【文献】
TRINH, T., et al.,Comparison of Black Decorative PVD Coatings on Soft Substrates,Society of Vacuum Coaters, 47th Annual Technical Conference Proceedings,2004年,P.547-550,ISSN 0737-5921
【文献】
MUNZ, W. D., et al.,Production of PVD Decorative Hard Coatings Using Multitarget UBM Coating Machines,Society of Vacuum Coaters, 36th Annual Technical Conference Proceedings,1993年,P.411-418,ISSN 0737-5921
【文献】
KALE, A. N., et al.,Tribological properties of (Ti,Al)N coatings deposited at different bias voltages using the cathodic arc technique,Surface and Coatings Technology,2001年,Vol.145,P.60-70,ISSN 0257-8972
【文献】
WANG, Rui, et al.,High temperature oxidation behavior and mechanical properties of TiAlN/SiN decorative films on borosilicate glass by magnetron sputtering,Thin Solid Films,2015年,Vol.584,P.72-77,ISSN 0040-6090
【文献】
CONSTANTIN, R. et al.,Performance of hard coatings, made by balanced and unbalanced magnetron sputtering, for decorative application,Surface and Coatings Technology,1999年,Vol.120/121,Page.728-733,ISSN 0257-8972
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、密着層、硬化層および黒色傾斜層からなる群から選ばれる少なくとも1層を有し、前記密着層、前記硬化層および前記黒色傾斜層は、前記基材と前記黒色層との間に、この順で積層されていることを特徴とする請求項1または2に記載の黒色部材。
さらに、密着層、硬化層および黒色傾斜層を有し、前記密着層、前記硬化層および前記黒色傾斜層は、前記基材と前記黒色層との間に、この順で積層されていることを特徴とする請求項3に記載の黒色部材。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0010】
<黒色部材>
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1に係る黒色部材1の構造を示す断面模式図である。
図1に示す実施形態1の黒色部材1は、基材11と、基材11上に積層された黒色層12とを有する。
【0011】
基材11は、金属、セラミックスまたはプラスチックから形成される基材である。金属(合金を含む)としては、具体的には、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、銅、銅合金、タングステン合金、または硬質化処理したステンレス鋼、チタン、チタン合金などが挙げられる。これらの金属は、一種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また基材11の形状については限定されない。
【0012】
黒色層12は、窒化チタンアルミニウム(TiAlN)(具体的には窒化チタンアルミニウム結晶)を含む。
【0013】
黒色層12は、チタン、アルミニウムおよび窒素を含み、黒色層12に含まれる元素の合計を100at%としたときに、チタンを8.8at%以上22.5at%以下、アルミニウムを26.8at%以上41.7at%以下の量で含む。さらに、窒素を37.3at%以上50.9at%以下の量で含むことが好ましい。上記元素の量が上記範囲にあると、黒色層12は高級感のある黒色を示す。また、黒色層12を有する黒色部材1の硬度は大きくなる。上記範囲の中で、チタンの量を多くすると、硬度は大きくなる傾向にあり、また、窒素およびチタンの量を少なくすると、さらに高級感のある黒色を示す傾向がある。なお、黒色層12中、チタン、アルミニウムおよび窒素のそれぞれの濃度は、厚さ方向(基板11に直交する方向)で同じであることが好ましい。
【0014】
また、黒色層12には、不可避の元素として酸素、炭素などが含まれていることがある。実施形態1に係る黒色部材1の黒色層12においては、炭素を含む場合は、黒色層12に含まれる元素の合計を100at%としたときに、炭素は0at%を超え10at%以下、好ましくは0at%を超え1at%以下の量で含まれることがある。また、酸素を含む場合は、黒色層12に含まれる元素の合計を100at%としたときに、酸素は0at%を超え6at%以下の量で含まれることがある。
【0015】
チタン、アルミニウムおよび窒素は、黒色層12中に、合計で90at%以上含まれていることが好ましい。上記元素の合計量が上記範囲にあると、黒色層12は高級感のある黒色を示す。また、黒色層12を有する黒色部材1の硬度は大きくなる。
【0016】
黒色層12にTiAlNが含まれていることは、X線回折法やESCA、EDXなどにより確認できる。また、たとえば後述の製造方法によって黒色層12を形成する場合には、TiAlNとしては、純粋なTiAlNの他、酸素または炭素がTiAlN結晶中に入り込んだTiAlNも生成すると考えられる。これについても、X線回折法やESCA、EDXなどにより確認できる。なお、チタン、アルミニウム、窒素および不可避の元素は、TiAlNの他に、TiN、AlN、TiAl、TiC、AlC、酸化物などとしても存在していると考えられる。
【0017】
干渉を抑え、高級感のある黒色を得る観点からは、黒色層12の厚さは、通常0.55μm以上であり、好ましくは0.6μm以上である。また、黒色部材1の耐傷性および耐摩耗性を向上する観点からは、黒色層12の厚さは、好ましくは4.0μm以下である。
【0018】
表面凹凸等による光吸収がない平滑膜、すなわち金属調の膜については、光学定数である屈折率(n)が1付近であり、消衰係数(k)が0.5付近であるときに、最も理想的な高級感のある黒色(ピアノブラック)を示す。実施形態1の黒色層12(基材11上に形成された黒色層12)は、高級感のある黒色を示す光学定数を有する。
【0019】
また、黒色層12(たとえば後述する実施例、光学定数の評価方法のようにSiウェハ上に形成された黒色層12)は、L
*、a
*、b
*表色系(CIE表色系)による色評価において、通常L
*≦48.0、−2.0≦a
*≦3.0、−3.5≦b
*≦3.0である。L
*、a
*、b
*が上記範囲にあると、黒色層12は高級感のある黒色を示す。a
*は赤〜緑の色を示しており、a
*が-2.0より小さいと黒色の中でも緑色が混じって見えることがあり、a
*が3より大きいと黒色の中でも赤色が混じって見えることがある。b
*が−3.5より小さいと黒色の中でも青色が混じって見えることがあり、b
*が3.0よりも大きいと黒色の中でも黄色が混じって見えることがある。また、黒色部材1(基材11上に形成された黒色層12を有する黒色部材1)も、L
*、a
*、b
*表色系(CIE表色系)による色評価において、通常L
*≦48.0、−2.0≦a
*≦3.0、−3.5≦b
*≦3.0である。
【0020】
また、黒色部材1の硬度は、通常HV1000以上である。硬度が上記範囲にあると、黒色部材1は、耐傷性および耐摩耗性の観点からも好適に用いることができる。
【0021】
〔実施形態2〕
図2は、実施形態2に係る黒色部材2の構造を示す断面模式図である。
図2に示す実施形態2の黒色部材2は、基材21と、基材21上に積層された黒色層22とを有する。基材21については、実施形態1の基材11における説明と同様である。
【0022】
黒色層22は、窒化チタンアルミニウム(TiAlN)(具体的には窒化チタンアルミニウム結晶)を含む。ここで、TiAlNには、純粋なTiAlNの他、酸素がTiAlN結晶中に入り込んだTiAlNOを含む。
【0023】
黒色層22は、チタン、アルミニウム、窒素および酸素を含み、黒色層22に含まれる元素の合計を100at%としたときに、チタンを6.4at%以上22.5at%以下、アルミニウムを21.4at%以上38.1at%以下、窒素を20.2at%以上42.3at%以下、酸素を12.9at%以上34.9at%以下の量で含むことが好ましい。上記元素の量が上記範囲にあると、黒色層22は高級感のある黒色を示す。また、黒色層22を有する黒色部材2の硬度は大きくなる。なお、黒色層22中、チタン、アルミニウム、窒素および酸素のそれぞれの濃度は、厚さ方向(基板21に直交する方向)で同じであることが好ましい。
【0024】
また、黒色層22には、不可避の元素として炭素などが含まれていることがある。実施形態2に係る黒色部材2の黒色層22においては、炭素を含む場合は、黒色層22に含まれる元素の合計を100at%としたときに、炭素は0at%を超え10at%以下、好ましくは0at%を超え1at%以下の量で含まれることがある。
【0025】
チタン、アルミニウム、窒素および酸素は、黒色層22中に、合計で90at%以上含まれていることが好ましい。上記元素の合計量が上記範囲にあると、黒色層22は高級感のある黒色を示す。また、黒色層22を有する黒色部材2の硬度は大きくなる。
【0026】
黒色層22において、TiAlN(具体的には、純粋なTiAlN、酸素がTiAlN結晶中に入り込んだTiAlNO)が含まれていることは、X線回折法やESCA、EDXなどにより確認できる。また、たとえば後述の製造方法によって黒色層22を形成する場合には、TiAlNとしては、炭素がTiAlN結晶中に入り込んだTiAlN(場合によっては、酸素および炭素がTiAlN結晶中に入り込んだTiAlN)も生成すると考えられる。これについても、X線回折法やESCA、EDXなどにより確認できる。なお、チタン、アルミニウム、窒素、酸素および不可避の元素は、TiAlNの他に、TiN、AlN、TiAl、TiC、AlC、酸化物などとして存在していると考えられる。
【0027】
実施形態2において、黒色層22の厚さ、光学定数(屈折率(n)および消衰係数(k))およびL
*、a
*、b
*の範囲、ならびに黒色部材2のL
*、a
*、b
*の範囲および硬度については、実施形態1における説明と同様である。
【0028】
〔実施形態3〕
図3は、実施形態3に係る黒色部材3の構造を示す断面模式図である。
図3に示す実施形態3の黒色部材3は、基材31と、基材31上に積層された黒色層32とを有する。基材31については、実施形態1の基材11における説明と同様である。
【0029】
黒色層32は、窒化チタンアルミニウム(TiAlN)(具体的には窒化チタンアルミニウム結晶)を含む。ここで、TiAlNには、純粋なTiAlNの他、フッ素がTiAlN結晶中に入り込んだTiAlNFを含む。
【0030】
黒色層32は、チタン、アルミニウム、窒素およびフッ素を含み、黒色層32に含まれる元素の合計を100at%としたときに、チタンを6.4at%以上22.5at%以下、アルミニウムを21.4at%以上38.1at%以下の量で含む。さらに、窒素を20.2at%以上42.3at%以下、フッ素を14.2at%以上29.2at%以下の量で含むことが好ましい。上記元素の量が上記範囲にあると、黒色層32は高級感のある黒色を示す。なお、黒色層32中、チタン、アルミニウム、窒素およびフッ素のそれぞれの濃度は、厚さ方向(基板31に直交する方向)で同じであることが好ましい。
【0031】
また、黒色層32には、不可避の元素として酸素、炭素などが含まれていることがある。実施形態3に係る黒色部材3の黒色層32においては、炭素を含む場合は、黒色層32に含まれる元素の合計を100at%としたときに、炭素は0at%を超え10at%以下の量で含まれることがある。
【0032】
チタン、アルミニウム、窒素およびフッ素は、黒色層32中に、合計で90at%以上含まれていることが好ましい。上記元素の合計量が上記範囲にあると、黒色層32は高級感のある黒色を示す。
【0033】
黒色層32において、TiAlN(具体的には、純粋なTiAlN、フッ素がTiAlN結晶中に入り込んだTiAlNF)が含まれていることは、X線回折法やESCA、EDXなどにより確認できる。また、たとえば後述の製造方法によって黒色層32を形成する場合には、TiAlNとしては、酸素または炭素がTiAlN結晶中に入り込んだTiAlN(場合によっては、フッ素と酸素または炭素とがTiAlN結晶中に入り込んだTiAlN)も存在していると考えられる。これについても、X線回折法やESCA、EDXなどにより確認できる。なお、チタン、アルミニウム、窒素、フッ素および不可避の元素は、TiAlNの他に、TiN、AlN、TiAl、TiC、AlC、フッ化物、酸化物などとして存在していると考えられる。
【0034】
実施形態3において、黒色層32の厚さ、光学定数(屈折率(n)および消衰係数(k))およびL
*、a
*、b
*の範囲、ならびに黒色部材3のL
*、a
*、b
*の範囲については、実施形態1における説明と同様である。
【0035】
〔実施形態4、5〕
図4は、実施形態4に係る黒色部材4の構造を示す断面模式図である。
図4に示す実施形態4の黒色部材4は、基材41と、基材41上に積層された黒色層42とを有する。実施形態4の黒色部材4は、さらに、密着層43、密着傾斜層44、硬化層45および黒色傾斜層46を有し、密着層43、密着傾斜層44、硬化層45および黒色傾斜層46は、基材41と黒色層42との間に、この順で積層されている。基材41については、実施形態1の基材11における説明と同様であり、黒色層42については、実施形態3の黒色層32における説明と同様である。
【0036】
密着層43は、低い応力(いいかえると低い硬度)を有し、密着層43を設けると、黒色部材4全体の密着力を向上できる。膜硬度と膜応力とは比例関係にあり、膜硬度が高くなるほど膜応力は増大する。たとえばスパッタリング法で形成した膜は圧縮応力を示し、基材から剥がれようとする力が発生する。低い硬度の基材41(SUS316L(HV350程度)など)上に、直接高い応力(硬度)の膜を形成すると、その応力差により膜が剥がれやすくなる。このため、基材41には、直接高い応力(硬度)の膜を形成せずに、まず低い応力(硬度)の密着層43を形成することが好ましい。
【0037】
密着層43は、たとえばTiAlによって形成することが好ましい。密着層43は、密着層43に含まれる元素の合計を100at%としたときに、チタンを19.3at%以上52.8at%以下、アルミニウムを44.3at%以上78.7at%以下の量で含むことが好ましい。このような密着層43の硬度は、通常HV800以下である。密着層43の厚さは、通常0.03μm以上0.3μm以下である。
【0038】
密着傾斜層44は、密着層43と硬化層45とをつなぐ層である。密着層43から硬化層45への厚さ方向(基材41と垂直な方向)に沿って、膜応力(膜硬度)の値が密着層43での値から硬化層45での値に徐々に増加するように形成される。密着傾斜層44を設けると、密着層43と同様に膜間の急激な応力差を緩和でき、黒色部材4全体の密着力を向上できる。
【0039】
密着傾斜層44は、たとえば密着層43側は密着層43と同じ組成のTiAlであり、硬化層45側は硬化層45と同じ組成のTiAlNである。密着層43から硬化層45への厚さ方向(基材41と垂直な方向)に沿って、窒素の量が大きくなるように形成することが好ましい。なお、元素量の変化は、ESCA(X線光電子分光法)により確認できる。密着傾斜層44の厚さは、通常0.03μm以上1.0μm以下である。
【0040】
硬化層45は、できるだけ高い硬度を有するように形成され、硬化層45を設けると、黒色部材4全体の膜硬度を高められる。
【0041】
硬化層45は、たとえばTiAlNによって形成することが好ましい。硬化層45は、硬化層45に含まれる元素の合計を100at%としたときに、チタンを8.1at%以上35.2at%以下、アルミニウムを30.4at%以上41.3at%以下、窒素を21.0at%以上52.8at%以下の量で含むことが好ましい。このような硬化層45の硬度は、通常HV1000以上である。硬化層45の厚さは、通常0.4μm以上4.0μm以下である。
【0042】
黒色傾斜層46は、硬化層45と黒色層42とをつなぐ層である。硬化層45から黒色層42への厚さ方向(基材41と垂直な方向)に沿って、屈折率および消衰係数の値が硬化層45での値から黒色層42での値に徐々に近づくように形成される。屈折率および消衰係数が大きく異なる界面においては、光の干渉が発生しやすい。黒色傾斜層46を設けないと、高い明度(たとえばL
*70程度)を有する硬化層45と黒色層42との界面においては光の干渉が起こりやすい。光の干渉とは、黒色層42の表面から反射する光と、黒色層42を通過して硬化層45との界面で反射し再び黒色層42を通過してきた光との間で起こる光の重ね合わせ現象である。黒色傾斜層46を設けると、硬化層45と黒色層42との界面が不明確となり、干渉現象の発生を抑えられる。なお、これにより、結果として黒色層42の膜厚を小さくすることが可能となる。
【0043】
黒色傾斜層46は、たとえば硬化層45側は硬化層45と同じ組成のTiAlNであり、黒色層42側は黒色層42と同じ組成である。硬化層45から黒色層42への厚さ方向(基材41と垂直な方向)に沿って、窒素の量が変わるように、フッ素の量が増大するように形成することが好ましい。なお、元素量の変化は、ESCA(X線光電子分光法)により確認できる。黒色傾斜層46の厚さは、通常0.03μm以上0.06μm以下である。
【0044】
また、実施形態4に係る黒色部材4は、基材と、基材上に積層された黒色層とを有し、さらに、密着層、硬化層および黒色傾斜層を有し、密着層、硬化層および黒色傾斜層が、基材と黒色層との間に、この順で積層されていてもよい。すなわち、実施形態4の黒色部材4の構成から、密着傾斜層44を除いた構成(基材/密着層/硬化層/黒色傾斜層/黒色層)であってもよい。この場合、基材については、実施形態1の基材11における説明と同様であり、黒色層については、実施形態3の黒色層32における説明と同様であり、密着層、硬化層および黒色傾斜層については、実施形態4の密着層43、硬化層45および黒色傾斜層46における説明と同様である。
【0045】
また、実施形態4の黒色部材4は、基材と、基材上に積層された黒色層とを有し、さらに、密着層、硬化層および黒色傾斜層からなる群から選ばれる少なくとも1層を有し、密着層、硬化層および黒色傾斜層が、基材と黒色層との間に、この順で積層されていてもよい。このような黒色部材の構成としては、具体的には、基材/密着層/黒色層、基材/硬化層/黒色層、基材/黒色傾斜層/黒色層、基材/密着層/硬化層/黒色層、基材/密着層/黒色傾斜層/黒色層、基材/硬化層/黒色傾斜層/黒色層が挙げられる。これらの場合、基材については、実施形態1の基材11における説明と同様である。黒色層については、実施形態3の黒色層32における説明と同様である。密着層、硬化層および黒色傾斜層については、実施形態4の密着層43、硬化層45および黒色傾斜層46における説明と同様である。ここで、黒色傾斜面については、黒色傾斜面46の説明において、硬化層45を黒色傾斜層の下の層(いいかえると基材側の層)と読み替えた場合が相当する。
【0046】
また、実施形態5の黒色部材5は、実施形態4の黒色層42の代わりに、実施形態1の黒色層12を有している。さらに、黒色傾斜層46の代わりに、たとえば硬化層45側は硬化層45と同じ組成のTiAlNであり、黒色層12側は黒色層12と同じ組成である黒色傾斜層を有する。硬化層45から黒色層12への厚さ方向(基材41と垂直な方向)に沿って、窒素の量が変わるように形成することが好ましい。
【0047】
あるいは、実施形態5の黒色部材5は、実施形態4の黒色層42の代わりに、実施形態2の黒色層22を有している。さらに、黒色傾斜層46の代わりに、たとえば硬化層45側は硬化層45と同じ組成のTiAlNであり、黒色層22側は黒色層22と同じ組成である黒色傾斜層を有する。硬化層45から黒色層22への厚さ方向(基材41と垂直な方向)に沿って、窒素の量が変わるように、酸素の量が増大するように形成することが好ましい。なお、実施形態5の黒色傾斜層の厚さは、黒色傾斜層46と同じである。
【0048】
また、実施形態5の黒色部材5は、実施形態4の黒色部材4と同様に、基材と、基材上に積層された黒色層とを有し、さらに、密着層、硬化層および黒色傾斜層を有し、密着層、硬化層および黒色傾斜層は、基材と黒色層との間に、この順で積層されていてもよい。あるいは、基材と、基材上に積層された黒色層とを有し、さらに、密着層、硬化層および黒色傾斜層からなる群から選ばれる少なくとも1層を有し、密着層、硬化層および黒色傾斜層は、基材と黒色層との間に、この順で積層されていてもよい。具体的な構成については、実施形態4の黒色部材4における説明と同様である。
【0049】
実施形態4の黒色部材4および実施形態5の黒色部材5は、いずれも上記特定の黒色層を有するため、高級感のある黒色を示す。また、積層構造を有するため、硬度が高く、耐傷性および耐摩耗性に優れる。具体的には、通常L
*≦48.0、−2.0≦a
*≦3.0、−3.5≦b
*≦3.0であり、HV1000以上である。
【0050】
〔実施形態6、7〕
図5は、実施形態6に係る黒色部材6の構造を示す断面模式図である。
図5に示す実施形態6の黒色部材6は、基材61と、基材61上に積層された黒色層62とを有し、黒色層62は、窒化チタンシリコンを含む。ここで、黒色層62は、下記(1)または(2)のとおりである。
【0051】
(1)黒色層62は、チタン、シリコン、および窒素を含み、黒色層62に含まれる元素の合計を100at%としたときに、チタンを5.9at%以上16.2at%以下、シリコンを36.8at%以上41.2at%以下の量で含む。さらに、窒素を40.8at%以上52.1at%以下の量で含むことが好ましい。また、黒色層62には、不可避の元素として酸素、炭素などが含まれていることがある。実施形態6に係る黒色部材6の黒色層62においては、炭素を含む場合は、黒色層62に含まれる元素の合計を100at%としたときに、炭素は0at%を超え10at%以下、好ましくは0at%を超え1at%以下の量で含まれることがある。また、酸素を含む場合は、黒色層12に含まれる元素の合計を100at%としたときに、酸素は0at%を超え6at%以下の量で含まれることがある。
【0052】
(2)黒色層62は、チタン、シリコン、窒素および酸素を含み、黒色層62に含まれる元素の合計を100at%としたときに、チタンを4.0at%以上5.1at%以下、シリコンを32.2at%以上37.2at%以下の量で含む。さらに、窒素を42.1at%以上48.2at%以下、酸素を14.1at%以上16.5at%以下の量で含むことが好ましい。また、黒色層62には、不可避の元素として炭素などが含まれていることがある。実施形態6に係る黒色部材6の黒色層62においては、炭素を含む場合は、黒色層62に含まれる元素の合計を100at%としたときに、炭素は0at%を超え10at%以下、好ましくは0at%を超え1at%以下の量で含まれることがある。
【0053】
実施形態6の黒色部材6は、実施形態4、5で説明した積層構成を有していてもよい。なお、実施形態6の黒色部材6の詳細については、実施形態1〜5の説明において、アルミニウムをシリコンに読み換えた場合が相当する。
【0054】
図6は、実施形態7に係る黒色部材7の構造を示す断面模式図である。
図6に示す実施形態7の黒色部材7は、基材71と、基材71上に積層された黒色層72とを有し、黒色層72は、窒化チタンアルミニウムシリコンを含む。ここで、黒色層72は、下記(3)または(4)のとおりである。
【0055】
(3)黒色層72は、チタン、アルミニウム、シリコンおよび窒素を含み、黒色層72に含まれる元素の合計を100at%としたときに、チタンを16.8at%以上20.5at%以下、アルミニウムおよびシリコンを合計で30.2at%以上33.6at%以下の量で含む。さらに、窒素を45.5at%以上52.5at%以下の量で含むことが好ましい。また、黒色層72には、不可避の元素として酸素、炭素などが含まれていることがある。実施形態7に係る黒色部材7の黒色層72においては、炭素を含む場合は、黒色層72に含まれる元素の合計を100at%としたときに、炭素は0at%を超え10at%以下、好ましくは0at%を超え1at%以下の量で含まれることがある。また、酸素を含む場合は、黒色層12に含まれる元素の合計を100at%としたときに、酸素は0at%を超え6at%以下の量で含まれることがある。
【0056】
(4)黒色層72は、チタン、アルミニウム、シリコン、窒素および酸素を含む。また、黒色層72には、不可避の元素として炭素などが含まれていることがある。実施形態7に係る黒色部材7の黒色層72においては、炭素を含む場合は、黒色層72に含まれる元素の合計を100at%としたときに、炭素は0at%を超え10at%以下、好ましくは0at%を超え1at%以下の量で含まれることがある。
【0057】
実施形態7の黒色部材7は、実施形態4、5で説明した積層構成を有していてもよい。なお、実施形態7の黒色部材7の詳細については、実施形態1〜5の説明において、アルミニウムをアルミニウムおよびシリコンに読み換えた場合が相当する。
【0058】
実施形態6の黒色部材6および実施形態7の黒色部材7は、いずれも上記特定の黒色層を有するため、高級感のある黒色を示す。具体的には、通常L
*≦48.0、−2.0≦a
*≦3.0、−3.5≦b
*≦3.0である。
【0059】
従来の黒色層は、TiCまたはDLCにより形成されている。なお、TiC層は、黒色を呈するものの、硬度がHV300程度と低く、TiC層は耐傷性に劣る。ここで、TiC層は消衰係数が小さいことから、黒色を実現するためには膜厚3μm以上が必要である。また、DLC層について、カーボン組成(SP2混成軌道)では黒色を呈するものの硬度が低い。ダイヤモンド組成(SP3混成軌道)では硬度はHV3000以上と高いものの、屈折率が高く、消衰係数がほぼ0であるため、膜厚を大きくしても干渉した虹色を呈する。このため、DLC層は、カーボン組成(SP2)とダイヤモンド組成(SP3)との間で構成されているが、HV1000程度を得る場合はグレー色に近い色調である。いずれにしても、従来の黒色層であるTiC層およびDLC層は、主成分が炭素であり、製造の際に大量の炭化水素ガス(CH
4ガス、C
2H
2ガス、トルエンガス等)を使用する必要がある。したがって、製造装置には大量の炭が付着する。この炭を放置すると、製造装置の絶縁不良を誘発したり、成膜中に製造装置から炭が脱落して膜上に付着して、膜の汚染を誘発したりすることがある。このため、メンテナンス周期がたとえば1週間に1回以上となり、生産性に劣る。さらに、メンテナンス前後で色調の再現性に劣る。
【0060】
これに対して、いずれの実施形態の黒色部材も、上記特定の黒色層を有するため、高級感のある黒色を示す。また、黒色層は炭素をほとんど含んでいないため、メンテナンス周期が長い。たとえば実施形態1の場合は2か月に1回程度である。このため、大幅なコストダウンが可能であり、生産性および色調の再現性に優れる。このように、いずれの実施形態の黒色部材においても、高級感のある黒色と、高い生産性および再現性とが両立できる。
【0061】
上記実施形態の中でも、実施形態1および実施形態2の黒色部材、特に実施形態2の黒色部材は、黒色層の組成により、硬度が高く、耐傷性および耐摩耗性に優れる。また、実施形態2および実施形態3の黒色部材、特に実施形態3の黒色部材は、黒色層の組成により、より高級感のある黒色を示す。また、実施形態4および実施形態5の黒色部材、特に実施形態4の黒色部材は、積層構造により、さらに高級感のある黒色を示すとともに、耐傷性および耐摩耗性にさらに優れる。ところで、耐傷性は、おおよそ膜の厚さ、膜の密着度および膜の硬度の積により決まる。基材と黒色層との間に上述した層をさらに設けた場合は、膜の厚さ、膜の密着度および膜の硬度の少なくともいずれかが改善されるため、耐傷性が向上すると考えられる。これにより耐摩耗性も向上すると考えられる。また、アルミニウムを含む黒色層を有する実施形態の方が、シリコンを含む黒色層を有する実施形態よりも、黒色度合いに優れる。
【0062】
さらに、上述した実施形態に係る黒色部材は、基材と、上記基材上に積層された黒色層とを有する黒色部材であって、上記黒色層は、窒化チタンアルミニウム、窒化チタンシリコン、または窒化チタンアルミニウムシリコンを含み、上記黒色層は、酸素、フッ素および炭素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含んでいてもよく、炭素を含む場合は、上記黒色層に含まれる元素の合計を100at%としたとき、炭素を10at%以下の量で含み、上記黒色層は、L
*、a
*、b
*表色系(CIE表色系)による色評価において、L
*≦48.0、−2.0≦a
*≦3.0、−3.5≦b
*≦3.0である黒色部材であってもよい。上記黒色部材は、黒色層についてL
*、a
*、b
*が上記範囲にあればよい。いいかえると、上記黒色部材は、チタン、アルミニウム、シリコン、窒素、酸素およびフッ素の量が、実施形態1〜7において説明した範囲内でなくてもよい。
【0063】
<黒色部材の製造方法>
〔実施形態1の製造方法〕
実施形態1の黒色部材1の製造方法は、反応性スパッタリング法により、原料合金としてチタンおよびアルミニウムを含む合金と、反応性ガスとして窒素ガスとを反応させて、基材11上に黒色層12を積層する工程(積層工程)と、黒色層12が積層された基材11を加工して黒色部材1を得る工程(加工工程)とを含む。このような製造方法によれば、上述した実施形態1の黒色部材1が得られる。
【0064】
積層工程の反応性スパッタリング法では、真空に排気されたチャンバー内に、不活性ガス(たとえばArガス)を導入しながら、基材11と黒色層12の構成原子からなるターゲットとの間に直流または交流の高電圧を印加する。次いで、ターゲットにイオン化したArを衝突させて、ターゲット構成原子をはじき飛ばし、基材11にこの物質を用いて黒色層12を形成させる。具体的には、Arガスとともに微量の反応性ガス(たとえば窒素ガス)を導入することで、ターゲット構成原子と窒素との化合物被膜(黒色層12)を基材上に形成させる。ここで、密着性を向上するため、基板11にBias電圧を印加してもよい。なお、反応性スパッタリング法は、膜質および膜厚の制御性が高く、自動化も容易である。また、スパッタリングされた構成原子のエネルギーが高いことから、密着性を向上させるために基材を加熱する必要がない。このため、融点の低いプラスチックのような基材にも被膜が形成できる。また、はじき飛ばされたターゲット構成原子を基材上に被膜として形成させるため、高融点材料を用いることもでき、材料の選択の幅が広い。
【0065】
原料合金であるチタンおよびアルミニウムを含む合金としては、具体的には焼結体または溶融金属合金を用いることが好ましい。また、原料合金中に、アルミニウムが43at%以上81at%以下の量で含まれることが好ましい。なお、残りはチタンであることが好ましい。上記組成を有する原料合金によれば、上述した黒色層12が得られる。
【0066】
不活性ガスとしては、Arガス、Krガス、Xeガスが挙げられ、Arガスが好適に用いられる。
【0067】
たとえば、原料合金の組成、反応性ガスおよび不活性ガスの種類、量によって、黒色層12の組成を調整できる。すなわち、黒色層12の密着性、硬度、光学定数および色調を調整できる。また、基材11およびターゲット間に印加する電圧またはBias電圧によって、黒色層12の硬度、光学定数および色調を調整できる。このように、原料合金の組成、上記ガスの種類、量、電圧などの成膜条件を変更すると、赤みを帯びた黒色から青みを帯びた黒色まで、色調を調整できる。したがって、より色味の少ない純粋な黒色を示す条件を適宜選択することが好ましい。なお、より具体的な成膜条件については、後述する実施例において述べる。さらに、スパッタリング時間によって、黒色層12の厚さを調整できる。
【0068】
なお、加工工程は、公知の方法により適宜行うことができる。
【0069】
〔実施形態2の製造方法〕
実施形態2の黒色部材2の製造方法は、反応性スパッタリング法により、原料合金としてチタンおよびアルミニウムを含む合金と、反応性ガスとして窒素ガスおよび酸素ガスとを反応させて、基材21上に黒色層22を積層する工程と、黒色層22が積層された基材21を加工して黒色部材2を得る工程とを含む。このような製造方法によれば、上述した実施形態2の黒色部材2が得られる。
【0070】
実施形態2の黒色部材2の製造方法については、窒素ガスの代わりに窒素ガスおよび酸素ガスを用いること以外は、実施形態1の黒色部材1の製造方法における説明と同様である。実施形態2の黒色部材2の製造方法では、窒素ガスおよび酸素ガスの量比によっても、黒色層22の密着性、硬度、光学定数および色調を調整できる。なお、より具体的な成膜条件については、後述する実施例において述べる。
【0071】
〔実施形態3の製造方法〕
実施形態3の黒色部材3の製造方法は、反応性スパッタリング法により、原料合金としてチタンおよびアルミニウムを含む合金と、反応性ガスとして窒素ガスおよびフッ素系ガスとを反応させて、基材31上に黒色層32を積層する工程と、黒色層32が積層された基材31を加工して黒色部材3を得る工程とを含む。このような製造方法によれば、上述した実施形態3の黒色部材3が得られる。
【0072】
実施形態3の黒色部材3の製造方法においては、窒素ガスの代わりに窒素ガスおよびフッ素系ガスを用いること以外は、実施形態1の黒色部材1の製造方法における説明と同様である。フッ素系ガスとしては、CF
4ガス、SF
6ガスが挙げられ、CF
4ガスが好適に用いられる。実施形態3の黒色部材3の製造では、従来の黒色層の製造よりも反応性ガス(Cを含むガス、例:CH
4、C
2H
2等)の使用量が少ないことから装置汚染が抑えられる。したがって、実施形態3の黒色部材3は生産性が高く、再現性も高い。実施形態3の黒色部材3の製造方法では、窒素ガスおよびフッ素系ガスの量比によっても、黒色層32の密着性、硬度、光学定数および色調を調整できる。なお、より具体的な成膜条件については、後述する実施例において述べる。
【0073】
〔実施形態4、5の製造方法〕
実施形態4の黒色部材4の製造方法は、反応性スパッタリング法により、原料合金としてチタンおよびアルミニウムを含む合金を用いて、基材41上に密着層43を積層する工程、原料合金としてチタンおよびアルミニウムを含む合金と、反応性ガスとして窒素ガスとを反応させて、密着層43上に密着傾斜層44を積層する工程、原料合金としてチタンおよびアルミニウムを含む合金と、反応性ガスとして窒素ガスとを反応させて、密着傾斜層44上に硬化層45を積層する工程、原料合金としてチタンおよびアルミニウムを含む合金と、反応性ガスとして窒素ガスおよびフッ素系ガスとを反応させて、硬化層45上に黒色傾斜層46を積層する工程、および原料合金としてチタンおよびアルミニウムを含む合金と、反応性ガスとして窒素ガスおよびフッ素系ガスとを反応させて、黒色傾斜層46上に黒色層42を積層する工程と、黒色層42が積層された基材41を加工して黒色部材4を得る工程とを含む。このような製造方法によれば、上述した実施形態4の黒色部材4が得られる。
【0074】
密着層43を積層する工程では、上述した組成、硬度および厚さを有する密着層43が得られるように、原料合金の組成、反応性ガスおよび不活性ガスの種類、量、スパッタリング時間、電圧などを適宜選択することが好ましい。
【0075】
密着傾斜層44を積層する工程では、上述した組成および厚さを有する密着傾斜層44が得られるように、原料合金の組成、反応性ガスおよび不活性ガスの種類、量、スパッタリング時間、電圧などを適宜選択することが好ましい。具体的には、窒素ガスの量を増加させながら積層することが好ましい。
【0076】
硬化層45を積層する工程では、上述した組成、硬度および厚さを有する硬化層45が得られるように、原料合金の組成、反応性ガスおよび不活性ガスの種類、量、スパッタリング時間、電圧などを適宜選択することが好ましい。
【0077】
黒色傾斜層46を積層する工程では、上述した組成および厚さを有する黒色傾斜層46が得られるように、原料合金の組成、反応性ガスおよび不活性ガスの種類、量、スパッタリング時間、電圧などを適宜選択することが好ましい。具体的には、窒素ガスの量を変更させながら、またフッ素系ガスの量を増加させながら積層することが好ましい。
【0078】
黒色層42を積層する工程については、実施形態3の製造方法と同様である。
【0079】
また、実施形態4に係る黒色部材4が、基材と、基材上に積層された黒色層とを有し、さらに、密着層、硬化層および黒色傾斜層を有し、密着層、硬化層および黒色傾斜層が、基材と黒色層との間に、この順で積層されていている場合(基材/密着層/硬化層/黒色傾斜層/黒色層である場合)、あるいは基材と、基材上に積層された黒色層とを有し、さらに、密着層、硬化層および黒色傾斜層からなる群から選ばれる少なくとも1層を有し、密着層、硬化層および黒色傾斜層が、基材と黒色層との間に、この順で積層されている場合は、上述した工程を適宜組み合わせて製造することができる。
【0080】
また、実施形態5の黒色部材1の製造方法においては、実施形態4の製造方法における黒色傾斜層46を積層する工程および黒色層42を積層する工程の代わりに、原料合金としてチタンおよびアルミニウムを含む合金と、反応性ガスとして窒素ガスとを反応させて、硬化層45上に黒色傾斜層を積層する工程、および原料合金としてチタンおよびアルミニウムを含む合金と、反応性ガスとして窒素ガスとを反応させて、黒色傾斜層上に実施形態1の黒色層12を積層する工程を含む。黒色傾斜層を積層する工程では、上述した組成および厚さを有する黒色傾斜層が得られるように、原料合金の組成、反応性ガスおよび不活性ガスの種類、量、スパッタリング時間、電圧などを適宜選択することが好ましい。具体的には、窒素ガスの量を変更させながら積層することが好ましい。黒色層12を積層する工程については、実施形態1の製造方法と同様である。
【0081】
あるいは、実施形態5の黒色部材1の製造方法においては、実施形態4の製造方法における黒色傾斜層46を積層する工程および黒色層42を積層する工程の代わりに、原料合金としてチタンおよびアルミニウムを含む合金と、反応性ガスとして窒素ガスおよび酸素ガスとを反応させて、硬化層45上に黒色傾斜層を積層する工程、および原料合金としてチタンおよびアルミニウムを含む合金と、反応性ガスとして窒素ガスおよび酸素ガスとを反応させて、黒色傾斜層上に実施形態2の黒色層22を積層する工程を含む。黒色傾斜層を積層する工程では、上述した組成および厚さを有する黒色傾斜層が得られるように、原料合金の組成、反応性ガスおよび不活性ガスの種類、量、スパッタリング時間、電圧などを適宜選択することが好ましい。具体的には、窒素ガスの量を変更させながら、酸素ガスを増加させながら積層することが好ましい。黒色層22を積層する工程については、実施形態2の製造方法と同様である。
【0082】
このような製造方法によれば、上述した実施形態5の黒色部材5が得られる。
【0083】
また、実施形態5に係る黒色部材5が、基材と、基材上に積層された黒色層とを有し、さらに、密着層、硬化層および黒色傾斜層を有し、密着層、硬化層および黒色傾斜層が、基材と黒色層との間に、この順で積層されていている場合(基材/密着層/硬化層/黒色傾斜層/黒色層である場合)、あるいは基材と、基材上に積層された黒色層とを有し、さらに、密着層、硬化層および黒色傾斜層からなる群から選ばれる少なくとも1層を有し、密着層、硬化層および黒色傾斜層が、基材と黒色層との間に、この順で積層されている場合は、上述した工程を適宜組み合わせて製造することができる。
【0084】
〔実施形態6、7の製造方法〕
実施形態6の黒色部材6の製造方法の詳細については、実施形態1〜5の製造方法の説明において、アルミニウムをシリコンに読み換えた場合が相当する。また、実施形態7の黒色部材7の製造方法の詳細については、実施形態1〜5の製造方法の説明において、アルミニウムをアルミニウムおよびシリコンに読み換えた場合(たとえば、原料合金としてチタンおよびアルミニウムを含む合金の代わりに、チタン、アルミニウムおよびシリコンを含む合金を用いるなど)が相当する。このような製造方法によれば、上述した実施形態6の黒色部材6および実施形態7の黒色部材7が得られる。
【0085】
なお、実施形態の黒色部材の製造方法は、上述した反応性スパッタリング法以外にも、アーク法、イオンプレーティング法などによって行ってもよい。なお、アーク法では、真空中で金属ターゲットを陰極としてアーク放電を起こし、それにより発生した電気エネルギーによりターゲット材を蒸発させて金属イオン化して成膜する。基板側にバイアス電圧(負圧)を印加することで、金属イオンは加速され、反応ガス粒子とともに基材表面に密着し緻密な膜が形成できる。
【0086】
さらに、上述した実施形態に係る黒色部材の製造方法は、基材と、上記基材上に積層された黒色層とを有する黒色部材であって、上記黒色層は、窒化チタンアルミニウム、窒化チタンシリコン、または窒化チタンアルミニウムシリコンを含み、上記黒色層は、酸素、フッ素および炭素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含んでいてもよく、炭素を含む場合は、上記黒色層に含まれる元素の合計を100at%としたとき、炭素を10at%以下の量で含み、上記黒色層は、L
*、a
*、b
*表色系(CIE表色系)による色評価において、L
*≦48.0、−2.0≦a
*≦3.0、−3.5≦b
*≦3.0である黒色部材の製造方法であればよい。具体的には、反応性スパッタリング法またはアーク法により、原料合金として、チタンおよびアルミニウムを含む合金、チタンおよびシリコンを含む合金またはチタン、アルミニウムおよびシリコンを含む合金と、反応性ガスとして、窒素ガス、窒素ガスおよび酸素ガス、または、窒素ガスおよびフッ素系ガスとを反応させて、基材上に黒色層を積層する工程と、黒色層が積層された基材を加工して黒色部材を得る工程とを含んでいればよい。いいかえると、得られる黒色部材において、チタン、アルミニウム、シリコン、窒素、酸素およびフッ素の量が、実施形態1〜7において説明した範囲内でなくてもよい。
【0087】
<装身具、装飾品、スポーツ用品および工具>
実施形態に係る装身具または装飾品は、外装部品を有する装身具または装飾品であって、上記外装部品の一部または全部が、上述した黒色部材で構成される。装身具または装飾品としては、時計、眼鏡、アクセサリーが挙げられる。具体的には、実施形態に係る時計は、外装部品を有する時計であって、上記外装部品の一部または全部が、上述した黒色部材で構成される。時計は、光発電時計、熱発電時計、標準時電波受信型自己修正時計、機械式時計、一般の電子式時計のいずれであってもよい。従来の時計は、シャツとの擦れや、机、壁などに衝突することにより傷が入りやすい。しかし、実施形態に係る時計は、上述した黒色部材を用いているため、高級感のある黒色を示すとともに、長年にわたり傷が入りにくく、非常にきれいな外観を維持できる。なお、このような時計は、上述した黒色部材を用いて公知の方法により製造される。
【0088】
さらに、実施形態に係るスポーツ用品は、外装部品を有するスポーツ用品であって、上記外装部品の一部または全部が、上述した黒色部材で構成される。上記スポーツ用品は、高級感のある黒色を示し、耐傷性にも優れる。なお、このようなスポーツ用品は、上述した黒色部材を用いて公知の方法により製造される。
【0089】
また、実施形態に係る工具は、一部または全部が、上述した黒色部材で構成される。上記工具は、耐傷性に優れる。特に、黒色部材の硬度がHV1000以上である場合は、耐傷性に優れるため、工具としてより好ましい。なお、このような工具は、上述した黒色部材を用いて公知の方法により製造される。
【0091】
[1]基材と、上記基材上に積層された黒色層とを有する黒色部材であって、上記黒色層は、窒化チタンアルミニウム、窒化チタンシリコン、または窒化チタンアルミニウムシリコンを含み、上記黒色層は、酸素、フッ素および炭素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含んでいてもよく、炭素を含む場合は、上記黒色層に含まれる元素の合計を100at%としたとき、炭素を10at%以下の量で含み、上記黒色層は、L
*、a
*、b
*表色系(CIE表色系)による色評価において、L
*≦48.0、−2.0≦a
*≦3.0、−3.5≦b
*≦3.0であることを特徴とする黒色部材。
上記[1]の黒色部材は、高級感のある黒色を示し、生産性に優れる。
【0092】
[2]上記黒色部材の硬度が、HV1000以上であることを特徴とする[1]に記載の黒色部材。
硬度が上記範囲にあると、装飾品、装身具、スポーツ用品または工具として好適に用いられる。
【0093】
[3]上記黒色層は、窒化チタンアルミニウムを含み、上記黒色層に含まれる元素の合計を100at%としたときに、チタンを8.8at%以上22.5at%以下、アルミニウムを26.8at%以上41.7at%以下の量で含み、酸素を含む場合は、酸素を0at%を超え6at%以下の量で含むことを特徴とする[1]または[2]に記載の黒色部材。
上記[2]の黒色部材は、より高級感のある黒色を示し、硬度が高く、耐傷性および耐摩耗性に優れる。
【0094】
[4]さらに、密着層、硬化層および黒色傾斜層からなる群から選ばれる少なくとも1層を有し、上記密着層、上記硬化層および上記黒色傾斜層は、上記基材と上記黒色層との間に、この順で積層されていることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の黒色部材。
【0095】
[5]さらに、密着層、硬化層および黒色傾斜層を有し、上記密着層、上記硬化層および上記黒色傾斜層は、上記基材と上記黒色層との間に、この順で積層されていることを特徴とする[4]に記載の黒色部材。
【0096】
[6]さらに、密着傾斜層を有し、上記密着傾斜層は、上記密着層と上記硬化層との間に積層されていることを特徴とする[5]に記載の黒色部材。
上記[4]〜[6]の黒色部材は、より高級感のある黒色を示し、硬度が高く、耐傷性および耐摩耗性に優れる。
【0097】
[7]上記黒色層の厚さが、0.6μm以上4.0μm以下であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載の黒色部材。
上記黒色層の厚さがが上記範囲にあると、黒色部材は高級感のある黒色を示し、硬度が高く、耐傷性および耐摩耗性に優れる。
【0098】
[8]基材と、上記基材上に積層された黒色層とを有する黒色部材であって、上記黒色層は、窒化チタンアルミニウム、窒化チタンシリコン、または窒化チタンアルミニウムシリコンを含み、上記黒色層は、酸素、フッ素および炭素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含んでいてもよく、炭素を含む場合は、上記黒色層に含まれる元素の合計を100at%としたとき、炭素を10at%以下の量で含み、上記黒色層は、L
*、a
*、b
*表色系(CIE表色系)による色評価において、L
*≦48.0、−2.0≦a
*≦3.0、−3.5≦b
*≦3.0である黒色部材の製造方法であって、反応性スパッタリング法またはアーク法により、原料合金として、チタンおよびアルミニウムを含む合金、チタンおよびシリコンを含む合金またはチタン、アルミニウムおよびシリコンを含む合金と、反応性ガスとして、窒素ガス、窒素ガスおよび酸素ガス、または、窒素ガスおよびフッ素系ガスとを反応させて、基材上に黒色層を積層する工程と、黒色層が積層された基材を加工して黒色部材を得る工程とを含むことを特徴とする黒色部材の製造方法。
上記[8]の黒色部材の製造方法によれば、高級感のある黒色を示し、生産性に優れる黒色部材が得られる。
【0099】
[9]上記原料合金中に、アルミニウムが43at%以上81at%以下の量で含まれることを特徴とする[8]に記載の黒色部材の製造方法。
上記原料合金を用いると、高級感のある黒色を示し、生産性に優れる黒色部材が得られる。
【0100】
[10]外装部品を有する時計であって、上記外装部品の一部または全部が、[1]〜[7]のいずれかに記載の黒色部材で構成されることを特徴とする時計。
上記[10]の時計は、高級感のある黒色を示すとともに、長年にわたり傷が入りにくく、非常にきれいな外観を維持できる。
【0101】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0103】
〔光学定数〕
光学定数の測定方法は以下のように行った。Siウェハ基板上に形成した黒色層について、エリプソメーター(堀場製作所製、UVISEL)で多波長測定(250nm〜900nm)を実施することにより、屈折率(n)、消衰係数(k)、膜厚(d)を同定した。この測定手法は、薄膜の光学定数測定では一般的に用いられる方法である。得られた各波長での光学定数を(下記式(1)〜(5))に代入することで反射率曲線および色調の算出が可能である。
【0105】
〔膜厚および色調〕
膜厚測定では、具体的には、成膜装置内に、基材とともにマスクを施したSiウェハも導入し、成膜した。次いで、成膜後に上記マスクを除去して、マスクされていた部分とマスクされていない部分での段差を測定した。なお、実施例に記載している膜厚は、予め各成膜条件にて単層膜を成膜し、得られた成膜レートから規定膜厚になるように時間で制御した膜厚である。
【0106】
また、色調測定方法(明度、彩度)では、具体的には、KONICA MINOLTA製のApectra Magic NXを用いて行った。色調は光源D65を用いてL
*a
*b
*色度図による各膜のL
*a
*b
*を測定した。
【0107】
〔膜硬度測定方法〕
膜硬度測定は、微小押込み硬さ試験機(FISCHER製、H100)を用いて行った。測定子にはビッカース圧子を使用し、5mN荷重で10秒間保持した後に除荷を行い、挿入されたビッカース圧子の深さから膜硬度を算出した。
【0108】
〔元素量〕
黒色層を構成する元素の量は、ESCA(X線光電子分光法)により測定した。ESCAでは黒色層表面で定性された元素について、トップ表面からスパッタエッチングを行い、得られた元素のXPS光電子スペクトルの検出から定量を行った。
【0109】
〔耐傷性試験〕
耐傷性試験は、以下のように行った。まず、JISに定めるSUS316L基材に黒色層を形成し試験サンプルを得た。次いで、アルミナ粒子が均一に分散した磨耗紙を試験サンプルに一定加重で接触させ、一定回数擦ることで傷を発生させた。傷がついた試験サンプルの表面を、キズの方向と垂直方向にスキャンして表面粗さを測定し、この二乗平均粗さから耐傷性を評価した。なお、傷の発生量が多いほど、傷の深さが深いほど二乗平均粗さの数値が大きくなり、逆に傷の発生量が少ないほど、傷の深さが浅いほど二乗平均粗さの数値が小さくなることから、耐傷性を数値的に評価できる。
【0110】
〔評価〕
実施例で得られた黒色層を有する黒色部材について、L
*、a
*、b
*が、L
*≦48.0、−2.0≦a
*≦3.0、−3.5≦b
*≦3.0の範囲にあり、硬度がHV1000以上である場合を◎とした。また、L
*、a
*、b
*が、L
*≦48.0、−2.0≦a
*≦3.0、−3.5≦b
*≦3.0の範囲にあり、硬度がHV1000未満である場合を○とした。L
*、a
*、b
*が、L
*≦48.0、−2.0≦a
*≦3.0、−3.5≦b
*≦3.0の範囲にない場合を×とした。
【0111】
[実施例1]
実施例1において、スパッタリングターゲット(原料合金)として、Ti70wt%Al30wt%(Ti57at%Al43at%)の焼結体を使用した。
図1に示すように、基材11としてJISに規定されるSUS316L基材を用いた。基材11上に、スパッタリング法でArガス量105sccm一定のもと窒素ガスを35sccmの量で導入して、厚さ1.0μmの黒色層12(TiAl合金窒化物膜)を形成し、黒色部材1を作製した(試料1−1)。なお、基材11にはスパッタリングされる膜材料を強固に付着させるためのBias電圧を印加し、Bias電圧−10Vの一定条件のもと実施した。
【0112】
さらに、Ti70wt%Al30wt%の焼結体を用いて、窒素ガス量を変化させて黒色部材1を作製した(試料1−2〜1−10)。表1に、これら試料について、黒色層12の膜厚、色調、膜硬度、ESCAによる膜成分測定結果および耐傷性試験結果を示した。比較としてTiAlの測定結果とともに、DLC膜、TiC膜(A社、B社)および理想黒色層の膜厚、色調および膜硬度などを合わせて示した。なお、理想黒色層(表面凹凸等による光吸収がない平滑膜)は、屈折率が1に近く、消衰係数が0.5付近の場合である。
【0113】
窒素ガス量35sccm以上の条件で作製すると、高級感のある黒色を呈する色調範囲(L
*≦48.0、−2.0≦a
*≦3.0、−3.5≦b
*≦3.0)を満たし、さらに耐傷性に効果的な膜硬度HV1000以上を達成できることが分かる。
【0114】
図7〜
図9は、黒色層12(試料1−1)、DLC膜、TiC膜および理想黒色層について、屈折率、消衰係数、および屈折率、消衰係数、膜厚(0.7μm)からシミュレーションした反射率をそれぞれ示す図である。
図7〜
図9より屈折率、消衰係数が理想材料に近くなるほど反射率が低下し、より黒色になることが分かる。
図9から、TiC膜は膜厚0.7μmの場合、高波長側で薄膜の干渉による反射率の増減が確認される。このような反射率の波形になると、650nm付近、800nm付近の色が強調され、逆に600nm付近、750nm付近の色が少なくなる。このため、虹色のような干渉(反射光による多重干渉)となり、黒色を示さない。これは、TiC膜の消衰係数が理想黒色層よりも低くなっており(
図8)、膜の中に入った光が膜中で十分に吸収されずに基板側から反射光として戻ってくることに起因する。すなわち、黒色部材表面からの反射光と基板側から戻ってきた反射光とが干渉したことにより発生している現象である。TiC膜を黒色にするためには膜の厚みを十分に厚くして基板からの反射光をなくす必要があり、最低でも膜厚2.1μm程度にしなければならない。また反射率シミュレーションから、Ti70wt%Al30wt%の焼結体を用いた場合の黒色層12においては、膜厚0.55μmで干渉のない黒色層となる。
【0115】
Ti70wt%Al30wt%の焼結体を用いた黒色層12の場合、DLC膜よりも黒くなることが分かる。また、TiC膜よりも硬度および耐傷性に優れ、膜厚を半分以下に薄くできることから、生産においては大きなコストメリットがある。このように、Ti70wt%Al30wt%の焼結体を用いると、硬度が高く耐傷性の優れた黒色部材1を提供できる。
【0117】
なお、表1の成膜条件において、TiAl(N35
sccm)は、窒素ガスを35sccmの量で導入したことを示す。同様に、TiAl(N10
sccm)などは、窒素ガスを10sccmの量で導入したことなどを示す。他の表においても同様である。
【0118】
[実施例2]
実施例2において、スパッタリングターゲット(原料合金)として、Ti70wt%Al30wt%(Ti57at%Al43at%)の焼結体を使用した。
図2に示すように、基材21としてJIS2種のTi材を用いた。基材21上に、スパッタリング法でArガス量105sccm一定のもと窒素ガスおよび酸素ガスを導入して、厚さ1.0μmの黒色層22(TiAl合金窒酸化物膜)を形成し、黒色部材2を作製した(試料2−1)。なお、基材21にはスパッタリングされる膜材料を強固に付着させるためのBias電圧を印加し、Bias電圧−10Vの一定条件のもと実施した。また、耐傷性試験用の試料として、JISに定めるSUS316L基材上に黒色層22を形成した試料も同時に作製した。
【0119】
さらに、Ti70wt%Al30wt%の焼結体を用いて、窒素ガス量および酸素ガス量を変化させて黒色部材2を作製した(試料2−2〜2−7)。表2に、これら試料について、黒色層22の膜厚、色調、膜硬度、ESCAによる膜成分測定結果および耐傷性試験結果を示した。比較として表1の一部の測定結果とともに、DLC膜、TiC膜(A社、B社)および理想黒色層の膜厚、色調および膜硬度なども合わせて示した。
【0120】
窒素ガスに加えて酸素ガスを微量添加した場合も、高級感のある黒色を呈する色調範囲(L
*≦48.0、−2.0≦a
*≦3.0、−3.5≦b
*≦3.0)を満たし、さらに膜硬度HV1000以上を達成できることが分かる。
【0121】
また、表2から、窒素に加え酸素を導入することにより、単純に窒素量を増やした場合と同様にL
*、a
*、b
*の低下が起こり、色調は黒色に近づいていくことが分かる。しかし、酸素量を増やしていくと、ある条件を境にして、b
*の低下と硬度の低下とが起こり黒色の中にも若干青みがある黒色層となる。さらに酸素量を増やしていくと、
図9に示す実施例1のTiC膜のように、薄膜の干渉現象が現れて黒色を示さなくなる。
【0122】
窒素ガスおよび酸素ガスの合計量と窒素ガス単独の量とが等しい条件を比較した場合(たとえば合計35sccm)、窒素に加え酸素を導入した場合の方が、膜硬度が高いことが分かる。これは、酸素を導入すると、膜中に硬度の高い酸化アルミニウムまたは窒酸化アルミニウムが形成されることによる効果と考えられる。それと同時に硬度の低い酸化チタンも形成されていくことから、ある量を境にして硬度の低下が起こると考えられる。
【0123】
ESCAによる膜中の元素量の比較から、酸素は微量でも窒素より膜中に取り込まれやすいことが分かる。これはチタンおよびアルミニウムの酸化物膜の方が、チタンおよびアルミニウムの窒化物膜を形成するよりも生成自由エネルギーが低いことに由来する。
【0124】
実施例2のようにTi70wt%Al30wt%の焼結体に窒素ガスおよび酸素ガスを併用することで、窒素ガス単独よりも硬度が高く耐傷性に優れる黒色部材2を提供できる。
【0126】
なお、表2の成膜条件において、TiAl(N20
sccmO10
sccm)は、窒素ガスを20sccmの量で導入し、酸素ガスを10sccmの量で導入したことを示す。同様に、TiAl(N20
sccmO15
sccm)などは、窒素ガスを20sccmの量で導入し、酸素ガスを15sccmの量で導入したことなどを示す。他の表においても同様である。
【0127】
[実施例3]
実施例3において、スパッタリングターゲット(原料合金)として、Ti70wt%Al30wt%(Ti57at%Al43at%)の焼結体を使用した。
図3に示すように、基材31としてJISに規定されるSUS316L基材を用いた。基材31上に、スパッタリング法でArガス量105sccm一定のもと窒素ガスおよびCF
4ガスを導入して、厚さ1.0μmの黒色層32(TiAl合金窒フッ化物膜)を形成し、黒色部材3を作製した(試料3−1)。なお、基材31にはスパッタリングされる膜材料を強固に付着させるためのBias電圧を印加し、Bias電圧−10Vの一定条件のもと実施した。
【0128】
さらに、Ti70wt%Al30wt%の焼結体を用いて、窒素ガス量およびCF
4ガス量を変化させて黒色部材3を作製した(試料3−2〜3−8)。表3に、これら試料について、黒色層32の膜厚、色調、膜硬度、ESCAによる膜成分測定結果および耐傷性試験結果を示した。比較として表1の一部の測定結果とともに、DLC膜、TiC膜(A社、B社)および理想黒色層の膜厚、色調および膜硬度なども合わせて示した。
【0129】
窒素ガスに加えてCF
4ガスを増やした場合においては、黒色度がさらに向上して理想的な黒色に近づく。また、表3より、黒色度としてはTiC膜よりも圧倒的に向上することができる。
【0130】
図10〜
図12は、黒色層32(試料3−6)、理想黒色層および黒色層12(実施例1、試料1−1)について、屈折率、消衰係数、および屈折率、消衰係数、膜厚(0.7μm)からシミュレーションした反射率をそれぞれ示す図である。
図10〜
図12よりTi70wt%Al30wt%の焼結体を用いた場合の黒色層32は屈折率、消衰係数が理想黒色層に近づくことが分かる。
【0131】
このようにTi70wt%Al30wt%の焼結体に窒素ガスおよびCF
4ガスを併用すると、理想黒色層に近い黒色を呈する黒色部材3を提供できる。
【0133】
なお、表3の成膜条件において、TiAl(N20
sccmCF10
sccm)は、窒素ガスを20sccmの量で導入し、CF
4ガスを10sccmの量で導入したことを示す。同様に、TiAl(N20
sccmCF15
sccm)などは、窒素ガスを20sccmの量で導入し、CF
4ガスを15sccmの量で導入したことなどを示す。他の表においても同様である。
【0134】
[実施例4]
実施例4において、スパッタリングターゲット(原料合金)として、Ti70wt%Al30wt%(Ti57at%Al43at%)の焼結体を使用した。
図13は、窒素ガス量および基板に印加するBias電圧を変化させた場合について、硬度変化を示す図である。
図14は、窒素ガス量および基板に印加するBias電圧を変化させた場合について、明度(L
*)変化を示す図である。
【0135】
図13に示すように、印加するBias電圧を上げると硬度が著しく向上することが分かる。Bias電圧を上げるとTiAl合金窒化物膜の膜硬度を向上させることができる。なお、TiAl合金窒化物膜は工具にも使用される材料である。工具の製造では、Bias電圧を上げると耐久性が向上する。一方、
図14に示すように、Bias電圧を増加すると明度も高く(明るく)なり、黒色度合は低下する。
【0136】
Bias電圧の調整により硬度および色調を変化させられる。したがって、成膜中にBias電圧および導入ガス量を変化させると、硬度および黒色度が高い黒色層を作製できる。
【0137】
[実施例5]
実施例5では、
図4に示す最適な構造を有する黒色部材4を作製した。この黒色部材4は、基材41上に密着層43、密着傾斜層44、硬化層45、黒色傾斜層46、黒色層42の順番に積層して作製される。スパッタリングターゲット(原料合金)として、Ti70wt%Al30wt%(Ti57at%Al43at%)の焼結体を使用し、基材41としてJISに規定されるSUS316L基材を用いた。まず、基材41上に、スパッタリング法でArガス量105sccmを導入し、Bias電圧−150Vの条件で、TiAl合金膜である密着層43(厚さ0.1μm)を形成した。次いで、密着層43上に、Bias電圧−150Vの条件で、窒素ガスを0sccmから20sccmまで、基材41側から徐々に増加させるように導入して、密着傾斜層44(厚さ0.15μm)を形成した。次いで、密着傾斜層44上に、Bias電圧−150V、窒素ガス量20sccmの条件で、硬化層45(厚さ0.8μm)を形成した。次いで、硬化層45上に、Bias電圧−10Vの条件で、窒素ガスを20sccmから30sccmまで、CF
4ガスを0sccmから20sccmまで、基材41側から徐々に変化させるように導入して、黒色傾斜層46(厚さ0.15μm)を形成した。最後に、黒色傾斜層46上に、Bias電圧−10V、窒素ガス量30sccm、CF
4ガス量20sccmの条件で、黒色層42(厚さ0.6μm)を形成し、黒色部材40を作製した(試料5−1)。
【0138】
図14から、硬化層45の明度(L
*)は70程度であり、黒色層42の明度(L
*)(29.87)と大きく異なるため、硬化層45上に黒色層42を形成すると干渉が発生すると考えられる。実施例5では、黒色傾斜層46を設けることで、硬化層45および黒色層42の界面が不明確となり、干渉現象が低減した。この結果、黒色層42の膜厚を下げることが可能となった。黒色層42は、黒色部材4の色を決定する層であり、最も黒くなる成膜条件において形成することが好ましい。ただし黒色層42は硬化層45と比較して硬度が低いため、高い耐傷性を確保するためには膜厚を薄くした方が望ましい。
【0139】
表4に、黒色部材4の基本特性を示した。比較として試料3−6(実施例3、成膜条件:TiAl(N30CF20sccm)(表3))の特性も合わせて示した。黒色部材4のように黒色層42の下に硬度の高い硬化層45を導入することで、黒色部材4全体の膜硬度が増加し、硬度が高く、耐傷性に優れる黒色部材4を作製できた。
【0141】
[実施例6]
実施例6では、
図1および
図2に示す黒色部材1および黒色部材2を作製した。スパッタリングターゲット(原料合金)として、Ti80wt%Al20wt%(Ti69at%Al31at%)、Ti60wt%Al40wt%(Ti46at%Al54at%)、Ti40wt%Al60wt%(Ti27at%Al73at%)、およびTi30wt%Al70wt%(Ti19at%Al81at%)の焼結体を使用した。基材11、21としてJISに規定されるSUS316L基材を用いた。基材11、21上にスパッタリング法でArガス量105sccm一定のもと窒素ガス、または窒素ガスおよび酸素ガスを導入して、厚さ1.0μmの黒色層12、22(TiAl合金窒化物膜またはTiAl合金窒酸化物膜)を形成し、黒色部材1または黒色部材2を作製した(試料6−1〜6−35)。なお、基材11、21にはスパッタリングされる膜材料を強固に付着させるためのBias電圧を印加し、Bias電圧−10Vの一定条件のもと実施した。
【0142】
表5に、Ti80wt%Al20wt%の焼結体を用いた場合の窒化物膜または窒酸化物膜の基本特性を示した。Ti比率を上げると膜硬度は上昇するが、同時に色調のL
*およびa
*が高くなる傾向にある。窒素ガスに加えて酸素ガスを導入した場合は、色調のb
*が高くなる傾向にある。
【0143】
表6に、Ti60wt%Al40wt%の焼結体を用いた場合の窒化物膜または窒酸化物膜の基本特性を示した。Ti70wt%Al30wt%と組成が近いため基本特性はほぼ同様の結果を示した。
図15は、Ti60wt%Al40wt%の焼結体を用いた場合の窒化物膜について、Bias電圧による硬度変化を示す図である。Ti70wt%Al30wt%と同様に、Biasを上げると硬度が著しく増加することが分かる。実施例5と同様に、積層構造によって、耐傷性の高い黒色部材が作製可能である。
【0144】
表7に、Ti40wt%Al60wt%の焼結体を用いた場合の窒化物膜または窒酸化物膜の基本特性を示した。この場合も、硬度が高く、高級感のある黒色を示す黒色部材を作製できる。
図16は、Ti40wt%Al60wt%の焼結体を用いた場合の窒化物膜について、Bias電圧による硬度変化を示す図である。Biasを上げると硬度が著しく増加することが分かる。実施例5と同様に、積層構造によって、耐傷性の高い黒色部材が作製可能である。
【0145】
表8に、Ti30wt%Al70wt%の焼結体を用いた場合の窒化物膜または窒酸化物膜の基本特性を示した。この場合も、硬度が高く、高級感のある黒色を示す黒色部材を作製できる。Al比率を高くしていくと、窒化物膜では黒色を示す条件範囲が若干狭くなる傾向を示した。また、Al比率を高くしていくと、窒酸化物膜では明度が低くなる傾向を示した。
図17は、Ti30wt%Al70wt%の焼結体を用いた場合の窒化物膜について、Bias電圧による硬度変化を示す図である。Bias電圧を上げると硬度が増加することが分かる。実施例5と同様に、積層構造によって、耐傷性の高い黒色部材が作製可能である。また、原料合金中のAl比率が高くなると、Bias電圧による硬度上昇量が小さくなる傾向を示した。
【0146】
なお、Ti20wt%Al80wt%の焼結体を用いた場合の窒化物膜においては、窒素ガス量が30sccmを超えたあたりから全て干渉膜となり、黒色を示さなかった。
【0147】
以上の結果より、好適な黒色部材を作製するためには、原料合金の比率はTi70wt%Al30wt%からTi30wt%Al70wt%の間であることが好ましい。
【0152】
[実施例7]
実施例7では、
図5に示す黒色部材6を作製した。スパッタリングターゲット(原料合金)として、Ti30wt%Si70wt%(Ti20.1at%Si79.9at%)からTi10wt%Si90wt%(Ti6.1at%Si93.9at%)の焼結体を使用した。基材61としてJISに規定されるSUS316L基材を用いた。基材61上に、スパッタリング法でArガス量105sccm一定のもと、窒素ガス、または窒素ガスおよび酸素ガスを導入して、厚さ1.0μmの黒色層62(TiSi合金窒化物膜またはTiSi合金窒酸化物膜)を形成し、黒色部材6を作製した(試料7−1〜7−18)。なお、基材61にはスパッタリングされる膜材料を強固に付着させるためのBias電圧を印加し、Bias電圧−10Vの一定条件のもと実施した。
【0153】
表9に、Ti30wt%Si70wt%の焼結体を用いた場合の窒化物膜または窒酸化物膜の基本特性を示した。比較としてTiSiの測定結果を合わせて示した。TiSi窒化物膜およびTiSi窒酸化物膜も、TiAl窒化物膜およびTiAl窒酸化物膜と同様に黒色を示した。窒素ガス量30sccm以上の条件で作製すると、高級感のある黒色を呈する色調範囲(L
*≦48.0、−2.0≦a
*≦3.0、−3.5≦b
*≦3.0)を満たし、さらに耐傷性に効果的な膜硬度HV1000以上を達成できることが分かる。なお、TiSi窒化物膜およびTiSi窒酸化物膜の明度は、TiAl窒化物膜およびTiAl窒酸化物膜と比較して全体的に高い。
【0154】
表10に、Ti20wt%Si80wt%の焼結体を用いた場合の窒化物膜または窒酸化物膜の基本特性を示した。比較としてTiSiの測定結果を合わせて示した。この場合も、硬度が高く、黒色を示す黒色部材を作製できる。Si比率を高くしていくと、窒化物膜で黒色を示す条件範囲が狭くなる傾向を示した。
【0155】
なお、Ti10wt%Si90wt%の焼結体を用いた場合の窒化物膜においては、窒素ガス量が30sccmを超えたあたりから全て干渉膜となり、黒色を示さなかった。
【0156】
以上の結果より、好適な黒色部材を作製するためには、原料合金の比率はTi30wt%Si70wt%からTi20wt%Si80wt%の間であることが好ましい。また、窒化物膜において膜硬度を高めたい場合は、Si比率を大きめに設定するとよい。さらに、黒色度を高めたい場合は、TiSi系よりもTiAl系の方がより好ましい。
【0159】
[実施例8]
実施例8では、
図6に示す黒色部材7を作製した。スパッタリングターゲット(原料合金)として、Ti52Wt%Al28Wt%Si20Wt%を使用した。基材71としてJISに規定されるSUS316L基材を用いた。基材71上に、スパッタリング法でArガス量105sccm一定のもと、窒素ガス、または窒素ガスおよび酸素ガスを導入して、厚さ1.0μmの黒色層72(TiAlSi合金窒化物膜またはTiAlSi合金窒酸化物膜)を形成し、黒色部材7を作製した(試料8−1〜8−10)。なお、基材71にはスパッタリングされる膜材料を強固に付着させるためのBias電圧を印加し、Bias電圧−10Vの一定条件のもと実施した。
【0160】
表11に、Ti52Wt%Al28Wt%Si20Wt%の焼結体を用いた場合の窒化物膜または窒酸化物膜の基本特性を示した。比較としてTiAlSiの測定結果を合わせて示した。TiAlSi窒化物膜およびTiAlSi窒酸化物膜も、TiAl窒化物膜およびTiAl窒酸化物膜と同様に黒色を示した。窒素ガス量30sccm以上50sccm以下の条件、および窒素量30sccmで酸素量5sccmの条件で作製すると、高級感のある黒色を呈する色調範囲(L
*≦48.0、−2.0≦a
*≦3.0、−3.5≦b
*≦3.0)を満たすことが分かる。さらに耐傷性に効果的な膜硬度HV1000以上を達成できることが分かる。なお、TiAlSi窒化物膜およびTiAlSi窒酸化物膜の明度は、TiAl窒化物膜およびTiAl窒酸化物膜と比較して全体的に高い。
【0161】
表11から、窒素に加え酸素を導入することにより、単純に窒素量を増やした場合と同様にL
*、a
*、b
*の低下が起こり、色調は黒色に近づいていくことが分かる。しかし酸素量を5sccmより多くすると、薄膜の干渉現象が現れて黒色を示さなくなってしまう。
【0162】
窒素ガスおよび酸素ガスの合計量と窒素ガス単独の量とが等しい条件を比較した場合(たとえば合計35sccm)、酸素を導入した場合の方が膜硬度は低くなった。このように、実施例2の結果とは逆になる。これは酸素を導入することで硬度の高い酸化アルミニウムや窒酸化アルミニウムが形成されると同時に硬度の低い酸化シリコンや酸化チタンが膜中に形成されるためと考える。
【0163】
ESCAによる膜中の元素量比較から、酸素は微量でも窒素よりも膜中に取り込まれやすいことが分かる。これはチタン、アルミ、シリコンの酸化物膜の方が、それぞれの窒化物膜を形成するよりも生成自由エネルギーが低いことに由来する。
【0164】
表11の結果より、黒色度合いを高めたい場合はTiAlSi系よりもTiAl系の方がより好ましい。
【0166】
[実施例9]
図18、
図19および
図20は、XRD回折法による結晶性の測定結果を示す図である。
【0167】
具体的には、
図18は、試料1−7(TiAl(N30sccm))、試料2−4(TiAl(N30O5sccm))、試料2−7(TiAl(N30O20sccm))、および比較としてのTiN(Ti(N30sccm))の結晶性測定結果である。TiAl(N30sccm)は37°および56°付近に回折ピークがあるのに対し、TiAl(N30O5sccm)においては63°付近にのみ回折ピークが観測された。また、TiAl(N30O20sccm)においては優先的な結晶配向性は見られずアモルファスライクな結晶構造であることがわかる。比較として測定したTi(N30sccm)の結晶性と比較すると、TiAlN、TiAlNOともに明らかな結晶性の違いが見られる。この結晶性の違いが色調や硬さの違いにつながっていると考えられる。
【0168】
図19は、試料1−7(TiAl(N30sccm))および試料3−6(TiAl(N30CF20sccm))の結晶性測定結果である。CF
4ガスを導入すると、全体的に回折ピークがブロードになり、結晶が小さくなったアモルファスライクな膜になることがわかる。
【0169】
図20は、試料1−7(TiAl(N30sccm))、試料7−4(TiSi(N30sccm))および試料7−8(TiSi(N30O5sccm))の結晶性測定結果を示す。TiSi(N30sccm)、TiSi(N30O5sccm)は明確な回折ピークを持たずほとんどアモルファスライクな結晶構造を示した。シリコンの窒化物であるSi
3N
4や、酸化物であるSiO
2の場合、薄膜構造は、ほぼアモルファス構造を示すことが知られている。実施例6のTiSi膜においても膜中のSi比率の高さにより結晶構造がアモルファスライクな結晶構造になっていると考えられる。