(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コンピュータ処理部は、調整中のターミナルの前記流量設定点を決定するのに用いられる前記現在のHVACシステムの負荷条件を、前記ターミナルの前記最初の実測気流量および前記あらかじめ定められた目標気流量の関数として決定するようにプログラムされている、請求項1に記載の方法。
前記コンピュータ処理部は、前記調整中のターミナルの前記流量設定点を決定するのに用いられる前記現在のHVACシステムの負荷条件を、前記HVACシステムの他のターミナルの調整によって生じる気流量の関数としても決定するようにプログラムされている、請求項3に記載の方法。
前記コンピュータ処理部は、前記HVACシステムの他のターミナルの調整によって生じる前記気流量を、前記調整中のターミナル以外のターミナルにおいて測定される、結果として得られる気流量の関数として計算するようにプログラムされている、請求項4に記載の方法。
前記ターミナルを前記流量設定点に調整することは、前記流量設定点に達した時点を決定するために前記気流測定装置を使用して前記ターミナルを通る流量を監視しながら、前記ターミナルを通る前記流量を調整することを含む、請求項1に記載の方法。
前記コンピュータ処理部は、前記HVACシステムにおけるキーターミナルを特定するようにプログラムされ、前記指示は、バランシングプロセスの最初から最後まで前記キーターミナルを全開のままにしておくようユーザーに指示することを含む、請求項1に記載の方法。
前記電子機器は、ユーザー入力データを受信するとともに、システムデータを表示するためのユーザーインタフェースを含み、前記ユーザーインタフェースは、前記コンピュータ処理部が前記ユーザーインタフェースから前記ユーザー入力データを受信し、表示用にデータを前記ユーザーインタフェースに送信することができるように、前記コンピュータ処理部に作動的に接続されている、請求項18に記載の装置。
前記コンピュータ処理部は、前記流量設定点を、前記HVACシステムにおけるすべての前記ターミナルについての実測気流量およびあらかじめ定められた目標気流量の関数として計算するようにプログラムされている、請求項25に記載の装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
HVAC技術者らは、これらの測定されたフローを使用して、その業界において比例調整と呼ばれる方法でシステムのバランシングを実現する。比例調整の基本原理は、一度設定されると、システムの各ターミナルからの気流量が常に同一比に維持すなわち、システム内の他のターミナルに対して常に同じ割合で維持されることにある。システム全体での量は変動するが、ターミナル間の気流の関係は同じ比率のままになる。科学的ではあるものの、従来の比例調整は、比例的なバランス調整につながるターミナルの調節具合を予測する技術者の経験に依存している。
【0012】
システムの比例的なバランス調整をするために、各ターミナルで最初のフローが測定される。ターミナルごとに、実測フローを設計フローで割った値として、設計フローの比率が計算される。設計フローの比率が最も低いターミナルがキーターミナルになり、このターミナルは全開のままになる。ターミナルは一般に、設計フローの比率の昇順でバランス調整される。しかしながら、経験を積んだ技術者であれば、順番を変えてもターミナルのバランス調整をすることができる。
【0013】
この考え方は、そのターミナルとキーターミナルの設計フローの比率が正しい割合になるように2番目のターミナルを設定することである。比率が正しい割合になると、その正しい割合のままになる。これらの比例的にバランス調整されたターミナルを通る気流は、他のターミナルのバランス調整時に変動する可能性があるが、それぞれの比率の割合は同じまま維持される。これを達成するために、2番目のターミナルは、最初に技術者の知識および経験に基づいて設定される。言い換えれば、それは技術者側の教育による推定である。2番目のターミナルおよびキーターミナルにおけるフローは再測定され、設計フローの比率が所定の許容値内にあるか否かが決定される。これらの許容範囲内にあれば、技術者は次のターミナルに移動する。
【0014】
このプロセスは、システム内の各ターミナルで繰り返される。技術者は自分の知識を使用してターミナルごとの調整内容を見積もり、その結果、設計フローの比率がキーターミナルと先にバランス調整をした他のターミナルで等しくなるようにする。技術者の見積もりスキルに依存するため、調整、再測定、繰返しが頻繁に行われ、それが普通である。さらに、技術者がこれらのバランシングタスクを実行する際、自らの知識と経験を用いて調整内容を見積もり、最後のターミナルを調整することによって、そのターミナルおよび他のすべてのターミナルで設計フローの比率が等しいだけでなく、できるだけ100%に近づくようにする。これを達成すると、技術者は、必要に応じてファンの速度を調整し、ターミナルの設計フローの100%を達成する。
【0015】
上記から、従来の比例バランシング方法が不正確で時間がかかり、再調整を必要とする誤差を生じやすいことを、当業者であれば理解するであろう。本発明のシステム、方法および装置は、マスフロー理論を用いてターミナルごとの設定点を体系的かつ科学的に決定することにより、この推測作業を排除するため、システムの最後のターミナルが設定されると、システムがバランス調整される位置に各ターミナルが設定されることになる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一態様によれば、気流測定装置を用いてHVACシステムの複数のターミナルをバランス調整するための方法は、気流測定装置のコンピュータ処理部に、各ターミナルに対するあらかじめ定められた目標フローを入力することを含む。この方法は、気流測定装置を介して、前記ターミナルの各々を通る、最初に測定される気流を取得することも含み、最初に測定される気流は、前記コンピュータ処理部に提供される。さらに、この方法は、前記コンピュータ処理部からの指示に従って、前記HVACシステムにおける前記ターミナルを、フロー設定点に調整することも含み、前記コンピュータ処理部は、すべてのターミナルが指示どおり調整された後にすべてのターミナルが目標フローに設定されることに帰着する、現在のHVACシステムの負荷条件下でのターミナルごとの前記フロー設定点を計算するようにプログラムされている。
【0017】
別の態様によれば、単独または上記のいずれかの態様との組み合わせで、前記ターミナルを調整することは、前記コンピュータ処理部の指示どおり、調整中のターミナルに前記気流測定を配置することを含んでもよい。前記コンピュータ処理部は、前記HVACシステムの前記ターミナルを調整する順序を特定するようにプログラムされていてもよい。また、この方法は、コンピュータ処理部から、調整中のターミナルの前記フロー設定点を得て、前記調整中のターミナルを前記フロー設定点に設定することを含んでもよい。
【0018】
別の態様によれば、単独または上記のいずれかの態様との組み合わせで、コンピュータ処理部は、調整中のターミナルの前記フロー設定点を決定するのに用いられる前記現在のHVACシステムの負荷条件を、前記ターミナルの前記最初に測定される気流および前記あらかじめ定められた目標フローの関数として決定するようにプログラムされていてもよい。
【0019】
別の態様によれば、単独または上記のいずれかの態様との組み合わせで、コンピュータ処理部は、前記調整中のターミナルの前記フロー設定点を決定するのに用いられる前記現在のHVACシステムの負荷条件を、前記HVACシステムの他のターミナルの調整によって生じる気流の関数としても決定するようにプログラムされていてもよい。
【0020】
別の態様によれば、単独または上記のいずれかの態様との組み合わせで、コンピュータ処理部は、前記HVACシステムの他のターミナルの調整によって生じる前記気流を計算するようにプログラムされていてもよい。
【0021】
別の態様によれば、単独または上記のいずれかの態様との組み合わせで、コンピュータ処理部は、前記HVACシステムの他のターミナルの調整によって生じる前記気流を、前記調整中のターミナル以外のターミナルにおいて測定される、結果として生じた気流の関数として計算するようにプログラムされていてもよい。
【0022】
別の態様によれば、単独または上記のいずれかの態様との組み合わせで、前記調整中のターミナルを調整した後、前記コンピュータ処理部は、前記気流測定装置を用いて異なるターミナルを通る実測された気流を取得するように前記ユーザーに指示するようにプログラムされていてもよい。さらに、コンピュータ処理部は、前記異なるターミナルを通る予測フローを計算し、前記異なるターミナルを通る実測フローと前記異なるターミナルを通る前記予測フローとを比較して誤差を決定するようにプログラムされていてもよい。誤差があらかじめ定められた閾値を超えたことに応答して、コンピュータ処理部はさらに、前記調整中のターミナルの前記フロー設定点を再計算し、前記調整中のターミナルを前記再計算されたフロー設定点に調整するように前記ユーザーに指示するようにプログラムされていてもよい。
【0023】
別の態様によれば、単独または上記のいずれかの態様との組み合わせで、前記調整中のターミナルの前記再計算された前記フロー設定点を決定するために、前記コンピュータ処理部は、修正された総フローを、前記調整中のターミナルを設定する前に決定される総フローおよび前記誤差の関数として計算するようにプログラムされていてもよい。また、コンピュータ処理部は、ターミナルごとのフロー比を、ターミナルごとの前記予測フローおよび前記調整中のターミナルを設定する前に決定される前記総フローの関数として計算するようにプログラムされていてもよい。さらに、コンピュータ処理部は、各ターミナルを通る修正された予測フローを、前記フロー比および前記修正された総フローの関数として計算し、再計算されたフロー設定点を、前記修正された総フローおよび前記修正された予測フローの関数として決定するようにプログラムされていてもよい。
【0024】
別の態様によれば、単独または上記のいずれかの態様との組み合わせで、前記調整中のターミナルを調整した後、前記コンピュータ処理部は、前記特定された順序で、前記気流測定装置を次のターミナルに移動するように前記ユーザーに指示するようにプログラムされていてもよい。また、コンピュータ処理部は、前記次のターミナルを通る予測気流を計算し、前記次のターミナルを通る前記気流を測定し、前記次のターミナルを通る前記予測気流と前記次のターミナルを通る実測気流とを比較して誤差を決定し、次のターミナルのフロー設定点を、前記誤差の関数として計算し、前記次のターミナルを前記再計算されたフロー設定点に設定するよう前記ユーザーに指示するようにプログラムされていてもよい。
【0025】
別の態様によれば、単独または上記のいずれかの態様との組み合わせで、次のターミナルの前記フロー設定点を計算するために、前記コンピュータ処理部は、修正された総フローを、前記調整中のターミナルを設定する前に決定される総フローおよび前記誤差の関数として計算するようにプログラムされていてもよい。また、コンピュータ処理部は、ターミナルごとのフロー比を、ターミナルごとの前記予測フローおよび前記調整中のターミナルを設定する前に決定される前記総フローの関数として計算するようにプログラムされていてもよい。また、コンピュータ処理部は、各ターミナルを通る修正された予測フローを、前記フロー比および前記修正された総フローの関数として計算するようにプログラムされていてもよい。さらに、コンピュータ処理部は、再計算されたフロー設定点を、前記修正された総フローおよび前記修正された予測フローの関数として決定するようにプログラムされていてもよい。
【0026】
別の態様によれば、単独または上記のいずれかの態様との組み合わせで、前記ターミナルを前記フロー設定点に調整することは、前記フロー設定点に達した時点を決定するために前記気流測定装置を使用して前記ターミナルを通る前記フローを監視しながら、前記ターミナルを通るフローを調整することを含んでもよい。
【0027】
別の態様によれば、単独または上記のいずれかの態様との組み合わせで、指示は、最初のフローを測定する前に、前記HVACシステムのすべてのターミナルに対するすべてのダンパーを全開状態にするように前記ユーザーに指示することを含んでもよい。
【0028】
別の態様によれば、単独または上記のいずれかの態様との組み合わせで、コンピュータ処理部は、前記HVACシステムにおけるキーターミナルを特定するようにプログラムされていてもよい。指示は、バランシングプロセス中ずっと前記キーターミナルを全開のままにしておくよう前記ユーザーに指示することを含んでもよい。
【0029】
別の態様によれば、単独または上記のいずれかの態様との組み合わせで、コンピュータ処理部は、前記HVACシステムのターミナルごとのターミナル誤差を、それぞれのターミナルの目標フローと前記最初の実測フローとの比の関数として決定し、ターミナル誤差が最小であるターミナルを前記キーターミナルとして特定するようにプログラムされていてもよい。
【0030】
別の態様によれば、単独または上記のいずれかの態様との組み合わせで、コンピュータ処理部は、前記ターミナル誤差の昇順で調整すべき前記ターミナルを特定するようにプログラムされていてもよい。
【0031】
別の態様によれば、単独または上記のいずれかの態様との組み合わせで、コンピュータ処理部は、以下のように設定点Q
isおよびQ
Nsの計算の解を求めてもよく、
【数1】
ここで、Q
Tは総システムフローであり、
Q
bおよびQ
1は、ターミナルi+1≦b≦Nおよび1の前記最初のフローであり、
Q
f1、Q
fa、Q
fc、Q
fiはそれぞれ、ターミナル1、1≦a≦i−1、1≦c≦N−1、iの前記目標フローである、
【0032】
別の態様によれば、単独または上記のいずれかの態様との組み合わせで、コンピュータ処理部は、ターミナルiを設定した結果としてのターミナル1,2≦x≦i−1、i+1≦z≦N−1、Nの前記予測フローQ
p1、Q
px、Q
pz、Q
pNを以下のように求めるようにプログラムされていてもよく、
【数2】
ここで、Q
Tは前記総システムフローであり、
Q
c、Q
w、Q
N、Q
zは、ターミナルi+1≦c≦N、i+2≦w≦N、i+1≦z≦N−1、Nの前記最初のフローであり、
Q
f1、Q
fx、Q
fd、Q
fi、Q
fv、Q
feはそれぞれ、ターミナル1、2≦x≦i−1、2≦d≦i、i、1≦v≦i、1≦e≦i−2前記目標フローである。
【0033】
別の態様によれば、単独または上記のいずれかの態様との組み合わせで、HVACシステムにおける気流を測定するための装置は、前記HVACシステムのターミナルの前記気流の流路に配置されるように構成された構造を含んでもよい。この構造はさらに、気流を前記ターミナルから構造に送るのに適するようにされていてもよい。また、装置は、前記構造に支持され、前記気流の流路内に配置される部分を有する計装機器を含んでもよい。計装機器は、前記構造を通る前記気流に関連する信号を生成するように構成されていてもよい。装置はさらに、前記計装機器に作動的に接続され、気流に関連する前記信号を受信してこれらの信号をコンピュータ可読データに変換するのに適するようにされた電子機器を含んでもよい。電子機器は、前記コンピュータ可読データを使用して前記構造を通る実測気流を決定するようにプログラムされたコンピュータ処理部を含んでもよい。コンピュータ処理部はさらに、調整中のターミナルについてフロー設定点を計算するようにプログラムされていてもよく、前記フロー設定点は、システムの現在の状態で、前記システムの調整中のターミナル以外の他のすべてのターミナルがバランスのとれた状態にあるとき、バランス調整されたシステムフローになるであろう、前記調整中のターミナルを通る前記気流である。
【0034】
別の態様によれば、単独または上記のいずれかの態様との組み合わせで、コンピュータ処理部は、前記フロー設定点を、前記HVACシステムにおける前記ターミナルのすべてについての実測気流およびあらかじめ定められた目標気流の関数として計算するようにプログラムされていてもよい。
【0035】
別の態様によれば、単独または上記のいずれかの態様との組み合わせで、電子機器は、ユーザー入力データを受信するとともに、システムデータを表示するためのユーザーインタフェースを含んでもよい。ユーザーインタフェースは、前記ユーザーインタフェースから前記ユーザー入力データを受信し、表示用にデータを前記ユーザーインタフェースに送信するために、前記コンピュータ処理部に作動的に接続されていてもよい。
【0036】
別の態様によれば、単独または上記のいずれかの態様との組み合わせで、電子機器は、前記ユーザーが前記ユーザーインタフェースを用いて前記システムに関するデータを前記コンピュータ処理部に入力可能なように構成されていてもよく、コンピュータ処理部は、前記コンピュータ処理部は、前記ユーザーインタフェースを介して前記ユーザーに指示を与えることができる。
【0037】
別の態様によれば、単独または上記のいずれかの態様との組み合わせで、コンピュータ処理部はさらに、各ターミナルを通る予測フローを、各ターミナルを通る前記実測フローの関数として計算するようにプログラムされていてもよい。コンピュータ処理部はさらに、前記調整中のターミナルとは異なるターミナルの前記予測フローと、その異なるターミナルを通る二次実測フローとの差があらかじめ定められた閾値を超えるか否かを決定するようにプログラムされていてもよい。前記差が前記あらかじめ定められた閾値を超えたことに応答して、コンピュータ処理部は、前記調整中のターミナルの再計算されたフロー設定点を決定するようにプログラムされていてもよい。
【0038】
別の態様によれば、単独または上記のいずれかの態様との組み合わせで、コンピュータ処理部はさらに、前記調整中のターミナルを前記フロー設定点に調整するように前記ユーザーに促し、前記調整中のターミナルを通る気流を監視して、いつ前記フロー設定点に達したかを決定するようにプログラムされていてもよい。
【0039】
別の態様によれば、単独または上記のいずれかの態様との組み合わせで、HVACシステムにおける気流を測定するための装置は、前記HVACシステムのターミナルからの気流を測定するように構成された気流フードと、前記気流フードと通信して気流測定値を受信するように構成された、ユーザーインタフェース部に作動的に接続されたコンピュータ処理部を有する電子機器と、を含んでもよい。コンピュータ処理部は、データをユーザーに照会し、前記ユーザーに指示を与え、前記ユーザーインタフェースを介して前記ユーザーによる前記ユーザーからのデータを受信するようにプログラムされていてもよい。また、コンピュータ処理部は、前記HVACシステムに関する前記ユーザーデータを前記ユーザーに照会し、前記ユーザーから当該ユーザーデータを受信するようにプログラムされていてもよい。その情報は、前記HVACシステムにおけるターミナル数とターミナルごとにあらかじめ定められた所望の気流量とを含んでもよい。また、コンピュータ処理部は、前記気流フードを介して、前記HVACシステムのターミナルごとに最初の実測気流を得るように前記ユーザーに指示し、前記HVACシステムにおける前記ターミナルの前記気流量を、前記HVACシステムをバランス調整するために計算された設定点に調整するように前記ユーザーに指示するようにプログラムされていてもよい。
【0040】
別の態様によれば、単独または上記のいずれかの態様との組み合わせで、調整を必要とする前記システムにおけるターミナルごとに前記気流量を調整するように前記ユーザーに指示するために、コンピュータ処理部は、前記調整中のターミナルを前記計算された設定点に調整し、前記調整中のターミナルを調整することによって前記HVACシステムにおよぶ影響を決定するために、前記気流フードを使用して前記調整中のターミナルとは異なるターミナルを通る前記気流を測定するようにユーザーに指示するようにプログラムされていてもよい。コンピュータ処理部は、前記HVACシステムに対する前記影響があらかじめ定められた値を超えた旨の決定に応答して、前記調整中のターミナルを再計算された設定点に再調整するようにプログラムされていてもよい。
【0041】
別の態様によれば、単独または上記のいずれかの態様との組み合わせで、コンピュータ処理部は、前記フロー設定点を、前記HVACシステムにおけるすべての前記ターミナルについての実測気流およびあらかじめ定められた目標気流の関数として計算するようにプログラムされていてもよい。
【0042】
別の態様によれば、単独または上記のいずれかの態様との組み合わせで、前記再計算された前記フロー設定点を決定するために、前記コンピュータ処理部は、ターミナルごとに予測フローを計算し、前記異なるターミナルについて、前記予測フローと前記二次実測フローとの誤差を決定するようにプログラムされていてもよい。また、コンピュータ処理部は、修正された総フローを、前記誤差および前記最初に測定される気流から決定される総フローの関数として計算するようにプログラムされていてもよい。コンピュータ処理部は、ターミナルごとのフロー比を、ターミナルごとの前記予測フローおよび前記調整中のターミナルを設定する前に決定される総フローの関数として計算するようにプログラムされていてもよい。さらに、コンピュータ処理部は、各ターミナルを通る修正された予測フローを、前記フロー比および前記修正された総フローの関数として計算し、再計算されたフロー設定点を、前記修正された総フローおよび前記修正された予測フローの関数として決定するようにプログラムされていてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は、HVACシステムにおける気流を決定するためのシステムおよび方法に関する。特に、本発明は、システムの各ターミナルを通る気流が、設計仕様で定められた流量で調和空気を吐出するように、HVACシステムをバランス調整する方法に関する。この方法は、様々な気流測定システムで実施することができる。
【0045】
本発明の気流バランシングシステムおよび方法を実施することが可能な1つのシステムを、
図1および
図2に示す。
図1および
図2は、HVACシステムのターミナルを通る気流を測定するためのシステム10の例示的な構成を示す。システム10は、気流を測定するのに使用される気流フードの形での気流測定装置20を含む。
図1および
図2の気流フード20は、調和空気を建物の空調スペースに吐出する建造物用HVACシステムのターミナルを通る気流を測定するのに一般に用いられる一般的な設計である。気流フード20の最も一般的な用途は、HVAC技術者がHVACシステムの天井据付式ターミナルの「バランス調整」をする際に、HVACエンジニアまたは建築家によって設計された仕様に沿って調和空気が建物内に分配されるように助けることである。これらのシステムでターミナルのバランス調整をするためには、各ターミナルを通る気流を正確に測定する必要がある。本発明のシステムおよび方法は、背圧補償測定を提供することによって、これらの測定の精度を向上させる。
【0046】
気流フード20は目的が特殊で限られているため、測定対象となる気流が通る標準的なHVACと協働するように構成することができる。気流フード20は、設置面積24インチ×24インチの標準的なHVACターミナルを通って吐出される空気を捕捉するように構成された集気フード22を含む。集気フード22は、断面が正方形で輪郭はほぼ台形であり、ターミナルから吐出されるすべての空気または実質的にすべての空気を集められるような方法で集気フードの開放端24が標準的な24インチ×24インチのターミナルに嵌合する寸法である。
【0047】
集気フード22は、開放端24から設備端16に向かって先細になっている。設備端は、集気フードが計装機器ハウジング30と接触してこれに接続される箇所である。計装機器ハウジング30は、気流フード20の出口32を画定する台形の下側を含む。つまり気流フード20は、収縮拡大ノズルの一般的な形である。したがって、速度圧と流速を計算し、そこから流量を計算するために、全圧測定値と静圧測定値との関係に関する十分に確立された流体力学的原理に基づいて、フード20を通る気流を決定することができる。
【0048】
計装機器ハウジング30は、気流フード20をターミナル上の所定の位置で支持し、操作するためのハンドル34を含む。ハウジング30は、気流フード20を通る気流を測定するための計装機器36を収容している。また、ハウジング30は、計装機器36に作動的に接続され、計装機器に照会をして計装機器から情報を受信する気流フード20の電子機器38を収容する。電子機器38は、ノブ、ボタン、スイッチ、タッチスクリーンなどの入力装置、ヴィジュアルメーター、ディスプレイスクリーン、LED読み出しなどの出力装置といった特徴を含むことができるユーザーインタフェース40を含む。これらは、気流フード20を操作するために使用される。
【0049】
本明細書で説明するプロセスを実行するコンピュータ処理部42は、コンピュータまたは特定用途向け集積回路(ASIC)などのプログラマブルプロセッサと、プロセッサによるアクセス用にコンピュータプログラムおよびデータを格納することができるコンピュータ可読メモリとを含むことができる。コンピュータ可読メモリは、半導体メモリデバイス(たとえば、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリデバイス)、磁気ディスク(たとえば、内蔵ハードディスクまたはリムーバブルディスク、光磁気ディスク、CD−ROMディスク、DVD−ROMディスク)など、あらゆる形態の不揮発性メモリを含むことができる。コンピュータ処理部42は、計装機器36とインタフェースするための専用回路を含むことができ、あるいはそれとインタフェースすることができる。コンピュータ処理部42は、ユーザーインタフェース40など、電子機器38の他のどの部分とも一体化することができ、他の電子部品とインタフェースする別個の部品として単独で存在することもできる。
【0050】
1つの特定の実施形態では、電子機器38は、計装機器36から得られた測定データを無線で送信するための、Bluetooth、シングルモード無線接続モジュールまたはWi−Fiネットワーク装置などの無線通信モジュールを含むことができる。この場合、ユーザーインタフェース40およびコンピュータ処理部42は、スマートフォン、タブレットまたは他の適切に装備された電子デバイスなどのスマートデバイスを備えることができる。この実施形態では、スマートデバイスは、本明細書で説明するバランシングプロセスを実行するHVACバランシングアプリケーションを含むことができる。
【0051】
図2を参照すると、例示的な実施形態では、計装機器36は、気流フード20内の速度圧を測定するためのピトー管50のアレイを含む。従来技術において知られているように、ピトー管50は、フード20内で、
図1においてAを付した矢印で大まかに示される気流に向かう方向と気流から離れる方向のそれぞれに設けられる開口を有する。ピトー管50を介して測定される全圧と静圧との差を使用して、フード20を通る気流を既知の方法で計算することができる。
【0052】
気流フード20は、気流を測定するためにシステム10に実装することができる装置の例である。本明細書で開示するシステムバランシングのためのシステムおよび方法は、この構成または他の特定の構成に限定されることはない。本明細書で説明するシステムバランシングのためのシステムおよび方法は、HVACシステムのターミナルを通る気流を測定することができる、どのようなフードまたは他のデバイスにも適用可能である。
【0053】
例えば、
図4を参照すると、システム10は、気流を測定するのに使用される気流フードの形態の装置60を含むことができる。
図4に示す気流フードは、たとえば、2015年2月26日に出願された米国特許仮出願第62/121,222号(その内容全体を本明細書に援用する)に記載されているものと類似または同一であってもよい。
【0054】
図4に示すように、システム10は、HVACシステムのターミナルを通る気流を測定するのに使用される気流フード60を含む。気流フード60は、標準的な24インチ×24インチのターミナルに被さってはまるような寸法で調節された、ほぼ箱形の構成を有する。この実施形態では、気流フード60は、気流が導かれる四分割部70に分割されている。各四分割部70内には、その特定の四分割部を通る気流を測定するための計装機器が配置されている。この計装機器は、たとえば、ホットポイント風速計またはピトースタティックチューブアレイの形態であってもよい。気流フード60を通るフローの総量は、四分割部70を通るフローから計算された合計である。
【0055】
気流フード60は、ポール62に支持されている。ポール62は、ターミナルから吐出されるすべての空気または実質的にすべての空気がフード60を通って流れるように、ユーザーが気流フード60を操作してターミナルに真正面からはめやすくする。ポール62は、気流フード60を操作して使用する際に快適かつ人間工学的な感触を得やすくするためのハンドル64を含むことができる。ポール60は、ポールを所望の長さでロックしやすくするロックリング66を有する伸縮構造を有してもよい。空気がフードの四分割部70を通って導かれるように気流フード60をターミナルの上に配置した状態で、ユーザーは、たとえば、ハンドル64のうちの1つに設けられたボタンまたは引き金72によってシステム10を作動させることができる。
【0056】
引き金72は、Bluetoothまたはシングルモード無線接続などの無線通信によって、気流フード60の計装機器および電子機器を起動する。計装機器および電子機器は、少なくとも一部が気流フード60の中に隠れているため、
図4では矢印75で大まかに示してある。計装機器および電子機器75は、(繰り返すが、たとえばBluetoothまたはWi−Fiによって)気流測定データを取得する。この気流測定データは、スマートフォンなどのスマートデバイス74、タブレット、ポール62に着脱自在に装着できる適当な他の電子装置などの形としての気流フード60のコンピュータ処理部に無線送信される。
【0057】
スマートデバイス74には、気流フード60の計装機器および電子機器75から受信した測定データを使用して、HVACターミナルから吐出される空気の体積流量を計算するか、そうでなければ決定するようにされたアプリケーション(「HVACアプリケーション」)が備えられている。気流フード60の計装機器および電子機器75と無線通信するスマートデバイス74にロードされたHVACアプリケーションを介して、本明細書に記載の方法を実施して、HVACシステムのバランシングに使用されるターミナルの設定を計算または決定することができる。
【0058】
気流測定システム10において、
図1および
図2の気流フード20、
図4の気流フード60あるいは、
図1、
図2、
図4に示すものとは異なる構成を有する気流フードを用いるか否かにかかわらず、気流測定値を得るためのプロセスは本質的に同一である。
【0059】
図1および
図2の気流フード20を用いるシステム10の気流測定プロセスを、一例として
図3に示す。
図3を参照すると、HVACシステム100は、HVAC調和空気を分配し、その調和空気を、ターミナル104を介して建物内の室などの空間またはゾーン110に送るダクト102を含む。
図3の例では、調和空気をゾーン110に送る4つのターミナル104がある。各ターミナル104は、ダンパーの迎え角を変えることによってフローを調整するための、付随するダンパー112を有していてもよい。追加のダンパー114を使用して、ダクト102内のフローを制御することができる。もちろん、所与のゾーンのどこに関連するターミナル104の数も、上記より多くても少なくてもよい。
【0060】
ターミナル104の気流測定値を得るために、気流フード20がターミナルを覆って配置され、計装機器36および電子機器38(
図1および
図2参照)がユーザーインタフェース40を介して起動される。ターミナル104の読み取りが行われ、気流フード20が次のターミナル(20’で破線で示す)に移動して作動し、同じようにして読み取りがなされる。このプロセスは、ゾーン110内のすべてのターミナル104で繰り返される。
【0061】
図4の気流フード60を用いるシステム10の測定プロセスは似たようなものであり、一例として、
図5に示す。
図5を参照すると、HVACシステム100は、HVAC調和空気を分配し、その調和空気を、ターミナル104を介して建物内の室などの空間またはゾーン110に送るダクト102を含む。
図5の例では、調和空気をゾーン110に送る4つのターミナル104がある。各ターミナル104は、ダンパーを通るフローを調整するための、付随するダンパー112を有していてもよい。追加のダンパー114を使用して、ダクト102内のフローを制御することができる。もちろん、所与のゾーンのどこに関連するターミナル104の数も、上記より多くても少なくてもよい。
【0062】
ターミナル104の気流測定値を得るために、気流フード60がターミナルを覆って配置され、計装機器および電子機器が引き金を介して起動される。これによって、読み取りが行われ、データがスマートデバイス74(
図4参照)に送られて、そこでHVACアプリケーションがそのデータを使用して計算を行うことができる。ターミナル104の読み取りがなされると、気流フード60が次のターミナル(60’で破線で示す)に移動して作動し、そこで同じようにフードが作動して読み取りがなされる。このプロセスは、ゾーン110内のすべてのターミナル104で繰り返される。
【0063】
従来の商用HVAC天井据付式ターミナルは、様々な構成をとることができる。これらのターミナル構成の例を、ターミナルの基本レイアウトと空気が吐出される方向(矢印で大まかに示す)を図示した
図6Aから
図6Jに示す。これらの例示的なターミナル構成を、以下の表にまとめておく。
【表1】
【0064】
各ターミナル構成は、その構造を通る気流を方向転換するか乱すことになるため、HVACシステムには、ある大きさの気流抵抗すなわち背圧が生じる。また、フード自体によってある大きさの抵抗をHVACシステムで発生させることができるため、ターミナルに気流フードをかぶせて配置すると、ターミナルを通る気流に影響がおよぶ。このことから、フードをかぶせて配置するターミナルの形状に応じて、気流フードが存在することで発生する抵抗の大きさを変化させることができることを理解されたい。ターミナルと気流フード構成との異なる組み合わせに対する抵抗の大きさは、大幅に変わり得る。しかしながら、ターミナル構成によって、変化させることができない一定の抵抗も生じるため、大きさが変わる抵抗を生む唯一の源は、気流フードによって導入されるものである。
予測バランシング方法
【0065】
本発明によれば、気流測定システム10は、HVACシステムのターミナルのバランス調整をするための方法またはアルゴリズムを実施する。
図1〜
図3の気流フード20については、予測バランシング方法を、電子機器38のコンピュータ処理部42に実装することができる。
図4および
図5の気流フード60では、スマートデバイス74によって実行されるHVACアプリケーションで予測バランシング方法を実施することができる。
【0066】
予測バランシング方法によれば、HVACシステムの各ターミナルまたはシステムの一部/枝は、最後のターミナルを通るフローの調整時に全部のターミナルを通るフローがバランス調整されるように、順次設定または調節される。各ターミナルを設定すると、システムは徐々にバランス調整された状態に近づき、最後のターミナルが設定されると完全にバランス調整された状態が達成される。本明細書では、ターミナルを「設定する」または「調整する」とは、ターミナルから吐出される気流を、気流フード20,60を介して監視しつつ、ターミナルを通る気流を制御するためのダンパーが調整されることを意味する。
【0067】
気流測定システム10によって実施される予測バランシング方法では、質量流量理論に基づく計算を使用して、システムの最後のターミナルを設定する際にシステムをバランス調整する各ターミナルのフロー設定点を決定する。本質的に、各ターミナルでのフローを測定した後、この方法は、ターミナルごとに最初のフロー誤差比を決定し、システム全体がバランス調整されるまで、これらの誤差をターミナルごとに体系的かつ継続的に修正することを含む。所望の精度レベルに応じて、この方法では各ターミナルの調整内容によってシステムの総フローにおよぶ影響を考慮して、決定された影響に基づいてターミナルの調整内容を修正または補償することができる。
【0068】
システム10によって実施される予測バランシング方法では、システムの現在の状態でターミナルを調整すべき流量が、他のターミナルをすべて同じように設定した後に当該ターミナルを通る特定の目標気流になるように、各ターミナルのフロー設定点を計算する。この予測バランシング方法は、ターミナルごとの設計仕様の目標気流、システムの現在の状態で各ターミナルを通るフロー、現在の状態でのシステムのすべてのフローを把握した上で、ターミナルが正しく調整されるとして、そのターミナルがシステムの現在の状態に対しておよぼす影響に基づいて、ターミナルごとの調整内容を計算する。ターミナルが調整されると、その結果生じるシステムの状態を、数学的にまたは1つ以上の後の測定によって推定または決定することができ、結果として得られるシステムの状態を使用して、序列の次のターミナルの設定点を計算することができる。
【0069】
所定の順序でターミナルを1つずつ調整することにより、体系的かつ継続的にHVACシステムのバランス調整がなされる。ターミナルごとに調整することで、他のすべてのターミナルの誤差が減るため、全ターミナルが徐々に設計仕様に近づく。序列の最後のダンパーを調整すると、すべての誤差がゼロに近づくかゼロに等しくなり、すべてのターミナルが仕様に合わせて調整される。もちろん、ここで若干の誤差は許容される場合もあるが、これらの値は、選択されたバランス調整モード次第で、たとえば10%、5%、2%、1%または0.5%以下など、非常に小さくなる可能性がある。
予測バランシングの数式
【0070】
参考のために、気流測定システム10が予測バランシング方法を実施する際に行う計算をより詳細に示すために、
図7Aは、D1〜D4で示す4つのターミナル104にファン102からダクト106を介して調和空気が供給されるHVACシステム100の単純な分岐状態の概略図を示している。
図7Aの破線108は、ターミナル104から吐出される調和空気が送られる空間110を画定する一助となる天井を表している。本明細書に記載の方法は、HVACシステムの枝管および/またはターミナルの数に関係なく有効である。
図7Aにおいて、Q1〜Q4はそれぞれターミナルD1〜D4を通るフローを表す。P
0はファン102から吐出される空気の静圧を表し、P
∞はターミナル104から吐出される空気が送られる空間110(たとえば、室など)内の圧力を表す。
【0071】
本発明の予測バランシング方法の動作原理を理解するには、本方法に用いられる数式の誘導と展開を理解することに価値がある。これらの数式において、HVACシステム100の1つのターミナル104への流路にかかる負荷全体を表すのがkファクターである。ターミナルD1〜D4の最初のkファクターであるk
iは、次のように計算される。
【数3】
ΔPはファンにおける静圧(P
0)と室の圧力(P
∞)との間の圧力の低下であり、最終的なkファクターすなわちターミナル調整後のkファクターは、次のように計算される。
【数4】
ここで、iはターミナル番号を表し、keyはダンパーを開いたままにするターミナルを定義する。したがって、ディフューザが4つあるHVACシステムの例では、
【数5】
となり、最終的な圧力の低下ΔP
fは、以下の関係で表される。
【数6】
【0072】
図7Aを参照すると、空気を電気回路になぞらえてターミナル104を流れのある抵抗器と考えることができるため、抵抗器の電気記号で示してある。よって、ターミナル104の「抵抗」は、ディフューザの構成(
図6A〜
図6J参照)やターミナルに付随するダンパーの位置などの要因によって変化する。HVACシステム100をこのように考えると、
図7Bおよび
図7Cは、バランシングの最初の段階(
図7B)と最終段階(
図7C)におけるシステムのフローQ
iおよびkファクターk
iを示す。これらの図を参照し、1)バランシングプロセスで各ダンパーが調整/閉鎖されるにつれて圧力の低下が変化すること、2)キーターミナルのダンパーが調整されずに全開に保たれるため、キーターミナルのkファクター(この例ではk
i)が変化しないことに注意されたい。
【0073】
当業者であれば、電気回路と流体回路が類似のシステムであることを理解するであろう。並列電気回路の抵抗における電圧降下は、次のように計算することができる。
【数7】
電流/流体のフローが類似していることに当てはめると、次の通りである。
【数8】
Q
T=Q
1+Q
2+Q
3+Q
4であるため、
【数9】
(式1)
【数10】
(式2)
となる。
【0074】
上記の数式は、
図7A〜
図7Cに示すターミナルが4つあるシステムのターミナルD2におけるフローを決定するために実行できる計算の例である。しかしながら、システムに何基のターミナルが含まれるかを問わず、図で例示したHVACシステム100のいずれかのターミナルならびに任意のHVACシステムのターミナルにおけるフローを決定するために、これらの数式を修正および/またはアレンジしなおしてもよいことは理解されたい。N基のターミナルを有するHVACシステムでQ
iの解を得るための、システムについての式1および式2を一般化する。
【数11】
(式3)
【数12】
(式4)
【0075】
当業者であれば、ディフューザが4基あるシステムの例に関して本明細書に開示する数式がいずれも上記に従って同様に一般化できることを理解するであろう。圧力は相殺されるため、式1および式4は流量だけに依存することに注意されたい。
【0076】
上述の数式は、気流測定システム10によって実行される本発明の予測バランシング方法で、各ターミナルのダンパーを調整した結果kファクターが変化する際にフローとフロー設定点とを計算するのに用いられる。N個のターミナルを有するHVACシステムにおいて、調整中の任意のターミナル2≦π≦N−1の設定点Q
isおよびQ
Nsを解くために式3を一般化すると、次のようになる。
【数13】
(式5)
【数14】
(式6)
ここで、Q
Tはシステムの総フローを表し、k
bは、ターミナルi+1≦b≦Nおよび1の最初のkファクターを表す。k
fa、k
fc、k
fiはそれぞれ、ターミナル1≦a≦i−1、1≦c≦N−1、iの最終的なkファクターを表す。
【0077】
式5および式6は、すべてのk定数がフロー(Q)だけに関するように変換可能である。
【数15】
(式7)
および
【数16】
(式8)
ここで、Q
Tはシステムの総フローを表し、Q
bおよびQ
1は、ターミナルi+1≦b≦Nの最初のフローを表し、Q
f1、Q
fa、Q
fc、Q
fiはそれぞれ、ターミナル1、1≦a≦i−1、1≦c≦N−1、iの目標フローを表す。
【0078】
さらに、ターミナルiを設定した結果としてのターミナル1、2≦x≦i−1、i+1≦z≦N−1、Nにおける予測フローを解くための数式は、以下のとおりである。
ターミナル1:
【数17】
(式9)
2≦x≦i−1であるターミナルx:
【数18】
(式10)
i+1≦z≦N−1であるターミナルz:
【数19】
(式11)
ターミナルN:
【数20】
(式12)
ここで、Q
Tはシステムの総フローを表し、k
c、k
z、k
w、k
N、k
zはそれぞれ、ターミナルi+1≦c≦N、i+1≦z≦N−1、i+2≦z≦N、N、i+1≦z≦N−1の最初のフローを表す。また、k
f1、k
fx、k
fd、k
fi、k
fv、k
feはそれぞれ、ターミナル1、2≦x≦i−1、2≦d≦i、i、1≦v≦i、1≦e≦i−2の目標フローを表す。
【0079】
式9、式10、式11、式12は、すべてのk定数がフロー(Q)だけに関するように変換可能である。ターミナルiを設定した結果としてのターミナル1、2≦x≦i−1、i+1≦z≦N−1、NにおけるQ
p1、Q
px、Q
pz、Q
pNは、以下のとおりである。
ターミナル1:
【数21】
(式13)
2≦x≦i−1であるターミナルx:
【数22】
(式14)
i+1≦z≦N−1であるターミナルz:
【数23】
(式15)
ターミナルN:
【数24】
(数16)
ここで、Q
Tはシステムの総フローを表し、Q
c、Q
w、Q
N、Q
zはそれぞれ、ターミナルi+1≦c≦N、i+2≦w≦N、N、i+1≦z≦N−1の最初のフローを表す。また、Q
f1、Q
fx、Q
fd、Q
fi、Q
fv、Q
feはそれぞれ、ターミナル1、2≦x≦i−1、2≦d≦i、i、1≦v≦i、1≦e≦i−2の目標フローを表す。
予測バランシングプロセス
【0080】
上記の式を見ると、フローの決定にkファクターを用いる数式(式1、式3、式5、式6、式9、式10、式11、式12)には、同じ計算をするのに測定されたフローを用いる対応の数式(式2、式4、式7、式8、式13、式14、式15、式16)が存在することが理解されよう。したがって、本発明によれば、上記の数式を使用して、ディフューザごとの目標流量と実測流量だけしか与えられないHVACシステムのターミナルのフロー設定点を決定することができる。気流測定システム10で用いられる予測バランシングプロセスで式2、式4、式7、式8、式13、式14、式15、式16を用いることによって、ターミナルごとにフロー設定点を計算できるようになる。
【0081】
当業者であれば、ディフューザに対するそれぞれの調整が、システム内の他のすべてのディフューザのフローに影響することを理解するであろう(これが正しいとは思えない;ダンパーが変化する際の唯一の変化はkである)。したがって、HVACシステムを最も正確にバランス調整するためには、それぞれのターミナルを調整することで生じるkファクターが以後のターミナル調整に対しておよぼす影響を考慮する必要があるであろう。後述するように、気流測定システム10で実施される予測バランシングプロセスは、これらの影響を補償することができる。しかしながら、これを行うには、バランシング操作を実施するHVAC技術者側で追加の時間と労力が必要になる。
【0082】
HVACのバランシング精度は、様々な要因に依存する可能性がある。いくつかの場面では、快適さのレベルを厳密に制御する必要がない場合、たとえば設計フローの±5%から±10%の範囲での粗いバランシングが許容されることがある。他の場面では、バランシング対象となるHVACシステムの特定の特徴が、ターミナル調整によって生じるkファクターの影響を不必要に補う場合もある。これはたとえば、送風機および/またはダクトが特大であるHVACシステムにおいて、ターミナルを調整してもシステムへの負荷に実質的に影響しない場合であり得る。
【0083】
これを考慮して、本発明によれば、気流測定システム10によって実施される予測バランシングプロセスは、このプロセスがターミナル調整によって生じるkファクターの影響を引き起こす度合いに関して様々な精密さで複数のプロセスまたはモードを含むことができる。本明細書に示す例示的な実施形態では、予測バランシングプロセスは、そのようなプロセスまたはモードを3つ含むことができる。すなわち、理想バランシングモード、高速バランシングモード、精密バランシングモードの3つである。
【0084】
図8Aから
図8Cは、これらの異なるモードで実施されるプロセス120を示すハイレベルの流れ図である。予測バランシングプロセス120の理想バランシングモードを
図8Aに示す。予測バランシングプロセス120の高速バランシングモードを
図8Bに示す。予測バランシングプロセス120の精密バランシングモードを
図8Cに示す。プロセス120がどのモードで動作するかにかかわらず、プロセスには、それが機能するために必要な最初のステップが含まれる。これらの最初のステップは、
図8Aから
図8Cにおいて118で示してあるが、以下の要素を含み得る。
・HVACシステム100の仕様データ(たとえば、ターミナル数、ターミナルのタイプ、各ターミナルの目標流量など)を気流測定システム10に入力する。
・HVACシステム100のすべてのターミナルを全開状態にする。
・気流測定システム10を使用してHVACシステム100のターミナルごとに最初の気流測定を行う。
・HVACシステム100のキーターミナルを特定する。
【0085】
プロセス120は、最初のステップ118の間に得られた最初の気流測定値に基づいて、キーターミナルを決定する。「キー」ターミナルは、定義により、最初のフローと目標フローとの比が最も小さいターミナルである。バランシングプロセス全体を通して、プロセスが完了し、HVACシステム100がバランス調整されている場合を含めて、キーターミナルD1は全開のままにされる。これにより、バランス調整されたシステム100が最適な効率で動作することが保証される。ターミナルD2〜D4は、HVAC技術者によってどのバランシングモード(理想、高速または精密)が選択されるかによって決定される方法で、体系的かつ継続的に設定される。「継続的に」とは、ターミナルがプロセス120によって決定された順序で段階的に1つずつ調整されることを意味する。HVACシステムのすべてのターミナルが設定されてシステムがバランス調整されるまで、序列の第1のターミナルが調整され、次が調整されるといった具合に調整がなされる。したがって、バランシングモードはいずれも、ターミナルが調整すなわち「設定」される設定ステップすなわち「SET」ステップを含む。選択されたバランシングモードに応じて、関連するステップは、以下に詳述する読み取りすなわち「READ」ステップ、リセットすなわち「RESET」ステップを含むこともできる。
【0086】
SETステップは、調整中のターミナルを、システム10によって計算されたフロー設定点に設定することを含む。ターミナルを設定するために、気流フード20,60がターミナルと接して配置され、フードによって測定される流量が設定値に等しくなるまでターミナルに付随するダンパーが調整される。READステップはSETステップでの調整後、システムの別のターミナルを通る流れを、気流フード20,60を介して読み取ることを含む。READステップの目的は、調整中のターミナルを設定することが、HVACシステム100の負荷すなわちターミナルのkファクターに対しておよぼす影響を決定するために、前のSETステップで得られたフローを測定し、その測定されたフローを、そのターミナルで以前に記録または計算されたフローと比較することである。RESETステップでは、調整中のターミナルが再計算されたフロー設定点にリセットすなわち再調整される。この再計算された設定点は、READステップで測定された、または計算によって推定されたシステムへの影響に基づくものとすることができる。
予測バランシングプロセス−理想モード
【0087】
HVACシステム100(
図7A〜
図7Cを参照)のバランス調整するための予測バランシングプロセス120の理想バランシングモードを、
図8Aに示す。理想バランシングモードでは、各ターミナルのフロー設定点は、上記の数式に基づいて決定される。理想モードは、いくぶん精度が落ちる可能性があるものの、ターミナルをすみやかにバランス調整すべき状況またはそのようなバランス調整が許容される状況を意味する。理想モードでは、ダクトの急な屈曲/遷移が最小限である、背圧が生じても簡単にこれをなくすことのできる大型のファンや送風機があるなど、フローがそれほど複雑ではないためターミナルを調整しても枝管のkファクターが比較的一定に保たれるHVACシステムを想定している。理想モードでは、各ターミナルの設定点は、調整仲のターミナルよりも前に設定されたフローと最初に測定されたフローだけに基づいて決定される。
最初のステップ
【0088】
予測バランシングプロセス120の理想バランシングモードを実施すると、システム10は、気流フード20,60のスマートデバイス74またはユーザーインタフェース40を介して、タスクを実行するようにユーザーに指示する。理想バランシングモードでは、予測バランシングプロセス120は、最初のステップ118で開始される。最初のステップ118の間、システム10は、HVACシステム100のターミナル数、ターミナルごとの目標流量などのシステム情報を入力するようにユーザーに指示する。また、最初のステップ118の間、システム10は、
図6Aから
図6Jに示す各ターミナルのタイプまたは構成などの追加の情報を入力するようにユーザーに促すこともできる。HVACシステム100ができるだけ効率的にバランス調整されるようにするために、システム10は、ターミナルD1〜D4がすべて全開状態に調整されるようにユーザーに指示する。システム10はさらに、気流フード20,60を使用して、各ターミナルD1〜D4の最初の流量測定値を得るようにユーザーに指示する。この例で説明するために、これらの最初のフローの読み取り値を、以下のようにすることができる。
【数25】
【0089】
HVACシステム100によって空間110に吐出される総気流量は、以下のように定量化することができる。
【数26】
ここで、iは各ターミナルの番号、Nはターミナルの総数(この場合、4)を表す。総流量Q
Tを用いてフロー比を決定することができる。
【数27】
【0090】
HVACシステム100のバランス調整をするために、各ターミナルで目標フローQ
fiが必要になる。HVACシステム100の場合、目標フローは、システムを設計したHVAC建築家/エンジニアによって指定される。たとえば、最初のステップ118においてユーザーが入力する、
図7Aから
図7Cに示すシステムの目標フローは、各ディフューザ104で450cfmとすることができる。
【数28】
よって、トータルの目標フローは以下のようになる。
【数29】
最初の実測フローと目標フローとの比を、以下のように決定することができる。
【数30】
【0091】
プロセス120の最初のステップ118の間に得られた情報に基づいて、システム10は、キーターミナルを、最初に測定されたフローが目標フローに最も近いターミナルすなわちフロー対目標フロー比が最も小さいターミナルとして特定する。この例では、ターミナルD1のフロー対目標フロー比が最も小さい0.61である。キーターミナルが特定されると、システム10は、最初に測定されたフロー対目標フロー比に基づいて、残りのターミナルをフロー比が大きい順に並べる。これは重要ではないが、バランシングプロセス全体でダンパー調整の分解能を最大にするのに役立つため、いくらか重要であると考えることができる。比が最も大きいターミナルではダンパーを最も多く調整する必要があるため、以後のバランシングステップで他のダンパーに影響して誤差が生じる可能性を下げるためには、これらのターミナルのバランス調整を最初にするのがベストであるが、必須ではない。
【0092】
ターミナルD2、D3、D4はそれぞれ、最初のフローと目標フローの比が1.53、1.40、1.39である。したがって、ターミナルD2が最初に調整されるターミナルである。ターミナルD3とターミナルD4の比は本質的に同一であるため、厳密にその比の順番にせずにD3の次にD4という順で調整することも許容できる。システム10は、D4を調整した後にD3を調整するようにユーザーに指示するが、所定の順序をユーザーが上書きして、所望の順序で調整できるようにシステムを構成することができる。
【0093】
予測バランシング方法によれば、他のすべてのターミナルが調整されると、システムバランスに対応する、システム100の現在の状態に対するそのターミナルにおけるフローを達成するように各ターミナルが調整される。したがって、各ターミナルで調整すべきフローは、予測バランシング方法120を実施するシステム10が予測するフローであり、他のすべてのターミナルが調整されると、そのターミナルで目標フローQ
fiが達成されることになる。この方法によれば、最後のターミナル(本例ではD4)のバランシングによって、HVACシステム100全体のバランス調整がなされる。
【0094】
図8Aは、予測バランシングプロセス120の理想モードの特徴であるSETパターンを示す。プロセス120の高速モードによれば、ターミナルD2は、SETステップ122において、本明細書に開示する数式に従って計算されて最初の実測流量と目標流量とに基づく設定点に調整される。次に、SETステップ122でターミナルD2を調整したことに起因するターミナルD3のフローが推定/計算され、ターミナルD3の設定点を計算するために使用される。ターミナルD3は、SETステップ130でその設定点に調整される。
【0095】
プロセス120の理想バランシングモードにおけるSETステップの、この体系的なパターンは、システムのサイズやシステムのターミナル数とは関係なく、最後のターミナルに至るまでHVACシステム100のすべてのターミナルで同じようにして継続される。図示のHVACシステム100では、設定対象となる最後のターミナルはターミナルD4である。この時点でシステム100はバランス調整され、プロセスはステップ142に進むことができる。ここで、バランス調整されたフローが目標どおりになるようにファンの速度が調整される。
ターミナル2のSET
【0096】
全開状態のターミナル104から得られる最初の読み取り値と関連して上述した数式を使用し、この例のキーターミナルであるD1が全開状態のままであることを想起すると、設定対象となる最初のターミナルは、目標比が最も小さいターミナルである。再び
図8Aを参照すると、ターミナルD2を通る気流がSETステップ122で設定される。システム10は、以下のようにして、式5(または式7)を使用してターミナルD2のフロー設定点Q
S2を計算し、式13、式14、式15、式16(または式9、式10、式11、式12)を使用して、結果として生じる予測フローQ
Pl=1,3,4を計算する。
【数31】
【0097】
気流フード20,60のユーザーインタフェースを介して、システム10は、フードを用いて測定されるフローがフロー設定点Q
s2に等しくなるまでターミナルD2を調整するようにユーザーに指示する。このようにしてターミナルD2が設定される(SETステップ122完了)。ターミナルD2を設定した結果、他のターミナルD1、D3、D4を通る流量は、それぞれ予測流量Q
p1、Q
p3、Q
p4に調整されるべきである。予測バランシングプロセス120によれば、システムは、ターミナルD2を設定することによって生じる新たな予測総フローQ
pTを計算する。
【数32】
ここで、Q
pjは他のターミナルの予測フロー、bは他のターミナルの総数である。
ターミナル3のSET
【0098】
ターミナルD2を設定すると、次にターミナルD3を調整することができ、プロセス120はSETステップ130に進む。式7(または5)を使用して、
図8Aに示すように、SETステップ130でターミナルD3をQ
S33に設定する(「33」はターミナルD3のフローが2回目に計算されたことを示す)。
【数33】
他のターミナルでの気流は、式13、式14、式16(または式9、式11、式13)を使用して、ターミナルD3を閉じることの影響に基づいて予測される。
【数34】
総フローは、新たに計算されたフローに基づいて予測される。
【数35】
ターミナル4のSET
【0099】
ターミナルD2およびD3を設定すると、次にターミナルD4を調整することができ、プロセス120はSETステップ136に進む。式8(または式6)を使用して、SETステップ136でターミナルD4をQ
S444に設定する(「444」はターミナルD4のフローが3回目に計算されたことを示す)。
【数36】
他のターミナルでの気流は、式13および式14(または式9および式10)を使用して、ターミナルD4を閉じることの影響に基づいて予測される。
【数37】
総フローは、新たに計算されたフローに基づいて予測される。
【数38】
【0100】
この時点で、ターミナルD1〜D4は、釣り合いのとれた状態でバランス調整されている。図示の例では、釣り合いのとれた状態でバランス調整され、ターミナルD1〜D4のフローがすべて等しくなる。ターミナルを通るフローは、釣り合いのとれた状態でバランス調整されているが、いずれも目標流量である450cfmより高くなっている。これを修正するために、プロセス120はステップ142に進み、気流フード20,60を使用してターミナルD1〜D4のいずれかを通る気流を監視しつつ、HVACシステム100のファンまたは送風機(
図7A〜
図7Cを参照)を調整する。監視対象となるターミナルで目標流量(450cfm)を読み取ると、他のターミナルでも目標流量で空気を吐出し、バランシングプロセス120が完了する。
【0101】
上記から、システム10は、気流測定装置20,60を介して予測バランシングプロセス120の理想モードを実施することが理解されるであろう。これを行うために、システム10は、HVACシステム100のバランス調整をするために必要なタスク(たとえば、気流測定装置20,60の操作または当該装置へのデータの入力など)を行うようにユーザーに指示する。このようにして、理想バランシングモードでは、システム10は、最初のステップ、(システム100のターミナル数に応じて)必要な回数のSETステップ、最後の送風機調整ステップを行うようにユーザーに促す。
予測バランシングプロセス−高速モード
【0102】
HVACシステム100(
図7A〜
図7Cを参照)のバランス調整をするための予測バランシングプロセス120の高速モードを、
図8Bに示す。高速モードでは、各ターミナルのフロー設定点は、上記の数式に基づいて決定される。高速モードは、配管システムの突然の移り変わりと背圧が上昇した結果としてのシステム全体のフローの減少が枝管でのkファクター子の変化を引き起こす可能性のある場面を意味する。高速モードでは、後述するように後続のターミナルでの補償を可能にするREADステップをプロセスに実装することによって、これらの誤差の原因を補償することができる。
最初のステップ
【0103】
予測バランシングプロセス120の高速バランシングモードを実施すると、システム10は、気流フード20,60のスマートデバイス74またはユーザーインタフェース40を介して、タスクを実行するようにユーザーに指示する。高速モードでは、予測バランシングプロセス120は、最初のステップ118で開始される。このステップで、システム10は、システム情報(ターミナル数、目標流量、ターミナルのタイプ/構成)を入力し、すべてのターミナルが全開になるようにして、各ターミナルから最初のフローの読み取り値を得るようにユーザーに指示する。
【0104】
異なるモードを比較するために、本明細書では、理想バランシングの例に関して上述したシステムと同一のシステムにおける予測バランシングプロセスの高速モードの例示的な性能を説明する。よって、高速モードの実例では、同じターミナル構成(D1〜D4)、ターミナルを通る同じ最初の実測フロー、ターミナルごとの同じ目標フローを仮定する。ターミナルの最初のフロー比も同じであり、高速バランシングモードの例では、ターミナルバランシングの順序も同じように規定される。
【0105】
高速モードで実施される全体的なバランシング戦略は、他のモードと本質的に同じである。すなわち、いったんすべての他のターミナルが調整されると、システムバランスに対応する、システム100の現在の状態に対するそのターミナルにおけるフローを達成するように各ターミナルが調整される。したがって、各ターミナルで調整すべきフローは、予測バランシング方法120の高速モードを実施するシステム10が予測するフローであり、他のすべてのターミナルが調整されると、そのターミナルで目標フローQ
fiが達成されることになる。この方法によれば、最後のターミナル(本例ではD4)のバランシング調整によって、HVACシステム100全体のバランス調整がなされる。高速モードは、READステップによって、調整中のターミナルの調整が残りのターミナルのkファクターとシステムの総フローに対しておよぼす影響をいくらか補償する点で、理想モードとは異なる。
【0106】
図8Bは、予測バランシングプロセス120の高速モードの特徴であるSET−READパターンを示す。プロセス120の高速モードによれば、ターミナルD2は、SETステップ122において、本明細書に開示する数式に従って計算され、最初の実測流量と目標流量とに基づいている設定点に調整される。次に、ターミナルD3における予測フローおよび実測フローに関連する誤差比を考慮して、READステップ124でターミナルD3を通る実測フローが取得され、ターミナルD3の設定点の計算に用いられる。ターミナルD3は、SETステップ130でその設定点に調整される。
【0107】
プロセス120の高速バランシングモードにおけるステップの、このSET−READパターンは、システムのサイズやシステムのターミナル数とは関係なく、最後のターミナルに至るまでHVACシステム100のすべてのターミナルで同じようにして継続される。図示のHVACシステム100では、設定対象となる最後のターミナルはターミナルD4である。この時点でシステム100はバランス調整がなされており、プロセスがステップ142に進んでバランス調整のなされたフローが目標どおりになるようにファンの速度が調整される。
ターミナル2のSET
【0108】
実際、高速バランシングモードで最初のターミナル(この例では、ターミナルD2)を調整することは、理想バランシングモードで最初のターミナルを調整することと同じである。
図8Bを参照すると、SETステップ122でターミナルD2が設定される。システム10は、式7(または式5)を使用してターミナルD2のフロー設定点Q
S2を計算し、式13、式14、式15、式16(または式9、式10、式11、式12)を使用して、結果として得られる予測フローQ
plを次のように計算する。
【数39】
【0109】
気流フード20,60のユーザーインタフェースを介して、システム10は、フードを用いて測定されるフローがフロー設定点Q
S2に等しくなるまでターミナルD2を調整するようにユーザーに指示する。このようにしてターミナルD2が設定される(SETステップ122完了)。ターミナルD2を設定した結果、他のターミナルD1、D3、D4を通る流量は、それぞれ予測流量Q
p1、Q
p3、Q
p4に調整されるべきである。予測バランシングプロセス120によれば、システムは、ターミナルD2を設定することによって生じる新たな予測総フローQ
pTを計算する。
【数40】
ここで、Q
pjは他のターミナルの予測フロー、bは他のターミナルの総数である。
【0110】
しかしながら、本発明によって実施される方法は、すべてのターミナルが全開で始まり、ターミナルのダンパーを体系的に閉じることによって調整が行われるため、これらの調整によってHVACシステムの負荷が増大する。
図9におけるファンカーブの例に示すように、システムの負荷が大きくなると、システム全体のフローが落ちる場合がある。
図9に示すように、ターミナルのダンパーが閉じる形で調整されると、システム圧力がP
1からP
2に増加し、その結果、Q
1からQ
2にフローが低下することになる。予測バランシング方法の高速バランシングモードは、バランシング手順のSETステップ中にターミナルのダンパーを調整して生じるシステムにおけるフローの低下を補償する。
【0111】
ターミナルD2を設定することに起因するHVACシステム100の変化を、
図10Aおよび
図10Bに示す。
図10Aは、フロー設定点Q
S2を達成するようにターミナルD2を設定する前に、変化のないシステム100を示す。
図10Bは、ターミナルD2を設定することに起因するターミナルD2−Q
S2におけるフローを示す。ターミナルD2を設定することに起因するターミナルD1、D3、D4のフローはそれぞれ、Q
c1、Q
c3、Q
c4である。ターミナルD2を設定することによって生じるターミナルD1〜D4のkファクターは、それぞれk
1、k
2f、k
3、k
4である。
図10Bに示すように、システムの総フローQ
Tcおよび圧力P
ocは、ターミナルD2の設定の結果として変化する。
ターミナルD3のREADとターミナルD3のSET
【0112】
予測バランシングプロセス120の高速モードによれば、ターミナルD2の調整に起因するHVACシステム100のフローの低下は、調整が行われた後のシステムの別のターミナルで測定されるフローの低下で近似することができる。予測バランシングプロセス120の高速モードは、READステップ124(
図8B参照)でこれを実行し、そこでユーザーは、気流測定装置20,60を使用してターミナルD3でのフロー(Q
m3)を測定するように指示される。
【0113】
システム10は、この測定された流量Q
m3をそのターミナルの予測フローQ
p3と比較して、SETステップ122でターミナルD2を調整したことに起因するHVACシステム100のフローの低下を推定する。ターミナルD3での実測フローと予測フローとの比を使用して、新たな総フローを計算することができる。
【数41】
ここで、Q
Trは、ターミナルD2をQ
s2に設定することに起因する総フローの予測である。
【0114】
ターミナルD2を調整し、それによってファンカーブの影響によるHVACシステム100全体の負荷を変化させると、各ターミナルのフロー比も変化する。
【数42】
ファンカーブによる影響を説明するには、フロー予測も調整する必要がある。
【数43】
【0115】
システムの各ターミナルへの流路の動力学が変化するため、kファクターも調整する必要がある。本明細書で言及して使用するkファクターは、エルボー、ダンパーなどの単一の構成要素に付随するものではなく、HVACシステム100内でのフローの剥離、再循環領域、フローの分割に付随するターミナルでのロスに関連している。修正されたkファクターは、以下のように計算される。
【数44】
ここで、ΔP
r=P
oc−P
∞である。最後のkファクターk
ftrも、システムのフローの動力学が変化した結果として変更を促される。
【数45】
【0116】
図8Bを参照すると、プロセス120はSETステップ130に進み、ターミナルD3が、ターミナルD2を調整したことと、その結果として生じる枝管でのkファクターの変動に起因するフローの低下を引き起こすフロー設定点に調整される。設定点Q
S33は、式7(または式5)を用いて決定される。
【数46】
リセット予想フロー(Q
plr)は、式13、式14、式16(または式9、式10、式12)を用いて決定される。
【数47】
リセット後の上記予想に基づく、リセット後の新たな予測総フローQ
pTrは次のとおりである。
【数48】
【数49】
もとの予測総フローと比較する。
ターミナルD4のREADとターミナルD4のSET
【0117】
ターミナルD2を設定することに起因するフローの低下と同様に、ターミナルD3を設定することに起因するフローの低下も、調整後のシステムにおける他のターミナルでのフローの低下の差として近似することができる。したがって、プロセス120は、READステップ132(
図8B参照)に進み、ここで、ターミナルD4のフローが測定され(Q
m44)、予測フロー(Q
p44)と比較される。
【数50】
【0118】
ターミナルD4での実測フローと予測フローとの比を使用して、新たな総フローを計算することができる。
【数51】
ここで、Q
Trrは、ターミナルD3をQ
s33に設定することに起因する、新たな予測総フローである。
【0119】
次に、精度を維持するために、ターミナルD4の実測フロー(Q
m44)と、ターミナルD3を閉じることに基づいて予測されたターミナルD4(Q
p44)との間の誤差が決定される。
【数52】
Err
4が1%より大きい場合、フロー比が再計算され(r
irr)、ターミナル3がリセットされる。
【数53】
フロー設定点は、再調整される(Q
irr)。
【数54】
kファクターはリセットされる(k
lrrおよびk
flrr)。
【数55】
【0120】
図8Bを参照すると、プロセス120はSETステップ136に進み、ここで、ターミナルD3の調整に起因するフローの低下と、これによって生じる枝管でのkファクターの変動のもとになるフロー設定点にターミナルD4が調整される。設定点Q
s444は、式8(または6)を用いて決定される。
【数56】
リセット予測フロー(Q
plll)は、式13および式14(または式9および式10)を使用して決定される。
【数57】
総フローは、新たに予測されたフローに基づいて予測される。
【数58】
【0121】
この時点で、ターミナルD1〜D4は、釣り合いのとれた状態でバランスに調整されている。図示の例では、釣り合いのとれた状態でバランス調整され、ターミナルD1〜D4のフローがすべて等しくなる。ターミナルを通るフローは、釣り合いのとれた状態でバランス調整されているが、いずれも目標流量である450cfmより高くなっている。これを修正するために、プロセス120はステップ142に進み、気流フード20,60を使用してターミナルD1〜D4のいずれかを通る気流も監視しつつ、HVACシステム100のファンまたは送風機(
図7A〜
図7Cを参照)を調整する。監視対象となるターミナルで目標流量(450cfm)を読み取ると、他のターミナルでも目標流量で空気を吐出し、バランシングプロセス120が完了する。予測バランシングプロセス120の高速バランシングモードは、高速かつ正確であるため、好ましいモードまたはデフォルトモードとすることができる。
【0122】
都合の良いことに、前のターミナルでのSETステップからのフローおよびkファクターの影響を補償するのに使用されるREADステップは、調整中の次のターミナルで行われる。たとえば、ターミナルD2のSETステップの後になされるREADステップは、調整中の次のターミナルでもあるターミナルD3で実行される。したがって、次のSETステップを実行するためには、このターミナルに気流測定装置20,60を配置する必要があるので、READステップもそのターミナルで行われることは偶然である。さらに、SETステップを実行するには、気流測定装置20,60をターミナル上に配置し、位置がユーザー入力を介してシステム10に認識される必要があるため、この位置検証を使用して、差し迫ったSETステップのための設定点を計算するのに用いられるREADステップを始動させることができる。したがって、予測バランシングプロセス120の高速モードの実施には、ユーザー側で追加の時間または労力を実質的に必要としない。
【0123】
上記から、システム10は、気流測定装置20,60を介して予測バランシングプロセス120の高速モードを実施することが理解されるであろう。これを行うために、システム10は、HVACシステム100のバランス調整をするために必要なタスク(たとえば、気流測定装置20,60の操作または当該装置へのデータの入力など)を行うようにユーザーに指示する。このようにして、高速バランシングモードでは、システム10は、最初のステップ、(システム100のターミナル数に応じて)必要な回数のSETステップおよびREADステップ、最後の送風機調整ステップを行うようにユーザーに促す。
予測バランシングプロセス−精密モード
【0124】
HVACシステム100(
図7A〜
図7Cを参照)のバランス調整をするための予測バランシングプロセス120の精密モードを、
図8Cに示す。精密バランシングモードは、高速モードで提供される補償に加えてkファクターの影響を補償し、さらにバランス調整の精度を向上させる。これは、READステップで推定されたkファクターの影響に基づいて調整中のターミナルを再調整することを含む、RESETステップを導入することによって行われる。精密バランシングモードでは、プロセス120は、ターミナルを調整し、それに応じてその同じターミナルへの調整を修正した結果として、システムの変化を予測することができる。
最初のステップ
【0125】
精密バランシングモード(
図8C)における予測バランシングプロセス120の最初のステップ118は、理想モードおよび高速モード(それぞれ
図8Aおよび
図8B)の最初のステップと同様または同一である。予測バランシングプロセス120の精密バランシングモードを実施すると、システム10は、気流フード20,60のスマートデバイス74またはユーザーインタフェース40を介して、タスクを実行するようにユーザーに指示する。精密モードでは、予測バランシングプロセス120は、最初のステップ118で開始される。このステップで、システム10は、システム情報(ターミナル数、目標流量、ターミナルのタイプ/構成)を入力し、すべてのターミナルが全開になるようにして、各ターミナルから最初のフローの読み取り値を得るようにユーザーに指示する。
【0126】
異なるモードを比較するために、本明細書では、理想モードと高速モードのバランシングの例に関して上述したシステムと同一のシステムにおける予測バランシングプロセスの精密モードの例示的な性能を説明する。よって、精密モードの実例では、ターミナルD1〜D4、ターミナルを通る同じ最初の実測フロー、ターミナルごとの同じ目標フローを仮定する。ターミナルの最初のフロー比も同じであり、精密バランシングモードの例では、ターミナルバランシングの順序も同じように規定される。
【0127】
精密モードで実施される全体的なバランシング戦略は、他のモードと本質的に同じである。すなわち、いったんすべての他のターミナルが調整されると、システムバランスに対応する、システム100の現在の状態に対するそのターミナルにおけるフローを達成するように各ターミナルが調整される。したがって、各ターミナルで調整すべきフローは、予測バランシング方法120の精密モードを実施するシステム10が予測するフローであり、他のすべてのターミナルが調整されると、そのターミナルで目標フローQ
fiが達成されることになる。この方法によれば、最後のターミナル(本例ではD4)のバランシングによって、HVACシステム100全体のバランス調整がなされる。精密モードは、READステップおよびRESETステップによって、調整中のターミナルの調整が残りのターミナルのkファクターに対しておよぼす影響がさらに補償される点で、理想モードおよび高速モードとは異なる。
【0128】
図8Cは、予測バランシングプロセス120の精密モードの特徴であるSET−READ−RESETパターンを示す。プロセス120の精密モードによれば、ターミナルD2は、SETステップ122において設定点に調整され、ターミナルD3を通るフローはREADステップ124で測定され、ターミナルD2は、RESETステップ126で、ターミナルD3の予測フローと実測フローとの誤差比を考慮するために再計算された設定点に再調整される。実測フローは、READステップ124の間に得られるフロー測定値である。次に、SETステップ130でターミナルD3が計算された設定値に調整され、ターミナルD4を通る流れがREADステップ132で測定され、ターミナルD3は、RESETステップ134で、ターミナルD4の予測フローと実測フローとの誤差比を考慮するために再計算された設定点に再調整される。実測フローは、READステップ132の間に得られるフロー測定値である。
【0129】
プロセス120におけるステップの、このSET−READ−RESETパターンは、システムのサイズやシステムのターミナル数とは関係なく、最後のターミナルに至るまでHVACシステム100のすべてのターミナルで同じようにして継続される。図示のHVACシステム100では、設定対象となる最後のターミナルはターミナルD4である。ターミナルD4に至ると、プロセス120は、次のように進行する。ターミナルD4がSETステップ136で調整され、ターミナルD3を通るフローがREADステップ138で測定され、ターミナルD4がRESETステップ140で再調整される。同じSET−READ−RESETパターンで実行されるが、これは、ターミナルD4のRESETステップ140を実行するための誤差比を決定するのに使用される、READステップ138の前のターミナルD3を使用して、いわば「後ろに向かって」行われる。この時点でシステム100はバランス調整され、プロセスがステップ142に進むことができる。ここで、バランス調整されたフローが目標どおりになるようにファンの速度が調整される。
ターミナルD2のSET、ターミナルD3のREAD、ターミナルD2のRESET
【0130】
ターミナルD2を通るフローは、まず、理想モードおよび高速モードにおいて上述した方法と同じ方法で、SETステップ122に従って調整される。ターミナルD2を設定した後、ターミナルD3を通るフローはREADステップ124で測定され、そのターミナルでのフローの低下を決定するのに使用される。ターミナルD3でのフローの低下は、調整で生じると予測されたフロー(Q
p3)と調整によって生じた実際の測定されたフロー(Q
m3)との差として近似される。フローの低下は、調整中のターミナル以外のシステム内のどのターミナルでも近似することができるが、kファクターが最も小さいターミナルを選択することにより、補正のための最高解像度が保証される。図示の例では、これはターミナルD3であるので、ターミナルD3が使用される。
【0131】
ターミナルD3における実測フローと予測フローとの比を使用して、新たな予測総フローを計算することができる。
【数59】
ここで、Q
Trは、ターミナルD2をQ
S2に設定することによって生じる総フローの予測値である。ダンパーを閉じることによるシステムに対する影響は、以下のように計算される。
【数60】
Err
3が所定の値、たとえば1%より大きい場合、精度を維持するためにターミナルD2をリセットすることが妥当である。この例では、ターミナルD2のリセットが妥当である。
【0132】
ターミナルD2を調整し、それによってファンカーブ効果によるHVACシステム100全体の負荷が変化した結果として、各ターミナルのフロー比も変化する
【数61】
ファンカーブの影響を考慮して、フローの予測値も調整する必要がある。
【数62】
【0133】
また、システムの各ターミナルへの流路の動力学が変化する結果、kファクターも調整する必要がある。修正されたkファクターは、以下のように計算される。
【数63】
最後のkファクターであるk
firも、システムのフローの動力学が変化した結果として変更を促される。
【数64】
【0134】
前の段落に示した式において決定された再計算値を使用して、ターミナルD2を通るフローは、RESETステップ126で修正された設定点(Q
S2r)に調整される。修正された設定点は、式7(または5)を用いて以下のように計算される。RESETステップ126でなされるターミナルD2へのフロー調整は、READステップ124でターミナルD3を介して測定される、SETステップ122で行われる最初のターミナルD2の調整に起因する推定フローの低下を引き起こす。
【数65】
ターミナルD2をリセットするには、式13、式14、式15、式15(または式9、式10、式11、式12)を使用して以下に示すように計算される、修正予測フロー(Q
Plr)を必要とする。比較のために、ターミナルごとに前に予測されたフロー(Q
plll)も示す。
【数66】
リセット後の上記予想に基づく、リセット後の新たな予測総フローは次のとおりである。
【数67】
もとの予測総フローと比較する。
【数68】
【0135】
この時点で、予測バランシングプロセス120の精密モードを通じて、ターミナルD2を通るフローは、調整によって生じるシステム負荷の変化を補償する値に調整される。ターミナルD2の調整されたフローと、残りの端末のための新たな予測フローを使用して、ターミナルD3を同様に調整することができる。
ターミナルD3のSET
【0136】
ステップ122および126でそれぞれターミナルD2をSETおよびRESETすると、ターミナルD3を調整する準備ができる。なぜなら、このターミナルが次にフロー対目標比が小さいからである。プロセス120は基本的に、
図8Cに示すように、ターミナルD2を調整するのに使用されるステップ、すなわちSET、READ、RESETを繰り返す。SETステップ130を実行するために、システム10は、気流フード20,60をターミナルD3に移動するようにユーザーに指示する。気流フード20,60がターミナルD3の適所にあることをユーザーが(たとえば、気流フード20,60のユーザーインタフェース40またはスマートデバイス74を介して)確認すると、システム10は、フードの配置を利用して、ターミナルD3の気流測定を行い、ターミナルD2のRESETステップ126から得られるターミナルを流れる実際の流量を測定することができる。リセット後のこの測定されたターミナルD3のフローQ
m3rは、ターミナルD2の調整がゆえにシステムに生じる変化を引き起こす。
【数69】
リセット後のD3実測フローQ
m3rと過去の実測D3フローQ
m3との比を使用して、新たな予測全システムフローQ
Trrを決定する。
【数70】
ここで、Q
Trrは、ターミナルD2をQ
S2rに調整することに起因する新たな予測全システムフローである。
【0137】
精度を維持するために、予測ターミナルD3フローQ
p3rとリセット後の実際のターミナルD3実測フローQ
m3rとの間の誤差を決定することができる。
【数71】
Err
3が1%などのあらかじめ定められた閾値誤差より大きい場合、フロー比が再計算され(r
lrr)、
【数72】
フロー設定点が再調整され(Q
lrr)、
【数73】
kファクターが再計算される(k
lrrおよびk
flrr)。
【数74】
【0138】
図8Cを参照すると、プロセス120はSETステップ130に進み、ターミナルD2を調整したことと、その結果として生じる枝管でのkファクターの変動に起因するフローの低下を補償するフロー設定点にターミナルD3を調整するように、システム10がユーザーに指示する。設定点Q
S33は、式7(または式5)を使用し、新たに測定された実フロー(Q
m3r)に基づいて計算される値を用いて決定される。
【数75】
式13、式14、式16(または式9、式10、式12)を使用して、ターミナルD3を閉じたことによる影響に基づいて、他のターミナルにおける気流が予測される。
【数76】
総フローは、これらの新たな予測フローに基づいて予測される。
【数77】
ターミナルD4のREADとターミナルD3のRESET
【0139】
ターミナルD2を調整することに起因するフローの低下と同様に、ターミナルD3を調整することに起因するフローの低下も、調整後のシステムにおける他のターミナルでのフローの低下の差として近似することができる。kファクターが最も小さいターミナルを選択することにより、補正のための最高解像度が保証される。図示の例では、これはターミナルD4である。SETステップ130でターミナルD3を調整すると、プロセス120はREADステップ132に進み、システム10がターミナルD4のフロー(Q
m44)を測定するようにユーザーに指示する。
図8Cの例では、実測ターミナルD4フローQ
m44および過去の予測ターミナルD4フローQ
p44は、次のとおりである。
【数78】
【0140】
ターミナルD4での実測フローと予測フローとの比を使用して、新たな総フロー(Q
Trrr)を計算することができる。
【数79】
ここで、Q
Trrrは、ターミナルD3をQ
s33に設定することに起因する、新たな予測総フローである。
【0141】
次に、精度を維持するために、ターミナルD4の実測フロー(Q
m44)と、ターミナルD3を閉じることに基づいて予測されたターミナルD4(Q
p44)との間の誤差が決定される。
【数80】
Err
4が1%より大きい場合、フロー比が再計算され(r
irrr)、ターミナル3がリセットされる。
【数81】
フロー設定点は、再調整される(Q
irrr)。
【数82】
kファクターはリセットされる(k
lrrrおよびk
flrrr)。
【数83】
【0142】
READステップ132でターミナルD4を通るフローを測定した後、プロセスはRESETステップ134へ進み、気流フード20,60をターミナルD3に配置するようユーザーに指示する。気流フード20,60がターミナルD3に配置されたことをユーザーが確認すると、システム100は、ターミナルD3をリセット計算フロー設定点Q
S33r(式7(または式5)、下記参照)に調整するようにユーザーに指示する。リセットステップ134でターミナルD3を調整するには、READステップ132で得られた実測D4フローを使用し、SETステップ130でのターミナルD3の調整で生じるフローの低下を補償する。
【数84】
ターミナルD3をリセットするには、式13、式14、式16(または式9、式10、式12)を使用して以下に示すように計算される、修正予測フロー(Q
Pllr)を必要とする。比較のため、ターミナルごとに前に予測されたフロー(Q
pll)も示す。
【数85】
新たな予測フローに基づいて、総フローを予測する。
【数86】
ターミナルD4のSET
【0143】
ステップ130および134でそれぞれターミナルD3をSETおよびRESETすると、ターミナルD4を調整する準備ができる。なぜなら、このターミナルが次にフロー対目標比が小さいからである。繰り返すが、プロセス120は基本的に、
図8Cに示すように、ターミナルD2およびD3を調整するのに使用されるステップ、すなわちSET、READ、RESETを繰り返す。SETステップ136を実行するために、システム10は、気流フード20,60をターミナルD4に移動するようにユーザーに指示する。気流フード20,60がターミナルD4の適所にあることをユーザーが(たとえば、気流フード20,60のユーザーインタフェース40またはスマートデバイス74を介して)確認すると、システム10は、フードの配置を利用して、ターミナルD4の気流測定を行い、ターミナルD3のRESETステップ134から得られるターミナルを流れる実際の流量を測定することができる。リセット後のこの測定されたターミナルD4のフローQ
m44rは、ターミナルD3の調整がゆえにシステムに生じる変化を引き起こす。
【数87】
リセット後のD4実測フローQ
m44rと実測D4フローQ
m44との比を使用して、新たな予測全システムフローQ
Trrrrを決定する。
【数88】
ここで、Q
Trrrrは、ターミナルD3をQ
S33rに調整することに起因する新たな予測全システムフローである。
【0144】
次に、精度を維持するために、予測ターミナルD4フローQ
p44rとリセット後の実際のターミナルD4実測フローQ
m44rとの間の誤差を決定することができる。
【数89】
Err4が1%などのあらかじめ定められた閾値誤差より大きい場合、フロー比が再計算され(r
lrrrr)、
【数90】
フロー設定点が再調整され(Q
lrrrr)、
【数91】
kファクターが再計算される(k
lrrrrおよびk
flrrrr)。
【数92】
【0145】
図8Cを参照すると、プロセス120はSETステップ136に進み、ターミナルD3を調整したことと、その結果として生じる枝管でのkファクターの変動に起因するフローの低下を補償するフロー設定点にターミナルD4を調整するように、システム10がユーザーに指示する。設定点Q
S444は、式8(または式6)を使用し、新たに測定された実フロー(Q
m44r)に基づいて計算される値を用いて決定される。
【数93】
式13および式14(または式9および式10)を使用して、ターミナルD4を閉じたことによる影響に基づいて、他のターミナルにおける気流が予測される。
【数94】
総フローは、これらの新たな予測フローに基づいて予測される。
【数95】
ターミナルD3のREADとターミナルD4のRESET
【0146】
ターミナルD2およびD3を調整することに起因するフローの低下と同様に、ターミナルD4を調整することに起因するフローの低下も、調整後のシステムにおける他のターミナルでのフローの低下の差として近似することができる。ターミナルD4は調整される最後のターミナルであるため、
図8Cに示すように、予測バランシングプロセス120のパターンはいくぶん逸れている。SETステップ136でターミナルD4を調整すると、プロセス120はREADステップ138に進み、システム10がターミナルD3のフロー(Q
m333)を測定するようにユーザーに指示する。
図8Cの例では、実測ターミナルD4フローQ
m333および過去の予測ターミナルD4フローQ
p333は、次のとおりである。
【数96】
【0147】
ターミナルD3は、ターミナルD4に最も近く容易に到達できるであろうことから、純粋に便宜上測定されることに留意されたい。このステップでは、ターミナルD1〜D3のどれを使用しても構わない。ターミナルを通るフローが測定されると、総フローが再び決定される。
【数97】
Q
Trrrrrは、ターミナルD4をQ
S444に設定することに起因して予測される総フローである。ターミナルD4をリセットする必要があるか否かを決定するために、再びErr
4が計算される。
【数98】
【0148】
READステップ138でターミナルD3を通るフローを測定した後、プロセスはRESETステップ140へ進み、気流フード20,60をターミナルD4に配置するようユーザーに指示する。気流フード20,60がターミナルD3に配置されたことをユーザーが確認すると、システム100は、ターミナルD4をリセット計算フロー設定点Q
S444r(式8(または6)、下記参照)に調整するようにユーザーに指示する。リセットステップ140でターミナルD4を調整するには、READステップ138で得られた実測D3フローを使用し、SETステップ136でのターミナルD4の調整で生じるフローの低下を補償する。
【数99】
ターミナルD4をリセットすると、ターミナルD4の調整に起因するフローの低下を引き起こす。ターミナルD4は調整対象となる最後のターミナルであるため、D4リセットフロー設定点Q
S444rとリセット予測フローQ
plllr(下記参照)は等しくなるであろうと予想される。また、さらに計算またはターミナル調整はしないが、比較のために、リセット予測フローQ
plllrを前に予測されたフロー(Q
plll)とともに以下に示す。
【数100】
【0149】
この時点で、ターミナルD1〜D4は、釣り合いのとれた状態でバランス調整されている。図示の例では、釣り合いのとれた状態でバランス調整され、ターミナルD1〜D4のフローがすべて等しくなる。ターミナルを通るフローは、釣り合いのとれた状態でバランス調整されているが、いずれも目標流量である450cfmより高くなっている。これを修正するために、プロセス120はステップ142に進み、気流フード20,60を使用してターミナルD1〜D4のいずれかを通る気流を監視しつつ、HVACシステム100のファンまたは送風機(
図7A〜
図7Cを参照)を調整する。監視対象となるターミナルで目標流量(450cfm)を読み取ると、他のターミナルでも目標流量で空気を吐出し、バランシングプロセス120が完了する。
【0150】
上記から、システム10は、気流測定装置20,60を介して予測バランシングプロセス120の精密モードを実施することが理解されるであろう。これを行うために、システム10は、HVACシステム100のバランス調整をするために必要なタスク(たとえば、気流測定装置20,60の操作または当該装置へのデータの入力など)を行うようにユーザーに指示する。このようにして、精密バランシングモードでは、システム10は、最初のステップ、(システム100のターミナル数に応じて)必要な回数のSET、READ、RESETステップ、最後の送風機調整ステップを行うようにユーザーに促す。
ソフトウェア実装
【0151】
上述のバランシング方法では計算が集中し、ソフトウェアを用いて実施するのに最適であるため、高い正確度と精度で迅速かつ自動的に計算を実行することができる。したがって、気流測定システム10の構成にかかわらず、本明細書に記載の方法は、システムの電子機器に実装することができる。
【0152】
たとえば、気流測定システム10が
図1および2の気流フード20を利用する場合、本方法は、電子機器38にインストールされ、計装機器36から気流測定データを得ることができるソフトウェアアプリケーションを介して実施することが可能である。ユーザーは、ユーザーインタフェース40を介して、データを入力し、命令を受信し、結果および他のデータを閲覧することができる。別の例として、気流測定システム10が
図4の気流フード60を利用する場合、本方法は、フード60の計装機器および電子機器から無線で気流測定データを得ることができる、スマートデバイス74にインストールされたHVACアプリケーションなどのソフトウェアアプリケーションを介して実施することが可能である。この場合、ユーザーは、気流フード60から離れた場所で、スマートデバイス74のユーザーインタフェースを介して、データを入力し、命令を受信し、結果および他のデータを閲覧することができる。
【0153】
HVAC技術者が、気流フード20,60のユーザーインタフェースを介して最初のステップ118の間に試験中のHVACシステムに関するすべての関連情報をシステム10に入力すると、技術者は、システムをバランス調整するのにユーザーインタフェースを介してシステムから提供される指示に従うだけである。所定の指示に続いて、オペレータがターミナルからターミナルへフードを移動させ、予測バランシングプロセス120の選択されたモードに従って、システム10に指示されるように調整を行う。当業者であれば、技術者が照会を受け、指示される方法が、インタフェースのタイプ(たとえば、スマートデバイスのタッチスクリーン対プッシュボタン駆動LCD)などの様々な要因に基づいて大幅に変化し得ることを、理解できよう。照会や指示が提示される方法を問わず、プロセス120は、本明細書に記載される同じ基本的なアプローチに従う。
【0154】
本発明の上記の説明から、当業者は、改良、変更、改変を認識するであろう。当業者の技能の範囲内である、これらおよび他のそのような改良、変更、改変は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。