特許第6934860号(P6934860)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6934860
(24)【登録日】2021年8月26日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】コイルドコイルコネクタ
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/08 20060101AFI20210906BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20210906BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20210906BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20210906BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20210906BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20210906BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20210906BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20210906BHJP
【FI】
   C07K7/08ZNA
   C07K19/00
   C12P21/02 C
   C12N1/19
   C12N5/10
   C12N15/09 Z
   C07K16/00
   C07K14/705
【請求項の数】15
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2018-512321(P2018-512321)
(86)(22)【出願日】2016年9月1日
(65)【公表番号】特表2018-528214(P2018-528214A)
(43)【公表日】2018年9月27日
(86)【国際出願番号】EP2016070590
(87)【国際公開番号】WO2017037158
(87)【国際公開日】20170309
【審査請求日】2019年8月29日
(31)【優先権主張番号】15183330.8
(32)【優先日】2015年9月1日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518071361
【氏名又は名称】オンコクール・エムエル・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100163784
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 健志
(72)【発明者】
【氏名】ミュッデ,ゲールト
(72)【発明者】
【氏名】セプルフェダ,ヨルゲ
(72)【発明者】
【氏名】タウス,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ミュッデ−ボエル,リースベト
【審査官】 玉井 真人
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−536396(JP,A)
【文献】 特表2015−521158(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/009209(WO,A2)
【文献】 国際公開第1994/029332(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/071649(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/025261(WO,A2)
【文献】 Bioconjugate Chem., 2015, Vol.26, pp.2106-2117
【文献】 THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY, 2002, Vol.277, pp.37272-37279
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 7/00
C07K 19/00
C07K 14/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチド性第1アルファらせんおよび該第1アルファらせんに巻き付いているペプチド性第2アルファらせんを含むらせん状コイルドコイル型構造のコネクタであって、
ポリペプチド鎖が、ペプチド性第1アルファらせんのN末端またはC末端に融合し、
i)該ポリペプチド鎖がペプチド性第1アルファらせんのN末端に融合する場合、該第1アルファらせんは、アミノ酸モチーフa−xのリピートおよびC末端モチーフa−x−xからなり、かつ該第2アルファらせんは、アミノ酸モチーフのリピートからなり;または
ii)該ポリペプチド鎖がペプチド性第1アルファらせんのC末端に融合する場合、該第1アルファらせんは、アミノ酸モチーフx−aのリピートおよびN末端モチーフx−x−aからなり、かつ該第2アルファらせんは、アミノ酸モチーフのリピートからなり;
ここで
aは、4〜8アミノ酸のモチーフ配列であり;
は、リジンであり;そして
は、モチーフの拡張であり、ここで、該拡張は、1〜2アミノ酸からなり、かつ
a)モチーフa−xは、SEQ ID NO:1であり、かつモチーフa−x−xは、
a1)1〜2個のアミノ酸からなる拡張であるxによってC末端において拡張されている、SEQ ID NO:1からなるモチーフa−xの拡張であり;もしくは
a2)SEQ ID NO:41、SEQ ID NO:69、もしくはSEQ ID NO:71のいずれかであり;または
b)モチーフa−xは、SEQ ID NO:3であり、かつモチーフa−x−xは、
b1)1〜2個のアミノ酸からなる拡張であるxによってC末端において拡張されている、SEQ ID NO:3からなるモチーフa−xの拡張であり;もしくは
b2)SEQ ID NO:43、SEQ ID NO:85、もしくはSEQ ID NO:87のいずれかであり;または
c)モチーフa−xは、SEQ ID NO:5であり、かつモチーフa−x−xは、
c1)1〜2個のアミノ酸からなる拡張であるxによってC末端において拡張されている、SEQ ID NO:5からなるモチーフa−xの拡張であり;もしくは
c2)SEQ ID NO:45、SEQ ID NO:101、もしくはSEQ ID
NO:103のいずれかであり;または
d)モチーフa−xは、SEQ ID NO:7であり、かつモチーフa−x−xは、
d1)1〜2個のアミノ酸からなる拡張であるxによってC末端において拡張されている、SEQ ID NO:7からなるモチーフa−xの拡張であり;もしくは
d2)SEQ ID NO:47、SEQ ID NO:117、もしくはSEQ ID
NO:119のいずれかであり;または
e)モチーフx−aは、SEQ ID NO:2であり、かつモチーフx−x−aは、
e1)1〜2個のアミノ酸からなる拡張であるxによってN末端において拡張されている、SEQ ID NO:2からなるモチーフx−aの拡張であり;もしくは
e2)SEQ ID NO:42、SEQ ID NO:77、もしくはSEQ ID NO:79のいずれかであり;または
f)モチーフx−aは、SEQ ID NO:4であり、かつモチーフx−x−aは、
f1)1〜2個のアミノ酸からなる拡張であるxによってN末端において拡張されている、SEQ ID NO:4からなるモチーフx−aの拡張であり;もしくは
f2)SEQ ID NO:44、SEQ ID NO:93、もしくはSEQ ID NO:95のいずれかであり;または
g)モチーフx−aは、SEQ ID NO:6であり、かつモチーフx−x−aは、
g1)1〜2個のアミノ酸からなる拡張であるxによってN末端において拡張されている、SEQ ID NO:6からなるモチーフx−aの拡張であり;もしくは
g2)SEQ ID NO:46、SEQ ID NO:109、もしくはSEQ ID
NO:111のいずれかであり;または
h)モチーフx−aは、SEQ ID NO:8であり、かつモチーフx−x−aは、
h1)1〜2個のアミノ酸からなる拡張であるxによってN末端において拡張されている、SEQ ID NO:8からなるモチーフx−aの拡張であり;もしくは
h2)SEQ ID NO:48、SEQ ID NO:125、もしくはSEQ ID
NO:127のいずれかである、
上記コネクタ。
【請求項2】
が、アラニン、グリシン、セリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、バリン、およびプロリンからなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸を含む、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
が、アルファらせんを拡張する最初のアミノ酸として、前記の選択されたアミノ酸を含む、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
第1および第2アルファらせんのそれぞれが、2〜9個、好ましくは3〜5個の合致するアミノ酸モチーフのリピートを含み、好ましくは該リピートが、同一のモチーフの、または互いに少なくとも1アミノ酸異なるモチーフのリピートである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項5】
らせん状コイルドコイル型構造中に、合致するアミノ酸リピート配列を有する2〜7個のアルファらせんの束を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項6】
第1および第2アルファらせんが、平行または逆平行アルファらせんであり、好ましくは第1および第2アルファらせんが、巻き付いてコイルドコイル2重らせんになっている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項7】
ヘテロ2量体性コイルドコイルを含み、第1アルファらせんが、第2アルファらせんと異なっている、請求項1〜6のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項8】
a)第1アルファらせんがモチーフa−xを含み、かつ第2アルファらせんがモチーフx−aを含み;または
b)第1アルファらせんがモチーフx−aを含み、かつ第2アルファらせんがモチーフa−xを含み;
好ましくは、モチーフa−xを含むアルファらせんがC末端モチーフa−x−xをさらに含み、かつモチーフx−aを含むアルファらせんがN末端モチーフx−x−aをさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項9】
a)
i)モチーフa−xが、SEQ ID NO:1であり;
ii)モチーフa−x−xが、SEQ ID NO:41、SEQ ID NO:69、もしくはSEQ ID NO:71のいずれかであり;
iii)モチーフx−aが、SEQ ID NO:2であり;そして
iv)モチーフx−x−aが、SEQ ID NO:42、SEQ ID NO:77、もしくはSEQ ID NO:79のいずれかであり;
または
b)
i)モチーフa−xが、SEQ ID NO:3であり;
ii)モチーフa−x−xが、SEQ ID NO:43、SEQ ID NO:85、もしくはSEQ ID NO:87のいずれかであり;
iii)モチーフx−aが、SEQ ID NO:4であり;そして
iv)モチーフx−x−aが、SEQ ID NO:44、SEQ ID NO:93、もしくはSEQ ID NO:95のいずれかであり;
または
c)
i)モチーフa−xが、SEQ ID NO:5であり;
ii)モチーフa−x−xが、SEQ ID NO:45、SEQ ID NO:101、もしくはSEQ ID NO:103のいずれかであり;
iii)モチーフx−aが、SEQ ID NO:6であり;そして
iv)モチーフx−x−aが、SEQ ID NO:46、SEQ ID NO:109、もしくはSEQ ID NO:111のいずれかであり;
または
d)
i)モチーフa−xが、SEQ ID NO:7であり;
ii)モチーフa−x−xが、SEQ ID NO:47、SEQ ID NO:117、もしくはSEQ ID NO:119のいずれかであり;
iii)モチーフx−aが、SEQ ID NO:8であり;そして
iv)モチーフx−x−aが、SEQ ID NO:48、SEQ ID NO:125、もしくはSEQ ID NO:127のいずれかである、
請求項1〜8のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項10】
が、1個のアミノ酸、好ましくはアラニン、グリシン、またはセリンのいずれかからなる、請求項1〜9のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のコネクタにより互いに連結された少なくとも2個のポリペプチド鎖を含む多量体タンパク質であって、第1ポリペプチド鎖が第1アルファらせんを組み込んでおり、かつ第2ポリペプチド鎖が第2アルファらせんを組み込んでおり;かつ第1および第2ポリペプチド鎖が第1および第2アルファらせんのらせん状コイルドコイル型構造により連結されており、好ましくは該タンパク質が、以下:
a)ワクチン抗原およびアジュバントを含むワクチン構成要素;
b)2個のポリペプチド鎖のそれぞれが少なくとも1個の抗体ドメインを組み込んでいる抗体;
c)抗体および非抗体構成要素を含む抗体誘導体であって、ここで、該抗体の少なくとも1個のポリペプチド鎖が、該構成要素を組み込んでいる別のポリペプチド鎖に連結されており、好ましくは該構成要素が、有機および無機分子、特に標識、タグ、酵素、受容体、リガンド、毒素、脂質、炭水化物、または核酸のいずれかである;ならびに
d)受容体またはリガンドが、キャリヤーに連結されている親和性物質;
からなる群から選択される、
上記多量体タンパク質。
【請求項12】
a)第1アルファらせんを組み込んでいる第1ポリペプチド鎖が、アミノ酸モチーフa−xのリピートおよびC末端モチーフa−x−xからなるC末端領域を含み;かつ第2ポリペプチド鎖が、第2アルファらせんを平行アルファらせんとして非末端領域内もしくはC末端領域中に組み込んでおり;または
b)第1アルファらせんを組み込んでいる第1ポリペプチド鎖が、アミノ酸モチーフa−xのリピートおよびC末端モチーフa−x−xからなるC末端領域を含み;かつ第2ポリペプチド鎖が、第2アルファらせんを逆平行アルファらせんとして非末端領域内もしくはN末端領域中に組み込んでおり、または
c)第1アルファらせんを組み込んでいる第1ポリペプチド鎖が、アミノ酸モチーフx−aのリピートおよびN末端モチーフx−x−aからなるN末端領域を含み;かつ第2ポリペプチド鎖が、第2アルファらせんを平行アルファらせんとして非末端領域内もしくはN末端領域中に組み込んでおり;または
d)第1アルファらせんを組み込んでいる第1ポリペプチド鎖が、アミノ酸モチーフx−aのリピートおよびN末端モチーフx−x−aからなるN末端領域を含み;かつ第2ポリペプチド鎖が、第2アルファらせんを逆平行アルファらせんとして非末端領域内もしくはC末端領域中に組み込んでいる、
請求項11に記載のタンパク質。
【請求項13】
請求項11または12に記載のタンパク質を生成する方法であって、以下の工程:
a)第1ポリペプチド鎖をコードする第1異種核酸を組み込んでいる第1宿主細胞を提供し;
b)第2ポリペプチド鎖をコードする第2異種核酸を組み込んでいる第2宿主細胞を提供し;
c)宿主細胞を、第1および第2ポリペプチド鎖を細胞培養において発現させるための条件下で培養し;そして
d)第1および第2ポリペプチド鎖をらせん状コイルドコイル型構造により連結する;を含み、好ましくは該第1および/または第2宿主細胞が、哺乳類または酵母宿主細胞である、上記方法。
【請求項14】
請求項11または12に記載のタンパク質を生成する方法であって、以下の工程:
a)以下:
(i)第1ポリペプチド鎖をコードする第1異種核酸;
および
(ii)第2ポリペプチド鎖をコードする第2異種核酸;
を組み込んでいる宿主細胞を提供し;
b)宿主細胞を、第1および第2ポリペプチド鎖を細胞培養において発現させるための条件下で培養し;そして
c)第1および第2ポリペプチド鎖をらせん状コイルドコイル型構造により連結する;を含み、好ましくは該宿主細胞が、哺乳類または酵母宿主細胞である、上記方法。
【請求項15】
請求項13または14に記載の方法により得ることができるタンパク質の調製物であって、該タンパク質の少なくとも90%が、第1および第2核酸によりコードされるポリペプチド鎖の正しいC末端およびN末端領域を含む、上記調製物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルドコイルを形成する少なくとも2つの合致するペプチド性アルファらせんを含むらせん状コイルドコイル型構造を有するコネクタに関し、前記のコネクタは、末端アミノ酸付加により向上している。
【背景技術】
【0002】
コイルドコイルは、2〜7個のアルファらせんが縄の子縄のように一緒に巻き付いているタンパク質中の構造モチーフからなり;2量体および3量体が、最も一般的なタイプである。そのような構造は、複合体タンパク質分子の安定性および折り畳み構造を向上させることができる。コイルドコイルは、多量体タンパク質または例えば複合ワクチン免疫原もしくは抗体融合構築物を含む(1個以上のポリペプチド鎖および場合によりさらなる非ポリペプチド構成要素により特性付けられる)タンパク質性構築物の構成要素を連結するために用いられてきた。
【0003】
コイルドコイルらせんは、Fv抗体フラグメントを安定化するために用いられており、それは結果としてヘテロ2量体状コイルドコイルドメインをもたらす(Arndt et al. 2001. Helix-stabilized Fv (hsFv) antibody fragments: substituting the constant domains of a Fab fragment for a heterodimeric coiled-coil domain. J Mol. Biol. 312:221-228)。
【0004】
コイルドコイルの原理は、精製目的で(例えば、Chao et al 1998. Use of a heterodimeric coiled-coil system for biosensor application and affinity purification. J.Chromatogr.B Biomed.Sci.Appl. 715:307-329)、ならびに例えば成長因子受容体に関するリガンドとして試験されるべきタンパク質の係留(Boucher et al. 2009. Epidermal Growth Factor Tethered through Coiled-Coil Interactions Induces Cell Surface Receptor Phosphorylation. Bioconjug.Chem.1569-1577)のためにも用いられている。
【0005】
国際公開第2014009209A2号は、免疫原およびアジュバントにより形成されるコイルドコイルを含むワクチンを開示しており、ここで、アジュバントは、少なくともTLR9リガンドおよび第1ペプチド性アルファらせんに連結された抗CD32部分を含み、免疫原は、少なくとも1個のエピトープおよび第1アルファらせんに巻き付いた第2ペプチド性アルファらせんを含む。
【0006】
第1アルファらせんは、典型的には第1モチーフの多価基(polyad)リピートで作られている(多価基リピートを含む、または多価基リピートからなる)。(カウンターモチーフの多価基リピートを含む、または多価基リピートからなる)合致する第2アルファらせんは、第1アルファらせんと自己集合し、そうしてコイルドコイルを形成し、アルファらせんのそれぞれに融合した部分を高い親和性で連結する。
【0007】
米国特許出願公開第20150166610A1号および国際公開第2015018806A1号は、C末端のコイルドコイルドメインにより安定化された免疫原性組成物を記載している。
【0008】
国際公開第2015006736A2号は、免疫グロブリンがコイルドコイルにより療法剤に連結されている融合タンパク質を記載している。
国際公開第94/293332A1号は、分子内、逆平行、コイルドコイルステムループ配置で立体構造的に締め付けられているポリペプチドを記載している。ループ区分は、第1アルファらせん構造のカルボキシ末端および第2アルファらせん構造のアミノ末端の間にコネクタを含む。
【0009】
Richardson et al. (Science 1988, 240:1648-1652)は、アルファらせんの末端における特定の位置に関するアミノ酸優先性を記載している。45の異なる球状タンパク質構造からの215のアルファらせんの比較の結果は、CキャップまたはNキャップの位置における特定のアミノ酸のある程度の優先性を示した。Serrano et al. (Journal of Molecular Biology 1992, 227(2):544-559)は、タンパク質におけるアルファらせんの安定性ならびにNキャップ、Cキャップおよび内部の位置における変異の安定性への作用を記載している。
【0010】
国際公開第2014187743A1号は、2個の異なるアルファらせんのコイルドコイルを含むガストリンペプチド免疫原性組成物を記載している。
複合体タンパク質分子の安定性および折り畳み構造は、免疫原のような医薬を設計する際に非常に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2014009209A2号
【特許文献2】米国特許出願公開第20150166610A1号
【特許文献3】国際公開第2015018806A1号
【特許文献4】国際公開第2015006736A2号
【特許文献5】国際公開第94/293332A1号
【特許文献6】国際公開第2014187743A1号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Arndt et al. 2001. Helix-stabilized Fv (hsFv) antibody fragments: substituting the constant domains of a Fab fragment for a heterodimeric coiled-coil domain. J Mol. Biol. 312:221-228
【非特許文献2】Chao et al 1998. Use of a heterodimeric coiled-coil system for biosensor application and affinity purification. J.Chromatogr.B Biomed.Sci.Appl. 715:307-329
【非特許文献3】Boucher et al. 2009. Epidermal Growth Factor Tethered through Coiled-Coil Interactions Induces Cell Surface Receptor Phosphorylation. Bioconjug.Chem.1569-1577
【非特許文献4】Richardson et al. (Science 1988, 240:1648-1652)
【非特許文献5】Serrano et al. (Journal of Molecular Biology 1992, 227(2):544-559)
【発明の概要】
【0013】
複合ポリペプチドまたはタンパク質を設計するための構築ブロックとして用いられることができる向上した安定性および構造を有するコイルドコイルコネクタを提供することが、本発明の目的である。
【0014】
目的は、特許請求される主題により解決される。
本発明によれば、第1および第2分子を含むらせん状コイルドコイル型構造のコネクタが提供され、特にここで、第1および第2分子のそれぞれは、ポリペプチド部分またはポリペプチド鎖を含むタンパク質性分子であり、ここで、第1分子は、ペプチド性第1アルファらせんを含み、かつ第2分子は、ペプチド性第2アルファらせんを含み、その第2アルファらせんは、第1アルファらせんに巻き付いており;
ここで、第1アルファらせんは、以下:
i)アミノ酸モチーフa−xのリピートおよびC末端モチーフa−x−xからなるC末端領域;または
ii)アミノ酸モチーフx−aのリピートおよびN末端モチーフx−x−aからなるN末端領域;
を含み、ここで
aは、4〜8アミノ酸のモチーフ配列であり;
は、リジンであり;そして
は、モチーフの拡張であり、ここで、拡張は、1〜10アミノ酸からなり、かつここで、拡張は、前記のモチーフa−xまたはx−a中に組み込まれている4個より多くの連続するアミノ酸を含まない。
【0015】
具体的には、拡張のアミノ酸は、天然アミノ酸である。
具体的には、拡張は、アラニン、グリシン、セリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、バリン、およびプロリンからなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸を含む。
【0016】
具体的には、拡張は、アルファらせん、特に(未拡張の)アルファらせんの末端またはキャップを拡張する最初の1〜4アミノ酸内に前記の選択されたアミノ酸を含む。
具体的には、モチーフ配列aは、天然アミノ酸のいずれかの配列からなる。好ましくは、モチーフ配列は、モチーフリピートにおける疎水性残基の周期性およびアルファらせんの傾向を確実にするために少なくとも1個の疎水性アミノ酸を含む。
【0017】
具体的には、コネクタは、コイル状アルファらせん(すなわち、アルファらせんの長軸方向の集合)を含むか、またはコイル状アルファらせんからなる。コネクタは、特に(例えば、ホモ2量体を得るために)同じ構造の2個の分子を、または(例えば、ヘテロ2量体を得るために)2個の異なる分子を連結するための構築ブロックとして用いられる。特に、分子の一方または両方は、タンパク質性であり、例えば、好ましくはポリペプチド鎖、特にコネクタのアルファらせん(連結部として用いられる)に融合しているポリペプチド鎖からなるポリペプチド部分を組み込んでいる。
【0018】
具体的には、前記の第1および第2アルファらせんのそれぞれは、2〜9個、好ましくは3〜5個の合致するアミノ酸モチーフのリピートを含む。同じ数のリピートが、アルファらせんのそれぞれの上に存在することができるが、異なる数のリピートが存在することもできる。例えば、コイルのリピートの数は、ペプチド性アルファらせんのそれぞれにおいて3〜5、すなわち、組み合わせ3+3、3+4、3+5、4+4、4+5、5+5、4+3、5+3または5+4のいずれであることもできる。
【0019】
具体的には、リピートは、同一のモチーフまたは少なくとも1アミノ酸、典型的には1もしくは2アミノ酸において互いと異なるモチーフのリピートである。モチーフのバリアントが、そのようなバリアントモチーフが機能する限り、用いられることができ、すなわちここで、そのアルファらせんは、高い親和性で、例えば10−7M未満のKまたは10−8M未満のKで自己集合することができる。
【0020】
ヘテロ2量体性コイルドコイルの場合、コイルリピートの典型的な数は、構造の望ましくないミスマッチを回避するため、具体的には5より多くない。ヘテロ2量体性コイルドコイルの場合、典型的には、少なくとも3リピートを有するペプチド配列の長さを用いることが望ましい。それにより、アルファらせんの互いへの結合は、典型的には10−7M未満のKまたは10−8M未満、好ましくは10−9Mもしくは10−10M未満のKで達成される。しかし、より多くのリピートは親和性を増大させるが、これは、ホモ2量体化の増大という代償を伴い得る。
【0021】
具体的には、前記の第1および第2アルファらせんのそれぞれは、6、7、8または9アミノ酸、好ましくは7アミノ酸からなるアミノ酸モチーフのリピートを含む。そのようなモチーフは、それが例えば6〜9アミノ酸の長さを有するある数の連続するアミノ酸からなるため、多価基とも名付けられている。7アミノ酸モチーフが、典型的には用いられ、本明細書において7つ組と呼ばれる。あるいは、6つ組(すなわち6アミノ酸)モチーフ、8つ組(すなわち8アミノ酸)モチーフ、または9つ組(すなわち9アミノ酸)モチーフが、用いられることができる。
【0022】
具体的には、コネクタは、らせん状コイルドコイル型構造中に合致するアミノ酸リピート配列を有する2〜7個のアルファらせんの束を含む。
特定の態様によれば、第1および第2アルファらせんは、巻き付いてコイルドコイル(換言すると、集合した)二重らせんになっている。
【0023】
互いに巻き付いているアルファらせん構造を有する2個のペプチド鎖は、本明細書において2量体と呼ばれる。特定の例は、2個以上のアルファらせんを含み、ここで、アルファらせんは、同一である(ホモマー、例えばホモ2量体)、または互いに異なる(ヘテロマー、例えばヘテロ2量体)可能性がある。3量体、4量体または5量体は、例えばそれぞれ3、4および5個のアルファらせんで構成されるオリゴマーである。
【0024】
特定の側面によれば、コネクタは、第1アルファらせんが第2アルファらせんと異なるヘテロ2量体性コイルドコイルを含むか、またはヘテロ2量体性コイルドコイルからなる。
【0025】
特定の態様によれば、
a)モチーフa−xは、SEQ ID 1、SEQ ID 3、SEQ ID 5、およびSEQ ID 7からなる群から選択され;または
b)モチーフx−aは、SEQ ID 2、SEQ ID 4、SEQ ID 6、およびSEQ ID 8からなる群から選択される。
【0026】
あるいは、特異的コイルドコイル型連結を生成する、Chao et al.(原文のまま)またはLitowsky et al.(2002. Designing heterodimeric two-stranded alpha-helical coiled-coils. Effects of hydrophobicity and alpha-helical propensity on protein folding, stability, and specificity. J. Biol. Chem. 277:37272-37279)により記載された配列または機能的バリアントのいずれが用いられることもできる:
特定の例によれば、
a)モチーフa−xは、SEQ ID 1であり、モチーフa−x−xは、SEQ ID 41、SEQ ID 69、もしくはSEQ ID 71のいずれかであり、そのモチーフa−x−xは、場合により(例えばカルボキシル末端において)1個以上のアミノ酸により拡張されており;または
b)モチーフa−xは、SEQ ID 3であり、モチーフa−x−xは、SEQ ID 43、SEQ ID 85、もしくはSEQ ID 87のいずれかであり、そのモチーフa−x−xは、場合により(例えばカルボキシル末端において)1個以上のアミノ酸により拡張されており;または
c)モチーフa−xは、SEQ ID 5であり、モチーフa−x−xは、SEQ ID 45、SEQ ID 101、もしくはSEQ ID 103のいずれかであり、そのモチーフa−x−xは、場合により(例えばカルボキシル末端において)1個以上のアミノ酸により拡張されており;または
d)モチーフa−xは、SEQ ID 7であり、モチーフa−x−xは、SEQ ID 47、SEQ ID 117、もしくはSEQ ID 119のいずれかであり、そのモチーフa−x−xは、場合により(例えばカルボキシル末端において)1個以上のアミノ酸により拡張されており;または
e)モチーフx−aは、SEQ ID 2であり、モチーフx−x−aは、SEQ ID 42、SEQ ID 77、もしくはSEQ ID 79のいずれかであり、そのモチーフx−x−aは、場合により(例えばアミノ末端において)1個以上のアミノ酸により拡張されており;または
f)モチーフx−aは、SEQ ID 4であり、モチーフx−x−aは、SEQ ID 44、SEQ ID 93、もしくはSEQ ID 95のいずれかであり、そのモチーフx−x−aは、場合により(例えばアミノ末端において)1個以上のアミノ酸により拡張されており;または
g)モチーフx−aは、SEQ ID 6であり、モチーフx−x−aは、SEQ ID 46、SEQ ID 109、もしくはSEQ ID 111のいずれかであり、そのモチーフx−x−aは、場合により(例えばアミノ末端において)1個以上のアミノ酸により拡張されており;または
h)モチーフx−aは、SEQ ID 8であり、モチーフx−x−aは、SEQ ID 48、SEQ ID 125、もしくはSEQ ID 127のいずれかであり、そのモチーフx−x−aは、場合により(例えばアミノ末端において)1個以上のアミノ酸により拡張されている。
【0027】
具体的には、
a)第1アルファらせんは、モチーフa−xを含み、かつ第2アルファらせんは、モチーフx−aを含み;または
b)第1アルファらせんは、モチーフx−aを含み、かつ第2アルファらせんは、モチーフa−xを含み;
好ましくはここで、モチーフa−xを含むアルファらせんは、さらにC末端モチーフa−x−xを含み、かつモチーフx−aを含むアルファらせんは、さらにN末端モチーフx−x−aを含む。
【0028】
特定のコネクタが提供され、ここで:
a)
i)モチーフa−xは、SEQ ID 1であり;
ii)モチーフa−x−xは、SEQ ID 41、SEQ ID 69、もしくはSEQ ID 71のいずれかであり;
iii)モチーフx−aは、SEQ ID 2であり;そして
iv)モチーフx−x−aは、SEQ ID 42、SEQ ID 77、もしくはSEQ ID 79のいずれかであり;
または
b)
i)モチーフa−xは、SEQ ID 3であり;
ii)モチーフa−x−xは、SEQ ID 43、SEQ ID 85、もしくはSEQ ID 87のいずれかであり;
iii)モチーフx−aは、SEQ ID 4であり;そして
iv)モチーフx−x−aは、SEQ ID 44、SEQ ID 93、もしくはSEQ ID 95のいずれかであり;
または
c)
i)モチーフa−xは、SEQ ID 5であり;
ii)モチーフa−x−xは、SEQ ID 45、SEQ ID 101、もしくはSEQ ID 103のいずれかであり;
iii)モチーフx−aは、SEQ ID 6であり;そして
iv)モチーフx−x−aは、SEQ ID 46、SEQ ID 109、もしくはSEQ ID 111のいずれかであり;
または
d)
i)モチーフa−xは、SEQ ID 7であり;
ii)モチーフa−x−xは、SEQ ID 47、SEQ ID 117、もしくはSEQ ID 119のいずれかであり;
iii)モチーフx−aは、SEQ ID 8であり;そして
iv)モチーフx−x−aは、SEQ ID 48、SEQ ID 125、もしくはSEQ ID 127のいずれかである。
【0029】
具体的には、第1または第2アルファらせんは、以下のいずれかを含むか、または以下のいずれかからなる:
i)SEQ ID 10、SEQ ID 68、もしくはSEQ ID 70のいずれか;
ii)SEQ ID 12、SEQ ID 72、もしくはSEQ ID 73のいずれか;
iii)SEQ ID 53、SEQ ID 74、もしくはSEQ ID 75のいずれか;
iv)SEQ ID 14、SEQ ID 76、もしくはSEQ ID 78のいずれか;
v)SEQ ID 16、SEQ ID 80、もしくはSEQ ID 81のいずれか;
vi)SEQ ID 55、SEQ ID 82、もしくはSEQ ID 83のいずれか;
vii)SEQ ID 18、SEQ ID 84、もしくはSEQ ID 86のいずれか;
viii)SEQ ID 20、SEQ ID 88、もしくはSEQ ID 89のいずれか;
ix)SEQ ID 57、SEQ ID 90、もしくはSEQ ID 91のいずれか;
x)SEQ ID 22、SEQ ID 92、もしくはSEQ ID 94のいずれか;
xi)SEQ ID 24、SEQ ID 96、もしくはSEQ ID 97のいずれか;
xii)SEQ ID 59、SEQ ID 98、もしくはSEQ ID 99のいずれか;
xiii)SEQ ID 26、SEQ ID 100、もしくはSEQ ID 102のいずれか;
xiv)SEQ ID 28、SEQ ID 104、もしくはSEQ ID 105のいずれか;
xv)SEQ ID 61、SEQ ID 106、もしくはSEQ ID 107のいずれか;
xvi)SEQ ID 30、SEQ ID 108、もしくはSEQ ID 110のいずれか;
xvii)SEQ ID 32、SEQ ID 112、もしくはSEQ ID 113のいずれか;
xviii)SEQ ID 63、SEQ ID 114、もしくはSEQ ID 115のいずれか;
xix)SEQ ID 34、SEQ ID 116、もしくはSEQ ID 118のいずれか;
xx)SEQ ID 36、SEQ ID 120、もしくはSEQ ID 121のいずれか;
xxi)SEQ ID 65、SEQ ID 122、もしくはSEQ ID 123のいずれか;
xxii)SEQ ID 38、SEQ ID 124、もしくはSEQ ID 126のいずれか;
xxiii)SEQ ID 40、SEQ ID 128、もしくはSEQ ID 129のいずれか;または
xxiv)SEQ ID 67、SEQ ID 130、もしくはSEQ ID 131のいずれか。
【0030】
特定の態様は、以下のいずれかにより特性付けられる:
i)第1アルファらせんは、SEQ ID 10、SEQ ID 68、もしくはSEQ ID 70のいずれかを含み、もしくはSEQ ID 10、SEQ ID 68、もしくはSEQ ID 70のいずれかからなり;かつ第2アルファらせんは、SEQ ID 9を含み、もしくはSEQ ID 9からなり;
ii)第1アルファらせんは、SEQ ID 12、SEQ ID 72、もしくはSEQ ID 73のいずれかを含み、もしくはSEQ ID 12、SEQ ID 72、もしくはSEQ ID 73のいずれかからなり、かつ第2アルファらせんは、SEQ ID 11を含み、もしくはSEQ ID 11からなり;
iii)第1アルファらせんは、SEQ ID 53、SEQ ID 74、もしくはSEQ ID 75のいずれかを含み、もしくはSEQ ID 53、SEQ ID 74、もしくはSEQ ID 75のいずれかからなり、かつ第2アルファらせんは、SEQ ID 52を含み、もしくはSEQ ID 52からなり;
iv)第1アルファらせんは、SEQ ID 14、SEQ ID 76、もしくはSEQ ID 78のいずれかを含み、もしくはSEQ ID 14、SEQ ID 76、もしくはSEQ ID 78のいずれかからなり、かつ第2アルファらせんは、SEQ ID 13を含み、もしくはSEQ ID 13からなり;
v)第1アルファらせんは、SEQ ID 16、SEQ ID 80、もしくはSEQ ID 81のいずれかを含み、もしくはSEQ ID 16、SEQ ID 80、もしくはSEQ ID 81のいずれかからなり、かつ第2アルファらせんは、SEQ ID 15を含み、もしくはSEQ ID 15からなり;
vi)第1アルファらせんは、SEQ ID 55、SEQ ID 82、もしくはSEQ ID 83のいずれかを含み、もしくはSEQ ID 55、SEQ ID 82、もしくはSEQ ID 83のいずれかからなり、かつ第2アルファらせんは、SEQ ID 54を含み、もしくはSEQ ID 54からなり;
vii)第1アルファらせんは、SEQ ID 18、SEQ ID 84、もしくはSEQ ID 86のいずれかを含み、もしくはSEQ ID 18、SEQ ID 84、もしくはSEQ ID 86のいずれかからなり、かつ第2アルファらせんは、SEQ ID 17を含み、もしくはSEQ ID 17からなり;
viii)第1アルファらせんは、SEQ ID 20、SEQ ID 88、もしくはSEQ ID 89のいずれかを含み、もしくはSEQ ID 20、SEQ ID 88、もしくはSEQ ID 89のいずれかからなり、かつ第2アルファらせんは、SEQ ID 19を含み、もしくはSEQ ID 19からなり;
ix)第1アルファらせんは、SEQ ID 57、SEQ ID 90、もしくはSEQ ID 91のいずれかを含み、もしくはSEQ ID 57、SEQ ID 90、もしくはSEQ ID 91のいずれかからなり、かつ第2アルファらせんは、SEQ ID 56を含み、もしくはSEQ ID 56からなり;
x)第1アルファらせんは、SEQ ID 22、SEQ ID 92、もしくはSEQ ID 94のいずれかを含み、もしくはSEQ ID 22、SEQ ID 92、もしくはSEQ ID 94のいずれかからなり、かつ第2アルファらせんは、SEQ ID 21を含み、もしくはSEQ ID 21からなり;
xi)第1アルファらせんは、SEQ ID 24、SEQ ID 96、もしくはSEQ ID 97のいずれかを含み、もしくはSEQ ID 24、SEQ ID 96、もしくはSEQ ID 97のいずれかからなり、かつ第2アルファらせんは、SEQ ID 23を含み、もしくはSEQ ID 23からなり;
xii)第1アルファらせんは、SEQ ID 59、SEQ ID 98、もしくはSEQ ID 99のいずれかを含み、もしくはSEQ ID 59、SEQ ID 98、もしくはSEQ ID 99のいずれかからなり、かつ第2アルファらせんは、SEQ ID 58を含み、もしくはSEQ ID 58からなり;
xiii)第1アルファらせんは、SEQ ID 26、SEQ ID 100、もしくはSEQ ID 102のいずれかを含み、もしくはSEQ ID 26、SEQ ID 100、もしくはSEQ ID 102のいずれかからなり、かつ第2アルファらせんは、SEQ ID 25を含み、もしくはSEQ ID 25からなり;
xiv)第1アルファらせんは、SEQ ID 28、SEQ ID 104、もしくはSEQ ID 105のいずれかを含み、もしくはSEQ ID 28、SEQ ID 104、もしくはSEQ ID 105のいずれかからなり、かつ第2アルファらせんは、SEQ ID 27を含み、もしくはSEQ ID 27からなり;
xv)第1アルファらせんは、SEQ ID 61、SEQ ID 106、もしくはSEQ ID 107のいずれかを含み、もしくはSEQ ID 61、SEQ ID 106、もしくはSEQ ID 107のいずれかからなり、かつ第2アルファらせんは、SEQ ID 60を含み、もしくはSEQ ID 60からなり;
xvi)第1アルファらせんは、SEQ ID 30、SEQ ID 108、もしくはSEQ ID 110のいずれかを含み、もしくはSEQ ID 30、SEQ ID 108、もしくはSEQ ID 110のいずれかからなり、かつ第2アルファらせんは、SEQ ID 29を含み、もしくはSEQ ID 29からなり;
xvii)第1アルファらせんは、SEQ ID 32、SEQ ID 112、もしくはSEQ ID 113のいずれかを含み、もしくはSEQ ID 32、SEQ ID 112、もしくはSEQ ID 113のいずれかからなり、かつ第2アルファらせんは、SEQ ID 31を含み、もしくはSEQ ID 31からなり;
xviii)第1アルファらせんは、SEQ ID 63、SEQ ID 114、もしくはSEQ ID 115のいずれかを含み、もしくはSEQ ID 63、SEQ ID 114、もしくはSEQ ID 115のいずれかからなり、かつ第2アルファらせんは、SEQ ID 62を含み、もしくはSEQ ID 62からなり;
xix)第1アルファらせんは、SEQ ID 34、SEQ ID 116、もしくはSEQ ID 118のいずれかを含み、もしくはSEQ ID 34、SEQ ID 116、もしくはSEQ ID 118のいずれかからなり、かつ第2アルファらせんは、SEQ ID 33を含み、もしくはSEQ ID 33からなり;
xx)第1アルファらせんは、SEQ ID 36、SEQ ID 120、もしくはSEQ ID 121のいずれかを含み、もしくはSEQ ID 36、SEQ ID 120、もしくはSEQ ID 121のいずれかからなり、かつ第2アルファらせんは、SEQ ID 35を含み、もしくはSEQ ID 35からなり;
xxi)第1アルファらせんは、SEQ ID 65、SEQ ID 122、もしくはSEQ ID 123のいずれかを含み、もしくはSEQ ID 65、SEQ ID 122、もしくはSEQ ID 123のいずれかからなり、かつ第2アルファらせんは、SEQ ID 64を含み、もしくはSEQ ID 64からなり;
xxii)第1アルファらせんは、SEQ ID 38、SEQ ID 124、もしくはSEQ ID 126のいずれかを含み、もしくはSEQ ID 38、SEQ ID 124、もしくはSEQ ID 126のいずれかからなり、かつ第2アルファらせんは、SEQ ID 37を含み、もしくはSEQ ID 37からなり;
xxiii)第1アルファらせんは、SEQ ID 40、SEQ ID 128、もしくはSEQ ID 129のいずれかを含み、もしくはSEQ ID 40、SEQ ID 128、もしくはSEQ ID 129のいずれかからなり、かつ第2アルファらせんは、SEQ ID 39を含み、もしくはSEQ ID 39からなり;または
xxiv)第1アルファらせんは、SEQ ID 67、SEQ ID 130、もしくはSEQ ID 131のいずれかを含み、もしくはSEQ ID 67、SEQ ID 130、もしくはSEQ ID 131のいずれかからなり、かつ第2アルファらせんは、SEQ ID 66を含み、もしくはSEQ ID 66からなる。
【0031】
様々なモチーフが、表1においてさらに記載されている。
【0032】
【表1-1】
【0033】
【表1-2】
【0034】
【表1-3】
【0035】
【表1-4】
【0036】
【表1-5】
【0037】
特定の態様によれば、第1および第2アルファらせんは、平行または逆平行アルファらせんのどちらかである。
特定の例によれば、平行集合体において、第1アルファらせんのC末端領域は、第2アルファらせんのC末端領域に集合しており;または、第1アルファらせんのN末端領域は、第2アルファらせんのN末端領域に集合している。連結している鎖がアミノ酸配列に融合している場合、両方の鎖は、アルファらせんをC末端ドメインとして含むことができ、または両方の鎖は、アルファらせんをN末端ドメインとして含むことができる。
【0038】
あるいは、平行集合において、第1アルファらせんのC末端またはN末端領域は、第2アルファらせんに同方向(平行)方式で集合していることができるが、第2アルファらせんは、ポリペプチド鎖内に(すなわち末端を含まずに)位置していることができ、それは内部ドメインとしても理解されており、ここで、第2アルファらせんは、末端において別のポリペプチド配列に融合しているのではなく、それが好ましくはコネクタのコイルドコイルに干渉することができるであろうアルファらせん構造により特性付けられないいずれかの他のポリペプチド配列またはドメインによるN末端またはC末端拡張を含むように、アミノ酸配列内に組み込まれている。
【0039】
逆平行集合において、第1アルファらせんのC末端領域は、第2アルファらせんのN末端領域に集合しており、または逆もまた同様である。あるいは、逆平行集合において、第1アルファらせんのC末端またはN末端領域は、第2アルファらせんに反対方向(逆平行)方式で集合していることができるが、第2アルファらせんは、ポリペプチド鎖内に(すなわち末端を含まずに)位置していることができ、それは内部ドメインとしても理解されており、ここで、第2アルファらせんは、末端において別のポリペプチド配列に融合しているのではなく、それが好ましくはコネクタのコイルドコイルに干渉することができるであろうアルファらせん構造により特性付けられないいずれかの他のポリペプチド配列またはドメインによるN末端またはC末端拡張を含むように、アミノ酸配列内に組み込まれている。
【0040】
特定の態様によれば、Xは、1〜5個の連続するアミノ酸(本明細書において“拡張”とも呼ばれる)、好ましくは1〜4、または1〜3、または1〜2アミノ酸からなり、ここで、拡張は、アラニン、グリシン、セリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、バリン、およびプロリン、ならびに任意のさらなるアミノ酸(あらゆるタイプのアミノ酸、例えば20種類の天然アミノ酸のいずれが用いられることもできる)からなる群から選択される好ましい拡張アミノ酸の少なくとも1個を含む。具体的には、xは、N末端において(N末端拡張)またはC末端において(C末端拡張)のどちらかでコイル配列を拡張する1アミノ酸のみからなる。好ましくは、アラニン、グリシンまたはセリンのいずれかが拡張のために用いられる。具体的には、xは、アラニン、グリシンもしくはセリンのいずれかのみ、またはアルファらせんの末端領域に続くアミノ酸がアラニン、グリシンもしくはセリンのいずれかであり、かつアルファらせんの末端がアラニン、グリシンもしくはセリンのいずれかもしくはあらゆる他のアミノ酸であることができるように場合により1、2、3、もしくは4個のさらなる連続するアミノ酸(あらゆるタイプのアミノ酸、例えば20種類の天然アミノ酸のいずれが用いられることもできる)により拡張されているアラニン、グリシンもしくはセリンのいずれかからなる。
【0041】
具体的には、拡張は、場合によりモチーフa−xまたはx−a中に組み込まれている4個より多くの連続するアミノ酸を含まない。これは、コイルモチーフ(単数または複数)の拡張との非特異的相互作用または干渉を回避するためである。
【0042】
特定の態様によれば、
a)拡張は、リジンを含まず、かつ/または
b)アルファらせんの末端領域に続くアミノ酸は、リジンではなく、かつ/または
c)C末端アミノ酸は、リジンではない。
【0043】
好ましい態様によれば、前記の第1および第2アルファらせんは、10−7M未満、好ましくは10−8M未満、もしくは10−9M未満、もしくは10−10M未満、もしくは10−11M未満のKで、またはさらにはピコモル濃度範囲のKで互いに特異的に結合している。
【0044】
本発明は、さらに本明細書で記載されたコネクタにより互いに連結された少なくとも2個のポリペプチド鎖を含む多量体または複合タンパク質を提供し、ここで、第1ポリペプチド鎖は、第1アルファらせんを組み込み、第2ポリペプチド鎖は、第2アルファらせんを組み込み;かつここで、第1および第2ポリペプチド鎖は、第1および第2アルファらせんのらせん状コイルドコイル型構造により連結されている。
【0045】
具体的には、
a)第1アルファらせんを組み込んでいる第1ポリペプチド鎖は、アミノ酸モチーフa−xのリピートおよびC末端モチーフa−x−xからなるC末端領域を含み;かつ第2ポリペプチド鎖は、第2アルファらせんを平行アルファらせんとして非末端領域内もしくはC末端領域中に組み込んでおり;または
b)第1アルファらせんを組み込んでいる第1ポリペプチド鎖は、アミノ酸モチーフa−xのリピートおよびC末端モチーフa−x−xからなるC末端領域を含み;かつ第2ポリペプチド鎖は、第2アルファらせんを逆平行アルファらせんとして非末端領域内もしくはN末端領域中に組み込んでおり、または
c)第1アルファらせんを組み込んでいる第1ポリペプチド鎖は、アミノ酸モチーフx−aのリピートおよびN末端モチーフx−x−aからなるN末端領域を含み;かつ第2ポリペプチド鎖は、第2アルファらせんを平行アルファらせんとして非末端領域内もしくはN末端領域中に組み込んでおり;または
d)第1アルファらせんを組み込んでいる第1ポリペプチド鎖は、アミノ酸モチーフx−aのリピートおよびN末端モチーフx−x−aからなるC末端領域を含み;かつ第2ポリペプチド鎖は、第2アルファらせんを逆平行アルファらせんとして非末端領域内もしくはC末端領域中に組み込んでいる。
【0046】
具体的には、2個以上のポリペプチド鎖が、本明細書で記載されるコネクタにより集合していることができ、ここで、少なくとも2個のポリペプチド鎖(またはポリペプチド鎖のそれぞれ)は、アルファらせん構造により特性付けられるドメインを含む。
【0047】
特定の側面によれば、タンパク質は、以下からなる群から選択され:
a)ワクチン抗原およびアジュバントを含むワクチン構成要素;
b)2個のポリペプチド鎖のそれぞれが少なくとも1個の抗体ドメインを組み込んでいる抗体または抗体形式;
c)抗体および非抗体構成要素を含む抗体誘導体、ここで、抗体の少なくとも1個のポリペプチド鎖は、構成要素を組み込んでいる別のポリペプチド鎖に連結されており、好ましくはここで、構成要素は、有機および無機分子、特に標識、タグ、酵素、受容体、リガンド、毒素、脂質、炭水化物、または核酸のいずれかである;ならびに
d)親和性物質、ここで、受容体またはリガンドは、受容体特異的リガンドの精製のために、またはリガンドの異なるバリアントの親和性を試験するためにキャリヤー、例えば固相に連結されている。
【0048】
本発明は、さらに、以下の工程:
a)第1ポリペプチド鎖をコードする第1異種核酸を組み込んでいる第1宿主細胞を提供し;
b)第2ポリペプチド鎖をコードする第2異種核酸を組み込んでいる第2宿主細胞を提供し;
c)前記の宿主細胞を前記の第1および第2ポリペプチド鎖を細胞培養において発現させるための条件下で培養し;そして
d)前記の第1および第2ポリペプチド鎖をらせん状コイルドコイル型構造により連結する;
を含む、本明細書で記載されるタンパク質を生成する方法を提供し、好ましくはここで、第1および/または第2宿主細胞は、哺乳類または酵母宿主細胞である。
【0049】
そのような連結は、好ましくは細胞培養中またはポリペプチド鎖の単離および任意の精製の際のポリペプチド鎖の自己集合による。
特定の側面によれば、方法は、以下の工程:
a)以下:
(i)第1ポリペプチド鎖をコードする第1異種核酸;
および
(ii)第2ポリペプチド鎖をコードする第2異種核酸;
を組み込んでいる宿主細胞を提供し;
b)前記の宿主細胞を、前記の第1および第2ポリペプチド鎖を細胞培養において発現させるための条件下で培養し;そして
c)前記の第1および第2ポリペプチド鎖をらせん状コイルドコイル型構造により連結する;
を含み、好ましくはここで、宿主細胞は、哺乳類または酵母宿主細胞である。
【0050】
具体的には、第1核酸を組み込んでおり、かつ場合によりさらに第2核酸を組み込んでいる宿主細胞は、哺乳類または酵母宿主細胞である。そのような宿主細胞は、あらゆるC末端リジンを切断する増大したリスクを有するであろう。本明細書で記載された拡張により、末端リジンは、覆い隠されると考えられ、驚くべきことに、コイルドコイル間の連結の親和性は、さらに向上する可能性がある。
【0051】
本発明は、さらに、本明細書で記載される方法により得ることができるタンパク質の調製物を提供し、ここで、タンパク質分子の少なくとも90%は、第1および第2核酸によりコードされるポリペプチド鎖の正しいC末端およびN末端領域を含む。具体的には、哺乳類または酵母宿主細胞のいずれかである宿主細胞を用いる場合、リジンをN末端またはC末端アミノ酸として含むアルファらせんは、末端から切断される多数の分子中に(例えば全分子の40%に至るまでの中に)あるであろう。本明細書で記載される少なくとも1個のアミノ酸によるアルファらせんの拡張により、正しいアミノ酸末端、すなわちそれぞれの核酸配列によりコードされている末端により特性付けられる分子の百分率は、例えば質量分析により決定された場合に有意に、例えば90%以上まで、例えば少なくとも95%まで、または少なくとも99%までさえも増大し得る。
【0052】
少なくとも第1ポリペプチド鎖を発現させるための特に好ましい宿主細胞は、ヒト、ハムスター、またはマウス由来である哺乳類宿主細胞である。具体的には、HEK293、CHO、BHK、HeLa、MDCK、NIH3T3、NS0、PER.C6、SP2/0およびVERO細胞のいずれが用いられることもできる。
【0053】
あるいは、少なくとも第1ポリペプチド鎖を発現させるための特に好ましい宿主細胞は、ピチア(Pichia)、サッカロマイセス、カンジダ、トルロプシス(Torulopsis)、アークスラ(Arxula)、ハンゼヌラ(Hensenula)、ヤロウイア(Yarrowia)、クルイウェロマイセス(Kluyveromyces)、またはコマガタエラ(Komagataella)属由来である酵母宿主細胞であり、好ましくはメチロトローフ性酵母である。具体的には、P.パストリス(P.pastoris)、コマガタエラ・パストリス(Komagataella pastoris)、K.ファフィー(K.phaffii)、またはK.シュードパストリス(K.pseudopastoris)、またはS.セレビシエ(S. cerevisiae)が、用いられることができる。
【0054】
本発明は、さらに、本明細書で記載されるコネクタまたは多量体タンパク質を調製するための構成要素のキット、例えば構成要素を充填された1個以上の容器を含む医薬キットを提供する。アルファらせんのそれぞれまたは単一の(または1つのみの)アルファらせんを含むポリペプチド鎖は、別々の部分として、そしてコネクタまたは多量体タンパク質を調製する、例えばそのような複合構築物をその部分の混合および集合により新しく調製するための部分のキットとして一緒に提供されることができる。
【0055】
特に、本明細書で記載されるコネクタまたは多量体タンパク質は、非天然存在であり、例えばコイルドコイルにより互いに連結されたポリペプチド鎖または他の構成要素を含む組成物(その組成物は天然に存在しない)として提供されることは、理解されている。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】典型的なscFv−coil1の配列(SEQ ID 49) 下線:柔軟な連結配列により融合したVHおよびVLドメイン;VHおよびVLドメイン配列は、CD32aを特異的に認識するモノクローナル抗体IV.3から得られる(Stuart et al. (1987) J. Exp. Med. 166: 1668)。 通常の字体のセット:柔軟なリンカー(あらゆるリンカーである可能性がある); 斜体:pepEコイル:7つ組モチーフの5リピート、C末端リジン(斜体および太字)。
図2】典型的なscFv−coil1alaの配列(SEQ ID 50) 下線:柔軟な連結配列により融合したVHおよびVLドメイン 通常の字体のセット:柔軟なリンカー(あらゆるリンカーである可能性がある); 斜体:pepEコイル:7つ組モチーフの5リピート、C末端拡張としてのC末端アラニン(斜体および太字)。
図3】pepK(SEQ ID 51) 斜体:pepKコイル:7つ組モチーフの5リピート、N末端リジン(斜体および太字)。
図4-1】HEK293細胞からのscFv−coil1の質量分析 図1の配列に基づく予想分子量(MW)は、30764Daである。 見付かったMWは、30755.5Da(総材料の約60%)および30630Da(総材料の約40%)であり、それは、予想MWからLys(289)を減算したものに相当する。 B:S2昆虫細胞からのscFv−coil1の質量分析 図1の配列に基づく予想分子量(MW)は、30764Daである。 見付かったMWは、30755.5Daであり、これは完全長タンパク質を示している。 C:HEK293細胞からのscFv−coil1alaの質量分析 図2の配列に基づく予想分子量(MW)は、30835.4Daである。 見付かったMWは、30831.0Daであり、これは完全長タンパク質を示している。
図4-2】同上。
図5】pepKおよびscFv−coil1またはscFv−coil1alaの親和性分析。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本明細書全体を通して用いられている特定の用語は、以下の意味を有する。
用語“コイル”は、本明細書で用いられる際、ペプチド性アルファらせんの少なくとも一部であるアミノ酸配列および三次元構造からなるモチーフを意味するものとする。コイルリピートは、ペプチド性アルファらせんを構成することができる。そのようなコイルリピートは、同一のモチーフの、または異なる(例えばバリアント)モチーフのリピートを含むことができ、それは、合致するモチーフを認識して少なくとも2個のペプチド性アルファらせんを高い親和性で集合させることにより機能性である。
【0058】
機能的に活性なバリアントは、例えば1個以上の点変異によるペプチド配列中の配列の変更により得られることができ、ここで、配列の変更は、未変更のペプチド配列の機能を実質的に保持する。そのような配列の変更または点変異は、(保存的)置換、付加、欠失、変異および挿入、例えば1、2、3、もしくは4アミノ酸の変更、または1〜数アミノ酸、例えば1、2、3、もしくは4アミノ酸の付加もしくは挿入による変更、または1〜数アミノ酸、例えば1、2、3、もしくは4アミノ酸の化学的誘導体化による変更またはそれらの組み合わせ、好ましくは隣接していない点変異による変更を含み得るが、それらに限定されない。アミノ酸残基における置換は、保存的置換、例えば1個の疎水性アミノ酸の代わりの疎水性アミノ酸に関する置換であることができる。
【0059】
保存的置換は、それらの側鎖および化学的特性において関連しているアミノ酸のファミリー内で起こる置換である。そのようなファミリーの例は、塩基性側鎖を有する、酸性側鎖を有する、非極性脂肪族側鎖を有する、非極性芳香族側鎖を有する、非荷電の極性側鎖を有する、小さい側鎖を有する、大きい側鎖を有する等のアミノ酸である。
【0060】
好ましい点変異は、同じ極性および/または電荷のアミノ酸の交換を指す。これに関して、アミノ酸は、64種の3つ組コドンによりコードされる20種類の天然存在アミノ酸を指す。これらの20種類のアミノ酸は、中性電荷、陽性電荷、および陰性電荷を有するアミノ酸に分けられることができる:
中性”アミノ酸が、それらのそれぞれの3文字および1文字コードならびに極性と一緒に下記で示されている:
アラニン:(Ala、A)非極性、中性;
アスパラギン:(Asn、N)極性、中性;
システイン:(Cys、C)非極性、中性;
グルタミン:(Gln、Q)極性、中性;
グリシン:(Gly、G)非極性、中性;
イソロイシン:(Ile、I)非極性、中性;
ロイシン:(Leu、L)非極性、中性;
メチオニン:(Met、M)非極性、中性;
フェニルアラニン:(Phe、F)非極性、中性;
プロリン:(Pro、P)非極性、中性;
セリン:(Ser、S)極性、中性;
スレオニン:(Thr、T)極性、中性;
トリプトファン:(Trp、W)非極性、中性;
チロシン:(Tyr、Y)極性、中性;
バリン:(Val、V)非極性、中性;および
ヒスチジン:(His、H)極性、陽性(10%) 中性(90%)。
【0061】
正に”荷電したアミノ酸は、以下のアミノ酸である:
アルギニン:(Arg、R)極性、陽性;および
リジン:(Lys、K)極性、陽性。
【0062】
負に”荷電したアミノ酸は、以下のアミノ酸である:
アスパラギン酸:(Asp、D)極性、陰性;および
グルタミン酸:(Glu、E)極性、陰性。
【0063】
具体的には、モチーフの機能的バリアントは、点変異、すなわち1または2アミノ酸の挿入、欠失または置換、特に保存的置換である置換を含むことができる。それにより、コイルドコイルの疎水性残基の周期性は、維持されることができる。
【0064】
用語“ペプチド性アルファらせん”は、本明細書で用いられる際、本明細書においてコイルリピートと呼ばれるいくつかのモチーフのリピートを含むペプチド配列に基づくアルファらせん構造を意味するものとする。そのようなアルファらせんは、合致するアルファらせんとも呼ばれる1個以上のペプチド性の対応するアルファらせんに(合致するアルファらせんの長軸方向の集合または自己集合により)結合してコイルドコイルとも呼ばれる2量体、3量体またはさらなるオリゴマーを形成することができる。
【0065】
コイルドコイルは、ポリペプチドまたはペプチドにおける構造モチーフであり、ここで、2〜7個のアルファらせんが、縄の子縄のように一緒に巻き付いている。ある態様において、コイルドコイルは、一緒に巻き付いている2個のアルファらせんを有するコイルドコイルである。そのようなアルファらせん領域は、コイルドコイル構造を形成すると思われ、適切なコイルドコイル相互作用結合アッセイにおいて測定された際に、コイルリピートのオリゴマー化に関わっている可能性がある。
【0066】
具体的には、アルファらせんの2量体は、2個の単量体を、2アルファらせんコイルドコイルドメインでの相互作用により2量体が形成されるように接触させることにより形成されることができる。
【0067】
特定の例によれば、コイルは、例えばSEQ ID NO:7または8(コイルおよび逆コイル(anti−coil))において示されているアミノ酸配列を有する7つ組ペプチドを含み、それは、n回のリピートを含み、ここで、n=3〜5である。
【0068】
2個の合致するペプチド性アルファらせんの集合は、“コイルドコイル”として理解されており、コイルドコイルで構成されるコネクタまたはコイルドコイルにより連結された少なくとも2個のポリペプチド鎖の集合は、らせん状コイルドコイル型構造を含むものとして理解されている。
【0069】
アミノ酸配列に関する用語“末端領域”は、C末端領域、N末端領域、または両方を意味するものとする。ポリペプチド(その用語は、本明細書においてポリペプチドまたはタンパク質両方を指すものとして理解されている)配列の末端領域は、特に末端アミノ酸を含む連続するアミノ酸の領域として理解されており、そのような領域は、例えばポリペプチドのペプチド性アルファらせん部分を含む。典型的には、ペプチド性アルファらせんを含む、またはペプチド性アルファらせんからなる末端領域は、末端アミノ酸(すなわち末端)を含む少なくとも15、20、25、30、35、40、45、または50個の連続するアミノ酸、例えば好ましくは20〜45アミノ酸の範囲のいくつかのアミノ酸を含むか、または連続するアミノ酸からなる。例えば、7つ組モチーフの5リピートを含む末端領域に関して、末端領域は、末端アミノ酸を含む35個の連続するアミノ酸を含む。
【0070】
ペプチド性アルファらせんが非末端領域中に位置している場合、ポリペプチド配列は、ペプチド性アルファらせんをポリペプチド配列中に組み込まれた連続するアミノ酸配列として含むが、末端アミノ酸は含まず、特に少なくとも5、10、15、20、25、または35アミノ酸の末端領域を含まない。
【0071】
用語“多量体タンパク質”は、本明細書において複合タンパク質として理解されており、それは、少なくとも2個のポリペプチド鎖および場合によりペプチド性構造であることもそれ以外(例えば非ペプチド性または非ポリペプチド)であることもできる1個以上のさらなる構成要素で構成されている。具体的には、多量体タンパク質は、2個のペプチドもしくはポリペプチド(2量体、例えばホモ2量体またはヘテロ2量体)、または3個のペプチドもしくはポリペプチド(3量体、例えばホモ3量体またはヘテロ3量体)、または4個のペプチドもしくはポリペプチド(4量体、例えばホモ4量体またはヘテロ4量体)を含むタンパク質性構築物である。
【0072】
本明細書において、用語“ポリペプチド”は、ポリペプチドおよびタンパク質両方を指すことが理解されており、用語“タンパク質”は、常にポリペプチドを含むものとする。用語“ペプチド”は、2〜50アミノ酸、特に5〜40アミノ酸の長さを有するアミノ酸配列を含むものとする。
【0073】
多量体タンパク質は、少なくとも1個のワクチン抗原または免疫原(特にペプチド免疫原)およびアジュバントで構成されるワクチン構成要素であることができる。
用語“免疫原”は、本明細書において用いられる際、対象において免疫反応を誘発する1種類以上の抗原を意味するものとする。用語“抗原”は、本明細書において用いられる際、特に抗体の結合部位によりおそらく認識され得る、またはHLAクラスIもしくはクラスII分子のペプチド溝に結合することができ、それ自体が特定のT細胞に関する刺激因子の役目を果たすことができるあらゆる抗原決定基を指すものとする。標的抗原は、標的分子全体として認識されるか、または免疫学的に関連する、すなわちやはり天然もしくはモノクローナル抗体により認識可能であるそのような分子の断片、特に部分構造、例えば標的のポリペプチドもしくは炭水化物構造(一般に“エピトープ”、例えばB細胞エピトープ、T細胞エピトープと呼ばれる)として認識されるかのどちらでもよい。本明細書において、T細胞エピトープの使用が、例えばアレルギーワクチンを提供するために好ましい。
【0074】
用語“ペプチド免疫原”は、本明細書において用いられる際、ペプチド構造の抗原または免疫原、特に線状ペプチドまたは分枝状ペプチドのどちらかとして提供され、天然存在アミノ酸残基または改変されたアミノ酸残基、例えばリン酸化、メチル化、アセチル化、アミド化、ピロリドンカルボン酸の形成、異性化、ヒドロキシル化、硫酸化、フラビン結合、システインの酸化およびニトロシル化によるような修飾または化学的誘導体化により得られる誘導体を含む特定のアミノ酸配列のペプチドを含む、または特定のアミノ酸配列のペプチドからなる免疫原を意味するものとする。
【0075】
ペプチド免疫原は、特に対象において免疫反応を誘発するように設計されており、特に抗体の結合部位によりおそらく認識され得る、またはHLAクラスIもしくはクラスII分子もしくは他の抗原提示分子、例えばCD1のペプチド溝に結合することができ、それ自体が特定のT細胞に関する刺激因子の役目を果たすことができる1以上の抗原決定基を含む。標的抗原は、標的分子全体として認識されるか、または免疫学的に関連する、すなわちやはり天然もしくはモノクローナル抗体により認識可能であるそのような分子の断片、特に部分構造、例えば標的のポリペプチドもしくは炭水化物構造(一般に“エピトープ”、例えばB細胞エピトープ、T細胞エピトープと呼ばれる)として認識されるかのどちらでもよい。本明細書において、B細胞エピトープの使用が、例えば腫瘍学ワクチンを提供するために好ましい。
【0076】
用語“エピトープ”は、本明細書において用いられる際、特に本発明のモジュール式抗体の結合部位に対する特異的結合パートナーを完全に構成することができる、または特異的結合パートナーの一部であることができる分子構造を指す。エピトープという用語は、ハプテン類も指すことができる。化学的には、エピトープは、炭水化物、ペプチド、脂肪酸、有機、生化学もしくは無機物質またはそれらの誘導体およびそれらのあらゆる組み合わせのいずれで構成されることもできる。エピトープがポリペプチドである場合、それは、通常は少なくとも3アミノ酸、好ましくは少なくとも4、5、6、7、8、9、
10、11、12または13アミノ酸を含むであろう。ペプチドの長さに対する決定的な上限は存在せず、それは、タンパク質のポリペプチド配列のほぼ完全長を含むことができるであろう。エピトープは、線状エピトープであることも立体構造エピトープであることもできる。線状エピトープは、ポリペプチドまたは炭水化物鎖の一次配列の単一の区分で構成されている。線状エピトープは、連続している、または重複していることができる。立体構造エピトープは、ポリペプチドが折り畳まれて3次構造を形成することにより一緒になったアミノ酸または炭水化物で構成され、そのアミノ酸は、線状配列において必ずしも互いに隣接していない。具体的には、エピトープは、診断的に関連する分子の少なくとも一部であり、すなわち、試料中のエピトープの非存在または存在は、疾患に対して、または患者の健康状態に対して、または製造における進行状況に対して、または環境および食品の状態に対して定性的または定量的に相関している。エピトープは、療法的に関連する分子、すなわち疾患の過程を変化させる特異的結合ドメインにより標的とされることができる分子の少なくとも一部であることもできる。
【0077】
癌疾患において、自己抗原に対する免疫反応が望ましい。用語“自己抗原”は、本明細書において用いられる際、それ自体は免疫反応を誘発しない正常な健康な対象により生成されるあらゆる抗原、特にポリペプチドまたはペプチドを意味する。これらの自己抗原は、癌疾患を含む(いわゆる腫瘍関連抗原(TAA))特定の疾患状態において異常な、または高いレベルで生成され得る。自己免疫疾患と関係している自己抗原(Self−antigens)は、本明細書において自己抗原(auto−antigens)と呼ばれる。
【0078】
自己抗原は、天然存在であることができ、組み換えにより、または合成により生成されることもできることは、理解されている。自己抗原は、天然に生成される抗原と同一である必要はなく、特定の配列の同一性、類似性または相同性を有するそれに対するバリエーションを含むことができることも、理解されている。
【0079】
癌療法における使用のための自己抗原の選択は、癌疾患のタイプおよび病期に、そして特に例えば腫瘍または転移由来の癌細胞の発現パターンに依存する。本明細書において記載されるワクチンにおいて用いられる可能性がある選択された腫瘍関連抗原の特定の例は、上皮細胞接着分子(EpCAM)、ルイスY、アルファフェトプロテイン(AFP)および癌胎児抗原(CEA)、HER2/neu、MUC−1等である。
【0080】
自己免疫疾患の療法における使用のための自己抗原の選択は、自己免疫疾患のタイプに依存する。本明細書において記載されるワクチンにおいて用いられる可能性がある選択された自己免疫疾患関連抗原の特定の例は、C1q、ADAMTS13、デスモグレイン3、ケラチン、ガングリオシド類(例えばGM1、GD1a、GQ1b)、コラーゲンタイプIV、IgM、カルジオリピン、アネキシンA5等である。
【0081】
ある態様において、免疫原は、1種類以上の特定のアレルゲンを含む。“アレルゲン”は、過敏の状態を開始し得る、または既にそのアレルゲンで感作された対象において即時の過敏反応を誘発し得る抗原である。アレルゲンは、一般にアレルゲン性である特性を有するタンパク質に結合したタンパク質または化学物質である。しかし、アレルゲンは、様々な合成的な、または天然の源、例えば植物材料、金属、化粧品または界面活性剤中の成分、ラテックス等に由来する有機または無機材料も含み得る。
【0082】
抗アレルギー療法における使用のためのアレルゲンの選択は、アレルギーのタイプおよび重症度に依存する。本明細書において記載されるワクチンにおいて用いられる可能性がある選択されたアレルギー関連抗原の特定の例は、免疫原として従来用いられているあらゆるアレルゲン、特にチリダニアレルゲン(例えばDer p1、Der p2、Der p3/−−−−−−Der p23、Der f1、Der f2、Derf3/−−−Der f23)、ネコのフケ、草または木の花粉、ゴキブリアレルゲン等である。
【0083】
感染症の予防または療法における使用のための病原体に対する免疫反応を特異的に誘導する抗原の選択は、病原体のタイプ、例えば微生物性またはウイルス性感染因子に依存する。本明細書において記載されるワクチンにおいて用いられる可能性がある選択された病原体由来の抗原の特定の例は、B型肝炎、C型肝炎、コレラ、HIV、百日咳、インフルエンザ、腸チフス等である。
【0084】
ワクチンアジュバントは、本明細書においてワクチン抗原に対する免疫反応を誘発するためのワクチンの有効性を高めることができるワクチン構成要素として理解されている。
高められたTh1免疫反応は、Th1免疫反応と関係するサイトカイン類の1種類以上(例えばIFNγ)における増大および活性化されたマクロファージにおける増大を含み得る。
【0085】
高められたTh1免疫反応は、抗原特異的IgG抗体、特にIgG1抗体における増大の1以上を含み得る。
例えば、免疫原性組成物、すなわちアジュバント構成要素、例えばTLR9リガンドおよび第1ペプチド性アルファらせんに連結された抗CD32部分(例えばそれぞれが特異的にCD32を認識するペプチド、または抗体、抗体の抗原結合部位を含む抗体フラグメントもしくは構築物)、ならびに例えば第1アルファらせんに合致する第2ペプチド性アルファらせんに連結されたペプチド免疫原を含む免疫原構成要素を含むワクチンが、提供されることができる。そのような免疫原性組成物の特定の例が、国際公開第2014009209A2号において開示されている。
【0086】
多量体タンパク質は、抗原結合分子、例えば抗体、またはそのフラグメントであることができる。
用語“抗体”は、本明細書において用いられる際、リンカー配列を有する、または有しない免疫グロブリンの重鎖および/または軽鎖の定常および/または可変ドメインとして理解されている抗体ドメインからなる、または抗体ドメインを含むポリペプチドまたはタンパク質を指すものとする。ポリペプチドは、ループ配列により連結された抗体ドメイン構造の少なくとも2個のベータストランドからなるベータバレル構造を含む場合、抗体ドメインとして理解されている。抗体ドメインは、天然構造のものであることができ、または例えば抗原結合特性もしくはいずれかの他の特性、例えば安定性もしくは機能的特性、例えばFc受容体FcRnおよび/もしくはFcガンマ受容体への結合を改変するために変異誘発もしくは誘導体化により改変されていることもできる。
【0087】
本明細書において用いられる抗体は、特に単一の可変抗体ドメイン、例えばVH、VLもしくはVHHのCDR結合部位、または可変抗体ドメインの対、例えばVL/VH対、VL/VHドメイン対および定常抗体ドメインを含む抗体、例えばFab、F(ab’)、F(ab)、scFv、Fv、もしくは完全長抗体の結合部位を含む、1以上の抗原またはそのような抗原の1以上のエピトープに結合するための特異的結合部位を有する。
【0088】
用語“抗体”は、本明細書において用いられる際、特に、例えばIgG型(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4亜型)、IgA1、IgA2、IgD、IgEまたはIgM抗体の単一の可変抗体ドメイン、例えばVH、VLもしくはVHH、または可変抗体ドメインの対、例えばVL/VH対、VL/VHドメイン対および定常抗体ドメインを含む、もしくはVL/VHドメイン対および定常抗体ドメインからなる抗体、例えば重鎖抗体、Fab、F(ab’)、F(ab)、scFv、Fd、Fv、もしくは完全長抗体を含む、連結配列もしくはヒンジ領域を含む、もしくは含まない可変および/もしくは定常抗体ドメインの組み合わせを含む、またはそれらからなる抗体形式を指す。用語“完全長抗体”は、少なくともFcドメインおよび天然存在抗体単量体中に一般的に見られる他のドメインのほとんどを含むあらゆる抗体分子を指すために用いられることができる。この句は、本明細書において特定の抗体分子が抗体フラグメントではないことを強調するために用いられている。
【0089】
用語“抗体”は、特に、例えばヒト、マウス、またはウサギを含む哺乳類のようなヒト種を含む動物由来の抗体に適用されるものとし、その用語は、動物由来の配列、例えばヒト配列に基づく組み換え抗体を含むものとする。
【0090】
用語“抗体”は、さらに、異なる種由来の配列、例えばマウスおよびヒト由来の配列を有するキメラ抗体に適用される。
用語“キメラ”は、抗体に関して用いられる際、重鎖および軽鎖のアミノ酸配列のそれぞれの一部分が特定の種由来の、または特定のクラスに属する抗体中の対応する配列に相同性であり、一方で鎖の残りの区分が別の種またはクラスにおける対応する配列に相同性である抗体を指す。典型的には、軽鎖および重鎖両方の可変領域は、哺乳類のある種由来の抗体の可変領域を真似ており、一方で定常部分は、別の種由来の抗体の配列に相同性である。例えば、可変領域は、例えばヒト細胞調製物由来の定常領域との組み合わせで、非ヒト宿主生物からの容易に入手可能なB細胞またはハイブリドーマを用いて現在既知の種に由来することができる。
【0091】
用語“抗体”は、さらにヒト化抗体に適用されることができる。
用語“ヒト化”は、抗体に関して用いられる際、実質的に非ヒト種からの免疫グロブリンに由来する抗原結合部位を有する分子であって、その分子の残りの免疫グロブリン構造がヒト免疫グロブリンの構造および/または配列に基づいている分子を指す。抗原結合部位は、定常ドメイン上に融合した完全な可変ドメインを含むか、または可変ドメイン中の適切なフレームワーク領域上に移植された相補性決定領域(CDR)のみを含むかのどちらであることもできる。抗原結合部位は、野生型であることができ、または例えば1個以上のアミノ酸置換により改変されている、好ましくはヒト免疫グロブリンにより近く似るように改変されていることもできる。ヒト化抗体の一部の形態は、全てのCDR配列を保持している(例えばマウス抗体からの6個のCDR全部を含有するヒト化マウス抗体)。他の形態は、元の抗体に関して変更されている1個以上のCDRを有する。
【0092】
用語“抗体”は、さらにヒト抗体に適用される。
用語“ヒト”は、抗体に関して用いられる際、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列由来の可変および定常領域を有する抗体を含むことが理解されている。本発明のヒト抗体は、例えばCDR中にヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によりコードされていないアミノ酸残基を含むことができる(例えばインビトロでランダムもしくは部位特異的変異誘発により、またはインビボで体細胞突然変異により導入された変異)。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリンライブラリーから、または1種類以上のヒト免疫グロブリンに関してトランスジェニックである動物から単離された抗体を含む。
【0093】
用語“抗体”は、特にあらゆるクラスまたは下位クラスの抗体に適用される。それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体は、抗体の主なクラスであるIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMに割り当てられることができ、これらのいくつかは、さらに下位クラス(イソ型)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2に細分されることができる。
【0094】
その用語は、さらに、モノクローナルまたはポリクローナル抗体、特に組み換え抗体に適用され、その用語は、組み換え的手段により調製、発現、作製または単離された全ての抗体および抗体構造物、例えば異なる由来からの遺伝子または配列を含む動物、例えばヒトを含む哺乳類に由来する抗体、例えばマウス、キメラ、ヒト化抗体、またはハイブリドーマ由来の抗体を含む。さらなる例は、抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から単離された抗体、または抗体もしくは抗体ドメインの組み換えコンビナトリアルライブラリーから単離された抗体、または抗体遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含むあらゆる他の手段により調製、発現、作製もしくは単離された抗体に関する。
【0095】
用語“抗体”は、抗体の誘導体、特に機能的に活性な誘導体も指すことは、理解されている。抗体誘導体は、1個以上の抗体ドメインもしくは抗体のあらゆる組み合わせおよび/または融合タンパク質として理解されており、ここで、抗体のあらゆるドメインは、1個以上の他のタンパク質、例えば他の抗体、例えばCDRループを含む結合構造、受容体ポリペプチドだけでなくリガンド、骨格タンパク質、酵素、毒素等のあらゆる位置において融合しているか、または他の方法で連結されていることができる。抗体の誘導体は、(例えば本明細書で記載されるコネクタによる)会合または様々な化学的技法、例えば共有結合性カップリング、静電相互作用、ジスルフィド結合等による他の物質への結合により得られることができる。抗体に結合している他の物質は、脂質、炭水化物、核酸、有機および無機分子またはそれらのあらゆる組み合わせ(例えばPEG、プロドラッグまたは薬物)であることができる。特定の態様において、抗体は、生物学的に許容可能な化合物との特異的相互作用を可能にする追加のタグを含む誘導体である。本発明において使用可能なタグに関する特定の制限は、それが抗体のその標的への結合に対する負の影響を有しない、または許容可能な負の影響を有する限り、存在しない。適切なタグの例は、Hisタグ、Mycタグ、FLAGタグ、Strepタグ、カルモジュリンタグ、GSTタグ、MBPタグ、およびSタグを含む。別の特定の態様において、抗体は、標識を含む誘導体である。用語“標識”は、本明細書で用いられる際、“標識された”抗体を生成するために抗体に直接または間接的にコンジュゲートされている検出可能な化合物または組成物を指す。標識は、それ自体が検出可能であることができ(例えば放射性同位体標識または蛍光標識)、または酵素標識の場合、検出可能である基質化合物もしくは組成物の化学変化を触媒することができる。
【0096】
特定の例によれば、多量体タンパク質は、本明細書で記載されるコネクタにより互いに連結されている少なくとも2個のポリペプチド鎖で構成されている抗体構築物である。特定の例は、少なくとも1個の抗体ドメイン(単一のドメインまたは2、3、もしくは4個の抗体ドメインの鎖のどちらでもよい)が別の抗体ドメイン(単一のドメインまたは2、3、もしくは4個の抗体ドメインの鎖のどちらでもよい)に連結されている構築物、例えばリンカーが本明細書で記載されるコネクタにより置き換えられている単鎖抗体構築物、または本明細書で記載されるコネクタにより連結された抗体重鎖および軽鎖を含む構築物を含む。
【0097】
本明細書で記載されるコネクタもしくは多量体タンパク質の構成要素、またはコイルリピートを含む、もしくは含まないその一部は、当該技術で既知の様々な方法により、例えば細胞培養、組み換え技術からの精製もしくは単離により、または化学合成により得られることができる。
【0098】
本明細書で用いられる際、用語“組み換え”は、宿主細胞中に天然に存在しない分子または構築物を指す。ある態様において、組み換え核酸分子は、天然に存在しない方式で一緒に連結されている2個以上の天然存在配列を含有する。組み換えタンパク質は、組み換え核酸によりコードおよび/または発現されるタンパク質を指す。ある態様において、“組み換え細胞”は、故意の人の介入により細胞の天然(すなわち非組み換え)形態内では同一の形態で見付からない遺伝子を発現している、かつ/または天然遺伝子を発現しており、それが、他の方式で異常に過剰発現されている、低く発現されている、かつ/もしくは全く発現されていない。組み換え細胞は、少なくとも1種類の組み換えポリヌクレオチドまたはポリペプチドを含有する。“組み換え”、“組み替えている”、および“組み替えられた”核酸を生成することは、一般に少なくとも2個の核酸断片の組み立てを包含する。特定の態様において、組み換えタンパク質および組み換え核酸は、宿主細胞中で機能性であるままであり、すなわち、それらの活性を保持しているか、または高められた活性を示す。
【0099】
従って、本発明は、さらにコネクタもしくはコネクタを含む多量体タンパク質、またはそれらの構成要素(例えばポリペプチド鎖のいずれか、特に第1アルファらせんまたは第1アルファらせんを含む第1ポリペプチド鎖)の生成、およびそれぞれのアミノ酸配列をコードしている核酸、発現されるべきアミノ酸配列をコードしている核酸を含む発現カセット、ベクターまたはプラスミドを含むそのような生成のための組み換え手段、ならびにあらゆるそのような手段を含む宿主細胞に関する。適切な標準的組み換えDNA技法は、当該技術で既知であり、特にSambrook et al., “Molecular Cloning: A Laboratory Manual” (1989), 第2版 (Cold Spring Harbor Laboratory press)において記載されている。
【0100】
本明細書で記載される多量体タンパク質は、特に少なくとも1個の異種組み換えポリペプチド鎖で構成されており、真核細胞、好ましくは本明細書で記載される哺乳類または酵母細胞のいずれかにおいて好ましくは分泌型タンパク質として生成される。
【0101】
用語“異種”は、本明細書でヌクレオチドもしくはアミノ酸配列またはタンパク質に関して用いられる際、所与の宿主細胞に対して外来、すなわち“外因性”である、例えば天然に存在しない化合物;または所与の宿主細胞中に天然に存在するが、例えば異種核酸を用いる異種コンストラクトの状況において例えば“内因性”である化合物を指す。内因性に存在する場合の異種ヌクレオチド配列は、細胞中で不自然な、例えば予想されるよりも多い量で、または天然に存在するよりも多い量で生成される可能性もある。異種ヌクレオチド配列、または異種ヌクレオチド配列を含む核酸は、内因性ヌクレオチド配列と配列が異なるが内因性に存在するタンパク質と同じタンパク質をコードしている可能性がある。具体的には、異種ヌクレオチド配列は、天然における宿主細胞との関係と同じ関係にないヌクレオチド配列である。あらゆる組み換えまたは人工ヌクレオチド配列は、異種であると理解されている。異種ポリヌクレオチドの例は、例えばハイブリッドプロモーターを得るために発現コンストラクトにおいて用いられている、または本明細書で記載されるコード配列に作動可能に連結されているプロモーターと天然に関係していないヌクレオチド配列である。結果として、ハイブリッドまたはキメラポリヌクレオチドが、得られることができる。異種化合物のさらなる例は、内因性の天然存在タンパク質をコードしている配列が正常に作動可能に連結されていない転写制御要素、例えば外因性プロモーターに作動可能に連結されたタンパク質をコードしているポリヌクレオチドである。
【0102】
用語“宿主細胞”は、本明細書で用いられる際、特定の組み換えタンパク質、例えば本明細書で記載される多量体タンパク質またはあらゆるそのような多量体タンパク質の1個以上のポリペプチド鎖を生成するように形質転換された一次対象細胞、ならびにそのあらゆる子孫を指すものとする。(故意の、もしくは意図されない変異または環境における違いにより)全ての子孫が親細胞と正確に同一であるわけではないが、そのような変化した子孫は、子孫が最初に形質転換された細胞の機能性と同じ機能性を保持している限り、これらの用語に含まれることは、理解されるべきである。用語“宿主細胞株”は、組み換えポリペプチド、例えば組み換え抗体を生成するための組み換え遺伝子を発現させるために用いられる宿主細胞の細胞株を指す。用語“細胞株”は、本明細書で用いられる際、長期間にわたって増殖する能力を獲得している特定の細胞型の確立されたクローンを指す。そのような宿主細胞または宿主細胞株は、細胞培養において維持されることができ、かつ/または組み換えポリペプチドを生成するように培養されることができる。
【0103】
特定の側面によれば、組み換えコンストラクトは、関連する遺伝子をベクター中にライゲーションすることにより得られる。これらの遺伝子は、そのようなベクターを用いて宿主細胞を形質転換することにより、宿主細胞ゲノム中に安定して組み込まれることができる。遺伝子によりコードされるポリペプチドは、組み換え宿主細胞株を用いて、形質転換体を培養することにより生成されることができ、そうして適切な培地中に得られ、発現されたタンパク質を培養物から単離し、そしてそれを発現された生成物に適した方法により精製し、特にタンパク質を混入しているタンパク質から分離する。
【0104】
組み換え技術に関して、単離された核酸が、提供されることができる。
本明細書で記載される核酸に関して、用語“単離された核酸”が、時々用いられる。この用語は、DNAに適用される場合、それが由来する生物の天然存在ゲノム中ですぐ近くに隣接している配列から分離されているDNA分子を指す。例えば、“単離された核酸”は、ベクター、例えばプラスミドもしくはウイルスベクター中に挿入された、または原核もしくは真核細胞もしくは宿主生物のゲノムDNA中に組み込まれたDNA分子を含むことができる。RNAに適用される場合、用語“単離された核酸”は、主に上記で定義された単離されたDNA分子によりコードされるRNA分子を指す。あるいは、その用語は、それがその天然の状態において(すなわち細胞または組織中で)会合しているであろう他の核酸から十分に分離されているRNA分子を指すことができる。“単離された核酸”(DNAまたはRNAのどちらでもよい)は、さらに生物学的または合成的手段により直接生成され、その生成の間に存在する他の構成要素から分離された分子を表すことができる。
【0105】
ポリペプチドまたはタンパク質に関して、用語“単離された”は、特にそれらが天然に会合している物質、例えばそれらがそれらの天然の環境、またはそのような調製がインビトロもしくはインビボで実行される組み換えDNA技術による場合にそれらが調製される環境(例えば細胞培養)において一緒に存在する他の化合物を含まない、または実質的に含まない化合物を指すものとする。単離された化合物は、希釈剤またはアジュバントと共に配合されてなお実質上単離されていることができる−例えば、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、診断または療法において用いられる際、薬学的に許容可能なキャリヤーまたは賦形剤と混合されることができる。
【0106】
組み換えポリペプチドまたはタンパク質生成物を得るための単離および精製法として、溶解度における差を利用する方法、例えば塩析および溶媒沈殿、分子量における差を利用する方法、例えば限外濾過およびゲル電気泳動、電荷における差を利用する方法、例えばイオン交換クロマトグラフィー、特異的親和性を利用する方法、例えば親和性クロマトグラフィー、疎水性における差を利用する方法、例えば逆相高性能液体クロマトグラフィー、および等電点における差を利用する方法、例えば等電点分画法のような方法が、用いられることができる。
【0107】
高度に精製された生成物は、本質的に混入タンパク質を含まず、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、またはさらには少なくとも98%、100%に至るまでの純度を有する。精製された生成物は、細胞培養上清の精製により、またはそうでなければ細胞破砕片から得られることができる。
【0108】
単離および精製法として、以下の標準的な方法が、好ましい:細胞破砕(タンパク質が細胞内に得られる場合)、細胞(破砕片)分離および微量濾過または接線流フィルター(TFF)または遠心分離による洗浄、沈殿または熱処理によるタンパク質精製、酵素消化によるタンパク質活性化、クロマトグラフィー、例えばイオン交換(IEX)によるタンパク質精製、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、親和性クロマトグラフィー、サイズ排除(SEC)またはHPLCクロマトグラフィー、濃縮のタンパク質沈殿および限外濾過工程による洗浄。
【0109】
単離および精製されたタンパク質は、従来の方法、例えばウェスタンブロット、HPLC、活性アッセイ、またはELISAにより同定されることができる。
従って、本発明は、特に向上したコネクタドメインおよびポリペプチド鎖がそのような向上したコネクタを用いて互いに連結されている向上した多量体タンパク質を提供する。
【0110】
特定の例によれば、哺乳類細胞において生成されたタンパク質におけるC末端Lysの喪失は、回避されることができ、正しいC末端(Lys拡張、例えばC末端Lysの後の追加のAla、GlyまたはSer)が、得られた。そのような正しい末端は、驚くべきことに、安定化されたコイルドコイル構造によりタンパク質構築物を安定化しただけでなく、コイルを対コイルに接続する親和性も高めた。
【0111】
前記の記載は、以下の実施例への参照により、より完全に理解されるであろう。しかし、そのような実施例は、単に本発明の1以上の態様を実施する方法の代表的なものでしかなく、本発明の範囲を限定するものとして読み取られるべきではない。
【実施例】
【0112】
実施例1:向上したScFV−coil1
免疫原性組成物は、国際公開第2014009209A2号に従って調製される。従って、ScFV−coil1が、弾頭の調製のための基礎である。ScFV−coil1分子を弾頭分子に変換するため、CpGオリゴヌクレオチド(TLR9結合剤)が、ScFV−coil1タンパク質骨格中の“Lys”アミノ酸にカップリングされる。
【0113】
先行技術によれば、ScFV−coil1は、哺乳類細胞、例えばCAP−T細胞、HEK293およびCHO細胞中で生成されたが、昆虫細胞、例えばS2細胞中および酵母細胞(ピキア・パストリス(Pichia pastoris))中でも生成された。
【0114】
典型的なScFV−coil1として、SEQ ID 49(図1)として同定されるアミノ酸配列により特性付けられるポリペプチドが、用いられてきた。
しかし、質量分析での分析は、哺乳類細胞中で生成されたScFV−coil1分子の約40%においてLys(289)が切断されたことを示しており(図4a)、これは、以前にHarris (1995. Processing of C-terminal lysine and arginine residues of proteins isolated from mammalian cell culture. J.Chromatogr.A 705:129-134)により記載されている現象である。しかし、昆虫細胞中で生成されたScFV−coil1は、分子の100%がLys(289)を含有していたため、この現象を示さなかった(図4b)。ScFV−coil1中のLys分子は、CpG分子のカップリングに関する標的であり、従って免疫原性構築物におけるScFV−coil1の完全な機能性に関して重要である。
【0115】
この問題に対する解決策として、以下のものが構築された:
Alaを配列のC’末端に追加することにより(ScFV−coil1ala、図2)、Lys(289)が効果的に保護された。HEK293細胞中またはCHO細胞中で生成されたScFV−coil1alaの質量分析は、100%完全長のScFV−coil1alaを示した(図4c)。同じことが、GlyまたはSerがC’末端に追加された場合にも当てはまった(データは示されていない)。
【0116】
この実施例によれば、ScFV−coil1(弾頭に関する基礎)は、5×7つ組リピート構造(pepE、図1および2中の斜体)を含有し、それは、免疫原構成要素の一部であるpepKと呼ばれる類似の5×7つ組リピート構造(図3)とコイルドコイル相互作用を形成する。免疫原および弾頭が混合された際、コイルドコイルが形成され、そうして弾頭および免疫原を高い親和性でカップリングさせ、アレルギー、腫瘍学、感染症および/または自己免疫疾患における使用のためのワクチン構築物を生成するために用いられるべき安定な複合体を形成する。免疫原構成要素は、さらに、あらゆるそのような疾患を処置するために必要に応じて有効な免疫反応を誘発するために1個以上の関連するエピトープを含む必要があるであろう。
【0117】
ScFV−coil1およびScFV−coil1alaがOctet分析においてpepEおよびpepKの間の親和性に関して比較された際、pepKおよびScFV−coil1の間の親和性は、pepKおよびScFV−coil1alaの間の親和性よりも低く、一方でScFV−coil1の部分的に切り詰められたバージョンを用いて得られたK値は、(より低い親和性を反映して)完全長のK値よりも高かった(図5)。親和性は、同様にC’末端におけるGlyまたはSerにより増大した(データは示されていない)。
【0118】
実施例2:ScFV−coil1バリアントの質量分析。
精製されたScFV−coil1バリアントは、質量分布に関してWaters 3100質量検出器上で製造業者の指示に従って分析された。質量スペクトルは、陽イオンモードで作動するエレクトロスプレーイオン化(ESI−MS)により獲得された。質量スペクトルは、プログラムMaxEnt v.4.1(Waters)によりデコンボリューションされた。
【0119】
図1の配列に基づく予想分子量(MW)は、30764 Daである。
図4Aにおいて示されているように、組み換えHEK293細胞中で生成されたscFV−coil1に関して、見付かったMWは30755.5 Da(総物質の約60%)および30630 Da(総物質の約40%)であり、それは予想MWからLys(289)を減算したものに相当する。
【0120】
図4Bにおいて示されているように、組み換えS2昆虫細胞中で生成されたscFV−coil1に関して、見付かったMWは30755.5 Daであり、これは完全長タンパク質を示している。
【0121】
図2の配列に基づく予想分子量(MW)は、30835.4 Daである。
図4Cにおいて示されているように、組み換えHEK293細胞中で生成された(実施例1に従って得られた)scFV−coil1alaに関して、見付かったMWは30831.0 Daであり、これは完全長タンパク質を示している。
【0122】
実施例3:pepKおよびscFV−coil1またはScFV−coil1alaの親和性分析
pepKに関するScFV−coil1の異なるバージョンのC末端に対する大腸菌の親和性が、Octet QK機器上でバイオレイヤー干渉法により決定された。この目的に関して、ストレプトアビジンバイオセンサーにビオチン化されたpepKが装填され、非特異的結合に関する表面のブロッキング後、会合および解離速度が、ScFV−coil1タンパク質に関して測定された。異なるタンパク質濃度により得られた結合曲線から、親和性が計算された。明確にするため、1つの濃度のみがグラフ中に示されている。組み換えHEK細胞から得られた(実施例1に従って得られた)ScFV−coil1alaに関して8.7pM、組み換えS2昆虫細胞から得られたScFV−coil1に関して15.8pM、および組み換えHEK細胞中から得られたScFV−coil1に関して32.5pMのK値が、計算された。最低の親和性は、分子の約40%におけるLys 289の欠失を示している(図4A)HEK細胞由来のScFV−coil1に関して見出される。完全な本来の配列を含有する昆虫細胞からの物質(図4B)は、中程度の親和性を示し、一方でScFV−coil1ala(図4C)は、意外にも最高の親和性を示している(図5参照)。
ある態様において、本発明は以下であってもよい。
[態様1]第1および第2分子を連結するらせん状コイルドコイル型構造のコネクタであって、該第1分子が、ペプチド性第1アルファらせんを含み、該第2分子が、ペプチド性第2アルファらせんを含み、その第2アルファらせんが、該第1アルファらせんに巻き付いており;
ここで、該第1アルファらせんは、以下:
i)アミノ酸モチーフa−xのリピートおよびC末端モチーフa−x−xからなるC末端領域;または
ii)アミノ酸モチーフx−aのリピートおよびN末端モチーフx−x−aからなるN末端領域;
を含み、ここで
aは、4〜8アミノ酸のモチーフ配列であり;
は、リジンであり;そして
は、モチーフの拡張であり、ここで、該拡張は、1〜10アミノ酸からなり、かつここで、該拡張は、前記のモチーフa−xまたはx−a中に組み込まれている4個より多くの連続するアミノ酸を含まない、上記コネクタ。
[態様2]拡張が、アラニン、グリシン、セリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、バリン、およびプロリンからなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸を含む、態様1に記載のコネクタ。
[態様3]拡張が、アルファらせんを拡張する最初の1〜4アミノ酸内に前記の選択されたアミノ酸を含む、態様2に記載のコネクタ。
[態様4]第1および第2アルファらせんのそれぞれが、2〜9個、好ましくは3〜5個の合致するアミノ酸モチーフのリピートを含み、好ましくは該リピートが、同一のモチーフの、または互いに少なくとも1アミノ酸異なるモチーフのリピートである、態様1〜3のいずれかに記載のコネクタ。
[態様5]らせん状コイルドコイル型構造中に、合致するアミノ酸リピート配列を有する2〜7個のアルファらせんの束を含む、態様1〜4のいずれかに記載のコネクタ。
[態様6]第1および第2アルファらせんが、平行または逆平行アルファらせんであり、好ましくは第1および第2アルファらせんが、巻き付いてコイルドコイル2重らせんになっている、態様1〜5のいずれかに記載のコネクタ。
[態様7]ヘテロ2量体性コイルドコイルを含み、第1アルファらせんが、第2アルファらせんと異なっている、態様1〜6のいずれかに記載のコネクタ。
[態様8]a)モチーフa−xが、SEQ ID 1、SEQ ID 3、SEQ ID 5、およびSEQ ID 7からなる群から選択され;または
b)モチーフx−aが、SEQ ID 2、SEQ ID 4、SEQ ID 6、およびSEQ ID 8からなる群から選択される、
態様1〜7のいずれかに記載のコネクタ。
[態様9]a)モチーフa−xが、SEQ ID 1であり、かつモチーフa−x−xが、SEQ ID 41、SEQ ID 69、もしくはSEQ ID 71のいずれかであり、該モチーフa−x−xが、場合により1個以上のアミノ酸により拡張されており;または
b)モチーフa−xが、SEQ ID 3であり、かつモチーフa−x−xが、SEQ ID 43、SEQ ID 85、もしくはSEQ ID 87のいずれかであり、該モチーフa−x−xが、場合により1個以上のアミノ酸により拡張されており;または
c)モチーフa−xが、SEQ ID 5であり、かつモチーフa−x−xが、SEQ ID 45、SEQ ID 101、もしくはSEQ ID 103のいずれかであり、該モチーフa−x−xが、場合により1個以上のアミノ酸により拡張されており;または
d)モチーフa−xが、SEQ ID 7であり、かつモチーフa−x−xが、SEQ ID 47、SEQ ID 117、もしくはSEQ ID 119のいずれかであり、該モチーフa−x−xが、場合により1個以上のアミノ酸により拡張されており;または
e)モチーフx−aが、SEQ ID 2であり、かつモチーフx−x−aが、SEQ ID 42、SEQ ID 77、もしくはSEQ ID 79のいずれかであり、該モチーフx−x−aが、場合により1個以上のアミノ酸により拡張されており;または
f)モチーフx−aが、SEQ ID 4であり、かつモチーフx−x−aが、SEQ ID 44、SEQ ID 93、もしくはSEQ ID 95のいずれかであり、該モチーフx−x−aが、場合により1個以上のアミノ酸により拡張されており;または
g)モチーフx−aが、SEQ ID 6であり、かつモチーフx−x−aが、SEQ ID 46、SEQ ID 109、もしくはSEQ ID 111のいずれかであり、該モチーフx−x−aが、場合により1個以上のアミノ酸により拡張されており;または
h)モチーフx−aが、SEQ ID 8であり、かつモチーフx−x−aが、SEQ ID 48、SEQ ID 125、もしくはSEQ ID 127のいずれかであり、該モチーフx−x−aが、場合により1個以上のアミノ酸により拡張されている、
態様1〜8のいずれかに記載のコネクタ。
[態様10]a)第1アルファらせんがモチーフa−xを含み、かつ第2アルファらせんがモチーフx−aを含み;または
b)第1アルファらせんがモチーフx−aを含み、かつ第2アルファらせんがモチーフa−xを含み;
好ましくは、モチーフa−xを含むアルファらせんがC末端モチーフa−x−xをさらに含み、かつモチーフx−aを含むアルファらせんがN末端モチーフx−x−aをさらに含む、態様1〜9のいずれかに記載のコネクタ。
[態様11]a)
i)モチーフa−xが、SEQ ID 1であり;
ii)モチーフa−x−xが、SEQ ID 41、SEQ ID 69、もしくはSEQ ID 71のいずれかであり;
iii)モチーフx−aが、SEQ ID 2であり;そして
iv)モチーフx−x−aが、SEQ ID 42、SEQ ID 77、もしくはSEQ ID 79のいずれかであり;
または
b)
i)モチーフa−xが、SEQ ID 3であり;
ii)モチーフa−x−xが、SEQ ID 43、SEQ ID 85、もしくはSEQ ID 87のいずれかであり;
iii)モチーフx−aが、SEQ ID 4であり;そして
iv)モチーフx−x−aが、SEQ ID 44、SEQ ID 93、もしくはSEQ ID 95のいずれかであり;
または
c)
i)モチーフa−xが、SEQ ID 5であり;
ii)モチーフa−x−xが、SEQ ID 45、SEQ ID 101、もしくはSEQ ID 103のいずれかであり;
iii)モチーフx−aが、SEQ ID 6であり;そして
iv)モチーフx−x−aが、SEQ ID 46、SEQ ID 109、もしくはSEQ ID 111のいずれかであり;
または
d)
i)モチーフa−xが、SEQ ID 7であり;
ii)モチーフa−x−xが、SEQ ID 47、SEQ ID 117、もしくはSEQ ID 119のいずれかであり;
iii)モチーフx−aが、SEQ ID 8であり;そして
iv)モチーフx−x−aが、SEQ ID 48、SEQ ID 125、もしくはSEQ ID 127のいずれかである、
態様9に記載のコネクタ。
[態様12]Xが、1個のアミノ酸、好ましくはアラニン、グリシン、またはセリンのいずれかからなる、態様1〜11のいずれかに記載のコネクタ。
[態様13]態様1〜12のいずれかに記載のコネクタにより互いに連結された少なくとも2個のポリペプチド鎖を含む多量体タンパク質であって、第1ポリペプチド鎖が第1アルファらせんを組み込んでおり、かつ第2ポリペプチド鎖が第2アルファらせんを組み込んでおり;かつ第1および第2ポリペプチド鎖が第1および第2アルファらせんのらせん状コイルドコイル型構造により連結されており、好ましくは該タンパク質が、以下:
a)ワクチン抗原およびアジュバントを含むワクチン構成要素;
b)2個のポリペプチド鎖のそれぞれが少なくとも1個の抗体ドメインを組み込んでいる抗体または抗体形式;
c)抗体および非抗体構成要素を含む抗体誘導体であって、ここで、該抗体の少なくとも1個のポリペプチド鎖が、該構成要素を組み込んでいる別のポリペプチド鎖に連結されており、好ましくは該構成要素が、有機および無機分子、特に標識、タグ、酵素、受容体、リガンド、毒素、脂質、炭水化物、または核酸のいずれかである;ならびに
d)受容体またはリガンドが、キャリヤーに連結されている親和性物質;
からなる群から選択される、
上記多量体タンパク質。
[態様14]a)第1アルファらせんを組み込んでいる第1ポリペプチド鎖が、アミノ酸モチーフa−xのリピートおよびC末端モチーフa−x−xからなるC末端領域を含み;かつ第2ポリペプチド鎖が、第2アルファらせんを平行アルファらせんとして非末端領域内もしくはC末端領域中に組み込んでおり;または
b)第1アルファらせんを組み込んでいる第1ポリペプチド鎖が、アミノ酸モチーフa−xのリピートおよびC末端モチーフa−x−xからなるC末端領域を含み;かつ第2ポリペプチド鎖が、第2アルファらせんを逆平行アルファらせんとして非末端領域内もしくはN末端領域中に組み込んでおり、または
c)第1アルファらせんを組み込んでいる第1ポリペプチド鎖が、アミノ酸モチーフx−aのリピートおよびN末端モチーフx−x−aからなるN末端領域を含み;かつ第2ポリペプチド鎖が、第2アルファらせんを平行アルファらせんとして非末端領域内もしくはN末端領域中に組み込んでおり;または
d)第1アルファらせんを組み込んでいる第1ポリペプチド鎖が、アミノ酸モチーフx−aのリピートおよびN末端モチーフx−x−aからなるC末端領域を含み;かつ第2ポリペプチド鎖が、第2アルファらせんを逆平行アルファらせんとして非末端領域内もしくはC末端領域中に組み込んでいる、
態様13に記載のタンパク質。
[態様15]態様13または14に記載のタンパク質を生成する方法であって、以下の工程:
a)第1ポリペプチド鎖をコードする第1異種核酸を組み込んでいる第1宿主細胞を提供し;
b)第2ポリペプチド鎖をコードする第2異種核酸を組み込んでいる第2宿主細胞を提供し;
c)宿主細胞を、第1および第2ポリペプチド鎖を細胞培養において発現させるための条件下で培養し;そして
d)第1および第2ポリペプチド鎖をらせん状コイルドコイル型構造により連結する;
を含み、好ましくは該第1および/または第2宿主細胞が、哺乳類または酵母宿主細胞である、上記方法。
[態様16]態様13または14に記載のタンパク質を生成する方法であって、以下の工程:
a)以下:
(i)第1ポリペプチド鎖をコードする第1異種核酸;
および
(ii)第2ポリペプチド鎖をコードする第2異種核酸;
を組み込んでいる宿主細胞を提供し;
b)宿主細胞を、第1および第2ポリペプチド鎖を細胞培養において発現させるための条件下で培養し;そして
c)第1および第2ポリペプチド鎖をらせん状コイルドコイル型構造により連結する;
を含み、好ましくは該宿主細胞が、哺乳類または酵母宿主細胞である、上記方法。
[態様17]態様15または16に記載の方法により得ることができるタンパク質の調製物であって、該タンパク質分子の少なくとも90%が、第1および第2核酸によりコードされるポリペプチド鎖の正しいC末端およびN末端領域を含む、上記調製物。
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5