(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0016】
1.剥離用工具の構成
図1は、この発明にかかる剥離用工具の一例を示す正面図である。
図2は、この発明にかかる剥離用工具の一例を示す右側面図である。
図3は、
図1に示す剥離用工具の線A−Aにおける断面図解図である。
図4(a)は、この発明にかかる剥離用工具の一例を示す背面図であり、
図4(b)は、腕体を示す部分の拡大図である。
【0017】
本発明にかかる剥離用工具は、たとえば、
図11に示すように、操作棒を用いて、遠隔に、被覆部材により被覆された被覆電線の被覆部材を剥離するための工具である。操作棒Sは、たとえば、絶縁棒S1を含み、その絶縁棒S1の先端には、鉤状に形成される先端係合部S2が設けられる。また、被覆電線Wは、
図19に示すように、導電材料に形成される芯線W1を含み、その芯線W1を覆うように被覆部材W2が設けられる。この被覆部材W2の材料は、通常、ポリ塩化ビニルやポリエチレン等の合成樹脂または合成ゴムなどが挙げられる。
【0018】
剥離用工具10は、剥離用工具本体12と、剥離用工具本体12に進退移動自在に螺入される押圧軸14と、押圧軸14の進退移動に伴い進退移動する刃体保持体16と、刃体保持体16に保持された刃体18と、を備える。
【0019】
(a)剥離用工具本体
剥離用工具本体12は、本体部20を含む。本体部20は、直方体状に形成される。
本体部20において、剥離用工具本体12を被覆電線Wに取り付けたとき、この被覆電線Wを把持する側の面を正面とする。本体部20は、剥離用工具本体12を正面から見たとき、本体部20の一方端側に向かって幅が狭くなるように形成される。
【0020】
本体部20の他方端部において、本体部20から手前側(正面側)に向かって突設された把持体22が形成される。把持体22は、側面視略L字形状に形成される。把持体22の手前側には、把持体22の幅方向にのびる把持部22aが設けられる。把持部22aの上面(内側面)には、湾曲面22bが形成されている。湾曲面22bは、側面視略下に凸の円弧状に形成される。すなわち、湾曲面22bは、幅方向にのびる把持部22aに沿って、本体部20の他方端側に向かって凸の半円弧状に形成される。
【0021】
また、把持体22の幅方向の長さは、本体部20の他方端部側における幅方向の長さよりも長く形成される。把持体22の幅方向の長さは、刃体18により被覆電線Wの被覆部材W2を剥離するとき、安定して被覆電線Wを把持できる長さが確保されている。
【0022】
本体部20の一方端部において、把持体22の把持部22aに対向するように、本体部20から手前側に向かって軸支持部24が突設される。軸支持部24は、直方体状に形成される。軸支持部24は、把持体22に対向するように位置する両主面、すなわち上下に分かれた主面を有する。軸支持部24の一方主面における略中央には、押圧軸14を螺入するための螺子孔24aが、軸支持部24の一方主面から他方主面に貫通して穿設されている。螺子孔24aは、押圧軸14の軸方向(すなわち、把持体22と軸支持部24とを結ぶ方向)にのびる。
【0023】
把持体22における背面側には、腕体26が設けられる。
腕体26は、腕部支持部26a、腕部26bおよび第2の係合部26cを含む。
【0024】
腕部支持部26aは、把持体22が本体部20に対して突設される方向とは反対方向であって、かつ押圧軸14がのびる方向に対して略垂直方向に向かって突設される。腕部支持部26aは、円筒状に形成される。また、腕部支持部26aの側面には、固定用孔26a1が穿設されている。腕部支持部26aには、腕部26bが連設される。
【0025】
腕部26bは、
図5に示すように、腕部本体部26b1と接続部26b2とを含む。腕部本体部26b1および接続部26b2は、それぞれ円柱状に形成されており、腕部本体部26b1の一方端側に接続部26b2が連設される。また、腕部本体部26b1の外径は、接続部26b2の外径よりも大きく形成される。接続部26b2には、その中間部において、腕部固定用螺子穴26b3が穿設されている。腕部固定用螺子穴26b3は、押圧軸14の軸方向および腕部26bの軸方向に対して直交する方向にのびる。そして、円柱状に形成される腕部26bの接続部26b2が、円筒状に形成された腕部支持部26aに嵌入される。したがって、接続部26b2の外径は、腕部支持部26aの内径と略同一の大きさである。腕部26bの接続部26b2が、腕部支持部26aに嵌入された状態で、腕部支持部26aの固定用孔26a1を貫通し、そして、接続部26b2の腕部固定用螺子穴26b3に、固定用部材26a2が螺入されて、腕部支持部26aと腕部26bとが固着される。
【0026】
腕部本体部26b1の他方端側の端面の略中央には、第2の係合部26cと連設するための係合部連設用螺子穴26b4が穿設されている。係合部連設用螺子穴26b4は、腕部本体部26b1の他方端側から一方端側に向かって(すなわち、腕部26bの軸方向に)のびている。
【0027】
腕部26bの他方端には第2の係合部26cが連設される。
第2の係合部26cは、リング部26c1、ベース部26c2および接続軸26c3を含む。リング部26c1は、リング状に形成される。ベース部26c2は、円柱状に形成され、その一方面側にリング部26c1が固着される。そして、ベース部26c2の他方面側の略中央に、接続軸26c3が形成される。接続軸26c3が、係合部連設用螺子穴26b4に嵌挿され、螺着されて、第2の係合部26cと腕部26bとが連設される。
【0028】
(b)押圧軸
押圧軸14は、把持体22と軸支持部24とを結ぶ方向に進退自在に移動し得る。押圧軸14は、
図6に示すように、螺子部28、枢着部30および接続部32を含む。螺子部28は、円柱状に形成される。螺子部28の側面には、螺旋状の溝による螺子山が形成される。そして、押圧軸14の螺子部28が、軸支持部24の螺子孔24aに螺入される。そして、螺子部28が回転することによって、押圧軸14は、把持体22と軸支持部24とを結ぶ方向(上下方向)に進退自在に移動させることができる。螺子部28の一方端(把持体22に対向する側)には枢着部30が設けられ、他方端には接続部32が設けられる。
【0029】
枢着部30は、押圧軸14に刃体保持体16を枢着するために設けられる。枢着部30は、円柱状に形成され、その中間部に枢着用溝30aが形成される。そして、枢着用溝30aを上下方向から挟むように、第1支持部30bおよび第2支持部30cが設けられる。
【0030】
接続部32には、第1の係合部34が固着して連設される。接続部32は、円柱状に形成される。接続部32には、その中間部において係合部固定用孔32aが貫通して穿設されている。係合部固定用孔32aは、押圧軸14の軸方向に対して直交する方向にのびる。
【0031】
第1の係合部34は、リング部34aとベース部34bとを含む。リング部34aは、
リング状に形成される。ベース部34bは、円筒状に形成される。ベース部34bの一方側には、リング部34aが固着され、他方側は、開口している。また、ベース部34bの側面には、固定用孔34b1が穿設されている。そして、押圧軸14の接続部32は第1の係合部34のベース部34bに嵌入される。第1の係合部34は、押圧軸14の接続部32が第1の係合部34のベース部34bに嵌入された状態で、第1の係合部34におけるベース部34bの固定用孔34b1および接続部32の係合部固定用孔32aに棒状の固定用部材34cが嵌挿されて、第1の係合部34と押圧軸14の接続部32とが固着される。
これにより、第1の係合部34を回転させることで、第1の係合部34の回転と同時に螺子部28を回転させることができる。第1の係合部34は、リング状に形成されるリング部34aを有する。リング部34aは、たとえば、操作棒Sの鉤状に形成される先端係合部S2を係合させるために設けられる。
【0032】
(c)規制部材
押圧軸14の螺子部28において、軸支持部24と第1の係合部34との間の領域には、規制部材36が配置される。規制部材36は、軸支持部24と接触することによって、押圧軸14が、把持体22の配置される方向に移動するのを規制するために設けられる。規制部材36は、
図7に示すように、ドーナツ状に形成される。規制部材36のリングの内側面には雌螺子が形成されており、押圧軸14の螺子部28に螺入される。規制部材36には、規制部材固定用孔36aが穿設されている。規制部材固定用孔36aは、その外側面における4方向から、すなわち、各方向が90°に間隔をあけて、リング中心に向かって形成されている。規制部材固定用孔36aには、規制部材固定用部材36bが螺入されており、規制部材固定用部材36bを押圧軸14の螺子部28に当接させることで、規制部材36を螺子部28の所望の位置で固定させることができる。
【0033】
(d)刃体保持体
刃体保持体16は、刃体保持部材38を含む。刃体保持部材38は、
図8に示すように、直方体状に形成される。刃体保持部材38は、軸支持部24に対向する一方主面(上側の面)と、把持体22に対向する他方主面(下側の面)を有する。また、刃体保持部材38は、刃体保持部材38の前記両主面に対して垂直な面であり、かつ剥離用工具本体12の本体部20に対向する面である両側面、すなわち手前側の前面および向こう側の後面を有する。さらに、刃体保持部材38は、刃体保持部材38の両主面および両側面に対して垂直な面であり、かつ本体部20に対して垂直な面である両端面、すなわち右側の面および左側の面を有する。
【0034】
刃体保持部材38の幅方向(すなわち、刃体保持部材38の両端面を結ぶ方向)の長さは、把持体22の幅方向の長さよりも短く形成される。刃体保持部材38は、その前面の下部側に刃体取付部38aが形成される。刃体取付部38aには、刃体18を取り付けるために、刃体保持部材38の一方側面(前面)の中間部から他方主面側(下端側)の範囲に刃体取付面38a1が設けられる。この刃体取付部38aにおける刃体取付面38a1は、刃体保持部材38の一方側面(前面)から他方側面(後面)に向かって、刃体18の厚みの大きさと略同一の大きさの厚みだけ段差が設けられる。
【0035】
また、刃体保持部材38の一方主面(上面)の略中央には押圧軸枢着用穴38cが形成される。押圧軸枢着用穴38cは、把持体22と軸支持部24とを結ぶ方向にのびる。押圧軸枢着用穴38cの深さは、押圧軸14の枢着部30におけるその軸方向の長さと略同一である。また、押圧軸枢着用穴38cの内径は、枢着部30の外径と略同一に形成される。
【0036】
さらに、刃体保持部材38の一方側面(前面)の上部側において、第1の抜け防止部材挿入用孔38dが穿設されている。第1の抜け防止部材挿入用孔38dは、刃体保持部材38の前面(手前側)から押圧軸枢着用穴38cに向かって貫通してのびている。
また、刃体保持部材38の他方側面(後面)の上部側において、第2の抜け防止部材挿入用孔38eが穿設されている。第2の抜け防止部材挿入用孔38eは、刃体保持部材38の背面(向こう側)から押圧軸枢着用穴38cに向かって貫通してのびている。
そして、抜け防止部材46が、第1の抜け防止部材挿入用孔38dおよび第2の抜け防止部材挿入用孔38eのうちの少なくともいずれか一方に螺入される。抜け防止部材46は、第1の抜け防止部材挿入用孔3
8dおよび第2の抜け防止部材挿入用孔38eのうちの少なくともいずれか一方において、抜け防止部材46の先端が、枢着用溝30aの底面に当接しないように配置される。
【0037】
また、刃体保持部材38の両端面には、複数のガイド取付用穴38fが穿設されている。ガイド取付用穴38fは、たとえば、各端面において3箇所ずつ設けられている。それぞれのガイド取付用穴38fは、各端面から、押圧軸枢着用穴38cに向かってのびる。
【0038】
押圧軸14が刃体保持体16に枢着されるとき、押圧軸14の枢着部30は、刃体保持部材38の押圧軸枢着用穴38cに挿入されている。このとき、第1の抜け防止部材挿入用孔3
8dおよび第2の抜け防止部材挿入用孔3
8eのうちの少なくともいずれか一方から枢着部30の枢着用溝30aに抜け防止部材46が突入されており、それぞれの抜け防止部材46は、枢着部30の第1支持部30bと第2支持部30cとにより挟むように支持されている。従って、押圧軸14の枢着部30は、刃体保持部材38に対して、回転可能に支持される。
【0039】
(e)刃体
刃体18について、
図10に基づいて説明する。
図10(a)は、
図1に示す剥離用工具に用いられる刃体を示す正面図である。
図10(b)は、その右側面図である。
図10において、高さ方向は、刃体18が刃体保持部材38に取着されたときに、取着される際の上端縁とそれに相対する下端縁を結ぶ方向である。また、幅方向は、高さ方向に直交し、且つ刃体18の左端縁とそれに相対する右端縁を結ぶ方向である。更に、厚さ方向は、高さ方向と幅方向の両方に直交し、且つ刃体保持部材38と螺合する方向である。
刃体18は、軸方向用切断刃18a、並びに一対の円周方向用切断刃18bおよび円周方向用切断刃18cを含む。円周方向用切断刃18bおよび18cは、軸方向用切断刃18aをその間に介在して、正面視右側の円周方向用切断刃18bと、正面視左側の円周方向用切断刃18cとに分かれている。刃体18の幅方向の長さは、刃体保持部材38の幅方向の長さと略同一である。刃体18の一方端辺(上辺)側は、刃体18の交換が可能なように、刃体保持部材38の刃体取付部38aに取着される。刃体18の他方端辺(下辺)側には、軸方向用切断刃18a、並びに円周方向用切断刃18bおよび18cが形成されている。円周方向用切断刃18bおよび18cは、軸方向用切断刃18aの左右両端から、一対の刃が剥離用工具本体12の把持部22aに把持された被覆電線Wに向かってのび、軸方向用切断刃18aよりも被覆電線Wに向かって先端部が突設している。円周方向用切断刃18bおよび18cは、円周方向用切断刃18bおよび18cののびる方向が、軸方向用切断刃18aののびる方向に対して垂直方向に配設されている。刃体18において、軸方向用切断刃18a並びに一対の円周方向用切断刃18bおよび18cが一体に形成される。
【0040】
軸方向用切断刃18aは、剥離用工具本体12の把持部22aに把持された被覆電線Wに向かうに従って、また、刃が下端に向かうに従って、刃の厚さ方向において細くなっている。すなわち、刃の正面側と背面側との長さが、先端に向かうに従って徐々に短くなるテーパー状である。また、軸方向用切断刃18aは、被覆電線Wの軸方向に沿って被覆部材W2に食い込み、その後切断するために設けられている。
軸方向用切断刃18aは、刃体保持部材38に、剥離用工具本体12に把持された被覆電線Wに対して、刃ののびる方向が平行になるように取り付けられ、刃体18が刃体保持部材38に取り付けられたとき、軸方向用切断刃18aは、刃体保持部材38の他方主面(下面)から剥離用工具本体12に把持された被覆電線Wに向かって突設する。なお、軸方向用切断刃18aは片刃であることが好ましい。
【0041】
円周方向用切断刃18bおよび18cは、軸方向用切断刃18aをその間に介在して、正面視右側の円周方向用切断刃18bと、正面視左側の円周方向用切断刃18cとに分かれている。右側の円周方向用切断刃18bと、左側の円周方向用切断刃18cは、平行にのびていてもよい。右端の円周方向用切断刃18bと左端の円周方向用切断刃18cとは、略同一形状である。
円周方向用切断刃18bは、先端部18b1と支持部18b2とを有している。また、円周方向用切断刃18cは、先端部18c1と支持部18c2とを有している。先端部18b1と18c1は、軸方向用切断刃18aの下端縁である刃先よりも突設した部分である。円周方向用切断刃18bの支持部18b2および円周方向用切断刃18cの支持部18c2において、軸方向用切断刃18aと連続し、軸方向用切断刃18a並びに一対の円周方向用切断刃18bおよび18cは、一体に形成される。また、右側の円周方向用切断刃18bと、左側の円周方向用切断刃18cは、剥離用工具本体12の把持部22aに把持された被覆電線Wに向かってのび、軸方向用切断刃18aよりも被覆電線Wに向かって、右側の円周方向用切断刃18bの先端部18b1および左側の円周方向用切断刃18cの先端部18c1は、被覆部材W2の厚みと同じもしくはそれよりも長く突設されていてもよい。そして、右側の円周方向用切断刃18bと、左側の円周方向用切断刃18cは、円周方向用切断刃18bと、円周方向用切断刃18cののびる方向が軸方向用切断刃18aののびる方向に対して垂直方向に配設されている。右側の円周方向用切断刃18bの先端部18b1と、左側の円周方向用切断刃18cの先端部18c1は、正面視略V字形の先の尖った切っ先であり、側面視略U字形(倒コの字型)で前側の角部と後側の角部が、先の尖った切っ先となっており、刃先は前側から後側に亘って連続する直線状である。また、右側の円周方向用切断刃18bと、左側の円周方向用切断刃18cは、被覆電線Wの円周方向に沿って被覆部材W2に同時に食い込み、その後切断するために設けられている。
円周方向用切断刃18bの支持部18b2および円周方向用切断刃18cの支持部18c2は、軸方向用切断刃18aの刃先に対向する鎬18gから右側の円周方向用切断刃18bの先端部18b1および左側の円周方向用切断刃18cの先端部18c2にかけて形成され、厚みは刃体支持部18fの厚さ方向の長さと同じ長さである。
右側の円周方向用切断刃18bと、左側の円周方向用切断刃18cとは、被覆電線Wの被覆部材W2を
剥離する範囲、すなわち被覆電線Wの軸方向における長さを規定する。なお、円周方向用切断刃18bおよび18cは、両刃であることが好ましい。
【0042】
刃体18の一方端辺(上辺)側には、刃体取付孔18dが形成されている。刃体取付孔18dには、刃体保持部材38に刃体18を取り付ける際に、刃体取付用部材18eが貫通され、刃体保持部材38の刃体取付用穴38bに螺合される。このように、刃体18は、刃体保持部材38の刃体取付部38aに取着される。刃体取付孔18dは、刃体取付用部材18eを螺入したとき、刃体取付用部材18eが突出しないように、すり鉢状に形成されている。
【0043】
刃体支持部18fは、軸方向用切断刃18a並びに円周方向用切断刃18bおよび18cと接続し、刃体取付孔18dを支持する。
【0044】
(f)ガイド
ガイド40およびガイド42について、
図9に基づいて説明する。
図9(a)は
図1に示す剥離用工具に用いられる正面視右側のガイドを示す正面図であり、
図9(b)はその右側面図である。また、
図9(c)は
図1に示す剥離用工具に用いられる正面視左側のガイドを示す正面図であり、
図9(d)はその右側面図である。
一対のガイドは、被覆部材の剥離する位置を決め、剥離した被覆部材を一定方向に出力するように案内し、剥離した被覆部材の落下を防止するものであって、ガイド40とガイド42から構成されている。
ガイド40は、刃体保持部材38の右端面に取着される。ガイド40は、ガイド本体部40aを含む。ガイド本体部40aには、ガイド取付用孔40a1が形成されている。ガイド取付用孔40a1には、刃体保持部材38の右端面にガイド40を取着する際に、ガイド取付部材40a2が貫通され、刃体保持部材38のガイド取付用穴38fに螺合される。ガイド本体部40aの下端側には、押さえ部40a3が突設されている。また、ガイド本体部40aの前部において、折り曲げ部40a4を起点にして刃体18の幅方向の中央に向かって内側に脱落防止部40bが前方下側に向けて突設されている。そして、ガイド本体部40aの後部において、背面側ガイド支持部40cが突設されている。
ガイド42は、刃体保持部材38の左端面に取着される。ガイド42は、ガイド本体部42aを含む。ガイド本体部42aには、ガイド取付用孔42a1が形成されている。ガイド取付用孔42a1には、刃体保持部材38の左端面にガイド42を取着する際に、ガイド取付部材42a2が貫通され、刃体保持部材38のガイド取付用穴38fに螺合される。ガイド本体部42aの下端側には、押さえ部42a3が突設されている。また、ガイド本体部42aの前部において、折り曲げ部42a4を起点にして刃体18の幅方向の中央に向かって内側に脱落防止部42bが前方下側に向けて突設されている。そして、ガイド本体部42aの後部において、背面側ガイド支持部42cが突設されている。
なお、折り曲げ部40a4および42a4には、折り曲げるための溝が形成されていることが好ましいが、形成されていなくても良い。
ガイド40の脱落防止部40bおよびガイド42の脱落防止部42bが、前方下側に向けて突設されていることにより、被覆電線Wの被覆部材W2を剥離する位置を決めるために使用することができる。
また、ガイド40の脱落防止部40bおよびガイド42の脱落防止部42bが、前方下側に向けて突設されていることにより、剥離した被覆電線Wの被覆部材W2を一定方向に出力するように案内することができる。
ガイド40の脱落防止部40bおよびガイド42の脱落防止部42bが、それぞれ折り曲げ部40a4および42a4から脱落防止部40bおよび42bの下端まで刃体18の幅方向の中央に向かって内側に向かい合うことにより、刃体保持部材38の幅よりも脱落防止部40bの下端と脱落防止部42bの下端との幅の方が狭いので、剥離された被覆部材が脱落防止部40bの下端と脱落防止部42bの下端との間に留まり、被覆部材の落下を防止することができる。
また、
図2に示すように、側面から見ると、刃体18がガイド40の脱落防止部40bおよびガイド42の脱落防止部42bよりも剥離用工具本体12側に取付けられている。これにより、被覆電線Wの被覆部材W2を刃体18によって剥離させる際に、ガイド40とガイド42よりも先に一対の円周方向切断刃18b、18cを被覆部材W2に食い込ませることができる。
【0045】
ガイド本体部40aの下端縁は、水平状押え部40a3側の下端縁と、該下端縁より一段上がって背面側ガイド支持部40c側の水平状下端縁とが連続している。
同様に、ガイド本体部42aの下端縁は、水平状押え部42a3側の下端縁と、該下端縁より一段上がって背面側ガイド支持部42c側の水平状下端縁とが連続している。
【0046】
ガイド40の背面側ガイド支持部40cとガイド42の背面側ガイド支持部42cとの間には、背面側ガイド44が架設されている。背面側ガイド44は、本体部20の背面側に設けられ、
図4(a)に示すように、棒状に形成されても良い。
【0047】
図1に示す剥離用工具10は、軸方向用切断刃18aとは別に一対の円周方向用切断刃18bおよび18cが設けられているので、剥離用工具10を被覆電線Wを中心に回転させて被覆部材W2の剥離を行う際に、円周方向用切断刃18bおよび18cにより被覆部材W2を円周方向に容易に切断できるので、被覆部材W2の剥離作業をスムーズに行うことができる。
【0048】
また、
図1に示す剥離用工具10は、刃体18の軸方向用切断刃18aならびに円周方向用切断刃18bおよび18cとが一体に形成されているので、刃体取付用部材18eを取り外すだけで、刃体保持体16から刃体18を取り外すことができる。被覆部材W2を剥離するために必要な刃を全て交換することができるので、刃体18を再度、刃体保持体16に取り付けるための調整が容易であるから、剥離用工具10のメンテナンスが容易にできる。
【0049】
さらに、
図1に示す剥離用工具10は、規制部材36があることで、被覆電線Wの径に応じて、作業前に規制部材36により押圧軸14の進退方向の移動を規制するように配置させておくことで、芯線W1に対して傷をつけることなく、被覆部材W2のみを剥離するように、刃体保持体16の移動距離を設定することができる。
なお、被覆電線Wの線径に応じて、芯線W1を傷つけることのない程度に被覆電線Wに対して刃体を食い込ませるのに必要な移動距離(すなわち、被覆部材の厚みの大きさに対応)は予め決まっているので、その必要な移動距離に基づき、螺子部28における規制部材36の位置を決定することができる。
【0050】
また、さらに、
図1に示す剥離用工具10は、本体部20において、把持体22が突設される方向とは反対方向であって、かつ押圧軸14がのびる方向に対して略垂直方向に向かってのびる腕部26bを有し、腕部26bの一方端側は腕部支持部26aを介して本体部20と接続され、腕部26bの他方端側には第2の係合部26cを有するので、第1の係合部34および腕体26の第2の係合部26cを操作棒Sの先端係合部S2に引っ掛けることで、操作棒Sによる遠隔操作により、被覆電線Wを中心として剥離用工具10を容易に一回転させることができる。
【0051】
また、
図1に示す剥離用工具10は、刃体保持部材38の両端に配置される一対のガイド40およびガイド42を有し、一対のガイド40およびガイド42は、被覆部材W2の剥離する位置を決め、剥離した被覆部材W2を一定方向に出力するように案内し、剥離した被覆部材W2の落下を防止するものであって、刃体保持部材38側の内面に折り曲げ部40a4,42a4を有し、折り曲げ部40a4,42a4を起点として、折り曲げ部40a4,42a4の外側の脱落防止部40b,42bを刃体18の幅方向の中央に向かって内側に向かい合い、かつ刃体保持部材38の幅よりも脱落防止部40b,42bの下端の間の幅の方が狭いため、剥離された被覆部材W2が脱落防止部40b,42bの下端の間に留まり、被覆部材W2の落下を防止することができる。
【0052】
また、
図1に示す剥離用工具10は、背面側ガイド44を備えるので、刃体18が被覆電線Wから被覆部材W2を剥離するときに、刃体18が、手前方向に移動することで刃体18が被覆電線の外周において滑ることを防止し、軸方向用切断刃18aならびに一対の円周方向用切断刃18bおよび18cが被覆電線Wの被覆部材W2にしっかりと食い込ませることができる。
【0053】
2.剥離用工具の操作手順
次に、以上の構成からなる剥離用工具を被覆電線Wへ取り付け、剥離用工具を用いて、被覆電線Wから被覆部材W2を遠隔で剥離する、剥離用工具の操作手順について説明する。
図11ないし
図18は、
図1に示す剥離用工具の使用方法を説明するための図であり、剥離用工具により被覆電線から被覆部材を剥離するための操作手順を示す。
【0054】
(1)まず、
図11に示すように、剥離用工具10における第1の係合部34のリング部34aに操作棒Sの先端係合部S2を引っ掛けて、操作棒Sで剥離用工具10を吊り下げる。そして、操作棒Sで吊り下げた剥離用工具10における把持部22aの湾曲面22bとガイド40,42との間に被覆電線Wの一部分を挟むようにして、被覆電線Wに剥離用工具10を取り付ける。
【0055】
(2)次に、
図12に示すように、被覆電線Wを中心として、剥離用工具10における第1の係合部34のリング部34aを操作棒Sで引き下げ、被覆電線Wに剥離用工具10を吊持させる。
【0056】
(3)続いて、
図13(a)に示すように、操作棒Sの先端係合部S2を第1の係合部34に引っ掛けた状態で第1の係合部34を押圧軸14の軸を中心として時計の回転方向に回転させることで、押圧軸14を軸回転させ、それにより、刃体保持体16を被覆電線W側に移動させる。このとき、押圧軸14は、押圧軸14の螺子部28における所定位置で固定される規制部材
36が軸支持部24に当接するまで移動させる。そうすると、
図13(b)に示すように、刃体18の軸方向用切断刃18aならびに円周方向用切断刃18bおよび18cが、被覆電線Wの被覆部材W2のみに食い込む。
【0057】
(4)次に、
図14に示すように、剥離用工具10における第2の係合部26cのリング部26c1に移し替えて、操作棒Sの先端係合部S2を係合させる。
【0058】
(5)続いて、
図15に示すように、剥離用工具10における第2の係合部26cのリング部26c1を、被覆電線Wを中心として操作棒Sで引き下げ、さらに、剥離用工具10における第2の係合部26cに操作棒Sの先端係合部S2を係合させたまま、右斜め上方向に突き上げる。この段階で、剥離用工具10は、被覆電線Wを軸中心に約240°程度、回転している。
【0059】
(6)次に、
図16に示すように、剥離用工具10における第1の係合部34のリング部34aに移し替えて、操作棒Sの先端係合部S2を係合させる。
【0060】
(7)続いて、
図17に示すように、操作棒Sの先端係合部S2を剥離用工具10における第1の係合部34のリング部34aに係合させたまま、被覆電線Wを中心として、さらに、第1の係合部34のリング部34aを操作棒Sで引き下げる。このとき、さらに、剥離用工具10は、被覆電線Wの軸中心に約120°程度、回転する。結果、剥離用工具10は、被覆電線Wの軸中心に、約360°回転することになる。これにより、被覆部材W2は、被覆電線Wから全周にわたって剥離される。
【0061】
(8)
図18に示すように、操作棒Sの先端係合部S2を第1の係合部34に引っ掛けた状態で第1の係合部34を押圧軸14の軸を中心として時計の回転方向とは逆方向に回転させることで、押圧軸14を軸回転させ、それにより、刃体保持体16を被覆電線W側から離れる方向に移動させる。そして、被覆電線Wから剥離用工具10を外す。
【0062】
以上のようにして、被覆電線Wを中心として剥離用工具10を一回転させることができる。
図19は、刃体が被覆電線から被覆部材を剥離させている状態を示す斜視図解図である。
図13から
図16に示すように、剥離用工具10が一回転することにより、被覆部材W2は被覆電線Wから剥離される。被覆部材W2は、
図19に示すように、刃体18によって、被覆部材が被覆電線から剥離される。
図13(b)に示すように、刃体18を被覆電線Wの被覆部材W2に食い込ませると、
図19に示すように被覆部材W2には、刃体18の軸方向用切断刃18aにより被覆部材W2の軸方向の切断線L1が形成され、剥離用工具10を、被覆電線Wを中心に回転させると、円周方向用切断刃18bおよび18cにより被覆部材W2の円周方向の切断線L2が形成される。
【0063】
3.変形例
次に、この発明のほかの実施の形態に係る剥離用工具の変形例について、
図20ないし
図23を用いて説明する。
図20は、この発明にかかる剥離用工具の一例を示す背面図である。
図21は、この発明にかかる剥離用工具の一例を示す右側面図である。
図22は、この発明にかかる剥離用工具の一例を示す平面図である。
図23(a)は、
図20に示す剥離用工具に用いられるガイドを示す右側面図である。
図23(b)は、
図20に示す剥離用工具に用いられるガイドを示す正面図である。
【0064】
図20ないし
図23に示すように、この変形例に係る剥離用工具10Aは、上述した剥離用工具10と比較して、左右のガイドと背面側ガイドが一体形成されている点が異なる。剥離用工具10Aにおいて使用されるガイド80について説明する。なお、上記したこの発明の一実施の形態に係る剥離用工具10と同一部分については、同じ参照番号を付し、同様となる説明は繰り返さない。
【0065】
ガイド80は、右側ガイド82と、左側ガイド84と、本体20の背面側であって、右側ガイド82と左側ガイド84との間に接続された背面側ガイド86と、を含む。ガイド80は、右側ガイド82と背面側ガイド86、左側ガイド84と背面側ガイド86が、それぞれ接続されており、平面視略コの字型をしている。
右側ガイド82は、ガイド本体部82aを含む。ガイド本体部82aには、ガイド取付用孔82a1が形成されている。ガイド取付用孔82a1は、刃体保持部材38の右端面にガイド80を取着する際に、ガイド取付部材82a2が貫通され、刃体保持部材38のガイド取付用穴38fに螺合される。また、ガイド本体部82aの前部において、折り曲げ部82a3を起点にして、刃体18の幅方向の中央に向かって内側に、脱落防止部82bが前方下側に向けて突設されている。
左側ガイド84は、ガイド本体部84aを含む。ガイド本体部84aには、ガイド取付用孔84a1が形成されている。ガイド取付用孔84a1は、刃体保持部材38の左端面にガイド80を取着する際に、ガイド取付部材84a2が貫通され、刃体保持部材38のガイド取付用穴38fに螺合される。また、ガイド本体部84aの前部において、折り曲げ部84a3を起点にして、刃体18の幅方向の中央に向かって内側に、脱落防止部84bが前方下側に向けて突設されている。
なお、折り曲げ部82a3および84a3には、折り曲げるための溝が形成されていることが好ましいが、形成されていなくても良い。
【0066】
ガイド80が一体に形成されていることにより、刃体18が被覆電線Wから被覆部材W2を剥離するときに、刃体18が、手前方向に移動することで刃体18が被覆電線Wの外周において滑ることを防止し、軸方向用切断刃18aおよび一対の円周方向用切断刃18b、18cを、しっかりと被覆部材W2に食い込ませることができる。また、ガイド80が一体に形成されるため、ガイドの取付工程を減らすことができる。さらに、背面側ガイド86を別部材で接続する場合よりも、右側ガイド82および左側ガイド84と、背面側ガイド86との接続部の強度が増す。
【0067】
以上のように、本発明の実施の形態は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施の形態に対し、機序、形状、材質、数量、位置又は配置等に関して、様々の変更を加えることができるものであり、それらは、本発明に含まれるものである。
【0068】
たとえば、
図1に示す剥離用工具は、押圧軸が、剥離用工具本体に対して進退移動自在に螺入されているが、これに限るものではなく、押圧軸は、剥離用工具本体に対して、進退移動自在であれば、どのように剥離用工具本体に対して設けられていてもよい。
【0069】
また、
図1に示す剥離用工具は、規制部材が押圧軸に螺入されているが、これに限るものではなく、必ずしも規制部材が螺入されていなくてもよい。
【0070】
さらに、
図1に示す剥離用工具は、本体部の背面側に腕体が設けられているが、これに限るものではなく、必ずしも設けられていなくてもよい。
【0071】
さらにまた、
図1に示す剥離用工具は、背面側ガイドが本体部の背面側に配置されているが、これに限るものではなく、必ずしも背面側ガイドを有さなくてもよい。