特許第6934794号(P6934794)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6934794
(24)【登録日】2021年8月26日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】レンジ切替装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 20/02 20060101AFI20210906BHJP
【FI】
   B60K20/02 E
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-192015(P2017-192015)
(22)【出願日】2017年9月29日
(65)【公開番号】特開2019-64459(P2019-64459A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2020年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】廣谷 高志
【審査官】 前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭54−034927(JP,U)
【文献】 特開平07−317886(JP,A)
【文献】 実開平05−077657(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シフト方向への操作が可能とされたシフトレバーと、
前記シフトレバーの操作に連動して前記シフト方向に移動可能とされたガイドピンと、
前記ガイドピンを前記シフト方向に対して交差する進退方向へと変位させる進退操作を行うためのピン操作部と、
前記ガイドピンの移動領域をなすガイド窓を備えたガイド部材と
前記シフトレバーにおけるシフト位置の位置決めを行うディテント部とを有し、
複数のレンジに対応して規定されたシフト位置に前記シフトレバーを移動させることにより、前記レンジの切り替え操作を行えるものであり、
前記ディテント部は、前記シフト位置と対応する位置に設けられたディテント溝と、前記ディテント溝に弾性的に嵌め込まれた付勢部材とを有するものであり、
前記ガイド窓には、前記ピン操作部が操作されない非操作状態において前記ガイドピンが配置される退入側領域と、前記ピン操作部が操作された操作状態において前記ガイドピンが配置される進出側領域とが有り、
前記退入側領域には、前記進出側領域に向けて突出した第一突出部が有り、
前記第一突出部は、前記付勢部材が嵌め込まれた前記ディテント溝と、前記シフト方向に位置する隣接した他の前記ディテント溝との間に配置されており、
前記非操作状態のまま前記シフトレバーを前記シフト方向へと操作することにより、前記ガイドピンが前記第一突出部を経て前記シフト方向に移動すると共に、前記付勢部材が、前記ガイドピンの前記シフト方向への移動に同期して、前記ディテント溝に嵌め込まれた位置から隣接する他の前記ディテント溝に向けて移動可能であることを特徴とするレンジ切替装置。
【請求項2】
シフト方向への操作が可能とされたシフトレバーと、
前記シフトレバーの操作に連動して前記シフト方向に移動可能とされたガイドピンと、
前記ガイドピンを前記シフト方向に対して交差する進退方向へと変位させる進退操作を行うためのピン操作部と、
前記ガイドピンの移動領域をなすガイド窓を備えたガイド部材と
前記シフトレバーにおけるシフト位置の位置決めを行うディテント部とを有し、
複数のレンジに対応して規定されたシフト位置に前記シフトレバーを移動させることにより、前記レンジの切り替え操作を行えるものであり、
前記ディテント部は、前記シフト位置と対応する位置に設けられたディテント溝と、前記ディテント溝に弾性的に嵌め込まれた付勢部材とを有するものであり、
前記ガイド窓には、前記ピン操作部が操作されない非操作状態において前記ガイドピンが配置される退入側領域と、前記ピン操作部が操作された操作状態において前記ガイドピンが配置される進出側領域とが有り、
前記進出側領域には、前記退入側領域に向けて突出した第二突出部が有り、
前記第二突出部は、前記付勢部材が嵌め込まれた前記ディテント溝と、前記シフト方向に位置する隣接した他の前記ディテント溝との間に配置されており、
前記操作状態のまま前記シフトレバーを前記シフト方向へと操作することにより、前記ガイドピンが前記第二突出部を経て前記シフト方向に移動すると共に、前記付勢部材が、前記ガイドピンの前記シフト方向への移動に同期して、前記ディテント溝に嵌め込まれた位置から隣接する他の前記ディテント溝に向けて移動可能であることを特徴とするレンジ切替装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のレンジ切り替えのためのシフト操作を行うシフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の変速装置において、シフト操作を行うためのレンジ切替装置が提供されている。また、近年では、ディテント構造によりシフト切り替え操作時に節度感を与えるとともに、シフトポジションの位置決めも可能とされたものが提供されている。例えば、下記特許文献1のレンジ切替装置は、複数のディテント溝が形成されたディテントプレートと、ディテント溝と弾性的に嵌合可能とされたディテントスプリングとを有している。特許文献1のレンジ切替装置は、ディテント溝にディテントスプリングが嵌合することにより、複数のレンジに対応する位置にマニュアルレバーが位置決め可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−228096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のレンジ切替装置では、所定のシフト位置から他のシフト位置へとシフト操作が行われた場合に、運転者の意図しないシフト位置までシフト操作がなされる場合がある。例えば、シフト操作にあたり、PレンジからDレンジへのシフト操作等、シフト操作を行うにあたり、勢い余って意図したレンジとは異なるレンジとなることがある。そのため、このようなシフト操作の際に、運転者が意図しないシフト位置となる誤操作を抑制するための対策が求められているが、特許文献1のレンジ切替装置にあるディテント溝の形状やディテントスプリングの荷重を変える等、全シフト操作の荷重を上げるもしくは、下げる対策となり、必要なシフトレンジのみを必要な荷重へ対策することは困難である。
【0005】
そこで本発明は、シフト操作の際に、誤操作を抑制することができるレンジ切替装置の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決すべく提供される本発明のレンジ切替装置は、シフト方向への操作が可能とされたシフトレバーと、前記シフトレバーの操作に連動してシフト方向に移動可能とされたガイドピンと、前記ガイドピンを前記シフト方向に対して交差する進退方向へと変位させる進退操作を行うためのピン操作部と、前記ガイドピンの移動領域をなすガイド窓を備えたガイド部材とを有し、複数のレンジに対応して規定されたシフト位置に前記シフトレバーを移動させることにより、前記レンジの切り替え操作を行えるものであり、前記ガイド窓には、前記ピン操作部が操作されない非操作状態において前記ガイドピンが配置される退入側領域と、前記ピン操作部が操作された操作状態において前記ガイドピンが配置される進出側領域とが有り、前記退入側領域には、前記進出側領域に向けて突出した第一突出部が有り、前記非操作状態のまま前記シフトレバーを前記シフト方向へと操作することにより、前記ガイドピンが前記第一突出部を経て前記シフト方向に移動可能であることを特徴とするものである。
【0007】
本発明のレンジ切替装置によれば、ピン操作部が操作されない非操作状態においてシフト操作が行われた場合に、ガイドピンが第一突出部を経てシフト方向に移動する際にシフト操作に要する荷重を増加させることができる。そのため、本発明のレンジ切替装置は、非操作状態においてシフト操作を行う場合であっても、ガイドピンが第一突出部を経由するときと、それ以外のときとで荷重差があり、節度感を持たせることができる。従って、本発明のレンジ切替装置は、運転者が所定のシフト位置であることを認識することができ、誤操作を抑制できる。また、本発明のレンジ切替装置は、上述した荷重差に基づき発生する節度感により、シフト操作のフィーリングを向上させることができる。
【0008】
本発明のレンジ切替装置は、シフト方向への操作が可能とされたシフトレバーと、前記シフトレバーの操作に連動してシフト方向に移動可能とされたガイドピンと、前記ガイドピンを前記シフト方向に対して交差する進退方向へと変位させる進退操作を行うためのピン操作部と、前記ガイドピンの移動領域をなすガイド窓を備えたガイド部材とを有し、複数のレンジに対応して規定されたシフト位置に前記シフトレバーを移動させることにより、前記レンジの切り替え操作を行えるものであり、前記ガイド窓には、前記ピン操作部が操作されない非操作状態において前記ガイドピンが配置される退入側領域と、前記ピン操作部が操作された操作状態において前記ガイドピンが配置される進出側領域とが有り、前記進出側領域には、前記退入側領域に向けて突出した第二突出部が有り、前記操作状態のまま前記シフトレバーを前記シフト方向へと操作することにより、前記ガイドピンが前記第二突出部を経て前記シフト方向に移動可能であることを特徴とするものである。
【0009】
本発明のレンジ切替装置によれば、ピン操作部が操作された操作状態においてシフト操作が行われた場合に、ガイドピンが第二突出部を経てシフト方向に移動する際にシフト操作に要する荷重を増加させることができる。そのため、本発明のレンジ切替装置は、非操作状態においてシフト操作を行う場合であっても、ガイドピンが第二突出部を経由するときと、それ以外のときとで荷重差があり、節度感を持たせることができる。従って、本発明のレンジ切替装置は、運転者が所定のシフト位置であることを認識することができ、誤操作を抑制できる。また、本発明のレンジ切替装置は、上述した荷重差に基づき発生する節度感により、シフト操作のフィーリングを向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シフト操作の際に、誤操作を抑制することができるレンジ切替装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のレンジ切替装置を示す模式図である。
図2図1のレンジ切替装置のガイドピン及びピン操作部を示す図である。
図3図1のレンジ切替装置のガイド窓を示す図である。
図4図1のレンジ切替装置のディテント部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のレンジ切替装置10について、図面を参照しつつ説明する。レンジ切替装置10は、複数のレンジに対応して規定されたシフト位置が車両の前後方向に向けて配列されている。レンジ切替装置10は、後述のシフトレバー20をシフト位置が配列されたシフト方向Xに操作することにより、複数のシフト位置のうちのいずれかを選択可能とされている。図1に示すとおり、レンジ切替装置10は、車両の前方から順にP(パーキング)、R(リバース)、N(ニュートラル)、D(ドライブ)、S(スポーツ)、B(ブレーキ)の各レンジに対応して規定されたシフト位置が配列されている。
【0013】
レンジ切替装置10は、シフトレバー20及び支持体40を有する。レンジ切替装置10は、図示を省略した車体に支持体40が取り付けられる。支持体40は、レンジ切替装置10を車体に取り付けるための枠体として設けられている。また、レンジ切替装置10は、シフトレバー20が支持体40に対して回動可能に支持されている。レンジ切替装置10は、シフトレバー20を支持体40に対して揺動させてシフト位置を選択する操作を行うことにより、レンジの切り替えを行うことができる。
【0014】
また、レンジ切替装置10は、ガイドピン30、ピン操作部32、ガイド部材42、及びディテント部50を有する。ガイドピン30、及びピン操作部32は、シフトレバー20に取り付けられている。また、ガイド部材42は、支持体40に設けられている。
【0015】
シフトレバー20は、シフト位置を選択する操作(シフト操作)を行うために設けられている。図1に示すとおり、シフトレバー20は、支軸26を支点として揺動可能とされ、シフト方向Xに操作を行うことができる。図1に示すとおり、シフトレバー20は、レバー本体22、及びノブ24を有する。シフトレバー20は、レバー本体22にノブ24が取り付けられ、ノブ24が支持体40の外部に突出するよう配置される。レンジ切替装置10は、運転者がノブ24を把手してシフト操作を行うことができる。
【0016】
ガイドピン30は、略円形の断面形状を有する部材である。ガイドピン30は、上述のとおり、シフトレバー20に取り付けられている。そのため、ガイドピン30は、シフトレバー20がシフト方向Xに操作されることに連動して、シフト方向Xに移動する。図2に示すとおり、ガイドピン30は、レバー本体22の軸線方向の中間部に配置され、レバー本体22の内部から外部へ突出するように設けられている。
【0017】
ピン操作部32は、ガイドピン30をシフト方向Xに対して交差する進退方向Yへと変位させる進退操作を行うために設けられている。図2に示すとおり、ピン操作部32は、図示を省略したばねにより、ノブ24の外部に向けて(図2の矢印B)付勢された状態でノブ24に取り付けられている。ピン操作部32を押圧して操作されると、ガイドピン30はコイルばね34の付勢力に反して進退方向Yに変位する。
【0018】
ガイドピン30は、ピン操作部32の操作により、シフトレバー20の軸線方向に距離Lだけ変位可能とされている。より具体的には、上述のとおり、ガイドピン30は、レバー本体22の内部に取り付けられたコイルばね34によりノブ24に向けて付勢されている。図2に示すとおり、ガイドピン30は、ピン操作部32が操作されない状態(非操作状態)において、退入位置A1に維持される。また、ピン操作部32が押圧されて操作された状態(操作状態)において、ガイドピン30は、コイルばね34の付勢力に反して進退方向Yに移動し、進出位置A2まで変位する。このように、ガイドピン30は、ピン操作部32の操作により、退入位置A1から進出位置A2の間を進退方向Yへと変位可能とされている。
【0019】
図1に示すとおり、ガイド部材42は、凹凸状の輪郭をなす開口が形成されたプレート状の部材である。ガイド部材42は、支持体40の壁面の一部をなすように設けられている。ガイド部材42に形成された開口は、ガイドピン30の移動領域をなすガイド窓44として設けられている。
【0020】
図3に示すとおり、ガイド窓44は、縁部45が凹凸状に形成されたガイド部材42の開口として設けられている。ガイド窓44には、ガイドピン30がシフトレバー20のシフト位置に応じてシフト方向Xに配置される。また、ガイド窓44は、ガイドピン30の進退方向Yへの移動を許容する。ガイド窓44は、非操作状態においてガイドピン30が配置される退入側領域44aと、操作状態においてガイドピン30が配置される進出側領域44bとを有する。
【0021】
ガイド窓44には、シフトレバー20のシフト位置に連動して、ガイドピン30が配置されるシフト方向Xのレンジ位置が規定されている。例えば、シフトレバー20の操作によりPレンジのシフト位置が選択された場合には、ガイドピン30はレンジ位置Pに配置される。また、シフトレバー20の操作によりRレンジのシフト位置が選択された場合には、ガイドピン30はレンジ位置Rに配置される。さらに、シフトレバー20の操作によりNレンジのシフト位置が選択された場合には、ガイドピン30はレンジ位置Nに配置される。さらに、シフトレバー20の操作によりDレンジのシフト位置が選択された場合には、ガイドピン30はレンジ位置Dに配置される。さらに、シフトレバー20の操作によりSレンジのシフト位置が選択された場合には、ガイドピン30はレンジ位置Sに配置される。さらに、シフトレバー20の操作によりBレンジのシフト位置が選択された場合には、ガイドピン30はレンジ位置Bに配置される。
【0022】
図3に示すとおり、ガイド窓44は、退入側領域44aの縁部45aが進出側領域44bに向けて突出し、段状に形成された第一段差部46、及び第二段差部47を有する。第一段差部46は、第二段差部47よりも一段高い段差状に形成されている。第一段差部46、及び第二段差部47は、退入側領域44aの縁部45aに対して略直角をなすように形成されている。そのため、ガイド窓44において第一段差部46及び第二段差部47が設けられた位置では、ガイドピン30は第一段差部46又は第二段差部47の進退方向Yに延びる縁に対向して接触し、シフト方向Xへの移動が規制される。
【0023】
ガイド窓44は、Pレンジに対応した退入側領域44aが深い凹溝状に形成されている。また、ガイド窓44は、第一段差部46を挟んでRレンジに対応した退入側領域44aが第一段差部46より一段低い段差状に形成されている。ガイド窓44は、Nレンジに対応した退入側領域44aからDレンジに対応する退入側領域44aに至り、略同じ高さに形成されている。上述のとおり、ガイドピン30はノブ24に向けて付勢されているため、非操作状態では、ガイドピン30はガイド窓44の縁部45aに接触した状態で維持される。
【0024】
また、ガイド窓44は、退入側領域44aの縁部45aが進出側領域44bに向けて突出した第一突出部48を有する。第一突出部48には、退入側領域44aの縁部45aに対して鈍角の傾斜をなす縁部48aが形成されている。言いかえれば、第一突出部48の縁部48aは、シフト方向Xに移動するガイドピン30の移動方向に対して、傾斜するように形成されている。そのため、ガイド窓44において第一突出部48が設けられた位置では、非操作状態のままシフトレバー20をシフト方向Xへと操作することにより、ガイドピン30が縁部48aを経て、第一突出部48に乗り上げてシフト方向Xに移動可能とされている。より具体的には、第一突出部48の縁部48aが形成された位置に対してシフト方向Xに移動するガイドピン30が接触すると、ガイドピン30は第一突出部48に押圧されてコイルばね34の付勢力に対向するように進出側領域44bに向けて変位する。これにより、ガイドピン30は、第一突出部48と接触しつつシフト方向Xへの移動が許容される。
【0025】
図3に示すとおり、第一突出部48の縁部48aは、DレンジとSレンジの間に形成されている。そのため、例えば、ピン操作部32が操作されない非操作状態でNレンジに対応する位置からSレンジに対応する位置にシフト操作が行われた場合に、DレンジとSレンジとの間のシフト操作の際に、ガイドピン30が第一突出部48に接触して乗り上げる際にシフト操作に要する荷重が増加する。そのため、運転者が非操作状態でDレンジに対応する位置にシフト操作を行った後、Sレンジに対応する位置までシフト操作する過程において荷重差があり、節度感が発生する。また、Sレンジ側からDレンジ側にシフト操作を行う場合にも同様の現象が生じる。そのため、レンジ切替装置10においては、運転者が所定のシフト位置であることをしっかりと認識することができ、DレンジあるいはSレンジに誤って操作してしまうのを抑制できる。また、レンジ切替装置19は、第一突出部48に起因して発生する荷重差及び節度感により、シフト操作のフィーリングを向上させることができる。
【0026】
さらに、ガイド窓44は、進出側領域44bの縁部45bが退入側領域44aに向けて突出した第二突出部49を有する。第二突出部49には、進出側領域44bの縁部45bに対して鈍角の傾斜をなす縁部49aが形成されている。言いかえれば、第二突出部49の縁部49aは、シフト方向Xに移動するガイドピン30の移動方向に対して、傾斜するように形成されている。そのため、ガイド窓44において第二突出部49が設けられた位置では、操作状態のままシフトレバー20をシフト方向Xへと操作することにより、ガイドピン30が縁部48aを経て、第二突出部49に乗り上げてシフト方向Xに移動可能とされている。
【0027】
図3に示すとおり、第二突出部49は、DレンジとSレンジの間に設けられている。そのため、例えば、ピン操作部32が押圧された操作状態でNレンジに対応する位置からSレンジに対応する位置にシフト操作が行われた場合に、DレンジとSレンジとの間のシフト操作の際に、第二突出部49の縁部49aが形成された位置にガイドピン30が接触して乗り上げる際にシフト操作に要する荷重が増加する。そのため、運転者が非操作状態でDレンジに対応する位置にシフト操作を行った後、Sレンジに対応する位置までシフト操作する過程において荷重差があり、節度感が発生する。また、Sレンジ側からDレンジ側にシフト操作を行う場合にも同様の現象が生じる。そのため、レンジ切替装置10においては、運転者が所定のシフト位置であることをしっかりと認識することができ、DレンジあるいはSレンジに誤って操作してしまうのを抑制できる。また、レンジ切替装置19は、第二突出部49に起因して発生する荷重差及び節度感により、シフト操作のフィーリングを向上させることができる。
【0028】
ディテント部50は、シフトレバー20のシフト操作の際に節度感を与え、シフトレバー20の位置決めを行うために設けられている。本実施形態のディテント部50は、ディテントプレート52と、付勢部材56とを有する。また、本実施形態のディテント部50は、ディテントプレート52がシフトレバー20に取り付けられ、付勢部材56が支持体40に取り付けられている。より具体的には、ディテントプレート52はレバー本体22のノブ24が取り付けられた側とは反対側に取り付けられている。ディテントプレート52は、シフトレバー20の動きに連動して、支軸26を支点として揺動する。
【0029】
ディテントプレート52は、略扇状の外観を有する。ディテントプレート52には、径方向内側に窪むように形成された複数のディテント溝54が周部に形成されている。また、付勢部材56は、基端部54aが支持体40の内壁面に対して取り付けられ、他端部54bが弾性的にディテントプレート52の周部と接触するよう配置されている。シフトレバー20がシフト位置に配置されるとディテント溝54に付勢部材56の他端部54bが弾性的に嵌め込まれる。これにより、レンジ切替装置10は、シフト操作の際に節度感を与え、シフト位置の位置決めを行うことが可能とされている。より具体的には、図3に示すとおり、ディテント部50は、各レンジに対応するシフト位置ごとに、ディテント溝54が設けられている。レンジ切替装置10は、ディテント溝54及び付勢部材56との嵌合構造と、ガイド窓44におけるガイドピン30の位置構造の双方により、シフト位置の位置決めがなされる。
【0030】
ここで、シフト操作の際に節度感を高めようとすると、ディテント溝54に対する付勢部材56の嵌め込みや付勢力を大きくすれば、ディテント溝54から山部55を付勢部材56が乗り越える際の荷重が大きくなるため、節度感を高めることが期待される。
【0031】
例えば、板ばね等、付勢部材56のばね定数を上げる、あるいは、たわみ量Mを増やすなど、付勢部材56により荷重負荷を高めることもできる。しかしながら、各ディテント溝54に対して用いられる付勢部材56を個別に準備することは困難であり、複数のディテント溝54に対して一定のばね定数とされた付勢部材56を採用せざるを得ない。そのため、付勢部材56のばね定数やたわみ量Mの調整では、各シフト位置に対して荷重全体を上げることは可能であっても、特定のシフト位置に対する荷重を高めることは困難である。
【0032】
その一方、特定のディテント溝54の形状を調整して、特定のシフト位置において節度感を高めようとすることも考えられる。具体的には、節度感を高めようとするシフト位置に対応するディテント溝54を、径方向内側に深い窪みとすることができる。しかしながら、図4に示すとおり、特定のディテント溝54を深くするためにディテント溝54を形成する角度αを大きくすると、隣接するディテント溝54を形成する角度βは自ずと小さいものとせざるを得ない。その結果、特定のシフト位置に対応するディテント溝54と隣接するディテント溝54は、吸込力が不足してディテント溝54とディテント溝54との間の山部で付勢部材56が中間停止することが想定される。このように、ディテント溝54の形状の調整によってシフト位置ごとに節度感に差を設けることには限界がある。
【0033】
本発明のレンジ切替装置10は、上述のとおり、ガイド窓44に第一突出部48を設けることにより、所定のレンジに対応するシフト位置においてガイドピン30に荷重を与える。これにより、本発明のレンジ切替装置10は、ディテント溝54の節度感に加えて特定のシフト位置において節度感を高めることができる。その結果、レンジ切替装置10は、誤操作の抑制やフィーリングの向上が期待される。
【0034】
なお、上述の実施形態では、ディテントプレート52がシフトレバー20に取り付けられ、付勢部材56が支持体40に取り付けられたレンジ切替装置10を示したが、本発明のレンジ切替装置はこれに限定されない。例えば、本発明のレンジ切替装置は、支持体の内壁面にディテント溝を形成し、シフトレバー20に付勢部材を設けたものであってもよい。また、上述の実施形態では、ディテント部50の付勢部材56を板ばねとした例を示したが、ディテント部の付勢部材は、コイルばねとディテントボールを用いたものなど、適宜選択することができる。
【0035】
また、上述の実施形態では、ガイドピン30を円形の断面形状を有するものとした例を示したが、本発明のレンジ切替装置はこれに限定されない。ガイドピンは、多角形の断面形状を有するものであってもよい。なお、ガイドピンは、第一突出部又は第二突出部を乗り上げさせ、あるいは乗り越えさせるために、周面が面取りされたもの、あるいは円形の断面形状を有するものが望ましい。
【0036】
さらに、上述の実施形態では、第一突出部48及び第二突出部49を、縁部に対して鈍角の傾斜をなす形状とした例を示したが、本発明のレンジ切替装置はこれに限定されない。第一突出部及び第二突出部は、湾曲した輪郭を有するものであってもよいし、ガイドピンが乗り上げ、あるいは乗り越え可能とされた突出量として縁部に対して略直角の角度をなすものであってもよい。さらに、上述の実施形態では、第一突出部48を、シフト方向Xに対して傾斜して形成される縁部48aを備え、ガイドピン30が第一突出部48の縁部48aを経て乗り上げるようにシフト方向Xに移動可能とされた例を示したが、本発明のレンジ切替装置はこれに限定されない。例えば、本発明のレンジ切替装置は、第一突出部を凸状に形成し、ガイドピンが第一突出部を乗り越えてシフト方向Xに移動可能としてもよい。また同様に、本発明のレンジ切替装置は、第二突出部を凸状に形成し、ガイドピンが第二突出部を乗り越えてシフト方向Xに移動可能としてもよい。本発明のレンジ切替装置は、第一突出部、及び第二突出部の形状を適宜選択可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のレンジ切替装置は、レンジ切り替えのためのシフト操作を行うものとして、好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 レンジ切替装置
20 シフトレバー
30 ガイドピン
32 ピン操作部
42 ガイド部材
44 ガイド窓
44a 退入側領域
44b 進出側領域
48 第一突出部
49 第二突出部
X シフト方向
Y 進退方向
図1
図2
図3
図4