(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
針葉樹晒クラフトパルプ50〜100質量%と、針葉樹晒クラフトパルプ以外の繊維0〜50質量%と、繊維の乾燥重量100質量%に対して0.01〜2.0質量%の湿潤紙力増強剤とを含有する原料を抄紙してなり、
JIS P 8124(2011)に準拠した坪量が8g/m2以上14g/m2未満であり、
JIS P 8226(2011)に準拠した数平均繊維長が0.3〜3.0mmであり、
可変恒温恒湿装置内において、23℃50%RHから23℃80%RHまで湿度を変化させた場合の縦方向の寸法変化率が−0.5〜0.5%であり、
JAPAN TAPPI No.34に準拠した測定した縦方向のソフトネスが30mN/100mm以上350mN/100mm以下であり、
JIS P 8116(2000)に準拠した縦方向の引裂強さが30〜250mN/mである、ラミネート用包装紙。
JIS P 8226(2011)に準拠した長さ加重平均繊維長が1.0〜3.5mmであり、かつ0.20mm以下の繊維の割合が5.0〜15.0%、2.0mm以上3.20mm以下の繊維の割合が30.0〜45.0%であり、
重さ加重平均繊維長が1.5〜4.0mmであり、
繊維巾が18〜35μmである、請求項1〜8のいずれかに記載のラミネート用包装紙。
【発明を実施するための形態】
【0013】
積層体10は、ラミネート用包装紙1の少なくとも一方面に樹脂フィルム2を積層したものである。積層体10で内容物を包装して包装体を構成する場合、ラミネート用包装紙1を外側とし、樹脂フィルム2を内側として用いられる。積層体10で内容物を包装した包装体においては、例えば、積層体10の内側の樹脂フィルム2と外側のラミネート用包装紙1とがヒートシールされる。積層体10の用途は特に限定されないが、食品等の包装に好適に用いることができる。内容物の形態や積層体10の用途に応じて、樹脂フィルム2上の全面または一部に、必要に応じて1層以上の樹脂層が更に設けられていても良く、この必要に応じて設けられる樹脂層は、樹脂フィルム2の全面または一部に貼り合わされていても良い。
【0014】
ラミネート用包装紙1は、パルプ繊維を主体とする原料パルプを抄紙した紙である。本実施形態に係るラミネート用包装紙1は、薄型化を図る面では原料パルプを湿式抄紙した単層の紙であることが好ましいが、原料パルプを湿式抄紙した紙を2層以上積層した積層体として構成しても良い。
【0015】
樹脂フィルム2は、食品等の水分を含む内容物からパルプ繊維を含むラミネート用包装紙1へと、水分が浸透することを抑制するために設けられる。樹脂フィルム2の材質は特に限定されないが、延伸ポリプロピレン(OPP)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、ポリエチレン(PE及びバイオPE)等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET及びバイオPET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブリレンサクシネート(PBS及びバイオPBS)、ポリブチレンサクシネート−co−アジペート(PBSA)、3-ヒドロキシ酪酸・3−ヒドロキシヘキサン酸共重合ポリエステル(PHBH等のPHA系)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT及びバイオPTT)、ポリスチレン(PS)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリウレタン(PU)、ナイロン、EVOH、澱粉由来のフィルム、アルミ膜及び各種フィルムのアルミ蒸着フィルム等を用いることができる。また、樹脂フィルム2については組み合わせて複合材として使用することもできる。環境保護の観点から、日本バイオプラスチック協会が定める、全面的バイオ原料プラスチック又は部分的バイオ原料プラスチックも用いることができる。樹脂フィルム2は、例えば、ドライラミネートによりラミネート用包装紙1に積層することができる。また、ラミネート用包装紙1の一方面に上述した樹脂を押出コート(ラミネート)することにより樹脂フィルム2を形成しても良い。また、ラミネート用包装紙1に、同一材料または異なる材料からなる2以上の樹脂フィルム2を積層した積層体を構成することもできる。
【0016】
本実施形態に係るラミネート用包装紙は、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)50〜100質量%と、針葉樹晒クラフトパルプ以外のその他の繊維0〜50質量%と、繊維の乾燥重量100質量%に対して0.01〜2.0質量%の湿潤紙力増強剤を含有する原料を抄紙したものである。
【0017】
(パルプ)
針葉樹晒クラフトパルプとしては、化学パルプ(CP)、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(TGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ(MP)を、単独でまたは複数を組み合わせて使用することができる。針葉樹クラフトパルプは、広葉樹クラフトパルプに比べ繊維長が長いため、繊維間の結合が多くなり紙力を向上させる利点を有する。また、針葉樹晒クラフトパルプNBKPは、晒しにより十分なリグニンが溶出し、繊維が膨潤するため、柔軟性を有するラミネート用包装紙を得ることができる。
【0018】
針葉樹晒クラフトパルプは、異なる2種類のフリーネスを有するクラフトパルプAとクラフトパルプBとを含有することが好ましい。より特定的には、クラフトパルプAのフリーネス(CSF)が200〜480mlであり、クラフトパルプBのフリーネス(CSF)が500〜700mlであることが好ましい。フリーネスは、JIS P 8121(2012)に準拠した値である。相対的にフリーネスが低いクラフトパルプAは、ラミネート用包装紙の伸びを確保する役割を有し、相対的にフリーネスが高いクラフトパルプBは引張強さや引裂強さを確保する役割を有する。上記範囲内でも、クラフトパルプAのフリーネスは、300〜380mlであることがより好ましく、クラフトパルプBのフリーネスは、550〜650mlであることがより好ましい。
【0019】
クラフトパルプA及びクラフトパルプBの質量比は、50:50〜95:5であることが好ましい。クラフトパルプAの配合割合がクラフトパルプA及びクラフトパルプBの合計の50質量%未満の場合、十分な伸び率を確保することが難しく、ラミネート用包装紙の強度が低下する。また、クラフトパルプAの配合割合がクラフトパルプA及びクラフトパルプBの合計の95質量%を超えると、クラフトパルプBの配合割合が少なくなりすぎることにより、引張強さ及び引裂強さが低下する。また、クラフトパルプAをクラフトパルプA及びクラフトパルプBの合計の50〜95質量%の範囲内で配合することで、短繊維の割合が増え、紙の密度を高めることができるので、紙厚を薄くすることができる。
【0020】
(その他の繊維)
針葉樹晒クラフトパルプ以外のその他の繊維としては、針葉樹晒クラフトパルプ以外の木材パルプ、非木材パルプ、古紙パルプ、樹脂繊維等の1種類または複数種類を使用することができる。
【0021】
木材パルプとしては、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)等を使用することができる。
【0022】
非木材パルプとしては、例えば、ケナフパルプ、アバカパルプ、コットンリンターパルプ、ワラパルプ、タケパルプ、麻パルプ等を使用することができる。
【0023】
古紙パルプとしては、例えば、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ(DIP)、離解・脱墨・漂白古紙パルプ等を使用することができる。
【0024】
樹脂繊維としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリビニルアルコール(PVA)、レーヨン、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、3−ヒドロキシ酪酸−3−ヒドロキシヘキサン酸共重合体(PHBH)、ナイロン、アクリルからなる群から選ばれる何れかの熱可塑性樹脂を用いることができる。樹脂繊維として、芯部を鞘部が覆った芯鞘構造を有する芯鞘構造繊維を使用しても良い。芯鞘構造繊維の芯部及び鞘部の材質は、前述した熱可塑性樹脂のいずれかであれば良く、同一でも異なっていても良い。また、芯部及び鞘部の一方または両方の材質が異なる2種以上の芯鞘構造繊維を混合して用いても良い。
【0025】
(紙力増強剤)
湿潤紙力増強剤は、紙の湿潤紙力を向上させることに加え、吸湿時の寸法変化を抑制する作用を有する。湿潤紙力増強剤としては、ポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂等のエピクロルヒドリン系樹脂、ポリアミン樹脂、尿素樹脂、酸コロイド−メラミン樹脂、熱架橋性付与ポリアクリルアミド(熱架橋性付与PAM)等を使用することができる。なお、特に注釈がない限り、本願では薬剤の配合量は固形分換算の値をさす。
【0026】
原料には、繊維の乾燥重量100質量部に対して0.01〜1.0質量部の乾燥紙力増強剤を配合することが好ましい。湿潤紙力増強剤と乾燥紙力増強剤を併用することによって、吸湿によるカール抑制効果を更に向上させることができる。乾燥紙力増強剤としては、カチオン澱粉、両性澱粉、両性ポリアクリルアミド(両性PAM)、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMC)等を使用することができる。
【0027】
(坪量)
本実施形態に係るラミネート用包装紙の坪量(米坪)は、8.0g/m
2以上21.0g/m
2未満である。坪量は、JIS P8124(2011)「紙及び板紙−坪量の測定方法」に準拠して測定した値である。ラミネート用包装紙の坪量が、8.0g/m
2未満の場合、ラミネート用包装紙の強度が不足し、シワや破断が生じやすい。また、ラミネート用包装紙の一方、ラミネート用包装紙の坪量が21.0g/m
2以上の場合、剛度が高くなりすぎ樹脂フィルムとの貼り合わせがしにくくなり、また、ラミネート用包装紙に樹脂フィルムをラミネートした積層体の包装時における加工適性も低下する。
【0028】
(数平均繊維長)
本実施形態に係るラミネート用包装紙の数平均繊維長は、0.3〜3.0mmであり、好ましくは0.5〜2.0mmであり、より好ましくは0.6〜1.1mmである。数平均繊維長は、JIS P 8226−2(2011)「パルプ−光学的自動分析法による繊維長測定方法−第2部:非偏光法」に準拠して測定した値である。数平均繊維長が上記範囲内であることで、ラミネート用包装紙の吸湿時の寸法変化率を抑制し、強度及び柔らかさを最適なものとすることができる。
【0029】
(長さ荷重平均繊維長)
本実施形態に係るラミネート用包装紙の長さ加重平均繊維長は、1.0〜3.5mmである。好ましくは1.0〜3.0mmであり、より好ましくは1.5〜2.5mmである。また、上記ラミネート用包装紙の繊維の分布ヒストグラムは、0.20mm以下の繊維が5.0%以上15.0%以下であり、2.0mm以上3.20mm以下の繊維が30.0%以上45.0%以下に最も分布割合が多いピークを持ち合せることが好ましい。長さ平均繊維長は、JIS P 8226−2(2011)「パルプ−光学的自動分析法による繊維長測定方法−第2部:非偏光法」に準拠して測定した値である。長さ加重平均繊維長が上記範囲内であることで、ラミネート用包装紙の強度を最適なものとすることができる。また。上記0.2mm以下の繊維長の割合と2.0mm以上3.20mm以下の繊維の割合とすることで、より強度を最適なものとすることができる。
【0030】
(重さ加重平均繊維長)
本実施形態に係るラミネート用包装紙の重さ加重平均繊維長は、1.5〜4.0mmである。好ましくは2.0〜3.5mmであり、より好ましくは2.5〜3.3mmである。重さ加重平均繊維長は、JIS P 8226−2(2011)「パルプ−光学的自動分析法による繊維長測定方法−第2部:非偏光法」に準拠して測定した値である。重さ加重平均繊維長が上記範囲内であることで、ラミネート用包装紙の柔らかさを最適なものとすることができる。
【0031】
(繊維巾)
本実施形態に係るラミネート用包装紙の平均繊維巾は、18.0〜35.0μmである。好ましくは20.0〜33.0mmであり、より好ましくは25.0〜30.0mmである。繊維巾は、JIS P 8226−2(2011)「パルプ−光学的自動分析法による繊維長測定方法−第2部:非偏光法」に準拠して測定した値である。繊維巾が上記範囲内であることで、ラミネート用包装紙の吸湿時の寸法変化率を抑制することができる。
【0032】
ラミネート用包装紙の数平均繊維長、長さ加重平均繊維長、重さ加重平均繊維長、繊維巾は、上記ラミネート用包装紙をパルプ離解方法(JIS P8220:1998)に従って離解した原料を測定して数値である。
【0033】
(寸法変化率)
本実施形態に係るラミネート用包装紙を可変恒温恒湿装置内に載置し、23℃50%RHから23℃80%RHまで湿度を変化させた場合の縦方向の寸法変化率が−0.5〜0.5%である。ここで、寸法変化率は、ラミネート用包装紙を縦200mm×横200mmにカットしたサンプルを23℃の可変恒温恒湿装置内に載置し、各相対湿度におけるサンプルの中央部の横方向の長さを0.5mm単位で測定し、以下の式により算出した値である。
寸法変化率(%)={23℃80%RHでの縦方向長さ(mm)−23℃50%RHでの縦方向長さ(mm)}/23℃50%RHでの横方向長さ(mm)×100
【0034】
吸湿時における縦方向の寸法変化率が上記範囲内であれば、パルプ繊維の吸湿に起因するラミネート用包装紙の伸びが抑制されているため、ラミネート用包装紙に樹脂フィルムを積層した積層体を平版(枚葉)で用いる場合でも吸湿によるカールが抑制される。
【0035】
また、本実施形態に係るラミネート用包装紙を可変恒温恒湿装置内に載置し、23℃50%RHから23℃20%RHまで湿度を変化させた場合の縦方向の寸法変化率が−0.5〜0%であることが好ましい。ここで、寸法変化率は、ラミネート用包装紙を縦200mm×横200mmにカットしたサンプルを23℃の可変恒温恒湿装置内に載置し、各相対湿度におけるサンプルの中央部の横方向の長さを0.5mm単位で測定し、以下の式により算出した値である。
寸法変化率(%)={23℃20%RHでの縦方向長さ(mm)−23℃50%RHでの縦方向長さ(mm)}/23℃50%RHでの横方向長さ(mm)×100
【0036】
乾燥時における縦方向の寸法変化率が上記範囲内であれば、パルプ繊維の放湿に起因するラミネート用包装紙の収縮が抑制されているため、使用環境の湿度が変化した場合における放湿に起因するカールを抑制できる。
【0037】
(ソフトネス)
本実施形態に係るラミネート用包装紙の縦方向のソフトネスは、30mN/100mm以上350mN/100mm以下であることが好ましい。ソフトネスは、JAPAN TAPPI No.34に準拠した測定した値である。ラミネート用包装紙の縦方向のソフトネスが30mN/100mm未満である場合、紙が柔らかすぎてシートのシワや破断に繋がる。また、ラミネート用包装紙の縦方向のソフトネスが350mN/100mmを超える場合、紙が硬いため、内容物に沿って折り曲げたときの反発が強くなり、機械適性が低下する場合がある。
【0038】
(湿潤引張強さ)
本実施形態に係るラミネート用包装紙の縦方向の湿潤引張強さは、0.10kN/m以上であることが好ましい。湿潤引張強さは、JIS P 8135(1998)「紙及び板紙−湿潤引張強さ試験方法」に準拠して測定した値である。本実施形態に係るラミネート用包装紙は、包装の外装材として用いられるが、湿潤引張強さが上記の値以上であれば、包装紙の状態または内容物を包装した包装体の状態で環境中の水分を吸収・放出した際の寸法変化が抑えられる。
【0039】
(引裂強さ)
本実施形態に係る包装用紙の縦方向の引裂強さは、30〜250mN/mであることが好ましい。引裂強さは、JIS P 8116(2000)「紙及び板紙−引裂強さ試験方法」に準拠して測定した値である。縦方向の引裂強さについては手切れ性の観点から250mN以下が好ましく、250mN以上の場合は包装体を手切りする際に強度が強すぎるため、切りにくかったり、紙だけ剥離して別方向に切れたりする可能性がある。
【0040】
(引張強度)
本実施形態に係る包装用紙の縦方向の引裂強さは、JIS P 8113(2006)「紙及び板紙−引張特性の試験方法」に準拠して測定した値である。さらに、「引張強度横/引張強度縦×100%」の式により、繊維配向率を求めることができる。繊維配向率は、40%以下が好ましく、25%以下がより好ましい。食品包材用途に使用される積層体(包装体)は、開封時に特定の一方向に手切りして開封することが多いため、積層体に用いるラミネート用包装紙にも手切れ性の良さと当該一方向への裂けやすさが求められる。繊維配向率が40%以下であることで、包装体を開封する際、手切り方向に切れにくく紙が破れにくかったり、別方向に裂けたりすることを低減できる。
【0041】
(密度)
本実施形態に係るラミネート用包装紙の密度は、0.30〜0.70g/cm
3であることが好ましい。密度は、JIS P 8118(2014)「紙及び板紙−厚さ,密度及び比容積の試験方法」に準拠して測定した値である。ラミネート用包装紙の密度が低すぎる場合、紙の質感が損なわれ、ラミネート用包装紙の密度が高すぎる場合、コシが強くなることによって包装時に折り曲げたときの反発が強くなり機械適性を低下させる可能性があるが、密度を上記範囲内とすることにより、適度なコシと質感を有する包装紙とすることができる。
【0042】
(ベック平滑度)
本実施形態に係るラミネート用包装紙の一方面のベック平滑度が、20秒以上であることが好ましい。ベック平滑度は、「紙及び板紙−ベック平滑度試験機による平滑度試験方法」JIS P 8119(1998)に準拠して測定した値である。ラミネート用包装紙のベック平滑度が20秒以上であれば、印刷適性に優れるため好ましい。
【0043】
(製造方法)
本実施形態に係るラミネート用包装紙は、原料繊維と必要に応じて添加される各種添加剤を含む原料を湿式抄紙し、湿式抄紙した紙を乾燥させることにより製造することができる。抄紙した紙の乾燥は、ヤンキードライヤーを用いて行うことが好ましい。ヤンキードライヤーで乾燥させた場合、ラミネート用包装紙は片面が艶面である片艶紙として得られるため、印刷適性が向上する。メカニズムは定かではないが、ヤンキードライヤーを用いて乾燥を行うことで、ラミネート用包装紙の片側のみの表面の繊維が融着されることで、吸湿・放湿がし難い物性を示すと考えられるため、ヤンキードライヤーで乾燥させた紙をラミネート用包装紙として好適に用いることができる。
【0044】
乾燥工程の後に、カレンダー処理を行うことにより、ラミネート用包装紙の平滑度を高くし、印刷適性を向上させることができる。ただし、カレンダー処理は必ずしも必要ではなく、省略しても良い。
【0045】
カレンダー工程は、例えば、ハードニップカレンダー、ソフトカレンダー、スーパーカレンダー等のカレンダー設備を用いて行うことができる。金属ロールと弾性ロールを組み合わせたカレンダー設備で乾燥工程を行っても良い。金属ロールとは、鋳鋼製であり、加熱されるカレンダーロールのことである。弾性ロールとは、コットン、エポキシ樹脂、特殊ポリエステル、アラミド等の材質からなり、非加熱側のカレンダーロールのことである。弾性ロールのショア硬さは、D60以上D95以下が好ましい。D60未満であると、加圧時のニップ幅が広く圧力が分散するため、繊維同士の接着性が不十分となる可能性がある。D95超えると、弾性ロールそのものが熱を保持しやすく、ラミネート用包装紙が剥離し難くなり外観不良になる可能性がある。
【0046】
カレンダー工程の線圧は、30kg/cm以上350kg/cm以下であることが好ましい。ラミネート用包装紙の厚さの均一性を向上させる観点から、カレンダー工程の線圧は80kg/cm以上180kg/cm以下がより好ましい。カレンダー工程の線圧が30kg/cm未満であると繊維同士の接着が不十分となる可能性がある。また、350kg/cmを超えるとラミネート用包装紙の繊維間の接合が破壊され、引裂強度の低下が大きくなり、更に外観不良となる可能性がある。
【0047】
カレンダー工程の金属ロールの表面温度(加熱温度)は、70℃以上200℃以下であることが好ましい。ラミネート用包装紙の引張強度の低下を抑える観点から、カレンダー工程の金属ロールの表面温度は、80℃以上180℃以下であることがより好ましい。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係るラミネート用包装紙は、針葉樹晒クラフトパルプを主体とする繊維と湿潤紙力増強剤とを含有し、繊維の数平均繊維長を上述した範囲ないである原料を抄紙したものである。これにより、水分を吸収したときの伸びを抑制し、樹脂フィルムを積層して積層体を行使した場合の吸湿によるカールを抑制することができる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明に係るラミネート用包装紙を具体的に実施した実施例を説明する。但し、
本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0050】
表1に示す配合の原料繊維を含む原料スラリーを円網抄紙機に供給して湿式抄紙し、湿式抄紙した紙をヤンキードライヤーにて乾燥させて、実施例1〜11及び比較例1〜6に係るラミネート用包装紙を作製した。実施例5及び6においては、金属ロールと弾性ロール(ショア硬さD85)の組み合わせを用いてカレンダー処理した。カレンダー工程においては、金属ロールの温度を130℃、線圧を150kg/cmの条件とした。
【0051】
【表1】
【0052】
得られたラミネート用包装紙の坪量、厚み、密度、引張強度(縦・横)、湿潤引張強度(縦・横)、引裂強度(縦・横)、湿度変化時の寸法変化率、ソフトネス(縦)、繊維長分布及びベック平滑度を測定した。測定方法は次の通りである。
坪量は、JIS P8124(2011)「紙及び板紙−坪量の測定方法」に準拠して測定した。
厚み及び密度は、JIS P 8118(2014)「紙及び板紙−厚さ,密度及び比容積の試験方法」に準拠して測定した。
引張強度は、JIS P 8113(2006)「紙及び板紙−引張特性の試験方法」に基づいて測定した。
湿潤引張強さは、JIS P 8135(1998)「紙及び板紙−湿潤引張強さ試験方法」に準拠して測定した。
引裂強さは、JIS P 8116(2000)「紙及び板紙−引裂強さ試験方法」に準拠し、予め入れる切れ目の方向をラミネート用包装紙の縦方向または横方向として測定した。
【0053】
寸法変化率は、ラミネート用包装紙を縦200mm×横200mmにカットしたサンプルを用いて測定した。
23℃、50%RHから20%RHに変化させたときの寸法変化率は、サンプルを可変恒温恒湿装置内に載置して相対湿度を変化させ、各相対湿度におけるサンプルの中央部の縦方向または横方向の長さを0.5mm単位で測定し、以下の式により算出した。
寸法変化率(%)={23℃20%RHでの縦(横)方向長さ(mm)−23℃50%RHでの縦方向長さ(mm)}/23℃20%RHでの縦(横)方向長さ(mm)×100
23℃、50%RHから80%RHに変化させたときの寸法変化率は、サンプルを可変恒温恒湿装置内に載置して相対湿度を変化させ、各相対湿度におけるサンプルの中央部の縦方向または横方向の長さを0.5mm単位で測定し、以下の式により算出した。
寸法変化率(%)={23℃80%RHでの縦(横)方向長さ(mm)−23℃50%RHでの縦(横)方向長さ(mm)}/23℃50%RHでの横方向長さ(mm)×100
【0054】
ソフトネスは、JAPAN TAPPI No.34に準拠して測定した。
数平均繊維長は、JIS P 8226−2(2011)「パルプ−光学的自動分析法による繊維長測定方法−第2部:非偏光法」に準拠して測定した。測定機器は、繊維画像分析計(バルメットオートメーション製Valmet FS5)を用いた。
ベック平滑度は、「紙及び板紙−ベック平滑度試験機による平滑度試験方法」JIS P 8119(1998)に準拠して測定した。
【0055】
また、得られたラミネート用包装紙の一方面に樹脂フィルムをドライラミネート用接着剤を用いてラミネートして積層体を作成し、作成した積層体を平版とし、包装機で食品を包装した。このときの包装適性を以下の基準により評価した。
◎:積層体のカールが抑制され、紙のコシに起因する積層体の跳ね返りも小さいため、機械適性が極めて良好
○:積層体のカールが抑制され、紙のコシに起因する積層体の跳ね返りも小さいため、機械適性が良好
△:積層体のカールは抑制されているが、紙のコシに起因する積層体の跳ね返りがあり、機械適性がやや劣る
×:積層体のカールが大きく、機械適性が劣る
【0056】
表2に、上記の各測定値及び包装適性の評価値を示す。
【0057】
尚、実施例1のラミネート用包装紙は、坪量15.0g/m
2、厚み35μm、密度0.43g/m
3、引張強度(縦)1.51kN/m、引張強度(横)0.28kN/m、湿潤引張強度(縦)0.46kN/m、湿潤引張強度(横)0.08kN/m、引裂強度(縦)84mN、引裂強度(横)225mN、相対湿度50%から80%まで変化時の寸法変化率は縦方向0.06%、横方向0.24%、ソフトネス(縦)204mN/100mm、数平均繊維長0.74mm、長さ加重平均繊維長2.00mm(0.20mm以下の繊維が8.0%、2.0mm以上3.2mm以下の繊維が38.0%)、重さ加重平均繊維長2.60mm、繊維巾29.0μmであった。
【0058】
【表2】
【0059】
表2に示すように、実施例1〜10に係るラミネート用包装紙は、表1に記載の割合で各繊維及び湿潤紙力増強剤を配合した原料で抄紙されたものであり、坪量、数平均繊維長及び23℃50%RHから23℃80%RHまで湿度を変化させた場合の縦方向の寸法変化率が上述した範囲を満たしていた。したがって、実施例1〜9に係るラミネート用包装紙は、樹脂フィルムをラミネートして積層体を構成した場合に、吸湿によるカールが低減されており、かつ、紙のコシも適切な範囲であることから、包装適性が良好であった。また、実施例1〜9に係るラミネート用包装紙は、ソフトネスが上述した範囲を満たすことから、適度な柔らかさを有しており、包装時のシワや破断が抑制されると共に、紙のコシに起因する反発が低減されていることが分かる。また、実施例1〜10に係る包装用紙は、縦方向の引裂強度が上述した範囲内であることから、包装紙に求められる強度と、開封時の引き裂きやすさとを兼ね備えたものであった。
【0060】
これに対して、比較例1に係るラミネート用包装紙は、NBKPの配合割合が少なく、かつ、湿潤紙力増強剤を含有しない原料を用いて抄紙したものであるため、吸湿時の寸法変化率が大きく、積層体のカールを抑制することができず、包装適性が劣るものであった。また、比較例1に係るラミネート用包装紙は、湿潤引張強度も不十分であった。
【0061】
比較例2に係るラミネート用包装紙は、原料の配合割合は好ましい範囲であったため、吸湿による寸法変化率が抑制され、積層体のカールを抑制することができた。しかしながら、比較例2に係るラミネート用包装紙の坪量が高くソフトネスが、上述した範囲を超えているため、紙のコシに起因する積層体の跳ね返りがあり、包装適性が劣っていた。また、比較例2に係るラミネート用包装紙の縦方向の引裂強度が大きく、包装体の開封時の引き裂きやすさがやや劣っていた。
【0062】
比較例3に係るラミネート用包装紙は、NBKP以外の繊維の配合割合が多く、坪量及びソフトネスが、上述した範囲を超えているため、紙のコシに起因する積層体の跳ね返りがあり、包装適性が劣っていた。また、比較例3に係るラミネート用包装紙の縦方向の引裂強度が大きく、包装体の開封時の引き裂きやすさがやや劣っていた。
【0063】
比較例4に係るラミネート用包装紙は、湿潤紙力増強剤が少ない原料を用いて抄紙したものであるため、吸湿時の寸法変化率が大きく、積層体のカールを抑制することができず、包装適性が劣るものであった。また、比較例4に係るラミネート用包装紙は、湿潤引張強度も不十分であった。
【0064】
比較例5に係るラミネート用包装紙は、湿潤紙力増強剤が添加されていない原料を用いて抄紙したものであるため、吸湿時の寸法変化率が大きく、積層体のカールを抑制することができず、包装適性が劣るものであり、湿潤引張強度も不十分であった。また、比較例5に係るラミネート用包装紙は、坪量が小さいため、紙が柔らかすぎ、包装時にシワや破れが発生しやすく、包装適性に劣っていた。
【0065】
比較例6に係るラミネート用包装紙は、樹脂繊維を主体とする原料を用いて抄紙したものであるため、吸湿時の寸法変化率は抑制されている。しかしながら、樹脂繊維が繊維合計の80質量%を占めるため、樹脂量を低減するという目的には適わないものである。また、比較例6に係るラミネート用包装紙の縦方向の引裂強度が大きく、包装体の開封時の引き裂きやすさがやや劣っていた。
【解決手段】針葉樹晒クラフトパルプ50〜100質量%と、針葉樹晒クラフトパルプ以外の繊維0〜50質量%と、繊維の乾燥重量100質量%に対して0.01〜2.0質量%の湿潤紙力増強剤とを含有する原料を抄紙してなり、JIS P 8124(2011)に準拠した坪量が8g/m
未満であり、JIS P 8226(2011)に準拠した数平均繊維長が0.3〜3.0mmであり、可変恒温恒湿装置内において、23℃50%RHから23℃80%RHまで湿度を変化させた場合の縦方向の寸法変化率が−0.5〜0.5%である、ラミネート用包装紙。