(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6934810
(24)【登録日】2021年8月26日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】ゴムクローラ
(51)【国際特許分類】
B62D 55/253 20060101AFI20210906BHJP
【FI】
B62D55/253 E
B62D55/253 B
B62D55/253 A
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-219659(P2017-219659)
(22)【出願日】2017年11月15日
(65)【公開番号】特開2019-89457(P2019-89457A)
(43)【公開日】2019年6月13日
【審査請求日】2020年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】安孫子 穣
【審査官】
長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−227121(JP,A)
【文献】
特開2016−144981(JP,A)
【文献】
特開2012−111368(JP,A)
【文献】
国際公開第2017/017957(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0162016(US,A1)
【文献】
独国実用新案第202011005394(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 55/253
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性体により無端帯状に形成されたクローラ本体と、
該クローラ本体に周方向に間隔をあけて埋設された複数の芯金と、を備えたゴムクローラにおいて、
前記クローラ本体は、
外周面から突出して前記周方向に間隔をあけて設けられるとともに、転輪が通過する領域と厚さ方向で重なる転輪通過領域において、前記周方向に並ぶ前記芯金の間にそれぞれ配置され、かつ、前記クローラ本体の幅方向外側へ向かって延在する複数のラグと、
内周面であって前記厚さ方向で前記芯金と重ならず、かつ前記ラグと重なる領域に、前記周方向に間隔をあけて形成された複数の凹部と、を有し、
前記凹部は、底面までの深さが前記クローラ本体の幅方向内側から幅方向外側に向かって浅くなる傾斜部を有することを特徴とするゴムクローラ。
【請求項2】
前記複数のラグは、前記転輪通過領域から前記クローラ本体の幅方向縁部まで延びる長ラグを含み、
前記長ラグと厚さ方向で重なる前記凹部に、前記傾斜部の一部を凹ませた形状であって前記長ラグの前記幅方向縁部側の端縁まで延びる溝部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のゴムクローラ。
【請求項3】
前記溝部の深さは、前記クローラ本体の幅方向内側から幅方向外側に向かって深くなることを特徴とする請求項2に記載のゴムクローラ。
【請求項4】
前記クローラ本体において、前記傾斜部よりも前記クローラ本体の幅方向外側の領域は、前記溝部を除き、全周に亘って外周面側が水平地面に接地した状態で前記転輪通過面よりも内周面側に突き出た面となるように形成されることを特徴とする請求項2または3に記載のゴムクローラ。
【請求項5】
前記クローラ本体は、前記内周面において転輪が通過しない非転輪通過面であって前記厚さ方向で前記芯金と重ならない領域に、前記凹部を互いに連結する連結用凹部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴムクローラ。
【請求項6】
前記凹部の前記周方向の幅は、前記ラグの前記周方向の幅よりも大きいことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のゴムクローラ。
【請求項7】
前記凹部の内面は、前記周方向に沿う断面形状が曲線状であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のゴムクローラ。
【請求項8】
前記凹部の一部は、前記転輪通過領域に位置することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のゴムクローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムクローラ、特に、無端帯状のゴムクローラ本体に、複数の芯金が埋設されたゴムクローラに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農業機械、建設機械及び土木作業用機械等の走行部には、無端状のゴムクローラが広く用いられている。
【0003】
このようなゴムクローラにおいて、走行時の屈曲抵抗、すなわち、走行時にゴムクローラが、駆動輪となるスプロケット等により周方向に曲げ変形する際の曲げ抵抗を低減させることにより、燃費の向上を図る技術が開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、無端帯状であって外周面から突出する複数のラグを有するクローラ本体と、クローラ本体の周方向に間隔をあけて埋設された複数の芯金とを備えたゴムクローラが記載されている。このゴムクローラは、ラグと芯金とが厚さ方向で互いに重なる位置に配置されており、隣り合うラグの間であってクローラ本体の内周面側に、凹部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−111368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のゴムクローラでは、曲げ剛性が高くなるラグ及び芯金の配置領域を除いた領域に凹部を設けることで、クローラ本体がこの凹部で曲がりやすくなり、走行の際の屈曲抵抗を低減することができる。
【0007】
一方、厚さ方向でラグと芯金との位置が重なっていないゴムクローラ、例えば、転輪通過領域においてラグと芯金との位置が厚さ方向で互いにずれているゴムクローラでは、周方向の剛性の高低の程度が軽減されることにより、周方向の曲げに対して応力の集中を防いで、転輪通過領域における傷(虫食い)の発生を抑えることができる。
【0008】
しかし、このような構成のゴムクローラでは、周方向で隣り合うラグの間に高剛性の芯金が位置することから、特許文献1に記載の技術のように、ラグの間に凹部を設けて屈曲抵抗を低減させることができなかった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、走行時の屈曲抵抗を低減することのできるゴムクローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のゴムクローラは、弾性体により無端帯状に形成されたクローラ本体と、該クローラ本体に周方向に間隔をあけて埋設された複数の芯金と、を備えたゴムクローラにおいて、前記クローラ本体は、外周面から突出して前記周方向に間隔をあけて設けられるとともに、転輪が通過する領域と厚さ方向で重なる転輪通過領域において、前記周方向に並ぶ前記芯金の間にそれぞれ配置され、かつ、前記クローラ本体の幅方向外側へ向かって延在する複数のラグと、内周面であって前記厚さ方向で前記芯金と重ならず、かつ前記ラグと重なる領域に、前記周方向に間隔をあけて形成された複数の凹部と、を有
し、前記凹部は、底面までの深さが前記クローラ本体の幅方向内側から幅方向外側に向かって浅くなる傾斜部を有することを特徴とする。
また、請求項2に記載のゴムクローラは、請求項1に記載のゴムクローラにおいて、前記複数のラグは、前記転輪通過領域から前記クローラ本体の幅方向縁部まで延びる長ラグを含み、前記長ラグと厚さ方向で重なる前記凹部に、前記傾斜部の一部を凹ませた形状であって前記長ラグの前記幅方向縁部側の端縁まで延びる溝部が形成されていることを特徴とする。
また、請求項3に記載のゴムクローラは、請求項2に記載のゴムクローラにおいて、前記溝部の深さは、前記クローラ本体の幅方向内側から幅方向外側に向かって深くなることを特徴とする。
また、請求項4に記載のゴムクローラは、請求項2または3に記載のゴムクローラにおいて、前記クローラ本体において、前記傾斜部よりも前記クローラ本体の幅方向外側の領域は、前記溝部を除き、全周に亘って外周面側が水平地面に接地した状態で前記転輪通過面よりも内周面側に突き出た面となるように形成されることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、ゴムクローラの転輪通過領域において、周方向に並ぶ芯金の間にそれぞれラグが配置されているので、転輪通過領域における傷(虫食い)の発生を抑えることができるとともに、クローラ本体の内周面であって、厚さ方向で芯金と重ならず且つラグと重なる位置に凹部を形成しているので、ラグが配置された領域の屈曲抵抗を凹部により低減することができる。凹部はゴムクローラ本体の周方向に間隔をあけて複数形成されているので、ゴムクローラの周方向の曲げ抵抗(すなわち、屈曲抵抗)を低減し、走行時の燃費の向上を図ることができる。
また、請求項2に記載の構成によれば、溝部を介して凹部に溜った水や泥を外部に排出することができる。また、溝部を形成することで、屈曲抵抗をより低減することができる。
【0012】
また、請求項
5に記載のゴムクローラは、請求項1
〜3のいずれか1項に記載のゴムクローラにおいて、前記クローラ本体は、前記内周面において転輪が通過しない非転輪通過面であって前記厚さ方向で前記芯金と重ならない領域に、前記凹部を互いに連結する連結用凹部を有することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、周方向に間隔とあけて形成された複数の凹部が、それぞれ連結用凹部で連結されることで、凹部及び連結用凹部によって肉薄に形成された領域がクローラ本体の周方向に連続して形成されることとなるので、ゴムクローラの全周に亘って屈曲抵抗を低減することができる。
【0014】
また、請求項
6に記載のゴムクローラは、請求項1
〜5のいずれか1項に記載のゴムクローラにおいて、前記凹部の前記周方向の幅は、前記ラグの前記周方向の幅よりも大きいことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、クローラ本体の周方向における凹部の幅がラグの幅よりも大きくなっているので、ラグの縁部が肉薄に形成された凹部と厚さ方向で重なり、ラグの縁部近傍でゴムクローラを曲げやすくすることができる。これにより、請求項1及び2における屈曲抵抗の低減作用をより向上させることができる。
【0018】
また、請求項
7に記載のゴムクローラは、請求項1〜
6のいずれか1項に記載のゴムクローラにおいて、前記凹部の内面は、前記周方向に沿う断面形状が曲線状であることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、クローラ本体の屈曲抵抗をより低減することができるとともに、凹部内面の特定の部位に局所的に曲げ応力が集中して傷が発生するのを抑制することができる。
【0020】
また、請求項
8に記載のゴムクローラは、請求項1〜
7のいずれか1項に記載のゴムクローラにおいて、前記凹部の一部は、前記転輪通過領域に位置することを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、凹部が転輪通過領域と非転輪通過領域とに位置することでクローラ本体の屈曲抵抗を低減する効果が高くなる。また、転輪により押圧されたクローラ本体の転輪通過面の変形を凹部が許容することで、転輪通過面に傷が発生することを防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のゴムクローラによれば、走行時の屈曲抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施の形態であるゴムクローラを用いたゴムクローラ走行装置を模式的に示す側面図。
【
図2】第1の実施の形態のゴムクローラの外周面を示す平面図。
【
図3】第1の実施の形態のゴムクローラの内周面を示す平面図。
【
図6】第2の実施の形態のゴムクローラの外周面を示す平面図。
【
図7】第2の実施の形態のゴムクローラの内周面を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の一実施形態であるゴムクローラ10を用いたゴムクローラ走行装置50を模式的に示す側面図であり、
図2は第1の実施の形態のゴムクローラ10の外周面を示す平面図、
図3は第1の実施の形態のゴムクローラ10の内周面を示す平面図であり、
図4は
図2のA−A線断面図である。
【0025】
ゴムクローラ走行装置50において、ゴムクローラ10は、駆動輪であるスプロケット52及び従動輪であるアイドラ54に巻き掛けられて用いられる。ゴムクローラ走行装置50は複数の転輪56を備えており、各転輪56は、ゴムクローラ10の内周面に形成された、後述する転輪通過面16上を転動する。
【0026】
なお、以下の説明では、ゴムクローラ10の周方向(すなわち、後述するクローラ本体12の周方向である
図2の矢印L方向)を単に「周方向」と記載し、ゴムクローラ10の幅方向(すなわち、クローラ本体12の幅方向である
図2の矢印W方向)を「クローラ幅方向」と記載し、ゴムクローラ10の厚さ方向(すなわち、クローラ本体12の厚さ方向である
図4の矢印D方向)を単に「厚さ方向」と記載する。クローラ幅方向は、周方向と直交している。
【0027】
ゴムクローラ10は、弾性体により無端帯状に形成されたクローラ本体12と、周方向に間隔をあけて埋設された複数の芯金14とを備える。クローラ本体12は、内周面に転輪通過面16を有するとともに、外周面から突出して周方向に間隔をあけて設けられた複数のラグ20を有する。また、クローラ本体12の内周面には、周方向に間隔をあけて複数の凹部30が形成されている。
【0028】
芯金14は、周方向に等間隔で埋設されており、
図4に示すように、クローラ本体12の幅方向中央部に位置する中心部42と、中心部42の両端からクローラ本体12の内周面側に突出した一対の突起部44a,44bと、中央部42を挟んでクローラ幅方向の外側に延びる一対の翼部46a,46bとを有する。クローラ本体12に埋設された一対の突起部44a,44bは、スプロケット52と係合する係合部材48を構成している。
【0029】
クローラ本体12の転輪通過面16は、ゴムクローラ走行装置50において、転輪56が当接する面であり、周方向に連続している。本実施の形態において転輪通過面16は、芯金14の突起部44a,44bのクローラ幅方向の両外側に形成されており、
図4に示すように、水平地面上で転輪が当接した状態において、ほぼ水平な平面となるように形成されている。なお、以下の説明では、転輪56が通過する領域と厚さ方向で重なる領域を転輪通過領域17という(
図2参照)。
【0030】
複数のラグ20は、周方向に並ぶ芯金12の間に位置するように、それぞれ設けられており、転輪通過領域17からクローラ本体12の幅方向外側へ向かって延在している。本実施の形態においてラグ20は、短ラグ22と、長ラグ24とを含み、長ラグ24は、短ラグ22よりも長手方向(クローラ幅方向)の長さが長くなっている。短ラグ22と長ラグ24とは、周方向に交互に配置されるとともに、それぞれ、クローラ本体12の幅方向中央線を挟んで対称に配置されている。
【0031】
短ラグ22及び長ラグ24は、クローラ本体12の幅方向内側の端部(以下、内端部22a,24aという)が、一対の転輪通過領域17の内側に位置し、クローラ本体12の幅方向外側の端部(以下、外端部22b,24bという)が、一対の転輪通過領域17の外側に位置している。また、長ラグ24の外端部24bは、クローラ本体12の幅方向縁部12aまで延びている。
【0032】
なお、ラグ20の幅(周方向における長さ)やパターンは、ゴムクローラ10の用途に応じて適宜設定することができる。
【0033】
凹部30は、
図2及び
図3に示すように、厚さ方向で芯金12と重ならない領域に形成されており、さらに、少なくとも一部が厚さ方向でラグ20と重なる位置に形成される。本実施の形態では、1つのラグ20に対し、1つの凹部30が対応するように形成されている。
【0034】
図3及び
図4に示すように、各凹部30は、周方向において対向する一対の側壁31,32と、クローラ本体12の幅方向内側に位置する内側壁33と、側壁31,32の間に位置して内側壁33の下端からクローラ本体12の幅方向外側へ傾斜状に延びる底面部34とを有する。底面部34の傾斜角は、内側壁33の傾斜角よりも小さく、緩やかな傾斜になっている。本実施の形態では内側壁33の下端が、凹部30の最下部35(すなわち、クローラ本体12の外周面側に最も窪んだ部分)となっている。なお、本実施の形態では、全ての凹部30が、転輪通過面16よりクローラ本体12の幅方向外側の非転輪通過面に形成されている。
【0035】
各凹部30は、
図2に示すように、厚さ方向で凹部30及びラグ20が重なる部位において、凹部30の周方向の幅L1(すなわち、周方向の長さ)が、ラグ20の幅L2よりも大きくなっている。さらに、各凹部30の幅L1内に各ラグ20の幅L2が収まるように形成されている。
【0036】
周方向に並ぶ凹部30は、連結用凹部38により互いに連結された態様となっている。本実施の形態では、
図4及び
図5に示すように、凹部30の側壁31,32よりクローラ本体12の幅方向外側の領域が、凹部30の開口の最上部36(本実施の形態では、凹部30の転輪通過面側の縁部)よりも低く形成されており、この低い領域が連結用凹部38を構成している。本実施の形態の連結用凹部38は、非転輪通過面においてクローラ本体12の全周に亘って延びている。
【0037】
上述したゴムクローラ10では、転輪通過領域17において、周方向に並ぶ芯金14の間にそれぞれラグ20が配置されているので、周方向の剛性の高低の程度が軽減されて転輪通過領域17における傷の発生を抑えることができ、かつ剛性が均一になることから、振動が低減されて乗り心地が向上する。また、クローラ本体12の内周面において、厚さ方向で芯金13と重ならず且つラグ20と重なる領域に凹部30を形成しているので、ラグ20が配置された箇所でゴムクローラ10を曲げやすくすることができる。さらに、凹部30はゴムクローラ10の周方向に複数並んでいるので、ゴムクローラの周方向の曲げ抵抗を低減し、走行時の燃費の向上を図ることができる。
【0038】
また、凹部30の周方向における幅L1が、この凹部30と厚さ方向で重なるラグ20の周方向の幅L2よりも大きくなっているので、凹部30と重なっているラグ20の縁部近傍のクローラ本体12の肉薄部分で、ゴムクローラ10が曲がりやすくなり、走行時の屈曲抵抗が低減される。L1の幅は、ラグ20と重なっている範囲の全幅に亘ってL2よりも大きくなっていると更に好ましい。この場合、更に屈曲抵抗が低減される。
【0039】
さらに、凹部30及び連結用凹部38によって肉薄に形成された領域がクローラ本体12の周方向に連続して形成されているので、ゴムクローラ10の全周に亘って屈曲抵抗を抑えることができる。
【0040】
なお、凹部30の内面は、周方向に沿う断面形状が滑らかな曲線状であることが好ましい。本実施の形態では、
図5に破線で示すように、側壁31,32と、底面部33との接続部が曲線状になっており、底面部33では直線状になっているが、
図5において仮想線で示すように、周方向に沿う内面39の断面形状が略円弧状の曲線状であってもよい。このように内面39を曲面状に形成することで、周方向の曲げ変形が生じた際に内面39の特定の部位に局所的に曲げ応力が集中して傷が発生することを抑制することができる。
【0041】
(第2の実施の形態)
次に、
図6〜
図9を用いて本発明の第2の実施の形態のゴムクローラ10を説明する。第2の実施の形態のゴムクローラ10は、凹部30及び転輪通過面16の形状が第1の実施の形態と異なっている。なお、
図6〜
図9において、第1の実施の形態と同様の要素には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0042】
本実施の形態の凹部30は、一対の側壁31,32と、内側壁33と、底面部34とを有し、内側壁33は、平面視でクローラ本体12の幅方向内側に凸となる略円弧状に形成されている。
図6〜
図8に示すように、内側壁33は、転輪通過領域17に重なるように形成されており、転輪通過面16は凹部30の一部により切り欠かれた態様となっている。
【0043】
図8に示すように、底面部34は、内側壁33の下端からクローラ本体12の幅方向外側へ延びる平面部34aと、平面部34aからさらにクローラ本体12の幅方向へ延びる傾斜部34bとを有する。平面部34aは、凹部30の最下部35を形成している。傾斜部34bは、クローラ幅方向で対向する内側壁33よりも緩やかな傾斜面となっている。
【0044】
各凹部30は、
図6に示すように、転輪通過領域17よりもクローラ本体12の幅方向外側の非転輪通過領域において、凹部30の周方向の幅(すなわち、周方向の長さ)が、ラグ20の幅よりも大きくなっている。さらに、各凹部30の幅内に各ラグ20の幅が収まるように形成されている。
【0045】
図8及び
図9に示すように、凹部30の側壁31,32よりクローラ本体12の幅方向外側の領域18は、外周面側が水平地面に接地した状態で転輪通過面16よりも高い位置(すなわち、転輪通過面16よりも内周面側に突き出た面状)になっており、この領域18は、クローラ本体12の全周に亘って延びている。これにより、周方向に並ぶ凹部30は、互いに非連続となっている。
【0046】
なお、幅方向外側の領域18は、転輪通過面16とほぼ同じ高さであってもよい。また、変形例として、周方向に並ぶ凹部30をクローラ本体12に連結用凹部38を形成することで連結させてもよい。
【0047】
第2の実施の形態のゴムクローラ10では、凹部30が転輪通過面領域17と非転輪通過領域とに位置することでクローラ本体12の屈曲抵抗を低減する効果をより高めることができる。さらに、転輪通過面16が凹部30の一部によって幅方向外側から内側に向かって切り欠かれた態様となっていることで、転輪56により押圧された転輪通過面16の変形を凹部30で吸収し、転輪通過面16に傷が発生することを防止することができる。具体的には、転輪56が通過すると機体荷重により転輪通過面16が下方側に沈み込んで変形するが、この変形は凹部30内の空間で許容吸収され、転輪通過面16に連続的なエッジ傷が形成されることが防止される。また、凹部30が形成されていない部分のエッジ傷の発生も緩和される。さらに、周方向で芯金13間にラグ20が存在する構造(芯金間ラグ構造)であって、凹部30がラグ20と厚さ方向で重なっているので、転輪56が凹部30を通過する際に、転輪56及びラグ20からの押圧力による転輪通過面16を構成する部材の変形は、ほぼ一様に生じ、そこに存在する凹部30の空間での部材変形が許容吸収される。したがって、凹部30による変形吸収作用はより効果的なものとなる。
【0048】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、芯金14とラグ20とは、少なくとも転輪通過領域17において互いに重ならないように(すなわち、周方向に隣り合う芯金14間の中央に、ラグ20の幅の略中央部が位置するように)配置されていればよく、例えば、非転輪通過領域において芯金14とラグ20の一部が厚さ方向で重なっていてもよい。
【0049】
また、例えば、
図6、
図7、
図8及び
図9に仮想線で示すように、長ラグ24と厚さ方向で重なる凹部30には、長ラグ24の外端部24bの端縁まで延びる溝部28を設けてもよい。なお、各図において、溝部28は仮想線に沿ってクローラ本体12の内周面側を切り欠いた態様となる。この溝部28は、長ラグ24の全てに設けてもよいし、一部の長ラグ24に設けてもよい。また、図示していないが、溝部28は、長ラグ24に設けずにクローラ本体12の幅方向端部を切り欠いた構造とすることもできる。長ラグ24に設けた方が溝を形成しやすく、かつ溝部28を起因としたクラック発生となり難いため、より好ましい。このような溝部28を設けることで、凹部30に溜った水や泥を凹部30と連通する溝部28を介して外部に排出することができるとともに、ゴムクローラ10の屈曲抵抗をより低減することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 ゴムクローラ
12 ゴムクローラ本体
14 芯金
16 転輪通過面
20 ラグ
22 短ラグ
24 長ラグ
30 凹部
38 連結用凹部
50 ゴムクローラ走行装置
52 スプロケット
56 転輪