特許第6934904号(P6934904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6934904バイオフィルム除去のための結合モイエティ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6934904
(24)【登録日】2021年8月26日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】バイオフィルム除去のための結合モイエティ
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20210906BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20210906BHJP
   C07K 16/08 20060101ALI20210906BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20210906BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20210906BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20210906BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20210906BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20210906BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20210906BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20210906BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20210906BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20210906BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20210906BHJP
   A61P 9/14 20060101ALI20210906BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20210906BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20210906BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20210906BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20210906BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20210906BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20210906BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20210906BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210906BHJP
【FI】
   C12N15/13ZNA
   C12P21/08
   C07K16/08
   C12Q1/02
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   A61K38/02
   A61K39/395 N
   A61K39/395 R
   A61K48/00
   A61P1/02
   A61P9/00
   A61P9/14
   A61P11/00
   A61P11/02
   A61P13/02 105
   A61P17/02
   A61P27/16
   A61P31/04
   A61P37/06
   A61P43/00 105
【請求項の数】9
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2019-61094(P2019-61094)
(22)【出願日】2019年3月27日
(62)【分割の表示】特願2016-517452(P2016-517452)の分割
【原出願日】2014年9月26日
(65)【公開番号】特開2019-141055(P2019-141055A)
(43)【公開日】2019年8月29日
【審査請求日】2019年4月26日
(31)【優先権主張番号】61/926,828
(32)【優先日】2014年1月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521055703
【氏名又は名称】トレリス・バイオサイエンス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100187540
【弁理士】
【氏名又は名称】國枝 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】カウバー、 ローレンス エム.
(72)【発明者】
【氏名】ライザー、 ステファン
(72)【発明者】
【氏名】エステルス、 アンジェレス
(72)【発明者】
【氏名】サイモン、 レイナ ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】バカレッツ、ローレン オプレムカク
(72)【発明者】
【氏名】グッドマン、スティーブン デービッド
【審査官】 佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−529893(JP,A)
【文献】 Current Opinion in Structural Biology (2004), Vol.14, pp.28-35
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)のIHFタンパク質の56〜78番目のアミノ酸残基に対する親和性を有する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
前記抗体が、モノクローナル抗体(mAb)、Fv抗体、二重特異性抗体、及び完全抗体から選択される、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
ヒトmAb、またはネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ヤギもしくはヒツジ適合mAbである、請求項1または請求項2に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)のIHFタンパク質の56〜78番目のアミノ酸残基が、RDKSSRPGRNPKTGDVVAASARR(配列番号50)、RDKRERPGRNPKTGEEIPISARR(配列番号52)、RDKRQRPGRNPKTGEEIPITARR(配列番号53)、又はRDKNQRPGRNPKTGEDIPITARR(配列番号54)から選択される、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
産業プロセスに関連したバイオフィルムの形成を防止するか、または該バイオフィルムを破壊する方法であって、バイオフィルムの影響を受けやすい表面またはバイオフィルムを含む表面を、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントで処理することを含んでなる方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントを生産する組換え発現系を含むように改変された組換え宿主細胞であって、ここで、該発現系が、1つ以上の発現のための異種制御配列に機能的に連結された該抗体またはその抗原結合フラグメントをコードするヌクレオチド配列を1つ以上含む、宿主細胞。
【請求項7】
インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)のIHFタンパク質に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを調製する方法であって、請求項6に記載の細胞を培養すること、及び該抗体またはその抗原結合フラグメントを回収することを含んでなる方法。
【請求項8】
対象におけるバイオフィルムの形成により特徴づけられる該対象の疾患を治療する方法において用いられるための、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
前記疾患が、心臓弁心内膜炎、静脈性潰瘍および糖尿病性足潰瘍を含む慢性の非治癒性創傷、耳感染症、副鼻腔感染症、尿路感染症、肺感染症、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患カテーテル関連感染症、移植補綴物に関連した感染症、ならびに歯周病である、請求項8に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫反応を抑制しかつ抗生物質に対して細菌を耐性にするバイオフィルム(菌膜)を溶解するための方法および組成物に関する。より具体的には、本発明は、前記バイオフィルムの完全な構造の形成に重要なタンパク質に対する親和性が、バイオフィルム構成要素に対するこれらのタンパク質の親和性を超えている、ヒト細胞由来もしくはヒト抗体遺伝子を発現するトランスジェニック動物由来のモノクローナル抗体、または他の種の天然の抗体のヒト化形態であるモノクローナル抗体に関する。また、この特性を有するモノクローナル抗体全般および他の結合モイエティ(binding moiety)も包含される。
【背景技術】
【0002】
細菌感染がバイオフィルムの形成につながる可能性があり、該バイオフィルムは、免疫系から細菌を保護し、かつ大部分の抗生物質に対して細菌を耐性にする静止低成長状態に入るように誘導することが当技術分野でよく理解されている(Donlan,R.M.,et al.,Clin.Microbiol.Rev.(2002)15:167−193)。その結果、除去することが非常に困難な、持続性で反復性の感染症となる。これらのバイオフィルムは、主な構成要素として、一般にDNABIIタンパク質(そのホモログがほとんどの細菌種で見つかっている)と呼ばれる特定のタンパク質によって共に保持された分岐DNA分子を含んでいる(Goodman,S.D.,et al.,Mucosal.Immunity(2011)4:625−637)。これらのタンパク質の実質的な相同性はバイオフィルムの共同形成を容易にし、こうした特徴が治療の観点から細菌をさらに厄介なものにしている。本発明は、このクラスのタンパク質に対して十分に高い親和性を有する結合モイエティにより、バイオフィルムから該タンパク質を引き抜き、それによって、該タンパク質が有する、分岐DNAと結合して一緒になって保持する能力を破壊することにより、バイオフィルムを破壊する効果的な方法を提供する、という概念に基づいている。DNABIIタンパク質に対する結合モイエティはまた、バイオフィルム中に存在する他の構成要素に結合する能力をも破壊する可能性がある。
【0003】
結合モイエティ(その中でモノクローナル抗体またはそのフラグメントが重要な実施形態である)は、バイオフィルムに直接供給されるか、またはDNABIIタンパク質(複数可)を閉じ込めるための免疫吸着剤を提供するため表面の被覆に使用され得る。用途としては、全身投与、皮下、局所または吸入投与による細菌感染症の治療、ならびにパイプラインおよび他の産業機器に影響を与える菌付着の低減が挙げられる。動物における対応するバイオフィルム関連疾患への適応もまた、本発明の一部である。
【0004】
国際公開公報第WO2011/123396は、このようなバイオフィルムの広範囲にわたる議論を提供しており、DNABIIタンパク質それ自体に相当するポリペプチドを対象に投与し、バイオフィルムの完全性を破壊できる抗体を該生物に生成させることにより、バイオフィルムが除去できることを示唆している。本公報はまた、他の方法として、エクスビボ(ex vivo)で生物の外側に存在するバイオフィルムに、または受動感染防御を付与するために対象に、抗体それ自体を供給することを示唆している。
【0005】
このPCT出願は、一般的な耳の感染症(中耳炎)の動物モデルと歯周病の動物モデルを治療するために、特定のDNABIIタンパク質(大腸菌(E.coli)の組込み宿主因子(IHF))に対して生成されたポリクローナル抗体を使用することについて記載している。また、当該公報は、該タンパク質、または該タンパク質を代表するペプチドを対象に提供することによって、能動免疫を生じさせることを記載している。このタンパク質に対する、所望の親和性を有するモノクローナル抗体については一切記載されていない。IHFタンパク質のホモログに対する異種間活性(cross−species activity)を示す結合モイエティについてもいかなる開示も存在しない。両方の特性を達成することは、有効な薬物の探索への大きな障害となっている。本発明はこうした障害を克服して、受動免疫のための改善された薬剤を提供する。
【発明の概要】
【0006】
発明の開示
本発明は、DNABIIタンパク質と結合するのに特に有効であり、したがって、バイオフィルムを溶解するのに有効である、アプタマー、タンパク質模倣体、またはモノクローナル抗体もしくはそのフラグメントなどの、結合モイエティの均一な組成物を提供する。よって、本発明は、一態様において、少なくとも1種類のDNABIIタンパク質に対する親和性を有し、該親和性がDNABIIタンパク質に対する分岐DNA(バイオフィルムの構成要素)の親和性を超える、モノクローナル抗体(mAb)などの結合モイエティに関する。使用される抗体はいずれも、哺乳動物対象、特にヒト対象またはネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギもしくはウマ対象での使用を想定する場合、これらの対象と全身的に適合することが特に好ましい。このような天然のmAbは、他の供給源からのmAbよりも、体内の他のタンパク質に結合するリスクが低いため、毒性リスクがより低くなる。同様に、対象由来の天然mAbの免疫原性は、他のmAb由来のmAbよりも低く、そのため反復投与を容易にすることが期待される。本明細書に示される特定の結合モイエティは、mAbであるTRL295、TRL1012、TRL1068、TRL1070、TRL1087、TRL1215、TRL1216、TRL1218、TRL1230、TRL1232、TRL1242およびTRL1245の重鎖のCDR領域を少なくとも含有し、任意に軽鎖のCDR領域を含有する。しかし、例えば、アプタマー、ラクダ型一本鎖抗体のような抗体の改変体などの、他のタイプの結合モイエティも本発明の範囲内に含まれる。
【0007】
本発明はさらに、バイオフィルムを溶解するかまたはその形成を防止するために本発明の結合モイエティを用いることによって、産業プロセスに関連したバイオフィルムを処理する方法に関する。この場合、結合モイエティが十分な多様性を持つ方が適しており、mAbの種起源は問題とはならない。結合モイエティはまた、バイオフィルムを溶解するために、またはその形成を防止するために、対象に局所的に適用することができる。結合モイエティはまた、バイオフィルムの処理のために全身投与することもできる。
【0008】
さらに他の態様において、本発明は、タンパク質である本発明の結合モイエティを調製するための組換え材料および方法、ならびにDNABIIタンパク質を調製するための改善された組換え方法に関する。
【0009】
他の態様において、本発明は、免疫原として使用されるDNABIIタンパク質の新規な発現系、ならびに複数の細菌種における薬剤耐性を阻害する物質を同定するためにこれらのDNABIIタンパク質を使用する方法に関する。後者の方法は、複数の微生物種によって産生されたDNABIIタンパク質への結合活性について物質を評価することを含んでなる。
【0010】
本発明はまた、大腸菌DNABIIのIHFα鎖の予測された免疫原性エピトープ領域にまたがる特定の単離されたペプチド、ならびにこれらのペプチドを免疫原として使用することによってIHFタンパク質に対する抗体を生成させる方法に関する。
【0011】
さらに別の態様において、本発明は、バイオフィルムが薬剤耐性を引き起こすヒトまたは動物の疾患を治療する方法に関する。例として、以下が挙げられる:心臓弁心内膜炎(バイオフィルムに関連した耐性のために高用量の抗生物質でも治癒することができない症例のかなりの割合が、外科的弁置換を必要とする)、慢性の非治癒性創傷(静脈性潰瘍および糖尿病性足潰瘍を含む)、耳および副鼻腔感染症、尿路感染症、肺感染症(嚢胞性線維症および慢性閉塞性肺疾患を有する対象を含む)、カテーテル関連感染症(腎透析患者を含む)、移植補綴物(股関節および膝関節置換を含む)を有する対象、ならびに歯周病。この方法は哺乳動物全般の対象において有効であり、したがって、家庭で飼うペットにも適用可能である。例えば、3歳以上のイヌの85%は、バイオフィルムが原因で治療するのが困難な歯周病に罹患している(Kortegaard,H.E.,et al.,J.Small Anim.Pract.(2008)49:610−616)。同様に、本発明は家畜を治療するためにも有用である。例えば、乳房炎がある乳牛からの培養物の98%は、バイオフィルム生産に関連した細菌感染症を示す:Polianade Castro Melo,et al.,Brazilian J.Microbiology(2013)44:119−124)。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A図1Aは、抗体の攻撃を特に受けやすそうな(スコア0.9以上)、IHF上の部位をコンピュータで解析した結果を示す。インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae(Hi))のIHFの残基10−25、56−78、および86−96が有望な標的として同定される。
図1B図1Bは、IHFタンパク質の結晶構造(プロテインデータバンク(pdb)において1OWFと名付けられた構造に基づく)上にマッピングされた抗原部位と思われる部位を示す。
図2図2は、さまざまな細菌種のIHFタンパク質における本発明の予測エピトープの位置を示す。
図3A図3Aは、DNAと複合体化された、天然の二量体の形のIHFタンパク質の三次元モデルを示す。
図3B図3Bは、予測された高度に抗原性の領域(表示した暗い領域(カラー版では赤色の領域))を示す。図1で同定されたエピトープ2および3は、バイオフィルムに豊富に存在するDNAにより免疫系への暴露から部分的に遮蔽されている。
図4A図4Aは、標的タンパク質に結合しないアイソタイプ対照mAb(増殖対照)、またはDNABIIタンパク質上の保存されたエピトープに対する天然のヒトmAbであるTRL1068を1.2μg/mL(約10nM)用いて、12時間処理した黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus(Sa))のバイオフィルムを示す。TRL1068は、低倍率(500×)と高倍率(2500×)(走査型電子顕微鏡画像)の両方で明らかなように、バイオフィルムの溶解を引き起こした。
図4B図4Bは、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa(Pa))のバイオフィルムに対する同様な実験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、バイオフィルムを溶解することができる、単クローン性のまたは均一な性質の、さまざまな結合モイエティを包含する。「単クローン性の」は、結合モイエティが、均一な集団を形成することができることを意味し、これはモノクローナル抗体とポリクローナル抗体の区別と似たものである。一つの重要な実施形態として例示される結合モイエティは、mAbまたはそのフラグメントである。ほとんどの実施形態では、結合モイエティは少なくとも1種類のDNABIIタンパク質に対する親和性を低ナノモル範囲で有する−すなわち、そのKdは、10nM〜100nMの範囲内(25nMまたは50nM等の介在値を含む)であり、好ましい実施形態として<10nMであってもよい。
【0014】
本明細書中で以下の実施例に開示する例示的な抗体がヒト由来であるように、本発明の抗体の定常領域は、ヒトでの反復使用において特に有利であるヒトの定常領域である。mAbを投与される対象が非ヒトである場合は、その種に由来する天然のmAbを投与することが反復使用にとって有利である。あるいは、ヒト可変領域の等価物を、必要に応じて治療すべき宿主種由来のFc領域に融合させて、使用することができる。この可変領域は、いくつかの実施形態では、Fab部分、または重鎖と軽鎖の両方からのCDR領域を含む一本鎖抗体であり得る。これらの可変領域の等価物の二重特異性形態も構築することができ、多数の構築物が文献に記載されている。典型的な「mAb」は、対象において使用されるタンパク質またはポリペプチド(「タンパク質」、「ポリペプチド」および「ペプチド」は、長さに関係なく、本明細書中で交換可能に使用される)であるが、mAbはまた、核酸の送達によっても供給することができ、該核酸はその後タンパク質をin situで生成する。さらに、これらのポリペプチドまたはタンパク質の結合特性を模倣する核酸分子を構築することができる−すなわち、アプタマーは、結合モイエティを模倣することができることから、以下の記載のように同定された分子と結合するように構築することができる。アプタマーがタンパク質ベースの結合モイエティの模倣に成功したかどうかは、生化学的および機能的の両面において、該アプタマーの親和性が治療効果にとって十分であることを確認することで検証することができる。
【0015】
タンパク質ベースの単クローン性の結合モイエティとして、典型的なモノクローナル抗体、または該抗体と同一の抗原に対して免疫学的に特異的である該抗体のフラグメントに加えて、一本鎖抗体の形態(例えばラクダ、ラマまたはサメ由来のものなど)を含む、他の足場タンパク質のさまざまな形態を使用することができるだけでなく、例えばフィブロネクチン、リポカリン、水晶体クリスタリン、テトラネクチン、アンキリン、プロテインA(Ig結合ドメイン)などの他の足場に基づく抗体模倣体を使用することもできる。構造化された短鎖ペプチドもまた、それらが十分な親和性および特異性を提供する場合には使用することができ、例えば、コノトキシンまたはトリ膵臓ペプチドなどの本質的に安定した構造に基づくペプチド、あるいは非天然アミノ酸の使用および/または架橋により安定した構造を実現するペプチド模倣体が使用される:Josephson K.,et al.,J.Am.Chem.Soc(2005)127(33):11727−11725)。一般に、「モノクローナル抗体(mAb)」は、上記のすべてを包含する。
【0016】
本明細書で使用する用語「抗体」は、「フラグメント」が重複して記載される場合でも、伝統的な抗体の免疫反応性フラグメントを包含する。したがって、抗体には、Fab、F(ab’)、Fvフラグメント、実質的に可変領域のみを含む一本鎖抗体、二重特異性抗体、および免疫特異性を保持するそれらの様々なフラグメント化形態、ならびに、より伝統的な、天然に存在する抗体の可変領域の活性に近似するアミノ酸配列または修飾アミノ酸配列を含むことによって「天然」の抗体の活性を模倣するタンパク質全般(すなわち、擬似ペプチド)が含まれる。
【0017】
mAbの可変領域に関して、周知のように、重要なアミノ酸配列は、フレームワーク(必ずしも特異性に影響を与えることなく、または許容できないレベルに親和性を低下させることなく、変更することができる)上に配置されたCDR配列である。これらのCDR領域の定義は、当技術分野で公知の方法により成し遂げられる。具体的には、関連するCDR領域を同定するための最もよく使用される方法は、Wu,T.T.,et al.,J.Exp.Med.(1970)132:211−250および書籍Kabat,E.A.,et al.(1983)Sequence of Proteins of Immunological Interest,Bethesda National Institute of Health,323ページに開示されるような、Kabatの方法である。よく利用される別の類似する方法は、Chothia,C.,et al.,J.Mol.Biol.(1987)196:901−917およびChothia,C.,et al.,Nature(1989)342:877−883に発表された、Chothiaの方法である。さらなる改変は、Abhinandan,K.R.,et al.,Mol.Immunol.(2008)45:3832−3839により提案されている。本発明は、これらのシステムまたは当技術分野で公知の他の一般に認められたシステムのいずれかによって定義されるCDR領域を包含する。
【0018】
既述の通り、本発明のmAbの結合特異性はCDR領域、たいていは重鎖のCDR領域によって規定されるが、軽鎖のCDR領域によっても補完される(軽鎖は幾分か交換可能である)。したがって、本発明のmAbは、重鎖の3つのCDR領域と、任意に、それにマッチする軽鎖の3つのCDR領域を含むことができる。本発明はまた、これらのCDR領域を実際に含むものと同じエピトープに結合する結合物質を包含する。よって、例えば、同じ結合特異性を有するアプタマー−すなわち、CDR領域を実際に含むmAbが結合するエピトープと同じエピトープに結合するアプタマーも含まれる。結合親和性はまた、CDRがフレームワーク上に配置される方法によって決定されるので、本発明のmAbは、3つの関連するCDRを含む重鎖の完全な可変領域、ならびに任意で、当該重鎖を補完する軽鎖と関連した3つのCDRを含む完全な軽鎖可変領域を含むことができる。このことは、単一のエピトープに免疫特異的なmAbに関してだけでなく、2つの別個のエピトープ、例えば2つの細菌種からの分岐したDNABIIタンパク質、に結合できる二重特異性抗体または結合モイエティに対しても当てはまる。
【0019】
本発明のmAbは、公知の技術を用いて組換え的に産生させることができる。よって、本明細書に記載する新規な抗体について、本発明はまた、それらをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子、ならびにこれらのヌクレオチド配列を含むベクターまたは発現系、これらの発現系またはベクターを含有する、これらのヌクレオチド配列を発現させるための細胞、およびこれらの細胞を培養して、産生された結合モイエティを回収することによる結合モイエティの製造方法に関する。組換え方法に一般的に使用されるあらゆる細胞を使用することができ、例えば、原核細胞、酵母、哺乳動物細胞、昆虫細胞および植物細胞を利用することができる。新規抗体をコードする組換え分子で形質転換されたヒト細胞(例えば、筋肉細胞またはリンパ球)も含まれる。
【0020】
二重特異性の結合モイエティは、異なる特異性を有する2つの異なる結合モイエティを共有結合で連結することによって形成することができる。例えば、1つの単一特異性mAb由来の重鎖および任意に軽鎖のCDR領域を、適当な連結手段を介して、第2のmAbの重鎖配列および任意に軽鎖のCDR領域を含むペプチドに結合させることができる。その連結がアミノ酸配列を介している場合は、二重特異性結合モイエティを組換え的に産生させることができ、二重特異性エンティティ(entity)全体をコードする核酸を組換え的に発現させることができる。単一の特異性を有する結合モイエティの場合と同様に、本発明はまた、CDR領域を実際に含む二重特異性の抗体または結合エンティティ/結合モイエティと同じエピトープの一方または両方に結合する結合モイエティをも包含する。
【0021】
本発明はさらに、完全な重鎖および軽鎖配列を含む二重特異性構築物、または完全な重鎖配列および少なくとも軽鎖のCDRを含む二重特異性構築物、または重鎖のCDRおよび完全な軽鎖配列を含む二重特異性構築物を包含する。
【0022】
本発明はまた、二重特異性モイエティをコードする核酸、およびそれらを産生させるための組換え方法に関する。
【0023】
現在では、2つの別個の抗体からの抗原特異性ドメインを組み込んだ単一の抗体様分子(二重特異性抗体)を作製するために、多くの技術が存在する。したがって、それぞれグループ1とグループ2に広い反応性を示す個別の抗体のFabドメインを用いて、非常に広範な菌株反応性を有する単一の抗体を構築することができる。適当な技術は、Macrogenics社(Rockville,MD)、Micromet社(Bethesda,MD)およびMerrimac社(Cambridge,MA)により記載されている。(例えば、Orcutt,K.D.,Ackerman,M.E.,Cieslewicz,M.,Quiroz,E.,Slusarczyk,A.L.,Frangioni,J.V.,Wittrup,K.D.,「A Modular IgG−scFv Bispecific Antibody Topology(モジュラーIgG−scFv二重特異性抗体トポロジー)」,Protein Eng.Des.Sel.(2010)23:221−228;Fitzgerald,J.,Lugovskoy,A.,「Rational Engineering of Antibody Therapeutics Targeting Multiple Oncogene Pathways(複数の癌遺伝子経路を標的とする抗体治療薬の合理的エンジニアリング)」,MAbs.(2011)1:3(3);Baeuerle,P.A.,Reinhardt,C.,「Bispecific T−cell Engaging Antibodies for Cancer Therapy(癌治療用の二重特異性T細胞エンゲージング抗体)」,Cancer Res.(2009)69:4941−4944を参照されたい。)
【0024】
本発明はまた、上述のmAbなどの本発明の結合モイエティの、候補ペプチドまたは他の分子への結合を評価することにより、抗体を生成するために用いるのに適した免疫原を同定する方法を包含する。これは、適切な免疫原を同定するためだけでなく、本発明の結合モイエティを模倣するアプタマーを設計するための基礎として使用できる物質を同定するためにも有効である。この方法は、ワクチン免疫原が最も有効なmAbに結合することができない場合、そのような抗体を誘導しないであろうという事実に基づいている。反対に、最適なmAbの正確な結合相手となる免疫原は、最適なmAbの模倣体を構築するのに有用なテンプレートとなる。最も単純な形では、この方法は、結合モイエティ(例えば本発明のmAbの1つ)をアッセイ成分として利用し、候補免疫原のライブラリ中の候補免疫原に対する結合モイエティの結合力を試験する。結合モイエティが結合した免疫原は、脊椎動物対象、例えばマウス、ウサギ、ラット、他の哺乳動物またはトリ対象に、それらを投与することによって、バイオフィルム処置用のさらなる抗体を生成させるために使用することができる。
【0025】
また、本発明の結合モイエティのさまざまな細菌の薬剤耐性を克服する能力は、多様な微生物種からのDNABIIタンパク質のパネルまたはライブラリに対して本発明の結合モイエティを試験することによって、評価することができる。多様な該タンパク質と効果的に結合することができる結合モイエティは、バイオフィルム全般を溶解するのに適切なだけでなく、さまざまな微生物株に対して有効なものとして同定される。また、酸性環境において有用性がある結合モイエティを同定することが有用であり、ここで、広範囲のpH条件にわたってDNABIIタンパク質に対する候補結合モイエティの親和性が試験され、pH4.5において低ナノモルの親和性を有する結合モイエティを酸性環境で有用性があるとして同定することができる。
【0026】
本発明の結合モイエティは、DNABIIタンパク質に対するバイオフィルム構成要素の親和性よりも大きい、少なくとも1種類のDNABIIタンパク質に対する親和性を有するか否かについて検証することができ、当該検証は、DNABIIタンパク質に対する本発明の結合モイエティの親和性を、DNABIIタンパク質に対するバイオフィルム構成要素(典型的には分岐DNA)の親和性と比較することを含んでなる。これは競合アッセイで行われるか、または親和性を別々に測定して行うことができる。
【0027】
これらのアッセイに使用するDNABIIタンパク質は、哺乳動物細胞において比較的高い収量で調製することができる。
【0028】
上記アッセイのすべては、さまざまな方法で2つの予想される結合パートナー同士の結合を評価することを含む。
【0029】
2つの有望な結合パートナーの結合が成功するか否かを評価するために、多くのタイプのアッセイが利用可能である。例えば、結合パートナーの一方を固相支持体に結合させて、他方を放射性物質、蛍光物質または比色物質で標識し、未結合の標識を除去した後に、固相支持体への標識の結合を測定する。このアッセイは、言うまでもなく、結合モイエティを固相支持体に付着させて候補免疫原もしくはDNABIIタンパク質を標識する方法、またはその逆に、該候補を固相支持体に結合させて結合モイエティを標識する方法のいずれでも行うことができる。あるいは、SDS−PAGEなどの分子量に基づくクロマトグラフィー手段により複合体を検出することができる。結合アッセイとの関連において、検出可能な標識はどの時点で添加してもよい。したがって、例えば、mAbまたは他の結合モイエティを固相支持体に結合させる場合、候補免疫原を添加し、更に該免疫原に特異的な標識成分を加えて結合を測定することができる。結合を検出するための何百ものアッセイ方法が当技術分野で公知であり、例えば、両成分がタンパク質である場合には、酵母ツーハイブリッドアッセイなどがある。
【0030】
本発明の結合モイエティの有用性の直接的な利用に加えて、適切かつ強力な免疫原の同定がより洗練された一連の実験で判定することができ、ここで、DNABIIタンパク質に対するmAbのパネルが取得され、有効性の順にランク付けされる。追加される結合モイエティが以前のパネルのメンバーとの結合について競合するかどうかを評価することによって、すべての可能性のあるエピトープに対する抗体または他の結合モイエティの完全なセットを作製することができる。完全なセットの各メンバーを代表する結合mAbのエピトープは、免疫原の可能性のある重複エピトープを提示するペプチドアレイへの結合によって、またはX線結晶構造解析、NMRもしくは低温電子顕微鏡観察によって得ることができる。より効果的でないmAbと比較して最も効果的なmAbにより認識されるエピトープとして定義される最適なエピトープの空間的および化学的特性を最適なワクチン抗原は保持するであろうが、必ずしも直鎖状のペプチドである必要はない。それは非天然アミノ酸または他の架橋モチーフを含んでいてもよい。
【0031】
さらに、スクリーニングは、抗体によって認識される蓋然性、及び、細菌種間での保存に基づいて選択されたペプチドを含むことができる。以下の実施例3に記載するように、IHFの場合には、これら2つの基準は、単一のペプチド−インフルエンザ菌の残基56−78および他のアナログの対応する位置−に集まっている。
【0032】
本明細書に記載する特定のmAbを用いなくても、能動免疫ワクチンに有用であるだけでなく、アプタマーを選択するための標的として有用である、最適な免疫原を取得することができる。具体的には、インフルエンザ菌の位置56−78に加えて、インフルエンザ菌の位置10−25および86−96のペプチドが同定される。
【0033】
本発明の別の態様は、一般的には細菌にいくらか毒性である細菌/微生物DNABIIタンパク質をより高い収量で調製する方法である。これらのタンパク質の標準的な調製方法は、Nash,H.A.,et al.,J.Bacteriol(1987)169:4124−4127に記載されており、そこでは、大腸菌のIHFは、該タンパク質の両鎖(IHFαおよびIHFβ)が同じ形質転換体において産生される場合、効率的に調製され得ることが示された。本出願人らは、HEK293細胞において両鎖を一過性に産生させることによって、IHFを5〜10mg/lの高収量で得ることができることを見出した。高レベルでは細菌に毒性である細菌タンパク質は、哺乳動物細胞により発現させるのに都合がよく、特に、このように発現させたときに該タンパク質の修飾をもたらすグリコシル化部位のないものの場合にそうである。得られたタンパク質の精製は、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)を用いて行うことができる。
【0034】
用途
抗体を含む本発明の結合モイエティは、バイオフィルムを生じさせる感染症にかかりやすいいかなる対象の治療および予防においても有用である。したがって、各種の哺乳動物、例えばウシ、ヒツジ、および他の哺乳動物対象(ウマ、ペットなど)、ならびにヒトは、これらのmAbの予防・治療的使用から恩恵を受けることができる。
【0035】
本発明の結合モイエティは、さまざまな方法で投与することができる。抗体(二重特異性型および一本鎖型または代替足場型を含む)のCDR領域に基づくペプチドは、標準的な賦形剤を含む獣医学的または薬学的組成物として直接投与することができる。リポソーム組成物は特に有用であり、各種タイプのミセルまたは他のナノ粒子を含む組成物も同様である。mAbと同様の結合物質として働くアプタマーは、同じ方法で投与することができる。さらに、バイオフィルムからIHFを引き抜くための免疫吸着剤として機能するように、例えばPEG、アガロースまたはデキストランなどの文献で知られた固相支持体のいずれかに結合物質を結合させることができる。あるいは、ペプチドベースのmAbは、RNAもしくはDNAそのままや、ベクターまたは発現構築物のいずれかの形で、コードする核酸として投与することができる。ベクターはアデノウイルスベクター(AAV)などの非複製ウイルスベクターであってよく、また、核酸配列はリポソームまたは他の脂質粒子に封入したmRNAとして投与することもできる。薬物としての核酸の使用は、それらのタンパク質対応物とは対照的に、製造コストを抑えるのに有益である。
【0036】
これらは、静脈内、皮下、筋肉内、局所(特に慢性の非治癒性創傷および歯周病の場合)、吸入および経口を含むさまざまなプロトコルで、または座薬により投与される。同様の投与経路を、結合モイエティ自体に関して使用することができる。結合モイエティ自体(アプタマー)またはタンパク質形態の結合モイエティをコードする核酸のいずれかである核酸ベースの形態を投与するための1つの有用な方法は、無針アプローチ、例えば、US2001/0171260に記載されるアグロジェット(agro−jet)無針注射器を介するものである。
【0037】
本明細書に記載するIHFタンパク質のエピトープを表すペプチドはまた、in situで抗体を生成してバイオフィルムを破壊するという免疫原性応答を刺激するための、ワクチンの有効成分として有用である。これらの免疫原または同様に有効であるペプチド模倣体の投与のタイプは、さまざまな種類の抗体などの結合モイエティの投与のタイプに類似する。ペプチド模倣体は、それ自体が、本明細書に記載の免疫原性ペプチドを模倣するアプタマーまたは別の構造体の形態であり得る。しかし、タンパク質またはペプチドである免疫原については、投与は、これらのタンパク質をin situで生成するよう形態のコーディング核酸の形態で行なってもよい。製剤化、投与経路、および投与量は、当業者によって従来通りに決定される。
【0038】
バイオフィルム制御のための抗体の能動的生成のためにワクチンタイプが投与される疾患か、または抗体自体を投与することによって受動的治療が施される疾患の種類には、バイオフィルムの形成を特徴とする疾患、またはバイオフィルムの形成に関連する疾患が含まれる。これらの疾患としては、以下が挙げられる:自然発症と移植の両方の心臓弁心内膜炎(症例のかなりの割合が、バイオフィルムに関連した耐性のために、高用量の抗生物質でも治癒することができない)、慢性の非治癒性創傷(静脈性潰瘍および糖尿病性足潰瘍を含む)、耳および副鼻腔感染症、尿路感染症、肺感染症(嚢胞性線維症および慢性閉塞性肺疾患を有する対象を含む)、カテーテル関連感染症(腎透析患者を含む)、移植補綴物(股関節および膝関節置換を含む)を有する対象、ならびに歯周病。
【0039】
上述したように、本発明の結合モイエティは、それらの有用性が治療(または診断)用途に限定されるものではなく、パイプラインまたは他の産業上の設定など、バイオフィルムが問題となるどのような状況においても使用することができる。こうした状況でのバイオフィルムへの結合モイエティの適用形態は、従来から行われているものである。
【0040】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供され、本発明を限定するためのものではない。
【実施例】
【0041】
実施例1
抗体の作製
ヒト末梢抗体を産生する記憶B細胞は、インフォームドコンセントの下で、回復した敗血症患者から、または匿名の血液バンクドナーから取得した。該細胞は、インフルエンザウイルス由来のDNABIIタンパク質に結合する能力を判定するために、CellSpot(商標)アッセイに供した。CellSpot(商標)アッセイは、米国特許第7,413,868号および第7,939,344号に記載されている。全血からB細胞を単離した後、それらをサイトカインとマイトジェンで刺激して、短期間の増殖および抗体分泌を開始させ(約10日間持続する)、アッセイに供するためにプレーティングした;コーディング核酸を抽出して、抗体を組換え的に産生させるために使用した。
【0042】
DNABIIタンパク質またはその断片の少なくとも1つへの結合に基づいて選択された抗体の特性を評価した:TRL295、TRL1012、TRL1068、TRL1070、TRL1087、TRL1215、TRL1216、TRL1218、TRL1230、TRL1232、TRL1242およびTRL1245。親和性は、オン速度(on rate)とオフ速度(off rate)(その比はKdをもたらす)を測定するために、ForteBio(商標)社製のOctet(商標)バイオセンサを用いて測定した。その結果から、高親和性の異種菌株間(cross−strain)結合性抗体を単離するための集中的なスクリーニングの実現可能性が確立される。
【0043】
TRL295 重鎖可変領域は次のアミノ酸配列を有する:
QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFPFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGNGADSYYADSVKGRFTTSRDKSKNTVYLQMNRLRAEDTAVYYCAKDMRRYHYDSSGLHFWGQGTLVTVSS (配列番号1);
TRL295 軽鎖可変領域は次のアミノ酸配列を有する:
DIELTQAPSVSVYPGQTARITCSGDALPKQYAYWYQQKPGQAPVVVIYKDSERPSGISERFSGSSSGTTVTLTISGVQAGDEADYYCQSVDTSVSYYVVFGGGTKLTVL (配列番号2);
【0044】
TRL1012 重鎖可変領域は次のアミノ酸配列を有する:
QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFPFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGNGADSYYADSVKGRFTTSRDKSKNTVYLQMNRLRAEDTAVYYCAKDMRRYHYDSSGLHFWGQGTLVTVSS (配列番号3);
TRL1012 軽鎖可変領域は次のアミノ酸配列を有する:
DIMLTQPPSVSAAPGQKVTISCSGSSSNIGTNYVSWFQQVPGTAPKFLIYDNYKRPSETPDRFSGSKSGTSATLDITGLQTGDEANYYCATWDSSLSAWVFGGGTKVTVL (配列番号4);
【0045】
TRL1068 重鎖可変領域は次のアミノ酸配列を有する:
QVQLVESGPGLVKPSETLSLTCRVSGDSNRPSYWSWIRQAPGKAMEWIGYVYDSGVTIYNPSLKGRVTISLDTSKTRFSLKLTSVIAADTAVYYCARERFDRTSYKSWWGQGTQVTVSS (配列番号5);
TRL1068 軽鎖可変領域は次のアミノ酸配列を有する:
DIVLTQAPGTLSLSPGDRATLSCRASQRLGGTSLAWYQHRSGQAPRLILYGTSNRATDTPDRFSGSGSGTDFVLTISSLEPEDFAVYYCQQYGSPPYTFGQGTTLDIK (配列番号6);
【0046】
TRL1070 重鎖可変領域は次のアミノ酸配列を有する:
QVQLVQSGGTLVQPGGSLRLSCAASGFTFSYYSMSWVRQAPGKGLEWVANIKHDGTERNYVDSVKGRFTISRDNSEKSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKYYYGAGTNYPLKYWGQGTRVTVSS (配列番号7);
TRL1070 軽鎖κ可変領域は次のアミノ酸配列を有する:
DILMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGIRNDLGWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCLQDYNYPLTFGGGTKVEIKR (配列番号8);
【0047】
TRL1087 重鎖可変領域は次のアミノ酸配列を有する:
QVQLLESGPGLVRPSDTLSLTCTFSADLSTNAYWTWIRQPPGKGLEWIGYMSHSGGRDYNPSFNRRVTISVDTSKNQVFLRLTSVTSADTAVYFCVREVGSYYDYWGQGILVTVSS (配列番号9);
TRL1087 軽鎖κ可変領域は次のアミノ酸配列を有する:
DIEMTQSPSSLSASVGDRITITCRASQGISTWLAWYQQKPGKAPKSLIFSTSSLHSGVPSKFSGSGSGTDFTLTITNLQPEDFATYYCQQKWETPYSFGQGTKLDMIR (配列番号10);
【0048】
TRL1215 重鎖可変領域は次のアミノ酸配列を有する:
QVQLVESGTEVKNPGASVKVSCTASGYKFDEYGVSWVRQSPGQGLEWMGWISVYNGKTNYSQNFQGRLTLTTETSTDTAYMELTSLRPDDTAVYYCATDKNWFDPWGPGTLVTVSS (配列番号11);
TRL1215 軽鎖λ可変領域は次のアミノ酸配列を有する:
DIVMTQSPSASGSPGQSITISCTGTNTDYNYVSWYQHHPGKAPKVIIYDVKKRPSGVPSRFSGSRSGNTATLTVSGLQTEDEADYYCVSYADNNHYVFGSGTKVTVL (配列番号12);
【0049】
TRL1216 重鎖可変領域は次のアミノ酸配列を有する:
QVQLVESGGGVVQPGGSLRVSCAASAFSFRDYGIHWVRQAPGKGLQWVAVISHDGGKKFYADSVRGRFTISRDNSENTLYLQMNSLRSDDTAVYYCARLVASCSGSTCTTQPAAFDIWGPGTLVTVSS (配列番号13);
TRL1216 軽鎖λ可変領域は次のアミノ酸配列を有する:
DIMLTQPPSVSVSPGQTARITCSGDALPKKYTYWYQQKSGQAPVLLIYEDRKRPSEIPERFSAFTSWTTATLTITGAQVRDEADYYCYSTDISGDIGVFGGGTKLTVL (配列番号14);
【0050】
TRL1218 重鎖可変領域は次のアミノ酸配列を有する:
QVQLLESGADMVQPGRSLRLSCAASGFNFRTYAMHWVRQAPGKGLEWVAVMSHDGYTKYYSDSVRGQFTISRDNSKNTLYLQMNNLRPDDTAIYYCARGLTGLSVGFDYWGQGTLVTVSS (配列番号15);
TRL1218 軽鎖λ可変領域は次のアミノ酸配列を有する:
DIVLTQSASVSGSPGQSITISCTGTSSDVGGYNYVSWYQQHPGKAPKLMIYDVTTRPSGVSDRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCSSYSSGSTPALFGGGTQLTVL (配列番号16);
【0051】
TRL1230 重鎖可変領域は次のアミノ酸配列を有する:
QVQLVQSGGGLVKPGGSLRLSCGASGFNLSSYSMNWVRQAPGKGLEWVSSISSRSSYIYYADSVQGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAIYYCARVSPSTYYYYGMDVWGQGTTVTVSS (配列番号17);
TRL1230 軽鎖λ可変領域は次のアミノ酸配列を有する:
DIVLTQPSSVSVSPGQTARITCSGDELPKQYAYWYQQKPGQAPVLVIYKDNERPSGIPERFSGSSSGTTVTLTISGVQAEDEADYYCQSADSSGTYVVFGGGTKLTVL (配列番号18);
【0052】
TRL1232 重鎖可変領域は次のアミノ酸配列を有する:
QVQLVESGAEVKKPGALVKVSCKASGYTFSGYYMHWVRQAPGQGLEWMGWINPKSGGTKYAQKFQGRVTMTRDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYFCARGGPSNLERFLERLQPRYSYDDKYAMDVWGQGTTVTVSS (配列番号19);
TRL1232 軽鎖κ可変領域は次のアミノ酸配列を有する:
DIVMTQSPGTLSLSPGARATLSCRASQSVSSIYLAWYQQKPGQAPRLLIFGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPYTFGQGTKLEIKR (配列番号20);
【0053】
TRL1242 重鎖可変領域は次のアミノ酸配列を有する:
QVQLVQSGTEVKKPGESLKISCEGSRYNFARYWIGWVRQMPGKGLDWMGIIYPGDSDTRYSPSFQGQVSISADKSISTAYLQWNSLKASDTAMYYCARLGSELGVVSDYYFDSWGQGTLVTVSS (配列番号21);
TRL1242 軽鎖κ可変領域は次のアミノ酸配列を有する:
DIVLTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSVLDRSNNKNCVAWYQQKPGQPPKLLIYRAATRESGVPDRFSGSGSGTDFSLTISSLQAEDVAVYFCQQYYSIPNTFGQGTKLEIKR (配列番号22); かつ
【0054】
TRL1245 重鎖可変領域は次のアミノ酸配列を有する:
QVQLVESGGGLVKAGGSLRLSCVASGFTFSDYYMSWIRQAPGKGLEWISFISSSGDTIFYADSVKGRFTVSRDSAKNSLYLQMNSLKVEDTAVYYCARKGVSDEELLRFWGQGTLVTVSS (配列番号23);
TRL1245 軽鎖可変領域は次のアミノ酸配列を有する:
DIVLTQDPSVSVSPGQTARITCSGDALPKKYAYWYQQKSGQAPVLVIYEDTKRPSGIPERFSGSSSGTVATLTISGAQVEDEADYYCYSTDSSGNQRVFGGGTKLTVL (配列番号24)。
【0055】
TRL295の可変領域をコードするヌクレオチド配列は次のとおりである:
重鎖
caggtgcagctggtgcagtctgggggaggcttggtacagcctggggggtccctgagactctcctgtgcagcctctggatttaccttcagtgattatagtatgaactgggtccgccaggctccagggaagggactggaatggctttcatacattagtcacactattactaccatatactacgccgactctgtgaagggccgattcaccatctccagagacaatgccgacagctcactgtatctccaaatgaacagcctgggagacgaggacacggctgtgtattactgtgcgagagctccattagtaaactgtagtactagtggctgccagtccggaagctggttcgacacctggggccagggaaccctggtcaccgtctcctca (配列番号25);
軽鎖
gatatcgagctgactcaggcaccctcggtgtcagtgtatccaggacagacggccaggatcacctgctctggagatgcactgccaaagcaatatgcttattggtaccagcagaagccaggccaggcccctgtggtggtgatatataaagacagtgagaggccctcagggatctctgagcgattctctggctccagctcggggacaacagtcacgttgaccatcagtggagtccaggcaggggacgaggctgactattattgtcaatcagttgacaccagtgtttcttattatgtggtcttcggcggagggaccaagttgaccgtccta (配列番号26)
【0056】
TRL1012の可変領域をコードするヌクレオチド配列は次のとおりである:
重鎖
caggtgcagctggtggagtccgggggaggcttggtacagcctggggggtccctgagactttcctgtgccgcctctggattccccttcagtagttatgccatgagttgggtccgtcaggctccagggaaggggctggagtgggtctcagccatcagtggcaacggcgctgactcatattacgcagactccgtgaagggccgcttcaccacttccagagacaagtccaagaatacagtttatttgcaaatgaacagactcagggccgaggacacggccgtatattactgtgcgaaagatatgcgacggtatcattatgacagtagtggtctgcacttctggggccagggaaccctggtcaccgtctcctca (配列番号27);
軽鎖
gatatcatgctgactcagcccccctcagtgtctgcggcccccggacagaaggtcaccatctcctgctctggaagcagctccaacattgggacgaattatgtgtcctggttccagcaggtcccaggaacagcccccaaattcctcatttatgacaattataaacgaccctcagaaactcctgaccgattctctggctccaagtctggcacgtcggccaccctggacatcaccggactccagactggggacgaggccaattattactgcgcaacatgggacagtagcctgagtgcttgggtgttcggcggagggaccaaggtgaccgtcctg (配列番号28)
【0057】
TRL1068の可変領域をコードするヌクレオチド配列は次のとおりである:
重鎖
caggtgcagctggtggagtccggcccaggactggtgaagccttcggagaccctgtccctcacctgcagggtctctggtgactccaatcggccttcctactggagctggatcaggcaggccccagggaaggcaatggagtggataggttatgtctatgacagtggggtcaccatctacaatccctccctcaagggtcgagtcacaatatcactagacacgtcgaagacgcggttctccctgaaactgacctctgtgatcgctgcggacacggccgtatattattgtgcgcgagaacgttttgatcggacatcgtataagagttggtggggccagggaacgcaggtcaccgtctcctca (配列番号29);
軽鎖
gatatcgtgctgactcaggccccaggcactctgtctttgtctccaggggacagagccaccctctcctgtagggccagtcagcgtcttggcggcacgtccttagcctggtaccagcacagatctggccaggctcccaggctcatcctctacggaacttcaaacagggccactgacacccctgacaggtttagtggcagtgggtctgggacagacttcgttctcaccatcagttccctggagcctgaagattttgcagtgtattactgtcagcaatatggcagcccaccgtacacttttggccaggggaccactctggacatcaaa (配列番号30)
【0058】
TRL1070の可変領域をコードするヌクレオチド配列は次のとおりである:
重鎖
caggtgcagctggtgcagtctgggggaaccttggtccagccgggggggtccctgagactctcctgtgcagcctctggattcacctttagttactactcgatgagctgggtccgccaggctccagggaaggggctggagtgggtggccaacataaagcacgatggaactgagagaaattatgtggactctgtgaagggccgattcaccatctccagagacaacagcgagaagtctctttacctgcaaatgaacagcctgagagccgaggacacggctgtgtattactgtgcgaagtattattatggtgccgggactaattatccccttaagtactggggccagggaacccgggtcaccgtctcctca (配列番号31);
軽鎖
gatatcctgatgacccagtctccatcctccctgtctgcatctgtaggagacagagtcaccatcacttgccgggcaagtcagggcattagaaatgatttaggctggtatcagcagaaaccagggaaagcccctaagctcctgatctatgctgcatccagtttacaaagtggggtcccatcaaggttcagcggcagtggatctggcacagatttcactctcaccatcagcagcctgcagcctgaagattttgcaacttattactgtctacaagattacaattacccgctcactttcggcggagggaccaaggtggagatcaaacga (配列番号32)
【0059】
TRL1087の可変領域をコードするヌクレオチド配列は次のとおりである:
重鎖
caggtgcagctgctcgagtcaggcccaggcctggttaggccctcggacaccctgtccctcacctgcactttttccgctgacctcagcaccaacgcctattggacctggatccggcagcccccaggaaagggactggagtggattggctatatgtctcatagtgggggaagggattacaatccctccttcaaccggcgagtcaccatttcagtggacacgtcgaagaaccaggttttcttgaggctgacgtcagtgacctctgcggacacggccgtctatttctgtgtgagagaagtcggcagttactacgactactggggccagggaatcctggtcaccgtctcctca (配列番号33);
軽鎖
gatatcgagatgacccagtctccatcctctttgtctgcatctgtcggagacagaatcaccatcacttgtcgggcgagtcagggtattagcacctggttagcctggtatcagcagaaaccggggaaagcccctaagtccctgatcttttctacgtccagcctgcatagtggggtcccctcaaagttcagcggcagtgggtctgggacagacttcactctcaccatcaccaacctgcagcctgaagattttgcaacttattactgccaacagaaatgggagaccccttatagttttggccaggggaccaagctggacatgatacga (配列番号34)
【0060】
TRL1215の可変領域をコードするヌクレオチド配列は次のとおりである:
重鎖
caggtgcagctggtggagtctggaactgaggtgaagaaccctggagcctcagtgaaggtctcctgcacggcctctggttacaaatttgacgaatatggtgtcagttgggtgcgacagtcccctggacaaggacttgagtggatgggatggatcagtgtttataatggcaagacaaactatagccagaactttcagggcagactcaccctgaccacagagacatccaccgacacagcctacatggagcttacgagcctcagacctgacgacacggccgtctattactgtgcgacagacaaaaactggttcgacccctggggcccgggaaccctggtcaccgtctcctca (配列番号35);
軽鎖
gatatcgtgatgacccagtctccctccgcgtccgggtctcctggacagtcaatcaccatctcctgcactggaaccaacactgattataattatgtttcctggtaccagcaccaccccggcaaagcccccaaagtcattatttatgacgtcaaaaagcggccctcgggggtccctagtcgcttctctggctccaggtctggcaacacggccaccctgaccgtctctgggctccagactgaggatgaggctgattattattgtgtctcatatgcagacaacaatcattatgtcttcggaagtgggaccaaggtcaccgtcctg (配列番号36)
【0061】
TRL1216の可変領域をコードするヌクレオチド配列は次のとおりである:
重鎖
caggtgcagctggtggagtccgggggaggcgtggtccagcctggagggtccctgagagtctcctgtgcagcctctgcgttcagtttcagggattatggcatacactgggtccgccaggctccaggcaaggggctgcaatgggtggcggttatttcacatgatggaggtaagaaattctatgcagactccgtgaggggccgattcaccatctccagagacaattccgagaacacactgtatctccaaatgaacagcctgagatctgacgacacggctgtctattactgtgcgaggctcgttgccagttgcagtggttccacctgcacaacgcaacctgctgcctttgacatttggggcccagggacattggtcaccgtctcttca (配列番号37);
軽鎖
gatatcatgctgactcagccgccctcggtgtcagtgtccccaggacaaacggccaggatcacctgctctggagatgcattgccaaaaaaatatacttattggtatcagcagaagtcaggccaggcccctgttctgctcatctatgaggacaggaaacgaccctccgagatccctgagagattctctgccttcacctcatggacgacggccaccttgactatcactggggcccaggtgagagatgaagctgactactactgttattcaacagacatcagtggtgatataggagtgttcggcggagggaccaagctgaccgtccta (配列番号38)
【0062】
TRL1218の可変領域をコードするヌクレオチド配列は次のとおりである:
重鎖
gatatcgtgctgactcagtcggcctccgtgtctgggtctcctggacagtcgatcaccatctcctgcactggaaccagcagtgacgttggtggatataactatgtctcctggtaccaacaacacccaggcaaagcccccaaactcatgatttatgatgtcactactcggccttcaggggtttctgatcgcttctctggctccaagtctggcaacacggcctccctgaccatctctgggctgcaggctgaggacgaggctgattattattgcagctcatattcaagcggctccacacctgctctgtttggggggggcacccagctgaccgtcctc (配列番号39);
軽鎖
gatatcgtgctgactcagtcggcctccgtgtctgggtctcctggacagtcgatcaccatctcctgcactggaaccagcagtgacgttggtggatataactatgtctcctggtaccaacaacacccaggcaaagcccccaaactcatgatttatgatgtcactactcggccttcaggggtttctgatcgcttctctggctccaagtctggcaacacggcctccctgaccatctctgggctgcaggctgaggacgaggctgattattattgcagctcatattcaagcggctccacacctgctctgtttggggggggcacccagctgaccgtcctc (配列番号40)
【0063】
TRL1230の可変領域をコードするヌクレオチド配列は次のとおりである:
重鎖
caggtgcagctggtgcagtctgggggaggcctggtcaagcctggggggtccctgagactctcctgtggagcctctggatttaacctcagtagttatagcatgaactgggtccgccaggctccagggaaggggctggagtgggtctcatccattagtagtagaagtagttacatatactatgcagactcagtgcagggccgattcaccatctccagagacaacgccaagaactcactgtatctgcaaatgaacagcctgagagccgaggacacggctatatattactgtgcgagagtatctccgtccacctattattattatggtatggacgtctggggccaagggaccacggtcaccgtctcctca (配列番号41);
軽鎖
gatatcgtactcactcagccgtcctcggtgtcagtgtccccaggacagacggccaggatcacctgctctggagatgaattgccaaagcaatatgcttattggtaccagcagaagccaggccaggcccctgtgttggtaatatataaagacaatgagaggccctcagggatccctgagcgattctctggctccagctcagggacaacagtcacgttgaccatcagtggagtccaggcagaagacgaggctgactattactgtcaatcagcagacagtagtggtacttatgtggtgttcggcggagggaccaagctgaccgtccta (配列番号42)
【0064】
TRL1232の可変領域をコードするヌクレオチド配列は次のとおりである:
重鎖
caggtgcagctggtggagtctggggctgaggtgaagaagcctggggccttagtgaaggtctcctgcaaggcttctggatacaccttcagcggctactatatgcactgggtgcgacaggcccctggacaagggcttgagtggatgggatggatcaaccctaagagtggtggcacaaagtatgcacagaagtttcagggccgggtcaccatgaccagggacacgtccatcagcacagcctacatggagttgagcaggctaagatctgacgacacggccgtgtatttctgtgcgagaggcggaccttcaaatttggaacgatttttggagaggttacaaccccgctacagttacgacgacaagtatgctatggacgtctggggccaagggaccacggtcaccgtctcctca (配列番号43);
軽鎖
gatatcgtgatgacccagtctccaggcaccctgtctttgtctccaggggcaagagccaccctctcctgcagggccagtcagagtgttagcagcatctatttagcctggtaccagcagaaacctggccaggctcccaggctcctcatctttggtgcatccagcagggccactggcatcccagacaggttcagtggcagtgggtctgggacagacttcactctcaccatcagcagactggagcctgaagattttgcagtgtattactgtcagcagtatggtagctcaccgtacacttttggccaggggaccaagctggagatcaaacgaa (配列番号44)
【0065】
TRL1242の可変領域をコードするヌクレオチド配列は次のとおりである:
重鎖
caggtgcagctggtgcagtctggaacagaagtgaaaaagcccggggagtctctgaagatctcctgtgagggttctcgatacaactttgccaggtactggatcggctgggtgcgccagatgcccggaaaaggcctggactggatggggatcatctatcctggtgactccgataccagatacagcccgtccttccaaggccaggtcagcatctcagccgacaagtccatcagtaccgcctacctgcagtggaacagcctgaaggcctcggacaccgccatgtattattgtgcgagacttgggagcgagcttggagtggtctctgattattactttgactcctggggccagggaaccctggtcaccgtctcctca (配列番号45);
軽鎖
gatatcgtgttgactcagtctccagactccctggctgtgtctctgggcgagagggccaccatcaactgcaagtccagccagagtgttttagacaggtccaacaataagaactgtgtagcttggtaccagcagaaaccgggacagcctcctaaactgctcatttaccgggctgctacccgggaatccggggtccctgatcgattcagtggcagcgggtctgggacagacttcagtctcaccatcagcagcctgcaggctgaagatgtggcagtttatttctgtcagcaatattatagtattccgaacacttttggccaggggaccaagctggagatcaaacga (配列番号46)
【0066】
TRL1245の可変領域をコードするヌクレオチド配列は次のとおりである:
重鎖
caggtgcagctggtggagtctgggggaggcttggtcaaggctggagggtccctgagactctcctgtgtagcctctggattcaccttcagcgactactacatgtcctggattcgccaggctccagggaaggggctggagtggatttcatttattagtagtagtggtgataccatattttacgcagactctgtgaagggccgattcaccgtctccagggacagcgccaagaactcactgtatcttcaaatgaacagcctgaaagtcgaggacacggccgtgtattactgtgcgaggaagggggtgtccgacgaggaactactgcgcttctggggccagggaaccctggtcaccgtctcctca (配列番号47);
軽鎖
gatatcgtgctgactcaggacccctcggtgtcagtgtccccaggacaaacggccaggatcacctgctctggagatgcattgccaaaaaaatatgcttattggtaccagcagaagtcaggccaggcccctgtgctggtcatctatgaggacaccaaacgaccctccgggatccctgagagattctctggctccagctcagggacagtggccaccttgactatcagtggggcccaggtggaggatgaagctgactactattgttactcaacagacagcagcggtaatcagagggtattcggcggagggaccaagctgaccgtccta (配列番号48)
【0067】
実施例2
親和性の測定
アッセイ法の実施には、約1mgのIHFを必要とした。IHFを細菌において発現させるのは困難である(それは遺伝子調節に係る二重機能を有しており、高レベルを発現する細菌に毒性をもたらすからである)。したがって、mAb探索に十分な量の物質を細菌供給源から取得することは、困難(かつ高価)である。そのため、該タンパク質をHEK293(哺乳動物)細胞において発現させ、精製を容易にするためにポリヒスチジンタグを用いた。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus (Sa))、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa (Pa))、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae (KP))およびインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae (Hi))からのホモログは、すべてこの方法で調製した。これらの4種は、DNABIIファミリーの配列の多様性のかなりの部分にわたっているので、特に有用である。
【0068】
TRL295は、インフルエンザ菌のIHFペプチドに高い親和性で結合し、さらに追加の細菌種からのIHFに結合することが示された。
【0069】
以下の表は、さまざまな細菌種由来の種々のIHFおよびHUタンパク質のインフルエンザ菌に対する同一性の程度を示している。
【0070】
【表1】
【0071】
さらに、TRL295の高親和性結合は、以下に示すように、pHが生理的pH(pH7.5)からpH4.5に低下したときでさえ、保持されることが示された。
【0072】
【表2】
【0073】
細菌は、免疫系の攻撃を阻止する方法として、局所微小環境のpHを低下させる乳酸を分泌することが多いことから、この結果は重要である。
【0074】
以下の表は、種々のDNABIIタンパク質の結合を測定するためのELISAアッセイを行った結果を示す。数字は、TRL1068との比較のために有用なOD値を表す−より高い数値はより高い結合親和性を表す。TRL1068は、4種すべてのホモログに対して同様の結合を示すが、BSAに対しては低い結合を示し、TRL1215も同様である。略語は次のとおりである:
Hi=インフルエンザ菌;Kp=肺炎桿菌;
Pa=緑膿菌;Sa=黄色ブドウ球菌
【0075】
【表3】
【0076】
標的タンパク質に対するTRL1068の親和性は、ForteBio社製Octet(商標)バイオセンサモデルQK(Pall Corporation; Menlo Park, CA)を用いて直接測定し、オン速度とオフ速度の比を測定する標準的な方法によりKdを求めた(Ho D,et al.,BioPharm.International(2013)48−51)。その値は次のとおりであった:黄色ブドウ球菌(Sa)に関して1nM、緑膿菌(Pa)に関して1nM、肺炎桿菌(Kp)に関して7nM、およびインフルエンザ菌(Hi)に関して350nM。
【0077】
実施例3
集中的mAb探索のためのエピトープ選択
抗原性(抗体応答の誘導)の可能性を分析するためのコンピュータによる方法は、当技術分野で公知である(BMC Bioinformatics(2008)9:514中でJ.Ponomarenkoらによってレビュー)。これらの発表された方法の改良法を用いて、インフルエンザ菌由来のIHFについて、プロテイン・データ・バンクで見出された公開構造(pdb 1OWF)に基づく構造モデルから可能性のあるエピトープのマップを作成した(図1B)。図1Aの表示では、それぞれ11アミノ酸セグメントの中点の残基に数値を割り当てた。0.9以上の数値は、抗体結合を起こす可能性が高い領域を示す。
【0078】
3つの領域が抗体によって認識される可能性が高いとして同定された:領域10−25、56−78、および86−96。
【0079】
図2に示すように、IHFタンパク質の残基56−78の領域は、複数の臨床的に重要な細菌種間で実質的に保存されている。複数の種由来のIHFの構造モデリングから、相同性は、特にDNA結合領域において、高いことが確認された(Swinger,K.K.,et al.,Current Opinion in Structural Biology(2004)14:28−35)。この最適な領域と部分的にしか重複しないペプチドは、関連する三次元構造に自然発生的に折りたたまれにくく、かつ、その立体構造に固定するために化学的に架橋することもより困難である。このようにして天然のタンパク質に忠実となるように最適化することは、mAb探索および免疫原としての該ペプチドの使用のどちらにも有利である。
【0080】
上述したように、このようにして同定されたエピトープは、インフルエンザ菌IHFの10−25番目:IEYLSDKYHLSKQDTK (配列番号49);インフルエンザ菌IHFの56−78番目:RDKSSRPGRNPKTGDVVAASARR (配列番号50);およびインフルエンザ菌IHFの86−96番目:QKLRARVEKTK (配列番号51)である。
【0081】
図3Aは、DNAと複合体化したIHF二量体のコンピュータによる構築を示す。本発明のB細胞エピトープは図3Bに示される。図3Aは、結合した場合、エピトープがDNAによって部分的にマスクされることを示す。しかし、露出した場合には、該タンパク質のこれらの部分は、それらに結合可能な高親和性の抗体を生成させることができ、バイオフィルムの形成を防止し、またはDNABIIタンパク質が抗体によって隔離されるので確立されたバイオフィルムの構造的完全性を失わせることが可能である。DNABIIタンパク質上の他の部位もまた、バイオフィルムの構成要素に対する該タンパク質の親和性と比較して、より高い親和性のmAbによる結合により、バイオフィルムから該タンパク質を引き抜きくことを達成するのに十分でありうる。
【0082】
実施例4
インビトロ生物活性評価
TRL1068は、Innovotech社(Edmonton,Alberta;カナダ)からの市販のアッセイを用いて生物活性について試験した。バイオフィルムは、緑膿菌(ATCC 27853)または黄色ブドウ球菌(ATCC 29213)を含む培地に曝した96ウェルマイクロプレートフォーマットのピン上に複数を複製するよう形成させた。バイオフィルムの形成後、ピンを、非免疫性のアイソタイプ対照mAb、または1.2μg/mL(約10nM)のTRL1068で異なるウェルを12時間処理した。図4の処理表面の走査型電子顕微鏡写真から明らかなように、TRL1068は、バイオフィルムを溶解させるのに非常に有効であった。これらの結果から、このmAbはバイオフィルムを分解することができ、それによって付着した細菌を除去することが立証される。
【0083】
実施例5
インビボ生物活性評価
いくつかの動物モデルが活性の評価のために存在する。例えば、バーゼル大学病院(University Hospital Basel(スイス))では、移植補綴物上のバイオフィルムのためのモデルは、テフロン(登録商標)組織ケージ(Angst+Pfister社;チューリッヒ,スイス)をBALB/cマウスに皮下移植し、次いで該マウスを2週間治癒させることを含む。ケージから流体を抽出することによってケージの無菌性を確認した後、その部位に、周術期感染を模倣する接種材料として4×10CFU(コロニー形成単位)の黄色ブドウ球菌(ATCC 35556)を感染させる。24時間後、その部位に薬物を注入する。72時間後、マウスを屠殺して、組織ケージを回収する。血液寒天上にプレーティングすることによって生菌をカウントする(Nowakowska J.,et al.,Antimicrob Agents Chemother(2013)57:333)。
【0084】
2番目の例は、心臓弁上にバイオフィルムを誘導することを含むモデルであり、自然発症弁心内膜炎を模倣するものである(Tattevin P.,et al.,Antimicrob Agents Chemother(2013)57:1157)。ニュージーランド白ウサギに麻酔をかける。右頸動脈を切断し、大動脈弁を横切ってポリエチレンカテーテルを配置し、所定の位置に固定する。24時間後、1mLの生理食塩水と8×10CFUの黄色ブドウ球菌をカテーテルから注入すると、動物の95%においてバイオフィルム感染を誘導する。薬物(抗バイオフィルムおよび抗生物質)を静脈内投与し、4日後に組織病理および血中細菌レベルにより有効性を評価する。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]