【文献】
Peter Ressel, et al.,“Novel Passivation Process for the Mirror Facets of Al-Free Active-Region High-Power Semiconductor Diode Lasers”,IEEE Photonics Technology Letters,2005年04月25日,Vol.17,No.5,p.962-964
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の単結晶パッシベーション層の品質を監視することは、当該第1の単結晶パッシベーション層から反射高エネルギー電子回折(RHEED)パターンを取得することを含む、
請求項2記載の方法。
前記方法はさらに、前記マルチチャンバUHVシステムの前記UHV環境下で、固定具に積層された複数の多層導波構造体を前記UHV環境から取り出すことなく、前記複数の各多層導波構造体の少なくとも1つの切子面をパッシベーションすることを含む、
請求項1記載の方法。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
発明の概要
本願開示内容は、半導体レーザ用の高品質のレーザ切子面パッシベーション層の作製と、当該作製を実施するためのシステムとを対象とする。半導体レーザ切子面の準備および当該レーザ切子面上におけるパッシベーション層の形成は全て、統合マルチチャンバUHVシステムを用いて超高真空(UHV)環境下で行われる。切子面洗浄およびパッシベーション作製プロセスを全てUHV環境下で行うことにより、著しく高品質かつ清浄なパッシベーション層界面が達成されて、その結果得られる半導体レーザは優れた性能および信頼性を示し、デバイス故障の根本的原因としてのCOMDの発生が抑えられ、または解消する。さらに、パッシベーション層成長のその場監視を行うことにより、特定の実施態様では、パッシベーション層の化学量論比および厚さの精密な制御が可能になり、デバイス性能がさらに改善する。
【0004】
特にたとえばサーマルクリーニング、化学洗浄および分子線エピタキシー等の、パッシベーション層形成プロセスの種々の側面に対応する複数の異なるチャンバを備えた、本願にて記載されている新規の統合マルチチャンバUHVシステムを用いると、高品質のパッシベーション層が得られる。作製プロセス中、コンタミネーションを低減するため、レーザデバイスをUHV下に保ちながらこれらの異なるチャンバ間を通過させる。さらに、システムはデバイスフリップチャンバも備えることができ、このデバイスフリップチャンバ内において、レーザデバイスの複数の異なる切子面にパッシベーション層作製プロセスを施すことができるようにデバイスの向きを変える。
【0005】
一般的に一部の側面では、本願開示内容の主題は、多層導波構造体の少なくとも1つの切子面をパッシベーションする方法であって、マルチチャンバ超高真空(UHV)システムの第1のチャンバ内で多層導波構造体の第1の切子面を洗浄するステップと、洗浄された多層導波構造体を第1のチャンバからマルチチャンバUHVシステムの第2のチャンバへ移動するステップと、第2のチャンバ内で第1の切子面に第1の単結晶パッシベーション層を形成するステップと、多層導波構造体を第2のチャンバからマルチチャンバUHVシステムの第3のチャンバへ移動するステップと、第3のチャンバ内で第1の単結晶パッシベーション層上に第1の誘電体コーティングを形成するステップとを有し、マルチチャンバUHVシステムのUHV環境下で、多層導波構造体を当該UHV環境から取り出すことなく当該方法を実施する方法で具現化することができる。
【0006】
本方法の実施態様は、以下の特徴のうち1つまたは複数を具備することができる。たとえば一部の実施態様では、本方法は、第1の単結晶パッシベーション層の形成中に当該第1の単結晶パッシベーション層の品質を監視することを含む。第1の単結晶パッシベーション層の品質の監視は、第1の単結晶パッシベーション層からの反射高エネルギー電子回折(RHEED)パターンの取得を含むことができる。
【0007】
一部の実施態様では、第1のチャンバ内において多層導波構造体を第1の切子面の洗浄中に第1の向きで配置し、少なくとも1つの切子面のパッシベーションは、第1のチャンバ内で多層構造体を第1の向きとは異なる第2の向きで配置することと、第1のチャンバ内で多層構造体を第2の向きに配置した状態で多層導波構造体の第2の切子面を洗浄することとを含む。第1のチャンバ内で多層構造体を第2の向きに配置することは、第1の切子面の洗浄後に多層導波構造体を第1のチャンバからマルチチャンバUHVシステムの第4のチャンバへ移動することと、第4のチャンバ内で多層導波構造体を裏返すことと、裏返した多層導波構造体を第4のチャンバから第1のチャンバへ移動することとを含むことができる。
【0008】
一部の実施態様では、第1の切子面上への第1のパッシベーション層の形成中に第2のチャンバ内において多層導波構造体を第1の向きで配置し、少なくとも1つの切子面のパッシベーションは、第2のチャンバ内で多層導波構造体を第1の向きとは異なる第2の向きで配置することと、第2のチャンバ内で多層構造体を第2の向きに配置した状態で第2の切子面上に第2の単結晶パッシベーション層を形成することとを含む。第2のチャンバ内で多層構造体を第2の向きに配置することは、第1のパッシベーション層の形成後に多層導波構造体を第2のチャンバからマルチチャンバUHVシステムの第4のチャンバへ移動することと、第4のチャンバ内で多層導波構造体を裏返すことと、裏返した多層導波構造体を第4のチャンバから第2のチャンバへ移動することとを含むことができる。
【0009】
一部の実施態様では、第1の切子面の洗浄は、多層導波構造体の第1の切子面に原子水素を当てることによって当該第1の切子面から酸化物を化学的に除去することを含む。
【0010】
一部の実施態様では、少なくとも1つの切子面のパッシベーションは、多層導波構造体を約150℃〜約200℃の間の温度に加熱するために多層導波構造体に赤外線を照射することを含む。
【0011】
一部の実施態様では、第1のパッシベーション層は多層導波構造体の第1の切子面に対して格子整合される。
【0012】
一部の実施態様では、第1のパッシベーション層を約10nm〜約60nmの間の厚さになるまで施す。
【0013】
一部の実施態様では、第1のパッシベーション層はII-VI族半導体化合物材料を含む。
【0014】
一部の実施態様では、本方法はさらに、マルチチャンバUHVシステムのUHV環境下で、固定具に積層された複数の多層導波構造体をUHV環境から取り出すことなく、複数の各多層導波構造体の少なくとも1つの切子面をパッシベーションすることを含む。
【0015】
一般的に他の一部の側面では、本願開示内容の主題は、1つまたは複数のマルチチャンバ超高真空(UHV)システムであって、移動アームを備えた中央チャンバと、各対応するゲートバルブによって中央チャンバにそれぞれ結合された複数の2次チャンバとを備えており、複数の2次チャンバは、気体放出チャンバと、原子水素洗浄チャンバと、分子線エピタキシーチャンバと、イオンビームスパッタ成膜チャンバと、デバイスフリップチャンバとを含み、移動アームは、中央チャンバから複数の各2次チャンバ内へ伸長するように構成されており、当該マルチチャンバ超高真空(UHV)システムはさらに、中央チャンバ内および複数の2次チャンバ内それぞれにUHV環境を生成するように動作できるポンプシステムと、移動アーム、ゲートバルブおよびポンプシステムに動作可能に結合された制御システムであって、移動アームの動きとゲートバルブの開閉とを自動制御するように構成された制御システムとを備えた、1つまたは複数のマルチチャンバ超高真空(UHV)システムで具現化することができる。
【0016】
1つまたは複数のシステムの実施態様は、以下の特徴のうち1つまたは複数を具備することができる。たとえば一部の実施態様では、気体放出チャンバは赤外光源を備えている。
【0017】
一部の実施態様では、1つまたは複数のシステムは、原子水素洗浄チャンバおよび制御システムに結合された高周波(RF)発生器および原子水素源を備えており、制御システムはさらに、RF発生器によって生成される電力を自動制御し、かつ、原子水素源から洗浄チャンバへの原子水素の流れを自動制御することにより、原子水素洗浄チャンバ内にプラズマを駆動するように構成されている。
【0018】
一部の実施態様では、分子線エピタキシーチャンバは、電子のビームを生成するように動作できる電子銃であって、電子のビームを分子線エピタキシーチャンバ内のサンプル位置に向かって送るように配置された電子銃と、電子銃によって生成されてサンプル位置から回折された電子を検出することによって反射高エネルギー電子回折(RHEED)パターンを生成するように配置された検出器とを備えている。
【0019】
一般的に他の一部の側面では、本願開示内容の主題は、1つまたは複数のデバイスであって、相反対側にある第1の切子面および第2の切子面を少なくとも備えた多層導波構造体と、多層導波構造体の第1の切子面に結合された第1の単結晶パッシベーション層と、多層導波構造体の第2の切子面に結合された第2の単結晶パッシベーション層とを備えており、第1のパッシベーション層および第2のパッシベーション層はそれぞれ、多層導波構造体に格子整合されたII-VI族半導体化合物材料を含み、当該1つまたは複数のデバイスはさらに、第1のパッシベーション層上の第1の反射コーティングと、第2のパッシベーション層上の第2の反射コーティングとを備えているデバイスで具現化することができる。
【0020】
1つまたは複数のデバイスの実施態様は、以下の特徴のうち1つまたは複数を具備することができる。たとえば一部の実施態様では、多層導波構造体は、N型ドープされたGaAs基板と、GaAs基板上の第1のAl
xGa
1−xAsクラッド層と、第1のAl
xGa
1−xAsクラッド層上の第1のAl
yGa
1−yAsクラッド層と、第1のAl
yGa
1−yAsクラッド層上のInGaAs活性層と、InGaAs活性層上の第2のAl
yGa
1−yAsクラッド層と、第2のAl
yGa
1−yAsクラッド層上の第2のAl
xGa
1−xAsクラッド層とを含み、第2のAl
xGa
1−xAsクラッド層はP型ドープされており、ここで、xは0.15〜0.6の間であり、かつ、yは0.24〜0.35の間である。
【0021】
一部の実施態様では、第1のパッシベーション層および第2のパッシベーション層はそれぞれZnSeを含む。第1のパッシベーション層および第2のパッシベーション層はそれぞれ、約10nm〜約60nmの間の厚さを有することができる。
【0022】
本方法、本システムおよび本デバイスの上記の実施態様のうち1つまたは複数は、以下の利点のうち1つまたは複数を有することができる。たとえば、統合マルチチャンバシステムの複数の異なる各チャンバがそれぞれUHVに保たれるので、チャンバ間において移動するレーザデバイスサンプルは空気にさらされることはなく、これにより、かかる措置が無いとレーザデバイスの信頼性および寿命を劣化させてしまう酸化物がレーザデバイス表面に形成されることおよびコンタミネーションが減少し、または無くなる。特に、システム内において可動かつ伸長可能な移動アームを備え、かつ、デバイスフリップチャンバを備えていることにより、デバイスの複数の表面を洗浄してパッシベーションするために装置の向きを変更するため、レーザデバイスを大気中へ取り出す必要がなくなる。本願にて記載されている、レーザダイオード切子面の洗浄およびパッシベーションにより、切子面に生じる光学損失が減少し、COMDが減少し、または発生しないレーザダイオードを達成することができる。一部の実施態様では、レーザデバイスから酸化物を除去するために原子水素洗浄を用いることにより、非破壊の酸化物除去プロセスが実現され、洗浄された表面を無損傷状態に維持することができる。無損傷の清浄な表面は、パッシベーション層の高品質の単結晶成長を達成するために有用である。
【0023】
単結晶パッシベーション層を使用することの利点は、一部の実施形態ではかかる単結晶パッシベーション層が、レーザデバイスの洗浄された切子面表面への異物の堆積を防止することを助け、また、結晶導波構造体上に非晶質の酸化物が再形成するのを阻止することである。さらに、結晶パッシベーション膜は非晶質のパッシベーション膜より大きい程度の高温に耐えることができ、これによって、レーザが使用によって繰り返し加熱したときのレーザデバイス寿命が改善する。さらに、本願開示内容に従って処理された半導体レーザは、特定の実施態様では、格段に改善された性能、信頼性および寿命を達成する。
【0024】
本願において使用されている「超高真空」(UHV)との用語は、約10
−8torr以下の圧力によって特徴付けられる真空領域をいうと解される。プロセスガスおよび/またはプラズマがUHV環境内に存在することによって圧力上昇が生じ得るが、圧力上昇が約10
−5torr以下に抑えられており、かつ、プロセスガスおよび/またはプラズマの導入に起因するものであって、不所望のガス粒子の導入および/またはコンタミネーションによるものではない場合には、かかる環境も依然としてUHVとして特徴付けられ得る。
【0025】
本願において使用されている「フリップ」との用語は、裏返すことによって向きを変えることをいう。
【0026】
特段の定義が無い限りは、本願において使用される技術用語および科学用語は全て、本発明が属する分野の通常の知識を有する者が通常解する意味と同一の意味を有する。本発明の実施または試験では、本願において記載されている方法および材料と類似または均等範囲の方法および材料を使用することができるが、以下では適した方法および材料を説明する。本願において挙げられている全ての刊行物、特許出願、特許その他参考文献については、参照により、その全ての内容が本願の内容に含まれるものとする。抵触する場合には、本願明細書が、定義も含めて優先する。さらに、材料、方法および実施例は単なる例示であり、本発明を限定することを意図したものではない。
【0027】
1つまたは複数の実施形態の詳細は、添付の図面および以下の説明に記載されている。当該説明、図面および特許請求の範囲から、他の特徴および利点が明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
詳細な説明
図1は、高品質の半導体レーザ切子面パッシベーション層を作製するプロセスの一例100を示している。
図2は、プロセス100を実施できる統合マルチチャンバ超高真空(UHV)システム200を示している。
図3〜
図6は、パッシベーションプロセス100によって向上されたレーザデバイス10の複数の異なる状態を示している。
【0030】
図2に示されているように、統合マルチチャンバUHVシステム200は、中央チャンバ220と、複数の2次チャンバ(202,204,206,208,210)とを備えており、各2次チャンバ(202,204,206,208,210)はそれぞれ、各対応するゲートバルブ212によって中央チャンバに結合されている。各ゲートバルブは通路を有し、この通路内を通って物が移動することができるが、真空を保つように通路を封止することができる。ゲートバルブ212はUHV環境下で使用されるための構成となっており、2次チャンバを中央チャンバ220から分離するために供される。複数の2次チャンバはたとえば、気体放出チャンバ202と、デバイスフリップチャンバ204と、原子水素洗浄チャンバ206と、分子線エピタキシーチャンバ208と、誘電体コーティングチャンバ210(「イオンビームスパッタ成膜(IBSD)チャンバ210」ともいう)とを含む。
【0031】
システム200はさらに、中央チャンバ220に接続された移動アーム201も備えている。移動アーム201は、中央チャンバ220内において伸長可能な金属製の構造物である。移動アーム201は一端に、デバイスサンプルをピックアップして固定するためのピックアッププレートを備えている。移動アーム201は、2次チャンバ内からサンプルデバイスを把持するため、またはサンプルデバイスを2次チャンバ内へ放すために、2次チャンバ内へ伸長できるように構成されている。たとえば移動アーム201は、複数の同心の管状部品から構成された伸長ロッド構造を備えることができ、これらの管状部品は、互いに滑り入れられたときにロッドの長さを短くし、互いに引き出されたときにロッドの長さを長くする。移動アームはさらに、複数の2次チャンバのうちいずれかに対して回転できるように構成されている。たとえば、回転に基づいて移動アーム201を中央チャンバ220の中心軸203まわりに2次チャンバのうちいずれか1つの2次チャンバのゲートバルブに向かって動かすモータ201(たとえば圧電モータ)または伝動装置に、移動アームの、ピックアッププレートとは反対側の端部を結合することができる。
【0032】
システム200はさらに、UHV向けの配管部を介して中央チャンバ220と各2次チャンバ(202,204,206,208および210)とに結合された真空ポンプシステム230を備えている。真空ポンプシステム230は、中央チャンバ220内および複数の2次チャンバ(202,204,206,208および210)内それぞれにおいてUHV環境を生成するように動作することができる。複数の異なる各チャンバがそれぞれUHVに保たれるので、チャンバ間において移動するサンプルは空気にさらされることはなく、これにより、レーザデバイスの信頼性および寿命を劣化させてしまう酸化物がレーザデバイス表面に形成されることおよびコンタミネーションが減少し、または無くなる。
【0033】
システム200はさらに電子制御システム240も備えており、これは、構成要素の中でも特に、(たとえば、移動アーム201を駆動するモータに結合された)移動アーム201と、ゲートバルブ212と、ポンプシステム230とに、動作可能に結合されている。制御システム240は、移動アームの動きと、ゲートバルブの開閉とを制御するように構成されている。制御システム240はさらに、ポンプシステム230の動作を制御するように、たとえば、当該ポンプシステム230をオンもしくはオフする電子信号、または、各チャンバ内で得られる真空レベルを制御する電子信号の送信等を行うように構成することもできる。一部の実施態様では、チャンバのうち1つまたは複数は、ヒータ、電子銃および検出器等の構成要素を備えることができ、これらも電子制御システム240によって制御することができる。たとえば制御システム240は、指定された温度に調整するためにヒータ要素へ電子信号を送信し、または電子ビームの強度および/または方向を調整するために電子銃へ電子信号を送信することができる。制御システム240は、チャンバ内に備え付けられた検出器から電子信号を受け取ってこの電子信号を処理することにより、その情報を、ユーザが理解するために適した所望の形式に変換することができる。一部の実施態様では、システム200はさらに、2次チャンバのうち少なくとも1つに結合された1つまたは複数のガス源250を備えている。制御システム240は、ガス源から当該少なくとも1つの2次チャンバへ供給されるガスのレベルを調整するための供給バルブを制御するように動作することができる。制御システム240は、少なくとも1つの電子プロセッサと、これに対応するメモリとを備えており、このメモリは、当該少なくとも1つの電子プロセッサによって実行されるときにプロセス100の一部または全部を実行する実行可能なコードを記憶する。たとえば、制御システム240はプロセス100の一部または全部を自動的に実行するように構成することができる。これに代えて、一部の実施態様では制御システム240は、プロセス100の一部または全部を実行するための、ユーザによって手動入力された指令を受け取るように構成されている。
【0034】
図1を参照すると、プロセス100は最初に、たとえばレーザダイオード等の半導体レーザデバイス10を統合マルチチャンバUHVシステム200のロード/気体放出チャンバ202へ供給するステップ(102)を有する。レーザデバイス10は、一部完成した状態でチャンバ202へ供給される。たとえば
図3に示されているように、チャンバ202へロードされるレーザデバイス10は、基板14上に形成された多層導波構造体12を備えている。多層導波構造体12は、光学活性層16をクラッド層18によって包囲したものを備えている。クラッド層18は、光学活性層16内に光を閉じ込める導波路を構成するように、光学活性層16の屈折率より低い屈折率を有することができる。構造体12は電気的コンタクト層を備えることもできる(図示されていない)。光学活性層16およびクラッド層18は、たとえばII-VI族またはIII-V族半導体化合物等の半導体材料から構成することができ、これには、たとえば特に、GaAs、AlGaAs、InGaAs、InP、GaN、ZnSeが含まれる。たとえばデバイスの一例では、レーザダイオード10は、約980nmのレーザ光を放出するように構成された量子井戸半導体レーザであって、光学活性層16がGaAsまたはInGaAsから構成され、かつ、クラッド層18がAl
xGa
1−xAsおよび/またはAl
yGaAsから構成された量子井戸半導体レーザとすることができる。ここで、yは0.15〜0.6の間の範囲であり、xは0.15〜0.35の間の範囲である。たとえばZnSe、ZnTe、CdSe等のカルコゲナイドを含む他の化合物を、レーザダイオード材料として使用することもできる。光学活性層16およびクラッド層18は、たとえば分子線エピタキシー(MBE)または有機金属化学蒸着法(MOCVD)等の標準的な半導体成膜プロセスを用いて基板14上に形成することができる。
図3に示されている構造体12は、レーザデバイスの代表例を意図したものであり、本願の開示対象のプロセスを用いて構成できるレーザデバイスの種類を限定するものではない。たとえば、レーザデバイスは2つより多くのクラッド層を有することができ、各クラッド層がそれぞれ異なる組成および/または厚さを有することができる。
【0035】
半導体レーザデバイス10をロードする前に、デバイス10の第1の端面および/または反対側の第2の端面を劈開することにより、第1の切子面20および/または第2の切子面22をそれぞれ露出させる。一般的に、光学活性層16およびクラッド層18は単結晶構造を有するので、劈開により生じたその切子面は結晶面を露出する(たとえばGaAsレーザダイオードの場合、劈開によって110結晶面が露出することができる)。露出した1つまたは複数の切子面は、COMDの原因となり得るコンタミネーションを低減するため、プロセス100によって洗浄およびパッシベーションされるべきである。このように洗浄およびパッシベーションされた表面により、デバイス10のパッシベーションされた端面に配置された反射面における反射に基づき、デバイス10内部において誘導放出により増幅された光の損失が少なくなる。
【0036】
一部の実施態様では、複数の半導体レーザデバイス10、たとえば複数のレーザダイオード等を重ね合わせて、統合マルチチャンバUHVシステムのロードチャンバへ供給する。たとえばかかるスタックは、重ね合わされた15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、65個または70個の半導体レーザデバイスを含み、このスタックをロードチャンバへ供給することができる。レーザデバイスはスタックの中で、たとえばGaAsスペーサウェハ等のスペーサウェハによって、互いに分離することができる。一部の実施態様では、複数のレーザデバイスを重ねて、固定具で共に保持する。この固定具はたとえば、複数のレーザデバイスに嵌められてこれらを保持する寸法の金属フレームであって、各レーザデバイスの1つの面の切子面を露出させる開口を有する金属フレームとすることができる。この固定具は、複数のレーザデバイスを重ねたものを有する他の固定具と共に支持具に取り付けて、チャンバ202内のサンプルホルダに配置することができる。複数のレーザデバイスをこのように重ねることにより、より多くのレーザデバイスを一度に処理して大量生産できるので、作製プロセスがより効率的になる。たとえば、ベースまたはキャップに結合されたねじ部品等を用いて、レーザデバイス10、固定具または支持具をサンプルホルダに固定することができる。具体的には、サンプルホルダは、複数の固定具をサンドイッチ状に挟むベースプレートおよびキャッププレートを備えることができ、これらは互いにねじ留めされる。このベースプレートおよび/またはキャップは、レーザデバイス10(複数のレーザデバイス)の切子面を露出できる開口を有することができる。その後、サンプルホルダを後続処理のためにロードチャンバ内のカセットにロードすることができる。
【0037】
半導体レーザデバイス10が統合マルチチャンバUHVシステム200の気体放出チャンバ202内へロードされた後は、気体放出チャンバ202を超高真空になるまで排気する。具体的には、処理ステップ中および処理ステップの合間に生じるレーザデバイスのコンタミネーションおよび酸化を低減するため、気体放出チャンバ202内の圧力を約10
−8Torr以下まで低減する。UHVシステム200内の他の残りのチャンバも、ロードチャンバ内の圧力がシステム200の他のチャンバ内の圧力と一致するように、超高真空に保たれる。気体放出チャンバ内の圧力を低減した後、レーザデバイス10の露出した切子面(または複数の切子面)に第1の洗浄プロセスを施す。特に、露出した切子面(または複数の切子面)をサーマルクリーニングする(104)。
【0038】
図3は、赤外(IR)光源300を備えた気体放出チャンバ202内に収容されているレーザデバイス10の一例を示す概略図である。切子面のサーマルクリーニングはたとえば、IR光源300からのIR光をレーザデバイス10の劈開面の切子面に照射することを含むことができる。IR光源300はたとえば、光源の中でも特に発光ダイオード(LED)、レーザダイオードまたはXeランプを備えることができる。IR光は、劈開後の切子面表面に物理的に吸収された水分および異物(たとえば異物の中でも特に、吸収された粒子、N
2、CO
2またはO
2)を除去するために、半導体レーザデバイス10を加熱する。加熱中にこのチャンバ内にて測定される温度は、約150℃〜約200℃の間である。レーザデバイス10には、種々の異なる時間長にわたってIR加熱を施すことができる。たとえば一部の実施態様では、レーザデバイス10にIR加熱を10分間、15分間、20分間、30分間、または40分間も施すことができる。他の加熱時間も可能である。チャンバ圧は、加熱プロセスにかけるべき時間の良好な指標となり得る。その理由は、異物の気体放出によって、まずチャンバ内の圧力が上昇し、その後に圧力が連続的に低下していくからである。圧力が低下して所望の閾値(たとえば5×10
−7Torr)を下回った場合、サーマルクリーニングプロセスが終了したとみなすことができる。
【0039】
ここで説明しているように、一部の実施態様では、デバイス10をチャンバ202内にロードする前に、レーザデバイス10の少なくとも2つの切子面(たとえば、デバイス10の2つの相反対側の端面)を劈開する。ロード後、レーザデバイス10の1つの劈開面の切子面のみにIR光源300からのIR光が照射されるように、レーザデバイス10をチャンバ202内のサンプルホルダに配置してその向きを調整する。複数のレーザデバイス10がロードされる場合には、IR光源300からのIR光の方を向いた、各レーザデバイスの劈開面の切子面が1つのみとなるように、サンプルホルダの向きを調整する。
【0040】
一般的に一部の実施態様では、COMDを引き起こしてそれに起因する切子面界面の劣化の原因となるコンタミネーションを低減するため、デバイス10の1つの切子面だけでなく、その反対側の切子面も洗浄することが好ましい場合があり得る。1つの劈開面の切子面にIR光が照射されるようにレーザデバイス10は向きを調整されて配置されているので、他の切子面も洗浄できるようにするためには、レーザデバイスの向きを変更しなければならない。特に、プロセス100はオプションとして、レーザデバイス10の第2の劈開面の切子面にIR光を照射できるように、レーザデバイス10を気体放出チャンバ202内において第1の向きから別の第2の向きに再配置するステップを有する。
【0041】
チャンバ202内においてレーザデバイス10の向きを再配置するため、システム200は移動アーム201とフリップチャンバ204とを備えている。特に、レーザデバイス10を再配置するプロセスは、まず移動アーム201をシステム200の中央チャンバから気体放出チャンバ202内へ伸長してから、レーザデバイス10を移動アーム201に固定することを含むことができる。1つまたは複数のレーザデバイス10がサンプルホルダに取り付けられる場合、移動アーム201がサンプルホルダを固定することができる。たとえば、移動アームの、チャンバ内へ伸長する端部が、ピックアッププレート(「エンドエフェクタ」ともいう)を備えることができる。エンドエフェクタは、当該エフェクタから突起する複数のピン(たとえば4つのピン)を備えることができ、これらのピンは、固定具および/または支持体を配置できる領域を形成するように相互に離隔している。ピンによって形成されたこの領域内にサンプルホルダが配置された場合、ピンはサンプルホルダをその場所に保持するように機能する。たとえば、移動アーム201は中央クラスタチャンバからロードチャンバ202へ伸長して、選択されたサンプルホルダの下方で動くことができる。移動アーム201は、サンプルホルダの下方に位置決めされると、サンプルホルダを下方からエンドエフェクタによって支持しながら、ピンによって形成された領域内にサンプルホルダを位置決めするように上方に向かって移動する。レーザデバイス10は、固定された後、移動アーム201を使用して気体放出チャンバ202からフリップチャンバ204へ移動される。たとえば、レーザデバイス10を保持する移動アームは中央チャンバ内へ引っ込むことができ、その後アーム201は、フリップチャンバ204を封止するゲートバルブとアライメントするように回転する。その後、移動アーム201がフリップチャンバ204内へ伸長できるように、フリップチャンバのゲートバルブを開弁することができる。次に移動アーム201は、レーザデバイスを収容するサンプルホルダを、フリップチャンバ204内に収容されている支持基板上に放すことができる。レーザデバイス10を収容するサンプルホルダは、たとえば二叉フォーク形のクランプ具等によって、支持基板に固定される。その後、支持基板に結合された電動式の位置決め装置がサンプルホルダの向きを変更することによって、レーザデバイス10の向きも変更するようにする。たとえば、電動式の位置決め装置が中心軸まわりに支持基板を回転させることにより支持基板をフリップして逆さまにし、これと共にサンプルホルダをフリップして逆さまにすることができる。電動式位置決め装置はたとえば、電子制御信号を用いて動作する圧電モータを備えることができる。
【0042】
フリップチャンバ204内でレーザデバイス(または複数のレーザデバイス)の向きを変更した後、移動アーム201は、当該変更した向きを有するレーザデバイス10を収容するサンプルホルダをピックアップするため、フリップチャンバ204内へ伸長する。その後、移動アーム201を使用して、フリップされたレーザデバイス10を気体放出チャンバ202へ移動して戻し、移動アーム201は、レーザデバイス10(または複数のレーザデバイス)を収容するサンプルホルダをもう一度チャンバ202内で、しかし変更された向きで(たとえば逆さまにフリップされた状態で)配置する。その後、移動アーム201は中央チャンバに引っ込む。システム200の全てのチャンバがUHV環境下に保たれるので、レーザデバイスを気体放出チャンバ202からフリップチャンバ204へ移動させて気体放出チャンバ202へ戻すまでの全てのプロセスがUHV下で行われ、このことによって、劈開面の切子面表面のコンタミネーションの低減が助長される。
【0043】
ここで、レーザデバイス10を第2の向きで配置および位置決めすることにより、気体放出チャンバ202内で第2の劈開面の切子面にIR光源からのIR熱を照射してデバイスを約150℃〜約200℃の間の温度に加熱することによって、第2の切子面をサーマルクリーニングすることができる。ここでも、レーザデバイスにIR熱を照射する期間は変わることができ、たとえば特に、10分間、15分間、20分間、30分間または40分間を含むことができる。
【0044】
サーマルクリーニング(104)を行った後、UHVシステム内でレーザデバイス10に化学洗浄(106)を施す。化学洗浄の目的は、劈開後のレーザデバイス切子面表面上に形成された酸化物を除去することである。たとえば一部の実施態様では、多層導波構造体を大気条件下(たとえば常温かつ非真空)で劈開すると、導波構造体の露出した単結晶材料が酸化して非晶質の酸化物層を形成し、この酸化物層は異物を捕捉する。この非晶質の酸化物層がCOMDを助長し得る。
【0045】
化学洗浄(106)を行うためには、移動アーム201によってレーザデバイス10(または複数のレーザデバイス)を気体放出チャンバ202から原子水素洗浄チャンバ206へ移動させる。移動アーム201は、レーザデバイス10を収容するサンプルホルダをチャンバ206内の支持基板上に配置し、デバイス10(または複数のデバイス)を収容するサンプルホルダは固定される。レーザデバイス10の移動中、チャンバ206内および中央チャンバ内の圧力はUHVに保たれる。
【0046】
チャンバ206は原子水素源を備えており、この原子水素源は、水素分子を熱分解することにより(たとえば、電子衝撃加熱されるタングステンキャピラリ細管で水素を熱解離することにより)、またはチャンバ206内で水素プラズマを使用して原子解離することにより、原子水素を生成する。酸化物を除去するために原子水素洗浄を用いることの、たとえばイオンエッチングとは対照的な利点は、原子水素洗浄は、洗浄された表面を無損傷状態に維持する非破壊のプロセスであることであり、原子水素洗浄を用いないと、洗浄された表面はさらなるCOMDの原因となり、また、これによりデバイス寿命の短縮になる。無損傷の清浄な表面は、パッシベーション層の高品質の単結晶成長を達成するために有用である。
【0047】
図4は、原子水素洗浄チャンバ206内に収容されたレーザデバイス10の一例を示しており、レーザデバイス10の切子面は水素プラズマを用いて洗浄される。水素プラズマを用いて洗浄を行うためには、チャンバ内の温度を約300℃〜400℃の間の温度に加熱し、この温度で約10分間安定化する。好適には、コンタクト金属が多層導波構造体の半導体層に拡散するのを回避するため、洗浄温度は約400℃を超えない。その後、チャンバを未だ加熱させながら、チャンバ206内にアルゴン‐水素混合ガスを導入する。チャンバ206内の高周波(RF)発生器400が、Ar‐H混合ガスからプラズマを約10〜20分間点弧する。その後、切子面表面を洗浄する水素のみのプラズマを供給するため、チャンバへ供給されるガスを純粋な水素に切り替える。約2桁の酸化物減少を達成するためには、洗浄時間は約20〜約60分の範囲内である。一部の実施態様では、プロセスガスおよびプラズマの存在が、チャンバ206内の圧力の上昇を引き起こし得る。たとえば、プラズマの点弧後、チャンバ206内の圧力は10
−5Torrにまで上昇し得る。かかる圧力上昇にかかわらず、チャンバ206内の不所望のガスまたは異物の存在を低濃度に維持できるので、かかる環境は依然として超高真空であるといえる。
【0048】
原子水素がレーザデバイス10の1つの露出した劈開面切子面のみと反応するように、レーザデバイス10をチャンバ206内に配置し、その向きを調整する。複数のレーザデバイス10がロードされる場合には、各レーザデバイスの、原子水素によって化学洗浄される劈開面の切子面が1つのみとなるように、レーザデバイス10を収容するサンプルホルダの向きを調整して、これをサンプルホルダ上に配置する。
【0049】
一部の実施態様では、チャンバ206は電子源402と電子検出器(たとえば光ルミネセンス検出器)404とを備えており、電子源402は、当該電子源からサンプル表面に向けて電子を送るように配置されており、検出器404は、サンプルによって回折された電子を検出する。たとえば電荷結合素子(CCD)カメラを用いて、検出器において生成された反射高エネルギー電子回折(RHEED)パターンを監視して調べることにより、切子面表面の化学洗浄がどの程度良好に進行したかを評価することができる。一部の実施態様では、RHEEDパターンの監視を化学洗浄と同時に行うことができる。酸化物材料の十分な洗浄/除去がなされたことを示唆する所望のパターンが現れた場合、システム600のユーザはチャンバ606内の原子水素洗浄プロセスを手動で終了することができる。これに代えて一部の事例では、スクリーン上に現れたパターンを電子制御システムによって画像処理を用いて評価することにより、所望のパターンが観測された場合には、制御システムは原子水素洗浄プロセスを自動的に終了する。一部の実施態様では、RHEEDパターンを評価する間、原子水素洗浄を一時停止することができる。
【0050】
サーマルクリーニングと同様、一部の実施態様では、COMDの原因となるコンタミネーションを低減するため、相反対側の両切子面(たとえば切子面20および22)から非晶質の酸化物を除去するのが好適である。反対側の切子面を化学洗浄するためには、反対側の切子面に原子水素を当てることができるように、チャンバ206内におけるレーザデバイス10の向きを変更する。特に、プロセス100はオプションとして、レーザデバイス10の第2の劈開面の切子面22に原子水素を当てることができるように、レーザデバイス10をチャンバ206内において第1の向きから別の第2の向きに再配置するステップを有する。
【0051】
レーザデバイス10の向きを再配置するためには、移動アーム201がレーザデバイス(または複数のレーザデバイス)を取得するためにシステム200の中央チャンバから原子水素洗浄チャンバ206内へ伸長する。レーザデバイス10は、移動アーム201を使用して洗浄チャンバ206からフリップチャンバ204へ移動される。たとえば、レーザデバイス10を保持する移動アーム201は中央チャンバ内へ引っ込むことができ、その後アーム201は、フリップチャンバ204を封止するゲートバルブとアライメントするように回転する。その後、移動アーム201がフリップチャンバ204内へ伸長できるように、フリップチャンバのゲートバルブを開弁することができる。次に移動アーム201は、フリップチャンバ204内に収容されている支持基板上にレーザデバイス10を配置することができ、デバイス10は固定される。その後、上記にて説明したように、ホルダに結合された位置決め装置を用いてサンプルホルダの向きを変更する(たとえば逆さまにフリップする)。
【0052】
フリップチャンバ204内でレーザデバイス(または複数のレーザデバイス)の向きを変更した後、移動アーム201は、レーザデバイス10を収容し当該変更した向きを有するサンプルホルダをピックアップするため、フリップチャンバ204内へ伸長する。その後、移動アーム201を使用して、フリップされたレーザデバイス10を洗浄チャンバ206へ移動して戻し、移動アーム201は、レーザデバイス10(または複数のレーザデバイス)を収容するサンプルホルダをもう一度チャンバ206内の支持基板上に、しかし変更された向きで(たとえば逆さまにフリップされた状態で)配置する。その後、移動アーム201は中央チャンバに引っ込む。レーザデバイスを原子水素洗浄チャンバ206からフリップチャンバ204へ移動して原子水素洗浄チャンバ206に戻すプロセスは全て、UHV下で行われる。
【0053】
化学洗浄(106)を行った後、レーザデバイス10の洗浄された1つまたは複数の切子面上に単結晶パッシベーション層を形成する(108)。かかる単結晶パッシベーション層の利点は、単結晶パッシベーション層が、レーザデバイス10の洗浄された切子面表面への異物の堆積を防止することを助け、また、結晶導波構造体上に非晶質の酸化物が再形成するのを阻止することである。さらに、結晶パッシベーション膜は非晶質のパッシベーション膜より大きい程度の高温に耐えることができ、これによって、レーザが使用中に繰り返し加熱したときのレーザデバイス寿命が改善する。パッシベーション層を形成するためには、移動アーム201によってレーザデバイス10(または複数のレーザデバイス)を原子水素洗浄チャンバ206からMBEチャンバ208へ移動させる。移動アーム201は、レーザデバイス10を収容するサンプルホルダをチャンバ208内の支持基板上に配置し、サンプルホルダは固定される。レーザデバイス10の移動中、MBEチャンバ208内および中央チャンバ内の圧力はUHVに保たれる。
【0054】
固体源MBEでは、エピタキシャル膜を構成する超高純度形態(たとえば純度99.999%)の元素を供給し、クヌーセン噴出セル内でこれらが昇華するまで加熱することができる。このようにして、気体材料はサンプル表面に凝縮する。当該材料は、単結晶構造に付着して凝縮すると、それ自体が単結晶層を形成することができる。好適には、格子不整合に起因してパッシベーション層に生じる応力を制限するため、下方の多層導波構造体と同一または略同一の格子定数を有するように、単結晶パッシベーション層を多層導波構造体上に形成する。応力が過度に高くなると、これがパッシベーション層に欠陥が形成される原因となり、この欠陥がCOMDを引き起こし得る。
【0055】
一例として、Al
xGa
1−xAsから構成された多層導波路は、閃亜鉛鉱構造で晶析する。MBEを用いると、同一または略同一の格子定数を有する同一の閃亜鉛鉱結晶構造でZnSeパッシベーションエピタキシャル層を導波構造体上に形成することができる。
図5は、MBEチャンバ208内に収容されたレーザデバイス10の一例を示しており、チャンバ208は、レーザデバイス10の切子面20上にパッシベーション層502を形成するための超高純度の固体源を入れたセル500を備えている。
【0056】
MBEおよびUHV環境を用いて単結晶パッシベーション層を成長させることにより、原子レベルで平坦かつ清浄なパッシベーション層を達成することができる。さらに、MBEは熱平衡状態ベースのプロセスであるから、MBEは一般的に、特定のパッシベーション層厚についてはパッシベーション層の形成に関して非破壊的であり、よって、その下方の多層導波構造体の高度に結晶質の配列を維持することができる。たとえば、十分な切子面電子閉じ込めを達成するため、かつ、ヘテロエピタキシャル成長に起因する欠陥吸収を低減するためには、パッシベーション層は約10nm〜約60nmの間の範囲の厚さを有しなければならない。層がより厚くなると、多層導波構造体上におけるヘテロエピタキシャル成長の内因性の欠陥に起因して結晶品質が低減し得る。
【0057】
チャンバ208は、パッシベーション層を形成するための単元素供給源を備えることができる。たとえば一部の実施態様では、ZnSeパッシベーション層を形成するため、チャンバ208は別個の超高純度Zn元素供給源およびSe元素供給源を備えることができる。これに代えて、チャンバ208は化合物成分供給源を備えることもできる。たとえば一部の実施態様では、ZnSeパッシベーション層を形成するため、チャンバ208はZnSe化合物供給源を1つ備えることが可能である。一部の実施態様では、導波路からの光吸収の吸収を阻止してレーザデバイス信頼性を向上するため、導波構造体に対して相対的に高いバンドギャップを有する材料を含むパッシベーション層を形成するのが好適である。相対的に広幅のバンドギャップを有し、かつ、GaAsと格子整合または略格子整合する他のパッシベーション層材料の例には、BeTe,ZnS,CdSeおよびBeCdSeが含まれるが、これらは限定列挙ではない。ここで説明しているように、導波構造体の光学活性材料はGaAsに限定されず、たとえばInPまたはGaN等の他の材料も含むことができる。比較的広幅のバンドギャップを有し、かつ、InPに対応して格子整合された構造を有するパッシベーション層の例には、たとえばZnSeが含まれる。比較的広幅のバンドギャップを有し、かつ、GaNに対応して格子整合された構造を有するパッシベーション層の例には、たとえばBeSeが含まれる。
【0058】
一部の実施態様では、昇華原材料の存在が、チャンバ内208の圧力の上昇を引き起こし得る。たとえば、チャンバ208内の圧力は10
−5Torrにまで上昇し得る。かかる圧力上昇が生じても、チャンバ208内の不所望のガスまたは異物の存在を低濃度に維持できるので、かかる環境は依然として超高真空であるといえる。
【0059】
チャンバ208内の温度は約250℃〜約350℃の間の温度に維持され、コンタクト金属が多層導波構造体の半導体層に拡散するのを回避するためには、当該温度は約400℃を超えてはならない。
【0060】
マルチチャンバUHVシステム600に関連付けられた電子制御システムは、各供給源(単元素供給源または化合物成分供給源)より手前にあるシャッタの開閉を選択的に調整することによって堆積速度を変更することにより、サンプルに堆積される供給源材料の量を正確に制御することができる。複数の単元素供給源を用いる場合には、堆積速度を異なる供給源材料ごとに別個に調整できるので、電子制御システムはパッシベーション層の化学量論比も正確に制御することができる。
【0061】
成長条件(たとえば特に膜厚、堆積速度、または均一性)を、RHEEDパターンの観測に基づいてその場監視することができる。RHEEDを用いてパッシベーション層成長を監視することにより、層厚、平坦性および化学量論比を非常に正確に制御することができ、これによって、COMDの発生を格段に低減してレーザデバイス寿命を格段に長くした、著しく高品質のパッシベーション層を得ることができる。原子水素洗浄チャンバ206と同様に、チャンバ208は電子銃504と電子検出器(たとえば光ルミネセンス検出器)506とを備えることができ、供給源504は、サンプル表面に向けて電子を送るように配置されており、検出器506は、サンプルによって回折された電子を検出する。たとえば電荷結合素子(CCD)カメラを用いて、検出器において生成されたRHEEDパターンを監視して調べることにより、成長条件を評価することができる。システム600のユーザは、観測されたRHEEDパターンの観測に基づいて堆積プロセスを手動で調整すること(たとえば、1つまたは複数の供給源成分の堆積速度を変えること)ができる。これに代えて、マルチチャンバUHVシステム600に関連付けられた電子制御システムが画像処理技術を用いて、所望のRHEEDパターンおよび膜厚が得られるまで、RHEEDパターンを特定して堆積プロセスを自動的に調整することもできる。
【0062】
レーザデバイス10の1つの露出し洗浄された切子面(たとえば切子面20)のみにパッシベーション層502が形成されるように、レーザデバイス10をチャンバ208内の支持基板上に配置し、その向きを調整する。複数のレーザデバイス10がロードされる場合には、単結晶パッシベーション層が形成される、各レーザデバイスの劈開面の切子面が1つのみとなるように、複数のレーザデバイスの向きを調整してこれらを配置する。
【0063】
一部の実施態様では、切子面上に異物や非晶質の酸化物層が形成されるのを防止するため、レーザデバイス10の相反対側の両切子面(たとえば切子面20および22)にパッシベーション層を形成するのが好適である。反対側の切子面にパッシベーション層を形成するためには、反対側の切子面にMBEプロセスで供給源材料を当てることができるように、チャンバ208内におけるレーザデバイス10の向きを変更する。特に、プロセス100はオプションとして、レーザデバイス10の第2の劈開面の切子面22に供給源材料を当てることができるように、レーザデバイス10をチャンバ208内において第1の向きから別の第2の向きに再配置するステップを有する。
【0064】
レーザデバイス10の向きを再配置するためには、移動アーム201がレーザデバイス(または複数のレーザデバイス)を収容するサンプルホルダを取得するためにシステム200の中央チャンバからMBEチャンバ208内へ伸長する。レーザデバイス10は、移動アーム201を使用してMBEチャンバ208からフリップチャンバ204へ移動される。たとえば、レーザデバイス10を保持する移動アーム201は中央チャンバ内へ引っ込むことができ、その後アーム201は、フリップチャンバ204を封止するゲートバルブとアライメントするように回転する。その後、移動アーム201がフリップチャンバ204内へ伸長できるように、フリップチャンバのゲートバルブを開弁することができる。次に移動アーム201は、フリップチャンバ204内の支持基板上にレーザデバイス10を配置することができ、デバイス10は固定される。その後、上記にて説明したように、ホルダに結合された位置決め装置を用いて、レーザデバイスを収容するサンプルホルダの向きを変更する(たとえば逆さまにフリップする)。
【0065】
フリップチャンバ204内においてレーザデバイス(または複数のレーザデバイス)の向きを変更した後、移動アーム201は、変更された向きを有するレーザデバイス10を収容するサンプルホルダをピックアップするために、フリップチャンバ204内へ伸長して、その後、サンプルをMBEチャンバ208へ移動して戻し、移動アーム201は、レーザデバイス10(または複数のレーザデバイス)をもう一度チャンバ208内の支持基板上に、しかし変更された向きで(たとえば逆さまにフリップされた状態で)配置する。MBEチャンバ208、中央チャンバおよびフリップチャンバ204はUHV下にあるので、レーザデバイスを移動、フリップおよび移動するプロセスは全て、UHV下で行われる。
【0066】
1つまたは複数の単結晶パッシベーション層を形成した後、プロセス(100)は、誘電体コーティング/層をパッシベーション層上に形成するステップ(110)を有することができる。誘電体コーティングを形成する目的は、多層導波構造体への光学帰還と、パッシベーション層の保護との双方を達成することである。さらに、十分に高い密度を有する誘電体コーティングの場合、導波構造体からの光の光学吸収の量を低減することができ、これによってレーザデバイス効率が改善される。
【0067】
誘電体層を形成するためには、移動アーム201によってレーザデバイス10(または複数のレーザデバイス)を収容するサンプルホルダをMBEチャンバ208から誘電体コーティングチャンバ210へ移動させる。移動アーム201は、レーザデバイス10をチャンバ210内の支持基板上に配置し、デバイス(または複数のレーザデバイス)は固定される。レーザデバイス10の移動中、コーティングチャンバ210内および中央チャンバ内の圧力はUHVに保たれる。
【0068】
図6は、コーティングチャンバ210内に収容されたレーザデバイス10の一例を示している。コーティングチャンバ210は、イオンビームスパッタ源600と、IBSDを行うための1つまたは複数のターゲット602とを備えることができる。ターゲット602からの材料がサンプル上に誘電体層604としてスパッタ蒸着されるように、イオンビームスパッタ源600によって生成されたイオンビーム603をターゲット602に向かって送る(605)。マルチチャンバUHVシステム600に関連付けられた電子制御システム240は、イオンビームスパッタ源600によって生成されるイオンビームの強度を調整することにより、サンプルに堆積されるターゲット材料の量を正確に制御することができ、これによって誘電体コーティングの厚さを正確に制御することができる。
【0069】
誘電体材料がレーザデバイス10の1つの切子面に堆積するように、レーザデバイス10をチャンバ210内の支持基板上に配置し、その向きを調整する。複数のレーザデバイス10がロードされる場合には、誘電体層604が形成される、各レーザデバイスの劈開面の切子面が1つのみとなるように、複数のデバイス10の向きを調整してこれらを配置する。
【0070】
一部の実施態様では、スパッタ蒸着される材料の存在が、チャンバ210内の圧力の上昇を引き起こし得る。たとえば、チャンバ210内の圧力は10
−5Torrにまで上昇し得る。かかる圧力上昇が生じても、チャンバ210内の不所望のガスまたは異物の存在を低濃度に維持できるので、かかる環境は依然として超高真空であるといえる。
【0071】
一部の実施態様では、多層導波構造体の1つの切子面が、所望の波長を有する光を反射する高反射率(HR)膜を成す誘電体コーティングによってカバーされており、それに対して、当該多層導波構造体の反対側の第2の切子面は、所望の波長を有する増幅された光を当該構造体からレーザ光として出射させることができる、僅かに低い反射率(AR膜)の膜によってカバーされている。これに代えて一部の実施態様では、導波構造体の両切子面がAR膜を有し、反射光学キャビティを画定するために外部帰還部が設けられている。たとえば外部帰還部は、1つもしくは複数のミラーまたはボリュームブラッググレーティングを備えることができる。HR膜またはAR膜のいずれかが、誘電体材料の単層または複数の層を有することができる。たとえば、AR膜が、放出波長の約1/4に等しい厚さを有する単層であって、たとえば特にSiO
2、Si
3N
4、Nb
2O
5、A1
2O
3、Ta
2O
5またはTiO
2等の誘電体材料のうち1つまたは複数の組み合わせを含む単層を有することができる。これに代えてAR膜は、導波構造体から放出される特定の波長に対応した、誘電体材料の複数の層から構成されているブラッグミラーを有することもできる。HR膜を形成するためにも、同様の手法を用いることができる。
【0072】
誘電体コーティングが両切子面に形成される実施態様では、第1および第2の相反対側の両切子面に誘電体材料がコーティングされるように、チャンバ210内におけるレーザデバイス10の向きを変更する。特に、プロセス100はオプションとして、レーザデバイス10の第2の劈開面の切子面に、スパッタされた誘電体材料を当てることができるように、レーザデバイス10をチャンバ210内において第1の向きから別の第2の向きに再配置するステップを有する。
【0073】
レーザデバイス10の向きを再配置するためには、移動アーム201がレーザデバイス(または複数のレーザデバイス)を収容するサンプルホルダを取得するためにシステム200の中央チャンバから誘電体コーティングチャンバ210内へ伸長する。レーザデバイス10は、移動アーム201を使用して誘電体コーティングチャンバ210からフリップチャンバ204へ移動される。たとえば、レーザデバイス10を保持する移動アーム201は中央チャンバ内へ引っ込むことができ、その後アーム201は、フリップチャンバ204を封止するゲートバルブとアライメントするように回転する。その後、移動アーム201がフリップチャンバ204内へ伸長できるように、フリップチャンバのゲートバルブを開弁することができる。次に移動アーム201は、フリップチャンバ204内の支持基板上にレーザデバイス10を配置することができ、デバイス10は固定される。その後、上記にて説明したように、ホルダに結合された位置決め装置を用いて、サンプルホルダの向きを変更し、ひいては、サンプルホルダによって保持されたレーザデバイスの向きを変更する(たとえば逆さまにフリップする)。
【0074】
フリップチャンバ204内においてレーザデバイス(または複数のレーザデバイス)の向きを変更した後、移動アーム201は、変更された向きを有するレーザデバイス10をピックアップするために、フリップチャンバ204内へ伸長して、その後、サンプルを誘電体コーティングチャンバ210へ移動して戻し、移動アーム201は、レーザデバイス10(または複数のレーザデバイス)をもう一度チャンバ210内のサンプルホルダ上に、しかし変更された向きで(たとえば逆さまにフリップされた状態で)配置する。誘電体コーティングチャンバ210、中央チャンバおよびフリップチャンバ204はUHV下にあるので、レーザデバイスを移動、フリップおよび移動するプロセスは全て、UHV下で行われる。
【0075】
図7は、本願にて開示されたプロセス100を用いて構成されたレーザデバイス700の一例を示している。レーザデバイス700は、基板714上に形成された多層導波構造体を備えている。基板714はたとえば、N型ドープされたGaAs(たとえば、Siをドーパント材料として使用する)を含む。多層導波構造体は、InGaAsから成る光学活性層716を複数のクラッド層718によって包囲したものを備えている。クラッド層718はたとえば、GaAs基板上の少なくとも第1のAl
xGa
1−xAsクラッド層718aと、第1のAl
xGa
1−xAsクラッド層718a上の少なくとも第1のAl
yGa
1−yAsクラッド層718bと、InGaAs活性層上の第2のAl
yGa
1−yAsクラッド層718cと、第2のAl
yGa
1−yAsクラッド層上の第2のAl
xGa
1−xAsクラッド層718dとを含み、第2のAl
xGa
1−xAsクラッド層718dはP型ドープされている(たとえば、Cをドーパント材料として使用する)。xの値は0.15〜0.6の間であり、yの値は0.15〜0.35の間である。デバイス700はさらに、多層導波構造体712の第1および第2の相反対側の各切子面に形成されたZnSe単結晶パッシベーション層702と、第1の切子面上のAl
2O
3ARコーティング704と、第2の切子面上のAl
2O
3HRコーティング706とを備えている。
【0076】
実験結果
図8は、複数の異なる作製プロセスに対する2つの別個のレーザアレイの故障パワーを示すグラフである。第1のアレイのレーザは、完全にUHV条件下で形成された単結晶パッシベーション層を備えるように、本願にて開示されているプロセスを用いて準備された。第2のアレイの第2のレーザは、処理中にUHV条件が保たれなかったものではない非晶質のパッシベーション層を用いて準備された。各レーザアレイは8つのレーザダイオードを有し、各アレイの幅は10mmであり、キャビティ長は4mmであった。これらのアレイは、試験中は銅ブロックに取り付けられていた。その試験は、パルスレーザ(パルス持続時間100μs、デューティ比0.1%)を用いて行われた。
【0077】
図8のグラフで分かるように、本願にて開示されている新規のプロセスを用いて構成されたレーザダイオード(802)は、発光源1個あたり約43Wの最大パワーで故障した。これは、本願にて開示されているプロセスを用いずに構成されたデバイス(804)の故障パワー(発光源1個あたり約10W)の約4倍である。さらに、本願にて開示されている新規のプロセスを使用して構成された、故障した発光源の目視検査では、COMDがデバイス故障の根本的原因から除外されたのに対し、発光源1個あたり約10Wで故障したデバイスについては、COMDが故障の根本的原因であると特定された。
【0078】
図9は、本願にて開示されている新規のプロセスにより構成されたレーザダイオードデバイスのアレイ(902)および本願にて教示されている単結晶パッシベーション層を用いずに作製されたレーザダイオードデバイスのアレイ(904)の寿命試験のグラフである。特に、同グラフは時間に対する正規化された出力パワーを示している。各レーザアレイは8つのレーザダイオードを有し、各アレイの幅は10mmであり、キャビティ長は4mmであった。これらのデバイスの試験は、1秒のオン持続時間と1秒のオフ持続時間と(0.5Hz、デューティ比50%)で1アレイあたり95A(発光源1個あたり12A)のパルス電流を印加することによって行われた。
図9で分かるように、本願にて開示されている新規のプロセスを用いて構成されたレーザダイオードアレイ(902)の場合、7000時間以上の動作後、有意な劣化は観測されなかった。それに対して、本願にて教示されている単結晶パッシベーション層を用いずに構成されたレーザダイオードアレイ(904)の場合、デバイスは1000時間未満で故障した。
【0079】
図10は、本願にて開示されている新規のプロセスにより構成されたレーザダイオードデバイスのアレイ(1002)および本願にて教示されている単結晶パッシベーション層を用いずに作製されたレーザダイオードデバイスのアレイ(1004)の寿命試験のグラフである。特に、同グラフは時間に対する正規化された出力パワーを示している。各レーザアレイは8つのレーザダイオードを有し、各アレイの幅は10mmであり、キャビティ長は4mmであった。
図7〜
図8にて試験されたデバイスとの相違点として、
図9に示されているグラフに係る試験が行われたデバイスは、パッシベーション層表面の誘電体反射コーティングとは異なり、外部ボリュームブラッググレーティング帰還部を備えるものであった。これらのデバイスの試験は、本願にて開示されている新規のプロセスで構成されたデバイスについては1アレイあたり80Aの連続波(CW)パワーを印加することにより、また、本願にて教示されている単結晶パッシベーション層を用いずに構成されたデバイスについては1アレイあたり60Aの連続波(CW)パワーを印加することにより行われた。
図10に示されているように、本願にて開示されている新規のプロセスを使用して単結晶パッシベーション層を用いて構成されたデバイスの正規化されたパワー(1002)は、単結晶パッシベーション層を用いないデバイス(1004)に対して相対的に格段に長い時間にわたって有意に高くなった。外部ボリュームブラッググレーティング帰還部によって発光レーザビーム品質が改善されるが、
図10の80Aで動作するデバイスと
図9の95Aで動作するデバイスとの寿命差により分かるように、外部ボリュームブラッググレーティング帰還部によって寿命の短縮も生じ得ることになる。
【0080】
上記の実施例が示すように、本願にて開示されている新規のレーザダイオード作製プロセスにより、優れた性能、信頼性および寿命を有するレーザデバイスが達成される。さらに上記の実施例により、本願にて開示されている新規のプロセスは、レーザデバイス故障の根本的原因としてのCOMDを無くすことも可能であることが分かる。
【0081】
他の実施形態
本発明の詳細な説明を参照して本発明を説明したが、上記説明は、本発明を詳解するためのものであって、本発明の範囲を限定することを意図したものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって定まると解すべきである。他の側面、利点および改良形態も、以下の特許請求の範囲に属する。