特許第6934706号(P6934706)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ノダテクニカの特許一覧

<>
  • 特許6934706-鋳造品の砂除去システム 図000002
  • 特許6934706-鋳造品の砂除去システム 図000003
  • 特許6934706-鋳造品の砂除去システム 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6934706
(24)【登録日】2021年8月26日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】鋳造品の砂除去システム
(51)【国際特許分類】
   B22D 29/00 20060101AFI20210906BHJP
【FI】
   B22D29/00 D
   B22D29/00 F
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-66679(P2016-66679)
(22)【出願日】2016年3月29日
(65)【公開番号】特開2017-177149(P2017-177149A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年2月12日
【審判番号】不服2020-16490(P2020-16490/J1)
【審判請求日】2020年12月1日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年9月30日発行のトヨタ技術公開集(発行番号28169)第297号、第65−68頁にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】516093459
【氏名又は名称】株式会社ノダテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100123021
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 元幸
(72)【発明者】
【氏名】神田 和典
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 武士
(72)【発明者】
【氏名】寺島 淳雄
(72)【発明者】
【氏名】大杉 佳久
【合議体】
【審判長】 河端 賢
【審判官】 貞光 大樹
【審判官】 見目 省二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−36712(JP,A)
【文献】 特開2004−130259(JP,A)
【文献】 特開平7−265820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D29/00
B08B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造品に付着している砂などの異物を除去する鋳造品の砂除去システムであって、
鋳造品の昇降を行うための昇降装置と、鋳造品を洗浄して異物を除去する超音波洗浄装置とを備え、
前記超音波洗浄装置は、
鋳造品を洗浄するための洗浄水が入れられた洗浄槽と、
超音波を発振して鋳造品を揺動させて微振動を与えて洗浄するための超音波発振板と、
前記洗浄水の溶存酸素量を減少させる脱気装置とを備え、
前記昇降装置は、鋳造品を回転させて鋳造品の開口部の向きを調整可能とする回転手段を備え、前記洗浄槽に浸漬させた鋳造品を水面より上へ上昇させたときに前記回転手段が前記鋳造品の開口部を下向きにして、前記超音波洗浄装置が鋳造品から剥離して除去した異物と洗浄水とを排出した後、再び前記洗浄槽内の洗浄水に鋳造品を浸漬させ、
前記超音波洗浄装置は、鋳造品から異物を剥離して除去する
ことを特徴とする鋳造品の砂除去システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋳造品に残留する砂などの異物を除去するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムや鋳鉄の鋳造品(ワーク)は、自動車をはじめ様々な製品の構成部品として広く採用されている。大小の穴を設けて開口部としたり、内部を空洞としたりするなど、鋳造品は複雑な構造を有しているものが多い。この複雑な構造の鋳造品は、鋳造品を造形する金型の中にその構成に合わせた中子を配置し、溶湯が中子を鋳包むことによって設計通りの複雑な構造の鋳造品が造形されている。
【0003】
鋳造品の製造過程で用いられる中子は砂などにより成形されているため、鋳造後には砂などの異物として鋳造品に付着、残留してしまう。中子は鋳造に不可欠のものであるが、鋳造後には砂などの異物として鋳造品に付着し残留するので除去しなければならないのである。そのため、鋳造の後工程として鋳造品を連続的に打撃することにより砂などの異物を払い落すことや、砂落とし装置を配設するなどして、砂などの中子材を除去することが行われている。たとえば、特許文献1では、自動車部品等、鋳造によって成型された鋳造物(ワーク)を振動によりワークの中空部に付着している中子砂を落とすワークの振動砂落とし装置であって、ワークを振動台板に保持し、この振動台板を1台の振動モーターによって振動させることにより落とす振動砂落とし装置が開示されている。
【0004】
最終的には、砂などの異物は作業者による目視検査が行われ、手作業により付着、残留した砂などの異物をブラシなどにより除去して鋳造品を完成品としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−050990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、鋳造後に残留する砂などの異物の除去は煩雑な工程と作業者による手作業を必要とし、製造工程の簡略化のボトルネックになっている。
【0007】
また、鋳造品の構造が複雑化するに伴い、これまでの砂落とし装置では砂などの異物を確実に除去できずに作業者の目視検査および除去作業の負担が増大する傾向にある。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、鋳造品に付着、残留している砂や異物を確実に除去することができ、除去の工程を簡略化することができる鋳造品の砂除去システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る鋳造品の砂除去システムは、鋳造品に付着している砂などの異物を除去する鋳造品の砂除去システムであって、鋳造品の昇降を行うための昇降装置と、鋳造品を洗浄して異物を除去する超音波洗浄装置とを備え、前記超音波洗浄装置は、鋳造品を洗浄するための洗浄水が入れられた洗浄槽と、超音波を発振して鋳造品に微振動を与えて洗浄するための超音波発振板とを備え、前記昇降装置は、前記洗浄槽内の洗浄水に鋳造品を浸漬させることを特徴とする。
【0010】
これによれば、鋳造品を洗浄槽内で揺動させて超音波による微振動を与えて洗浄するので、鋳造品に付着、残留している砂や異物を確実に除去することができる。除去の工程の簡略化も可能となる。
【0011】
ここで、前記昇降装置は、鋳造品を回転させて鋳造品の開口部の向きを調整可能とする回転手段を備えるのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明に係る鋳造品の砂除去システムによれば、鋳造品に付着、残留している砂や異物を確実に除去することができ、除去の工程を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】鋳造品の砂除去システムの概略構成を示す図である。
図2】洗浄槽の構成を示す図である。
図3】鋳造品の砂除去システムの平面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本実施形態の鋳造品の砂除去システムの概略構成を示す図である。図2は、鋳造品の砂除去システムで用いられる洗浄槽の構成を示す図である。図3は、鋳造品の砂除去システムの平面概略図である。
【0016】
本実施形態の鋳造品の砂除去システムは、鋳造品(ワーク)Wの昇降を行う昇降装置と、ワークWを洗浄する超音波洗浄装置1と、洗浄液中の溶存酸素量を減らすための脱気装置20と、ダーティー槽30と、砂回収フィルタ40と、クリーン槽50と、クリーン槽50の水を適当な温度に調節する温調機60とを備える。
【0017】
超音波洗浄装置1は、洗浄水に浸漬させてワークWの洗浄を行うための洗浄槽10と、超音波を発振してワークWを揺動させて微振動を与えて洗浄するための超音波発振板11と、ワークWをシャワーで洗浄するための洗浄ノズル12と、洗浄槽10の水位を一定に保つためのオーバーフロー配管13とを備える。
【0018】
脱気水供給配管21は、クリーン槽50から洗浄槽10へ水を送る配管であり、配管の途中に脱気装置20が介在する。
【0019】
ダーティー槽30は、洗浄槽10の排水をオーバーフロー配管13から受け取る。ポンプP1は、ダーティー槽30内の水がアルカリ性に変化しないようダーティー槽30から排水をするためのポンプであり、ポンプP2は、ダーティー槽30から砂回収フィルタ40へ水を送るためのポンプである。
【0020】
砂回収フィルタ40は、ダーティー槽30及び洗浄槽10内の砂を回収し除去するフィルタである。排水・砂回収配管41は、洗浄槽10から排水と砂を回収するための配管であり、エゼクター42は、排水・砂回収配管41からの排水と砂を吸い込む。
【0021】
クリーン槽50は、砂回収フィルタ40でろ過された水を受けとめ洗浄槽10へ送り出すための槽である。
【0022】
昇降装置には、ワークWを回転させる回転機構が設けられている。洗浄槽10には、その直交する3面に超音波発振板11がそれぞれ1枚ずつ設けられている。超音波発振板11のうち、洗浄槽10の下面に設置されているものは、下面から浮かせて設置されている。排水・砂回収配管41は、洗浄槽10の下部に接続されている。エゼクター42は、ダーティー槽30から砂回収フィルタ40へ水を送るポンプP2の下流に設けられる。砂回収フィルタ40は、サイクロンフィルタとパグフィルタとを有し、サイクロンフィルタにて第1段階の処理を行い、パグフィルタにて第2段階の処理を行う。
【0023】
次に、本システムの動作について説明する。
【0024】
本実施形態の鋳造品の砂除去システムでは、昇降装置によりワークWが洗浄槽10内に沈められる。その時、ワークWの開口部が上を向き、内部の空気が抜けるように、回転機構によりワークWの向きを調整する。そして、ワークWを洗浄槽10内で揺動させて、超音波発振板11からの出力により、超音波洗浄を行う。このとき、3枚の超音波発振板11による出力で十分な洗浄能力を確保することが出来る。また、温調機60によりクリーン槽50の水の温度を調節し、その水を、脱気水供給配管21を通して洗浄槽10に送りこむことで、超音波発振板11の出力に伴う水温上昇による洗浄能力低下を防ぐことが出来る。
【0025】
超音波洗浄が開始された後、ワークW内部で剥離した砂が外部に排出されるように、昇降装置により、ワークWを洗浄槽10の水面より上部へ上昇させ、水と共に砂をワークW外部へ排出させる。この時、ワークWの開口部が下を向き、内部の水が排出されるよう回転機構によりワークWの向きを調整する。さらに、洗浄ノズル12により、砂が抜けにくい部分を水流で押し流す。以上を、超音波洗浄と複数回交互に実施して、ワークWの洗浄と砂の除去を行う。この際、ワークWが洗浄槽10の水面より上に持ち上げられて、再び洗浄槽10内に投入される動作が複数回行われることで、洗浄槽10内の溶存酸素量が増加し洗浄能力が低下するが、脱気装置20により脱気されたクリーン槽50の水を、脱気水供給配管21を通して洗浄槽10に常時供給することで、洗浄能力低下を防ぐことが出来る。また、脱気されたクリーン槽50の水が常時供給される洗浄槽10は、オーバーフロー配管13を有することにより、水位を一定に保つことが出来る。
【0026】
ワークW内部から除去された砂は、洗浄槽10の下部に堆積している。ここで、ダーティー槽30から砂回収フィルタ40へ水を送るポンプP2が作動すると、エゼクター42が負圧となり、洗浄槽10内の砂が排水・砂回収配管41を通って吸い出される。また、洗浄槽10からオーバーフロー配管13を通って、ダーティー槽30へ移動した水に含まれる異物も、ダーティー槽30から砂回収フィルタ40へ水を送るポンプP2により、砂回収フィルタ40へと送られる。砂回収フィルタ40において、砂や異物は除去され、除去された水はクリーン槽50へ送られる。このようにして、ワークWから除去された砂は回収される。
【0027】
以上説明したように、本実施形態の鋳造品の砂除去システムによれば、ワークを洗浄槽内で揺動させて超音波による微振動を与えて洗浄するので、ワークに付着、残留している砂や異物を確実に除去することができる。また、砂落とし装置や作業者の手作業などの煩雑な工程を不要として、除去の工程を簡略化することが可能となる。
【0028】
以上、本発明に係る鋳造品の砂除去システムについて、実施の形態に基づいて説明したが本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の目的を達成でき、かつ発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々設計変更が可能であり、それらも全て本発明の範囲内に包含されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、アルミニウムや鋳鉄の鋳造後の鋳造品に付着、残留する砂などの異物を除去する鋳造品の砂除去システムとして有用である。
【符号の説明】
【0030】
1 超音波洗浄装置
10 洗浄槽
11 超音波発振板
12 洗浄ノズル
13 オーバーフロー配管
20 脱気装置
21 脱気水供給配管
30 ダーティー槽
40 砂回収フィルタ
41 排水・砂回収配管
42 エゼクター
50 クリーン槽
60 温調機
P1 ポンプ
P2 ポンプ
図1
図2
図3