(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記発光素子が、前記支持基板の上面に前記発光層を備え、前記発光素子の上面に接続されたボンディングワイヤを介して前記発光層に給電するワイヤボンディング型の発光素子である請求項7項記載の半導体発光装置。
体発光装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す図面において、理解の容易及び視認性向上のため、断面図であってもハッチングを適宜省略している。また、以下の説明において、異なる実施形態や変形例である場合にも、同一の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0014】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る半導体発光装置について説明する。
本実施形態に係る半導体発光装置は、上面及び側面に発光面を有する発光素子10と、蛍光体を含有し、発光素子10の上面を直接的または間接的に覆う第1の蛍光体層12と、第1の蛍光体層12よりも低濃度の蛍光体を含有し、少なくとも発光素子10の前記側面を覆う第2の蛍光体層13と、第1の蛍光体層12及び第2の蛍光体層13の上面に配置され、発光素子10の上面よりも大きい面積を有する光透過性基板14と、少なくとも第2の蛍光体層14の側面を覆う光反射部材14とを備えている。
【0015】
より具体的には、
図1(A)は、本実施形態に係る半導体発光装置の断面図であり、(B)は上面図である。
図1に示すように、半導体発光装置1は、発光素子10と、発光素子10を実装する実装基板11と、第1の蛍光体層12と、第2の蛍光体層13と、光透過性基板14とを備えている。
なお、以下の説明において示す半導体発光装置の上面図において、本来上面視では視認できない構成につては破線で示すと共に、説明の便宜上ハッチング等を付している。
【0016】
発光素子10は、上面視で矩形状であり、透明基板101上に半導体層(図示せず)及び発光層102を積層し、給電用の電極を形成したものを反転させたフリップチップ構造を成している。発光素子10は、発光層102から照射された光を、透明基板101の上面101A及び側面101Bを介して外部へ照射する。従って、発光素子10においては、透明基板101の上面101A及び側面101Bが発光面となる。
発光素子10の電極は、バンプ16により実装基板11上の配線パターン(後述)に導通されている。バンプ16には、Auあるいはその合金等からなるバンプや、共晶ハンダ(AuSn)、PbSn、鉛フリーはんだ等を用いることができる。また、バンプ16に代えて、例えば導電ペースト等であってもよい。
【0017】
実装基板11は、本実施形態において、セラミックス材料で形成された板状体であり、窒化アルミニウムで形成された板状の基板を適用している。なお、基板は、一般に、ガラスエポキシ、樹脂、セラミックス等の絶縁性材料、又は絶縁性材料と金属部材との複合材料等によって形成される。基板としては、耐熱性及び耐候性の高いセラミックス又は熱硬化性樹脂を利用したものが好ましい。
なお、実装基板11には、図示しない配線パターンが形成されている。配線パターンは、主に、発光素子10の実装パターン及び発光素子10への電源供給のための電流引き回しパターンとして、実装基板11の表面に形成されている。配線パターンとしては、Al,Ni,Cu,Ag,Au等の導電性材料を用いることができる。
【0018】
第1の蛍光体層12は、発光素子10から照射された光を所望波長の光に変換する蛍光体を含み、発光素子10の上面に設けられている。より具体的には、第1の蛍光体層12には、例えば、蛍光体分散樹脂(スクリーン印刷や半硬化シート貼り付けなど)、透明接着剤を介した蛍光体分散ガラスや蛍光体セラミックプレートなどを適用することができる。本実施形態において、発光素子10は透明基板11の上面及び側面から光を発するので、第1の蛍光体層12は、実質的には透明基板11の上面に配置される。また、第1の蛍光体層12は、発光素子10の上面の発光面と略同一の大きさもしくはそれよりもやや小さい大きさを有することが好ましい。
【0019】
第2の蛍光体層13は、第1の蛍光体層よりも低濃度の蛍光体を含有し、少なくとも発光素子10の側面を覆うように設けられ、本実施形態においては、発光素子10の側面から、第1の蛍光体層12の側面及び上面に亘って設けられている。第2の蛍光体層13は、例えば、予め所定濃度に調整された蛍光体およびギャップ調整用のスペーサ131(ガラスやシリコーン樹脂などからなる粒径の揃った真球状ビーズであり、粒径がギャップ調整機能を果たす)入りシリコーン樹脂で構成されている。
【0020】
第2の蛍光体層13は、スペーサ131を介して第1の蛍光体層12上部に位置する部分の厚みが調整され、後述する光透過性基板14の下面との表面張力によって、発光素子10側面、及び第1の蛍光体層12側面を覆うフィレット形状(逆テーパ形状)に調整される。なお、フィレット形状の逆テーパ面(傾斜面)は、湾曲していてもよい。また、ギャップ調整用のスペーサ131としては、例えば、真球シリコーンビーズ(宇部エクシモ製ハイプレシカTSN6NTAなど)を適用することができる。
【0021】
光透過性基板14は、例えばガラス、サファイア、シリコーン樹脂などからなり、発光素子の上面よりも大きい面積を有し、第2の蛍光体層の上面に配置される。
光反射部材15は、光透過性基板14の側面と第2の蛍光体層13の側面とを覆うように、かつ、光透過性基板14の上面を外部に露出させるように設けられている。
【0022】
(製造方法)
続いて、このように構成された半導体発光装置の製造方法について
図2を用いて説明する。なお、
図2では、説明の便宜上発光素子10の発光体層、透明基板等の図示を省略している。
予め配線パターン(図示せず)が形成された実装基板11にフリップチップ型の発光素子10をAuバンプ16を介して実装する(
図2(A))。
予め蛍光体濃度および厚みが調整された発光素子10の上面と略同サイズの半硬化蛍光体シートを発光素子10上面に搭載して、加熱溶着させ、第1の蛍光体層とする(
図2(B))。
【0023】
第2の蛍光体層13として、予めシリコーン樹脂に蛍光体およびギャップ調整用スペーサ131を所定濃度混合した混合液を第1の蛍光体層12の上面に所定量を凸状になるように塗布する(
図2(C))。このとき、第2の蛍光体層13の塗布量は、次の工程の光透過性基板14を実装した際に、光透過性基板14下面と第1の蛍光体層12との間、発光素子10の側面、及び第1の蛍光体層の側面と、を覆い、かつ、フィレット形状を維持できる量に調整する。
【0024】
次に、発光素子10サイズよりも大きい光透過性基板14を凸状に塗布された第2の蛍光体層13の上に搭載することで、光透過性基板14によって凸状に塗布された第2の蛍光体層13が押しつぶされ、第1の蛍光体層12と光透過性基板14との間から側面にはみ出てフィレット形状の第2の蛍光体層13が形成される(
図2(D),(E))。この段階で加熱することで、半硬化状の第1の蛍光体層12、第2の蛍光体層13及びスペーサを含んだシリコーン樹脂が同時に硬化する。
【0025】
次に、予めシリコーン樹脂に光反射性フィラー(例えば酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛など、本実施形態では酸化チタン20wt%)を所定量混合したものを実装基板11上に、光透過性基板14の側面を完全に覆うまで流し込み、加熱硬化させ、所定サイズにダイシングカットすることで、光反射部材15が光透過性基板14の側面及び第2の蛍光体層13の側面を覆う構造として個片化された半導体発光装置を製造することができる(
図2(F))。
【0026】
(他の製造方法)
次に、上述の半導体発光装置に係る他の製造方法について
図3を用いて説明する。なお、
図3では、説明の便宜上発光素子10の発光層、透明基板等の図示を省略している。
予め配線パターン(図示せず)が形成された実装基板11に複数のフリップチップ型発光素子10をAuバンプを介して実装する(
図3(A))。次に、第1の蛍光体層12として、予め蛍光体濃度および厚みが調整された発光素子10の上面と同サイズの半硬化蛍光体シートを各発光素子上面に搭載して、加熱溶着させる(
図3(B))。次に、第2の蛍光体層13として、予めシリコーン樹脂に蛍光体を所定濃度混合した混合液を各第1の蛍光体層12の上面に所定量を凸状になるように塗布する(
図3(C))。このとき、第2の蛍光体層13が、フィレット形状となるように塗布量の調整を行う。
【0027】
次に、複数の発光素子10の最外形サイズよりも大きい光透過性基板14を凸状に塗布された第2の蛍光体層13の上に搭載することで、光透過性基板14によって凸状に塗布された未硬化の第2の蛍光体層13が押しつぶされて第1の蛍光体層12と光透過性基板14との間から側面にはみ出てフィレット形状の第2の蛍光体層13が形成される(
図3(D)。この時、フィレット形状が形成されると同時に、光透過性基板14の下面と、第1の蛍光体層12との間には第2の蛍光体層13が、蛍光体粒子約1層分の厚みに調整される(
図3(E))。この段階で加熱硬化することで、半硬化状の第1の蛍光体層12、および第2の蛍光体層13を含んだシリコーン樹脂が同時に硬化される。
【0028】
次に、光反射部材15により光透過性基板14側面と第2の蛍光体層側面13を覆い、加熱硬化する(
図3(F))。第2の蛍光体層12が光透過性基板14下面にフィレット形状にて到達する境界を目標に、光透過性基板14側からダイシングカットを行う(
図3(G),(H))。この時、光透過性基板14を通して第1の蛍光体層12上面、および第2の蛍光体層13上面を画像認識カメラを用いてアライメントすることができるので、ダイシング装置のステージを所定ピッチで移動する際にカットラインの位置合わせが精度よく実施できる。このようにダイシングカットすることで、上面視において光反射部材が存在しない個片化された半導体発光装置を得ることができるので、装置の小型化には特に有効である。
【0029】
このように構成された半導体発光装置は以下のように、所望波長の光を照射する。
発光素子10から出射した光のうち、上面101Aの発光面からの光と側面101Bの発光面からの光とは、異なる光路を経由して外部に照射される。すなわち、発光素子10上面101A発光面からの光は、発光素子10の上面101Aと略同じ大きさである第1の蛍光体層12及び第2の蛍光体層13によって波長変換され、光透過性基板14を透過して、光透過性基板14の上面から照射される。
【0030】
また、発光素子10側面101Bの発光面からの光は第2の蛍光体層12によって波長変換され、光反射部材15に反射されて光透過性基板14を透過して、光透過性基板14の上面から照射される。
このように発光素子10の上面101Aの発光面からの光及び側面101Bの発光面からの光は共に、光透過性基板14の上面から照射される。従って、発光素子10の側面からの光も光透過性基板14の上面から効率よく取り出すことができ、正面輝度を向上させることができる。
【0031】
第2の蛍光体層13は蛍光体濃度を調整することで、半導体発光装置全体の色度を調整することが可能である。具体的には、第1の蛍光体層12の蛍光体濃度及び厚みと、第2の蛍光体層13の蛍光体濃度、厚み(=スペーサ粒径)及びフィレット量の三者を組み合わせることで、発光素子10上面と側面の波長変換量を略同一にすることが可能であり、光透過性基板14上面から取り出される光の色を均一にすることができる。
【0032】
特に、本実施形態においては、第2の蛍光体層13は、第1の蛍光体層12よりも含有する蛍光体層の濃度が低濃度であり、かつ、スペーサ131によって厚みを調整している。このため、発光素子10の側面101Bからの光は、光透過性基板に至るまでの光路が長いものの、発光素子10の上面101Aから出射して第1の蛍光体層12により波長変換されて光透過性基板から照射される光と略同色に変換されている。従って、発光素子10上面と側面の波長変換量を略同一にすることができ、光透過性基板14上面から出射する光の色を均一にすることができる。
【0033】
(第1の実施形態の変形例1)
上述した第1の実施形態における
図1及び
図2では、光透過性基板14を矩形状とし、その側面を実装基板に垂直となるように加工している。
図4(A)に示すように、光透過性基板14の側面を、上面に向かって広がるように傾斜を持たせたテーパ形状とし、第2の蛍光体層13の側面から連続する傾斜面とすることができる。この時、光透過性基板14の側面と第2の蛍光体層13の側面との傾斜角度は適宜定めることができるが、両者の傾斜角度が等しいことが好ましい。
【0034】
このようにすることで、発光素子からの光がテーパ形状の側面で反射して発光面正面に導かれるため(
図4(A)中の矢印参照)、光取出し効率が向上し、発光面正面における色ムラをさらに抑制し、均一な発光を実現することができる。比較例として、
図4(B)に示すように、光透過性基板14の側面をテーパ形状に加工していない場合には、図中の矢印のように、発光素子からの光の一部が側面で反射されて光透過性基板に戻るため、
図4(A)の半導体発光装置に比して、発光効率がやや低下する。
【0035】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る半導体発光装置について説明する。
図5(A)は、本実施形態に係る半導体発光装置の断面図であり、(B)は上面図である。以下の説明において、上述した第1の実施形態と同一の構成には同符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態に係る半導体発光装置は、発光素子10の上面に第2の発光層13が設けられ、第2の発光層13の上面に第1の発光層12が設けられており、第2の発光層13にスペーサ131が含まれていない点で、上述した第1の実施形態及びその変形例と異なる。
【0036】
このように構成された半導体発光装置の製造方法について
図6を用いて説明する。なお、
図5では、説明の便宜上発光素子10の発光体層、透明基板等の図示を省略している。
予め配線パターンが形成された実装基板11にフリップチップ型発光素子10をAuバンプを介して実装する(
図6(A))。次に、第2の蛍光体層13として、予めシリコーン樹脂に蛍光体を所定濃度混合した混合液を発光素子10上面に所定量を凸状になるように塗布する(
図6(B))。このとき、第2の蛍光体層13をフィレット形状とするための塗布量調整は第1の実施形態と同様に調整する。
【0037】
次に、第1の蛍光体層12として、予め蛍光体濃度および厚みが調整された半硬化蛍光体シートを光透過性基板14の下面に貼り合せたものを、凸状の第2の蛍光体層の上に搭載する(
図6(C))。このとき、凸状に塗布された第2の蛍光体層13が押しつぶされて、第1の蛍光体層12と発光体層10との間から側面にはみ出てフィレット形状が形成され、同時に、発光素子10上面と第1の蛍光体層12との間に第2の蛍光体層13が蛍光体粒子約1層分の厚みに調整されて形成される(
図6(D))。
この状態で加熱硬化することで、半硬化状の第1の蛍光体層12、第2の蛍光体層13を含んだシリコーン樹脂が同時に硬化される。次に、光反射部材15を光透過性基板14の側面と第2の蛍光体層13の側面を覆い、加熱硬化して、所定サイズにダイシングカットすることで個片化された半導体発光装置を製造することができる((
図6(E))。
【0038】
なお、上述の例では、光透過性基板14の下面が平坦であり、予め第1の蛍光体層12を張り合わせることで、第1の蛍光体層12が光透過性基板14の下面から突出している(
図5及び
図6参照)。
これに代えて、
図7に示すように、光透過性基板14の下面に第1の蛍光体層12を埋め込んで、光透過性基板14の周縁部から第1の蛍光体層12の下面が連続する平坦面となるように加工することもできる。なお、
図7(A)は第2の蛍光体層13にスペーサ131が含まれている例、
図7(B)は第2の蛍光体層13にスペーサ131が含まれていない例を示している。
光透過性基板の下面に第1の蛍光体層を埋め込み一体化した板状部材とすることで、例えば、素子の発光波長のバラつきに対応させて複数種類の板状部材を作成しておくことができ、搭載された発光素子に応じて適切な板状部材を選択して搭載することで、容易に半導体発光装置の発光色を調整することができる。
【0039】
(第1の実施形態及び第2の実施形態の変形例)
上述した第1の実施形態及び第2の実施形態では、
図1(A)及び(B)に示すように、矩形状の発光素子10の四辺全てが、光透過性基板14の内側に位置し、発光素子10の周囲を囲繞するようにフィレット上の第2の蛍光体層13が設けられている。
本変形例に係る半導体発光装置は、
図8に示すように、発光素子10と、第1の蛍光体層12及び第2の蛍光体層13と、光透過性基板14の一辺を発光面上面から見て何れも同一直線上に位置するように形成されている。
このように、発光素子10、第1の蛍光体層12、第2の蛍光体層13、及び光透過性基板14の一辺を発光面からみて同一直線上に設けることによりその直線の輝度が高くなるので、車両用灯具のうち、特にヘッドランプ用光源として用いたときに、遠方視認性を上げる配光を作りやすい光源として用いることができる。
【0040】
(第1の実施形態及び第2の実施形態の他の変形例)
上述した第1の実施形態及び第2の実施形態では、
図1(A)及び(B)に示すように、矩形状の光透過性基板14の側面まで光反射部材15が設けられている。
図9(A)は
図9(B)のA−A断面図であり、
図9(A)及び(B)に示すように、本変形例では、発光面上面から見て、光透過性基板14の対向する一対の辺の側面に光反射部材15を設け、他の一対の辺の側面には光反射部材15を設けない。このようにすることで、複数の半導体発光装置を並べて配置したときに、半導体発光装置の発光面同士の距離を近接させることができる。
なお、本変形例に係る半導体発光装置は、例えば、
図10(A)及び(B)の破線で示すようにフィレット状の第2の蛍光体層13の上端部でダイシングカットすることにより得られる。
【0041】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る半導体発光装置について説明する。以下の説明において、上述した第1の実施形態と同一の構成には同符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態に係る半導体発光装置は、支持基板201と支持基板の上面に設けられた発光層202を有する発光素子20と、蛍光体を含有し、発光層の上面に設けられた第1の蛍光体層12と、第1の蛍光体層12よりも低濃度の蛍光体を含有し、発光層202の側面と第1の蛍光体層12の側面と支持基板201の上面を覆う第2の蛍光体層13と、第1の蛍光体層12及び第2の蛍光体層13の上面に配置され、発光素子30の上面よりも大きい面積を有する光透過性基板14と、少なくとも第2の蛍光体層13の側面を覆う光反射部材15と、を備えている。
【0042】
図11(A)は、本実施形態に係る半導体発光装置の断面図であり、(B)は上面図である。また、
図12は、
図11の光透過性基板14を取り除いた状態を示す図であり、(A)は半導体発光装置の断面図、(B)は上面図である。
より具体的には、本実施形態に係る半導体発光装置は、発光素子20として、不透明支持基板201に半導体発光層202を金属層(図示せず)を介して貼り合せ、発光素子20の上面および裏面から導通するメタルボンディング構造の発光素子を適用している。
【0043】
従って、発光素子20の上面及び実装基板11の所定の位置には、ボンディングパッドが形成され、発光素子20の上面に設けられたボンディングパッド203と、実装基板11のボンディングパッド(図示せず)とはボンディングワイヤ5により電気的に接続されている。発光素子20において、半導体発光層202の光は主として発光素子の上面から出射されるので、上述した各実施形態及びそれらの変形例に示したフリップチップ型の発光素子に比べて正面輝度を更に高くすることができる。
【0044】
第1の蛍光体層12は、発光素子20の上面のワイヤボンディング領域に干渉しない大きさが好ましく、本実施形態においては半導体発光層202よりも若干小さいサイズに形成されている。第2の蛍光体層13は、予め所定濃度に調整された蛍光体およびスペーサ131入りシリコーン樹脂で構成され、スペーサ131によって第1の蛍光体層12の上部に位置する第2の蛍光体層13についての厚みが調整されるようになっている。また、光透過性基板14は、発光素子20のサイズよりも大きく、この光透過性基板14の下面との表面張力によって、第1の蛍光体層12が配置された領域以外の発光素子20の上面及び第1の蛍光体層12の側面を覆うフィレット形状(逆テーパ形状)の第2の蛍光体層13が形成される。光透過性基板14の側面と、第2の蛍光体層13の側面と、発光素子20の側面を覆い、かつ、光透過性基板14の上面が露出する所まで光反射部材15を形成する。
【0045】
ここで、不透明支持基板201上に貼り合わされた半導体発光層202は不透明支持基板201のサイズよりも小さい。これは、ウエハ状態の半導体プロセスで作製された半導体基板をダイシング工程にて分割する際に端面の加工溝に影響されない内側に半導体発光層を配置する必要があり、支持基板の外周に最小限の非発光部が残るためである。
【0046】
図11及び
図12では、第1の蛍光体層12は半導体発光層202よりも小さいサイズとしたが、例えば、
図13に示すように、半導体発光層202と第1の蛍光体層12とが略同サイズであってもよい。この場合、素子上面に配置されたワイヤボンディング領域に干渉しないように第1の蛍光体層12の一部を切り欠いた構造であればよい。第1の蛍光体層の蛍光体濃度及び厚みと、第2の蛍光体層の蛍光体濃度、厚み(=スペーサ粒径)及びフィレット量の三者を組み合わせることで、発光素子上面の波長変換量を略同一にすることが可能であり、光透過性基板上面から取り出される光の色を均一にすることができる。また、スペーサ131は必ずしも含める必要はなく、第2の蛍光体13にスペーサを含めなくてもよい。
【0047】
このように構成された半導体発光装置では、発光素子20から出射された光のうち、第1の蛍光体層12に入射した光は、第1の蛍光体層12、第1の蛍光体層12の上部に位置する第2の蛍光体層13によって波長変換される。また、第1の蛍光体層12が配置された領域以外の発光素子20上面の光及び半導体発光層202の側面から漏れ出る光は、第2の蛍光体層13によって波長変換される。このように、半導体発光層202から照射されるすべての光を光透過性基板14の上面に効率よく導光して取り出すことができるため、色ムラを抑制しつつ正面輝度を向上させることができる。半導体発光層202の光は素子の上面から出射されるので、第1の蛍光体層12およびフィレット形状の第2の蛍光体層13からの光は同じ方向に出射され、両者の光が光透過性基板の上面に効率よく取り出されるため、上述したフリップチップタイプの発光素子を適用した半導体発光素子に比して更に正面輝度を高くすることができる。なお、第2の蛍光体層13の蛍光体濃度は第1の蛍光体層12に含まれる蛍光体よりも低濃度としており、これにより半導体発光装置全体の色度を調整している。
【0048】
このような半導体発光装置の製造方法について
図14に従って説明する。
予め配線パターン(図示せず)が形成された実装基板11にメタルボンディング型発光素子をAuSn共晶およびAuワイヤーを介して実装する(
図14(A))。次に、第1の蛍光体層12として、予め蛍光体濃度および厚みが調整された発光素子20の上面サイズよりも小さい半硬化蛍光体シートを発光素子20上面に搭載して、加熱溶着させる(
図14(B))。
【0049】
次に、第2の蛍光体層13として、予めシリコーン樹脂に蛍光体およびギャップ調整用スペーサ131を所定濃度混合した混合液を第1の蛍光体層12の上面および発光素子20上面に所定量を凸状になるように塗布する(
図14(C))。このとき、第2の蛍光体層13の塗布量は、次工程において光透過性基板14を実装した際に、光透過性基板14の下面と第1の蛍光体層12との間、発光素子20上面、及び第1の蛍光体層12の側面、を覆うように第2の蛍光体層13がフィレット形状を維持できる量に調整される。
【0050】
次に、発光素子20サイズよりも大きい光透過性基板14を凸状の第2の蛍光体層13の上に搭載することで、逆テーパ状にフィレット形状が形成される
図14(D)(E)。ここで加熱硬化することで、半硬化状の第1の蛍光体層12及び第2の蛍光体層13およびスペーサ131を含んだシリコーン樹脂が同時に硬化される。次に、予めシリコーン樹脂に光反射性フィラーを所定量混合したものを光反射部材15として、実装基板11上に、光透過性基板14の側面を完全に覆うまで流し込み、加熱硬化する。硬化したものを、所定サイズにダイシングカットすることで、光反射部材15が光透過性基板14の側面、第2の蛍光体層13の側面、及び発光素子20の側面を覆う構造として個片化された半導体発光装置を得る(
図14(F))。
【0051】
(他の製造方法)
予め配線パターン(図示せず)が形成された実装基板11に複数のメタルボンディング型発光素子20をAuSn共晶およびAuワイヤを介して実装する(
図15(A))。第1の蛍光体層12として、予め蛍光体濃度および厚みが調整された発光素子20上面サイズよりも小さい半硬化蛍光体シートを各発光素子20上面に搭載して、加熱溶着させる(
図15(B))。次に、第2の蛍光体層として、予めシリコーン樹脂に蛍光体を所定濃度混合した混合液を第1の蛍光体層12の上面および発光素子20上面に所定量を凸状になるように塗布する。ここで、フィレット形状維持のために塗布量を適宜調整する(
図15(C))。
【0052】
次に、複数の発光素子20の最外形サイズよりも大きい光透過性基板14を凸状の第2の蛍光体層13の上に搭載することで、フィレット形状が形成される(
図15(D))。凸状に塗布された第2の蛍光体層13が押しつぶされて、第1の蛍光体層12と発光体層10との間から側面にはみ出てフィレット形状が形成され、同時に、発光素子10上面と第1の蛍光体層12との間に第2の蛍光体層13が蛍光体粒子約1層分の厚みに調整されて形成される(
図15(E))。この段階で加熱硬化することで、半硬化状の第1の蛍光体層12、第2の蛍光体層13を含んだシリコーン樹脂が同時に硬化される。光反射部材15により、光透過性基板14の側面と、第2の蛍光体層13の側面と、発光素子20側面と、を覆い、加熱硬化する(
図15(F))。第2の蛍光体層13が光透過性基板14の下面にフィレット形状にて到達する境界を目標に、光透過性基板14側からダイシングカットを行い(
図15(G))、個片化された半導体発光装置を得ることができる(
図15(H))。
【0053】
このとき、光透過性基板14を通して第1の蛍光体層12の上面、および第2の蛍光体層13の上面、およびワイヤボンディング部を画像認識カメラを用いてアライメントすることができるので、ダイシング装置のステージを所定ピッチで移動する際にカットラインの位置合わせが精度よく実施できる。このようにダイシングカットすることで、上面視において光反射部材が存在しない個片化された半導体発光装置を得ることができるので、装置の小型化には特に有効である。
【0054】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る半導体発光装置について説明する。
予め第1の蛍光体層12を光透過性基板14の下面に形成しておくことで、第2の蛍光体層13を発光素子20上面に所定量塗布して、その上から第1の蛍光体層12の下面と接合させることで、光透過性基板14の下面の第1の蛍光体層12と接しない領域と、第1の蛍光体層12の下面と、第1の蛍光体層12の側面と、発光素子20の上面の第1の蛍光体層12と接合しない領域と、を覆うフィレット状の第2の蛍光体層を形成することができる。このような構成であっても、発光素子20上面と光透過性基板14に挟まれる蛍光体の濃度は上述した第3の実施形態と同様であり、また、第2の蛍光体層13の蛍光体濃度を調整することで、半導体発光装置全体の色度を調整することが可能である。
【0055】
このように構成された半導体発光装置の製造方法について図を用いて説明する。なお、
図16では、説明の便宜上発光素子20の半導体発光体層等の図示を省略している。
予め配線パターン(図示せず)が形成された実装基板11にメタルボンディング型発光素子20をAuSn共晶およびAuワイヤを介して実装する(
図16(A))。次に、第2の蛍光体層として、予めシリコーン樹脂に蛍光体を所定濃度混合した混合液を発光素子上面に所定量を凸状になるように塗布する(
図16(B))。次に、予め蛍光体濃度および厚みが調整された小さい半硬化蛍光体シートが光透過性基板14の下面に貼り合されたものを、凸状の第2の蛍光体層13の上に搭載する(
図16(C))。
【0056】
このとき、凸状に塗布された第2の蛍光体層13が押しつぶされて、第1の蛍光体層12と発光体層10との間から側面にはみ出てフィレット形状が形成され、同時に、発光素子10上面と第1の蛍光体層12との間に第2の蛍光体層13が蛍光体粒子約1層分の厚みに調整されて形成される(
図16(D))。この段階で加熱硬化することで、半硬化状の第1の蛍光体層12、および第2の蛍光体層13を含んだシリコーン樹脂が同時に硬化される。次に、光反射部材15を、光透過性基板14の側面と、第2の蛍光体層13の側面と、発光素子20の側面とを覆うように設け、加熱硬化、所定サイズにダイシングカットすることで個片化された半導体発光装置を得る(
図16(E))。
【0057】
(変形例)
上述した第3の実施形態及び第4の実施形態では、
図11〜
図13に示すように、矩形状の発光素子20の四辺全てが、光透過性基板14の内側に位置し、発光素子10の周囲を囲繞するようにフィレット上の第2の蛍光体層13が設けられている。
本変形例に係る半導体発光装置は、
図17に示すように、発光素子20と、第1の蛍光体層12及び第2の蛍光体層13と、光透過性基板14の三辺を発光面上面から見て何れも同一直線上に位置するように形成されている。
このように、発光素子20、第1の蛍光体層12、第2の蛍光体層13、及び光透過性基板14の三辺を発光面からみて同一直線上に設けることにより、横一列に複数の半導体発光装置を並べた場合、横並びの発光に対して輝度の均一化を図ることができる。
【0058】
上述した半導体発光装置の構造において、更に正面輝度を向上させる手法として、
図18(A),(B)に示すように、半導体発光装置の4つの側面に遮光膜18を設けることができる。遮光膜18を形成する方法としては、側面を上面に向けて多数を並べた状態にして、真空装置を用いて金属反射膜(例えばAl、Ag、Ag/Pd、Ag/Ni、など)や誘電体多層膜を成膜する方法が挙げられる。また、光透過性基板14の上面をレジスト膜で覆い、回転機構を用いて4つの側面を同時に成膜した後に、レジスト膜を除去する方法もある。遮光膜の別の形成方法として、白色顔料インクをインクジェット法で固着する方法、シード層を下地とした電解めっきなどが挙げられる。遮光膜の形成により、光反射部材の側面、第2の蛍光体層13の側面、光透過性基板14の側面からの光を内部に戻す効果が働き、反射と散乱により正面に取り出されるため、正面輝度を向上させることができる。
【0059】
また、
図8および
図17に示した、発光素子、第1の蛍光体層、第2の蛍光体層、及び光透過性基板の何れかの一辺が同一直線上に位置する半導体発光装置のように、上面視において光反射部材15が存在しない構造にした場合にも遮光膜18を設けることができる。
具体的には、例えば、
図8に示す半導体発光装置においては、光透過性基板の四辺のうち、発光素子、第1の蛍光体層、及び第2の蛍光体層の辺と同一直線状にあり、これらが連続する側面に遮光膜18を設ける。すなわち、光透過性基板の4つの側面のうち、少なくとも1つの側面が、第1の蛍光体層の側面および発光素子の側面と同一沿面にあり、連続する側面を形成するので、この側面に遮光幕18を設ける。これにより発光面の遮光膜18近傍の輝度を他の領域よりも高くすることができる。従って、縦方向の輝度分布傾斜が形成でき、車両用ヘッドランプの配光において、明暗カットラインの形成と同時に、路面へのグラデーションを備えた理想的な配光を実現できる。
【0060】
図17に示す半導体発光装置においては、光透過性基板の4つの側面のうち、少なくとも3つの側面が、夫々第1の蛍光体層側面および発光素子側面と同一沿面を構成している場合、この沿面に遮光膜18を設けることで発光面の遮光膜近傍の輝度を他の領域よりも高くすることができる。また、同時に、ライン状やマトリックス状に半導体発光装置を並べて点消灯させた場合、遮光膜によって、隣接する光源の光が導光しなくなりクロストークが防止され、コントラストの高い配光を作ることが可能となる。
【0061】
上述した各実施形態及びそれらの変形例では、発光素子について、フリップチップ型及びメタルボンディング型として説明したが、発光素子の上面または側面に第2の蛍光体層のフィレット構造が形成できるものであれば適応可能である。また、光透過性基板に波長変換機能があってもよい。例えば、第1および第2の蛍光体層と、光透過性基板と、に含まれる蛍光体(波長変換剤)の割合を調整することで同一の効果が得られる。
また、第1および第2の蛍光体層に光散乱材を混合することで、より均一な光散乱が可能となり、色ムラを抑制することができる。
【0062】
さらに、
図19に示すように、光透過性基板の上面または下面の一方の面に角度を持たせた構造であってもよい。
図19(A)に示す例の場合、第1の蛍光体層12の上面と光透過性基板14の下面とが同じサイズとなり、光透過性基板14下面の傾斜角度により、光取出しで有利になる。傾斜面の加工と同時に第1の蛍光体層12の外形加工も可能となり、工程の簡略化ができる。
【0063】
図19(B)に示す例の場合、光透過性基板14の上面を発光素子20と同等サイズもしくはそれより小さいサイズとすることができ、正面輝度向上に有利である。また、
図3(H)、
図15(H)、
図18に示した個片化する製造方法では、複数の発光素子同士の間隔を詰めて実装すれば、隣接する半導体発光装置同士の輝度差が小さくなり、ライン状やマトリックス状に配列した半導体発光装置を提供することもできる。
【0064】
上述した各実施形態及び各変形例に係る半導体発光装置は、ヘッドランプやADB(Adaptive Driving Beam)型の車両用灯具の光源に適用することができる他、照明用等の一般的な灯具に適用することもできる。