特許第6934982号(P6934982)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6934982身体状態モニタリングシステム、及びベッドシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6934982
(24)【登録日】2021年8月26日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】身体状態モニタリングシステム、及びベッドシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20210906BHJP
   A61G 7/043 20060101ALI20210906BHJP
【FI】
   A61B5/00 102A
   A61G7/043
【請求項の数】11
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2020-92265(P2020-92265)
(22)【出願日】2020年5月27日
【審査請求日】2021年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100179280
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 育郎
(72)【発明者】
【氏名】大森 清
(72)【発明者】
【氏名】清水 信貴
(72)【発明者】
【氏名】藤井 匡信
(72)【発明者】
【氏名】田坂 敦史
(72)【発明者】
【氏名】秀島 雄介
(72)【発明者】
【氏名】尾田 大和
【審査官】 増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−148656(JP,A)
【文献】 特開2009−240661(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/070389(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/183527(WO,A1)
【文献】 特開2018−19763(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0005502(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/01
A61G 7/043
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッド上の被験者の身体状態をモニタする身体状態モニタリングシステムであって、
ベッド又はベッドの脚下に設けられて前記被験者の荷重を検出する複数の荷重検出器と、
前記ベッド上の臭気を検出する臭気検出部と、
前記検出された被験者の荷重の時間的変動に基づいて前記被験者の排便予兆動作を推定する予兆動作推定部と、
前記臭気検出部の検出結果と前記予兆動作推定部の推定結果とに基づいて前記被験者による排便の有無を判定する排泄判定部とを備える身体状態モニタリングシステム。
【請求項2】
前記検出された荷重に基づいて前記被験者の重心位置の時間的変動を求める重心位置算出部を更に備え、
前記予兆動作推定部は、前記被験者の重心位置の時間的変動に基づいて前記被験者の排便予兆動作を推定する請求項1に記載の身体状態モニタリングシステム。
【請求項3】
前記検出された荷重に基づいて前記被験者の重心位置の時間的変動を求める重心位置算出部と、
所定時間内に移動する前記重心位置の移動距離に基づいて、前記重心位置の時間的変動から前記被験者の呼吸とは異なる大きな体動に応じて変動する大きな体動成分を決定し、前記重心位置の時間的変動から該大きな体動成分を除去する大きな体動成分除去部と、
前記重心位置の移動方向に基づいて、前記重心位置の時間的変動から前記被験者の呼吸とは異なる小さな体動に応じて変動する小さな体動成分を決定し、前記重心位置の時間的変動から該小さな体動成分を除去する小さな体動成分除去部とを更に備え、
前記排泄判定部は、前記臭気検出部の検出結果、前記予兆動作推定部の推定結果、及び前記大きな体動成分と前記小さな体動成分とが除去された前記重心位置の時間的変動に基づいて前記被験者の排泄状態を判定する請求項1に記載の身体状態モニタリングシステム。
【請求項4】
前記重心位置の移動距離又は前記検出された荷重の時間的変動の周波数に基づいて、前記大きな体動成分と前記小さな体動成分とが除去された前記重心位置の時間的変動から前記被験者の排便及び/又は排尿に応じて変動する排便排尿成分を特定する排便排尿成分特定部を更に備え、
前記排泄判定部は、前記臭気検出部の検出結果、前記予兆動作推定部の推定結果、及び前記排便排尿成分特定部の特定結果とに基づいて、前記被験者の排泄状態を判定する請求項3に記載の身体状態モニタリングシステム。
【請求項5】
前記排泄状態の判定は、排泄の有無、及び排泄が排便、排尿、及び放屁のいずれであるかの判定を含む請求項3又は4に記載の身体状態モニタリングシステム。
【請求項6】
前記予兆動作推定部は、前記被験者の重心位置の時間的変動に基づいて前記被験者の排便予兆動作を推定する請求項3〜5のいずれか一項に記載の身体状態モニタリングシステム。
【請求項7】
ベッド上の被験者の身体状態をモニタする身体状態モニタリングシステムであって、
ベッド又はベッドの脚下に設けられて前記被験者の荷重を検出する複数の荷重検出器と、
前記検出された荷重に基づいて前記被験者の重心位置の時間的変動を求める重心位置算出部と、
所定時間内に移動する前記重心位置の移動距離に基づいて、前記重心位置の時間的変動から前記被験者の呼吸とは異なる大きな体動に応じて変動する大きな体動成分を決定し、前記重心位置の時間的変動から該大きな体動成分を除去する大きな体動成分除去部と、
前記重心位置の移動方向に基づいて、前記重心位置の時間的変動から前記被験者の呼吸とは異なる小さな体動に応じて変動する小さな体動成分を決定し、前記重心位置の時間的変動から該小さな体動成分を除去する小さな体動成分除去部と、
前記ベッド上の臭気を検出する臭気検出部と、
前記大きな体動成分と前記小さな体動成分とが除去された前記重心位置の時間的変動と前記臭気検出部の検出結果とに基づいて前記被験者の排泄状態を判定する排泄判定部とを備える身体状態モニタリングシステム。
【請求項8】
前記重心位置の移動距離又は前記検出された荷重の時間的変動の周波数に基づいて、前記大きな体動成分と前記小さな体動成分とが除去された前記重心位置の時間的変動から前記被験者の排便及び/又は排尿に応じて変動する排便排尿成分を特定する排便排尿成分特定部を更に備え、
前記排泄判定部は、前記排便排尿成分特定部の特定結果と前記臭気検出部の検出結果とに基づいて前記被験者の排泄状態を判定する請求項7に記載の身体状態モニタリングシステム。
【請求項9】
前記臭気検出部は、総揮発性有機化合物(TVOC)センサ及び/又は二酸化窒素センサである請求項1〜8のいずれか一項に記載の身体状態モニタリングシステム。
【請求項10】
前記複数の荷重検出器は、前記ベッドの四隅に設けられた四つの脚部の下にそれぞれが設置される4つの荷重検出器である請求項1〜9のいずれか一項に記載の身体状態モニタリングシステム。
【請求項11】
ベッドと、
請求項1〜10のいずれか一項に記載の身体状態モニタリングシステムとを備えるベッドシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体状態モニタリングシステム、及びベッドシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院の入院患者の看護や、介護施設の入所者の介護においては、患者や要介護者がおむつを着用している場合もある。また、おむつの中に排便や排尿があったことを検知して適切なタイミングでおむつ交換を行うことを可能とすべく、特許文献1や特許文献2に記載のシステムが提案されている。
【0003】
特許文献1には、被験者の排泄の有無を、ベッドに加えられる荷重に基づいて求めた全体重心の位置と、ベッドに加えられる荷重から分離した呼吸成分(被験者の呼吸に応じて振動する成分)に基づいて求めた呼吸重心の位置との比較に基づいて判定する身体状態モニタリングシステムが記載されている。
【0004】
特許文献2には、被介護者等が載置される載置台からガス経路を介して吸引されたガスの湿度変化に基づいて、被介護者等の排泄を検知する排泄検知システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018−19763号
【特許文献2】特開2013−78566号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
患者や被介護者等に排泄があった場合にこれを適切に検知できなければ、患者や被介護者等は、例えばおむつが汚れた状態のまま放置されてしまう恐れがある。反対に、患者や被介護者等に排泄がない場合に排泄があったとの誤検知がなされれば、患者や被介護者等への不要なアクセスが増え、患者や被介護者等にとって煩わしいばかりでなく、医療従事者、介護従事者等に不要な負担をかけることになる。
【0007】
したがって、患者や被介護者等に排泄、特に排便があったことの適切な検知を可能として、必要な処置、例えばおむつ交換等を適切なタイミングで行うことを可能とすることが望まれている。これにより、患者や被介護者等のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を向上させることができ、同時に医療従事者、介護従事者等の負担も軽減できる。
【0008】
上記に鑑み、本発明は、被験者に排便があったこと、又は排便若しくは排尿があったことをより高い精度で検知することのできる身体状態モニタリングシステム、及びベッドシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に従えば、
ベッド上の被験者の身体状態をモニタする身体状態モニタリングシステムであって、
ベッド又はベッドの脚下に設けられて前記被験者の荷重を検出する複数の荷重検出器と、
前記ベッド上の臭気を検出する臭気検出部と、
前記検出された被験者の荷重の時間的変動に基づいて前記被験者の排便予兆動作を推定する予兆動作推定部と、
前記臭気検出部の検出結果と前記予兆動作推定部の推定結果とに基づいて前記被験者による排便の有無を判定する排泄判定部とを備える身体状態モニタリングシステムが提供される。
【0010】
第1の態様の身体状態モニタリングシステムは、前記検出された荷重に基づいて前記被験者の重心位置の時間的変動を求める重心位置算出部を更に備えてもよい。第1の態様の身体状態モニタリングシステムにおいて、前記予兆動作推定部は、前記被験者の重心位置の時間的変動に基づいて前記被験者の排便予兆動作を推定してもよい。
【0011】
第1の態様の身体状態モニタリングシステムは、 前記検出された荷重に基づいて前記被験者の重心位置の時間的変動を求める重心位置算出部と、所定時間内に移動する前記重心位置の移動距離に基づいて、前記重心位置の時間的変動から前記被験者の呼吸とは異なる大きな体動に応じて変動する大きな体動成分を決定し、前記重心位置の時間的変動から該大きな体動成分を除去する大きな体動成分除去部と、前記重心位置の移動方向に基づいて、前記重心位置の時間的変動から前記被験者の呼吸とは異なる小さな体動に応じて変動する小さな体動成分を決定し、前記重心位置の時間的変動から該小さな体動成分を除去する小さな体動成分除去部とを更に備えてもよい。第1の態様の身体状態モニタリングシステムにおいて、前記排泄判定部は、前記臭気検出部の検出結果、前記予兆動作推定部の推定結果、及び前記大きな体動成分と前記小さな体動成分とが除去された前記重心位置の時間的変動に基づいて前記被験者の排泄状態を判定してもよい。
【0012】
第1の態様の身体状態モニタリングシステムは、前記重心位置の移動距離又は前記検出された荷重の時間的変動の周波数に基づいて、前記大きな体動成分と前記小さな体動成分とが除去された前記重心位置の時間的変動から前記被験者の排便及び/又は排尿に応じて変動する排便排尿成分を特定する排便排尿成分特定部を更に備えてもよい。第1の態様の身体状態モニタリングシステムにおいて、前記排泄判定部は、前記臭気検出部の検出結果、前記予兆動作推定部の推定結果、及び前記排便排尿成分特定部の特定結果とに基づいて、前記被験者の排泄状態を判定してもよい。
【0013】
第1の態様の身体状態モニタリングシステムにおいて、前記排泄状態の判定は、排泄の有無、及び排泄が排便、排尿、及び放屁のいずれであるかの判定を含んでもよい。
【0014】
第1の態様の身体状態モニタリングシステムにおいて、前記予兆動作推定部は、前記被験者の重心位置の時間的変動に基づいて前記被験者の排便予兆動作を推定してもよい。
【0015】
本発明の第2の態様に従えば、
ベッド上の被験者の身体状態をモニタする身体状態モニタリングシステムであって、
ベッド又はベッドの脚下に設けられて前記被験者の荷重を検出する複数の荷重検出器と、
前記検出された荷重に基づいて前記被験者の重心位置の時間的変動を求める重心位置算出部と、
所定時間内に移動する前記重心位置の移動距離に基づいて、前記重心位置の時間的変動から前記被験者の呼吸とは異なる大きな体動に応じて変動する大きな体動成分を決定し、前記重心位置の時間的変動から該大きな体動成分を除去する大きな体動成分除去部と、
前記重心位置の移動方向に基づいて、前記重心位置の時間的変動から前記被験者の呼吸とは異なる小さな体動に応じて変動する小さな体動成分を決定し、前記重心位置の時間的変動から該小さな体動成分を除去する小さな体動成分除去部と、
前記ベッド上の臭気を検出する臭気検出部と、
前記大きな体動成分と前記小さな体動成分とが除去された前記重心位置の時間的変動と前記臭気検出部の検出結果とに基づいて前記被験者の排泄状態を判定する排泄判定部とを備える身体状態モニタリングシステムが提供される。
【0016】
第2の態様の身体状態モニタリングシステムは、前記重心位置の移動距離又は前記検出された荷重の時間的変動の周波数に基づいて、前記大きな体動成分と前記小さな体動成分とが除去された前記重心位置の時間的変動から前記被験者の排便及び/又は排尿に応じて変動する排便排尿成分を特定する排便排尿成分特定部を更に備えてもよい。第2の態様の身体状態モニタリングシステムにおいて、前記排泄判定部は、前記排便排尿成分特定部の特定結果と前記臭気検出部の検出結果とに基づいて前記被験者の排泄状態を判定してもよい。
【0017】
第1、第2の態様の身体状態モニタリングシステムにおいて、前記臭気検出部は、総揮発性有機化合物(TVOC)センサ及び/又は二酸化窒素センサであってもよい。
【0018】
第1、第2の態様の身体状態モニタリングシステムにおいて、前記複数の荷重検出器は、前記ベッドの四隅に設けられた四つの脚部の下にそれぞれが設置される4つの荷重検出器であってもよい。
【0019】
本発明の第3の態様に従えば、
ベッドと、
第1の態様又は第2の態様の身体状態モニタリングシステムとを備えるベッドシステムが提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の身体状態モニタリングシステム及びベッドシステムによれば、被験者に排便があったこと、又は排便若しくは排尿があったことをより高い精度で検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の実施形態に係る身体状態モニタリングシステムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、荷重検出器、及び臭気検出部の吸気口のベッドに対する配置を示す説明図である。
図3図3は、臭気検出部の構成を示すブロック図である。
図4図4は、身体状態モニタリングシステムを用いた身体状態のモニタリング方法の手順を示すフローチャートである。
図5図5(a)はベッド上の被験者が排便予兆動作をとった時の被験者の重心の時間的変動の一例である、図5(b)は、ベッド上の被験者が排便予兆動作をとった時の荷重信号の時間的変動の一例である。
図6図6(a)はベッド上の被験者が排便予兆動作をとった時の被験者の重心の時間的変動の他の一例である、図6(b)は、ベッド上の被験者が排便予兆動作をとった時の荷重信号の時間的変動の他の一例である。
図7図7(a)はベッド上の被験者が排便予兆動作をとった時の被験者の重心の時間的変動の更に他の一例である、図7(b)は、ベッド上の被験者が排便予兆動作をとった時の荷重信号の時間的変動の更に他の一例である。
図8図8は、排便・排尿軌跡決定部の構成を示すブロック図である。
図9図9は、排便・排尿軌跡決定工程の手順を示すフローチャートである。
図10図10(a)は被験者の重心軌跡の一例を示し、図10(b)は図10(a)に示す重心軌跡を低いサンプリング周波数に変換することにより得られる重心軌跡を示す。
図11図11(a)、図11(b)、図11(c)は、図10(a)に示すベッド上での被験者の重心軌跡から、大きな体動軌跡を取り除いた軌跡を示す。
図12図12は動きベクトルの解析により小さな体動軌跡を特定する方法を説明する説明図である。
図13図13(a)は、総揮発性有機化合物(TVOC)センサの検出結果の一例である。図13(b)は二酸化窒素センサの検出結果の一例である。
図14図14(a)は、TVOCセンサの検出結果の他の一例である。図14(b)は二酸化窒素センサの検出結果の他の一例である。
図15図15(a)は、TVOCセンサの検出結果の更に他の一例である。図15(b)は二酸化窒素センサの検出結果の更に他の一例である。
図16図16は、排泄状態決定工程の手順を示すフローチャートである。
図17図17は、変形例の排泄状態決定工程の手順を示すフローチャートである。
図18図18は、動きベクトルの移動方向を判断する方法を説明する説明図である。
図19図19は、変形例に係るベッドシステムの全体構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<実施形態>
本発明の実施形態の身体状態モニタリングシステム100(図1)について、これをベッドBD(図2)と共に使用して、ベッドBD上の被験者Sの身体状態、具体的には排泄状態をモニタする場合を例として説明する。
【0023】
図1に示す通り、実施形態の身体状態モニタリングシステム100は、荷重検出部1、臭気検出部2、制御部4、記憶部5を主に有する。荷重検出部1及び臭気検出部2と制御部4とは、A/D変換部3を介して接続されている。制御部4には更に表示部6、報知部7、入力部8が接続されている。
【0024】
荷重検出部1は、4つの荷重検出器11、12、13、14を備える(図2)。荷重検出器11、12、13、14のそれぞれは、例えばビーム形のロードセルを用いて荷重を検出する荷重検出器である。このような荷重検出器は例えば、特許第4829020号や特許第4002905号に記載されている。荷重検出器11、12、13、14はそれぞれ、配線又は無線によりA/D変換部3に接続されている。
【0025】
図2に示す通り、荷重検出部1の4つの荷重検出器11〜14は、被験者Sが使用するベッドBDの四隅の脚BL、BL、BL、BLの下端部に取り付けられたキャスターC、C、C、Cの下にそれぞれ配置される。
【0026】
臭気検出部2は、図3に示すとおり、本体部21と、吸引流路22a〜22fとを含む。
【0027】
本体部21は、一例としてベッドBDの近傍の床面上に設置される。本体部21は、総揮発性有機化合物(TVOC)センサ211と、二酸化窒素センサ212とを含む。本体部21は、配線又は無線によりA/D変換部3に接続されている。
【0028】
吸引流路22a〜22fの各々は、ベッドBD上の被験者Sの臀部の近傍の空気を、本体部21のTVOCセンサ211及び二酸化窒素センサ212へと導く流路である。吸引流路22a〜22fの各々は、一例として樹脂で形成された分岐管であり、1つの上流端と2つの下流端とを有する。
【0029】
吸引流路22a〜22fの上流端には吸引口Pa〜Pfが画定されている。図2に示す通り、吸引口Pa〜Pfは、ベッドBDの長さ方向(X方向)の中央部の一方側且つ幅方向(Y方向)の中央部に位置する領域(即ち、長さ方向に沿ってベッドBD上に横たわる被験者Sの臀部近傍に位置する領域)に、マトリックス状に配置されている。長さ方向に隣接する2つの吸引口の間の距離、及び幅方向に隣接する2つの吸引口の間の距離は、一例として30〜100mm程度とし得る。
【0030】
6つの吸引口Pa〜Pfはそれぞれ、被験者Sが着用したおむつから放出される臭気を検出できるように配置されており、具体的には例えばシーツの下側に配置されている。
【0031】
吸引流路22a〜22fの各々の下流端は、一方がTVOCセンサ211に接続されており、他方が二酸化窒素センサ212に接続されている。
【0032】
臭気検出部2は更に、不図示の吸引機構を備える。吸引機構は一例として小型の空気ポンプである。吸引機構は、吸引口Pa〜Pfの近傍の空気をTVOCセンサ211及び二酸化窒素センサ212に送るように、吸引流路22a〜22fに負圧を与える。吸引機構は、例えば、吸引流路22a〜22f内に配置されていてもよく、TVOCセンサ211、二酸化窒素センサ212の下流側に配置されていてもよい。
【0033】
A/D変換部3は、荷重検出部1及び臭気検出部2からのアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器を備え、荷重検出部1、臭気検出部2、及び制御部4にそれぞれ配線又は無線で接続されている。
【0034】
制御部4は、専用又は汎用のコンピュータであり、内部に重心位置算出部41、予兆動作推定部42、排便・排尿軌跡決定部43、及び排泄状態判定部(排泄判定部)44が構築されている。
【0035】
記憶部5は、身体状態モニタリングシステム100において使用されるデータを記憶する記憶装置であり、例えばハードディスク(磁気ディスク)を用いることができる。
【0036】
表示部6は、制御部4から出力される情報を身体状態モニタリングシステム100の使用者に表示する液晶モニタ等の画像表示装置である。
【0037】
報知部7は、制御部4からの情報に基づいて所定の報知を聴覚的に行う装置、例えばスピーカを備える。
【0038】
入力部8は、制御部4に対して所定の入力を行うためのインターフェイスであり、キーボード及びマウスにし得る。
【0039】
このような身体状態モニタリングシステム100を使用して、ベッド上の被験者の身体状態(具体的には排泄状態)をモニタする動作について説明する。
【0040】
身体状態モニタリングシステム100を使用した被験者の身体状態のモニタは、図4のフローチャートに示す通り、被験者の荷重を検出する荷重検出工程S1、検出した荷重(荷重値)に基づいて被験者の重心位置、及び該重心位置の時間的変動の軌跡(重心軌跡)を算出する重心軌跡算出工程S2、被験者の排便に先立って生じる被験者の動作(排便予兆動作。詳細後述)があったことを推定する予兆動作推定工程S3、被験者の排便・排尿に伴って生じる重心移動の軌跡(排便・排尿軌跡。詳細後述)があったことを決定する排便・排尿軌跡決定工程S4、被験者の臭気を検出する臭気検出工程S5、予兆動作推定工程S3、排便・排尿軌跡決定工程S4、臭気検出工程S5の結果に基づいて被験者における排泄(即ち、排便、排尿、放屁)の有無を判定する排泄状態判定工程S6、及び排泄状態判定工程S6の結果を表示する表示工程S7を含む。
【0041】
[荷重検出工程]
荷重検出工程S1では、荷重検出器11、12、13、14を用いてベッドBD上の被験者Sの荷重を検出する。ベッドBD上の被験者Sの荷重は、ベッドBDの四隅の脚BL〜BLの下に配置された荷重検出器11〜14に分散して付与され、これらによって分散して検出される。なお、ここでは、ベッドBDの重量は風袋引きされているものとするが、風袋引きは必須ではない。
【0042】
荷重検出器11〜14はそれぞれ、荷重(荷重変化)を検出してアナログ信号としてA/D変換部3に出力する。A/D変換部3は、サンプリング周期を例えば5ミリ秒として、アナログ信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号(以下「荷重信号」)として制御部4に出力する。以下では、荷重検出器11、12、13、14から出力されたアナログ信号をA/D変換部3においてデジタル変換して得られる荷重信号を、それぞれ荷重信号s、s、s、sと呼ぶ。
【0043】
[重心軌跡算出工程]
重心軌跡算出工程S2では、重心位置算出部41が、荷重検出器11〜14からの荷重信号s〜sに基づいてベッドBD上の被験者Sの重心Gの位置G(X、Y)を所定の周期T(例えば上記のサンプリング周期である5ミリ秒に等しい)で算出し、被験者Sの重心Gの位置の時間的変動(重心軌跡GT)を求める。ここで、(X、Y)は、ベッドBDの中心部を原点Oとして長さ方向にXを、幅方向にYを取ったXY座標面上における座標を示す(図2)。
【0044】
重心位置算出部41による重心Gの位置G(X、Y)の算出は、次の演算により行われる。すなわちG(X、Y)は、荷重検出器11、12、13、14の座標をそれぞれ(X11、Y11)、(X12、Y12)、(X13、Y13)、(X14、Y14)、荷重検出器11、12、13、14の荷重の検出値をそれぞれW11、W12、W13、W14として、次式により算出される。
【数1】
【数2】
【0045】
重心位置算出部41は、上記の数式1、数式2に基づいて重心Gの位置G(X、Y)を所定のサンプリング周期Tで算出しながら、重心Gの位置G(X、Y)の時間的変動、即ち重心軌跡GTを求め、例えば記憶部5に記憶させる。
【0046】
[予兆動作推定工程]
予兆動作推定工程S3では、予兆動作推定部42が、荷重検出部1からの荷重信号s、s、s、s、及び/又はこれらに基づいて算出された重心Gに基づいて、被験者Sが排便予兆動作を行ったと推定する。
【0047】
本発明及び本明細書において「排便予兆動作」とは、ベッド上の被験者が、排便に先立って高い確率で行う所定の動作を意味する。
【0048】
予兆動作推定部42は、次の原理に基づいて、被験者Sが排便予兆動作を行ったとの推定を行う。
【0049】
人間の排便は、大腸に溜まっている便を、直腸を介して肛門から排出することにより行われる。ここで、一般的に排便には、次の3つの力が寄与している。
【0050】
第1の力は、大腸の蠕動運動により便に与えられる力である。この力が、大腸に溜まっている便を直腸へと移動させる。
【0051】
第2の力は、重力である。この力が、直腸内の便の、肛門へと向かう移動を補助する。
【0052】
第3の力は、人間がいきむことにより直腸に与えられる外圧である。この外圧は、具体的には例えば、呼吸筋や腹筋の緊張により生じる。この力が、直腸内の便を肛門に向けて移動させ、且つ肛門を介して体外に排出する。
【0053】
ここで、人間がベッド上に仰臥している状態では、大腸の蠕動運動が生じにくいと言われている。また、人間がベッド上に仰臥している状態では、直腸内の便の位置が肛門よりも下方となってしまい、重力も排便の助けとならない。
【0054】
更に、人間がベッド上に仰臥している状態では、足を安定させて踏み込むことができないため、踏ん張ることが難しい。また、呼吸筋や腹筋に力をいれた際に伝達される力の方向がずれてしまうため、いきみにより直腸に与えられる外圧も小さくなってしまう。
【0055】
即ち、人間がベッド上に仰臥している状態では、排便に寄与する3つの力がいずれも弱くなるかあるいは無くなってしまう。よって、ベッド上に仰臥したまま排便を行うことは、通常、容易ではない。
【0056】
本発明の発明者の知見によれば、ベッド上で排便を行おうとする患者や被介護者等は、高い確率で、上記の3つの力の少なくとも1つが大きくなるように姿勢を変化させる。「排便予兆動作」とは即ち、このような姿勢変化を生むために患者や被介護者等が行う動作である。
【0057】
本発明の発明者は更に、鋭意研究を行い、ベッドの4つの脚の下に配置した荷重検出器の検出値の変動、及び/又はこれらに基づいて算出されたベッド上の被験者の重心位置の変動に基づいて、被験者が排便予兆動作を行ったとの推定を行い得ることを見出した。
【0058】
本実施形態の予兆動作決定部42は、本発明の発明者の上記の知見に基づいて、被験者Sが排便予兆動作を行ったとの推定を行う。具体的には例えば、荷重検出部1からの荷重信号s〜sの変動、及び/又は重心位置算出部41が算出する重心Gの変動が所定のパターンを示したことに基づいて被験者Sが排便予兆動作を行ったと推定する。
【0059】
排便予兆動作の一例は、側臥位となってベッドの柵を掴む動作である。このような排便予兆動作が生じた場合の重心Gの変動の様子、荷重信号s〜sの変動の様子は、図5(a)、(b)、図6(a)、(b)に示す通りである。
【0060】
図5(a)は、時刻tにベッドBDの幅方向中央の近傍で仰臥位をとっている被験者Sが、時刻tに右側臥位となってベッドBDの右側の柵を把持し且つ右側の柵に足を掛け、その後時刻t〜時刻tにかけて断続的にいきんだ場合に生じる重心軌跡GTを示す。時刻tにおける被験者Sの重心GがG(t)であり、時刻t〜tにおける被験者Sの重心GがG(t〜t)である。図示されていないが、G(t〜t)は被験者Sのいきみに応じて断続的にわずかに振動している。この振動に応じた荷重信号s〜sの振動が、図5(b)の時刻t〜tの期間において2回示されている。
【0061】
図6(a)は、時刻tにベッドBDの幅方向中央の近傍で仰臥位をとっている被験者Sが、時刻tに左側臥位となってベッドBDの左側の柵を把持し且つ左側の柵に足を掛け、その後時刻t〜時刻tにかけて断続的にいきんだ場合に生じる重心軌跡GTを示す。時刻tにおける被験者Sの重心GがG(t)であり、時刻t〜tにおける被験者Sの重心GがG(t〜t)である。図示されていないが、G(t〜t)は被験者Sのいきみに応じて断続的にわずかに振動している。この振動に応じた荷重信号s〜sの振動が、図6(b)の時刻t〜tの期間において2回示されている。
【0062】
このように側臥位となることで、直腸内の便の位置と肛門の位置とを略水平とすることができる。したがって、いきみにより直腸に与えるべき力(即ち第3の力)を小さくすることができる。
【0063】
また、側臥位となってベッドの柵をつかみ、足をベッドの柵にかけることで、いきむことが容易となる。更に、側臥位となることで、呼吸筋、腹筋の緊張により生じる押圧力をより効率よく直腸に伝えることができる。
【0064】
排便予兆動作の他の一例は、仰臥位のままでベッドの柵を掴む動作である。このような排便予兆動作が生じた場合の重心Gの変動の様子、荷重信号s〜sの変動の様子は、図7(a)、(b)に示す通りである。
【0065】
図7(a)は、時刻tにベッドBDの幅方向中央の近傍で仰臥位をとっている被験者Sが、時刻tに仰臥位のまま両腕を頭側に移動させてベッドBDの頭側の柵を把持し、且つ両足をまげて足の裏をマットレスの上面に押しあてた姿勢に至り、その後時刻t〜時刻tにかけて断続的にいきんだ場合に生じる重心軌跡GTを示す。時刻tにおける被験者Sの重心GがG(t)であり、時刻t〜tにおける被験者Sの重心GがG(t〜t)である。図示されていないが、G(t〜t)は被験者Sのいきみに応じて断続的にわずかに振動している。この振動に応じた荷重信号s〜sの振動が、図7(b)の時刻t〜tの期間において2回示されている。
【0066】
このように、ベッドの柵を掴み、且つ足の裏をマットレスに接触させた姿勢をとることで、いきむことが容易となり、第3の力を大きくすることができる。
【0067】
予兆動作推定部42は、被験者Gの重心Gが図5(a)〜図7(a)に示すような重心軌跡GTを描いたこと、及び/又は荷重信号s〜s図5(b)〜図7(b)に示すような変動を示したことに基づいて、被験者Sが排便予兆動作を行ったと推定し得る。なお、被験者Sが側臥位となって柵を掴む場合の重心Gのベッド幅方向の移動距離は通常、柵を掴むため、被験者Sが単に側臥位となる場合の移動距離よりも大きい。また、被験者Sのいきみにともなう重心G、荷重信号s〜sの振動も、排便予兆動作の推定を行う際の判断要因の一つとし得る。
【0068】
[排便・排尿軌跡決定工程]
排便・排尿軌跡決定工程S4では、排便・排尿軌跡決定部43が、重心軌跡算出工程S2において算出した重心軌跡GTから、排便・排尿軌跡を特定する。
【0069】
排便・排尿軌跡の特定は、次の原理に基づいて行う。
【0070】
特開2018−126423号に記載の通り、被験者Sの生体活動は「大きな体動」、「小さな体動」、及び「呼吸」に分類することができる。大きな体動に応じた重心Gの位置の時間的変動の軌跡(以下「大きな体動軌跡」と呼ぶ)、小さな体動に応じた重心Gの位置の時間的変動の軌跡(以下「小さな体動軌跡」と呼ぶ)、及び呼吸に応じた重心Gの位置の時間的変動の軌跡(以下「呼吸振動軌跡」と呼ぶ)はそれぞれ異なる特徴を示す。
【0071】
本明細書及び本発明において、「大きな体動」とは、被験者の体動のうち胴体部(体幹)の移動を伴う比較的大きなものを意味し、具体的には例えば、寝返りや起き上がり等である。被験者に大きな体動が生じた時には、一般的に、被験者の体軸の向き(被験者の背骨の延びる向き)が変化する。
【0072】
大きな体動を重心Gの位置の時間的変動の様子という観点でとらえると、一般的に大きな体動は、所定期間内に生じる所定距離以上の比較的長い距離の重心Gの移動、例えば重心Gの比較的高速度での移動を生じる体動である。そのため例えば、所定期間PPに所定距離PD1を越える重心移動を生じる体動、及び/又は所定値V1を越える速度での重心移動を生じる体動を大きな体動と定義することができる。あるいは、小さな体動により生じる重心Gの位置の時間的変動との相違に基づき、例えば、単位時間内に、小さな体動による重心Gの移動距離と比較して、所定倍程度よりも大きく重心Gを移動させる体動を大きな体動と定義することもできる。大きな体動軌跡は、このような重心Gの移動の軌跡である。
【0073】
本明細書及び本発明において、「小さな体動」とは、被験者の体動のうち胴体部(体幹)の移動を伴わない比較的小さいものを意味し、具体的には例えば、手足や頭部のみの運動等である。
【0074】
小さな体動を重心Gの位置の時間的変動の様子という観点でとらえると、一般的に小さな体動は、単位時間内の比較的短い距離の重心Gの移動、例えば重心Gの比較的低速度での移動を生じる体動である。そのため例えば、所定期間PPに所定距離PD2(<PD1)程度の重心移動を生じる体動及び/又は、移動速度が所定値V2(<V1)程度の重心移動を生じる体動を小さな体動と定義することができる。
【0075】
また、小さな体動を、所定期間PPに所定距離PD2程度の重心移動を生じ又は移動速度が所定値V2程度であり、且つ周期性を有さず、被験者Sの体軸方向とは異なる方向に向かう重心移動を生じる体動を小さな体動と定義してもよい。小さな体動軌跡は、このような重心Gの移動の軌跡である。
【0076】
呼吸に応じた重心Gの位置の時間的変動の様子は次の通りである。人間の呼吸は胸郭及び横隔膜を移動させて、肺を膨張及び収縮させることにより行われる。ここで吸気時、すなわち肺が膨張する時には横隔膜は下方に下がり、内臓も下方に移動する。一方で呼気時、すなわち肺が収縮する時には横隔膜は上方に上がり、内臓も上方に移動する。本出願人に発行された特許第6,105,703号に記載の通り、呼吸はこの内臓の上下移動に伴うために、呼吸により重心Gが被験者の上下方向(背骨の方向)即ち体軸方向にほぼ沿って振動する。したがって、体軸方向の重心の振動として現れる呼吸と、体軸方向とは異なる方向の重心の移動として現れる小さな体動とは区別できる。
【0077】
本発明の発明者は、ベッド上における被験者の重心移動を更に詳細に検討し、被験者の体動及び呼吸に応じた上記の重心移動のほか、被験者が排便・排尿を行った場合にも特徴的な重心移動が観察できることを見出した。
【0078】
具体的には、ベッド上の被験者がおむつへと排尿を行うと、排尿に合わせて、被験者の重心が、被験者の体軸方向に沿って比較的低い速度V3(<V2)で、被験者の足側へと移動する。これは、所定の重量を有する被験者の尿が、排尿により、被験者の足側に移動するためである。また、被験者が排便を行った場合も同様に、被験者の重心が、被験者の体軸方向に沿って比較的低い速度V4(<V2)で、被験者の足側へと移動する。本発明及び本明細書では、このような重心Gの移動の軌跡を、「排便・排尿軌跡」と呼ぶ。
【0079】
ここで、第1実施形態の身体状態モニタリングシステム100は、被験者Sの重心の位置を、被験者の衣服やおむつも含めた重量の重心の位置として算出している。したがって、おむつ内に排泄された尿や便(即ち、被験者Sの体外に排出された尿や便)も、被験者Sの体内に存在していた場合と同様に、被験者Sの重心位置の算出に影響を及ぼす。
【0080】
排便・排尿軌跡決定部43は、大きな体動軌跡、小さな体動軌跡、呼吸振動軌跡が、上記の通り異なる特徴を有することに基づき、被験者の重心軌跡中の大きな体動軌跡、小さな体動軌跡、及び呼吸振動軌跡を特定し、排便・排尿軌跡を特定する。
【0081】
排便・排尿軌跡決定部43が、被験者Sの排便・排尿軌跡を特定する方法の具体例は次の通りである。
【0082】
排便・排尿軌跡決定部43は、図8に示す通り、記憶部5から被験者Sの重心軌跡を取り出す重心軌跡取得部430と、取り出した重心軌跡に含まれる被験者Sの大きな体動軌跡を特定して除去する大きな体動軌跡除去部(大きな体動成分除去部)431と、取り出した重心軌跡GTに含まれる被験者Sの小さな体動軌跡を特定して除去する小さな体動軌跡除去部(小さな体動成分除去部)432と、大きな体動軌跡及び小さな体動軌跡が除去された重心軌跡GTを呼吸振動軌跡と排便・排尿軌跡(排便排尿成分)とに区別する軌跡区別部(排便排尿成分特定部)433とを備える。
【0083】
排便・排尿軌跡決定部43が実行する排便・排尿軌跡決定工程S4は、図9に示す通り、大きな体動軌跡除去工程S31と、小さな体動軌跡除去工程S32と、軌跡区別工程S33とを含む。
【0084】
[大きな体動軌跡除去工程]
大きな体動軌跡除去工程S31においては、まず、重心軌跡取得部430を用いて所定期間における被験者Sの重心軌跡GTを記憶部5から取り出す。取り出される重心軌跡GTの一例は図10(a)に示す通りである。
【0085】
図10(a)に示す重心軌跡GTは、被験者Sが大きな体動(寝返り等)によりベッド上を左右方向に一往復していることを示している。また、大きな体動が生じていない期間(以下、「安定体位期間」と呼ぶ)において、被験者Sの重心Gが、領域A、B、C内でそれぞれ移動する様子を示している。領域A、B、C内での重心Gの移動は、被験者Sの小さな体動、呼吸、及び排尿に起因して生じている。
【0086】
排便・排尿軌跡決定部43は、次いで、大きな体動軌跡除去部431を用いて、重心軌跡GTから被験者Sの大きな体動軌跡を特定する。大きな体動軌跡除去部431は、各サンプリング時刻における重心Gの位置を解析し、「大きな体動」の定義に基づき適宜大きな体動に応じた重心Gの移動の軌跡(大きな体動軌跡)を特定することができる。具体的には例えば、重心Gが、所定時間内に所定距離を越えて移動している場合に、この移動の軌跡が大きな体動軌跡であると特定する。
【0087】
大きな体動軌跡除去部431は、重心Gが所定時間内に所定距離を越えて移動したか否かを、次の方法を用いて判断する。まず、図10(a)に示す重心軌跡GTを、より低いサンプリング周波数に変換した重心軌跡GT1に変換する(図10(b))。より低いサンプリング周波数への変換は、サンプリング周期5ミリ秒で取得されている重心位置Gのデータを間引いたり、移動平均処理を施すことによって行うことができる。又は重心軌跡GTを周波数分解してローパスフィルタにより所定の低周波数成分を取り出すことによっても行うことができる。
【0088】
なお、低いサンプリング周波数は、大きい体動を抽出するのに十分な程度に短い周期(大きい周波数)であり、且つ小さな体動や呼吸等の他の要因による重心の変動の影響を受けない程度に長い周期(小さい周波数)とすることが望ましい。
【0089】
図10(b)において、点A1と点B1との間の軌跡は、例えば、右方向に、所定時間内に所定距離を越えて移動している。従って大きな体動軌跡除去部431は、この区間における軌跡を大きな体動軌跡であると特定する。同様に、点B2と点C1との間の軌跡も、例えば、左方向に、所定時間内に所定距離を越えて移動している。従って大きな体動軌跡除去部431は、この区間における軌跡を大きな体動軌跡であると特定する。
【0090】
大きな体動軌跡除去部431は、大きな体動軌跡を特定した後、重心軌跡GTから大きな体動軌跡を除去し、大きな体動軌跡が除去された重心軌跡GTを小さな体動軌跡除去部432に送る。図10(a)に示す重心軌跡GTから、大きな体動軌跡を除去したものを図11(a)〜図11(c)に示す。図11(a)は図10(a)の領域Aにおける重心軌跡GT、図11(b)は図10(a)の領域Bにおける重心軌跡GT、図11(c)は図10(a)の領域Cにおける重心軌跡GTである。これらはそれぞれ、安定体位期間(被験者が大きな体動を呈していない期間)における重心軌跡GTに相当する。
【0091】
[小さな体動軌跡除去工程]
続く小さな体動軌跡除去工程S32において、排便・排尿軌跡決定部43は、小さな体動軌跡除去部432を用いて、大きな体動軌跡が除去された重心軌跡GTに含まれる小さな体動軌跡を特定する。具体的な工程を、領域Cの重心軌跡GT(図11(c))に含まれる小さな体動軌跡を特定し、これを除去する工程を例に説明する。
【0092】
図11(c)において、重心軌跡GTは、呼吸による重心Gの振動を表す部分gt1、gt3、gt5と、小さな体動による重心Gの移動を表す部分gt2と、排尿による重心Gの移動を表す部分gt4とを含んでいる。呼吸による重心Gの移動を表す部分gt1、gt3、gt5は周期的な振動を示している。なお、部分gt1、gt3、gt5の振動軌跡は、実際には振動方向に沿った一軸上に重複して現れているが、図11(c)においては、説明のため、体軸方向に直交する方向にずらして描いている。図11(a)、図11(b)、図12においても同様である。
【0093】
小さな体動による重心Gの移動を表す部分gt2は、体軸方向とは異なる方向に延びる軌跡であり、排尿による重心Gの移動を表す部分gt4は体軸方向に延びる軌跡である。
【0094】
したがって、小さな体動軌跡除去部432は、小さな体動軌跡が体軸方向(即ち呼吸振動の方向)とは異なる方向に延びることに基づいて小さな体動軌跡を特定する。小さな体動軌跡除去部432は、一例として、外れ値除去の方法により被験者Sの小さな体動軌跡を特定する。
【0095】
具体的には、図11(c)に示す重心軌跡が、図12のように、v〜v48までの48個の動きベクトルを含んでいるものとする。小さな体動軌跡除去部432はまず、これらの48個の動きベクトルから最頻値ベクトルvの向きを求める。動きベクトルv〜v48はそれぞれ向きを有するが、図12に示されるように、動きベクトルv〜v48の多くは、それぞれ互いに同一の向きを有している。最頻値ベクトルvの向きは、動きベクトルv〜v48の向きのうち、最も多く表れる向きに等しく、図12から明らかなように動きベクトルv〜v11、v15〜v48のいずれかの向きに等しい(上述の通り、これらの動きベクトルは、図示の都合上互いに対して傾いているが、実際はいずれもがほぼ体軸方向に沿っている)。
【0096】
次に、小さな体動軌跡除去部432は、動きベクトルv〜v48の内、自らの向きと最頻値ベクトルvの向き(又は最頻値ベクトルvに対して180°の角度を有する向き)との間の相違が一定の閾値以下の動きベクトルを多数派ベクトルとみなし、自らの向きと最頻値ベクトルvの向き(及び最頻値ベクトルvに対して180°の角度を有する向き)との間の相違が一定の閾値よりも大きい動きベクトルを少数派ベクトルとみなす。具体的には、被験者Sの体軸方向にほぼ沿った向きを有する動きベクトルv〜v11、v15〜v48を多数派ベクトルとみなし、その他の動きベクトルv12〜v14を少数派ベクトルとみなし、抽出する。このように抽出された少数派ベクトルにより表される軌跡が、小さな体動軌跡に相当する。
【0097】
小さな体動軌跡除去部432は、小さな体動軌跡を決定した後、重心軌跡GTから小さな体動軌跡を除去し、小さな体動軌跡が除去された重心軌跡GTを軌跡区別部433に送る。
【0098】
[軌跡区別工程]
続く軌跡区別工程S33において、軌跡区別部433は、大きな体動軌跡及び小さな体動軌跡が取り除かれた重心軌跡GTを、呼吸振動軌跡と排便・排尿軌跡(排便排尿成分)とに区別する。呼吸振動軌跡と排便・排尿軌跡との区別は、具体的には例えば、重心Gの、同一方向又は略同一方向に沿った所定距離以上の直線移動を特定することにより行う。
【0099】
具体的には以下の手順による。軌跡区別部433は、小さな体動軌跡除去部432より、小さな体動軌跡が除去された重心軌跡GTを受け取る。受け取られる重心軌跡GTは例えば、図12の重心軌跡GTにおいて、動きベクトルv12〜v14が除去された軌跡である。
【0100】
軌跡区別部433は、受け取った重心軌跡GTを解析して、重心Gが、同一方向又は略同一方向に沿って所定距離以上の直線移動を行う領域を特定する。この特定は例えば、向きが同一又は略同一の動きベクトルが、所定数を超えて連続して生じる領域を特定することにより行う。或いは、大きな体動軌跡除去部431と同様に、各サンプリング時刻における重心Gの位置を参照して、重心Gが、同一方向又は略同一方向に沿って所定距離以上の直線移動を行う領域を特定してもよい。
【0101】
軌跡区別部433は、重心Gが同一方向又は略同一方向に沿って所定距離以上の直線移動を行う領域を特定した後、当該領域における重心Gの移動の軌跡を排便・排尿軌跡であると決定し、その他の領域を呼吸振動軌跡であると決定する。
【0102】
[臭気検出工程]
臭気検出工程S5では、臭気検出部2が、被験者Sの排泄により生じる臭気を検出する。
【0103】
臭気検出部2は、不図示の吸引機構を用いて、吸引流路22a〜22fに負圧を与える。これにより、ベッドBD上の被験者Sの臀部周辺の空気が、吸引流路22a〜22fの端部の吸引口Pa〜Pfを介して吸引流路22a〜22f内に吸引され、本体部21のTVOCセンサ211及び二酸化窒素センサ212に導かれる。
【0104】
本体部21のTVOCセンサ211は、吸引流路22a〜22fの各々を介してTVOCセンサ211に供給される空気に含まれる総揮発性有機化合物(TVOC)の量を検出し、6つの吸引流路にそれぞれ対応する6つのアナログ信号としてA/D変換部3に出力する。A/D変換部3は、サンプリング周期を例えば5ミリ秒として、6つのアナログ信号を6つのデジタル信号に変換し、デジタル信号(以下「TVOC信号」)として制御部4に出力する。
【0105】
以下では、A/D変換部3を介してTVOCセンサ211から出力される6つのデジタル信号を、TVOC信号saTVOC〜sfTVOCと記載する。TVOC信号saTVOC〜sfTVOCはそれぞれ、吸引口Pa〜Pfの近傍の空気に含まれるTVOCの量を示すデジタル信号である。
【0106】
本体部21の二酸化窒素センサ212は、吸引流路22a〜22fの各々を介して二酸化窒素センサ212に供給される空気に含まれる二酸化窒素(NO)の量を検出し、6つの吸引流路にそれぞれ対応する6つのアナログ信号としてA/D変換部3に出力する。A/D変換部3は、サンプリング周期を例えば5ミリ秒として、6つのアナログ信号を6つのデジタル信号に変換し、デジタル信号(以下「NO信号」)として制御部4に出力する。
【0107】
以下では、A/D変換部3を介して二酸化窒素センサ212から出力される6つのデジタル信号を、NO信号saNO2〜sfNO2と記載する。NO信号saNO2〜sfNO2はそれぞれ、吸引口Pa〜Pfの近傍の空気に含まれる二酸化窒素の量を示すデジタル信号である。
【0108】
制御部4は、受け取ったTVOC信号saTVOC〜sfTVOC、及びNO信号saNO2〜sfNO2を記憶部5に記憶させる。
【0109】
図13(a)、図14(a)、図15(a)に、TVOC信号saTVOC〜sfTVOCの一例を示し、図13(b)、図14(b)、図15(b)に、NO信号saNO2〜sfNO2の一例を示す。各図においては、TVOC信号saTVOC及びNO信号saNO2を実線で、TVOC信号sbTVOC及びNO信号sbNO2を点線で、TVOC信号scTVOC及びNO信号scNO2を破線で、TVOC信号sdTVOC及びNO信号sdNO2を長破線で、TVOC信号seTVOC及びNO信号seNO2を長鎖線で、TVOC信号sfTVOC及びNO信号sfNO2を長二点鎖線で示している。
【0110】
図13(a)と図13(b)は同じタイミングで計測した60分間の記録である。図14(a)と図14(b)は同じタイミングで計測した60分間の記録である。図15(a)と図15(b)は同じタイミングで計測した60分間の記録である。一方で、図13図14図15は、互いに異なるタイミングで計測されている。
【0111】
図13(a)、(b)については、時刻41min頃に、ベッドBD上の被験者Sが、吸引口Peの近辺で排便を行ったことが観察されている。
【0112】
図13(a)においては、時刻41min(縦の実線で示す)の近傍に、この排便に応じたTVOC信号saTVOC〜sfTVOCの信号値の低下が生じている。なお、図13(a)(及び図14(a)、図15(a))の縦軸はセンサ素子の抵抗値に対応する値であり、センサ素子の周囲のTVOCが増加した場合に低下する。
【0113】
図13(b)においては、時刻41min(縦の実線で示す)の近傍に、この排便に応じたNO2信号saNO2、sbNO2、及びsdNO2〜sfNO2の信号値の上昇が生じている。NO2信号sdNO2、seNO2の信号値の上昇が特に大きいのは、おむつと脚の間から臭気がでているためである。
【0114】
図14(a)、(b)については、時刻15min頃に、ベッドBD上の被験者Sが、吸引口Peの近傍で排尿を行ったことが観察されている。
【0115】
図14(a)においては、時刻15min(縦の実線で示す)の近傍に、この排尿に応じたTVOC信号saTVOC〜sfTVOCの信号値(特にseTVOC)のわずかな低下が生じている。
【0116】
図14(b)においては、時刻15min(縦の実線で示す)の近傍に、この排尿に応じたNO2信号saNO2〜sfNO2の信号値(特にscNO2、sdNO2、seNO2、及びsfNO2)のわずかな上昇が生じている。
【0117】
なお、図14(a)、(b)では縦軸の範囲が大きいため、排尿に応じたTVOC信号saTVOC〜sfTVOCの信号値の変化、及びNO2信号saNO2〜sfNO2の信号値の変化がわずかであるようにみえるが、各信号値は、実際には、被験者の排尿に応じて有意且つ検出可能な変化を示している。
【0118】
図15(a)、(b)については、時刻32min頃に、ベッドBD上の被験者Sが、吸引口Peの近傍で放屁を行ったことが観察されている。
【0119】
図15(a)においては、時刻32min(縦の実線で示す)の近傍に、この放屁に応じたTVOC信号saTVOC〜sfTVOCの信号値の低下が生じている。
【0120】
図15(b)においては、時刻32min(縦の実線で示す)の近傍に、この放屁に応じたNO2信号saNO2〜sfNO2の信号値の上昇が生じている。
【0121】
このように、被験者Sが排泄(排便、排尿、放屁)を行った場合には、TVOC信号saTVOC〜sfTVOCの少なくとも1つの信号値が低下し、NO2信号saNO2〜sfNO2の少なくとも1つの信号値が上昇する。
【0122】
[排泄状態判定工程]
排泄状態判定工程S6では、排泄状態判定部44が、予兆動作推定工程S3、排便・排尿軌跡決定工程S4、及び臭気検出工程S5の結果を用いて、被験者Sにおける排泄の有無、及び排泄が排便、排泄、放屁のいずれであるかを判定する。
【0123】
排泄状態判定部44は、被験者が排泄(排便、排尿、及び放屁)を行った場合には臭気が生じること、被験者が排便、排尿を行った場合には排便・排尿軌跡が観察されること、及び被験者が排便を行う前に排便予兆動作が観察されることを利用して、排泄状態の判定を行う。
【0124】
排泄状態判定部44は、具体的には例えば、図16に示すフローチャートに従って、所定の時刻(以下、「判定対象時刻」と呼ぶ)における排泄状態の判定を行う。
【0125】
排泄状態判定部44はまず、臭気検出工程S5の結果を用いて、判定対象時刻に、被験者Sの臀部近傍に臭気が発生しているか否かを判定する(S41)。臭気が生じていない場合(S41、NO)は排泄無しと判定し(S47)、判定結果を表示部6に出力する(S48)。
【0126】
一方で、被験者Sの臀部近傍に臭気が生じている場合(S41、YES)は、予兆動作推定工程S3の結果を用いて、判定対象時刻の直前の所定の期間(一例として40〜80秒程度の期間、又は60秒程度の期間)に排便予兆動作が生じていたか否かを確認する(S42)。予兆動作が生じていた場合(S42、YES)は、排便ありと判定し(S43)、判定結果を表示部6に出力する(S48)。
【0127】
予兆動作が生じていない場合(S42、NO)は、排便・排尿軌跡決定工程S4の結果を用いて、判定対象時刻の直前の所定の期間(一例として20〜80秒程度の期間、又は60秒程度の期間)に排便・排尿軌跡が生じていたか否かを確認する(S44)。
【0128】
排便・排尿軌跡が生じていた場合(S44、YES)は、排尿ありと判定し(S45)、判定結果を表示部6に出力する(S48)。一方で、排便・排尿軌跡が生じていない場合(S44、NO)は、放屁ありと判定し(S46)、判定結果を表示部6に出力する(S48)。
【0129】
排便状態判定部44は、図16のフローチャートに沿った上記の判定を、所定の周期(一例として30〜120秒程度、又は60秒程度)で経時的に行い、判定結果を順次表示部6に出力する。
【0130】
<表示工程>
表示工程S7では、排泄状態判定部44が判定した被験者Sの排泄の有無、及び排泄が排便、排尿、放屁のいずれであるかをモニタに表示する。
【0131】
具体的には、例えば、排便、排尿、放屁、及び排泄なしのそれぞれに対応するアイコンをモニタに表示する。身体状態モニタリングシステム100の使用者は、アイコンを視認することで、被験者Sが排便を行ったこと、即ち早急におむつ交換を行う必要のあることを容易に知ることができる。
【0132】
身体状態モニタリングシステム100は、被験者Sが排便を行った場合に報知部9により報知がなされるよう設定可能な構成であってもよい。
【0133】
本実施形態の身体状態モニタリングシステム100の効果を以下にまとめる。
【0134】
本実施形態の身体状態モニタリングシステム100において、排泄状態判定部44は、臭気検出部2が臭気を検出し、且つ予兆動作推定部42が被験者Sが排便予兆動作を行ったと推定した場合に、被験者Sが排便を行ったと判定する。本実施形態の身体状態モニタリングシステム100は、このように、臭気検出部2の検出結果のみではなく予兆動作推定部42の推定結果も参酌した判定を行うことで、排尿や放屁等が生じた場合にこれを排便であると誤って判定することを抑制することができ、精度の高い排便判定を行うことができる。
【0135】
本実施形態の身体状態モニタリングシステム100は、臭気検出部2を用いた臭気の検出、予兆動作推定部42を用いた排便予兆動作の推定、及び排便・排尿軌跡決定部43を用いた排便・排尿軌跡の特定に基づいて、排泄状態を判定している。したがって、被験者Sの排泄の有無のみならず、排泄が排便、排尿、放屁のいずれであるかも判定することができる。
【0136】
<変形例>
上記施形態の身体情報モニタリングシステム100において、次の変形態様を採用することもできる。
【0137】
上記実施形態の身体情報モニタリングシステム100においては、臭気検出部2は、TVOCセンサ211、二酸化窒素センサ212、及び6本の吸引流路22a〜22fを有するが、これには限られない。
【0138】
臭気検出部2の本体部21は、TVOCセンサ211及び二酸化窒素センサ212のいずれか一方を有するのみでもよい。また、TVOCセンサ211及び/又は二酸化窒素センサ212に変えて、排泄により生じる臭気を検出可能な任意のセンサを用いることができる。
【0139】
臭気検出部2は、吸引流路22a〜22fの少なくとも1つを有するのみでもよく、7つ以上の吸引流路を有してもよい。また、吸引流路を省略して、TVOCセンサ211及び/又は二酸化窒素センサ212をシーツの下に設置してもよい。
【0140】
上記実施形態では6つの吸引流路22a〜22fの吸引口Pa〜Pfが、長さ方向に2行、幅方向に3列の2×3のマトリックス状に配置されている。しかしながら、これには限られず、臭気検出部2が備える吸引流路の数、及び吸引口の配置は任意であり、臭気検出に適した任意の数及び配置とし得る。
【0141】
上記実施形態の身体状態モニタリングシステム100において、予兆動作推定部42は、測定された重心Gの時間的変動、及び/又は測定された荷重信号s〜sの時間的変動と、記憶部5に予め記憶した参照データとの比較に基づいて、被験者Sが排便予兆動作を行ったことを推定してもよい。参照データは、図5(a)、図6(a)、図7(a)に示すような重心軌跡や、図5(b)、図6(b)、図7(b)に示すような荷重信号とし得る。この変形態様では、予兆動作推定部42は、測定された時間的変動が参照データに一致又は類似した場合に、被験者Sが排便予兆動作を行ったと推定してもよい。
【0142】
上記実施形態の身体状態モニタリングシステム100において、大きな体動軌跡除去部431は、被験者Sの重心Gが略一方向に所定時間内に所定距離を超えて移動した場合に大きな体動が生じたと判断し、この期間の重心軌跡GTが大きな体動軌跡であると特定してもよい。重心Gが略一方向に移動しているか否かは、一例として、所定のサンプリング期間における重心Gの動きベクトルと、次のサンプリング期間における重心Gの動きベクトルとの間の角度が所定の角度以下であるか否かに基づいて判断することができる。
【0143】
具体的には例えば、図18に示すように、重心Gの動きベクトルv52〜v54は、その直前のサンプリング期間における動きベクトルに対して、約5°以下の角度を有しているが、動きベクトルv55は、その直前のサンプリング期間における動きベクトルv54に対して5°以上の角度を有している。このような場合、重心Gは、動きベクトルv51〜v54に対応するサンプリング期間においては略一定方向に移動し、動きベクトルv55に対応するサンプリング期間においては移動方向が変更されたとみなすことができる。
【0144】
大きな体動軌跡除去部431は、移動方向が変更されたとみなした場合には、移動方向の変更があった時点の前の動きベクトル(ここでは動きベクトルv51〜v54)に基づき、所定時間内に所定距離を越える移動が生じていたか否かを判定する。そして、所定時間内に所定距離を越える移動が生じていた場合は、これらの動きベクトルにより表される軌跡は大きな体動軌跡であると特定する。
【0145】
なお、動きベクトルを用いた大きな体動軌跡の特定を行う前に、重心軌跡GTをローパスフィルタでフィルタリングしてもよい。これにより高周波成分(ノイズ)が除去され、特定の精度を向上させることができる。
【0146】
上記実施形態の身体状態モニタリングシステム100において、小さな体動軌跡除去部432は、外れ値除去の方法により小さな体動軌跡を特定しているが、これには限られない。具体的には例えば、重心軌跡GTの極値の特定等により呼吸振動軌跡を特定し、呼吸振動軌跡の振動方向とは異なる方向に延びる重心軌跡GTを小さな体動軌跡であると特定してもよい。
【0147】
上記実施形態の身体状態モニタリングシステム100において、小さな体動軌跡除去部422や軌跡区別部433を、被験者Sの呼吸振動軌跡の振動方向(例えば最頻値ベクトルvの方向)に基づいて、当該方向を被験者Sの体軸の延びる方向であると決定する体軸方向決定部として機能させてもよい。
【0148】
上記実施形態の身体状態モニタリングシステム100においては、軌跡区別部433は、重心Gの位置の直線的な移動の量に基づいて呼吸振動軌跡と排便・排尿軌跡とを分離していたが、これには限られない。軌跡区別部433は、小さな体動軌跡除去部432から受け取った重心軌跡GTに対応する荷重信号にフィルタリングを適用して高周波成分を除去し、残った荷重成分に基づく重心軌跡を排便・排尿軌跡(排便排尿成分)と特定してもよい。
【0149】
このように、周波数フィルタリングを適用して、呼吸振動軌跡と排便・排尿軌跡との区別を行うこともできる。
【0150】
上記実施形態の身体状態モニタリングシステム100においては、排便・排尿軌跡決定部43が軌跡区別部433を備え、排便・排尿軌跡を明示的に特定しているがこれには限られない。排便・排尿軌跡決定部43は、排便・排尿軌跡を明示的に特定することなく、排便・排尿軌跡が存在すると決定してもよい。具体的には例えば、大きな体動軌跡及び小さな体動軌跡が除去された重心軌跡が軸方向に所定値を越える広がりを有していることに基づいて、排便・排尿軌跡が存在すると決定してもよい。大きな体動軌跡及び小さな体動軌跡が除去された重心軌跡は、通常は呼吸に応じて振動しているのみであるため、当該軌跡が、呼吸振動の振動軸の方向に、呼吸振動軌跡の振幅を超える比較的大きな広がりを示している場合は、排便・排尿軌跡が存在する可能性が高い。
【0151】
上記実施形態の身体状態モニタリングシステム100においては、排泄状態判定部44は、図16に示すフローチャートに従って被験者Sの排泄状態を判定しているが、これには限られない。排泄状態判定部44は、臭気検出部2による臭気検出工程S5の結果、予兆動作推定部42による予兆動作推定工程S3の結果、及び排便・排尿軌跡決定部43による排便・排尿軌跡決定工程S4の結果を用いた任意の手順により被験者Sの排泄状態を判定し得る。
【0152】
具体的には例えば、図17のフローチャートに従って排泄状態を判定し得る。
【0153】
この変形例では、排泄状態判定部44はまず、臭気検出工程S5の結果を用いて、判定対象時刻に、被験者Sの臀部近傍に臭気が発生しているか否かを判定する(S51)。臭気が生じていない場合(S51、NO)は排泄無しと判定し(S57)、判定結果を表示部6に出力する(S58)。
【0154】
一方で、被験者Sの臀部近傍に臭気が生じている場合(S51、YES)は、排便・排尿軌跡決定工程S4の結果を用いて、判定対象時刻の直前の所定の期間(一例として20〜80秒程度の期間、又は60秒程度の期間)に排便・排尿軌跡が生じていたか否かを確認する(S52)。
【0155】
排便・排尿軌跡が生じていない場合(S52、NO)は、放屁ありと判定し(S56)、判定結果を表示部6に出力する(S58)。一方で、排便・排尿軌跡が生じている場合(S52、YES)は、予兆動作推定工程S3の結果を用いて、判定対象時刻の直前の所定の期間(一例として40〜80秒程度の期間、又は60秒程度の期間)に排便予兆動作が生じていたか否かを確認する(S53)。
【0156】
排便予兆動作が生じていた場合(S53、YES)は、排便ありと判定し(S54)、判定結果を表示部6に出力する(S48)。予兆動作が生じていない場合(S53、NO)は、排尿ありと判定し(S55)、判定結果を表示部6に出力する(S58)。
【0157】
その他の例として、排泄状態判定部44は、予兆動作推定部42が被験者Sが排便予兆動作を行ったと推定した場合に予兆動作フラグをたて、予兆動作フラグを立てた後の所定の期間(一例として40〜80秒程度、又は60秒程度)の間に臭気検出部2が臭気を検出した場合に、被験者Sが排便を行ったと判定してもよい。
【0158】
更に他の例として、排泄状態判定部44は、排便・排尿軌跡決定部43が排便・排尿軌跡を特定した場合に、臭気検出部2の検出結果を参照してもよい。この場合、臭気検出部2が臭気を検出していない場合は排泄無しと判定する。一方で、臭気が検出された場合には更に予兆動作推定部42の推定結果を参照し、予兆動作ありと推定されていた場合には排便ありと判定し、予兆動作ありとの推定がなされていない場合には排尿ありと判定する。
【0159】
上記実施形態の身体状態モニタリングシステム100において、排便・排尿軌跡決定部43を省略してもよい。このような態様においても、被験者Sの排便の有無を高い精度で判定することができる。
【0160】
上記実施形態の身体状態モニタリングシステム100において、予兆動作推定部42を省略してもよい。このような態様においても、被験者Sの排便又は排尿の有無を高い精度で判定することができる。
【0161】
本発明及び本明細書において、「排泄状態の判定」とは、排泄の有無の判定、排便の有無の判定、排尿の有無の判定、放屁の有無の判定の少なくとも1つを含む判定を意味する。
【0162】
上記実施形態の身体状態モニタリングシステム100は、ベッド上の湿度を検出する湿度検出部、ベッド上の温度を検出する温度検出部を備えてもよい。湿度検出部はベッドのシーツの下にマトリックス状に配置される複数の湿度センサを含んでもよく、温度検出部はベッドのシーツの下にマトリックス状に配置される複数の温度センサを含んでもよい。
【0163】
上記実施形態においては、被験者Sがおむつを装着している場合を例として説明したが、被験者がおむつを装着していない場合も、上記実施形態の身体状態モニタリングシステム100を用いて、上記実施形態と同様の原理で、被験者の排泄状態を判定することができる。
【0164】
上記実施形態の身体状態モニタリングシステム100は、必ずしも荷重検出器11〜14の全てを備える必要はなく、このいずれか一つを備えるのみでもよい。また、荷重検出器は、必ずしもベッドの四隅に配置される必要はなく、ベッド上の被験者の荷重及びその変動を検出しうるように、任意の位置に配置し得る。また、荷重検出器11〜14は、ビーム形ロードセルを用いた荷重センサに限られず、例えばフォースセンサを使用することもできる。
【0165】
上記実施形態の身体状態モニタリングシステム100においては、荷重検出器11〜14の各々は、ベッドBDの脚の下端に取り付けられたキャスターC〜Cの下に配置されていたがこれには限られない。荷重検出器11〜14の各々は、ベッドBDの4本の脚とベッドBDの床板との間に設けられてもよいし、ベッドBDの4本の脚が上下に分割可能であれば、上部脚と下部脚との間に設けられても良い。
【0166】
上記実施形態の身体状態モニタリングシステム100においては、ベッド上に横たわる被験者の下方、一例としてシーツの下にマトリックス状に配置された多数の感圧センサ(圧力センサ)により荷重検出部1を構成することもできる。この態様においては、多数の感圧センサの出力に基づいて、被験者の重心の位置を求めることができる。
【0167】
荷重検出部1とベッドBDとを一体に又は着脱可能に組み合わせて、ベッドBDと上記実施形態の身体状態モニタリングシステム100とからなるベッドシステムBDSを構成してもよい(図19)。
【0168】
上記実施形態の身体状態モニタリングシステム100において、荷重検出部1及び/又は臭気検出部2とA/D変換部3との間に、荷重検出部1及び/又は臭気検出部2からの信号を増幅する信号増幅部や、信号からノイズを取り除くフィルタリング部を設けても良い。
【0169】
上記実施形態の身体状態モニタリングシステム100において、表示部6は、モニタに代えて、又はこれに加えて、排泄状態を表わす情報を印字して出力するプリンタや、排泄状態を表示するランプ等の簡易な視覚表示手段を備えてもよい。報知部7はスピーカに代えて、又はこれに加えて、振動により報知を行う振動発生部を備えてもよい。
【0170】
本発明の特徴を維持する限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明の身体状態モニタリングシステムによれば、被験者の排泄状態を高い精度で判定して、医療、介護等の質の向上に資することができる。
【符号の説明】
【0172】
1 荷重検出部、11,12,13,14 荷重検出器、2 臭気検出部、3 A/D変換部、4 制御部、41 重心位置算出部、42 予兆動作推定部、43 排便・排尿軌跡決定部、44 排泄状態判定部、5 記憶部、6 表示部、7 報知部、8 入力部、100 生体状態モニタリングシステム、BD ベッド、BDS ベッドシステム、S 被験者
【要約】
【課題】被験者に排便があったこと、又は排便若しくは排尿があったことをより高い精度で検知することのできる身体状態モニタリングシステムを提供する。
【解決手段】ベッド上の被験者の身体状態をモニタする身体状態モニタリングシステムは、ベッド又はベッドの脚下に設けられて前記被験者の荷重を検出する複数の荷重検出器と、前記ベッド上の臭気を検出する臭気検出部と、前記検出された被験者の荷重の時間的変動に基づいて前記被験者の排便予兆動作を推定する予兆動作推定部と、前記臭気検出部の検出結果と前記予兆動作推定部の推定結果とに基づいて前記被験者による排便の有無を判定する排泄判定部とを備える。
【選択図】図1
図1
図2
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図4
図5
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図10
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図15
図16
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図19