(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
通信可能に接続された複数の情報処理装置によって構成され、管網に含まれる複数の管路のうち地震により損傷する第1管路を特定する第1処理を含むシミュレーションを複数回実行する実行手段と、複数回の前記シミュレーションのうちから選択される1回以上の前記シミュレーションの結果に基づいて、1つ以上の前記管路の修繕に関する優先度を決定する決定手段と、を備える情報処理システムにおける、前記複数の情報処理装置のうち1つの情報処理装置を、
前記実行手段及び前記決定手段の少なくとも一方として機能させ、
前記シミュレーションは、前記管網に含まれる前記第1管路を閉止した場合に前記管網が全体として供給できなくなる単位時間当たりの損失水量を推定する第3処理を含み、
前記1回以上のシミュレーションは、前記複数回のシミュレーションのうちから前記損失水量に基づいて選択される、プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る情報処理システム1について説明する。情報処理システム1は、例えば上水道の管網に対する地震の影響を推測し、その結果に基づいて当該管網に含まれる管路の耐震化優先度を決定するシステムである。耐震化優先度は、管路に対して耐震化(例えば、補強)を行うべき重要性の度合いであって、例えば管路の耐震化優先度が高いほど、当該管路を耐震化する重要性が高いことを示す。耐震化優先度は、例えば管網に対する耐震化工事の計画において、いずれの管路を優先的に耐震化するかの判断材料として有用である。本実施形態に係る情報処理システム1は、表示装置10と、入力装置20と、情報処理装置30と、を備える。
【0015】
(表示装置のハードウェア構成)
表示装置10のハードウェア構成について説明する。表示装置10は、例えば液晶ディスプレイ又はOEL(Organic Electro-luminescence)ディスプレイ等のディスプレイである。本実施形態において、表示装置10は、情報処理装置30に接続される。
【0016】
(入力装置のハードウェア構成)
入力装置20のハードウェア構成について説明する。入力装置20は、例えばキーボード又はマウス等の、ユーザによる操作を受け付ける入力インタフェースである。本実施形態において、入力装置20は、情報処理装置30に接続される。
【0017】
(情報処理装置のハードウェア構成)
情報処理装置30のハードウェア構成について詳細に説明する。情報処理装置30は、通信部31と、記憶部32と、制御部33と、を備える。
【0018】
通信部31は、無線又は有線を介して外部装置と通信する1つ以上の通信インタフェースである。本実施形態において、通信部21は、表示装置10及び入力装置20のそれぞれと通信する通信インタフェースを含むが、例えばLAN(Local Area Network)又はインターネット等の任意のネットワークと通信する通信インタフェースを更に含んでもよい。
【0019】
記憶部32は、1つ以上のメモリである。メモリは、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等であるが、これらに限られず任意のメモリとすることができる。記憶部32は、例えば一次記憶装置又は二次記憶装置として機能する。記憶部32は、例えば情報処理装置30に内蔵されるが、任意のインタフェースを介して情報処理装置30に外部から接続される構成も可能である。
【0020】
制御部33は、1つ以上のプロセッサである。プロセッサは、例えば汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサであるが、これらに限られず任意のプロセッサとすることができる。制御部33は、情報処理装置30全体の動作を制御する。
【0021】
(情報処理装置のソフトウェア構成)
情報処理装置30のソフトウェア構成について説明する。情報処理装置30の動作の制御に用いられる1つ以上のプログラムが記憶部32に記憶される。当該1つ以上のプログラムは、制御部33によって読み込まれると、制御部33を入力手段330、記憶手段331、実行手段332、決定手段333、及び表示手段334として機能させる。
【0022】
各手段の概要について説明する。入力手段330は、入力装置20に対するユーザ操作に基づく入力を受け付ける手段である。記憶手段331は、情報を記憶部32に記憶する手段である。実行手段332は、管網に対する地震の影響を推測するシミュレーション(以下、単に「シミュレーション」ともいう。)を複数回実行する手段である。決定手段333は、後述するように、実行手段332によって実行された複数回のシミュレーションの結果に基づいて、管網に含まれる管路の耐震化優先度を決定する手段である。表示手段334は、情報を表示装置10に表示させる手段である。各手段の具体的な動作については後述する。
【0023】
(情報処理システムの第1動作)
情報処理システム1の第1動作について説明する。記憶手段331は、シミュレーションに用いられる情報を記憶部32に記憶する。当該情報は、例えばユーザが入力装置20を操作して入力可能である。当該情報は、例えば管網情報であるが、これに限られない。
【0024】
管網情報は、管網の構成に関する情報である。例えば、管網情報は、管網に含まれる管路の損傷確率、管路の位置関係、管路を閉止するための止水弁、住戸及び病院等の供給先、並びに供給先に供給すべき単位時間あたりの水量(以下、「供給先の供給水量」ともいう。)の情報であるが、これらに限られない。本実施形態において、管網情報は、管路の水圧の情報を含まなくてよい。
【0025】
ここで、管路の損傷確率は、シミュレーションにおいて地震により当該管路が損傷する確率である。本実施形態において、損傷確率は、管路の長さと推定被害率の積で定義されるが、損傷確率の定義はこれに限られない。管路の推定被害率は、管路を構成する管の情報(例えば、管種、継手、及び口径、管が布設されている微地形、液状化の有無、及び液状化の可能性の情報)及び管路被害予測式を用いて算出可能である。管路被害予測式として、例えば水道技術研究センターによって開示された式が採用可能であるが、これに限られない。具体的には、対象とする管路が液状化の情報を有していない又は液状化の可能性が無い場合には、管路被害予測式は下記の式(1)である。
R
m=C
p×C
d×C
g×R(v) (1)
ここで、R
m[件/km]は推定被害率、C
pは管種・継手補正係数、C
dは口径補正係数、C
gは微地形補正係数、及びR(v)[件/km]は標準被害率である。なお、管種・継手補正係数C
p及び口径補正係数C
dは、対象とする管路を構成する管に応じた所定の値が入力される。また、微地形補正係数C
gは、対象とする管路を構成する管が布設されている微地形に応じた所定の値が入力される。これらの所定の値として、例えば水道技術研究センターによって開示された値が採用可能であるが、これに限られない。また、標準被害率R(v)は、地震動の地表面最大速度v[cm/s]を用いて、下記の式(2)で示される。
R(v)=9.92×10
−3×(v−15)
1.14
(ただし、15≦v<120) (2)
【0026】
一方、対象とする管路が液状化の情報を有しており、且つ液状化の可能性ありの場合には、管路被害予測式は下記の式(3)である。
R
m=C
p×C
d×R
L (3)
ここで、R
L[件/km]は標準液状化被害率である。例えば、R
L=5.5であるが、R
Lの値はこれに限られない。
【0027】
一例において、長さが0.032[km]である管路の推定被害率が0.132[件/km]である場合、当該管路の損傷確率は、0.032×0.132=0.004224≒0.4[%]である。
【0028】
次に、実行手段332は、記憶部32に記憶された情報を用いて、シミュレーションをN回(ただし、Nは2以上の整数)実行する。
【0029】
ここで、シミュレーションを実行する実行手段332の動作について説明する。まず実行手段332は、管網に含まれる複数の管路のうち、シミュレーション上の地震により損傷する管路(以下、「第1管路」ともいう。)を特定する処理(以下、「第1処理」ともいう。)を実行する。より具体的には、実行手段332は、管網に含まれる管路毎に、上述した損傷確率及び乱数を用いる確率抽選により、管路が損傷するか否かを判定する。実行手段332は、損傷すると判定した管路を第1管路と定義する。
【0030】
続いて実行手段332は、特定した第1管路毎に、第1管路を閉止するための止水弁を特定し、当該止水弁により第1管路を閉止した場合に断水する供給先(以下、単に「断水する供給先」ともいう。)を特定する。
【0031】
そして実行手段332は、管網に含まれる全ての第1管路を閉止した場合に管網が供給できなくなる単位時間あたりの損失水量(以下、単に「管網の損失水量」ともいう。)を推定する処理(以下、「第3処理」ともいう。)を実行する。具体的には、実行手段332は、断水する供給先の供給水量の合計を、管網の損失水量と定義する。そして、シミュレーションが終了する。
【0032】
図2を参照して、シミュレーションの実行結果の具体例について説明する。
図2において、管網に含まれる管路及び止水弁、並びに供給先が図示されている。本具体例では、6つの第1管路A〜Fと、第1管路A〜Fのそれぞれを閉止する止水弁と、が特定されている。特定された止水弁を閉状態とした場合(即ち、6つの第1管路A〜Fを閉止した場合)に断水する供給先の近傍には、当該供給先の供給水量が数値で図示されている。断水する供給先の供給水量の合計(即ち、管網の損失水量)は、「238」である。なお、シミュレーションの各回で実行結果(例えば、特定される第1管路、及び管網の損失水量等)は異なり得る。
【0033】
次に、表示手段334は、N回のシミュレーションの実行結果を表示装置10に表示させる。例えば、表示手段334は、
図3に示すヒストグラムを表示装置10に表示させる。
図3は、横軸を管網の損失水量とし、縦軸をデータ件数としたヒストグラムであって、N回のシミュレーションにおいて推定された管網の損失水量の分布の例を示す一例である。しかしながら、表示手段334によって表示させるデータ及びその表示態様は、管網の損失水量及びヒストグラムの態様に限られない。例えば、表示手段334は、N回分の損失水量のデータを、昇順又は降順でリスト表示させてもよい。表示手段334は、N回のシミュレーションを実行した結果として得られた任意の情報を、任意の態様で表示させてもよい。
【0034】
次に、決定手段333は、N回のシミュレーションのうちから1回以上のシミュレーションを選択する。具体的には、決定手段333は、例えば管網の損失水量が多いものから優先的に1回以上のシミュレーションを自動的に選択してもよく、或いは入力装置20を操作するユーザによって指定された1回以上のシミュレーションを選択してもよい。決定手段333は、選択された1回以上のシミュレーションの結果に基づいて、管網に含まれる1つ以上の管路の耐震化優先度を決定する。ここで、1回のシミュレーションが選択された場合と、2回以上のシミュレーションが選択された場合とで、耐震化優先度を決定する決定手段333の動作の詳細が異なる。以下、それぞれの場合について具体的に説明する。
【0035】
<1回のシミュレーションが選択された場合>
まず、選択された1回のシミュレーションにおいて特定された第1管路が損傷し順次修繕されることを考える。ここでは、損傷した第1管路は修繕されるまで止水弁により閉止されるものと仮定し、また、シミュレーション上の地震が発生してから所定時間(例えば、1日)が経過する毎に最大で所定数(例えば、3つ)の第1管路が順次修繕されるものと仮定する。かかる条件のもと、決定手段333は、シミュレーションにおいて特定された第1管路について修繕されるべき順番を決定する処理(第2処理)を実行する。
【0036】
修繕されるべき順番の決定には、任意のアルゴリズムが採用可能である。一例において、決定手段333は、記憶部32に記憶された管網情報を用いて、第1管路毎に回復水量を算出する。第1管路の回復水量は、次に挙げる第1条件及び第2条件のもと、損傷し閉止されている当該第1管路が修繕され開通するものと仮定した場合に、断水していた供給先に供給されるようになる水量の合計である。第1条件は、水源からの水が当該第1管路の上流側の止水弁まで(損傷した他の第1管路の存在に関わらず)到達していると仮定するとの条件である。また、第2条件は、当該第1管路の止水弁が他の第1管路の上流側の止水弁を兼ねている場合、当該第1管路の回復水量の算出においては、当該他の第1管路が損傷しておらず開通している(即ち、正常な状態である)ものとして扱うとの条件である。
【0037】
例えば
図2に示す例では、6つの第1管路A〜Fが損傷し閉止されている。ここで、第1管路Aの回復水量は、次のように決定される。即ち、上述の第1条件により、水源からの水が第1管路Aの上流側の止水弁A1まで(損傷した第1管路Bの存在に関わらず)到達していると仮定する。そして、損傷し閉止されている第1管路Aが修繕され開通するものと仮定した場合、図中の領域S内に示される4つの断水していた供給先に水が供給されるようになる。したがって、第1管路Aの回復水量は、8+6+5+9=28である。また、第1管路Bの回復水量は、次のように決定される。即ち、第1管路Bの止水弁B1が第1管路Aの上流側の止水弁を兼ねているため、上述の第2条件により、第1管路Aが損傷しておらず開通している(即ち、正常な状態である)ものとして扱う。そして、損傷し閉止されている第1管路Bが修繕され開通するものと仮定した場合、止水弁B1が開放されることにより、図中の領域S内に示される4つの断水していた供給先に水が供給されるようになる。したがって、第1管路Bの回復水量は、8+6+5+9=28である。同様に、第1管路C、D、E、及びFの回復水量は、それぞれ29、135、127、及び19である。
【0038】
6つの第1管路A〜Fを対象として回復水量を決定する上記の処理(以下、「回復水量決定処理」ともいう。)が完了すると、決定手段333は、対象とした6つの第1管路A〜Fのうち回復水量が最大である第1管路Dが修繕され開通したものとして扱い、残りの5つの第1管路A〜C、E、及びFを新たな対象として、回復水量決定処理を再度行う。決定手段333は、任意の回数(例えば、新たな対象とする第1管路がなくなるまで)回復水量決定処理を繰り返し実行する。決定手段333は、p回目(ただし、pは1以上の整数)の回復水量決定処理において回復水量が最大である第1管路の修繕されるべき順番を、p番と決定する。
【0039】
例えば、
図4に示す表の1列目〜6列目は、それぞれ1回目〜6回目の回復水量決定処理の結果を示す。
図4の各列には、対応する回復水量決定処理において対象とされた第1管路が、回復水量の降順に並んでいる。また、
図4の1行目には、回復水量決定処理の各回において回復水量が最大である第1管路が並んでいる。したがって、
図4のp列目の1行目に記載された第1管路の修繕されるべき順番は、p番である。即ち、修繕されるべき順番は、1列目の1行目に記載された第1管路Dが1番、2列目の1行目に記載された第1管路Cが2番、3列目の1行目に記載された第1管路Bが3番、4列目の1行目に記載された第1管路Aが4番、5列目の1行目に記載された第1管路Eが5番、そして6列目の1行目に記載された第1管路Fが6番である。なお、第1管路Eの回復水量は、1列目(即ち、1回目の回復水量決定処理)では「127」であるのに対して、2列目(即ち、2回目の回復水量決定処理)では「27」である。このことは、2回目の回復水量決定処理において、第1管路Dは修繕され開通したものとして対象から除外されており、
図2に示す領域T内の供給先(供給水量=100)に対する水の供給が既に回復している状態(即ち、断水していない通常状態)となっていることに起因する。
【0040】
第1管路の修繕されるべき順番を決定するアルゴリズムは、上述した例に限られない。例えば
図5を参照して、最適化計算により第1管路の修繕されるべき順番を決定するアルゴリズムの例について説明する。
図5は、シミュレーションにおいて特定された第1管路が損傷し順次修繕されると仮定した場合の、管網全体が単位時間あたりに供給する供給水量(以下、単に「管網の供給水量」ともいう。)の時間変化の一例を示す図であって、横軸を時間とし、縦軸を管網の供給水量としたグラフである。以下、管網の供給水量の時間変化を、時間tの関数f(t)で示す。ここで、通常時(即ち、シミュレーション上の地震の発生時刻t1より前の状態)における管網の供給水量をV0とする。また、シミュレーション上の地震の発生時刻t1における管網の供給水量をV1(ただし、V1≦V0)とする。管網の供給水量は、修繕が進むにつれて(即ち、時刻t1以降に)V1から増加し、最終的に通常時と同じV0まで回復する。なお、上述した「管網の損失水量」は、
図5におけるV0とV1の差に等しい。
【0041】
ここで、管網の供給水量の時間変化f(t)は、第1管路を修繕する順番によって異なる。決定手段333は、シミュレーション上の地震の発生後の所定期間に管網が供給する、当該地震が発生しなかったと仮定した通常時の(即ち、管網に含まれるいずれの管路も損傷しなかった場合の)第1水量Q1と、第1管路が損傷し順次修繕される場合の第2水量Q2との差を小さくするように、第1管路を修繕する順番を変化させて最適化計算を行う。決定手段333は、第1水量Q1と第2水量Q2との差が最適化されたと判断したとき(例えば、第1水量Q1と第2水量Q2との差が最小になったと判断したとき)の順番を、第1管路の修繕されるべき順番として決定する。例えば
図5に示す例において、シミュレーション上の地震発生時刻t1から、供給水量が所定基準に達する(例えば、供給水量が所望の基準値V2(ただし、V1<V2≦V0)に達する)時刻t2までの期間が、上記の所定期間に定められる。かかる場合、第1水量Q1及び第2水量Q2は、それぞれ以下の式(4)及び式(5)で示される。
【数1】
【0042】
したがって、決定手段333は、第1水量Q1と第2水量Q2との差が小さくなるように、第1管路を修繕する順番を変化させて最適化計算を行い、当該差が最適化されたと判断したときの順番を、第1管路の修繕されるべき順番として決定する。
【0043】
上述のようにして第1管路の修繕されるべき順番を決定すると、決定手段333は、第1管路の当該順番を耐震化優先度と定義する。かかる場合、管路の耐震化優先度の値が小さいほど(即ち、修繕されるべき順番が早いほど)、当該管路の耐震化優先度が高いことを示す。なお、決定手段333は、シミュレーションにおいて特定された第1管路のうち一部の第1管路(例えば、修繕されるべき順番が早いものから所定数の第1管路、又は時刻t2までに修繕される第1管路等)を抽出し、当該一部の第1管路の修繕されるべき順番を耐震化優先度と定義してもよい。
【0044】
<2回以上のシミュレーションが選択された場合>
決定手段333は、シミュレーションにおいて特定された第1管路について修繕されるべき順番を決定する上述の第2処理を、選択された2回以上のシミュレーションのそれぞれについて実行する。したがって、例えば
図6に示すように、5回のシミュレーションが選択された場合、第1管路についての修繕されるべき順番が5パターン決定される。
【0045】
決定手段333は、決定された複数パターンの順番に基づいて、例えば統計的手法により、1つ以上の管路の耐震化優先度を決定する。例えば、決定された各パターンにおいて修繕されるべき順番に応じたスコアを管路に与え、管路の合計スコアの多寡に基づいて当該管路の耐震化優先度を決定する手法が採用可能であるが、これに限られない。またこのとき、各パターンの回復水量によって、スコアに重みづけすることもしてもよい。なお、決定手段333は、各シミュレーションにおいて特定された第1管路のうち一部の第1管路(例えば、修繕されるべき順番が早いものから所定数の第1管路、又は時刻t2までに修繕される第1管路等)を抽出し、抽出した第1管路の修繕されるべき順番に基づいて、例えば統計的手法により1つ以上の管路の耐震化優先度を決定してもよい。
【0046】
上述のように1つ以上の管路の耐震化優先度が決定されると、表示手段334は、当該1つ以上の管路の耐震化優先度を表示装置10に表示させる。
【0047】
図7を参照して、情報処理システム1の上述した第1動作フローの第1例について説明する。
図7は、上述したように複数回のシミュレーションのうち1回のシミュレーションが選択される場合に対応するフローチャートである。
【0048】
ステップS100:記憶手段331は、シミュレーションに用いられる情報を記憶部32に記憶する。
【0049】
ステップS101:実行手段332は、記憶部32に記憶された情報を用いて、シミュレーションを実行する。シミュレーションを実行する実行手段332の動作フローについては後述するが、シミュレーションの各回において、地震により損傷する第1管路と、管網の損失水量と、が決定される。
【0050】
ステップS102:実行手段332は、シミュレーションの実行回数がN回になったか否かを判定する。実行回数がN回になったと判定した場合(ステップS102−Yes)、プロセスはステップS103に進む。一方、実行回数がN回に満たないと判定した場合(ステップS102−No)、プロセスはステップS101に戻る。
【0051】
ステップS103:表示手段334は、N回のシミュレーションの実行結果を表示装置10に表示させる。
【0052】
ステップS104:決定手段333は、N回のシミュレーションのうち1回のシミュレーションを選択する。
【0053】
ステップS105:決定手段333は、選択されたシミュレーションにおいて特定された第1管路について修繕されるべき順番を決定する第2処理を実行する。
【0054】
ステップS106:決定手段333は、第2処理によって決定された第1管路の修繕されるべき順番を耐震化優先度と定義する。
【0055】
ステップS107:表示手段334は、1つ以上の管路の耐震化優先度を表示装置10に表示させる。
【0056】
上述したステップS101の詳細について、
図8を参照して説明する。
【0057】
ステップS200:実行手段332は、管網に含まれる複数の管路のうち、シミュレーション上の地震により損傷する第1管路を特定する第1処理を実行する。
【0058】
ステップS201:実行手段332は、特定した第1管路毎に、第1管路を閉止するための止水弁を特定する。
【0059】
ステップS202:実行手段332は、特定した第1管路毎に、第1管路を閉止した場合に断水する供給先を特定する。
【0060】
ステップS203:実行手段332は、特定した全ての第1管路を閉止した場合に管網が供給できなくなる単位時間あたりの損失水量を推定する第3処理を実行する。その後、プロセスは上述したステップS102に進む。
【0061】
図9を参照して、情報処理システム1の上述した第1動作フローの第2例について説明する。
図9は、上述したように複数回のシミュレーションのうち2回以上のシミュレーションが選択される場合に対応するフローチャートである。
【0062】
ステップS300:記憶手段331は、シミュレーションに用いられる情報を記憶部32に記憶する。
【0063】
ステップS301:実行手段332は、記憶部32に記憶された情報を用いて、シミュレーションを実行する。シミュレーションを実行する実行手段332の動作フローは、上述したステップS200−S203である。シミュレーションの各回において、地震により損傷する第1管路と、管網の損失水量と、が決定される。
【0064】
ステップS302:実行手段332は、シミュレーションの実行回数がN回になったか否かを判定する。実行回数がN回になったと判定した場合(ステップS302−Yes)、プロセスはステップS303に進む。一方、実行回数がN回に満たないと判定した場合(ステップS302−No)、プロセスはステップS301に戻る。
【0065】
ステップS303:表示手段334は、N回のシミュレーションの実行結果を表示装置10に表示させる。
【0066】
ステップS304:決定手段333は、N回のシミュレーションのうち2回以上のシミュレーションを選択する。
【0067】
ステップS305:決定手段333は、シミュレーションにおいて特定された第1管路について修繕されるべき順番を決定する第2処理を、選択された2回以上のシミュレーションのそれぞれについて実行する。
【0068】
ステップS306:決定手段333は、第2処理の実行結果に基づいて、1つ以上の管路の耐震化優先度を決定する。
【0069】
ステップS307:表示手段334は、1つ以上の管路の耐震化優先度を表示装置10に表示させる。
【0070】
情報処理システム1の上述した第1動作によれば、損傷した場合に供給先に供給できなくなる水量が比較的多く重要度が高いと考えられる管路ほど、修繕されるべき順番が早くなり、耐震化優先度が高くなる。このため、ユーザは、耐震化優先度が高い管路から優先的に耐震化を施すことにより、管網全体の耐震化工事を効率よく進めることができる。したがって、管網に対する地震の影響を推測する技術の利便性が向上する。
【0071】
(情報処理システムの第2動作)
図10を参照して、情報処理システム1の第2動作について説明する。第2動作は、上述した第1動作において、少なくとも1回のシミュレーションが実行された後に行われ得る。
【0072】
ステップS400:表示手段334は、記憶部32に記憶された管網情報を用いて、表示装置10において管網を地図上に表示させる。
【0073】
ステップS401:表示手段334は、実行された少なくとも1回のシミュレーションのうち、例えば自動的に又は入力装置20を介するユーザ操作に基づいて、1回のシミュレーションを選択する。表示手段334は、選択したシミュレーションにおいて特定された第1管路を、他の管路と区別可能に表示させる。
【0074】
ステップS402:表示手段334は、第1管路が閉止された場合に断水する供給先が位置する領域(以下、「断水領域」ともいう。)を、当該地図上に表示させる。
【0075】
情報処理システム1の上述した第2動作によれば、表示装置10に表示された情報を視認したユーザは、シミュレーションにおいて特定された第1管路及び断水領域を一見して把握可能である。
【0076】
以上述べたように、本発明の一実施形態に係る情報処理システム1は、シミュレーションを複数回実行する実行手段332と、複数回のシミュレーションの結果に基づいて、1つ以上の管路の耐震化優先度を決定する決定手段333と、を備える。ここで、シミュレーションは、管網に含まれる複数の管路のうち、地震により損傷する第1管路を特定する第1処理を含む。かかる構成によれば、耐震化優先度を決定するために、例えば管路の水圧を用いる管網計算等の複雑な計算を必ずしも実行しなくてよい。このため、例えば管路の水圧の情報が最新のものに更新されていなかったり、或いは不明であったりしても、耐震化優先度を決定できる。このため、管網に対する地震の影響を推測する技術の利便性が向上する。
【0077】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0078】
例えば、上述した実施形態に係る表示装置10、入力装置20、及び情報処理装置30のうち少なくとも2つが、1つの装置として構成されてもよい。また例えば、情報処理装置30の各構成又は各手段が、複数の情報処理装置に分散配置された構成も可能である。当該複数の情報処理装置のうち少なくとも1つが、例えばインターネット等のネットワークに接続されたサーバとして実現される構成も可能である。
【0079】
また、上述した実施形態において、
図7乃至
図10を参照して情報処理システム1の動作の例について説明した。しかしながら、上述した動作に含まれる一部のステップ、又は1つのステップに含まれる一部の動作が、論理的に矛盾しない範囲内において省略された構成も可能である。また、上述した動作に含まれる複数のステップの順番が、論理的に矛盾しない範囲内において入れ替わった構成も可能である。
【0080】
また、上述した実施形態において、情報処理装置30の制御部33によって実現される各種の手段をソフトウェア構成として説明したが、これらのうち少なくとも一部の手段は、ソフトウェア資源及び/又はハードウェア資源を含む概念であってもよい。例えば、記憶手段331は、1つ以上のメモリを含んでもよい。また例えば、表示手段334は、1つ以上のディスプレイ装置又は印刷装置等を含んでもよい。
【0081】
また、上述した実施形態において、例えば管網に含まれる管路について優先度を予め定めておき、当該優先度を考慮して、第1管路の修繕されるべき順番を決定する構成も可能である。具体的には、決定手段333は、シミュレーションにおいて特定された第1管路のうち、優先度が高い第1管路については、修繕されるべき順番をより早くするように決定する。例えば、重要度の高い供給先(例えば、病院等)の優先度に応じて供給水量に重みづけしておく(実際よりも多い供給水量を定める)ことや、当該供給先に水を供給する管路について比較的高い優先度を定めておくことが考えられる。
【0082】
また、上述した実施形態において、記憶部32が記憶する管網情報には、当該管網に含まれる管路の損傷確率が含まれている構成について説明した。しかしながら、例えば上述した管路被害予測式と、当該予測式の計算に用いられる情報(例えば、管種・継手補正係数、口径補正係数、微地形補正係数、及び標準被害率、並びにこれらの値を特定するための管種、継手、口径、及び微地形の情報等)と、を記憶部32に記憶しておき、シミュレーションを行う度に、これらの情報を用いて管路の損傷確率を算出する構成も可能である。
【0083】
また、上述した実施形態に係る情報処理装置30として機能させるために、コンピュータ又は携帯電話等の装置を用いることができる。当該装置は、実施形態に係る情報処理装置30の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを、当該装置のメモリに格納し、当該装置のプロセッサによって当該プログラムを読み出して実行させることによって実現可能である。