(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0004】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであって、簡単な構成によりカテーテルの先端の後退を抑制することで、カテーテルから突出する内針の突出量を定常的に小さくし、カテーテルを生体内に良好に挿入可能なカテーテル組立体を提供することを目的とする。
【0005】
前記の目的を達成するために、本発明は、軸心に沿って内腔を有するカテーテルと、前記内腔に後退可能に挿通される内針と、を備えるカテーテル組立体であって、前記内針は、
針孔を有する胴部と、前記胴部よりも先端側に設けられ、前記内針の軸心に対して傾斜した刃面と、前記胴部と前記刃面とを繋ぐ外面の少なくとも一部に設けられた内針側係止面と、
前記内針側係止面と前記刃面との間に形成される中間面と、を含
むと共に、前記内針側係止面と前記中間面とにより、前記胴部に対して径方向内側に凹んだ凹部が形成されており、前記カテーテルの内面は、前記内針が前記内腔に挿通された組立状態で、前記内針側係止面に当接するカテーテル側係止面を有し、前記組立状態で、前記内針側係止面と前記カテーテル側係止面とが当接していることにより、前記内針に対する前記カテーテルの基端方向の相対移動が規制されて
おり、前記中間面は、前記針孔に連通し、前記組立状態で、前記カテーテルにより少なくとも一部が覆われる開放口を有することを特徴とする。
【0006】
上記によれば、カテーテル組立体は、組立状態で、内針側係止面とカテーテル側係止面とが当接しているという簡単な構成により、カテーテルの先端の後退を抑制することができる。すなわち、カテーテルは、組立状態で、カテーテル側係止面が内針側係止面に引っ掛かることになり、内針に対する基端方向の相対移動が常に規制された状態となる。これにより、カテーテルに収縮が生じても、カテーテルから突出する内針の突出量を定常的に小さくすることが可能となり、ユーザは、カテーテルを生体内に良好に挿入することができる。
また、内針が胴部に対して径方向内側に凹んだ凹部を有することで、組立状態で、カテーテル側係止面が内針側係止面に容易に当接する。よって、カテーテル組立体は、カテーテルの先端の後退をより確実に規制することが可能となる。
【0009】
また、前記内針側係止面及び前記カテーテル側係止面は、前記内針の軸心に対して共に直交していることが好ましい。
【0010】
これにより、内針側係止面とカテーテル側係止面が内針の軸方向に一層強固に引っ掛かるようになり、カテーテル組立体は、カテーテルの基端方向の相対移動を強固に規制することができる。
【0011】
さらに、前記中間面は、前記内針の軸心と平行であるとよい。
【0012】
これにより、カテーテル組立体は、中間面の基端から延びる内針側係止面の延出長さを長くすることができ、カテーテルがさらに係止し易くなる。また、カテーテルから内針を抜去する際に、中間面がカテーテルの内面に案内されることで、内針を円滑に後退させることができる。
【0013】
ここで、前記カテーテルの内周部は、径方向内側に突出した膨出部を有し、前記カテーテル側係止面は、前記膨出部に形成されているとよい。
【0014】
このように、カテーテルが膨出部を有することで、膨出部が内針側係止面に簡単に引っ掛かることになり、カテーテルの基端方向の相対移動をより確実に規制することができる。
【0017】
また、前記カテーテルの最先端は、前記組立状態で、前記刃面の基端に位置するとよい。
【0018】
これにより、カテーテル組立体は、カテーテルの最先端から刃面のみを突出するので、刃面による穿刺機能を損なわずに、内針の突出量をより小さくすることができる。
【0019】
さらに、前記カテーテルは、ポリウレタンを含む材料により構成されていることが好ましい。
【0020】
このように、カテーテルがポリウレタンを含む材料により構成されていると、カテーテルの製造において、加熱した金型に押し当てる等の方法により所望の形状に加工した後、内針又は内針の移行部の形状に沿ったものに管状の材料を被せて加熱する製造方法を採ることができる。この製造方法によれば、加熱によってカテーテルに熱収縮が起こり、内針側係止面とカテーテル側係止面とを、より確実に当接させることができる。
【0021】
本発明によれば、カテーテル組立体は、簡単な構成によりカテーテルの先端の後退を抑制することで、カテーテルからの内針の突出量を定常的に小さくして、カテーテルを生体内に良好に挿入可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るカテーテル組立体について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
本発明に係るカテーテル組立体は、例えば、患者(生体)に輸液や輸血等を行う際に、輸液剤や輸血剤の導入部を形成するために使用される。このカテーテル組立体としては、例えば、末梢静脈カテーテル、末梢動脈カテーテル、中心静脈カテーテル、PICC、ミッドラインカテーテル等があげられる。なお、本発明に係る構成は、上記のカテーテルに限定されず、内針によって生体組織を切開しカテーテルを内部に挿入する種々の機器(例えば、注射器)に適用し得る。
【0025】
本発明の一実施形態に係るカテーテル組立体10は、
図1に示すように、カテーテル20と、カテーテル20を固定保持するカテーテルハブ40と、内針50と、内針50を固定保持する針ハブ70とを備える。そして、カテーテル組立体10は、組立状態で、カテーテル20と内針50を重ねた(カテーテル20内に内針50を挿通した)2重構造の針12を有する。なお、カテーテル組立体10の針は、3以上の部材(例えば、外側から順にカテーテル20、内針50、図示しないガイドワイヤ)が重なった多重構造を呈していてもよい。
【0026】
カテーテル組立体10の使用時には、2重構造の針12を患者の静脈に穿刺して、カテーテル20を静脈内に挿入し、その後カテーテル20から内針50を引き抜く。これにより、カテーテル20を静脈内に挿入しつつ、カテーテル20の基端側及びカテーテルハブ40を患者の皮膚上に露出させる。そして、カテーテルハブ40の基端に図示しない輸液チューブを接続することで、この輸液チューブから患者に輸液剤等を供給可能とする。
【0027】
カテーテル20は、適度な可撓性を有する管体であり、上述した2重構造の針12において外針を構成する。カテーテル20の内部には、カテーテル20の軸心に沿って延びると共に、カテーテル20の先端及び基端を貫通する内腔20aが設けられている。内腔20aは、内針50を収容可能且つ輸液剤等を流動可能な直径に形成されている。
【0028】
また、このカテーテル20は、軸方向に長尺に形成されカテーテル20の大部分を構成する外針側胴部22と、外針側胴部22の先端から先端方向に短く突出するテーパ部24とを有する。
【0029】
外針側胴部22は、軸方向に沿って一定の外径で延在している。また、外針側胴部22の内腔20aは、内針50の外径よりも若干大径に形成されている。外針側胴部22の基端部は、融着、接着、かしめ等の適宜の固着方法によりカテーテルハブ40内の先端部に固着される。また、外針側胴部22の基端には、内腔20aに連通する図示しない基端開口が設けられている。外針側胴部22の長さは、用途や諸条件に応じて設計されればよく、例えば、14〜500mm程度に設定され、あるいは14〜400mm程度に設定され、あるいは14〜200mm程度に設定される。
【0030】
テーパ部24は、
図2に示すように、その外径が外針側胴部22に連なる基端から先端方向に向かって漸減する先細りの形状を呈している。テーパ部24(カテーテル20)の最先端24aには、内腔20aに連通する先端開口26が設けられている。このテーパ部24の構成については、内針50の形状にも関わるため後に詳述する。
【0031】
カテーテル20の構成材料は、特に限定されず、軟質樹脂材料が好適であり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等のフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂又はこれらの混合物、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルナイロン樹脂、オレフィン系樹脂とエチレン・酢酸ビニル共重合体との混合物等があげられる。本実施形態に係るカテーテル20は、熱収縮性を有するポリウレタンによって構成されている。
【0032】
図1に戻り、カテーテルハブ40は、カテーテル20よりも硬質且つ大径で、軸方向に長い円筒状に形成されている。カテーテルハブ40の内部には、外針側胴部22の基端開口に連通する中空部40aが設けられている。また図示は省略するが、中空部40aには、内針50の穿刺時に血液の逆流を防ぐ止血弁、及び輸液チューブの挿入に伴い止血弁を貫通して輸液を可能とするプラグ等が収容されてもよい。
【0033】
カテーテルハブ40の構成材料は、特に限定されず、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルホン、ポリアリレート、メタクリレート−ブチレン−スチレン共重合体等の熱可塑性樹脂を適用するとよい。
【0034】
一方、内針50は、生体の皮膚を穿刺可能な剛性を有する中空管に構成され、
図1に示す組立状態において、カテーテル20の内腔20a及びカテーテルハブ40の中空部40aに貫通配置される。この内針50は、カテーテル20の全長よりも長い内針側胴部52(胴部)と、内針50の先端で短く延びる針先部54と、内針側胴部52と針先部54の間で両部位を連設する移行部56とを備える。また内針50の軸心部には、針孔50aが直線状に貫通形成されている。
【0035】
内針50の内針側胴部52は、内針50の軸方向上で管状に延在した部位であり、内針50の軸心に沿って一定の外径及び内径で延在している。内針側胴部52の基端部は、融着、接着、インサート成形等の適宜の固着方法により、針ハブ70の内部に強固に固着される。
【0036】
図2に示すように、内針50の針先部54は、製造時に、内針側胴部52と同径に製造された管体を適宜カットすることにより、周方向の一部に刃面58を有するように形成される。この刃面58には、針孔50aに連通する針先開口58aが設けられている。針先部54の軸方向長さは、内針50の全長や外径にも依るが、例えば、1mm〜10mmであるとよい。
【0037】
また、本実施形態において、刃面58は、4つの面(一対の先端分割面60、一対の基端傾斜面62)により構成されている。一対の先端分割面60は、最先端の鋒60a及び峰部60bで連なり、基端側に向かって針先開口58aを回り込みつつ幅方向に離れように延びることで、相互の幅が漸増する第1部位61を構成している。一対の基端傾斜面62は、一対の先端分割面60の基端にそれぞれ連なり基端方向に向かって針先開口58aを回り込む半楕円の円弧の一部分を形成し、相互の幅が漸減する第2部位63を構成している。一対の先端分割面60、及び一対の基端傾斜面62は、管体を3回カットすることにより形成され得る。
【0038】
一対の先端分割面60(刃面58の第1部位61)は、相互に反対の幅方向外側を臨む平坦状に形成され、
図3に示す側面断面視で、軸方向に短く形成され、鋒60a及び峰部60bにより生体組織を切り裂く部分を構成する。内針50の軸心に対する峰部60bの傾斜角度Y1は、第1部位61を容易に刺入可能な角度に設計されることが好ましく、例えば、15°〜40°の範囲であるとよい。
【0039】
一方、一対の基端傾斜面62(刃面58の第2部位63)は、
図3に示す側面断面視で、相互に同じ傾斜角度で傾き、上方向且つ先端方向を臨む平坦状を呈している。基端傾斜面62の形成箇所は、内針50の軸心に直交する断面視(
図4A参照)で、上部が針先開口58aとなるC字状の円弧壁部54aに構成されている。円弧壁部54aは、基端傾斜面62の傾斜に基づき基端方向に向かって徐々に高くなる。内針50の軸心に対する基端傾斜面62の傾斜角度Y2は、峰部60bの傾斜角度Y1以下(0°<Y2≦Y1)に設計される。一対の基端傾斜面62の傾斜角度Y2は、例えば、5°〜20°の範囲であるとよい。
【0040】
図2及び
図3に示すように、内針50の移行部56は、管状の内針側胴部52と、刃面58を有する針先部54との間を橋渡しする部位である。この移行部56は、内針50の軸心に直交する断面視(
図4B、
図4C参照)で、針孔50aの上部が開放し円弧壁部54aに連結するC字状の円弧壁部56aに形成されている。移行部56の軸心には、上部の開放口57aに連通する半円状の針孔50aが延びている。また、円弧壁部56aの外周面及び内周面は、軸方向に沿って、内針側胴部52及び針先部54の外周面及び内周面に面一に連なっている。
【0041】
移行部56の上面には、開放口57aを幅方向に挟んで一対の延在面57(円弧壁部56aの両端面:中間面)が設けられている。一対の延在面57は、内針50の軸心と平行に延びる平坦状に形成されている。すなわち、内針50は、針先部54の形成範囲において、断面C字状の円弧壁部54aの高さが基端方向に向かって漸増するのに対し、移行部56の形成範囲において、断面C字状の円弧壁部56aの高さが基端方向に向かって一定のまま延在する。換言すれば、移行部56は、針先部54の刃面58側を径方向内側に切り欠いた(凹んだ)凹部64を有する。そして移行部56は、この凹部64により、一対の延在面57及び後記の係止面64aを有し、且つ内針側胴部52よりも上下方向の寸法が短い(内針側胴部52の外周面から径方向内側に凹んだ)半管状を呈している。
【0042】
一対の延在面57は、側面断面視で、内針50(内針側胴部52)の軸心よりも多少上側に位置している。これにより、針孔50aの軸方向の連通性が良好に確保される。移行部56の軸方向の長さは、内針50の全長や外径にも依るが、例えば、0.5mm〜8mmであるとよい。
【0043】
そして、移行部56と内針側胴部52の境界には、一対の延在面57の基端から上方向(垂直方向)に突出して、内針50に対するカテーテル20の後退を規制する係止面64a(内針側係止面)が形成されている。この係止面64aは、
図4Dに示すように、内針側胴部52の管状に対応して断面円弧状を呈し、内針50の先端方向を臨んでいる。
【0044】
内針50の構成材料は、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金、チタン又はチタン合金のような金属材料、硬質樹脂、セラミックス等があげられる。なお、内針50は、外周面の一部が軸方向に沿って切り欠かれることで溝部が設けられてもよく、あるいは針孔50aに連通する横穴が設けられていてもよい。また、内針50は中実針であってもよい。
【0045】
図1に戻り、針ハブ70は、2重構造の針12を基端側で操作可能なケースに構成され、このケースの内部において内針50を固定保持している。針ハブ70は、カテーテルハブ40の基端側を収容及び接続すると共に、片手で把持し易い細長い形状に形成されている。なお、カテーテル組立体10のカテーテルハブ40や針ハブ70は、上記の構成に限定されず、種々の構成を採用してよい。
【0046】
次に、上記の構成を組み立てて患者への穿刺を可能とした状態(組立状態)の2重構造の針12について詳細に説明する。上述したように、カテーテル組立体10は、組立状態で、カテーテル20の内腔20aに内針50を挿通し、カテーテル20と内針50の各軸心を同軸上に配置している。そして、内針50の先端の針先部54を、カテーテル20の先端(最先端24a)から露出している。
【0047】
ここで、本実施形態では、
図2、
図3、
図4B〜
図4Dに示すように、カテーテル20のテーパ部24が内針50の移行部56全体を覆う構成となっている。詳細には、テーパ部24は、内針側胴部52の先端に重なる位置から、内針50の針先部54(基端傾斜面62)と移行部56の境界まで延びている。これにより、カテーテル20の先端から突出する内針50の突出量が少なくなる。また、テーパ部24の最先端24aは、刃面58の基端に位置しており、針先部54の外周面との間で段差をなくしている。
【0048】
そして、テーパ部24の内面(内周部)には、移行部56を囲う周方向位置のうち一対の延在面57と位相が一致する位置に、径方向内側に突出した内側膨出部28が設けられている。内側膨出部28は、移行部56の凹部64を埋めるように形成され、側面断面視で、その肉厚が最先端から基端方向に向かって急激に漸増している。これに対し、テーパ部24の内側膨出部28以外の周方向位置は、最先端から基端方向に向かって徐々に漸増する円弧部30となっている。
【0049】
詳細には、内側膨出部28は、側面断面視で直角三角形状に形成され、移行部56の一対の延在面57に対向する第1対向面31と、内針50の係止面64aに対向する第2対向面32(カテーテル側係止面)とを有する。第1対向面31は、カテーテル20(外針側胴部22)の軸心に平行な平坦面に形成され、第2対向面32は、カテーテル20の軸心に直交する平坦面に形成されている。
【0050】
カテーテル組立体10の組立状態において、テーパ部24の第1対向面31は、移行部56の一対の延在面57に接触し、テーパ部24の第2対向面32は、内針50の係止面64aに接触する。そして、テーパ部24は、内側膨出部28の第2対向面32が係止面64aに引っ掛かることで、カテーテル20に収縮が生じても内針50に対する基端方向への相対移動が抑止される。
【0051】
また、テーパ部24は、内側膨出部28の形成箇所の外周面に外側平坦面33を備える。外側平坦面33は、内針50の基端傾斜面62と略対称の半楕円状に形成され、所定の傾斜角度X1で傾斜している。カテーテル20の軸心に対する外側平坦面33の傾斜角度X1は、内針50の基端傾斜面62の傾斜角度Y2よりも多少大きい程度であることが好ましい。これにより、外側平坦面33と刃面58(基端傾斜面62)との間の角度が充分に鈍角となる。なお、外側平坦面33の傾斜角度X1は、テーパ部24に必要とされる強度や長さにより、傾斜角度Y2より小さく設定されてもよいし、傾斜角度Y2と一致してもよい。
【0052】
さらに、カテーテル20のテーパ部24の形状は、カテーテル20がポリウレタンを含む材料により構成されていることで、容易に形成することができる。すなわち、カテーテル20の製造において、加熱した金型にカテーテル20を押しつけて所望の形状に加工した後、内針50又は内針50の移行部56(一対の延在面57、係止面64a)の形状に沿ったものに管状の材料を被せて加熱する。これにより、カテーテル20に熱収縮が起こり、テーパ部24を所望の形状(第2対向面32と係止面64aとをより確実に当接させる形状)に成形することができる。テーパ部24の加工は、上述の方法に限定されず、加熱溶融、加熱変形、切削等の所望の形状に加工できる方法であればよい。またテーパ部24の成形は、加熱溶融等のみで最終的な成形としてもよいし、管状の材料を被せて熱収縮させることのみで成形してもよい。
【0053】
本実施形態に係るカテーテル組立体10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下その作用効果について説明する。
【0054】
カテーテル組立体10は、組立状態で、
図2〜
図4Dに示すように、カテーテル20の内側膨出部28が内針50の移行部56(凹部64)に配置されて、ユーザに製品提供される。この組立状態では、カテーテル20の第1対向面31が内針50の一対の延在面57に当接しており、また第2対向面32が内針50の係止面64aに当接している。
【0055】
ここで、カテーテル組立体10を保管している間に、カテーテル20に収縮が起こったとする。この場合、カテーテル20の大部分を構成する外針側胴部22が収縮することで、カテーテル20のテーパ部24には、外針側胴部22から内針50と相対的に基端方向に移動させる力がかかる。しかしながら、本実施形態に係るカテーテル組立体10は、テーパ部24(内側膨出部28)の第2対向面32が内針側胴部52の先端面である係止面64aに接触している。すなわち、内針50の先端において内側膨出部28が引っ掛かるので、テーパ部24の基端方向への移動が規制される。従って、カテーテル20に収縮が生じても、テーパ部24は、組立状態での配置位置を維持して、テーパ部24の最先端24aから突出する内針50の針先部54の突出量を変えることがない。
【0056】
そして、カテーテル組立体10は、患者への輸液の導入部を構築する際等に用いられる。このカテーテル組立体10の使用において、ユーザは、針ハブ70を把持操作して2重構造の針12を患者に穿刺する。この際、カテーテル20の先端から露出されている第1部位61が、生体組織(皮膚、皮下組織、血管壁等)を切り裂いて、血管内への針先部54の刺入を行う。
【0057】
さらに、2重構造の針12を進出させていくと基端傾斜面62(第2部位63)が生体組織に挿入され、カテーテル20も生体組織に挿入される。上述したように、テーパ部24の最先端24aが針先部54の外周面に接触しているため、内針50とカテーテル20の間には段差が生じていない。また、基端傾斜面62と外側平坦面33が大きな鈍角で連続している。これにより、カテーテル20に係る生体組織の抵抗が抑えられ、テーパ部24が血管壁内にスムーズに挿入される。特に、カテーテル20の挿入時に、カテーテル20を後退させる力がかかっても、テーパ部24の第1対向面31と内針50の係止面64aが引っ掛かっていることで、カテーテル20のずれ等を抑制することができる。
【0058】
そして、カテーテル組立体10は、カテーテル20の先端から突出している針先部54の突出量が少ないことで、テーパ部24が血管壁内に挿入された段階で、針先部54が血管内壁の反対に達して傷付けることを抑制できる。その結果、カテーテル20が血管内に挿入した後に、カテーテル20を内針50に対し相対的に進出させることで、カテーテル20を血管内にスムーズに挿入していくことができる。
【0059】
カテーテル20の挿入後は、カテーテル20と相対的に内針50を基端方向に後退して、カテーテル20から内針50を抜去する。この際、カテーテル20の内面には、内針50の後退を規制する部分が存在しないため、内針50を容易に後退させることができる。また、内針50の後退時には、第1対向面31と一対の延在面57が軸方向に平行に接触していることで、内針50を基端方向のみに円滑に案内することも可能となる。
【0060】
以上のように、本実施形態に係るカテーテル組立体10は、係止面64aと第2対向面32が当接しているという簡単な構成により、カテーテル20の先端の後退を抑制することができる。すなわち、カテーテル20は、組立状態で、第2対向面32が係止面64aに引っ掛かることになり、内針50に対する基端方向の相対移動が常に規制された状態となる。これにより、カテーテル20に収縮が生じても、カテーテル20から突出する内針50の突出量を定常的に小さくすることが可能となり、カテーテル20を生体内に良好に挿入することができる。
【0061】
この場合、移行部56が一対の延在面57と係止面64aとを有し、係止面64aが内針50の軸心に対して直交していることで、カテーテル20を係止面64aに強固に引っ掛けることができる。この際、カテーテル20の内側膨出部28がカテーテル20の軸心に対して直交する第2対向面32を有し、内針50の係止面64aに引っ掛かることで、カテーテル20の基端方向の相対移動をより確実に規制することができる。また、カテーテル20のテーパ部24が組立状態で、刃面58の基端まで覆っていることで、刃面58による穿刺機能を損なわずに、内針50の突出量をより小さくすることができる。
【0062】
なお、カテーテル組立体10は、上述した構成に限定されるものではなく、種々の構成を採用し得る。例えば、カテーテル組立体10は、先端側にテーパ部24を備えておらず、直線状の管が延在してその内部に内側膨出部28が設けられた構成でも、内針50に対するテーパ部24の相対的な後退を規制することができる。
【0063】
以下、カテーテル組立体10の幾つかの変形例について説明していく。なお、以降の説明において、本実施形態に係るカテーテル組立体10と同一の構成又は同一の機能を有する構成には、同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0064】
第1変形例に係る2重構造の針13は、
図5に示すように、カテーテル20のテーパ部24が、針先部54と共に移行部56の先端側の延在面57を露出している点で、上述の2重構造の針12と異なる。カテーテル組立体10は、このようにテーパ部24の最先端24aが刃面58の基端から離れた位置にあっても、移行部56(凹部64)に応じてカテーテル20に内側膨出部28を形成することができる。そして、内側膨出部28は、本実施形態に係る2重構造の針12と同様に、内針50の係止面64aに対して第2対向面32(
図3参照)を容易に当接させることができる。
【0065】
第2変形例に係る2重構造の針14は、
図6及び
図7に示すように、内針50の移行部56の上面が内針50の軸心と非平行になっており、これに合わせてカテーテル20の第1対向面31も非平行になっている点で、上述の2重構造の針12、13と異なる。
【0066】
具体的に、移行部56は、内針側胴部52に対して径方向内側に切り欠かれる凹部64を有するものの、内針50の基端方向に向かって斜め上方に緩やかに傾斜する上面(中間面)に形成される。そのため、移行部56の上面は、一対の延在面57と、一対の延在面57の基端側に面一に連なり一対の延在面57と同じ傾斜角度で傾斜する基端連結面65とで構成され、この上面の内針50の軸心に対する傾斜角度Y3は、基端傾斜面62(刃面58)の傾斜角度Y2よりも小さくなっている。基端連結面65は、針孔50aの上方を塞いで、針先開口58aの口縁59を形成している。また、移行部56と内針側胴部52の境界に段差が形成されており、内針側胴部52の先端面は、内針50の軸心に直交する係止面64aを構成している。
【0067】
一方、テーパ部24(内側膨出部28)の第1対向面31Aは、一対の延在面57、針先開口58a及び基端連結面65に一致し、その傾斜角度も同じ傾斜角度で傾斜するように形成される。テーパ部24の第2対向面32Aは、第1対向面31Aが傾斜していることで、内針50の軸心に直交する角度で、径方向に短く形成されている。
【0068】
第2変形例に係る2重構造の針14は、基本的には以上のように構成され、この2重構造の針14も上述の2重構造の針12、13と同様の効果を得ることができる。すなわち、内針50の係止面64aに対しカテーテル20の第2対向面32Aが引っ掛かることで、カテーテル20に収縮が生じてもテーパ部24の基端方向への移動が規制される。これにより2重構造の針14を血管内に良好に穿刺することが可能となる。
【0069】
第3変形例に係る2重構造の針15は、
図8及び
図9に示すように、内針側胴部52と針先部54の間に先細りの移行部66が形成され、カテーテル20のテーパ部24がこの移行部66を覆う点で、上述の2重構造の針12〜14とは異なる。このように内針50の移行部66が切り欠かれておらず径方向内側にテーパ状に凹んだ形状でも、カテーテル20のテーパ部24の後退を規制することができる。
【0070】
具体的に、移行部66の外周面は、側面断面視で、内針50の軸心に対して所定角度傾斜し、内針側胴部52の先端から針先部54の基端に向かって外径が徐々に減少する円錐面66aを有する。この円錐面66aを有する移行部66は、内針50の外径全体を小径することで、針先部54の軸方向長さ(刃面58の形成範囲)を短くする。そのため、カテーテル20のテーパ部24は、組立状態で、移行部66を覆うだけでも、内針50の突出量を少なくすることができる。なお、刃面58は、カテーテル20をスムーズに挿入するような傷口を形成するため、移行部66の先端から先端方向に向かって幅方向(又は上下方向)外側に広がるように構成されることが好ましい。
【0071】
一方、カテーテル20のテーパ部24の内面は、内針50の円錐面66aに沿って傾斜するテーパ内面34(カテーテル側係止面)に形成されている。このテーパ内面34は、外周面と共に先端方向に向かって内径が減少している。テーパ部24は、内針50の円錐面66aの基端に接触すると共に、その最先端24aが内針50の移行部66と針先部54の境界に位置して内針50の外周面に接触している。
【0072】
そして、テーパ部24の最先端24aのテーパ内面34(カテーテル側係止面)の最小内径は、円錐面66a(内針側係止面)の最大外径よりも小径となっている。これにより、カテーテル20のテーパ内面34は、内針50の円錐面66aに引っ掛かるようになり、カテーテル20の収縮が生じた場合に、テーパ部24の基端方向への移動が規制される。
【0073】
この場合、カテーテル20のテーパ部24は、内側膨出部28や外側平坦面33を備えずに先端方向に向かって肉厚が漸減する形状とすることができ、これによりカテーテル20の成形が容易化する。テーパ部24の最先端24aは、針先部54と移行部66の境界に接する他に、移行部66の途中位置(移行部66の円錐面66a上)に接していてもよく、内針50の刃面58の基端側まで覆う構成でもよい。
【0074】
以上のように、第3変形例に係る2重構造の針15も、上述の2重構造の針12〜14と同様の効果を得ることができる。すなわち、内針50の円錐面66aに対しカテーテル20のテーパ内面34が当接することで、カテーテル20に収縮が生じてもテーパ部24の基端方向への移動が規制される。これにより2重構造の針15を血管内に良好に穿刺することが可能となる。
【0075】
なお、内針50は、移行部66を備えずに、刃面58(基端傾斜面62)が係止面64aまで延在する構成でもよい。この場合、カテーテル20は、刃面58の基端側を覆いつつ、その内面(カテーテル側係止面)が係止面64aに接触する構成とすればよい。
【0076】
また、カテーテル20と内針50の係合状態としては、他にも種々の変形例があげられる。例えば、
図10Aに示す第4変形例に係る2重構造の針16は、内針50の係止面67が、径方向内側に向かって基端方向に傾斜することで、内針50の軸心に非直交に交わる点で、上述の2重構造の針12〜15と異なる。この場合、テーパ部24の内側膨出部28も、第2対向面35を係止面67の傾斜に合わせて、径方向内側に向かって基端方向に傾斜させることで、テーパ部24をより強固に係止することが可能となる。
【0077】
また例えば、
図10Bに示す第5変形例に係る2重構造の針17は、テーパ部24が内側膨出部28を有しておらず、径方向内側に突出する係止突起36を設けた点で、上述の2重構造の針12〜16と異なる。このように2重構造の針17は、組立状態で、係止突起36が係止面64aに接触していることでも、テーパ部24の基端方向への移動を容易に規制することができる。
【0078】
あるいは、
図10Cに示す第6変形例に係る2重構造の針18は、内針50の係止面68が、径方向内側に向かって先端方向に傾斜することで、内針50の軸心に非直交に交わる点で、上述の2重構造の針12〜17と異なる。この場合、テーパ部24の内面37を係止面68の傾斜に合わせて、径方向内側に向かって先端方向に傾斜させることで、係止面68に面接触させることができる。従って、テーパ部24の基端方向への移動を規制することができる。
【0079】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。