、これによって、図1の好適な実施形態に示されるように、冷却マニホールドは、供給される側と戻り側とが熱回収装置の蓄熱システム3;3bと接続されている。これに関連して、一定の断面で実質的に連続して延びる冷却マニホールドとは、その断面が連続する植物の間で一定のままである、すなわち冷却マニホールドが各照明器具に対して個別にかつ独立して延びることはないことをいう。
【0026】
前述のタイプの冷却マニホールド2は、栽培施設Kに、図4に示されるように、冷却システムのマニホールドとともに、栽培施設の管理に関する他の運転、調整および電気工学的特徴を配置する可能性を有する片側だけのメンテナンスゾーンHを備えることを可能にするのに有益である。このような実施は、冷却水が各冷却導管の端部から第2流路2a”を介してその入口端部に戻るときに、栽培コンベヤシステムの外側/外端を解放する。図4の右側の例では、冷却水は栽培施設Kの中央部に延びる供給導管2aを介して供給される。
【0027】
さらに、装置の熱回収装置3に好適な実施形態として含まれる、1または複数の水−水ヒートポンプなどのヒートポンプアセンブリ3cは、蓄熱システム3bからポンプ作用P3によってそこに運ばれる循環水に蓄えられた熱を、冷却および凝縮水循環に関して分離された二次回路tpに送るように構成される。この点において、互いに部分的にまたは完全に断熱された温かい循環水および冷たい循環水の区画を備えることによって蓄熱システムを実施することがさらに可能である。
【0028】
本発明の装置のさらなる好適な実施形態では、その中に含まれる照明システムの照明器具1aは、照明器具を連結するためのそのフレーム、たとえば図2a、図2b、図3および図5a〜図5dを参照して、冷却マニホールド2に使用される特別に設計されたまたは標準的な寸法のシャフト、チューブおよび/またはプロファイル体に対して、一体的に含まれるかまたは分離している連結システムを含み、それらをその長手方向およびその断面に見たときに、半径方向の任意に選択された位置で連結される。
【0029】
特に図2a、図2bおよび図3に示される好適な実施形態を参照して、装置は、植物栽培施設K内に強固に支えられ、植物の間に1または複数の区画に並んでおよび/または重なり合って存在する冷却マニホールド2を備え、そこに、照明システムの照明器具1aは、永久的にまたは取外し可能に機械的および/または磁気的に固定されている。
【0030】
特に図2aに示される好適な実施形態を参照すると、本発明に従う装置は、たとえば、冷却導管またはプロファイル体の外面に配置された、いくつかの照明器具1aを有し、必要に応じて下方、横方向および/または上方に照明器具を向けるためにその断面で見たときに、半径方向のものは任意に選択可能な位置である。図2aの冷却導管プロファイル体の放熱面B上、すなわち冷却リブシステム上への照明器具の配置は不所望なものである。なぜなら、この場合、取付けフレームには、冷却リブシステムと一致したプロファイル体が備えられなければならないからである。それ故、冷却導管プロファイル体と取付けフレームとの間の相互の熱伝導は、まだ不十分なままである。
【0031】
図2aは、植物の中央に配置された両側照明を使用するときに本発明がどのように利用されるかを示し、図2bは、従来の頭上式照明をしようするときの、たとえばサラダ、ハーブおよび花に対する照明および苗照明におけるその利用を示す。また、図2aに示される実施形態は、冷却リブシステムBを備えた冷却導管プロファイル体を使用することによってハイブリッド機能を可能にするように実施されている。これによって、必要に応じて、いわゆる受動的な方法で、すなわち自然対流を利用することによって、またはそれに加えて、冷却導管プロファイル体の内部でも、いわゆる能動的な方法で、すなわち適切な冷却流体循環を用いて強制対流を利用することによって、冷却導管プロファイル体による照明器具の冷却の実行が容易になる。また、ハイブリッド構造は、冷却導管プロファイル体のリブBによって周囲の空気を冷却することによって、他のプロセス熱を栽培施設から収集することも可能になる。
【0032】
本発明のさらに好適な実施形態において、図1を参照して、装置に含まれる熱回収装置の蓄熱システム3;3bから導かれる循環水がポンプ作用P2によって供給可能な凝縮器乾燥機/冷却器3aは、栽培施設の室内空気から凝縮した凝縮水と、冷却水とを含むその収集空間から、収集空間に蓄積された循環水および熱を蓄熱システム3bに搬送する蓄熱システム3bへの接続パイプ3dに接続される。
【0033】
本発明の装置の好適な実施形態として図5a〜図5dに示されるものを参照して、その冷却マニホールド2は、単一断面に少なくとも2つの流路2a”を含む導管プロファイル体2’からなり、一方の流路は冷却水供給側2sから進む入口流を生じる場所にあり、他方の流路は戻り側2pに進む戻り流に関する。これに関連して、特に凝縮器乾燥機/冷却器3aに関して、冷却マニホールド2は、導管プロファイル体の表面上に凝縮した水を吸収するための単一または複数区画の真空空間Aを備えた導管プロファイル体2’を有する。
【0034】
特に図5bおよび図5cの実施において、上側流路2a”はより低温にある。自由対流は導管の上面から最も強くなるので、この配置は冷却導管から周囲空気に直接行われる熱伝達を最小にすることを可能にする。特に図5cの実施において、この特定の実施が空気への熱伝達を最小し、冷却水循環への熱伝達を最大にするように、照明器具フレームおよび導管の下側流路の両方が最適化されている。一方、図5aの実施において、前提は、冷却導管が非常に安定した温度でその全長にわたってあり、それによって栽培施設が望ましくない大きな温度の不一致または過度の凝縮を生じさせることは不可能であるということである。
【0035】
これに関連して、さらに好適な実施形態としての図5dを参照して、冷却マニホールドの導管プロファイル体2;2’は、図5dに示されるいわゆるインフラストラクチュラルプロファイルを参照して、導管プロファイル体の表面上に凝縮した水を吸収するための単一または複数区画の真空空間A、二酸化炭素圧力分配室B、ミスト灌漑分配室Cおよび/または単一または複数区画の内部、照明器具の配線などの目的のための表面溝Dなどを含む。
【0036】
図5dに示される好適な導管プロファイル体2’をさらに参照すると、それを栽培施設Kに固定するための連結装置E1および/または植物の灌漑用のミストノズルなどの器具をそれに固定するための連結装置E2が設けられている。
【0037】
本発明の装置で利用される照明システムは、それ自体従来のさらなる実施形態として、たとえば、冷却装置および/または凝縮器乾燥機/冷却器を介して進む循環流体の温度および/または流量を制御することによって、照明システムの照明器具1aの動作温度および/または植物栽培施設の温度/湿度を調整するための調整自動化を含む。図1に示される動作チャートは、さらに三方弁3Tを示しており、これは冷却導管の戻り流2pと蓄熱システム3bの循環水とを互いに混合することによって特定の時期に所望通りに循環水温度を調節することを可能にする。説明したチャートはさらに、たとえば、栽培施設内の水分増加を考慮して、装置の冷却水循環プロセスにおける水の調整のための接続金具AWを示す。また、このチャートは、蓄積された水を、たとえば灌漑用水として栽培施設に送るための接続金具を符号FWで示す。
【0038】
本発明が上述のまたは上記で説明された実施形態に限定されないことは明らかであるが、本発明の基本概念の範囲内で、たとえば特定の時期に栽培される植物のための照明条件および特別な要件に応じて、多くの修正を受けることができ、これによって、たとえば使用可能な凝縮器乾燥機/冷却器は、それぞれの特定の目的に最も適した空気乾燥技術を代表してもよい。LEDランプに加えて、またはそれに代えて、レーザ、OLEC、LECランプ、量子ドット、プラズマ、ハロゲンおよび誘導ランプを含むその顕著な例を有する最も多様な光生成技術を利用することによって本発明を実施することが当然可能である。
【0039】
たとえば、プラズマランプはアルゴンまたは硫黄コアに基づいており、これはマイクロ波で白熱され、加熱すると太陽と同じように光を放つ。
【0040】
さらに特に白熱ランプ、誘導ランプおよびハロゲンランプは同じ現象に基づいており、これらはすべて現在でも植物成長灯としても使用される。
【0041】
LEC(Light Emitting Capacitor)技術において、蛍光絶縁材料は電界中で光り始め、この技術はたとえば表示画面の背面照明に適用されている。OLED、LEC、LEDおよび量子ドット技術は、すべてエレクトロルミネセンス現象に基づく。他の関連する注目すべき光源は、キセノン、HPS、MHなどの放電ランプ、ならびに蛍光管をさらに含む。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図6a
図6b